【実施例1】
【0015】
実施例1に係る面ファスナー装置につき、
図1から
図5を参照して説明する。本発明の面ファスナー装置は、面ファスナー機能を有し、主として、複数の躯体、構造体、シート体などを自由に組立て、若しくは、所定の位置へ固定し、且つそれらを解体する際に用いられる面ファスナー装置1、1’であり、本実施例において面ファスナー装置1、1’は、所定の位置である自動車の車内壁2にシート体であるカーテン3を組み付ける際に適用されるものとして説明する。
【0016】
図1に示されるように、車内壁2には、面ファスナー装置1が後述する固定部4によって所定の被固定部位である天井側と床側とに2箇所ずつ配置されている。また、カーテン3には、面ファスナー装置1’が固定部4によって面ファスナー装置1と対応する所定の被固定部位に計4箇所に配置されている。この面ファスナー装置1は、面ファスナー装置1’と対になっており、互いに係脱可能になっていることにより、カーテン3が車内壁2に固定されている。尚、面ファスナー装置1、1’は、所定の位置とシート体とに所望の数量配置されてよく、態様に応じて適宜設定することができる。以下、これら面ファスナー装置1、1’は同一構成につき面ファスナー装置1のみについて説明する。
【0017】
この面ファスナー装置1は、折部10によって折り畳み可能に構成されたシート状基部5を有し、このシート状基部5は、本発明の第1係合面でありシート状基部5の内面にそれぞれ設けられた面ファスナーである係合面6と、本発明の第2係合面であり係合面6と係脱可能な面ファスナーであるカバー面7と、本発明の固定手段であり所定の被固定部位に固定する為の固定部4とを備えている。
【0018】
先ず、シート状基部5を説明する。
図2(a)に示されるように、このシート状基部5は、折部10によって係合面6が配置される1つの第1シート状基部5aと、カバー面7が配置される2つの第2シート状基部5b,5cとに区分されている。より詳しくは、シート状基部5は、第1シート状基部5aの外周である第1シート状基部5aの両端部に折部10、10が配置され、第1シート状基部5aの一方の端部に第2シート状基部5bを有し、対向する他方の端部に第2シート状基部5c’を有している。このことでシート状基部5は、第1シート状基部5aの係合面6に向けて第2シート状基部5b,5cを閉じることにより面ファスナー機能不使用状態となり、第1シート状基部5aに対して第2シート状基部5b,5cを外方に向けて開くことで係合面6の面ファスナー機能使用可能状態となっている。
【0019】
つまり、第1シート状基部5aの外周には第2シート状基部5b,5cとの折部10、10が配置され、第2シート状基部5b,5cは第1シート状基部5aに対して観音開状に開閉できるようになっている。
【0020】
そのため、第1シート状基部5aの内面に配置された係合面6が周方向から折部10、10を介して第2シート状基部5b,5cで包囲されるため、面ファスナー機能不使用時においてファスナー面への塵等の付着を確実に防止できることになる。
【0021】
さらに、この第1シート状基部5aの裏面に固定部4が設けられている。面ファスナー装置1は、第1シート状基部5aの裏面に設けられた固定部4により車内壁2の被固定部位に固定されて利用され、第2シート状基部5b,5cは、第1シート状基部5aに対して自由に開閉することができる(
図4,5参照)。面ファスナー装置1’も同様の構成により、カーテン3の被固定部位に固定されて利用されている。
【0022】
このシート状基部5は一枚の弾性シート材で構成され、第1シート状基部5aと第2シート状基部5b,5cとが面一の面となるように付勢されている。
【0023】
このように、第1シート状基部5aと第2シート状基部5b,5cとが面一の面となるように付勢されていることにより、係合面6とカバー面7との係着を解いた場合、折部10を介して第2シート状基部5b,5cが係合面6に対して180度方向に開放され、この係合面6に面ファスナー装置1’の係合面6’のアプローチが容易となる。
【0024】
より具体的に説明すると、弾性シート材は、例えばゴムや合成樹脂等の弾性を有する部材によって構成されたシート材であり、弾性シート材が有する弾性復元力によってシート状基部5が面一の面と成るように常時付勢されていることにより、係合面6とカバー面7との係着を解く際に容易に解くことができる。また、折部10は、シート状基部5が弾性シート材で構成されているため、カバー面7とが係着している状態において当該弾性シート材の持つ弾性復元力によって係合面6と折り目を有さず、第1シート状基部5aと第2シート状基部5b,5cとの間に渡って略半円弧状になっている。
【0025】
尚、本実施例においては、シート状基部5が一枚の弾性シート材で構成されているが、これに限られず、例えば、シート状基部における第1シート状基部と第2シート状基部との折部10のみが弾性シート材で構成され、第1シート状基部と第2シート状基部とが面一の面となるように付勢されてもよく、少なくとも折部が弾性シート材等の弾性を有する部材によって構成されればよい。
【0026】
さらに、折部10によって区分された係合面6が配置される1つの第1シート状基部5aと、折部10によって区分されたカバー面7が配置される2つの第2シート状基部5b,5cとの面積がほぼ同面積になっており、係合面6とカバー面7との係着状態において、係合面6が外部に露出しないようにカバー面7が配置され第2シート状基部5b,5cによって被覆されるようになっている。
【0027】
これによれば、面ファスナー機能不使用時に係合面6が外部に露出しないことで、塵等が係合面6に付着しないようになるだけでなく、他の部材等に誤って係着することを防ぎ、移動時または再使用時における作業が煩雑にならないようにできる。
【0028】
また、第2シート状基部5b,5cには、第1シート状基部5aと対向する端部にそれぞれ取手13が延設されている。これによって第2シート状基部5b,5cの開閉が容易になる。尚、取手13の位置は第2シート状基部5の端部に限らず、第2シート状基部5の裏面などに設けられてもよい。
【0029】
次に、係合面6とカバー面7とについて説明する。係合面6とカバー面7とは、一面にフック型とループ型との係合素子が混在する雄雌混合型係合素子から成る面ファスナーによって互いに係合しており、カバー面7の係合素子は、第1係合面の係合素子より少なく形成されている。
【0030】
カバー面7の係合素子が、係合面6の係合素子より少なく形成されていることにより、係合面6とカバー面7との係着を軽度な固定状態にでき、カバー面7を係合面6から開放する際において、固定部4と車内壁2の被固定部位との固定状態に影響を与えないように調節できる。
【0031】
尚、カバー面7は、係合面6の面ファスナー機能不使用状態時に第2シート状基部5b,5c上において係合面6と対応する位置であればどこに設けられてもよいが、カバー面7の係合素子は、係合面6の係合素子の3分の1程度の量が好ましく、折部10には係合素子が設けられないことが好ましい。尚、係合面6とカバー面7とは、雄雌混合型係合素子に限らずフック型係合素子とループ型係合素子とに分かれて成るものでもよいし、一種類の係合素子で係合可能な茸型係合素子から成るものでもよい。
【0032】
次いで、固定部4について説明する。
図3に示されるように、第1シート状基部5aの裏面の略全面に設けられた本実施例の固定部4は、所定の厚みを有し、且つ粘着性と弾力性とを有している。これにより、面ファスナー装置1は、例えば、車内壁2の被固定部位が凹凸や湾曲している場合、固定部4の弾力性と所定の厚みとによって被固定部位に合わせて弾性変形し、粘着性によって貼着するため、多様な被固定部位へ強固に固定することができる。
【0033】
尚、第1シート状基部5aの裏面における固定部4を設ける位置は、周縁でも良いし、四隅に部分的に設けてもよく適宜設定することができる。また、第2シート状基部5bないし第2シート状基部5c’のいずれかの裏面に設け、第1シート状基部5aを開閉するようにしてもよい。また、本実施例の固定部4は、所定の厚みを有し、且つ粘着性と弾力性とを有しているが、これに限られず、例えば両面テープ等を第1シート状基部5aの裏面に貼着させ、簡易的に固定部を設けてもよい。
【0034】
固定部4を車内壁2の被固定部位へ貼着させる貼着面4aは、固定部4を保護するための保護シート14で被覆されている。面ファスナー装置1を車内壁2の被固定部位へ固定する手順は、先ず保護シート14を貼着面4aから剥離して固定部4を貼着可能にし、第1シート状基部5aの裏面を車内壁2の被固定部位に向けて貼付することで面ファスナー装置1が固定される。したがって、保護シート14を貼着面4aから剥離するまでは、面ファスナー装置1の位置決めを自由に行うことができる。
【0035】
以上の説明したように面ファスナー装置1が構成されている。次に、係合面6の面ファスナー機能不使用状態(
図2(b)参照)から係合面6の面ファスナー機能使用可能状態(
図2(a)参照)に切り替える際について詳しく説明する。
【0036】
図4に示されるように、係合面6の面ファスナー機能不使用状態時には、第2シート状基部5b,5cの端部同士が第1シート状基部5aの縦方向の中央線A上において重なっており、この第2シート状基部5b,5cは、第1シート状基部5aの中央線Aから第1シート状基部5aの外周方向へと徐々に剥離される。したがって、固定部4の貼着面4aと被固定部位との当接面周縁に対して、係合面6とカバー面7との剥離時の負荷が加わることを抑え、固定部4と車内壁2の被固定部位との固定状態に影響を与えないようにすることができるため、面ファスナー装置1が被固定部位に強固に固定された状態が維持される。
【0037】
また、上述したように、カバー面7の係合素子が、係合面6の係合素子より少なく形成されていることにより、係合面6とカバー面7との係着を軽度な固定状態にできるため固定部4と車内壁2の被固定部位との固定状態に影響を与えないように調節でき、係合面6とカバー面7とが容易に剥離することができる。更には、上述のように、シート状基部5は一枚の弾性シート材で構成され、第1シート状基部と第2シート状基部とが面一の面となるように付勢されていることで、係合面6とカバー面7とを容易に剥離することができる。
【0038】
次に、
図5を用いて車内壁2の被固定部位に設置された面ファスナー装置1に対して、カーテン3の被固定部位に設置された面ファスナー装置1’を係合させる様子を説明する。
【0039】
面ファスナー装置1、1’はそれぞれの係合面6、6’の面ファスナー機能使用可能状態となっており、係合面6、6’同士を対向させて当接させることによって相互に係合し、カーテン3が車内壁2に固定される。係合面6、6’が相互に係合している状態においては、カバー面7、7’同士も相互に係合するようになり、カバー面7、7’同士の係合によって第2シート状基部5b,5cの移動が相対的に規制され、使用状態時に他の部材等に誤って係着することを防ぐことができるだけでなく、面ファスナー装置1、1’の係合力も向上する。
【0040】
以上説明したように、本発明の面ファスナー装置は、シート状基部5が少なくとも折部10によって折り畳み可能に構成され、折部10によって区分された第1シート状基部5aの内面には面ファスナーを有する係合面6が設けられ、さらに折部10によって区分された第2シート状基部5b,5cの内面には係合面6と係脱が可能な面ファスナーを有するカバー面7が設けられるとともに、少なくとも第1シート状基部5aまたは第2シート状基部5b,5cのいずれかにシート状基部5を所定の被固定部位に固定するための固定部4が設けられている。このことにより、この面ファスナー装置は、始めにシート状基部5の固定部4により被固定部位に固定されて利用される。固定の完了した面ファスナー機能を使用しない時には、折部10に沿って第2シート状基部5b,5cを内側に折り畳むことにより、係合面6とカバー面7とのファスナー面が互いに係着しファスナー面の機能を不能状態にできる。したがって面ファスナー機能不使用時においてファスナー面への塵等の付着を防止できるとともに、移動時または再使用時における作業も煩雑にならない。さらにファスナー面使用時においては、係合面6とカバー面7との係着を解くだけで、利用されるファスナー面の係着機能を再開できる。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2に係る面ファスナー装置11に付き、
図6を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0042】
図6に示されるように、面ファスナー装置11のシート状基部15は、折部10によって係合面16が配置される1つの第1シート状基部15aと、カバー面17が配置される8つの第2シート状基部15bと、に区分されている。また、ここでは図示しない固定部が第1シート状基部15aの裏面に設けられており、固定部によって面ファスナー装置11が被固定部位に固定される。
【0043】
この第1シート状基部15aは、平面視で略8角形を成しており、第1シート状基部15aの外周には、8つの第2シート状基部15bとの折部10が配置されている。このことで第2シート状基部15bは、第1シート状基部15aの中心に対して放射状に開閉できるようになっている。
【0044】
そのため、第1シート状基部15aに配置された係合面6が周方向から折部10を介して第2シート状基部15bで包囲されるため、面ファスナー機能不使用時においてファスナー面への塵等の付着を確実に防止できることになる。
【0045】
さらに具体的には、第2シート状基部15bが第1シート状基部15aの中心に対して放射状に開閉できることにより、1つの第2シート状基部15bの形状は、すなわち、第1シート状基部15aの中心から周方向に拡開する略三角形を成している。したがって、係合面16からカバー面17を剥離する際には、係合面6とカバー面7との係合面積が小さくなり、前記固定部に加わる剥離時の負荷が分散され、固定部と被固定部位との固定状態に影響を与えないようにすることができる。特に、第1シート状基部15aの中心を起点に分割された第2シート状基部15bを外方向に開くようになるため、固定部と被固定部位との外周の固定状態に影響を与えないようにすることができる。
【実施例3】
【0046】
次に、実施例3に係る面ファスナー装置21に付き、
図7と
図8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0047】
図7は、面ファスナー装置21を図示しない所定の位置である壁等の被固定部位に強力に設置する手段を示している。本実施例におけるシート状基部25の第1シート状基部25aは、金属製の平板である安定部材22を内部に有し、第1シート状基部25aと安定部材22とには、シート状基部25の厚み方向に貫通した貫通孔20が平面視で上下に2つ形成されている。尚、貫通孔20は、第1シート状基部25aと安定部材22との平面視における上下2か所設けられているが、係合面26の周縁、若しくは係合面26の中央部等に1箇所、若しくは複数設けられてもよい。
【0048】
面ファスナー装置21は、所定の位置に位置決めされた後、貫通孔20にビス23等を挿通させ、所定の位置に向けて緊締することでビス23と所定の位置とに狭持されて強固に設置される。
【0049】
このことにより、例えばシート状基部25が、前記実施例のように弾性シート材、若しくは布のような柔軟な部材によって構成されていても、第1シート状基部25aに内蔵された安定部材22により、第1シート状基部25aが安定部材22の形状を維持されるため、係合面26が屈曲することなく所定の位置に設置されるようになる。また、貫通孔20が設けられていることにより、ビス23を容易に留めることができ、面ファスナー装置21に重い部材を係着する際には、面ファスナー装置21が所定の位置にビス23で留められることにより重い部材を強力に支持することができる。
【0050】
更に、
図8に示すように、貫通孔20は、シート状基部25の厚み方向に貫通して形成されており、貫通孔20の係合面26側には、ビス23のタップ部分より若干大きく形成された溝部24が穿設されている。
【0051】
面ファスナー装置21を所定の位置に設置する際には、貫通孔20にビス23を挿通することでビス23のタップ部分が溝部24に埋没するようになる。したがってビス23は、係合面26の使用状態時において係合面6上に突起しないようになり、係合面26の係合機能を低下させないようにできる。
【0052】
尚、本実施例において、安定部材22は、第1シート状基部25aに内蔵されているが、面ファスナー装置21と安定部材22とが一体型となっているものでもよく、また、安定部材22の素材は、金属に限らず例えば、木材やプラスチック材等の第1シート状基部25aより剛性があるものであればよい。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0054】
例えば、上記実施例において、対となる面ファスナー装置同士を重ね合わせることで係合されているが、係合面に係合可能な部材を直接取り付けるようにしてもよい。
【0055】
尚、第1シート状基部及び第2シート状基部は、上記実施例に限られるものではなく、所望の形状や数量に適宜設定してもよいが、第1シート状基部の係合面と第2シート状基部のカバー面とが係合している状態の際には、係合面が外部に露出しないことが好ましい。