特許第5924536号(P5924536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5924536金属用表面処理剤及び該表面処理剤で処理された金属材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924536
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】金属用表面処理剤及び該表面処理剤で処理された金属材
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/10 20060101AFI20160516BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20160516BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20160516BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20160516BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20160516BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20160516BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   C09D183/10
   C09D163/00
   C09D175/04
   C23C26/00 A
   C09D5/08
   B32B15/08 G
   B05D5/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-195001(P2012-195001)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-51549(P2014-51549A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】松沢 博
(72)【発明者】
【氏名】大村 亮祐
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−024577(JP,A)
【文献】 特開平09−025455(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/011943(WO,A1)
【文献】 特開2011−246582(JP,A)
【文献】 特開平10−067844(JP,A)
【文献】 特開平10−025450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/10
B05D 5/00
B32B 15/08
C09D 5/08
C09D 163/00
C09D 175/04
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)及び/または一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基及び/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)と、アルコール性水酸基を有するビニル系重合体セグメント(a2)が、一般式(3)で表される結合により結合した複合樹脂(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有する金属用表面処理剤であって、前記複合樹脂(A)の固形分中の前記ポリシロキサンセグメント(a1)の質量割合が20〜70質量%であり、前記複合樹脂(A)の固形分のエポキシ当量が900〜17000g/eqであり、前記ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、前記ポリイソシアネート(B)の質量割合が全固形分中の5〜50質量%であることを特徴とする金属用表面処理剤。
【化1】
【化2】
(一般式(1)及び(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、−R−CH=CH、−R−C(CH)=CH、−R−O−CO−C(CH)=CH、及び−R−O−CO−CH=CHからなる群から選ばれる1つの重合性二重結合を有する基(但し、Rは単結合または炭素原子数1〜6のアルキレン基を表す。)、炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基、アリール基、または炭素原子数が7〜12のアラルキル基を表す。)
【化3】
(一般式(3)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成するものとする)
【請求項2】
請求項1に記載の金属用表面処理剤で処理されたことを特徴とする金属材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の表面処理に用いることのできる金属用表面処理剤に関する。さらに詳しくは、金属材との密着性に優れ、金属材表面に優れた、耐久性、防錆性、加工性等を付与する金属用表面処理剤、及び該表面処理剤で処理された金属材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建材、自動車、家電、変圧器、モーター等金属加工物には、電気メッキや溶融亜
鉛メッキした上に更にクロム処理した一次防錆処理用クロム処理鋼板が使用されている。
このクロム処理は鋼板の防錆性の向上の為に行われるが、使用されるクロム酸塩等は環境
影響、健康障害などが指摘されており、これらのクロム処理をしていないノンクロム処理
鋼板の開発が求められている。
【0003】
一方、加工性、打抜性、防錆性等の向上から、様々な有機樹脂、例えばアクリル樹脂、
ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂等を使用した表面処理剤も使用されている
。しかし、これら有機樹脂単独の表面処理剤では防錆性が不足するため、上記クロム処理
剤と組み合わせて使用される事が通常であり、やはりノンクロム系への移行が求められて
いる。
【0004】
これらの要求に対し、例えば、有機樹脂と鱗片状シリカ粒子、更には非クロム系防錆剤
よりなるノンクロム系の鋼板用表面処理剤に関する技術が報告されている(例えば、特許
文献1参照。)。
【0005】
しかし、前記特許文献1に記載されている表面処理剤は、鱗片状シリカを含有する為、
組成物としての安定性に問題があり、また防錆性に関しても不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−253462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、クロム酸塩等のクロム系化合物の添加を必要とせず
、金属材に優れた密着性を示し、耐久性、防錆性、加工性等に優れる、ノンクロム系の金属用表面処理剤、及び、該表面処理剤で処理された金属材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究の結果、エポキシ基を有するポリシロキサンセグメントとビニル系重合体セグメントとが特定の結合により結合した複合樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネートとを含有する2液型の金属用表面処理剤であって、複合樹脂中のポリシロキサンセグメントの質量割合、複合樹脂のエポキシ当量、ビニル系重合体セグメント中の水酸基量、及びポリイソシアネートの質量割合が特定の範囲内である金属用表面処理剤は、ノンクロム系であっても、金属材との密着性に優れ、金属材に優れた、耐久性、防錆性、加工性等を付与することが可能で、該表面処理剤を用いて処理された金属材は、耐久性、防錆性、加工性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(1)及び/または一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基及び/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)と、アルコール性水酸基を有するビニル系重合体セグメント(a2)が、一般式(3)で表される結合により結合した複合樹脂(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有する金属用表面処理剤であって、前記複合樹脂(A)の固形分中の前記ポリシロキサンセグメント(a1)の質量割合が20〜70質量%であり、前記複合樹脂(A)の固形分のエポキシ当量が900〜17000g/eqであり、前記ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、前記ポリイソシアネート(B)の質量割合が全固形分中の5〜50質量%であることを特徴とする金属用表面処理剤を提供する。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
(一般式(1)及び(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、−R−CH=CH、−R−C(CH)=CH、−R−O−CO−C(CH)=CH、及び−R−O−CO−CH=CHからなる群から選ばれる1つの重合性二重結合を有する基(但し、Rは単結合または炭素原子数1〜6のアルキレン基を表す。)、炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基、アリール基、または炭素原子数が7〜12のアラルキル基を表す。)
【0013】
【化3】
(一般式(3)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成するものとする)
【0014】
また、本発明は、前記金属用表面処理剤で処理されたことを特徴とする金属材を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属用表面処理剤は、容易に、耐久性、防錆性、加工性に優れる表面処理を金属材に施すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の金属用表面処理剤は、前記一般式(1)及び/または前記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基及び/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)と、アルコール性水酸基を有するビニル系重合体セグメント(a2)が、前記一般式(3)で表される結合により結合した複合樹脂(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有する金属用表面処理剤であって、前記複合樹脂(A)の固形分中の前記ポリシロキサンセグメント(a1)の質量割合が20〜70質量%であり、前記複合樹脂(A)の固形分のエポキシ当量が900〜17000g/eqであり、前記ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、前記ポリイソシアネート(B)の質量割合が全固形分中の5〜50質量%であるものである。
【0017】
(複合樹脂(A))
本発明で使用する複合樹脂(A)は、前記一般式(1)及び/または前記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基及び/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)(以下単にポリシロキサンセグメント(a1)と称す)と、アルコール性水酸基を有するビニル系重合体セグメント(a2)(以下単にビニル系重合体セグメント(a2)と称す)とが、前記一般式(3)で表される結合により結合した複合樹脂である。
【0018】
後述のポリシロキサンセグメント(a1)が有するシラノール基及び/または加水分解性シリル基と、後述のビニル系重合体セグメント(a2)が有するシラノール基及び/または加水分解性シリル基とが脱水縮合反応して、前記一般式(3)で表される結合が生じる。従って前記一般式(3)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成するものとする。
複合樹脂(A)の形態は、例えば、前記ポリシロキサンセグメント(a1)が前記重合体セグメント(a2)の側鎖として化学的に結合したグラフト構造を有する複合樹脂や、前記重合体セグメント(a2)と前記ポリシロキサンセグメント(a1)とが化学的に結合したブロック構造を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0019】
(複合樹脂(A) ポリシロキサンセグメント(a1))
本発明におけるポリシロキサンセグメント(a1)は、前記一般式(1)及び/または前記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基及び/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有すセグメントである。
【0020】
(一般式(1)及び/または一般式(2)で表される構造単位)
具体的には、前記一般式(1)及び(2)におけるR、R及びRは、それぞれ独立して、−R−CH=CH、−R−C(CH)=CH、−R−O−CO−C(CH)=CH、及びR−O−CO−CH=CHからなる群から選ばれる1つの重合性二重結合を有する基(但しRは単結合または炭素原子数1〜6のアルキレン基を表す。)、炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子が3〜8のシクロアルキル基、アリール基または炭素原子が7〜12のアラルキル基を表す。
【0021】
前記Rにおける前記炭素原子数が1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基、1−メチルブチレン基、2−メチルブチレン基、1,2−ジメチルプロピレン基、1−エチルプロピレン基、ヘキシレン基、イソヘシレン基、1−メチルペンチレン基、2−メチルペンチレン基、3−メチルペンチレン基、1,1−ジメチルブチレン基、1,2−ジメチルブチレン基、2,2−ジメチルブチレン基、1−エチルブチレン基、1,1,2−トリメチルプロピレン基、1,2,2−トリメチルプロピレン基、1−エチル−2−メチルプロピレン基、1−エチル−1−メチルプロピレン基等が挙げられる。中でもRは、原料の入手の容易さから単結合または炭素原子数が2〜4のアルキレン基が好ましい。
【0022】
また、前記炭素原子数が1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。
また、前記炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
また、前記炭素原子数が7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0023】
また、前記R、R及びRの少なくとも1つが前記重合性二重結合を有する基であると、活性エネルギー線等により硬化させることができ、活性エネルギー線、並びに、シラノール基及び/または加水分解性シリル基の縮合反応による塗膜の架橋密度の向上という2つの硬化機構により、より優れた耐久性、耐擦り傷性を有する硬化塗膜を形成できる点から好ましい。
前記重合性二重結合を有する基は、ポリシロキサンセグメント(a1)中に2つ以上存在することが好ましく、3〜200個存在することがより好ましく、3〜50個存在することが更に好ましく、より耐擦り傷性に優れた塗膜を得ることができる。具体的には、前記ポリシロキサンセグメント(a1)中の重合性二重結合の含有率が3〜35質量%であれば、所望の耐擦り傷性を得ることができる。尚、ここでいう重合性二重結合とは、ビニル基、ビニリデン基もしくはビニレン基のうち、フリーラジカルによる生長反応を行うことができる基の総称である。また、重合性二重結合の含有率とは、当該ビニル基、ビニリデン基もしくはビニレン基のポリシロキサンセグメント中における質量%を示すものである。
重合性二重結合を有する基としては、当該ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基を含有してなる公知の全ての官能基を使用することができるが、中でも−R−C(CH)=CHや−R−O−CO−C(CH)=CHで表される(メタ)アクリロイル基は、紫外線硬化の際の反応性に富むことや、後述のビニル系重合体セグメント(a2)との相溶性が良好となる。
【0024】
前記一般式(1)及び/または前記一般式(2)で表される構造単位は、ケイ素の結合手のうち2または3つが架橋に関与した三次元網目状のポリシロキサン構造単位である。三次元網目構造を形成しながらも密な網目構造を形成しないので、ゲル化等を生じることもなく保存安定性も良好となる。
【0025】
(複合樹脂(A) エポキシ基)
本発明における複合樹脂(A)を構成する前記ポリシロキサンセグメント(a1)はエポキシ基を有し、複合樹脂(A)の固形分のエポキシ当量は900〜17000g/eqである。2500〜6000g/eqであると、長期保存安定性に優れるため、特に好ましい。固形分のエポキシ当量が17000g/eqより大きい場合、複合樹脂(A)はゲル化しやすくなり、長期に保存できない。また、900g/eqより小さい場合、表面処理剤として硬化性に劣る。
【0026】
ポリシロキサンセグメント(a1)にエポキシ基を導入するには、後述する複合樹脂(A)の製造時に、エポキシ基を有するシラン化合物を使用すればよい。エポキシ基を有するシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジアセトキシメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエトキシエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジアセトキシエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルジアセトキシイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシエトキシジメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシジメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシジエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシエトキシジエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシジエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシジイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルエトキシジイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシジイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシエトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシメトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシエトキシメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシメチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシエトキシエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシメトキシエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシエトキシエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシエチルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシエチルシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシメトキシイソプロピルシラン、γ−グリシドキシプロピルアセトキシエトキシイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシイソプロピルシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシイソプロピルシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
(複合樹脂(A) シラノール基及び/または加水分解性シリル基)
本発明においてシラノール基とは、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するケイ素含有基である。該シラノール基は具体的には、前記一般式(1)及び/または前記一般式(2)で表される構造単位の、結合手を有する酸素原子が水素原子と結合して生じたシラノール基であることが好ましい。
【0028】
また本発明において加水分解性シリル基とは、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するケイ素含有基であり、具体的には、例えば、一般式(4)で表される基が挙げられる。
【0029】
【化4】
【0030】
(一般式(4)中、Rはアルキル基、アリール基またはアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基及びアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる加水分解性基である。またbは0〜2の整数である。)
【0031】
前記Rにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。
また、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
また、アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0032】
前記Rにおいて、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
また、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられる。
また、アシロキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、フェニルアセトキシ基、アセトアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等が挙げられる。
また、アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
また、アルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、2−ペテニルオキシ基、3−メチル−3−ブテニルオキシ基、2−ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
前記Rで表される加水分解性基が加水分解されることにより、前記一般式(4)で表される加水分解性シリル基はシラノール基となる。加水分解性に優れることから、中でも、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
また前記加水分解性シリル基は具体的には、前記一般式(1)及び/または前記一般式(2)で表される構造単位の、結合手を有する酸素原子が前記加水分解性基と結合もしくは置換されている加水分解性シリル基であることが好ましい。
【0034】
前記シラノール基や前記加水分解性シリル基は、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の前記加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行するので、得られる塗膜のポリシロキサン構造の架橋密度が高まり、耐久性などに優れた塗膜を形成することができる。
また、前記シラノール基や前記加水分解性シリル基を含むポリシロキサンセグメント(a1)と後述のビニル系重合体セグメント(a2)とを、前記一般式(3)で表される結合を介して結合させる際に使用する。
【0035】
また、ポリシロキサンセグメント(a1)として、R、R及びRの少なくとも1つが前記重合性二重結合を有する基である構造は、例えば以下の構造が挙げられる。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
本発明において、前記複合樹脂(A)の固形分中の前記ポリシロキサンセグメント(a1)の質量割合は、20〜70質量%であることが重要であり、これにより、表面処理剤として、優れた、耐久性、密着性、防錆性を発現させることが可能となる。
【0046】
(複合樹脂(A) ビニル系重合体セグメント(a2))
本発明におけるビニル系重合体セグメント(a2)は、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族系ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体等のビニル重合体セグメントである。
【0047】
アクリル系重合性セグメントは、汎用の(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合させて得られる。(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定はなく、またビニルモノマーも共重合可能である。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルピロリドン等の3級アミド基含有モノマー類等が挙げられる。
【0048】
前記モノマーを共重合させる際の重合方法、溶剤、あるいは重合開始剤にも特に限定はなく、公知の方法によりビニル系重合体セグメント(a2)を得ることができる。例えば、塊状ラジカル重合法、溶液ラジカル重合法、非水分散ラジカル重合法等の種々の重合法により、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の重合開始剤を使用してビニル系重合体セグメント(a2)を得ることができる。
【0049】
前記ビニル系重合体セグメント(a2)の数平均分子量としては、前記複合樹脂(A)を製造する際の増粘やゲル化を防止でき、且つ耐久性、加工性に優れる塗膜を形成できる点から、数平均分子量(以下、「Mn」と略記する)に換算して500〜200,000の範囲であることが好ましく、700〜100,000の範囲がより好ましく、1,000〜50,000の範囲が特に好ましい。
【0050】
また前記ビニル系重合体セグメント(a2)は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)と前記一般式(3)で表される結合により結合した複合樹脂(A)とするために、ビニル系重合体セグメント(a2)中の炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する。これらのシラノール基及び/または加水分解性シリル基は、後述の複合樹脂(A)の製造において前記一般式(3)で表される結合となるために、最終生成物である複合樹脂(A)中のビニル系重合体セグメント(a2)には殆ど存在しない。しかしながらビニル系重合体セグメント(a2)にシラノール基及び/または加水分解性シリル基が残存していても問題はなく、前記重合性二重結合を有する基の硬化反応による塗膜形成の際に、該硬化反応と平行して、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の前記加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行するので、得られる塗膜のポリシロキサン構造の架橋密度が高まり、耐久性などに優れた塗膜を形成することができる。
【0051】
炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)は、具体的には、前記汎用モノマー、及び、炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系モノマーを共重合させて得られる。
炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。中でも、加水分解反応が容易に進行し、また反応後の副生成物を容易に除去できることからビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0052】
(ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価)
複合樹脂(A)とポリイソシアネート(B)とを含有する硬化性樹脂組成物を硬化させるため、前記ビニル系重合体セグメント(a2)はアルコール性水酸基を有する。前記ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が50〜200mgKOH/gであることがポリイソシアネート(B)と反応して常温硬化するため重要であり、好ましくは90〜200mgKOH/gの範囲である。水酸基価が50mgKOH/gより少ない場合、ポリイソシアネート(B)と反応しにくくなるため常温硬化せず、水酸基価が200mgKOH/gより多い場合は、複合樹脂(A)の合成時にゲル化してしまうため、好ましくない。
【0053】
アルコール性水酸基を有するビニル系重合体セグメント(a2)は、アルコール性水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させて得ることができる。アルコール性水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、ポリエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、「プラクセルFM」もしくは「プラクセルFA」(ともにダイセル化学工業株式会社のカプロラクトン付加モノマー)等の各種α、β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、またはこれらとε−カプロラクトンとの付加物、等が挙げられる。中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが、反応が容易であり好ましい。
【0054】
(複合樹脂(A)の製造方法)
本発明で用いる複合樹脂(A)は、具体的には下記(方法1)〜(方法3)に示す方法で製造する。
【0055】
(方法1)前記汎用の(メタ)アクリルモノマー、及び、前記炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系モノマーを共重合させて炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)を得る。これとシラン化合物とを混合し、加水分解縮合反応させる。このとき、生成するポリシロキサン中にエポキシ基を導入するために、シラノール基及び/または加水分解性シリル基とエポキシ基とを併有するシラン化合物を同時に使用する。また、他に導入したい基がある場合は、導入したい基を有するシラン化合物を併用する。例えば、アリール基を導入する場合は、アリール基とシラノール基及び/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物を適宜併用すればよい。また重合性二重結合を有する基を導入する場合は、重合性二重結合を有する基とシラノール基及び/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物を併用すればよい。
該方法においては、シラン化合物のシラノール基あるいは加水分解性シリル基と、炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)が有するシラノール基及び/または加水分解性シリル基とが加水分解縮合反応し、前記エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)が形成されると共に、前記エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とが前記一般式(3)で表される結合により複合化された複合樹脂(A)が得られる。
【0056】
(方法2)方法1と同様にして、炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)を得る。一方、シラン化合物(エポキシ基を導入するために、シラノール基及び/または加水分解性シリル基とエポキシ基とを併有するシラン化合物を使用する。他に導入したい基がある場合は、導入したい基を有するシラン化合物を併用する。)を加水分解縮合反応させ、エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)を得る。そして、ビニル系重合体セグメント(a2)が有するシラノール基及び/または加水分解性シリル基と、エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)とが有するシラノール基及び/または加水分解性シリル基とを加水分解縮合反応をさせる。
【0057】
(方法3)方法1と同様に、炭素原子に直接結合したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するビニル系重合体セグメント(a2)を得る。一方、方法2と同様にして、エポキシ基を有していても有してなくてもよいポリシロキサンセグメントを得る。更に、前記ポリシロキサンセグメント中にエポキシ基を導入するために、シラノール基及び/または加水分解性シリル基とエポキシ基を併有するシラン化合物、及び、他に導入したい基がある場合は、必要に応じて、導入したい基を有するシラン化合物等とを混合し、加水分解縮合反応させ、エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)を得る。
【0058】
また、重合性二重結合を有する基を導入する際に使用する重合性二重結合を有する基とシラノール基及び/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等を併用する。中でも、加水分解反応が容易に進行し、また反応後の副生成物を容易に除去できることからビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0059】
また、その他、前記(方法1)〜(方法3)で使用する汎用のシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン等の各種オルガノトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン等の各種ジオルガノジアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等のクロロシラン類が挙げられる。中でも、加水分解反応が容易に進行し、また反応後の副生成物を容易に除去することが可能なオルガノトリアルコキシシランやジオルガノジアルコキシシランが好ましい。
【0060】
また、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランもしくはテトラn−プロポキシシランなどの4官能アルコキシシラン化合物や該4官能アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。前記4官能アルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物を併用する場合には、前記ポリシロキサンセグメント(a1)を構成する全ケイ素原子に対して、該4官能アルコキシシラン化合物の有するケイ素原子が、20モル%を超えない範囲となるように併用することが好ましい。
【0061】
また、前記シラン化合物には、ホウ素、チタン、ジルコニウムあるいはアルミニウムなどのケイ素原子以外の金属アルコキシド化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。例えば、ポリシロキサンセグメント(a1)を構成する全ケイ素原子に対して、上述の金属アルコキシド化合物の有する金属原子が、25モル%を超えない範囲で、併用することが好ましい。
【0062】
前記(方法1)〜(方法3)における加水分解縮合反応は、前記加水分解性基の一部が水などの影響で加水分解され水酸基を形成し、次いで該水酸基同士、あるいは該水酸基と加水分解性基との間で進行する縮合反応をいう。該加水分解縮合反応は、公知の方法で反応を進行させることができるが、前記製造工程で水と触媒とを供給することで反応を進行させる方法が簡便で好ましい。
【0063】
使用する触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸類;p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸等の有機酸類;水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等の無機塩基類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン酸エステル類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール等の各種の塩基性窒素原子を有する化合物類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩等の各種の4級アンモニウム塩類であって、対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫またはステアリン酸錫など錫カルボン酸塩等が挙げられる。触媒は単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0064】
前記触媒の添加量に特に限定はないが、一般的には前記シラノール基または加水分解性シリル基を有する各々の化合物全量に対して、0.0001〜10質量%の範囲で使用することが好ましく、0.0005〜3質量%の範囲で使用することがより好ましく、0.001〜1質量%の範囲で使用することが特に好ましい。
【0065】
また、供給する水の量は、前記シラノール基または加水分解性シリル基を有する各々の化合物が有するシラノール基または加水分解性シリル基1モルに対して0.05モル以上が好ましく、0.1モル以上がより好ましく、特に好ましくは、0.5モル以上である。
これらの触媒及び水は、一括供給でも逐次供給であってもよく、触媒と水とを予め混合したものを供給しても良い。
【0066】
前記(方法1)〜(方法3)における加水分解縮合反応を行う際の反応温度は、0℃〜150℃の範囲が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃の範囲内である。また、反応の圧力としては、常圧、加圧下または減圧下の、いずれの条件においても行うことができる。また、前記加水分解縮合反応において生成しうる副生成物であるアルコールや水は、必要に応じ蒸留などの方法により除去してもよい。
【0067】
前記(方法1)〜(方法3)における各々の化合物の仕込み比率は、所望とする本発明で使用する複合樹脂(A)の構造により適宜選択される。中でも、得られる塗膜の、耐久性、密着性、防錆性が優れることから、ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が20〜70質量%となるよう複合樹脂(A)を得るのが重要であり、30〜70質量%が好ましい。
【0068】
前記(方法1)〜(方法3)において、ポリシロキサンセグメントとビニル系重合体セグメントをブロック状に複合化する具体的な方法としては、ポリマー鎖の片末端あるいは両末端のみに前記したシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有するような構造のビニル系重合体セグメントを中間体として使用し、例えば、(方法1)であれば、当該ビニル系重合体セグメントに、シラン化合物を混合し、加水分解縮合反応させる方法が挙げられる。
【0069】
一方、前記(方法1)〜(方法3)において、ビニル系重合体セグメントに対してポリシロキサンセグメントをグラフト状に複合化させる具体的な方法としては、ビニル系重合体セグメントの主鎖に対し、前記したシラノール基及び/または加水分解性シリル基をランダムに分布させた構造を有するビニル系重合体セグメントを中間体として使用し、例えば、(方法2)であれば、当該ビニル系重合体セグメントが有するシラノール基及び/または加水分解性シリル基とシラン化合物とを加水分解縮合反応をさせる方法を挙げることができる。
【0070】
(ポリイソシアネート(B))
本発明における金属用表面処理剤は、前記複合樹脂(A)とポリイソシアネート(B)を含有する。このとき、前記複合樹脂(A)を構成する前記ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価は50〜200mgKOH/gであることが重要である。また、ポリイソシアネート(B)の質量割合は、本発明の金属用表面処理剤の全固形分中の5〜50質量%であることが重要である。ポリイソシアネートを該範囲含有させることで、優れた、耐久性、加工性を発現させることができる。
【0071】
使用するポリイソシアネート(B)としては特に限定はなく公知のものを使用することができる。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;メタ−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネート等のアラルキルジイソシアネート類を主原料とするポリイソシアネート類;テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と略す)、2,2,4−(または、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソイシアネート、リジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3−ビス(ジイソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。中でも、耐久性の観点から脂肪族ポリイソシアネートが特に好適である。
【0072】
脂肪族ジイソシアネートから得られる脂肪族ポリイソシアネートとしては、アロファネート型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート及びイソシアヌレート型ポリイソシアネートが挙げられるが、いずれも好適に使用することができる。
【0073】
なお、前記したポリイソシアネートとしては、種々のブロック剤でブロック化された、いわゆるブロックポリイソシアネート化合物を使用することもできる。ブロック剤としては、例えばメタノール、エタノール、乳酸エステル等のアルコール類;フェノール、サリチル酸エステル等のフェノール性水酸基を有する化合物類;ε−カプロラクタム、2−ピロリドン等のアマイド類;アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物類等を使用することができる。
【0074】
上記の各種ポリイソシアネートは、単独で用いても、複数を組み合せて用いてもかまわない。
【0075】
前記ポリイソシアネート中のイソシアネート基は、5〜50質量%であることが、得られる硬化塗膜の加工性の点から好ましい。前記ポリイソシアネート中のイソシアネート基が50%を超えて多い場合、ポリイソシアネートの分子量が小さくなり、応力緩和による加工性が発現しなくなるおそれがある。ポリイソシアネートと系中の水酸基(これは、前記ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基や後述のアルコール性水酸基を有する前記活性エネルギー線硬化性モノマー中の水酸基である)との反応は、特に加熱等は必要なく、室温に放置することで徐徐に反応していく。また必要に応じて、80℃で数分間〜数時間(20分〜4時間)加熱して、アルコール性水酸基とイソシアネートの反応を促進してもよい。その場合は、必要に応じて公知のウレタン化触媒を使用してもよい。ウレタン化触媒は、所望する反応温度に応じて適宜選択する。
【0076】
(長期保存安定性と塗膜物性)
本発明における金属用表面処理剤は、前記複合樹脂(A)の固形分中の前記ポリシロキサンセグメント(a1)の質量割合が20〜70質量%であり、前記複合樹脂(A)の固形分のエポキシ当量が900〜17000g/eqであり、前記ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が50〜200mgKOH/gであり、前記ポリイソシアネート(B)の質量割合が全固形分中の5〜50質量%であるときに、複合樹脂(A)の保存安定性に優れ、表面処理剤として、優れた、耐久性、密着性、加工性、防錆性を発現させることが可能となる。
【0077】
前記複合樹脂(A)の固形分のエポキシ当量が900g/eqより小さい場合には、表面処理剤として硬化性に劣る。一方、固形分のエポキシ当量が17000g/eqより大きい場合には、複合樹脂(A)の長期保存安定性が保持されない。
【0078】
また、ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が50mgKOH/gより小さい場合には、硬化塗膜にしたときの架橋密度が不十分となり、その硬化塗膜は十分に、耐久性を有さない。一方、ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が200mgKOH/gより大きい場合には、ビニル系重合体セグメント(a2)の重合中にゲル化が起こり、複合樹脂を得ることができない。
【0079】
以上より、固形分のエポキシ当量が900〜17000g/eqの範囲内にある場合には、複合樹脂(A)の長期保存安定性と、表面処理剤として硬化性が得られる。同様に、ビニル系重合体セグメント(a2)の水酸基価が50〜200mgKOH/gの範囲内にある場合、その硬化塗膜は優れた耐久性を有することとなる。
【0080】
(硬化方法)
本発明の金属用表面処理剤は、前記複合樹脂(A)とポリイソシアネート(B)とを混合した後、室温で1〜10日間程度、より好ましくは3〜10日間程度静置し、乾燥することによって、実用性の高い硬化塗膜を得ることができる。
【0081】
あるいは、より速い硬化が望まれる場合には、80〜250℃程度の温度範囲内で、30秒から2時間程度の間、焼付けを行うことによっても、実用性の高い硬化塗膜を得ることが可能である。
【0082】
(その他の配合物)
本発明の金属用表面処理剤は、分散液の固形分量や粘度を調整する目的として、分散媒を使用してもよい。本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、上記の有機溶剤や液状有機ポリマーが挙げられる。
【0083】
また、本発明の金属用表面処理剤は常温硬化が可能であるが、各種触媒を添加して熱硬化を行ってもかまわない。アルコール性水酸基とイソシアネートとのウレタン化反応との反応温度、反応時間等を考慮して、各々の触媒を選択することが好ましい。
また、熱硬化性樹脂を併用することも可能である。熱硬化性樹脂としては、ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、シリコン樹脂あるいはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0084】
その他、必要に応じて、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、または可塑剤等の種々の添加剤等を使用することもできる。
【0085】
(基材への塗装と硬化)
【0086】
このような本発明の金属用表面処理剤は、例えば、金属材表面に直接塗布し硬化させることにより、耐久性、密着性、防錆性、加工性に優れる金属材が容易に得られる。
【0087】
本発明の金属用表面処理剤を用いて形成される塗膜の膜厚は、特に制限はないが、0.1〜100μmであることが好ましく、0.3〜50μmであることがより好ましく、0.3〜30μmであることが特に好ましい。前記範囲内の膜厚であれば、硬化塗膜に生じうるクラックを抑制でき、優れた防錆性を有する硬化塗膜を形成することができる。
【0088】
金属材に本発明の金属用表面処理剤を塗布する方法としては、例えば、ローラー塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法、フロー・コーター塗装法、ロール・コーター塗装法、刷毛塗り法、電着塗装法などの各種の塗装方法を適用することが可能である。
【0089】
前記塗装方法により鋼板表面に本発明の金属用表面処理剤を塗布した後、常温で1〜10日程度放置することや、60〜600℃の温度範囲で10秒間〜2時間程度、好ましくは80〜250℃の温度範囲で30秒間〜2時間加熱することにより、耐久性、密着性、防錆性、加工性等に優れた塗膜を有する金属材を得る。
【実施例】
【0090】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。
【0091】
(合成例1:ポリシロキサン(a−1−1)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロ−ト、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と略記する。) 1417.0質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「GPTMS」と略記する) 83.0質量部を仕込んで、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、60℃まで昇温した。次いで、「Phoslex A−4」(堺化学(株)製のノルマルブチルアシッドホスフェート) 0.20質量部と脱イオン水 211.1質量部からなる混合物を5分間で滴下した。滴下終了後、反応容器中を80℃まで昇温し、4時間攪拌することにより加水分解縮合反応を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物中に含まれるメタノール及び水を、1〜30キロパスカル(kPa)の減圧下、60℃の条件で除去することにより、数平均分子量が1000で、有効成分が75.2%であるポリシロキサン(a−1−1) 1000質量部を得た。
【0092】
尚、「有効成分」とは、使用したシランモノマーのメトキシ基が全て加水分解縮合反応した場合の理論収量(質量部)を、加水分解縮合反応後の実収量(質量部)で除した値、即ち、(シランモノマーのメトキシ基が全て加水分解縮合反応した場合の理論収量(質量部)/加水分解縮合反応後の実収量(質量部))の式により算出したものである。
【0093】
また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、装置として、Shodex GPC SYSTEM−21(昭和電工(株)製)を、GPCカラムとして、Shodex Asahipak GF−7M HQ(昭和電工(株)製)を、GPC溶媒として20mM LiBrジメチルホルムアミド溶液を用いた。
【0094】
(合成例2〜7:ポリシロキサン(a−1−2)〜(a−1−7)の合成)
下記表1に示す組成に変更した以外は合成例1と同様に操作することにより、ポリシロキサン(a−1−2)〜(a−1−7)をそれぞれ1000質量部得た
【0095】
上記で得られたポリシロキサン(a−1−1)〜(a−1−7)の組成及び性状値を表1に示す。
【0096】
【表1】
GPMDMS:γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
EpCHETMS:β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【0097】
(合成例8:ビニル系重合体(a−2−1)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」と略記する。) 23.2質量部、ジメチルジメトキシシラン(以下、「DMDMS」と略記する) 28.0質量部、酢酸n−ブチル 348.8質量部を初期溶剤として投入し、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、95℃まで昇温した。次いで、モノマーとして、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略記する。) 125.2質量部、n−ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と略記する。) 74.4質量部、n−ブチルアクリレート(以下、「BA」と略記する。) 91.6質量部、メタクリル酸(以下、「MAA」と略記する。) 4.0質量部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「MPTMS」と略記する。) 12.0質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」と略記する。) 92.8質量部、酢酸n−ブチル 40.0質量部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、「TBPOEH」と略記する。) 30.0質量部を混合し、上記反応容器に対し、95℃のまま、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、4時間で滴下した。さらに同温度で2時間撹拌したのち、前記反応容器中に、「Phoslex A−4」0.064質量部と脱イオン水 14.6質量部の混合物を、5分間をかけて滴下し、同温度で4時間攪拌することにより、PTMS、DMDMS、MPTMSの加水分解縮合反応を進行させ、ビニル系重合体(a−2−1) 884質量部を得た。ビニル系重合体(a−2−1)を、H−NMRで分析したところ、前記反応容器中のシランモノマーが有するトリメトキシシリル基のほぼ100%が加水分解していた。
【0098】
前記反応生成物のビニル系重合体セグメントの水酸基価は、使用したモノマー全量に対するHEMAの含有量から、100mgKOH/gであったと推算された。
【0099】
(合成例9〜11:ビニル系重合体(a−2−2)〜(a−2−4)の合成)
下記表2に示す組成に変更した以外は合成例8と同様に操作することにより、ビニル系重合体(a−2−2)〜(a−2−4)を得た。
【0100】
(合成例12:ビニル系重合体(a−2−5)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、PTMS 22.8質量部、DMDMS 27.6質量部、酢酸n−ブチル 345.6質量部を仕込んで、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、95℃まで昇温した。次いで、MMA 67.2質量部、BMA 76.8質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA) 31.6質量部、BA 4.0質量部、MAA 4.0質量部、MPTMS 12.0質量部、HEMA 204.4質量部、酢酸n−ブチル 40.0質量部、TBPOEH 30.0質量部を含有する混合物を、同温度で、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、前記反応容器中へ4時間で滴下した。同温度で1時間攪拌した時点で反応溶液の粘度が急激に上昇し、数分間でゲル化した。
【0101】
ゲル化に至った前記反応生成物のビニル系重合体セグメントの水酸基価は、使用したモノマー全量に対するHEMAの含有量から、220mgKOH/gであったと推算された。
【0102】
上記で得られたビニル系重合体(a−2−1)〜(a−2−5)の組成及び性状値を表2に示す。
【0103】
【表2】
2−EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
【0104】
(合成例13:複合樹脂(A−1)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、合成例8で得られたビニル系重合体(a−2−1) 512.4質量部、及び、合成例1で得られたポリシロキサン(a−1−1) 107.0質量部を仕込んで、5分間攪拌したのち、脱イオン水 34.9質量部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、ビニル系重合体(a−2−1)とポリシロキサン(a−1−1)の加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、1〜30kPaの減圧下で、60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMAC」と略記する。) 40.5質量部、酢酸n−ブチル 143.3質量部を添加し、不揮発分が55.1%であるポリシロキサンセグメントとビニル重合体セグメントを有する複合樹脂(A−1) 600質量部を得た。
【0105】
得られた複合樹脂(A−1)のエポキシ当量(エポキシ基1個あたりの試料の分子量(g/eq))を、JIS K7236に準拠して、次のような手順で測定した。まず、100ccビ−カ−に5.0gの試料を計りとり、クロロホルム10mlを加えて攪拌溶解させた。その後、室温下にて、酢酸20mlと臭化テトラアンモニウム酢酸溶液10mlを加え、自動滴定装置 AUT−701(東亜ディーケーケー株式会社製)にて2〜3滴程度のクリスタルバイオレットを指示薬として用い、0.1mol/L過塩素酸/酢酸溶液(N/10)を滴定することにより、自動的に当量点を求め、試料がある場合と空試験の場合とでの滴定量差と電位変化からエポキシ当量(g/eq)の算出値を得た。ここで、臭化テトラアンモニウム酢酸溶液は、臭化テトラアンモニウム100gを酢酸400mlに溶解させたものを用いた。これより、複合樹脂(A−1)の固形分のエポキシ当量が8800g/eqであることが判明した。
【0106】
得られた複合樹脂(A−1)におけるビニル系重合体セグメント(a−2−1)の水酸基価は、次のような手順で測定した。まず、200mlマイヤーフラスコに2.5gの複合樹脂(A−1)を計りとり、無水酢酸とピリジンを1:19の体積比で混合したものであるアセチル化剤をホールピペットで加えた。次に、冷却管を付けて115℃に調節した加熱浴中に入れ、冷却管に水を通して振とうしながら1時間反応させた。反応終了後、フラスコを加熱浴から取り出し、イオン交換水約5ccを冷却管頂上からメスシリンダーで加えて振とうした。室温まで放冷後、フェノールフタレイン指示薬を数滴加え、0.5N水酸化カリウム−エタノール溶液を滴定した。淡い紅色が30秒続いた点を終点とし、その時の滴下量を読んだ。同時に、空試験も併せて行った。複合樹脂(A−1)中のビニル重合体セグメントの水酸基価は、下の2式より算出した。
【0107】
【数1】
B:空試験での滴下量(ml)
T:本試験での滴下量(ml)
F:0.5N水酸化カリウム−エタノール溶液の力価
S:複合樹脂(A−1)の採取量(g)
AN:複合樹脂(A−1)の酸価
【0108】
【数2】
C:複合樹脂(A−1)の水酸基価
N:複合樹脂(A−1)の固形分率(質量%)
P:複合樹脂(A−1)の固形分中のポリシロキサンセグメント(a−1−1)の 質量割合(質量%)
【0109】
これより、複合樹脂(A−1)中のビニル重合体セグメントの水酸基価は、100mgKOH/gであったと算出され、前記の使用したモノマー全量に対するHEMAの含有量から推算したビニル系重合体セグメントの水酸基価が実測値からの算出値と一致することが確認された。
【0110】
(合成例14〜17:複合樹脂(A−2)〜(A−5)の合成)
下記表3に示す組成に変更した以外は合成例13と同様に操作することにより、複合樹脂(A−2)〜(A−5)をそれぞれ600質量部得た。
【0111】
上記で得られた複合樹脂(A−1)〜(A−5)の組成及び性状値を表3に示す。
【0112】
(合成例18:複合樹脂(R−1)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、合成例8で得られたビニル重合体(a−2−1) 512.4質量部、及び、合成例6で得られたポリシロキサン(a−1−6) 106.7質量部を仕込んで、5分間攪拌したのち、脱イオン水 16.7質量部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、ビニル重合体(a−2−1)とポリシロキサン(a−1−6)の加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、1〜30kPaの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、PGMAC 36.0質量部、酢酸n−ブチル 140.2質量部を添加し、不揮発分が55.0%であるポリシロキサンセグメントとビニル重合体セグメントからなる比較用複合樹脂(R−1) 600質量部を得た。
【0113】
(合成例19〜22:複合樹脂(R−2)〜(R−5)の合成)
下記表4に示す組成に変更した以外は合成例18と同様に操作することにより、複合樹脂(R−2)〜(R−5)をそれぞれ600質量部得た。
【0114】
(合成例23:複合樹脂(R−6)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、合成例8で得られたビニル重合体(a−2−1) 502.7質量部、合成例5で得られたポリシロキサン(a−1−5) 106.7質量部、及び、エポキシ基を有するシラン化合物との比較用として、加水分解性シリル基を有さないエポキシ化合物である「BGE−R」(阪本薬品工業(株)製のブチルグリシジルエーテル)を4.9質量部投入し、5分間攪拌したのち、脱イオン水 36.9質量部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、ビニル重合体(a−2−1)とポリシロキサン(a−1−5)の加水分解縮合反応を行った。ここで、BGE−Rの添加量は、最終的に得られる複合樹脂とエポキシ化合物との混合物の固形分のエポキシ当量が8800g/eqとなるように計算して決定したものである。このとき、得られた反応生成物を、1〜30kPaの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、PGMAC 36.0質量部、酢酸n−ブチル 143.2質量部を添加し、不揮発分が55.2%であるポリシロキサンセグメントとビニル重合体セグメントからなる複合樹脂(R−6) 600質量部を得た。
【0115】
(合成例24:複合樹脂(R−7)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、合成例8で得られたビニル重合体(a−2−1) 497.4質量部、合成例5で得られたポリシロキサン(a−1−5) 106.7質量部、及び、エポキシ基を有するシラン化合物との比較用として、加水分解性シリル基を有さないエポキシ化合物である「4HBAGE」(日本化成(株)製の4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル)を7.5質量部投入し、5分間攪拌したのち、脱イオン水 36.9質量部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、ビニル重合体(a−2−1)とポリシロキサン(a−1−5)の加水分解縮合反応を行った。ここで、4HBAGEの添加量は、最終的に得られる複合樹脂(R)とエポキシ化合物の混合物のエポキシ当量が8800g/eqとなるように計算して決定したものである。このとき、得られた反応生成物を、1〜30kPaの減圧下で、40〜60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノール及び水を除去し、次いで、PGMAC 36.0質量部、酢酸n−ブチル 143.6質量部を添加し、不揮発分が55.3%であるポリシロキサンセグメントとビニル重合体セグメントからなる複合樹脂(R−7) 600質量部を得た。
【0116】
上記で得られた複合樹脂(R−1)〜(R−7)の組成及び性状値を表4に示す。
【0117】
(評価)
上記で得られた複合樹脂(A−1)〜(A−5)及び複合樹脂(R−1)〜(R−7)の評価は次の通り行った。即ち、樹脂の「色調」、「濁度」及び「保存安定性」を評価した。
【0118】
<色調>
得られた樹脂のガードナー色数(JIS K 0071−2に規定されている化学製品の色試験方法によって測定される値)を、JIS K0071−2によって規定された標準試料と目視で比色することにより決定した。ガードナー色数が小さい値であるほど、着色が薄いことを意味しており、ガードナー色数が1以下で無色の樹脂であるものと判定した。
【0119】
<濁度>
得られた樹脂の濁度を、JIS K0101に準拠し、精密光電濁度計 T−2600Sを(東京電色製)用いて、積分球散乱光度法(凝集塊の形成による前方散乱光の変化を、積分球を用いて測定し、透過光強度との比を比較する方法)に従った光学条件により測定した。濁度が小さい値であるほど、透明度が高いことを意味しており、濁度が0.5以下で濁りのない、非常に透明性の高い樹脂であるものと判定した。
【0120】
<保存安定性>
得られた樹脂の保存安定性を、40℃において、30日間保存したものの粘度(いわゆる経時粘度)を分子とし、初期粘度を分母とする粘度比で評価した。粘度測定は、E型粘度計(東京計器(株)製)を用いて30℃にて行った。また、サンプルの保存は、得られた樹脂をガラス製チュ−ブに入れて、40℃の環境下で1ヶ月間静置せしめることによって行った。この粘度比が1に近い値であるほど、保存安定性が優れているということを意味しており、粘度比が0.9以上1.1以下で保存安定性が非常に優れている樹脂であるものと判定した。
【0121】
各々の評価結果を表3及び表4に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
この結果、合成例13〜17で得られた複合樹脂(A−1)〜(A−5)、及び、合成例18〜19で得られた複合樹脂(R−1)〜(R−2)は、いずれも色調、濁度及び保存安定性が良好であることが判明した。
一方、合成例20〜21で得られた複合樹脂(R−3)〜(R−4)は、複合樹脂のエポキシ当量が17000g/eqより大きい例であるが、保存安定性が劣ることが判明した。
また、合成例22〜24で得られた複合樹脂(R−5)〜(R−7)は、ポリシロキサンがエポキシ基を有さない例であるが、保存安定性が劣ることが判明した。
【0125】
(実施例1:金属用表面処理剤(1)の調製)
合成例1で得られた複合樹脂(A−1) 25.0質量部、バ−ノック DN−980(ポリイソシアネート DIC株式会社製、希釈溶剤は酢酸エチルであり、不揮発分は75.3質量%、また、ワニスのNCO%は16.0質量%)4.5質量部、酢酸エチル 18.9質量部を混合することによって、不揮発分が55.0質量%である金属用表面処理剤(1)を得た。
【0126】
(実施例2〜5及び比較例1〜2)
下記表5に示した配合に基づき、実施例1と同様の方法で、金属用表面処理剤(2)〜(5)及び比較用金属用表面処理剤(R1)〜(R2)を調製した。
【0127】
(評価)
前記実施例1〜5,及び比較例1〜2で得られた金属用表面処理剤(1)〜(5)及び比較用金属用表面処理剤(R1)〜(R2)の評価は次の通り行った。即ち、金属用表面処理剤の「色調」、評価用硬化塗膜XまたはYを使用し、耐久性の指標となる「耐溶剤性」及び「耐酸性」、「密着性」、加工性の指標となる「基材追従性」、「防錆性」を評価した。
【0128】
<色調>
得られた金属用表面処理剤のガードナー色数(JIS K 0071−2に規定されている化学製品の色試験方法によって測定される値)を、JIS K0071−2によって規定された標準試料と目視で比色することにより決定した。ガードナー色数が小さい値であるほど、着色が薄いことを意味しており、ガードナー色数が1以下で無色の金属用表面処理剤であるものと判定した。
【0129】
(評価用硬化塗膜X)
150mm×70mm×2mmの軟質アルミ板上に、金属用表面処理剤を乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、80℃の環境下で10分間乾燥させることによって、アルミ板上に塗膜が積層された試験板(1)を得た。
【0130】
(評価用硬化塗膜Y)
150mm×70mm×2mmの亜鉛(Zn)−鉄(Fe)溶融鋼板(表面未処理)上に、金属用表面処理剤を乾燥膜厚が2μmとなるように塗付し、150℃で5分間乾燥させることによって、前記亜鉛(Zn)−鉄(Fe)溶融鋼板上に塗膜が積層された試験板(2)を得た。
【0131】
<耐溶剤性>
上記で得られた試験板(1)〜(2)を、大平理化工業株式会社製「RUBBING TESTER」にセットし、メチルエチルケトンを浸み込ませたフェルトを用い荷重1kgにて往復50回ラビングした。
ラビング前とラビング後の塗膜の状態を指触及び目視により確認し、下記評価基準に従って評価した。
○:ラビング前後で軟化及び光沢低下が認められない。
△:ラビング前後で若干の軟化または光沢低下が認められる。
×:ラビング前後で著しい軟化または光沢低下が認められる。
【0132】
<耐酸性>
上記で得られた試験板(1)〜(2)の表面を5質量%の硫酸水溶液に浸した状態で25℃の温度下に24時間放置した後、該塗膜を水洗いし、次いで乾燥した塗膜の表面状態を目視により確認した。評価基準は下記の通りである。
○:エッチング跡なし。
△:若干エッチング跡あり。
×:エッチング著しい。
【0133】
<密着性>
上記で得られた試験板(1)〜(2)を用い、JIS K−5600 碁盤目試験法に基づいて測定した。評価基準は下記の通りである。
○:塗膜のはがれなし。
△:塗膜の剥離した面積が、全碁盤目面積の1〜64%。
×:塗膜の剥離した面積が、全碁盤目面積の65%以上。
【0134】
<基材追従性(折り曲げ試験)>
上記で得られた試験板(1)を用い、JIS K−5600 耐屈曲性試験法に基づいて評価した(マンドレルの直径は2mm)。評価基準は下記の通りである。
○:折り曲げ部分の塗膜表面にクラックの発生がみられない。
△:折り曲げ部分の塗膜表面のごく一部に若干のクラックの発生がみられる。
×:折り曲げ部分の塗膜表面全体にクラックの発生がみられる。
【0135】
<防錆性>
上記で得られた試験板(2)を用い、JIS K−5600 9.1 耐塩水噴霧性試験に基づいて測定した。具体的には、前記試験板(2)の塗膜表面を、基材に到達する深さまでカッターナイフで傷を付け(クロスカット部)、製塩水噴霧試験器(スガ試験機株式会社製)にて塩水噴霧試験を実施し、240時間後の錆発生面積を目視により求めて評価した。評価は、カッターナイフによる傷をつけていない平面部と、クロスカット部の周辺部とに分けて行った。評価基準は下記の通りである。
<平面部>
◎:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して5%未満であった。
○:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して5%以上30%未満であった。
△:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して30%以上60%未満であった。
×:錆の発生及び錆に起因した塗膜の膨れや剥がれの生じた面積が、平面部全体に対して60%以上であった。
<クロスカット部の周辺部>
◎:クロスカット部の周辺部に錆の発生は見られず、錆に起因した塗膜の剥離等も見られなかった。
○:クロスカット部の周辺部に極微量の錆の発生が見られたが、それに起因した塗膜の剥離や膨れは見られなかった。
△:クロスカット部の周辺部に広く錆の発生が見られ、それに起因した塗膜の剥離や膨れが見られたものの、流れ錆はみられなかった。
×:クロスカット部の周辺部に広く錆の発生と、それに起因した塗膜の剥離や膨れが見られ、更に流れ錆による塗膜の汚染等が見られた。
【0136】
各々の評価結果を表5に示す。
【0137】
【表5】
【0138】
この結果、実施例1〜5で評価した金属用表面処理剤(1)〜(5)は、いずれも耐溶剤性、耐酸性、密着性、基材追従性、防錆性に優れた塗膜が得られた。
比較例1で評価した金属用表面処理剤(R1)は、複合樹脂のエポキシ当量が小さすぎる例であるが、耐溶剤性、密着性、基材追従性、防錆性が劣ることが判明した。
比較例2で評価した金属用表面処理剤(R2)はビニル系重合体セグメントの水酸基価が小さすぎる例であるが、耐溶剤性、耐酸性、密着性、基材追従性、防錆性が劣ることが判明した。