特許第5924522号(P5924522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924522
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】蓄電素子、蓄電素子群
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/30 20060101AFI20160516BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20160516BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20160516BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20160516BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20160516BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20160516BHJP
【FI】
   H01M2/30 C
   H01M2/20 A
   H01M2/10 S
   H01G11/10
   H01G11/74
   H01G11/82
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-23651(P2012-23651)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-161692(P2013-161692A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】殿西 雅光
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−080963(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0143786(US,A1)
【文献】 特開2011−210720(JP,A)
【文献】 特開2010−161075(JP,A)
【文献】 特開2012−094481(JP,A)
【文献】 特開2012−146664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20− 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーに溶接されて蓄電素子群を構成する蓄電素子であって、
発電要素と、
前記発電要素を収容する外装容器と、
前記発電要素に電気的に接続されるとともに前記外装容器に固定される固定端子と、
前記バスバーに溶接される溶接部を有する可動端子と、
前記外装容器に固定され、前記固定端子と逆側から前記可動端子を押さえる部分を有して前記可動端子を前記固定端子側に付勢することにより前記可動端子と前記固定端子との電気的接続を維持しつつ前記可動端子を前記固定端子に対して変位可能に保持する端子カバーと、
を備える、蓄電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電素子であって、
前記可動端子は、前記固定端子と対向する面に沿う向きに変位可能である、蓄電素子。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電素子であって、
前記可動端子は、前記変位可能な向きにおいて、前記端子カバーとの間に隙間及び弾性体のうちの少なくとも一方を介して保持される、蓄電素子。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の蓄電素子であって、
前記可動端子と前記端子カバーとの間に配置され、前記可動端子を前記固定端子側に付勢する付勢部材と、
を備える、蓄電素子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の蓄電素子であって、
前記可動端子は、前記固定端子の前記可動端子から前記固定端子に向かう向きにおける全面を覆っている、蓄電素子。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の蓄電素子の複数個が前記バスバーに溶接されてなる、蓄電素子群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の電極端子周辺の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池等の蓄電素子が用いられている。蓄電素子は、電気自動車などの装置に搭載されて使用される際に、装置の規格に応じて、複数の蓄電素子をバスバーと呼ばれる接続板で相互に接続されて所望の規格を実現する。バスバーを蓄電素子の電極端子に接続する方法として、従来から、バスバーと電極端子とをネジにより締結するネジ締結接続方法と、バスバーを電極端子の溶接面に溶接する溶接接続方法等が用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−346774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電素子では、充電又は放電や周辺環境の変化による温度変化が生じると、電極端子やバスバー等の各部品の熱容量や熱膨張係数の違いによって、電極端子とバスバーとの接続部に歪みが生じることがあった。特に、溶接接続方法では、溶接時にバスバーを加熱するので、溶接後、バスバーの温度の低下により接続部に歪みが残留していることがあり、接続部に歪みが生じやすかった。接続部に歪みが生じ、電極端子の溶接面に沿った方向に歪みが生じた場合、装置の振動等により溶接外れが生じ、蓄電素子とバスバーとの間に接続不良が生じる。しかし、従来技術では、接続部の歪みに起因した上記の問題について、十分検討がされていなかった。
【0005】
本発明は、蓄電素子とバスバーとの間の接続不良を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電素子は、バスバーに溶接されて蓄電素子群を構成する蓄電素子であって、発電要素と、前記発電要素を収容する外装容器と、前記発電要素に電気的に接続されるとともに前記外装容器に固定される固定端子と、前記固定端子に当接して電気的に接続し、前記バスバーに溶接される溶接部を有するとともに、前記固定端子に対して変位可能な可動端子と、を備える。
【0007】
この蓄電素子では、可動端子が固定端子に対して変位可能に構成されているので、充電又は放電や周辺環境の変化による温度変化による歪み、及び溶接時におけるバスバーの加熱による残留歪み等によって可動端子に歪みが生じた場合でも、固定端子に対して可動端子が変位することでこの歪みを吸収することができ、蓄電素子とバスバーとの間の接続不良を抑制することができる。
【0008】
上記蓄電素子では、前記可動端子は、前記可動端子から前記固定端子に向かう第1向きと直交する第2向きに変位可能である構成としてもよい。この蓄電素子によれば、可動端子に第2方向の歪みが生じた場合でも、固定端子に対して可動端子が第2方向に変位することでこの歪みを吸収することができ、蓄電素子とバスバーとの間の接続不良を抑制することができる。
【0009】
上記蓄電素子では、前記可動端子は、前記第2向きにおいて隙間と弾性体との少なくとも一方を介して保持される構成としてもよい。この蓄電素子によれば、可動端子に第2方向の歪みが生じた場合でも、上記隙間及び上記弾性体の弾性変形によりこの歪みを吸収することができ、蓄電素子とバスバーとの間の接続不良を抑制することができる。
【0010】
上記蓄電素子では、前記外装容器に対して固定され、前記固定端子と逆側から前記可動端子に当接する部分を有する端子カバーを備える構成としてもよい。この蓄電素子によれば、端子カバーは可動端子との当接により第1向きと逆向きに変形し、変形量に応じた弾性力で可動端子を固定端子に向かう向きに付勢することができる。
【0011】
上記蓄電素子では、前記外装容器に対して固定され、前記固定端子と逆側から前記可動端子の少なくとも一部を覆う端子カバーと、前記可動端子と前記端子カバーとの間に配置され、前記可動端子及び前記端子カバーを付勢する付勢部材と、を備える構成としてもよい。この蓄電素子によれば、付勢部材は可動端子を第1向きに付勢するので、付勢部材により可動端子を固定端子に向かう向きに付勢することができる。
【0012】
上記蓄電素子では、前記可動端子は前記固定端子の前記第1向きにおける全面を覆っている構成としてもよい。この蓄電素子によれば、可動端子が固定端子の一方の全面を覆っているので、可動端子と固定端子との接触面積を比較的広く確保することができ、可動端子と固定端子との間に発生する接続抵抗が増大することを抑制することができる。
【0013】
本発明は、また、上記の蓄電素子を用いた蓄電素子群にも具現化される。本発明の蓄電素子群は、上記の蓄電素子の複数個が前記バスバーに溶接されてなる。この蓄電素子群によれば、充電又は放電や周辺環境の変化による温度変化、及び溶接時におけるバスバーの加熱等によって歪みが生じた場合でも、固定端子に対して可動端子が変位することでこの歪みを吸収することができ、蓄電素子とバスバーとの間の接続不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓄電素子とバスバーとの間の接続不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】組電池の斜視図
図2】単電池の展開図
図3】第1実施形態の電極ユニットの断面図
図4】第1実施形態の電極ユニットの展開図
図5】第2実施形態の電極ユニットの断面図
図6】第2実施形態の電極ユニットの展開図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、実施形態1について、図1図4を参照しつつ説明する。
1.組電池の構成
図1は、本実施形態における組電池12の斜視図である。本実施形態の組電池12は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載され、電気エネルギーで作動する動力源に電力を供給するものである。組電池12は、蓄電素子群の一例である。
【0017】
図1に示すように、組電池12には、複数の単電池14が一列に並んで配置されている。各単電池14には、お互いに異なる一対の正極端子22及び負極端子24が設けられている。各単電池14は、隣り合う単電池14の電極端子22、24の極性が交互に逆向きになるように配置されている。組電池12では、隣り合う単電池14のお互いに異なる電極端子22、24を導電性を有する板部材であるバスバー16で接続することで、直列に接続されている。単電池14は、蓄電素子の一例である。
【0018】
各単電池14では、電極端子22、24が突設されている。電極端子22、24の表面には、平面状の溶接面26が設けられており、この溶接面26を介してバスバー16に溶接されている。溶接面26は、溶接部の一例である。
【0019】
2.単電池の構成
次に、単電池14の構成について説明する。本実施形態の単電池は、繰り返し充放電可能な二次電池であり、より具体的にはリチウムイオン電池である。図2に示すように、単電池14は、電極ユニット20と、発電要素50と、クリップ60と、ケース62と、を含む。
【0020】
ケース62は、角形をしているとともに、上端が開放された上方開放型に構成され、このケース62に扁平型をなす発電要素50が収容されるとともに、電解液が充填される。ケース62の上端開口は、電極ユニット20を構成する長方形の板部材である蓋体64によって塞がれる。ケース62と蓋体64とが、外装容器の一例である。
【0021】
発電要素50は、正極板52と負極板54の間に図示しないセパレータを挟んだ状態で扁平型に巻回して構成される。正極板52と負極板54は、巻き解いた状態において、それぞれ巻回方向を長手方向とする帯状をなしている。正極板52は、帯状をなすアルミニウム箔の表面に正極活物質層が形成されたものであり、その長手方向に延びる一方の縁には、正極活物質層が形成されずにアルミニウム箔が露出した正極集電箔52Aが形成されている。また、負極板は、帯状をなす銅箔の表面に負極活物質層が形成されたものであり、その長手方向に54延びる一方の縁には、負極活物質層が形成されずに銅箔が露出した負極集電箔54Aが形成されている。
【0022】
正極板52と負極板54は、負極集電箔54Aがセパレータおよび負極板54よりも一端側に配され、また負極集電箔54Aがセパレータおよび正極板52よりも他端側に配されるように重ねられて巻回されている。これにより、発電要素50の幅方向における一端側には、正極集電箔52Aのみが積層して突設され、他端側には、負極集電箔54Aのみが積層して突設されている。
【0023】
正極集電箔52Aおよび負極集電箔54Aは、それぞれ上下方向に扁平型に巻回されており、そのうち上下方向に直線状に延びる側面部分が、後述する正極集電体28Aまたは負極集電体28Bに接続される接続部56とされている。正極集電箔52Aの接続部56Aには、正極端子22に接続される正極集電体28Aが接続され、負極集電箔54Aの接続部56Bには、負極端子24に接続される負極集電体28Bが接続される。各集電体28A、28Bは、それぞれ大きな電流容量が得られるように十分な厚さを有する金属板からなり、正極集電体28Aは、例えばアルミニウム合金板からなり、負極集電体28Bは、例えば銅板合金板からなる。
【0024】
集電体28A、28Bと集電箔52A、54Aは、クリップ60によって挟み込まれた状態で超音波溶接されることで電気的に接続される。クリップ60は、溶接される集電体28A、28B及び集電箔52A、54Aの材質と同等の抵抗値を有する材料からなり、正極側のクリップ60Aはアルミニウム合金からなり、負極側のクリップ60Bは銅合金からなる。
【0025】
(電極ユニットの構成)
図3に、図2のIII−III断面における電極ユニット20の断面図を示す。図3には、電極ユニット20の負極端子24における断面図を代表して示し、同一の構造を有する正極端子22における断面図を省略する。
【0026】
図3に示すように、電極ユニット20は、可動端子30と、端子カバー32と、リベット端子36と、上部パッキン38と、蓋体64と、下部パッキン40と、集電体28と、を含む。図4に、電極ユニット20として組み立てられる前の電極ユニット20を構成する各部材の斜視図を示す。
【0027】
図4に示すように、蓋体64には、電極端子22、24が形成される位置に、表面側へ突出した凸状部66が形成されている。凸状部66の中心には、リベット端子36の接続部36Bが挿通される貫通孔66Aが形成されている。各凸状部66の周囲には、表面側へと突出した4つの接続ピン68が、蓋体64と一体に設けられている。接続ピン68は、電極ユニット20を組み立てる際に、端子カバー32に設けられた接続孔32Aに裏面側から挿入された後にその表面を圧潰される(図3参照)。これによって、端子カバー32が蓋体64に固定される。裏面側は、第1向きの一例である。
【0028】
蓋体64の中央には、非復元型の安全弁70が設けられている。単電池14では、安全弁70が形成されていることで、加熱等により単電池14に収容された電解液が膨張した場合でも、ケース62及び蓋体64が破損することが抑制され、ケース62及び蓋体64の破損により生じた破片が当該単電池14の周辺に飛び散ることが抑制される。
【0029】
下部パッキン40は絶縁性を有し、その中央部40Aが表面側へ突出した凸形状をしている。下部パッキン40は、蓋体64の裏面側から凸状部66に挿入可能に形成されており、中央部40Aの中心には、リベット端子36の接続部36Bが挿通される貫通孔40Bが形成されている。
【0030】
集電体28は、1枚の金属板から成形されており、表面部42Aと接続部42Bを有する。接続部42Bは、上述したように、集電箔52A、54Aの接続部56に接続される。表面部42Aは、下部パッキン40の裏面側から中央部40Aに挿入可能に形成されており、その中心には、リベット端子36の接続部36Bが挿通される貫通孔42Cが形成されている。集電体28は、電極ユニット20を組み立てる際に、その中央部40Aが下部パッキン40を介して蓋体64の裏面側から凸状部66へと挿入される。
【0031】
上部パッキン38は絶縁性を有し、図3に示すように、その断面が略H状となっている。上部パッキン38は、中央の平面部38Aの中心にリベット端子36の接続部36Bが挿通される貫通孔38Bが形成されており、貫通孔38Bの周辺に内側壁38Cが形成されている。図3に示すように、内側壁38Cは、蓋体64の貫通孔66A、及び下部パッキン40の貫通孔40Bに挿通される。また、平面部38Aの周辺には、平面部38Aの表面側及び裏面側に亘って形成された表面側外側壁38D及び裏面側外側壁38Eが形成されている。裏面側に形成された裏面側外側壁38Eと平面部38Aとによって裏面側空間が形成されており、この裏面側空間に蓋体64の凸状部66が挿入される。また、表面側に形成された表面側外側壁38Dと平面部38Aとによって表面側空間が形成されており、この表面側空間にリベット端子36が挿入される。
【0032】
リベット端子36は導電性を有し、表面部36Aと接続部36Bを有する。表面部36Aは、上部パッキン38の表面側から表面側空間に挿入可能に形成されている。接続部36Bは、円筒形状をしており、表面部36Aから裏面側へと伸びている。接続部36Bは、電極ユニット20を組み立てる際に、上部パッキン38、蓋体64、下部パッキン40、集電体28に形成された各貫通孔に対してその表面側から挿入された後にその先端を圧潰される(図3参照)。これによって、リベット端子36は集電体28に接触して電気的に接続し、リベット端子36、上部パッキン38、下部パッキン40、集電体28の角部材が蓋体64に対して固定される。つまり、端子カバー32、リベット端子36、集電体28が蓋体64に固定され、端子カバー32がリベット端子36及び集電体28に対して固定される。集電体28及びリベット端子36は、固定端子の一例である。
【0033】
可動端子30は導電性を有し、その表面に溶接面26が形成されている。溶接面26が形成されている可動端子30の表面部30Aは、裏面部30Bよりも狭くなっており、表面部30Aと裏面部30Bの面積の差によって、表面部30Aの周辺に段差部30Cが形成されている。可動端子30は、導電グリス(図示されていない)を介してリベット端子36の表面部36A上に載置され、リベット端子36に電気的に接続する。図3に示すように、可動端子30の裏面部30Bの面積は、リベット端子36の表面部36Aの面積に略等しい。つまり、可動端子30は、リベット端子36の表面部36Aの全面を覆う。
【0034】
端子カバー32は絶縁性を有する樹脂製部材であり、その中央部44Aが表面側へ突出した凸形状をしており、中央部44Aの両側には、接続孔32Aが形成された周辺部44Bが形成されている。中央部44Aの中心には、可動端子30の表面部30Aが挿通される貫通孔32Bが形成されており、貫通孔32Bの周辺に残った中央部44Aによって、額縁部32Cが形成されている。つまり、端子カバー32の貫通孔32Bを挿通して額縁部32Cよりも表面側に突出した可動端子30の表面部30Aの表面により、溶接面26が形成されている。
【0035】
中央部44Aの周辺には、側壁32Dが形成されており、側壁32Dと中央部44Aとによって裏面側空間が形成されている。端子カバー32は、電極ユニット20を組み立てる際に、この裏面側空間に可動端子30、リベット端子36、上部パッキン38等が挿入された状態で蓋体64に固定される。
【0036】
この際、図3に示すように、端子カバー32の額縁部32Cが可動端子30の段差部30Cに表面側から当接し、表面側へと変形する。これによって、額縁部32Cには、変形量に応じた弾性力が生じ、可動端子30を裏面側に付勢する。この結果、可動端子30が端子カバー32によって保持される。
【0037】
図3に示すように、組み立てられた後の電極ユニット20では、水平方向において、可動端子30の表面部30Aと端子カバー32の額縁部32Cに矢印46で示す隙間が設けられている。また、可動端子30の裏面部30Bと上部パッキン38の表面側外側壁38Dに矢印48で示す隙間が設けられている。そのため、可動端子30は、端子カバー32の弾性力により裏面側に付勢されている状態で、リベット端子36に対して矢印46、48に示す隙間の範囲において水平方向に変位可能に構成されている。水平方向は、第2方向の一例である。
【0038】
可動端子30が水平方向に変位した場合、裏面側において当接するリベット端子36との間には導電グリスが塗布されており、可動端子30の水平方向における変位が抑制されない。また、表面側において当接する端子カバー32の額縁部32Cとの間の接触面積が比較的に狭いことから、可動端子30の変位に応じて端子カバー32の額縁部32Cと可動端子30の段差部30Cが水平方向に滑り、可動端子30の水平方向における変位が許容される。そのため、図3に示すように、可動端子30の溶接面26に溶接されるバスバー16が、充放電や周辺環境の変化による温度変化による歪み、及び溶接時におけるバスバーの加熱による残留歪み等によって矢印72で示す水平方向に変位した場合でも、リベット端子36に対して矢印76に示すように可動端子30をリベット端子36の表面に沿った水平方向に変位させることができる。
【0039】
なお、可動端子30が矢印46、48に示す隙間に亘って水平方向に変位し、可動端子30が端子カバー32や上部パッキン38に当接した場合には、端子カバー32及び上部パッキン38の表面側外側壁38Dが水平方向に多少の弾性変形することで、可動端子30が更に水平方向に変位することが許容される。なお、端子カバー32の材質としては、例えばPPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂などが用いられ、特にガラス繊維等が添付されていない非強化のものや、エラストマーが添付されたものが好ましい。
【0040】
3.本実施形態の効果
(1)本実施形態の単電池14では、電極ユニット20において、水平方向における可動端子30と端子カバー32の間、及び可動端子30と上部パッキン38との間に隙間が設けられており、可動端子30は、この隙間の範囲においてリベット端子36に対して水平方向に変位可能に構成されている。この単電池14によれば、充放電や周辺環境の変化による温度変化による歪み、及び溶接時におけるバスバー16の加熱による残留歪み等によって可動端子30に水平方向の歪みが生じている場合でも、上記隙間によりこの歪みを吸収することができ、単電池14とバスバー16との間の接続不良を抑制することができる。
【0041】
(2)本実施形態の単電池14では、端子カバー32の変形により生じる弾性力によって可動端子30を裏面側へ付勢するので、端子カバー32を、可動端子30を覆う部材として使用するとともに、可動端子30を付勢する部材としても使用することができ、電極ユニット20の構造を簡略化することができる。
【0042】
(3)本実施形態の単電池14では、可動端子30が集電体28に接続されるリベット端子36の表面部36Aの全面を覆うので、可動端子30とリベット端子36との接触面積を比較的広く確保することができ、可動端子30とリベット端子36との間に発生する接続抵抗が増大することを抑制することができる。
【0043】
(4)本実施形態の単電池14では、可動端子30を裏面側に付勢する端子カバー32の額縁部32Cが、溶接面26に対してバスバー16と逆側の裏面側に配置される。そのため、溶接面26を介して可動端子30とバスバー16とを溶接する際に、端子カバー32が溶接の邪魔となることがない。
【0044】
<実施形態2>
実施形態2を、図5、6を参照しつつ説明する。本実施形態の組電池は、単電池14の電極ユニット20の構造が実施形態1と異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0045】
1.電極ユニットの構成
図5に、電極ユニット20の断面図を示し、図6に、電極ユニット20として組み立てられる前の電極ユニット20を構成する各部材の斜視図を示す。本実施形態の電極ユニット20では、実施形態1に含まれる各部材に加え、バネ34が可動端子30の段差部30Cと端子カバー32の額縁部32Cの間に載置されている。バネ34は、付勢手段の一例である。
【0046】
端子カバー32の貫通孔32Bの周辺には、内側壁32Eが形成されている。図3に示すように、端子カバー32は、可動端子30を表面側から覆う一方、可動端子30に当接することがない。
【0047】
バネ34は、金属製の弾性部材であり、略四角形のリング状の金属板が垂直方向に折り曲げられて形成されており、折り曲げられることで垂直方向に所定の厚みを有する。バネ34は、図3に示すように、電極ユニット20を組み立てる際に、可動端子30の段差部30Cと端子カバー32の額縁部32Cの間に挟まれて垂直方向に圧縮される。これによって、バネ34には、変形量に応じた弾性力が生じ、端子カバー32を表面側に付勢するとともに、可動端子30を裏面側に付勢する。この結果、可動端子30が端子カバー32及びバネ34によって保持される。
【0048】
可動端子30は、バネ34の弾性力により裏面側に付勢されている状態で、矢印46、48に示す隙間の範囲において水平方向に変位可能に構成されている。可動端子30は、バネ34との間の接触面積が比較的に狭いことから、バネ34の弾性力により裏面側に付勢されている状態でバネ34に対して水平方向に滑り、可動端子30の水平方向における変位が許容される。そのため、図5に示すように、可動端子30の溶接面26に溶接されるバスバー16が、充放電や周辺環境の変化による温度変化による歪み、及び溶接時におけるバスバーの加熱による残留歪み等によって矢印82で示す水平方向に変位した場合でも、リベット端子36に対して矢印86に示すように可動端子30をリベット端子36の表面に沿った水平方向に変位させることができる。
【0049】
バネ34の材質としては、例えばりん青銅やバネ用ステンレス鋼などが用いられ、端子カバー32の材質としては、例えばガラス繊維等が30%〜40%程度添付されたPPS樹脂などが用いられる。
【0050】
2.本実施形態の効果
本実施形態の単電池14では、電極ユニット20を組み立てる際に変形するバネ34の弾性力によって可動端子30を裏面側へ付勢する。バネ34が端子カバー32と別体とされていることで、端子カバー32及びバネ34の材質を適宜選択することができ、例えば、適宜選択された端子カバー32を用いて、バネ34を所定の位置に維持することができる。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、蓄電素子の一例として二次電池の単電池14を示したが、これに限らず、蓄電素子は、電気化学現象を伴うキャパシタ等であってもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、可動端子30の裏面部30Bの面積が、リベット端子36の表面部36Aの面積に略等しい例を用いて説明を行ったが、これに限られない。可動端子30の裏面部30Bの面積が、リベット端子36の表面部36Aの面積よりもやや大きく形成されていてもよい。この場合でも、可動端子30によりリベット端子36の表面部36Aの全面を覆うことができ、可動端子30とリベット端子36との間に発生する接続抵抗が増大することを抑制することができる。また、可動端子30の裏面部30Bの面積が、リベット端子36の表面部36Aの面積よりもやや小さく形成されていてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、可動端子30と集電体28をリベット端子36を介して接続する例を用いて説明を行ったが、これに限られず、可動端子30と集電体28が直接接続されてもよい。この場合、可動端子30の裏面部30Bが集電体28の表面部42Aの全面を覆うように載置されることで、可動端子30と集電体28との間に発生する接続抵抗が増大することを抑制することができる。
【0054】
(4)上記実施形態では、可動端子30がリベット端子36上に載置される例を用いて説明を行ったが、これに限られず、可動端子30とリベット端子36の間にバネなどの弾性体が配置されていてもよい。当該弾性体が導電性を有する事で、可動端子30とリベット端子36とは、弾性体を介して電気的に接続される。
【0055】
(5)上記実施形態では、接続ピン68が端子カバー32に設けられた接続孔32Aに挿入される例を用いて説明を行った。この場合、接続孔32Aの内径は、接続ピン68の外径と略等しく形成されても良ければ、接続孔32Aの内径は、接続ピン68の外径よりも大きく形成されていてもよい。接続孔32Aの内径が、接続ピン68の外径よりも大きく形成されていることで、充放電や周辺環境の変化による温度変化による歪み、及び溶接時におけるバスバー16の加熱による残留歪み等が生じている場合に、端子カバー32を水平方向に変位可能とすることができる。
【0056】
(6)上記実施形態では、端子カバー32として樹脂製の端子カバーを用いて説明を行ったが、端子カバー32の材質は特に限定されない。同様に、バネ34として金属製の弾性部材を用いて説明を行ったが、バネ34の材質は特に限定されない。また、その形状も限定されず、例えばバネ34では、可動端子30の表面部30Aが円柱形をしている場合には、それにあわせて円形としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
12:組電池、14:単電池、16:バスバー、20:電極ユニット、22:電極端子(正極端子、負極端子)、26:溶接面、28:集電体、30:可動端子、32:端子カバー、34:バネ、36:リベット端子、38:上部パッキン、40:下部パッキン、50:発電要素、60:クリップ、62:ケース、64:蓋体、
図1
図2
図3
図4
図5
図6