特許第5924557号(P5924557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924557
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ホウ素含有化合物
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20160516BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20160516BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20160516BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   C09K11/06
   C07F5/02 DCSP
   C09K11/06 680
   C08G61/12
   H05B33/14 B
【請求項の数】9
【全頁数】96
(21)【出願番号】特願2014-234563(P2014-234563)
(22)【出願日】2014年11月19日
(62)【分割の表示】特願2010-230995(P2010-230995)の分割
【原出願日】2010年10月13日
(65)【公開番号】特開2015-83685(P2015-83685A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-28273(P2010-28273)
(32)【優先日】2010年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 正浩
(72)【発明者】
【氏名】石田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】守屋 大作
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】森井 克行
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】有元 洋一
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/062676(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/070817(WO,A1)
【文献】 特開2007−035791(JP,A)
【文献】 Baik,C. et al.,J.AM.CHEM.SOC.,2009年,Vol.131,p.14549-14559
【文献】 Ishida,N. et al.,J.Org.Chem.,2010年11月23日,Vol.75,p.8709-8712
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
C07F 5/00− 5/06
C08G 61/00− 61/12
H01L 51/00− 51/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素原子及び二重結合を有するホウ素含有化合物を含む発光材料であって、
該ホウ素含有化合物は、下記式(1);
【化1】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一又は異なって、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、又は、アルキルスルホニルオキシ基を反応性基とすると、水素原子;反応性基;炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又は該反応性基で置換された炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基又は該反応性基で置換された炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基;オリゴアリール基又は該反応性基で置換されたオリゴアリール基;1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基又は該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。Xが結合している環構造は、ベンゼン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、又は、イソキノリン環である。Xが結合している環構造は、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、イソインドール環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、又は、オキサゾール環である。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、アリール基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基で置換されたアリール基、ハロアルキル基で置換されたアリール基、4−プロピルフェニル基、ビフェニル基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、ボリルオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、RとRとが結合してなる2,2’−ビフェニル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ボリル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、アセトニトリル基、又は、−MgX〔Xは、ハロゲン原子を表す。〕で表されるハロゲン化マグネシウムを表す。)で表されることを特徴とする発光材料。
【請求項2】
前記ホウ素含有化合物は、発光量子収率が、20〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の発光材料。
【請求項3】
前記ホウ素含有化合物は、式(1)におけるR及びRが、同一若しくは異なって、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基、又は、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発光材料を用いて形成されることを特徴とする発光デバイス。
【請求項5】
ホウ素原子及び二重結合を有するホウ素含有化合物であって、
該ホウ素含有化合物は、下記式(1);
【化2】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一又は異なって、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、又は、アルキルスルホニルオキシ基を反応性基とすると、反応性基;炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又は該反応性基で置換された炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基又は該反応性基で置換された炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基;オリゴアリール基又は該反応性基で置換されたオリゴアリール基;1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基又は該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。Xが結合している環構造は、ベンゼン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、又は、イソキノリン環である。Xが結合している環構造は、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、イソインドール環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、チアゾール環、又は、オキサゾール環である。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、ボリルオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、RとRとが結合してなる2,2’−ビフェニル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ボリル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、アセトニトリル基、又は、−MgX〔Xは、ハロゲン原子を表す。〕で表されるハロゲン化マグネシウムを表す。)で表され、上記X及びXの少なくとも一方は、末端部に2つの原子が二重結合で結ばれた構造を有し、該2つの原子のうちの一方の原子で点線の円弧部分を形成する環構造と結合した構造を有する置換基であり、該置換基は、下記式(6−1)又は式(6−2);
【化3】
(式(6−1)及び式(6−2)中、*は、式(1)において点線の円弧部分を形成する環構造と結合している原子を表している。Z、Z、Z及びZは、同一又は異なって、ZとZとの間、及び、ZとZとの間で、それぞれ二重結合を形成することが出来る原子を表し、該二重結合を形成することが出来る原子は、炭素原子、窒素原子、リン原子、又は、硫黄原子である。式(6−1)中、Yは、水素原子又は1価の有機基を表し、Zの原子価に応じてZに複数個結合していてもよいことを表している。式(6−2)中、点線の円弧は、Z及びZにより形成される二重結合部分と共に環構造が形成されていることを表している。Yは、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、式(6−2)における点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよいことを表している。)で表される
ことを特徴とするホウ素含有化合物。
【請求項6】
ホウ素原子及び二重結合を有するホウ素含有化合物を含む単量体成分を重合して得られるホウ素含有重合体を含む発光材料であって、
該ホウ素含有化合物は、下記式(1);
【化4】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一又は異なって、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、又は、アルキルスルホニルオキシ基を反応性基とすると、水素原子;反応性基;炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又は該反応性基で置換された炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基又は該反応性基で置換された炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基;オリゴアリール基又は該反応性基で置換されたオリゴアリール基;1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基又は該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。Xが結合している環構造は、ベンゼン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、又は、イソキノリン環である。Xが結合している環構造は、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、イソインドール環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、又は、オキサゾール環である。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、ボリルオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、RとRとが結合してなる2,2’−ビフェニル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ボリル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アルデヒド基、アセトニトリル基、又は、−MgX〔Xは、ハロゲン原子を表す。〕で表されるハロゲン化マグネシウムを表す。)で表され、該ホウ素含有化合物は、式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも1つが、反応性基を有する置換基であることを特徴とする発光材料
【請求項7】
前記発光材料は、式(1)におけるR及びRが、同一若しくは異なって、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基、又は、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基であることを特徴とする請求項6に記載の発光材料
【請求項8】
前記発光材料は、発光デバイス形成に用いられることを特徴とする請求項6又は7に記載の発光材料
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の発光材料を用いて形成されることを特徴とする発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有化合物及びその製造方法に関する。より詳しくは、有機EL素子等の発光デバイスや有機半導体の材料等の機能性電子素子素材として好適に用いることができるホウ素含有化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素原子を構造中に有する有機ホウ素化合物は、ホウ素原子の分子軌道における電子状態に起因する電子的特性から機能性電子素子素材として注目されているものである。例えば、電子受容性などの特性が必要とされる有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の材料やN型半導体の材料として期待されている。特に有機EL素子は、ディスプレイとしての種々の優れた特性を有することから、より一層の高性能化を実現できる材料の開発が盛んに進められている。また、ホール層、電子輸送層に無機材料を用いたHOILED(ハイブリッド有機−無機発光ダイオード)素子の実用化開発が進められており、それに適した材料の開発が待たれるところでもあった。HOILED素子は、ハイブリッド化することによって、有機EL素子に比べて酸素や水に対する耐性が高いという有利性を有する。これにより、素子内部の各層を厳重に密閉する必要性を軽減させて製造時の手間を少なくし、生産コストを低くすることができる他、ディスプレイとしての種々の優れた特性を有するものである。
【0003】
有機EL素子の用途に利用が検討された有機ホウ素化合物としては、これまで数例が知られているが、それらのほとんどは3つのアリール基がホウ素原子上に結合したものに限られていた。有機ホウ素化合物は、その電子的な特性に起因して安定な構造とすることが困難であり、そのために電子素材用途に実際に用いることができるものが限られているというのが現状である。このような有機ホウ素化合物を次世代の機能性電子素子素材として活用するためには、ホウ素原子に起因する優れた特有の性質を発揮させつつ、安定的に取り扱える新規な化合物を種々開発することが望まれるところであった。
【0004】
従来の有機ホウ素含有化合物としては、ホウ素にビニル基が結合した構造を有する有機ホウ素化合物を有機EL素子用材料として用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、特定の構造を有する有機ホウ素π電子系化合物を電子輸送材料として用いることが開示され(例えば、特許文献2参照。)、有機ホウ素含有化合物であるジメシチルボリル置換チエニルトリアゾール等について、有機ホウ素π電子系化合物のLUMOのエネルギー準位が低いことが実際に示されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
更には、有機EL素子用材料としての利用が検討されている有機ホウ素含有化合物としては、上述した構造のものの他に、分子内に配位結合を有するホウ素化合物が開発されており、例えば、不対電子を持ちホウ素と配位結合可能な元素を含み、特定の構造を有する有機ホウ素含有化合物である有機EL素子用材料が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、分子内においてホウ素原子に窒素原子が配位した構造を有する特定の構造の有機ホウ素含有化合物を含有する有機電界発光素子が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。その他、分子内にホウ素原子を3〜15個有する特定の構造の有機ホウ素含有化合物である有機EL素子用材料(例えば、特許文献5参照。)や、特定の構造を有する有機ホウ素含有化合物である有機EL素子用材料(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。
【0006】
ところで、HOILED素子については、これまで材料化学の分野において様々な誘導体が知られているフルオレン、ポリフルオレン誘導体が検討されている。例えば、発光層としてフルオレン誘導体を用いたHOILED素子や(例えば、非特許文献2参照。)、陽極および陰極と、陽極と陰極とに挟まれた1層または複数層の有機化合物層と、陽極と有機化合物層との間及び陰極と有機化合物層との間に、少なくとも1種類以上の金属酸化物薄膜を有し、その有機化合物層がポリフルオレン誘導体により構成される有機薄膜発光素子が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−155325号公報(第1−2、218−220頁)
【特許文献2】国際公開第2006/070817号公報(第1−2頁)
【特許文献3】国際公開第2005/062676号公報(第1−5頁)
【特許文献4】特開2007−35791号公報(第1−2頁)
【特許文献5】特開2000−290645号公報(第1−2頁)
【特許文献6】国際公開第2005/062675号公報(第36−37頁)
【特許文献7】特開2007−53286号公報(第1−2、13−14頁)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アツシ・ワカミヤ(Atsushi Wakamiya)、外2名、「アンゲヴァンテ ケミー インターナショナル エディション(Angewandte Chemie International Edition)」、2006年、第45巻、p.3170−3173
【非特許文献2】カツユキ・モリイ(Katsuyuki Morii)、外6名、「アプライド フィジックス レターズ(Applied Physics Letters)」、2006年、第89巻、p.183510−1〜183510−3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機ホウ素化合物は、ホウ素原子がその分子軌道に空軌道を有し、それによって最高被占軌道(HOMO)や最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位が低いという、ホウ素原子の電子状態に由来する特性を有する。特にLUMOのエネルギー準位が低いことに起因して、上記のように有機EL素子の材料やN型半導体の材料としての用途が期待されている。例えば、低分子有機EL素子の一般的な構成、すなわち、透明電極から形成される陽極、ホール(正孔)輸送層、発光層、電子輸送層、Mg、Al、Ca等から形成される陰極といった構成において、電子輸送層や発光層にLUMOのエネルギー準位が低い材料を使用すれば、機能性電子素子としての性能が向上することになる。また、高分子有機ELの一般的な構成、すなわち、透明電極から形成される陽極、ホール(正孔)輸送層、発光兼電子輸送層、Ca、Ba等から形成される陰極といった構成において、発光兼電子輸送層にLUMOのエネルギー準位が低い材料を使用すれば、同様に機能性電子素子としての性能が向上することになる。HOILED素子については、従来検討されてきたフルオレン、ポリフルオレン誘導体のLUMOが高く、実際にはHOILED素子には不向きであり安定した発光を得ることは出来ていない。これらに代わる材料として、LUMOが低く、更には、発光材料として優れた材料の開発が期待されるところである。
一方で、有機ホウ素化合物における課題は、ホウ素原子が空軌道を有することに伴って、安定な化合物が少ないということである。安定な化合物でありながら、HOMO、LUMOのエネルギー準位を下げることができれば、機能性電子素子素材としての用途に有用である。そのような化合物のバリエーションを増やすことは、有機EL素子やN型半導体、HOILED素子等の分野で当該化合物自体を素子材料として用いる場合や当該化合物から調製した重合体を用いる場合において大きな技術的意義がある。
【0010】
一般的に、有機ホウ素化合物において安定な構造とするためには、いわゆる嵩高いバルキーな基をホウ素原子に結合させた構造とすればよい。従来技術において、有機ホウ素化合物に、3つのアリール基がホウ素原子に結合した構造が多いのは、前駆体であるフルオロジメシチルボラン、5−ブロモジベンゾボロールのようなハロホウ素化合物自体が、安定性を得るためにホウ素上の置換基を嵩高い構造にしているためである。また、特許文献1には、ビニル基を置換基として有する有機ホウ素含有化合物が合成されているが、このようなホウ素含有化合物の製造方法では、高価なパラジウム触媒を使用する必要がある。これらの有機ホウ素化合物においては、製造できる化合物や該化合物を原料とする重合体の構造が限られることになる。特許文献3、4においてはいずれも、ホウ素原子と配位結合可能な元素が、ホウ素原子に分子内で配位し、特定の構造を有する有機ホウ素含有化合物が合成されているが、それらに記載のホウ素含有化合物の製造方法では、ごく限られた構造の化合物が製造できるに止まり、該化合物を原料として重合体を製造することが困難であったり、製造出来たとしても重合体の構造制御が困難であったりするものである。また、特許文献5に記載のホウ素含有化合物は、15量体までのものであり、それ以上の多量体について開示されていない。更に特許文献6についても、記載されたホウ素含有化合物の製造方法で製造することができるのは、限られた構造の化合物となる。
今後の有機EL素子やN型半導体、HOILED素子等の開発の中で、様々な特性が要求され、また、このような化合物から様々な重合体を調製することが求められることになる。ここで、上述した特許文献2〜6においては、それらに記載の有機ホウ素含有化合物を電子輸送材料や、正孔阻止材料、発光層中のホスト化合物として用いることが開示されているが、例えば、LUMOが低く、更には、発光収率の高い化合物を合成することが出来れば、有機EL素子やHOILED素子等の発光材料として好適に用いることが可能となる。
そしてこのような要求に応えることができる材料設計のためには、新規な有機ホウ素化合物を種々調製し、また、様々な構造の有機ホウ素化合物誘導体を安価で容易に得ることができることが好ましい。例えば、ホウ素原子における置換基等の種類を選択的にかつ自由度を高くして変えることができれば、新規な有機EL素子、新規な有機半導体の開発において極めて有益である。
また、HOILED素子材料として検討されてきたフルオレン、ポリフルオレンに代わるLUMOの低い疑似フルオレン化合物群の合成ができれば、HOILED素子の実用化検討が大いに進む可能性がある。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、有機EL素子やN型半導体の発光材料等として有用で新規なホウ素含有化合物及び該化合物を用いて得られるホウ素含有重合体、並びに、ホウ素含有化合物やホウ素含有重合体を安価に製造することを可能とするホウ素含有化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、新規なホウ素含有化合物、及び、種々のホウ素含有化合物の新たな製造方法について種々検討したところ、ホウ素含有化合物を安定的な化合物とするためには、ホウ素原子に対して窒素原子が配位した構造を有するようにすればよいことに着目した。そして、ホウ素原子に臭素原子又はヨウ素原子が結合し、ホウ素原子と窒素原子とを有する骨格中に二重結合を有し、その骨格が少なくとも2つの環構造の一部分を形成する特定構造のホウ素含有化合物が安定な化合物でありながら、HOMO、LUMOのエネルギー準位を下げることができる有用な化合物であることを見出し、上記課題を見事に解決することができることに想到した。また、構造中に窒素原子と2つの環構造とを有し、更に少なくとも1つの二重結合を有する特定の構造の化合物と、特定の構造の臭素化又はヨウ素化ホウ素含有化合物とを反応させることにより、高価なパラジウム触媒を使用することなく、ホウ素原子に臭素原子又はヨウ素原子が置換基として結合し、窒素原子がホウ素原子に配位した構造を有する種々のホウ素含有化合物を製造できることを見出した。更に、このようなホウ素含有化合物のホウ素原子に結合した臭素原子又はヨウ素原子を他の原子や原子団に変換することができ、それによって従来法では製造困難であった様々な構造のホウ素含有化合物を製造することができること、及び、このようにして得られるホウ素含有化合物を用いることで、種々の構造をもつホウ素含有重合体を製造することができることを見出し、本発明に到達したものである。
また、HOILED素子等の分野においては、これまで検討されてきたフルオレン、ポリフルオレンに代わって、LUMOを下げる手段として分子内にホウ素原子を導入することが考えられるが、本発明者等は、実際にホウ素原子を導入することによりフルオレンなどと等電子構造でLUMOの低い疑似フルオレン化合物群を合成できることも見出した。そして、それらの化合物の発光量子収率の値が機能性電子素子素材としての適性に関係することを見出し、その範囲を特定することによって、安定した発光特性を得ることができるようになり、有機EL素子等の発光層を構成する発光材料として、特にHOILED素子の発光層を構成する発光材料として特に好適に用いることのできるホウ素含有化合物となることに想到した。
このように、本発明の好ましい形態の1つは、特定の構造を有するホウ素含有化合物のうち、発光量子収率が特定の範囲である化合物であり、また、本発明の好ましい形態の1つは、特定の構造を有するホウ素含有化合物のうち、特定の官能基(置換基)として直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有する化合物である。なお、これら2つの好ましい形態の両方の構成要素を持つ形態であることも好ましい。
【0013】
すなわち本発明は、ホウ素原子及び二重結合を有するホウ素含有化合物を含む発光材料であって、上記ホウ素含有化合物は、下記式(1);
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。)で表されることを特徴とする発光材料である。
以下に本発明を詳述する。
【0016】
本発明の発光材料は、下記式(1);
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。)で表される構造を有するホウ素含有化合物を含む。
なお、本発明の発光材料は、有機EL素子等の発光層を構成する発光材料等として好適に用いることができるものであり、発光体のホスト材料として用いられるものではなく、それ自体が発光体として用いられるものである。
【0019】
上記式(1)において、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。すなわち、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物が構造中に少なくとも2つ環構造を有し、上記式(1)において、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分が、該環構造の一部として含まれていることを表している。
上記式(1)において、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよいことを表す。式(1)で表される化合物のうち、二重結合が環構造と共役するものとしては、例えば、下記式(2−1)〜(2−4)のような構造のものが挙げられる。
【0020】
【化3】
【0021】
上記式(1)において、窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。ここで、配位しているとは、窒素原子がホウ素原子に対して配位子と同様に作用して化学的に影響していることを意味し、配位結合(共有結合)となっていてもよく、配位結合を形成していなくてもよい。好ましくは、配位結合となっていることである。
上記式(1)において、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。すなわち、X及びXが水素原子である場合には、式(1)で表されるホウ素含有化合物の構造中、X及びXを有する2つの環構造は置換基を有していないことを示し、X及び/又はXが1価の置換基である場合には、該2つの環構造のいずれか、又は、いずれも置換基を有することとなる。その場合には、1つの環構造の有する置換基の数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
なお、本明細書中において置換基とは、炭素を含む有機基と、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等の炭素を含まない基とを含めた基を意味している。
【0022】
本発明におけるホウ素含有化合物は、LUMOのエネルギー準位が低いために、有機EL素子の材料やN型半導体の材料として好適に用いることができるものであるが、そのような用途として用いられるホウ素含有化合物のLUMOのエネルギー準位としては、例えば、3.0eV〜5.2eVであることが好ましい。そのような範囲であると、有機EL素子やN型半導体の材料として用いた場合に、充分に性能を発揮することができる。LUMOのエネルギー準位としてより好ましくは、3.2eV〜5.1eVであり、更に好ましくは、3.4eV〜5.0eVである。特に好ましくは、3.6eV〜5.0eVである。
なお、LUMOのエネルギー準位は、例えば、後述する本願明細書の実施例及び比較例において行っているようにして求めることが好適である。
【0023】
上記式(1)において、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。該R及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好適である。該R及びRとしては、特に制限されないが、例えば、水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、ボリルオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、RとRとが結合してなる2,2’−ビフェニル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基;メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等のアルキルスルホネート基;ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基等のアリールスルホネート基;ベンジルスルホネート基等のアリールアルキルスルホネート基;下記式(3−1)〜(3−4)で表される基等のボリル基;下記式(3−5)〜(3−6)で表される基等のスルホニウムメチル基;下記式(3−7)で表される基等のホスホニウムメチル基;下記式(3−8)で表される基等のホスホネートメチル基;アリールスルホネート基;アルデヒド基;アセトニトリル基;下記式(3−9)で表されるハロゲン化マグネシウム等が挙げられる。
なお、式中、Meは、メチル基を表す。Etは、エチル基を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。R´は、アルキル基、アリール基、又は、アリールアルキル基を表す。
【0024】
【化4】
【0025】
上記アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インデニル基、インダニル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が好ましい。
上記複素環基としては、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。これらの中でも、ピリジル基、チエニル基が好ましい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0026】
上記アルキル基としては、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基が挙げられる。すなわち、式(1)で表されるホウ素含有化合物を含む発光材料において、式(1)におけるR及びRが、同一若しくは異なって、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基、又は、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記炭素数1〜30の直鎖状炭化水素基としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。
上記炭素数1〜30の分岐状炭化水素基としては具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基等が挙げられる。
上記炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては具体的には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル基等が挙げられる。
上記アルキル基としては、これらの中でもメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、オクチル基が好ましい。より好ましくは、メチル基、エチル基、イソブチル基、オクチル基である。
【0027】
上記R及びRにおける置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子;塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ヒドロキシ基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜4のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基などのアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基等の炭素数2〜8のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、フェニルアセチニル等の炭素数2〜8のアルキニル基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;エチニルオキシ基、フェニルアセチルオキシ基等のアルキニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基等のパーフルオロ基及び更に長鎖のパーフルオロ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基等のボリル基;アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル基;アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等のスルフィニル基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基等のシリル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基、2,6−キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基等のアリール基;チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基等のヘテロ環基;;カルボキシル基;カルボン酸エステル;エポキシ基;イソシアノ基;シアネート基;イソシアネート基;チオシアネート基;イソチオシアネート基;カルバモイル基;N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等のN,N−ジアルキルカルバモイル基;ホルミル基;ニトロソ基;ホルミルオキシ基;等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子や芳香族等で置換されていてもよく、更に、これらの基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
これらの中でも、上記R及びRにおける1価の置換基の有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、ハロアルキル基が好ましい。より好ましくは、エチル基、イソプロピル基、オクチル基、フッ素原子、臭素原子、ビニル基、エチニル基、ジフェニルアミノ基、ジフェニルアミノフェニル基、トリフルオロメチル基である。
【0028】
上記R及びRとしては、上述したものの中でも、水素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−オクチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,2’−ビフェニル基、スチリル基、ジフェニルアミノフェニル基がより好ましい。更に好ましくは、臭素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−オクチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,2’−ビフェニル基、スチリル基、ジフェニルアミノフェニル基であり、特に好ましくは、臭素原子、イソプロピル基、イソブチル基、n−オクチル基、フェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,2’−ビフェニル基、スチリル基、ジフェニルアミノフェニル基である。
【0029】
上記式(1)において、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表す。該1価の置換基としては特に制限されないが、上記R及びRと同様のものが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、X及びXとしては、水素原子;ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又は該反応性基で置換された炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基又は該反応性基で置換された炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基;オリゴアリール基又は該反応性基で置換されたオリゴアリール基;1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基又は該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基が好ましい。より好ましくは、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ボリル基、アルキニル基、アルケニル基、ホルミル基、スタニル基、ホスフィノ基、アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基、下記式(3−10)で表される基等の1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。
【0031】
【化5】
【0032】
また、本発明においては、上記式(1)におけるX及びXが、上述したもののうち、反応性基を有する置換基であることもまた本発明の好適な実施形態の1つである。該X及びXが、上述したもののうち、反応性基を有する置換基である場合には、そのような置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;該反応性基で置換された炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;該反応性基で置換された炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;該反応性基で置換されたアリール基;該反応性基で置換されたオリゴアリール基;該反応性基で置換された1価の複素環基;該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基が好ましい。より好ましくは、臭素原子、ヨウ素原子、ボリル基、ホルミル基、スタニル基、ホスフィノ基、該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。更に好ましくは、臭素原子、ボリル基、ホルミル基、スタニル基、ホスフィノ基、該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。
上記X及びXが反応性基を有する置換基である場合には、X及びXの有する反応性基を異なるものとし、1種のホウ素含有化合物が単独で重縮合し得る反応性基の組み合わせとなるようにするか、式(1)で表されるホウ素含有化合物を2種以上含み、これらのホウ素含有化合物が共重合し得るような反応性基の組み合わせを有するものとなるようにするか、又は、式(1)で表されるホウ素含有化合物を1種又は2種以上と反応性基を少なくとも1つ有する他の化合物とが共重合し得るような反応性基の組み合わせを有するものとなるようにすることにより、重合体の原料として好適に用いることができる。
【0033】
上記式(1)において、点線の円弧と、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部とによって形成される環構造は、環状構造であれば特に制限されないが、式(1)においてXが結合している環としては、例えば、ベンゼン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環が挙げられ、これらはそれぞれ、下記式(4−1)〜(4−17)で表される。これらの中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。
【0034】
【化6】
【0035】
また、式(1)においてXが結合している環としては、例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、イソインドール環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、チアゾール環、オキサゾール環が挙げられる。これらはそれぞれ、下記式(5−1)〜(5−14)で表される。これらの中でも、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、フェナントリジン環が好ましい。より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環である。
【0036】
【化7】
【0037】
本発明におけるホウ素含有化合物が上記式(1)において、X及び/又はXが1価の置換基である場合、環構造に対するX及び/又はXの結合位置や結合する数は、特に制限されない。
また、Xとして環構造に少なくとも2つの1価の置換基が結合しており、該1価の置換基のうちの1つが置換基を有していてもよいボリル基であり、該1価の置換基のうちの他の1つが置換基を有していてもよいピリジル基であって、該ピリジル基の窒素原子が該ボリル基のホウ素原子に配位している形態もまた本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、本発明においてホウ素含有化合物が、窒素原子がホウ素原子に配位している部分を構造中に2つ以上有していることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0038】
本発明におけるホウ素含有化合物は、上記式(1)で表される構造を有するものであって、発光量子収率が、20〜100%であることもまた本発明の好適な実施形態の1つである。ホウ素含有化合物の発光量子収率がそのような範囲のものであると、有機EL素子やHOILED素子等における発光層を構成する発光材料として用いた場合に、充分に安定した発光を得ることが可能となる。発光量子収率としてより好ましくは、30〜100%であり、更に好ましくは、40〜100%である。特に好ましくは、50〜100%であり、最も好ましくは60〜100%である。
なお、発光量子収率は、例えば、後述する本願明細書の実施例及び比較例において行っているようにして求めることが好適である。
【0039】
上記式(1)で表される構造を有するホウ素含有化合物のうち、発光量子収率が、20%以上を満たすためには、分子間でのπ−πスタッキング相互作用を防ぐような構造が望ましい。つまり、ホウ素上を嵩高くすることで分子同士の重なり合いが軽減され、発光量子収率が20%以上の値が得られることになる。
【0040】
本発明においては、上記式(1)において、X及びXの少なくとも一方が、末端部に2つの原子が二重結合で結ばれた構造を有し、該2つの原子のうちの一方の原子で点線の円弧部分を形成する環構造と結合した構造を有するような置換基であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、ホウ素原子及び二重結合を有するホウ素含有化合物であって、該ホウ素含有化合物は、下記式(1);
【0041】
【化8】
【0042】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一又は異なって、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。)で表され、上記X及びXの少なくとも一方は、末端部に2つの原子が二重結合で結ばれた構造を有し、該2つの原子のうちの一方の原子で点線の円弧部分を形成する環構造と結合した構造を有することを特徴とするホウ素含有化合物もまた本発明の1つである。
【0043】
上記末端部に2つの原子が二重結合で結ばれた構造を有し、該2つの原子のうちの一方の原子で点線の円弧部分を形成する環構造と結合した構造とは、すなわち、X及び/又はXを構成する原子団において、それぞれ構造の末端部は少なくとも2つ存在するが、該末端部のうち、上記式(1)において点線の円弧部分を形成する環構造と結合する末端部が、点線の円弧部分を形成する環構造と結合する原子と、該原子の隣の原子とが二重結合で結ばれた構造を有していることを意味している。そのような置換基としては、下記式(6−1)〜(6−2)で表されるような構造が挙げられる。
なお、式(6−1)〜(6−2)中、*は、式(1)において点線の円弧部分を形成する環構造と結合している原子を表している。Z、Z、Z及びZは、同一又は異なって、ZとZとの間、及び、ZとZとの間で、それぞれ二重結合を形成することが出来る原子を表している。式(6−1)中、Yは、水素原子又は1価の有機基を表し、Zの原子価に応じてZに複数個結合していてもよいことを表している。式(6−2)中、点線の円弧は、Z及びZにより形成される二重結合部分と共に環構造が形成されていることを表している。Yは、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、式(6−2)における点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよいことを表している。
【0044】
【化9】
【0045】
上記式(6−1)〜(6−2)において、Z、Z、Z及びZは、同一又は異なって、ZとZとの間、及び、ZとZとの間で、それぞれ二重結合を形成することが出来る原子を表しているが、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子であることが好ましい。より好ましくは、炭素原子、窒素原子である。
【0046】
上記式(6−1)において、Yは、水素原子又は1価の有機基を表し、Zの原子価に応じてZに複数個結合していてもよいことを表しているが、これは、例えば、Zが窒素原子である場合には、YはZに1つ結合することとなり、Zが炭素原子である場合には、YはZに2つ結合することとなる、ということを示している。Yが、Zに複数個結合している場合には、Yは、全て同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。上記1価の有機基としては特に制限されず、上記式(1)における、R及びRと同様のものが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、Yとしては、水素原子;ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又は該反応性基で置換された炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基又は該反応性基で置換された炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基;オリゴアリール基又は該反応性基で置換されたオリゴアリール基;1価の複素環基又は該反応性基で置換された1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基又は該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基;アルキルチオ基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アリールアルキルチオ基;アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基;アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基が好ましい。より好ましくは、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ボリル基、アルキニル基、アルケニル基、ホルミル基、スタニル基、ホスフィノ基、アリール基又は該反応性基で置換されたアリール基、該反応性基で置換されたオリゴアリール基、該反応性基で置換された1価の複素環基、該反応性基で置換された1価のオリゴ複素環基、アルケニル基又は該反応性基で置換されたアルケニル基、アルキニル基又は該反応性基で置換されたアルキニル基である。
【0048】
上記式(6−2)において、Yは、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、式(6−2)における点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよいことを表している。
すなわち、Yが水素原子である場合には、式(6−2)で表される構造中、Yを有する環構造は置換基を有していないことを示し、Yが1価の置換基である場合には、該環構造は置換基を有することとなる。その場合には、該環構造の有する置換基の数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
上記1価の置換基としては上記式(1)における、X及びXと同様のものが挙げられるが、これらの中でも、上記式(3−10)で表される基、ナフチル基、フェニル基であることが特に好ましい。
【0049】
本発明においては更には、上記式(1)におけるX及びXのいずれもが、末端部に2つの原子が二重結合で結ばれた構造を有し、該2つの原子のうちの一方の原子で点線の円弧部分を形成する環構造と結合した構造を有するような置換基であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、ホウ素原子及び二重結合を有するホウ素含有化合物であって、該ホウ素含有化合物は、下記式(1);
【0050】
【化10】
【0051】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一又は異なって、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。)で表され、上記X及びXはいずれも、末端部に2つの原子が二重結合で結ばれた構造を有し、該2つの原子のうちの一方の原子で点線の円弧部分を形成する環構造と結合した構造を有することを特徴とするホウ素含有化合物もまた本発明の1つである。そのようなホウ素含有化合物は、特に発光量子収率が高いものであるために、有機EL素子やN型半導体の材料等として特に有用なものである。
【0052】
上記式(1)においてX及びXがいずれも、末端部に2つの原子が二重結合で結ばれた構造を有し、該2つの原子のうちの一方の原子で点線の円弧部分を形成する環構造と結合した構造を有するホウ素含有化合物としては、大きくは、上記式(1)において点線の円弧部分を形成する環構造と結合している原子が構成している上記二重結合部分が、環構造を構成しない形態と、環構造の一部分を構成する形態とが挙げられ、具体的には、下記式(1´−1)〜(1´−4)の形態が挙げられる。
なお、式(1´−1)〜(1´−4)中、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、及び、R及びRは、式(1)と同様である。式(1´−1)中、点線の円弧は、式(1)と同様である。式(1´−2)〜(1´−4)中、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と接している点線の円弧は、式(1)と同様にホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表し、また、Z及びZが形成する二重結合部分並びに/又はZ及びZが形成する二重結合部分と接している点線の円弧は、該当する二重結合部分と共に環構造が形成されていることを表す。Z〜Zは、同一又は異なって、上記式(6−1)〜(6−2)における、Z〜Zと同様である。Y及びYは、同一又は異なって、上記式(6−1)における、Yと同様である。Y及びYは、同一又は異なって、上記式(6−2)における、Yと同様である。
【0053】
【化11】
【0054】
これらの形態の中でも、上記式(1)において点線の円弧部分を形成する環構造と結合している原子が構成している二重結合部分が共に、環構造を構成しない形態のものであるか、又は、環構造の一部分を構成する形態のものであるか、のいずれかであるものが好ましい。すなわち、上記式(1´−1)、(1´−4)の形態であることが好ましい。
このような、上記式(1´−1)で表されるホウ素含有化合物、又は、上記式(1´−4)で表されるホウ素含有化合物もまた本発明の1つである。
【0055】
上記式(1´−1)において、点線の円弧は、式(1)と同様に、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表すが、上記式(1´−1)において、点線の円弧と、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部とによって形成される環構造は、環状構造であれば特に制限されず、式(1´−1)においてYを有する基が結合している環としては、式(1)におけるXが結合している環と同様のものが挙げられる。また、式(1´−1)においてYを有する基が結合している環としては、式(1)におけるXが結合している環と同様のものが挙げられる。
【0056】
上記式(1´−2)〜(1´−4)において、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と接している点線の円弧は、式(1)と同様にホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表し、また、Z及びZが形成する二重結合部分並びに/又はZ及びZが形成する二重結合部分と接している点線の円弧は、該当する二重結合部分と共に環構造が形成されていることを表す。すなわち、上記式(1´−2)〜(1´−3)で表されるホウ素含有化合物は、構造中に少なくとも3つ環構造を有し、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分、及び、1つの二重結合部分が、該環構造の一部として含まれていることを表している。また、上記式(1´−4)で表されるホウ素含有化合物は、構造中に少なくとも4つ環構造を有し、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分、及び、2つの二重結合部分が、該環構造の一部として含まれていることを表している。
【0057】
上記式(1´−2)〜(1´−4)において、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と接している点線の円弧と、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部とによって形成される環構造は、環状構造であれば特に制限されないが、Z及びZが形成する二重結合部分を含む基が結合している環としては、式(1)におけるXが結合している環と同様のものが挙げられる。また、Z及びZが形成する二重結合部分を含む基が結合している環としては、式(1)におけるXが結合している環と同様のものが挙げられる。
【0058】
また、上記式(1´−2)〜(1´−4)において、Z及びZが形成する二重結合部分並びに/又はZ及びZが形成する二重結合部分と接している点線の円弧と、該当する二重結合部分とによって形成される環構造としては、例えば、式(1)におけるXが結合している環、及び、式(1)におけるXが結合している環と同様のものが挙げられる。なお、上記式(1´−4)においては、Z及びZが形成する二重結合部分並びにZ及びZが形成する二重結合部分と接している点線の円弧と、該二重結合部分とによって形成される環構造が少なくとも2つ存在するが、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
本発明はまた、上記式(1)で表される構造を有するホウ素含有化合物を製造する方法であって、該製造方法は、下記式(I);
【0060】
【化12】
【0061】
(式中、点線の円弧は、表記の水素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。表記の水素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。)で表される化合物と、下記式(II);
【0062】
【化13】
【0063】
(式中、Qは、同一若しくは異なって、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される化合物とを反応させる工程を必須とするホウ素含有化合物の製造方法でもある。
本発明のホウ素含有化合物の製造方法によると、パラジウム触媒のような高価な触媒を用いることなく、比較的短い反応時間で新規なホウ素含有化合物を製造することができる。
【0064】
上記製造方法は、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程を含むものである限り、その他の工程を含むものであってもよい。また、上記式(I)で表される化合物、上記式(II)で表される化合物とも、それぞれ1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。
上記式(I)における点線の円弧は、化合物が構造中に少なくとも2つの環構造を有していることを意味する。上記式(I)におけるX、X及び環構造として好ましいものは、上記式(1)におけるX、X及び環構造と同様である。
【0065】
上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる場合、式(I)で表される化合物1モルに対して、式(II)で表される化合物を1モル〜10モル用いることが好ましい。より好ましくは、1モル〜7モルであり、工業的な面から考えても、特に1モル〜3モルを用いることが好ましい。
【0066】
上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程に用いる溶媒としては、当該反応が進行するものである限り特に制限されず、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル等のエステル類;ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルフェニルエーテル(アニソール)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)等のグリコールエーテル(セロソルブ)類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類が好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0067】
上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程においては、反応促進剤を用いてもよい。反応促進剤としては、エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)、ピリジン、トリエチルアミン、DBU等のアミン系化合物が挙げられる。これらの反応促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0068】
上記反応促進剤を用いる場合、反応促進剤の使用量としては、上記式(I)で表される化合物1モルに対して、1モル〜10モルであることが好ましい。さらに好ましくは1モル〜5モルであり、特に好ましくは、1モル〜3モルである。
【0069】
上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程は、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、アルゴン、ヘリウム等のいずれを用いてもよいが、窒素、アルゴンが好ましい。不活性ガスは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0070】
上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程の反応温度は、−78℃〜100℃であることが好ましい。より好ましくは、−30℃〜80℃であり、特に好ましくは溶媒にもよるが、0℃〜50℃である。
反応圧力は、加圧、常圧、減圧のいずれであってもよいが、常圧であることが好ましい。
また、反応時間は、10分間から48時間であることが好ましい。より好ましくは、30分間〜24時間であり、特に好ましくは、工業的、実用的な側面からみても1時間から12時間である。
【0071】
上述した本発明のホウ素含有化合物の製造方法で製造されたホウ素含有化合物は、更に、下記式(III);
【0072】
【化14】
【0073】
(式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、同一若しくは異なって、金属元素を表す。nは、金属元素の価数に対応するR及び/又はRの結合数を表す。)で表される金属元素含有化合物を反応させることで、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程により得られたホウ素含有化合物のホウ素原子に結合した臭素原子又はヨウ素原子を他の置換基と入れ換えることが可能であり、これにより、ホウ素原子に結合する置換基を様々に変えたホウ素含有化合物を製造することができる。
なお、以下においては、この反応工程を脱ハロゲン化工程と記載する。
【0074】
上記脱ハロゲン化工程は、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程により得られたホウ素含有化合物と、上記式(III)で表される金属元素含有化合物とを反応させる工程を含むものである限り、その他の工程を含むものであってもよい。また、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程により得られたホウ素含有化合物、上記式(III)で表される金属元素含有化合物とも、それぞれ1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0075】
上記脱ハロゲン化工程においては、式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程により得られたホウ素含有化合物1モルに対して、上記式(III)で表される金属元素含有化合物を金属元素の価数にもよるが、0.33モル〜5モル使用することが好ましい。より好ましくは、0.67モル〜4モルであり、特に好ましくは、工業的、実用的な側面からみても1モル〜3モルである。
【0076】
上記式(III)で表される金属元素含有化合物における金属元素Mとしては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム、銅等が挙げられる。
及びRとしては、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物のR及びRと同様のものを表している。
上記金属元素Mがマグネシウムである場合、マグネシウムに結合したR、Rの少なくとも1つは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれかであることが好ましい。すなわち、上記式(III)で表される金属元素含有化合物は、MgCl、MgBr、又は、MgIを構造中に含むことが好ましい。
また、上記金属元素Mがマグネシウムである場合、上記脱ハロゲン化工程においては、ハロゲン化金属を反応の際に添加してもよい。ハロゲン化金属を脱ハロゲン化工程における反応の際に添加することによって、金属元素Mがマグネシウムである上記式(III)で表される金属元素含有化合物を用いる場合の、脱ハロゲン化工程における反応収率を向上させることができる。
【0077】
上記ハロゲン化金属におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、上記ハロゲン化金属における金属元素としては、亜鉛、アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、上記ハロゲン化金属としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛が好適である。
【0078】
上記式(III)で表される金属元素含有化合物としては、具体的には例えば、リチウムアルミニウムヒドリド、フェニルリチウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソプロピル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ(4−メトキシフェニル)亜鉛、ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、トリオクチルアルミニウム、フェニルマグネシウムブロミド、4−プロピルフェニルマグネシウムブロミド、ペンタフルオロフェニルマグネシウムブロミド等が挙げられる。これらの中でも、トリオクチルアルミニウム、ジフェニル亜鉛、フェニルマグネシウムブロミドが好ましい。
【0079】
上記脱ハロゲン化工程に用いる溶媒としては、当該反応が進行するものである限り特に制限されないが、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程に用いる溶媒と同様のものを用いることができる。これらの中でも、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテルが好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0080】
上記脱ハロゲン化工程は、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、アルゴン、ヘリウム等のいずれを用いてもよいが、窒素、アルゴンが好ましい。不活性ガスは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0081】
上記脱ハロゲン化工程の反応温度は、−78℃〜120℃であることが好ましい。より好ましくは、−30℃〜100℃であり、特に好ましくは溶媒にもよるが、0℃〜80℃である。反応圧力は、加圧、常圧、減圧のいずれであってもよいが、常圧であることが好ましい。また、反応時間は、1分間〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、3分間〜18時間であり、特に好ましくは、工業的、実用的な側面からみても5分間〜12時間である。
なお、本発明の式(1)で表されるホウ素含有化合物の製造方法においては、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程を行った後に、上記脱ハロゲン化工程を行う際、一旦上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程により得られるホウ素含有化合物を精製した後に、上記式(III)で表される金属元素含有化合物を投入し、脱ハロゲン化工程を行ってもよく、精製を行わずに、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程が終了した後に、そこに上記式(III)で表される金属元素含有化合物を投入し、脱ハロゲン化工程を行ってもよい。このように、本発明の式(1)で表されるホウ素含有化合物の製造方法は、目的に応じて精製工程を行うか否かを選択することができる点においても、有用な方法であるということができる。
【0082】
上述した脱ハロゲン化工程を経て製造されたホウ素含有化合物、又は、上記式(I)で表される化合物と上記(II)で表される化合物とを反応させる工程により得られたホウ素含有化合物が、式(1)におけるX及びXとして上述したハロゲン原子等の反応性基を有する置換基を有している場合には、適当な化合物とカップリング反応させることにより、更に、該環構造に結合する置換基を様々に変えたホウ素含有化合物を製造することができる。上記カップリング反応としては、通常用いられるカップリング反応であれば特に制限されず、例えば、Suzukiカップリング、Stilleカップリング、根岸カップリング等が挙げられる。また、上記カップリング反応の反応条件としては、後述するような各カップリング反応が通常行われる反応条件を適宜採用することができる。
【0083】
上記式(1)で表されるホウ素含有化合物は、式(1)におけるX、X、R及びRのうち少なくとも1つが、反応性基を有する置換基であることが好ましい。
上記式(1)で表されるホウ素含有化合物が、X、X、R及びRの中に少なくとも1組の重縮合し得る反応性基の組み合わせを有するか、又は、X、X、R及びRの中に少なくとも1つ単独で重合し得る反応性基を有するものであると、重合体の原料として好適に用いることができる。このような本発明におけるホウ素含有化合物を含む単量体成分を重合して得られるホウ素含有重合体もまた、本発明の1つである。本発明のホウ素含有重合体には、後述する式(7)で表される繰り返し単位を有するものと、式(11)で表される繰り返し単位を有するものとがある。以下においては、式(7)で表される繰り返し単位を有するホウ素含有重合体、及び、式(11)で表される繰り返し単位を有するホウ素含有重合体を総称して本発明のホウ素含有重合体という。
【0084】
ホウ素原子及び二重結合を有するホウ素含有化合物を含む単量体成分を重合して得られるホウ素含有重合体であって、該ホウ素含有化合物は、下記式(1);
【0085】
【化15】
【0086】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分の一部と共に環構造が形成されていることを表す。ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分は、少なくとも1対の原子が二重結合で結ばれることを表し、該二重結合が環構造と共役していてもよい。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又は環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表す。)で表され、上記ホウ素含有化合物は、式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも1つが、反応性基を有する置換基であることを特徴とするホウ素含有重合体もまた、本発明の1つである。
【0087】
上記ホウ素含有重合体は、式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも2つの基が重縮合するか、又は、少なくとも1つの基が重合して形成される繰り返し単位を有するものである。すなわち、下記式(7);
【0088】
【化16】
【0089】
(式中、点線の円弧、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印は、式(1)と同様である。X´、X´、R´及びR´は、それぞれ、式(1)のX、X、R及びRと同様の基、2価の基、3価の基、又は、直接結合を表す。)で表される繰り返し単位の構造を有するホウ素含有重合体である。上記式(7)は、X´、X´、R´及びR´のうち、いずれか1つ以上が、重合体の主鎖の一部として結合を形成することを意味する。上記式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも2つの基が重縮合してホウ素含有重合体が形成された場合、上記式(7)におけるX´、X´、R´及びR´のうち少なくとも2つが2価の基、又は、直接結合である。上記式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも1つの基が単独で重合してホウ素含有重合体が形成された場合、上記式(7)におけるX´、X´、R´及びR´のうち少なくとも1つが3価の基、又は、直接結合である。
上記式(7)で表される繰り返し単位を有するホウ素含有重合体は、上記式(7)で表される構造の1種からなるものであってもよく、上記式(7)で表される2種以上の構造を含むものであってもよい。上記式(7)で表される2種以上の構造を含むものである場合、当該2種以上の構造は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体でも、グラフト重合体等であってもよい。また、高分子主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーでも良い。
【0090】
上記式(7)で表される繰り返し単位の構造を有するホウ素含有重合体の中でも、上記式(7)中のR´及びR´が、それぞれ式(1)中のR及びRと同様の基であることが好ましい。そして、上記式(7)中のR´及びR´が、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基であることが更に好ましい。
すなわち、式(1)で表されるホウ素含有化合物を含む単量体成分を重合して得られるホウ素含有重合体であって、式(1)におけるR及びRが、同一若しくは異なって、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基、又は、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0091】
上記式(7)で表される繰り返し単位の構造の具体例のうち、重縮合によって得られる構造としては、例えば、以下の式(8−1)〜(8−6)のような構造がある。これらの中でも、(8−1)、(8−6)の構造であることが好ましい。より好ましくは、(8−1)の構造である。すなわち、式(1)で表される構造を有し、式(1)におけるX及びXが、反応性基を有する置換基であるホウ素含有化合物から得られるホウ素含有重合体もまた、本発明の1つである。
【0092】
【化17】
【0093】
上記重縮合し得る反応性基の組み合わせとしては、重合し得るものであれば特に制限されないが、例えば、カルボキシル基とヒドロキシ基、カルボキシル基とチオール基、カルボキシル基とアミノ基、カルボン酸エステルとアミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、ヒドロキシ基とエポキシ基、チオール基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、イソシアネート基とヒドロキシ基、イソシアネート基とチオール基、イソシアネート基とアミノ基、ヒドロキシ基とハロゲン原子、チオール基とハロゲン原子、ボリル基とハロゲン原子、スタニル基とハロゲン原子、アルデヒド基とホスホニウムメチル基、ビニル基とハロゲン原子、アルデヒド基とホスホネートメチル基、ハロアルキル基とハロアルキル基、スルホニウムメチル基とスルホニウムメチル基、アルデヒド基とアセトニトリル基、アルデヒド基とアルデヒド基、ハロゲン原子とボリル基、ハロゲン原子とハロゲン化マグネシウム、ハロゲン原子とハロゲン原子等が挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン原子とボリル基との組み合わせ、ハロゲン原子とハロゲン原子との組み合わせが好ましい。
【0094】
上記式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも2つの基が重縮合してホウ素含有重合体が形成される場合、上記式(7)におけるX´、X´、R´及びR´のうち少なくとも2つが2価の基、又は、直接結合を表すが、該2価の基は、反応性基を有する置換基間の重縮合反応により脱離しない残基を表すこととなる。上記重縮合し得る反応性基の組み合わせとなるような反応性基を有する置換基が重縮合反応した場合には、残基が重合体中に残る場合と、残らない場合とがあり、前者の場合には、X´、X´、R´及びR´のうち少なくとも1つは、反応性基を有する置換基間の重縮合反応により脱離しない残基を表し、後者の場合には、X´、X´、R´及びR´のうち少なくとも1つは、直接結合を表すこととなる。
また、上記式(7)で表される繰り返し単位が2つ以上続く場合には、2つの繰り返し単位の間に、例えば、−X´−X´−のように、X´、X´、R´及びR´のうちの2つが連続する結合が形成されることになるが、この場合、当該2つのうちいずれか一方は、直接結合である。
【0095】
上記重縮合し得る反応性基の組み合わせとなるような反応性基を有する置換基が重縮合反応して残基が重合体中に残る場合の具体的としては、カルボキシル基を有する置換基とヒドロキシ基を有する置換基との組み合わせが挙げられる。例えば、−CHCOOH基と−CHCHOH基とが重縮合反応した場合、重合体中に残る残基は−CH(CO)−O−CHCH−基となる。また、例えば、−COOH基と−OH基との反応のように、反応性基を有する置換基が反応性基のみから構成される場合、重合体中に残る残基は−(CO)−O−基となる。
また、上記重縮合し得る反応性基の組み合わせが重縮合反応して残基が重合体中に残らない場合の具体例としては、ボリル基とハロゲン原子、ハロゲン原子とハロゲン原子との組み合わせが挙げられる。
【0096】
上記式(7)で表される繰り返し単位の構造の具体例のうち、上記式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも1つの基が単独で重合して得られる構造として、例えば、Xが重合して得られる構造は、下記式(9)のような構造である。このように、式(1)中のXが、構造中に単独で重合し得る反応性基を有する置換基である場合、X´が3価の基又は直接結合である構造の繰り返し単位となる。同様に、式(1)中のX、X、R又はRのいずれかが、構造中に単独で重合し得る反応性基を有する置換基である場合、それぞれ、X´、X´、R´、R´が3価の基又は直接結合である構造の繰り返し単位となる。
【0097】
【化18】
【0098】
上記単独で重合し得る反応性基としては、3,5−ジブロモフェニル基、アルケニル基、アルキニル基、エポキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。上記式(1)のホウ素含有化合物がこれらの基のいずれかを少なくとも1つ有することで、上記式(1)のホウ素含有化合物は単独で重合することができる。これらの中でも、アルケニル基、エポキシ基、3,5−ジブロモフェニル基が好ましい。
【0099】
上記式(1)中のX、X、R及びRの中で、重縮合する基は、上記重縮合し得る反応性基を構造中に有する置換基であればよい。同様に、単独重合する基は、上記単独で重合し得る反応性基を構造中に有する置換基であればよい。このような置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数3〜7の環状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルコキシ基、アリール基や複素環基等のいずれかの基の水素原子が上記重縮合し得る反応性基や単独で重合し得る反応性基で置換された基が挙げられる。これらの中でも、スチリル基、3,5−ジブロモフェニル基が好ましい。
【0100】
本発明のホウ素含有重合体は、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物を含む単量体成分から得られるものである限り、単量体成分にその他の単量体が含まれていてもよい。
すなわち、式(1)で表されるホウ素含有化合物と、下記式(10);
【0101】
【化19】
【0102】
(式中、Aは、2価の基を表す。X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又は1価の置換基を表し、X及びXの少なくとも1つの基は、反応性基を有する置換基である。)で表されるその他の単量体とを重合して形成されるホウ素含有重合体もまた、本発明のホウ素含有重合体に含まれる。
【0103】
上記式(10)におけるAは、2価の基であれば、特に制限されないが、その構造を相当する化合物名として挙げると例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ルブレン、ピレン、ペリレン、インデン、アズレン、アダマンタン、フルオレン、フルオレノン、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、チオフェン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、ノルボルネン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、クマリン、シノリン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、フェノチアジン、フラボン、トリフェニルアミン、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ピコリン酸、シロール、ポルフィリン、イリジウム等の金属配位化合物、又は、それらが置換基を有している誘導体、それら誘導体の構造を含むポリマー若しくはオリゴマー等が挙げられる。
なお、上記置換基としては、上記R及びRにおける置換基と同様のものを用いることができる。
【0104】
上記Aとしては、上述したものに加えて、例えば、下記式(11−1)〜(11−4)の構造が挙げられる。
【0105】
【化20】
【0106】
(式中、Ar1、Ar2、Ar3は、同一若しくは異なって、アリーレン基、2価の複素環基又は金属錯体構造を有する2価の基を表す。Z1は、−C≡C−、−N(Q3)−、−(SiQ4Q5)b−、又は、直接結合を示す。Z2は、−CQ1=CQ2−、−C≡C−、−N(Q3)−、−(SiQ4Q5)b−、又は、直接結合を表す。Q1及びQ2は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、又は、シアノ基を表す。Q3、Q4及びQ5は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、又は、アリールアルキル基を示す。aは0〜1の整数を表す。bは1〜12の整数を表す。)
【0107】
上記アリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団であり、環を構成する炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。該芳香族炭化水素としては、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。
上記アリーレン基としては、例えば、下記式(12−1)で表されるフェニレン基、下記式(12−2)〜(12−3)で表されるナフタレンジイル基、下記式(12−4)〜(12−7)で表されるアントラセンジイル基、下記式(12−8)で表されるビフェニル−ジイル基、下記式(12−9)で表されるフルオレン−ジイル基、下記式(12−10)で表されるターフェニル−ジイル基、下記式(12−11)〜(12−12)で表されるスチルベン−ジイル基,下記式(12−13)〜(12−14)で表されるジスチルベン−ジイル基、下記式(12−15)〜(12−20)で表される縮合環化合物基、下記式(12−21)〜(12−23)で表される基等が挙げられる。これらの中でもフェニレン基、ビフェニレン基、フルオレン−ジイル基、スチルベン−ジイル基が好ましい。
なお、式(12−1)〜(12−23)において、Rは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、イミン残基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基またはシアノ基を表す。式(12−1)中においてx−yで示した線のように、環構造に交差して付された線は、環構造が被結合部分における原子と直接結合していることを意味する。すなわち、式(12−1)においては、x−yで示される線が付された環を構成する炭素原子のいずれかと直接結合することを意味し、その環構造における結合位置は限定されない。式(12−10)中においてz−で示した線のように、環構造の頂点に付された線は、その位置において環構造が被結合部分における原子と直接結合していることを意味する。また、環構造に交差して付されたRの付いた線は、Rが、その環構造に対して1つ結合していてもよく、複数結合していてもよいことを意味し、その結合位置も限定されない。
また、式(12−1)〜(12−10)及び(12−15)〜(12−20)において、炭素原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
【0108】
【化21】
【0109】
上記2価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、環を構成する炭素数は通常3〜60程度である。該複素環化合物としては、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子を環内に含むものも含まれる。
【0110】
上記2価の複素環基としては、例えば、下記式(13−1)で表されるピリジン−ジイル基、下記式(13−2)〜(13−3)で表されるジアザフェニレン基、下記式(13−4)〜(13−6)で表されるキノリンジイル基、下記式(13−7)〜(13−9)で表されるキノキサリンジイル基、下記式(13−10)〜(13−12)で表されるアクリジンジイル基、下記式(13−13)で表されるビピリジルジイル基、下記式(13−14)で表されるフェナントロリンジイル基等のヘテロ原子として、窒素を含む2価の複素環基;
下記式(13−15)〜(13−17)で表されるヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含みフルオレン構造を有する基;
下記式(13−18)〜(13−20)で表されるヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基;
下記式(13−21)〜(13−26)で表されるヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環縮合複素基;
下記式(13−27)〜(13−29)で表される、ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基;
下記式(13−30)〜(13−35)で表される、ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基;
下記式(13−36)〜(13−38)で表される、ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、などを含む5員環縮合複素環基にフェニル基やフリル基、チエニル基が置換した基;等が挙げられる。
なお、式(13−1)〜(13−38)において、Rは、上記アリーレン基の有するRと同様である。Yは、O、S、SO、SO、Se、又は、Teを表す。環構造に交差して付された線、環構造の頂点に付された線、環構造に交差して付されたRの付いた線については、式(12−1)〜(12−23)と同様である。
また、式(13−1)〜(13−38)において、炭素原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
【0111】
【化22】
【0112】
上記金属錯体構造を有する2価の基とは、有機配位子を有する金属錯体の有機配位子から水素原子を2個除いた残りの2価の基である。該有機配位子の炭素数は、通常4〜60程度であり、例えば、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾール及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾキサゾール及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体等が挙げられる。
【0113】
上記金属錯体の中心金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ベリリウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウムなどが挙げられ、上記有機配位子を有する金属錯体としては、低分子の蛍光材料、燐光材料として公知の金属錯体、三重項発光錯体などが挙げられる。
【0114】
上記金属錯体構造を有する2価の基としては、具体的には、例えば下記式(14−1)〜(14−7)で表される基が挙げられる。
なお、式(14−1)〜(14−7)において、Rは、上記アリーレン基の有するRと同様である。環構造の頂点に付された線については、式(12−1)〜(12−23)と同様、直接結合を意味する。
また、式(14−1)〜(14−7)において、炭素原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
【0115】
【化23】
【0116】
また、Aの構造としては、下記式(11−5)のような構造も挙げられる。
【0117】
【化24】
【0118】
(式中、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7は、同一又は異なって、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar8、Ar9及びAr10は、同一又は異なって、アリール基又は1価の複素環基を表す。o及びpは、同一又は異なって、0又は1を表し、0≦o+p≦1である。)
【0119】
上記式(11−5)で表される構造の具体例としては、下記式(15−1)〜(15−8)で表される構造が挙げられる。
【0120】
【化25】
【0121】
なお、式(15−1)〜(15−8)において、Rは、上記アリーレン基の有するRと同様である。環構造の頂点に付された線については、式(12−1)〜(12−23)と同様、直接結合を意味する。上記式(15−1)〜(15−8)において、1つの構造式中に複数のRを有しているが、それらは同一であってもよいし、異なる基であってもよい。溶媒への溶解性を高めるためには、水素原子以外を1つ以上有していることが好ましく、また置換基を含めた構造の形状の対称性が少ないことが好ましい。更に、上記式(15−1)〜(15−8)において、Rがアリール基や複素環基をその一部に含む場合は、それらが更に1つ以上の置換基を有していてもよい。また、Rがアルキル鎖を含む置換基においては、それらは直鎖、分岐若しくは環状のいずれか又はそれらの組み合わせであってもよく、直鎖でない場合としては、例えば、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、4−C1〜C12アルキルシクロヘキシル基等が挙げられる。本発明のホウ素含有共重合体の溶媒への溶解性を高めるためには、1つ以上に環状または分岐のあるアルキル鎖が含まれることが好ましい。
また、複数のRが連結して環を形成していてもよい。更に、Rがアルキル鎖を含む基の場合は、該アルキル鎖は、ヘテロ原子を含む基で中断されていてもよい。該ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0122】
上記Aの構造としては、上述したものの中でも、式(11−5)、式(12−9)、式(13−16)、式(13−28)であることが好ましい。
【0123】
上記ホウ素含有重合体は、式(1)中のX、X、R及びRの少なくとも1つの基と式(10)中のX及びXの少なくとも1つの基とが重合して形成される繰り返し単位を有するものである。すなわち、下記式(16);
【0124】
【化26】
【0125】
(式中、点線の円弧、ホウ素原子と窒素原子とを繋ぐ骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印は、式(1)と同様である。X´、X´、R´及びR´は、式(7)と同様である。Aは、同一若しくは異なって、2価の基を表す。X´及びX´は、それぞれ式(10)のX及びXと同様の基、2価の基、3価の基、又は、直接結合を表す。)で表される繰り返し単位の構造を有するホウ素含有重合体もまた本発明のホウ素含有重合体に含まれる。
上記式(16)は、X´、X´、R´及びR´のうち、いずれか1つ以上、かつ、X´及びX´のうち、いずれか1つ以上が、重合体の主鎖の一部として結合を形成することを意味する。
上記式(16)で表される繰り返し単位を有するホウ素含有重合体において、上記式(1)由来の繰り返し単位、上記式(10)由来の繰り返し単位は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体でも、グラフト重合体あってもよい。また、高分子主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーでも良い
また、上記式(16)で表される繰り返し単位を有するホウ素含有重合体は、上記式(1)由来の繰り返し単位、上記式(10)由来の繰り返し単位をそれぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。繰り返し単位を2種以上含むものである場合、当該2種以上の構造は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体でも、グラフト重合体あってもよい。また、高分子主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーでも良い
【0126】
上記式(16)で表されるホウ素含有重合体としては、(i)上記式(1)中のX、X、R及びRのうち、いずれか2つと、上記式(10)中のX及びXとが、重合体の主鎖の一部として結合を形成する場合、(ii)上記式(1)中のX、X、R及びRのうち、いずれか1つと、上記式(10)中のX及びXのいずれか1つの基とが、重合体の主鎖の一部として結合を形成する場合がある。これらの場合の繰り返し単位の構造の具体例として、例えば、下記式(17)、(18)のような構造がある。
【0127】
【化27】
【0128】
上記(i)の構造の場合、上記式(16)で表される繰り返し単位のうち、上記式(1)由来の構造部分の具体例としては、上記式(8−1)〜(8−6)のような構造がある。これらの中でも、(8−1)、(8−6)の構造であることが好ましい。より好ましくは、(8−1)の構造である。
【0129】
上記式(1)中のX、X、R及びRのいずれかの基と、上記式(10)中のX及びXのいずれかの基とが重縮合する場合の反応性基の組み合わせとしては、上述したものと同様のものが挙げられる。すなわち、上記式(1)中のX、X、R及びRのいずれかの基と、上記式(10)中のX及びXのいずれかの基とが重縮合する場合、上記式(10)中のX及びXのうち、当該重縮合する基としては、上述した重縮合し得る反応性基を構造中に有する置換基のいずれかであることが好ましい。
また、上記式(10)中のX及びXのいずれかが、単独で重合し得る反応性基を構造中に有する置換基である場合、当該置換基は、上述した単独で重合し得る反応性基を構造中に有する置換基のいずれかであることが好ましい。
【0130】
本発明のホウ素含有重合体の両末端に結合している基は、特に制限されず、また、同一であっても良く、異なっていてもよい。上記両末端に結合している基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0131】
本発明のホウ素含有重合体は、重量平均分子量が10〜10であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、良好に薄膜化できる。より好ましくは、10〜10であり、更に好ましくは10〜10である。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;クロロホルム)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
高速GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
測定条件:
展開溶媒 クロロホルム
カラム TSK−gel GMHXL ×2本
溶離液流量 1ml/min
カラム温度 40℃
【0132】
本発明のホウ素含有重合体においても、本発明におけるホウ素含有化合物と同様、上述した範囲のLUMOのエネルギー準位を有することが好ましい。ホウ素含有重合体のLUMOのエネルギー準位がそのような範囲であることにより、有機EL素子やN型半導体の材料として好適に用いることができる。
【0133】
また本発明におけるホウ素含有化合物同様、上記ホウ素含有重合体についても、上述した範囲の発光量子収率を有することもまた本発明の好適な実施形態の1つである。ホウ素含有重合体の発光量子収率がそのような範囲のものであると、有機EL素子やHOILED素子等における発光層を構成する発光材料として用いた場合に、充分に安定した発光を得ることが可能となるため、有機EL素子やHOILED素子等に用いる発光デバイスとして、特に発光層を構成する発光材料として好適に用いることができる。
【0134】
本発明のホウ素含有重合体を製造する場合、式(1)で表されるホウ素含有化合物を含む単量体成分を重合する方法が挙げられる。該単量体成分は、式(1)で表されるホウ素含有化合物を含む限り、その他の単量体を含んでいてもよいが、単量体成分全体100質量%に対して、式(1)で表されるホウ素含有化合物を0.1〜99.9質量%含んでいることが好ましい。より好ましくは、10〜90質量%である。
また、重合反応の際には、単量体成分の固形分濃度は、0.01質量%〜溶解する最大濃度の範囲で適宜設定することができるが、希薄すぎると反応の効率が悪く、濃すぎると反応の制御が難しくなる恐れがあることから、好ましくは、0.1〜20質量%である。
【0135】
上記その他の単量体としては、上記式(10)で表される構造を有するものであることが好ましい。なお、上記単量体成分は、式(1)で表されるホウ素含有化合物、式(10)で表される化合物とも、1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0136】
上記式(10)で表される化合物において、X及びXは、上述したX及びXにおける反応性基を有する置換基と同様のものを用いることができる。
【0137】
本発明のホウ素含有重合体が重縮合反応により形成される場合、上記反応性基の組み合わせが、アルデヒド基とホスホニウムメチル基との組み合わせである場合にはWittig反応により、ビニル基とハロゲン原子との組み合わせである場合にはHeck反応により、アルデヒド基とホスホネートメチル基との組み合わせである場合にはHorner反応により、ハロアルキル基とハロアルキル基との組み合わせである場合には脱ハロゲン化水素法により、スルホニウムメチル基とスルホニウムメチル基との組み合わせである場合にはスルホニウム塩分解法により重合を行うことができる。また、上記反応性基の組み合わせが、アルデヒド基とアセトニトリル基との組み合わせである場合にはKnoevenagel反応により、アルデヒド基とアルデヒド基との組み合わせである場合にはMcMurry反応により、ハロゲン原子とボリル基との組み合わせである場合にはSuzukiカップリング反応により、ハロゲン原子とハロゲン化マグネシウムとの組み合わせである場合にはGrignard反応により、ハロゲン原子とハロゲン原子との組み合わせである場合には0価のニッケル触媒を用いた山本重合反応により重合することができる。その他、重合方法としては、塩化鉄(III)等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法等が挙げられる。
これらの重合方法のうちでも、Suzukiカップリング反応、山本重合反応により重合を行うことが好ましい。
【0138】
上記重合工程において用いる溶媒としては、当該反応が進行するものである限り特に制限されないが、上記式(I)で表される化合物と上記式(II)で表される化合物とを反応させる工程に用いる溶媒に加え、水、N、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメトキシエタンを用いることができる。これらの中でも、トルエン、テトラヒドロフラン、キシレンが好ましい。溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、上記Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、N、N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエンが好適に用いられる。また、上記Heck反応の場合には、N、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の比較的沸点の高い溶媒が好適に用いられる。上記Suzukiカップリング反応の場合には、N、N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが好適に用いられる。上記Grignard反応の場合には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が好適に用いられ、該溶媒中でハロゲン化物と金属マグネシウムとを反応させてGrignard試薬溶液とし、該試薬溶液とは別に用意した単量体成分を含む溶液とを混合して後述する触媒を用いて重合反応を行うこととなる。なお、この際には、触媒を過剰反応に注意しながら添加した後、昇温して還流させながら反応させることが好ましい。
また、上記溶媒を用いる際には、副反応を抑制するために、充分に脱酸素処理を行い、不活性雰囲気下で反応が進行するようにすることが好ましい。また、同様の理由から、脱水処理を行うことが好ましい場合もある。ただし、Suzukiカップリング反応のように、水との二相系で反応を行う場合にはその限りではない。
【0139】
上記重合工程においては、触媒を用いてもよく、特に、上記Heck反応、Suzukiカップリング反応、上記重縮合し得る反応性基の組み合わせがスタニル基とハロゲン原子のようなStille重合反応、Grignard反応、山本重合反応により重合を行う場合には、触媒が用いられる。
Heck反応、Suzukiカップリング反応、Stille重合する際の触媒としては、0価のパラジウム触媒、2価のパラジウム塩触媒等が挙げられ、具体的には、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロライド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム、ビス(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム、ビス(1,1’−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、テトラキス(トリエチルホスファイト)パラジウム、パラジウム(II)アセテート類等を挙げることができる。これらの触媒は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらの中でも、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム,トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)が好ましい。
Grignard反応をする際の触媒としては、上記0価のパラジウム触媒、2価のパラジウム塩触媒やニッケル触媒が好適に挙げられる。
また、上記触媒を用いる際には、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフリルホスフィン等の配位子を添加剤として加えてもよい。
なお、触媒を反応液に混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながら、ゆっくりと触媒を含む溶液を添加する方法、触媒を含む溶液に反応液をゆっくりと添加する方法等が挙げられる。
【0140】
上記触媒を用いる場合、触媒の使用量としては、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物1モルに対して、0.001〜0.2モルであることが好ましい。触媒の使用量が0.001モルより少ないと、触媒の機能が充分に発揮されず、0.2モルより多くしても、それ以上の効果の向上は期待できないため、製造コストの点から好ましくない。より好ましくは、0.005〜0.15モルであり、更に好ましくは、0.01〜0.1モルである。
【0141】
上記重合工程においては、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド等を用いることができる。
また、促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物を併用することもできる。
これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0142】
上記重合開始剤を用いる場合、重合開始剤の使用量としては、単量体成分100質量%に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
上記促進剤を使用する場合の使用量としては、単量体成分100質量%に対して、例えば0.05質量%以上であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0143】
重合に際し、安定した分子量の制御には連鎖移動剤の使用が好ましく、モノマーとの相溶性、溶媒への溶解性から、必要に応じて1種又は2種以上の連鎖移動剤を使用することができる。このような連鎖移動剤としては、炭素数3以上の炭化水素基をもつチオール化合物又は25℃の水に対する溶解度が10%以下の化合物が好適であり、上述した連鎖移動剤や、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムなど)や亜硫酸が好適である。
【0144】
上記連鎖移動剤の使用量は、単量体成分100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。0.5質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0145】
上記重合工程においては、アルカリ成分を添加し、アルカリ存在下に反応を行ってもよい。特に、上記Wittig反応、Heck反応、Horner反応、脱ハロゲン化水素法、Knoevenagel反応、Suzukiカップリング反応の場合には、アルカリ存在下に反応を行うことが好ましい。上記アルカリ成分としては、特に制限されないが、例えば、Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウムエチラート、リチウムメチラート等の金属アルコラート;水素化ナトリウム等のハイドライド試薬;ナトリウムアミド等のアミド類等を用いることができる。Heck反応の場合には、トリエチルアミン等を用いることができる。Suzukiカップリング反応の場合には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化バリウム等の無機塩基;炭酸テトラエチルアンモニウム等の炭酸アンモニウム塩、トリエチルアミン、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基;フッ化セシウム等の無機塩等を用いることができ、無機塩を用いる場合には、無機塩を水溶液として、二相系で反応させてもよい。
なお、アルカリ成分を反応液に混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながら、ゆっくりとアルカリ成分を含む溶液を添加する方法、アルカリ成分を含む溶液に反応液をゆっくりと添加する方法等が挙げられる。
【0146】
上記アルカリ成分の使用量としては、単量体成分の有する官能基に対して当量以上であることが好ましい。特に、Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、1〜3当量であることがより好ましく、Suzukiカップリング反応の場合には、1〜10当量であることがより好ましい。
【0147】
上記重合工程は、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、アルゴン、ヘリウム等のいずれを用いてもよいが、窒素、アルゴンが好ましい。不活性ガスは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0148】
上記重合工程の反応温度は、50℃〜200℃であることが好ましい。特に、上記Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、通常室温から150℃程度で反応を進行させることができる。Heck反応の場合には、80℃から160℃程度で反応を進行させることができる。また、Suzukiカップリング反応の場合には、溶媒に応じて設定することができるが、50〜160℃で反応を行うことが好適である。
反応圧力は、加圧、常圧、減圧のいずれであってもよいが、常圧であることが好ましい。
また、反応時間は、5時間以上であることが好ましい。
特に、上記Wittig反応、Horner反応、Knoevenagel反応の場合には、通常5分〜40時間であればよいが、好ましくは、10分〜24時間である。Heck反応の場合には、1〜100時間程度であればよい。また、Suzukiカップリング反応の場合には、1〜200時間程度であればよい。
上記重合反応は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0149】
上記Grignard反応の場合における、上記Grignard試薬の使用量としては、単量体成分に対して当量以上であることが好ましい。より好ましくは、1〜1.5当量であり、更に好ましくは、1〜1.2当量である。
【0150】
本発明におけるホウ素含有化合物及び本発明のホウ素含有重合体は、有機EL素子やN型半導体の材料として好適に用いることができるものである。有機EL素子は、陽極、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を順に積層させた構造のもの、又は、更にホール注入層、電子注入層を有する構造のもの等がある。これらの素子においては、陰極から注入された電子が電子輸送層を通過して発光層に到達することになるが、エネルギー効率の点から、発光層や電子輸送層の材料の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位は、電子注入層の材料の有するLUMOのエネルギー準位及び陰極の価電子帯との間でエネルギーギャップが小さいことが好ましい。陰極としては、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム等の金属やこれらの合金等が用いられるが、これらのうち価電子帯のエネルギーが高いものは、酸化されやすい性質を有するため、エネルギーの低いものを用いることが好ましい。最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位の低いホウ素含有化合物を用いることで、陰極として価電子帯のエネルギーが低く、酸化されにくい物質を陰極に用いることが可能となるため、陰極の選択の自由度を広げることができる。
したがって、このような点から、本発明におけるホウ素含有化合物及び/又は本発明のホウ素含有重合体は、有機EL素子やN型半導体の材料として好適に用いることができるものである。このように、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物を含む本発明の発光材料及び/又は本発明のホウ素含有重合体が発光デバイス形成に用いられることもまた、本発明の1つである。このような、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物を含む本発明の発光材料又は本発明のホウ素含有重合体を用いて形成される発光デバイスもまた、本発明の1つである。
更に本発明におけるホウ素含有化合物及び本発明のホウ素含有重合体のうち、発光量子収率が20〜100%であるものは、その発光量子収率の高さから、安定した発光を得ることができるため、発光デバイスの中でも特に、有機EL素子やHOILED素子の発光層形成に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0151】
本発明におけるホウ素含有化合物は、上述の構成よりなり、LUMOのエネルギー準位が低く、発光量子収率が高い化合物であるために、有機EL素子、N型半導体やHOILED素子の発光材料として好適に用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0152】
図1】実施例1−1の反応を表した反応式である。
図2】実施例2−1の反応を表した反応式である。
図3】実施例2−34の反応を表した反応式である。
図4】実施例3の反応を表した反応式である。
【発明を実施するための形態】
【0153】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0154】
以下の実施例及び比較例において、各種物性は以下のようにして測定した。
H−NMR>
得られたホウ素含有化合物を、重水素化クロロホルムの溶液とし、高分解能核磁気共鳴装置(製品名「Gemini 2000」;300MHz、Varian,Inc.社製)を用いて測定した。化学シフトは、テトラメチルシランから低磁場側における100万分の1(ppm;δスケール)として記録し、テトラメチルシランの水素核(δ0.00)を参照とした。
13C−NMR>
得られたホウ素含有化合物を、重水素化クロロホルムの溶液とし、高分解能核磁気共鳴装置(製品名「Gemini 2000」;75MHz、Varian,Inc.社製)を用いて測定した。化学シフトは、テトラメチルシランから低磁場側における100万分の1(ppm;δスケール)として記録し、NMR溶媒中の炭素核(CDCl:δ=77.0、CDCl:δ=53.1、CDCN:δ=1.32、DMSO−d:δ=39.52)を参照とした。
11B−NMR>
得られたホウ素含有化合物を、重水素化クロロホルムの溶液とし、高分解能核磁気共鳴装置(製品名「Mercury−400」;128MHz、Varian,Inc.社製)を用いて測定した。化学シフトは、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体のホウ素核(δ=0.00)を基準とする100万分の1(ppm;δスケール)として記録した。
<高分解能質量分析スペクトル>
高分解能質量分析計(製品名「JMS−SX101A」、「JMS−MS700」、「JMS−BU250」、日本電子社製)を用いて、電子イオン化法(EI)又は高速電子衝撃法(FAB)により測定した。
【0155】
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;クロロホルム)によって以下の装置、及び、測定条件で測定した。
高速GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
測定条件:
展開溶媒 クロロホルム
カラム TSK−gel GMHXL ×2本
溶離液流量 1ml/min
カラム温度 40℃
【0156】
<LUMOのエネルギー準位>
pドープシリコン基板(フルウチ化学社製)を25mm角に切断し、アセトン中、及び、イソプロピルアルコール中でそれぞれ10分間超音波洗浄した後、UVオゾン処理を20分間施した。試料が低分子化合物の場合は、この基板をアルゴン雰囲気のグローブボックスに連結された真空蒸着装置(アルバック社製)の基板ホルダーに固定した。測定する試料を石英製のルツボに入れ、約1×10−3Paまで減圧し、膜厚10nmになるように蒸着し、測定サンプルとした。試料が高分子化合物の場合は、この基板に0.5〜2重量%の濃度に調整した試料溶液を垂らし、毎分1000〜3000回転の速度でスピンコートして測定サンプルとした。作成した測定サンプルについて、紫外光電子分光装置(コベルコ科研社製)を用いて、イオン化ポテンシャルを測定した。測定値を試料の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位とした。
同時に、上記同様に作成した別の試料薄膜について、紫外可視分光光度計(製品名「Agilent 8453」、アジレント・テクノロジー社製)を用いて、吸収スペクトルを測定した。得られたスペクトルから吸収ピークの長波長側吸収端λ(単位:nm)を読み取り、下記数式(1)により、HOMO−LUMOギャップ(B.G.)を求めた。
【0157】
【数1】
【0158】
更に、上記のように複合電子分光分析装置を用いて求めたHOMOのエネルギー準位と、上記数式(1)から求めたHOMO−LUMOギャップ(B.G.)とから、下記数式(2)により、LUMOのエネルギー準位を求めた。
【0159】
【数2】
【0160】
<蛍光スペクトル>
ホウ素含有化合物のジクロロメタン希薄溶液を調製し、蛍光分光光度計(製品名「FP−777」、日本分光社製)を用いて、以下の測定条件により蛍光スペクトルを測定した。
測定条件
測定温度:常温
励起光の波長:320nm又は370nm(ただし、サンプルの吸収スペクトルの吸収ピーク位置によって適切な波長を選択するものとする。)
測定波長の範囲:330〜600nm
<発光量子収率>
ホウ素含有化合物について、濃度の異なる数種類のジクロロメタン溶液を調製し、紫外可視分光光度計(製品名「Agilent 8453」、アジレント・テクノロジー社製)を用いて、各溶液の吸光度を測定した。また、各溶液の蛍光スペクトルを測定し、蛍光強度(波数積分値)を求めた。得られた吸光度及び蛍光強度から、横軸が吸光度、縦軸が蛍光強度のグラフを作成した。また、標準物質として、キニーネ硫酸塩の0.1M硫酸溶液について、同様に測定を行い、それぞれのグラフを同様に作成した。ホウ素含有化合物についてのグラフ(正の相関を有する直線となる)の傾きをG、キニーネ硫酸塩についてのグラフの傾きをG、ジクロロメタンの屈折率をn、0.1M硫酸の屈折率をn、キニーネ硫酸塩(文献値)をYとして、ホウ素含有化合物の発光量子収率Yを下記数式(3)により求めた。なお、n、n、Yについては、文献値として、n=1.4242、n=1.333、Y=0.54の各値を用いた。
【0161】
【数3】
【0162】
(実施例1−1)
アルゴン雰囲気下、三ヨウ化ホウ素(215.34mg、0.5mmol)にジクロロメタン 0・5mlを加え、0℃に冷却し2−フェニルピリジン(77.6mg、0.5mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。0℃に冷却してから水でクエンチし、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過した後に溶媒を減圧留去し、得られた固体をヘキサンで洗浄することによりホウ素錯体1を160mg、48%の収率で得た。
この反応の反応式を図1に示す。
【0163】
(実施例1−2)
実施例1−1の三ヨウ素化ホウ素を三臭素化ホウ素に変更した以外は、実施例1−1と同様に反応を行い、ホウ素錯体2を73%の収率で得た。
【0164】
(参考例1−1〜1−4)
実施例1−1の三ヨウ素化ホウ素を表1に記載のルイス酸に変更した以外は、実施例1−1と同様に反応を行った。反応条件及び反応結果を表1に示す。なお、表1中において、「no reaction」は、反応が進行しなかったことを表している。
【0165】
【表1】
【0166】
(実施例1−3)
アルゴン雰囲気下、2−フェニルピリジン(78mg、0.50mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.5ml)に、エチルジイソプロピルアミン(65mg、0.50mmol)を加えた後、0℃で三臭化ホウ素(1.0M、1.5ml、1.5mmol)を加え、室温で9時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、下記式(19);
【0167】
【化28】
【0168】
で表されるホウ素錯体3(145mg、0.45mmol)を収率89%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.42(t, J=7.5Hz, 1H), 7.55−7.60(m, 2H), 7.75(d, J=7.8Hz, 1H), 7.87(d, J=7.5Hz, 1H), 7.93(d, J=7.8Hz, 1H), 8.16(t, J=7.8Hz, 1H), 8.95(d, J=5.4Hz, 1H) ; 11B−NMR(CDCl) : δ−1.1 ;
【0169】
(実施例1−4)
アルゴン雰囲気下、2−(4−メチルフェニル)ピリジン(85mg、0.50mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.5ml)に、エチルジイソプロピルアミン(65mg、0.50mmol)を加えた後、0℃で三臭化ホウ素(1.0M、1.5ml、1.5mmol)を加え、室温で9時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、下記式(20);
【0170】
【化29】
【0171】
で表されるホウ素錯体4(150mg、0.44mmol)を収率89%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ2.47(s, 3H), 7.20−7.27(m, 1H), 7.48−7.53(m, 1H), 7.63(d, J=8.1Hz, 1H), 7.68(s, 1H), 7.84−7.87(m, 1H), 8.09−8.15(m, 1H), 8.90(d, J=6.0Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ22.1, 118.1, 121.9, 123.1, 129.7, 130.8, 131.2, 143.6, 144.0, 144.1, 156.0 ; 11B−NMR(CDCl) : δ−1.1 ;
【0172】
(実施例1−5)
アルゴン雰囲気下、5−ブロモ−2−(4−ブロモフェニル)ピリジン(94mg、0.30mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.3ml)に、エチルジイソプロピルアミン(39mg、0.30mmol)を加えた後、0℃で三臭化ホウ素(1.0M、0.9ml、0.9mmol)を加え、室温で9時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、下記式(21);
【0173】
【化30】
【0174】
で表されるホウ素錯体5(40mg、0.082mmol)を収率28%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : 7.57−7.59(m, 2H), 7.80(dd, J=8.4, 0.6Hz, 1H), 7.99(s, 1H), 8.27(dd, J=8.4, 2.1Hz, 1H), 9.01(d, J=1.5Hz, 1H) ;
【0175】
(実施例1−6)
アルゴン雰囲気下、2−フェニルキノリン(62mg、0.30mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.3ml)に、エチルジイソプロピルアミン(39mg、0.30mmol)を加えた後、0℃で三臭化ホウ素(1.0M、0.9ml、0.9mmol)を加え、室温で9時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、下記式(22);
【0176】
【化31】
【0177】
で表されるホウ素錯体6(85mg、0.23mmol)を収率75%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.44(td, J=7.5, 1.0Hz, 1H), 7.65(td, J=7.5, 0.9Hz, 1H), 7.73(ddd, J=8.1, 7.2, 1.1Hz, 1H), 7.87(d, J=7.5Hz, 1H), 7.96−8.09(m, 4H), 8.60(d, J=9.0Hz, 1H), 9.29(d, J=8.7Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ115.1, 122.6, 124.5, 128.1, 128.5, 128.6, 128.9, 130.5, 132.9, 133.4, 133.8, 140.6, 145.0, 157.6 ; 11B−NMR(CDCl) : δ−1.8 ;
【0178】
(実施例1−7)
アルゴン雰囲気下、2−フェニルピリミジン(78mg、0.50mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.5ml)に、0℃で三臭化ホウ素(1.0M、2.0ml、2.0mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、下記式(23);
【0179】
【化32】
【0180】
で表されるホウ素錯体7(148mg、0.45mmol)を収率91%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.49(td, J=7.6, 1.1Hz, 1H), 7.56(dd, J=5.7, 4.8Hz, 1H), 7.67(td, J=7.4, 1.1Hz, 1H), 7.89(d, J=7.5Hz, 1H), 8.10(dt, J=7.5, 0.9Hz, 1H), 9.10−9.14(m, 2H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ119.1, 124.3, 129.1, 130.3, 132.4, 134.9, 151.2, 163.6, 164.1; 11B−NMR(CDCl) : δ−2.4 ; HRMS(FAB)C10BBr(M) : 理論値 323.9069、実測値 323.9073
【0181】
(実施例1−8)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ピリジル)ベンゾチオフェン(105mg、0.50mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.5ml)に、0℃で三臭化ホウ素(1.0M、0.60ml、0.60mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、下記式(24);
【0182】
【化33】
【0183】
で表されるホウ素錯体8(93mg、0.24mmol)を収率49%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.41−7.52(m, 3H), 7.59(d, J=8.1Hz, 1H), 7.89(dd, J=7.4, 1.4Hz, 1H), 8.09(td, J=7.8, 1.5Hz, 1H), 8.20−8.22(m, 1H), 8.90(d, J=5.7Hz, 1H) ; 11B−NMR(CDCl) : δ−3.9 ; HRMS(FAB)C13BBrNS(M) : 理論値 378.8837、実測値 378.8838
【0184】
(実施例1−9)
アルゴン雰囲気下、1,4−ジ(2−ピリジニル)ベンゼン(116mg、0.50mmol)を含むジクロロメタン溶液(0.5ml)に、エチルジイソプロピルアミン(129mg, 1.0mmol)0℃で三臭化ホウ素(1.0M、3.0ml、3.0mmol)を加え、室温で48時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、水とクロロホルムで洗浄することにより、下記式(25);
【0185】
【化34】
【0186】
で表されるホウ素錯体9(210mg、0.37mmol)を収率73%で得た。
【0187】
(実施例2−1)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(32mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)に、トリメチルアルミニウム(1.1M、0.20ml、0.22mmol)を加え、室温で5分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=2:1)で精製することにより、下記式(26);
【0188】
【化35】
【0189】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体10(18mg、0.091mmol)を収率91%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.05(s, 6H), 7.26−7.38(m, 2H), 7.43(td, J=7.5, 0.9Hz, 1H), 7.65(d, J=7.2Hz, 1H), 7.84(d, J=7.5Hz, 1H), 7.93−7.99(m, 2H), 8.44(dt, J=5.7, 1.2Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ8.8, 117.7, 121.3, 121.5, 125.1, 129.1, 130.2, 135.0, 139.2, 142.1, 156.8 ; 11B−NMR(CDCl) : δ1.1 ; HRMS(EI)C1313BN([M−H]) : 理論値 194.1141、実測値 194.1136
この反応の反応式を図2に示す。
【0190】
(実施例2−2〜2−9)
表2に記載のように、有機金属試薬、溶媒、反応条件を変更した以外は、実施例2−1と同様に反応を行い、ホウ素錯体11〜18を得た。反応条件及び反応結果を表2に示す。
なお、表2中、有機金属試薬使用量は、基質として用いた2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジンの量を1モルとした時のモル数を表している。「full conversion」は、反応自体は完全に終了していることを表している。「s.m.remained」は、原料基質が残存していることを表している。「complex mixture」は、目的物は生成しているが、精製不可能な複雑な混合系となっていることを表している。
【0191】
【表2】
【0192】
(実施例2−10)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(32mg、0.10mmol)を含むジエチルエーテル溶液(1.0ml)に、リチウムアルミニウムヒドリド(8.0mg、0.21mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(27);
【0193】
【化36】
【0194】
で表されるホウ素錯体19(13mg、0.080mmol)を収率80%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、35%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ2.8−4.0(br, 2H), 7.30−7.35(m, 2H), 7.46(t, J=7.4Hz, 1H), 7.80(d, J=7.2Hz, 1H), 7.87(d, J=7.8Hz, 1H), 7.93−8.00(m, 2H), 8.64(d, J=5.7Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ117.9, 120.7, 121.5, 125.2, 130.1, 130.2, 136.6, 139.1, 143.8, 158.4 ; 11B−NMR(CDCl) : δ−8.1 ; HRMS(EI)C10BN([M−H]) : 理論値 166.0828、実測値 166.0827
【0195】
(実施例2−11)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(32mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)に、トリエチルアルミニウム(0.94M、0.22ml、0.20mmol)を加え、室温で5分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=3:2)で精製することにより、下記式(28);
【0196】
【化37】
【0197】
(式中、Etは、エチル基を表す。)で表されるホウ素錯体20(18mg、0.082mmol)を収率82%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.41−0.61(m, 8H), 0.69−0.85(m, 2H), 7.27−7.37(m, 2H), 7.42(td, J=7.3, 0.7Hz, 1H), 7.65(d, J=7.2Hz, 1H), 7.84(d, J=7.5Hz, 1H), 7.93−7.99(m, 2H), 8.36(dt, J=6.0, 1.2Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ9.9, 16.7, 117.5, 121.1, 121.2, 125.0, 129.6, 129.8, 136.1, 139.0, 141.9, 157.7; 11B−NMR(CDCl) : δ3.6 ; HRMS(EI)C1517BN([M−H]) : 理論値 222.1454、実測値 222.1450
【0198】
(実施例2−12)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(32mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)に、ジイソプロピル亜鉛(1.0M、0.11ml、0.11mmol)を加え、70℃で12時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(29);
【0199】
【化38】
【0200】
(式中、Prは、イソプロピル基を表す。)で表されるホウ素錯体21(19mg、0.077mmol)を収率77%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.51(d, J=7.5Hz, 6H), 0.62(d, J=7.2Hz, 6H), 1.18(sept, J=7.2Hz, 2H), 7.25−7.41(m, 3H), 7.63(dt, J=7.2, 0.9Hz, 1H), 7.82(dt, J=7.8, 0.9Hz, 1H), 7.94−8.00(m, 2H), 8.36(dt, J=5.7, 1.6Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ19.3, 19.8, 117.4, 120.7, 121.0, 124.9, 129.7, 129.9, 136.6, 138.9, 142.3, 158.0 ; 11B−NMR(CDCl) : δ4.6 ; HRMS(FAB)C1723BN([M+H]) : 理論値 252.1924、実測値 252.1933
【0201】
(実施例2−13)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(32mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)に、ジフェニル亜鉛(0.28M、0.75ml、0.21mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(30);
【0202】
【化39】
【0203】
(式中、Phは、フェニル基を表す。)で表されるホウ素錯体22(31mg、0.098mmol)を収率98%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、28%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.14−7.24(m, 10H), 7.31−7.38(m, 2H), 7.44(t, J=7.4Hz, 1H), 7.74(d, J=6.9Hz, 1H), 7.87(d, J=7.5Hz, 1H), 8.02−8.04(m, 2H), 8.51(d, J=5.7Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ118.1, 121.6, 121.8, 125.6, 125.9, 127.4, 130.7, 131.2, 133.0, 135.8, 140.4, 144.0, 158.3 ; 11B−NMR(CDCl) : δ3.4 ; HRMS(EI)C2318BN(M) : 理論値 319.1532、実測値 319.1532
【0204】
(実施例2−14)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(32mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)に、ジ(4−メトキシフェニル)亜鉛(0.13M、1.6ml、0.21mmol)を加え、70℃で12時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:2)で精製することにより、下記式(31);
【0205】
【化40】
【0206】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体23(34mg、0.090mmol)を収率90%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ3.76(s, 6H), 6.76−6.80(m, 4H), 7.13−7.17(m, 4H), 7.30−7.36(m, 2H), 7.44(td, J=7.2, 0.9Hz, 1H), 7.71(d, J=7.5Hz, 1H), 7.87(d, J=7.5Hz, 1H), 8.00−8.02(m, 2H), 8.47−8.50(m, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ54.9, 113.0, 118.0, 121.6, 121.8, 125.8, 130.7, 131.2, 134.1, 135.7, 140.3, 144.0, 157.9, 158.2 ; 11B−NMR(CDCl) : δ3.8 ; HRMS(EI)C2522BNO(M) : 理論値 379.1744、実測値 379.1734
【0207】
(実施例2−15)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(32mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)に、ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)亜鉛(0.26M、0.80ml、0.21mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(32);
【0208】
【化41】
【0209】
で表されるホウ素錯体24(41mg、0.090mmol)を収率90%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、36%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.26−7.29(m, 4H), 7.36−7.50(m, 7H), 7.68(d, J=6.6Hz, 1H), 7.91(d, J=7.8Hz, 1H), 8.08−8.16(m, 2H), 8.43(d, J=6.0Hz, 1H) ; 11B−NMR(CDCl) : δ2.7 ; HRMS(EI)C2516BFN([M−H]) : 理論値 454.1202、実測値 454.1205
【0210】
(実施例2−16)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(65mg、0.20mmol)を含むトルエン溶液(1.5ml)に、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛(88mg、0.22mmol)を加え、70℃で15時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(33);
【0211】
【化42】
【0212】
で表されるホウ素錯体25(89mg、0.089mmol)を収率89%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、58%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.37−7.49(m, 3H), 7.76(d, J=7.5Hz, 1H), 7.87(d, J=7.5Hz, 1H), 8.05(d, J=8.1Hz, 1H), 8.15(td, J=7.7, 1.3Hz, 1H), 8.59(d, J=5.7Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ118.5, 121.8, 122.4, 127.2, 130.3, 132.0, 135.1, 135.2−149.5(m), 142.3, 144.6, 159.0 ; 11B−NMR(CDCl) : δ−2.3 ; HRMS(EI)C23BF10N(M) : 理論値 499.0590、実測値 499.0583
【0213】
(実施例2−17)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリル−4−メチルフェニル)ピリジン(136mg、0.40mmol)を含むトルエン溶液(4.0ml)に、トリメチルアルミニウム(1.4M、0.59ml、0.82mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(34);
【0214】
【化43】
【0215】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体26(83mg、0.40mmol)を収率99%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、49%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.04(s, 6H), 2.45(s, 3H), 7.10−7.12(m, 1H), 7.28−7.33(m, 1H), 7.46(s, 1H), 7.73(d, J=7.5Hz, 1H), 7.87−7.95(m, 2H), 8.40(d, J=5.7Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ9.0, 22.1, 117.4, 120.8, 121.4, 126.3, 129.8, 132.7, 139.1, 140.5, 142.1, 157.0 ; 11B−NMR(CDCl) : δ1.0 ; HRMS(EI)C1415BN([M−H]) : 理論値 208.1298、実測値 208.1290
【0216】
(実施例2−18)
アルゴン雰囲気下、5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(170mg、0.35mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)とジクロロメタン(1.0ml)の混合溶媒に、トリメチルアルミニウム(1.4M, 0.53ml、0.74mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(35);
【0217】
【化44】
【0218】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体27(112mg、0.32mmol)を収率91%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.03(s, 6H), 7.41(dd, J=8.1, 1.5Hz, 1H), 7.66(d, J=8.4Hz, 1H), 7.73(d, J=2.1Hz, 1H), 7.80(d, J=8.4Hz, 1H), 8.08(dd, J=8.7, 2.1Hz, 1H), 8.49(d, J=2.1Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ8.7, 116.9, 118.7, 123.0, 126.7, 128.6, 132.3, 132.9, 142.4, 143.8, 154.9 ; 11B−NMR(CDCl) : δ1.9 ; HRMS(EI)C1311BBrN([M−H]) : 理論値 349.9351、実測値 349.9334
【0219】
(実施例2−19)
アルゴン雰囲気下、5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(400mg、0.83mmol)を含むトルエン溶液(5.0ml)とジクロロメタン(5.0ml)の混合溶媒に、トリオクチルアルミニウム(1.4M、3.6ml、1.7mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、下記式(36);
【0220】
【化45】
【0221】
(式中、Octは、オクチル基を表す。)で表されるホウ素錯体28(400mg、0.73mmol)を収率88%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.45−1.24(m, 34H), 7.41(dd, J=8.4, 1.8Hz, 1H), 7.65(d, J=8.1Hz, 1H), 7.73(d, J=1.8Hz, 1H), 7.80(d, J=8.7Hz, 1H), 8.07(dd, J=8.7, 2.1Hz, 1H), 8.43(d, J=1.8Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ14.2, 22.7, 25.3, 26.2, 29.4, 29.6, 31.9, 33.6, 116.7, 118.5, 122.9, 126.4, 128.4, 132.6, 133.7, 142.1, 143.4, 155.5 ; 11B−NMR(CDCl) : δ3.8 ; HRMS(FAB)C2741BBrN([M+H]) : 理論値 548.1699、実測値 548.1694
【0222】
(実施例2−20)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)キノリン(120mg、0.32mmol)を含むトルエン溶液(2.0ml)に、トリメチルアルミニウム(1.4M、0.48ml、0.67mmol)を加え、室温で5分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(37);
【0223】
【化46】
【0224】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体29(64mg、0.26mmol)を収率82%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.32(s, 6H), 7.35(td, J=7.2, 0.9Hz, 1H), 7.51(td, J=7.2, 0.9Hz, 1H), 7.61(t, J=7.4Hz, 1H), 7.74(dd, J=7.2, 0.9Hz, 1H), 7.86(ddd, J=8.4, 6.9, 1.5Hz, 1H), 7.92−7.98(m, 2H), 8.06(d, J=8.7Hz, 1H), 8.38(d, J=8.7Hz, 1H), 8.66(d, J=9.0Hz, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ9.3, 115.6, 122.3, 123.4, 125.2, 126.3, 127.6, 128.7, 128.8, 130.8, 131.3, 135.3, 140.3, 142.0, 157.7 ; 11B−NMR(CDCl) : δ2.5 ; HRMS(EI)C1715BN([M−H]) : 理論値 244.1298、実測値 244.1289
【0225】
(実施例2−21)
アルゴン雰囲気下、2−(2−ジブロモボリルフェニル)ピリミジン(33mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)に、トリメチルアルミニウム(1.1M、0.20ml、0.21mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(38);
【0226】
【化47】
【0227】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体30(17mg、0.085mmol)を収率85%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.06(s, 6H), 7.31−7.38(m, 2H), 7.52(td, J=7.2, 1.2Hz, 1H), 7.65(d, J=7.5Hz, 1H), 8.17(dt, J=7.8, 0.9Hz, 1H), 8.63(dd, J=5.7, 2.1Hz, 1H), 8.98−9.00(m, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ8.2, 117.0, 123.8, 125.7, 129.0, 132.1, 134.1, 149.5, 160.3, 165.1 ; 11B−NMR(CDCl) : δ0.8 ; HRMS(EI)C1212BN([M−H]) : 理論値 195.1094、実測値 195.1103
【0228】
(実施例2−22)
アルゴン雰囲気下、2−(3−ジブロモボリルベンゾチオフェニル)ピリジン(200mg、0.53mmol)を含むトルエン溶液(2.0ml)に、トリメチルアルミニウム(1.4M、0.79ml、0.21mmol)を加え、室温で5分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(39);
【0229】
【化48】
【0230】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体31(99mg、0.47mmol)を収率89%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、57%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.15(s, 6H), 7.23−7.27(m, 1H), 7.34−7.43(m, 2H), 7.58−7.61(m, 1H), 7.88−7.94(m, 2H), 7.99−8.02(m, 1H), 8.40−8.42(m, 1H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ8.2, 117.6, 119.3, 123.3, 124.3, 125.6, 126.2, 132.7, 139.5, 140.5, 142.4, 146.0, 153.5 ; 11B−NMR(CDCl) : δ1.0 ; HRMS(EI)C1514BNS(M) : 理論値 251.0940、実測値 251.0936
【0231】
(実施例2−23)
アルゴン雰囲気下、2,2’−(2,5−ビスジブロモボリル−1,4−フェニレン)ジピリジン(57mg、0.10mmol)を含むトルエン溶液(1.0ml)とジクロロメタン(1.0ml)の混合溶液に、トリメチルアルミニウム(1.4M、0.29ml、0.42mmol)を加え、室温で5分間攪拌した。反応溶液を0℃まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、生成した白色固体を濾取し、ヘキサンで洗浄することにより、下記式(40);
【0232】
【化49】
【0233】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体32(22mg、0.71mmol)を収率71%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、46%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.09(s, 12H), 7.36(ddd, J=7.8, 6.0, 1.2Hz, 2H), 7.95−8.00(m, 2H), 8.09−8.11(m, 4H), 8.45(d, J=5.7Hz, 2H) ; 13C−NMR(CDCl) : δ9.4, 118.4, 121.3, 121.9, 137.7, 139.1, 142.2, 157.3 ; HRMS(EI)C2021([M−H]) : 理論値 311.1891、実測値 311.1881
【0234】
(実施例2−24)
窒素雰囲気下、5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(5.8g、12mmol)を含むトルエン溶液(25ml)とジクロロメタン(25ml)の混合溶媒に、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(1M、25ml、25.2mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液を氷水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(41);
【0235】
【化50】
【0236】
で表されるホウ素錯体33(3.2g、8.4mmol)を収率70%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.42(t, 6H), 0.49−0.56(m, 2H), 0.72−0.80(m, 2H), 7.40−7.43(m, 1H), 7.66(d, J=8.0Hz, 1H), 7.74−7.75(m, 1H), 7.81(d, J=8.0Hz, 1H), 8.06−8.09(m, 1H), 8.41−8.42(m, 1H)
【0237】
(実施例2−25)
窒素雰囲気下、5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(5.8g、12mmol)を含むトルエン溶液(25ml)とジクロロメタン(25ml)の混合溶媒に、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1M、25ml、25.2mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液を氷水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(42);
【0238】
【化51】
【0239】
で表されるホウ素錯体34(3.5g、8.0mmol)を収率67%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.34−0.36(m, 6H), 0.50−0.54(m, 8H), 0.54−0.97(m, 4H), 7.41−7.43(m, 1H), 7.66(d, J=8.0Hz, 1H), 7.76−7.81(m, 2H), 8.06−8.09(m, 1H), 8.48−8.49(m, 1H)
【0240】
(実施例2−26)
窒素雰囲気下、フェニルリチウムのジエチルエーテル溶液(1M、31ml、35.2mmol)を0℃まで冷却し、ここへ塩化亜鉛のジエチルエーテル溶液(1M、17ml、17mmol)を攪拌しながら滴下していく。滴下終了後、室温で1時間攪拌する。そこへ5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(3.8g、8mmol)を含むトルエン溶液(80ml)を加え、80℃で15時間加熱攪拌した。室温まで冷却し、反応溶液を氷水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(43);
【0241】
【化52】
【0242】
で表されるホウ素錯体35(2.2g、4.61mmol)を収率58%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.16−7.26(m, 10H), 7.45−7.48(m, 1H), 7.69−7.71(m, 1H), 7.81(d, J=2.0Hz, 1H), 7.90(d, J=8.0Hz, 1H), 8.15−8.18(m, 1H), 8.56(d, J=2.0Hz, 1H)
【0243】
(実施例2−27)
窒素雰囲気下、ペンタフルオロフェニルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液(1M、61.2ml、70.4mmol)を0℃まで冷却し、ここへ塩化亜鉛のジエチルエーテル溶液(1M、17ml、17mmol)を攪拌しながら滴下していく。滴下終了後、室温で1時間攪拌する。そこへ5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(3.8g、8mmol)を含むトルエン溶液(80ml)を加え、80℃で15時間加熱攪拌した。室温まで冷却し、反応溶液を氷水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(44);
【0244】
【化53】
【0245】
で表されるホウ素錯体36(2.2g、4.61mmol)を収率58%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.16−7.26(m, 10H), 7.45−7.48(m, 1H), 7.69−7.71(m, 1H), 7.81(d, J=2.0Hz, 1H), 7.90(d, J=8.0Hz, 1H), 8.15−8.18(m, 1H), 8.56(d, J=2.0Hz, 1H)
【0246】
(実施例2−28)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(159mg、0.3mmol)、trans−2−フェニルビニルボロン酸(945mg、6.4mmol)、ホウ素錯体27(1.1g、3.1mmol)にテトラヒドロフランを50ml加え、さらに水酸化ナトリウム750mgを13mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(45);
【0247】
【化54】
【0248】
で表されるホウ素錯体37(1.1g、2.8mmol)を収率88%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、90%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.10−7.76(m, 15H), 7.78−7.82(m, 2H), 7.90(d, J=8.0Hz, 1H), 8.09−8.12(m, 1H), 8.47−8.48(m, 1H)
【0249】
(実施例2−29)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(204mg、0.4mmol)、trans−2−フェニルビニルボロン酸(1213mg、8.2mmol)、ホウ素錯体33(1.1g、4mmol)にテトラヒドロフランを60ml加え、さらに水酸化ナトリウム960mgを18mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(46);
【0250】
【化55】
【0251】
で表されるホウ素錯体38(1.5g、3.5mmol)を収率88%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、90%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.50(t, J=8.0Hz, 6H), 0.59−0.64(m, 2H), 0.82−0.88(m, 2H), 7.10−7.58(m, 15H), 7.78−7.82(m, 2H), 7.91(d, J=8.0Hz, 1H), 8.10−8.13(m, 1H), 8.38−8.39(m, 1H)
【0252】
(実施例2−30)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(163mg、0.32mmol)、trans−2−フェニルビニルボロン酸(970mg、6.56mmol)、ホウ素錯体34(1.4g、3.2mmol)にテトラヒドロフランを50ml加え、さらに水酸化ナトリウム770mgを15mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(47);
【0253】
【化56】
【0254】
で表されるホウ素錯体39(1.3g、2.7mmol)を収率84%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、89%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.38(d, J=8.0Hz, 6H), 0.56−0.64(m, 8H), 0.90−0.95(m, 2H), 1.04−1.55(m, 2H), 7.16−7.59(m, 15H), 7.77−7.82(m, 2H), 7.90(d, J=8.0Hz, 1H), 8.10−8.11(m, 1H), 8.44−8.45(m, 1H)
【0255】
(実施例2−31)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(102mg、0.2mmol)、trans−2−フェニルビニルボロン酸(607mg、4.1mmol)、ホウ素錯体35(954mg、2mmol)にテトラヒドロフランを30ml加え、さらに水酸化ナトリウム480mgを8mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(48);
【0256】
【化57】
【0257】
で表されるホウ素錯体40(800mg、1.53mmol)を収率77%で得た。
また、その溶液中での発光量子収率は、79%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ6.99−7.52(m, 20H), 7.83−7.85(m, 2H), 7.98(d, J=8.0Hz, 1H), 8.18−8.20(m, 1H), 8.50−8.51(m, 1H)
【0258】
(実施例2−32)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(204mg、0.4mmol)、下記式(49);
【0259】
【化58】
【0260】
で表されるボロン酸エステル(3g、8.2mmol)、ホウ素錯体27(1.4g、4mmol)にテトラヒドロフランを60ml加え、さらに水酸化ナトリウム960mgを16mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(50);
【0261】
【化59】
【0262】
で表されるホウ素錯体41(2.3g、3.4mmol)を収率85%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、92%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.30−7.36(m, 4H), 7.43−7.53(m, 8H), 7.66−7.69(m, 3H), 7.78−7.80(m, 2H), 7.90−7.92(m, 2H), 7.96−8.03(m, 4H), 8.11−8.20(m, 5H), 8.28−8.31(m, 1H), 8.77−8.78(m, 1H)
【0263】
(実施例2−33)
窒素雰囲気下、塩化亜鉛のジエチルエーテル溶液(1M、11.9ml、11.9mmol)を0℃まで冷却し、ここへ4−プロピルフェニルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン(THF)溶液(0.5M、49.9ml、24.9mmol)を攪拌しながら滴下していく。室温で1時間攪拌後、トルエン(30ml)で希釈し、そこへ5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(3.3g、6.9mmol)を一度に加えた。80℃で15時間加熱攪拌後、室温まで冷却し、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(51);
【0264】
【化60】
【0265】
で表されるホウ素錯体42(350mg、0.62mmol)を収率9%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.94(t, J=7.2Hz, 6H),1.62(sec, J=7.6Hz, 4H),2.53(t、 J=7.8Hz, 4H),7.03−7.09(m, 8H),7.45(dd, J=8.2, 1.8Hz, 1H),7.69(d、 J=7.8Hz, 1H),7.86(d, J=2.0Hz, 1H),7.87(dd, J=8.8, 0.8Hz),8.13(dd, J=8.8, 2.0Hz, 1H)
【0266】
(実施例2−34)
4−ヨード−2−フルオロブロモベンゼン(8.0g、26.6mmol)、ビスピナコラトジボロン(5.1g、39.9mmol)、ヨウ化銅(0.51g、2.7mmol)を含むTHF(106ml)溶液に窒素をフローしながら水素化ナトリウム(0.96g、39.9mmol)を室温で一度に加えた。この反応溶液を窒素雰囲気下、室温で12時間攪拌した後、氷冷しながら飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止させた。酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥したものを濾過しロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)で精製し、5.1gの2−フルオロ−4−ブロモフェニルピナコラトボランを得た。これと、2−ブロモピリジン(5.1g、21.4mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(740mg、0.64mmol)をトルエン(93ml)、エタノール(23ml)に溶解させ、炭酸ナトリウム(4.8g、44.9mmol)をHO(23ml)に溶解させた水溶液を加えて100℃で24時間加熱しながら攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製することにより2−(2−フルオロ−4−ブロモフェニル)−5−ブロモピリジン(4.3g、12.8mmol)を収率85%で得た。
次に2−(2−フルオロ−4−ブロモフェニル)−5−ブロモピリジン(1.0g、4.3mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.74ml、4.3mmol)を1,2−ジクロロエタン(43ml)に溶解させ、−20℃に冷却しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(1.0M、12.8ml、12.8mmol)をゆっくり滴下した。この反応溶液を1時間室温で攪拌した後、70℃で12時間加熱攪拌した。水を加えて反応を停止させた後、ジクロロメタンで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥し濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた固体をヘキサンで洗浄することにより1.1gの2−(2−ジブロモボリル−4−ブロモ−6−フルオロフェニル)−5−ブロモピリジン(2.2mmol)を得た。これをトルエンに溶解させ、25質量%トリオクチルアルミニウムのヘキサン溶液(10.1ml、4.8mmol)を室温で加え3時間攪拌した。水を加えて反応を停止させた後、ジクロロメタンで抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過した。濾液を濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=2:1)で精製することにより、下記式(52);
【0267】
【化61】
【0268】
(式中、17は、n−オクチル基を表す。)で表される2−(2−オクチルボリル−4−ブロモ−6−フルオロフェニル)−5−ブロモピリジン(ホウ素錯体43;0.50g、8.8mmol)を収率40%で得た。
この反応の反応式を図3に示す。
また、得られたホウ素錯体43の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.47−0.62(m, 4H),0.71−0.77(m, 4H),0.84(t、 J=7.0Hz, 6H),1.10−1.25(m, 20H),7.12(dd、 J=10.2, 0.9Hz, 1H),7.49(d, J=1.2Hz, 1H),8.04(d, J=8.4Hz),8.10(dd, J=8.8, 2.0Hz, 1H),8.44(d, J=2.0Hz, 1H)
【0269】
(実施例2−35)
窒素雰囲気下、ホウ素錯体28(54.9mg、0.10mmol)、フェニルボロン酸(24.4mg、0.20mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(5.8mg、0.005mmol)、炭酸ナトリウム(21.2mg、0.20mmol)、トルエン1.0ml、水0.2mlの混合物を90℃で24時間加熱攪拌した。水を加え、分液漏斗を用い有機層を分け、水層も酢酸エチルにより2度抽出した。有機層を合わせて、水で1度洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液で1度洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、溶媒を減圧留去した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用い単離精製し、下記式(53);
【0270】
【化62】
【0271】
(式中、Octは、オクチル基を表す。)で表されるホウ素錯体44(44.8mg、0.082mmol)を収率82%で得た。
その物性値は以下のとおりであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.58−1.22(m, 34H),7.35−7.40(m, 1H),7.46−7.58(m, 6H),7.63−7.67(m, 2H),7.72−7.75(m,2H),7.87−7.93(m, 2H),8.01(d, J=8.4Hz, 1H),8.16(dd, J=8.3, 2.0Hz, 1H),8.59(d, J=2.1Hz, 1H)
【0272】
(実施例2−36)
窒素雰囲気下、ホウ素錯体28(27.5mg、0.050mmol)、ジフェニルアミン(25.4mg、0.15mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)−クロロホルム付加体(2.6mg、0.0025mmol)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(4.1mg、0.02mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(48.1mg、0.50mmol)、トルエン1.5mlの混合物を100℃で24時間加熱攪拌した。水を加え、分液漏斗を用い有機層を分け、水層も酢酸エチルにより2度抽出した。有機層を合わせて、水で1度洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液で1度洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、溶媒を減圧留去した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用い単離精製し、下記式(54);
【0273】
【化63】
【0274】
(式中、Octは、オクチル基を表す。)で表されるホウ素錯体45(27.0mg、0.037mmol)を収率74%で得た。
その物性値は以下のとおりであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.31−1.32(m, 34H),6.91(dd, J=8.1, 2.1Hz, 1H),7.01−7.06(m, 2H),7.12−7.20(m, 11H),7.25−7.37(m, 10Hz),7.56−7.64(m, 1H),8.05(d, J=1.5Hz, 1H)
【0275】
(実施例2−37)
窒素雰囲気下、ホウ素錯体28(54.9mg、0.1mmol)をテトラヒドロフラン0.5mlへ溶解させ−78℃に冷却する。ここへノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、135μl、0.21mmol)を滴下し1時間攪拌した。イソプロポキシピナコールボラン(74.4mg、0.40mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。水を加え、分液漏斗を用い有機層を分け、水層も酢酸エチルにより2度抽出した。有機層を合わせて、水で1度洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液で1度洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、溶媒を減圧留去した。粗生成物を、リサイクル分取GPCを用い単離精製し、下記式(55);
【0276】
【化64】
【0277】
(式中、Octは、オクチル基を表す。)で表されるホウ素錯体46(35.0mg、0.054mmol)を収率54%で得た。
その物性値は以下のとおりであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.54−1.22(m, 34H),1.38−1.39(m, 24H),7.74(dd, J=7.5, 1.2Hz, 1H),7.84(d, J=8.1Hz, 1H),7.94(d, J=8.1Hz, 1H),8.09(s, 1H),8.28(dd, J=7.8, 1.2Hz, 1H),8.67(s, 1H)
【0278】
(実施例2−38)
窒素雰囲気下、ホウ素錯体28(54.9mg、0.1mmol)をジエチルエーテル0.5mlへ溶解させ−78℃に冷却する。ここへノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M、71μl、0.11mmol)を滴下し1時間攪拌した。イソプロポキシピナコールボラン(37.2mg、0.20mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。水を加え、分液漏斗を用い有機層を分け、水層も酢酸エチルにより2度抽出した。有機層を合わせて、水で1度洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液で1度洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、溶媒を減圧留去した。粗生成物を、リサイクル分取GPCを用い単離精製し、下記式(56);
【0279】
【化65】
【0280】
(式中、Octは、オクチル基を表す。)で表されるホウ素錯体47(38.4mg、0.064mmol)を収率64%で得た。
その物性値は以下のとおりであった。
H−NMR(CDCl) : δ0.48−1.33(m, 34H),1.39(s, 12H),7.40(dd, J=8.4, 1.5Hz, 1H),7.69(d, J=8.1Hz, 1H),7.76(d, J=1.5Hz, 1H),7.87(d, J=7.8Hz, 1H),8.29(d, J=7.8Hz, 1H),8.64(s, 1H)
【0281】
(実施例2−39)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(46.0mg、0.09mmol)、フェニルボロン酸(225mg、1.85mmol)、ホウ素錯体36(591.2mg、0.9mmol)にテトラヒドロフランを15ml加え、さらに水酸化ナトリウム216mgを4mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(57);
【0282】
【化66】
【0283】
で表されるホウ素錯体48(470mg、0.72mmol)を収率80%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、96%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.36−7.55(m, 8H), 7.63−7.66(m, 3H), 7.94−7.96(m, 2H), 8.10−8.13(m, 1H), 8.32−8.35(m, 1H), 8.73(s, 1H)
【0284】
(実施例2−40)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(46.0mg、0.09mmol)、trans−2−フェニルビニルボロン酸(273mg、1.85mmol)、ホウ素錯体36(591.2mg、0.9mmol)にテトラヒドロフランを15ml加え、さらに水酸化ナトリウム216mgを4mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(58);
【0285】
【化67】
【0286】
で表されるホウ素錯体49(552mg、0.78mmol)を収率87%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、70%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ7.03−7.29(m, 5H), 7.34−7.43(m, 5H), 7.53−7.59(m, 5H), 7.82(s, 1H), 7.84(s, 1H), 8.00(d,J=8.0 Hz, 1H), 8.29−8.31(m, 1H), 8.51(s, 1H)
【0287】
(実施例2−41)
窒素雰囲気下、2−ブロモビフェニル(12.1g、52.2mmol)にジエチルエーテル250mlを加え、−78℃まで冷却する。ここへ、ノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(1.65M、32ml、52.8mmol)を滴下し1時間攪拌する。ここへ塩化亜鉛のジエチルエーテル溶液(1M、25.2ml、25.2mmol)を攪拌しながら滴下していく。ここへトルエン200mlを加え85℃に加熱し、ジエチルエーテルを完全に留去する。110℃に加熱し2時間攪拌し、そこへ5−ブロモ−2−(4−ブロモ−2−ジブロモボリルフェニル)ピリジン(5.8g、12mmol)を加え、110℃で96時間加熱攪拌した。室温まで冷却し、反応溶液を氷水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、下記式(59);
【0288】
【化68】
【0289】
で表されるホウ素錯体50(2.5g、3.97mmol)を収率33%で得た。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ6.41(br, 4H),6.81−6.91(m, 8H), 7.16−7.24(m, 4H), 7.26−7.30(m, 3H), 7.44(d, J=1.2Hz, 1H), 7.55−7.57(m, 1H), 7.61−7.62(m, 1H), 7.65−7.68(m, 1H)
【0290】
(実施例2−42)
窒素雰囲気下、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(46.0mg、0.09mmol)、trans−2−フェニルビニルボロン酸(273.0mg、1.85mmol)、ホウ素錯体50(566.3mg、0.9mmol)にテトラヒドロフランを15ml加え、さらに水酸化ナトリウム216mgを4mlの蒸留水に溶解させた水溶液を加え、70℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却してから溶媒を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、トルエンで再結晶することにより、下記式(60);
【0291】
【化69】
【0292】
で表されるホウ素錯体51(500mg、0.74mmol)を収率82%で得た。また、その溶液中での発光量子収率は、78%であった。
その物性値は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl) : δ6.44−6.54(m, 4H), 6.74−6.93(m, 8H), 7.07(s, 2H), 7.16−7.20(m, 2H), 7.26−7.50(m, 17H), 7.54−7.56(m, 2H), 7.65−7.67(m, 2H), 7.74−7.77(m, 1H)
【0293】
(実施例3)
アルゴン雰囲気下、2−フェニルピリジン(77.6mg,0.5mmol)にジクロロメタン0.5mlを加え溶解させ、ここへ0℃で三臭化ホウ素の1.0Mジクロロメタン溶液を0.5ml加え、室温で1時間攪拌した。ここへ1.07Mトリメチルアルミニウム溶液を935μl加えさらに室温で1時間攪拌した。0℃で水を加えクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後に溶媒を減圧留去し、得られた混合物を分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することにより、下記式(61);
【0294】
【化70】
【0295】
(式中、Meは、メチル基を表す。)で表されるホウ素錯体52を収率65%で得た。
この反応の反応式を図4に示す。
【0296】
(実施例4−1)
下記式(62);
【0297】
【化71】
【0298】
で表されるB8ジブロミド(137.3mg、0.25mmol)、下記式(63);
【0299】
【化72】
【0300】
で表されるF8ボロン酸ジエステル(140.3mg、0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間撹拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg、0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間撹拌し、脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱撹拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg、0.25mmol)を加え1時間撹拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg、0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分撹拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(64);
【0301】
【化73】
【0302】
で表されるホウ素含有重合体F8B8を得た。ホウ素含有重合体F8B8の重量平均分子量は、80000であった。また、溶液中での発光量子収率は、87%であった。
【0303】
(実施例4−2)
式(62)で表されるB8ジブロミド(137.3mg、0.25mmol)、下記式(65);
【0304】
【化74】
【0305】
で表されるビチオフェンボロン酸ジエステル(147.4mg、0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg、0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱攪拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg、0.25mmol)を加え1時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg、0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(66);
【0306】
【化75】
【0307】
で表されるホウ素含有重合体B8T2を得た。ホウ素含有重合体B8T2の重量平均分子量は、40000であった。また、溶液中での発光量子収率は、29%であった。
【0308】
(実施例4−3)
式(62)で表されるB8ジブロミド(137.3mg、0.25mmol)、下記式(67);
【0309】
【化76】
【0310】
で表されるボロン酸ジエステル(112.1mg、0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg、0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱攪拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg、0.25mmol)を加え1時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg、0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(68);
【0311】
【化77】
【0312】
で表されるホウ素含有重合体B8P6を得た。ホウ素含有重合体B8P6の重量平均分子量は、60000であった。また、溶液中での発光量子収率は、66%であった。
【0313】
(実施例4−4)
式(62)で表されるB8ジブロミド(137.3mg、0.25mmol)、下記式(69);
【0314】
【化78】
【0315】
で表されるボロン酸ジエステル(124.4mg、0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg、0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱攪拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg、0.25mmol)を加え1時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg、0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(70);
【0316】
【化79】
【0317】
で表されるホウ素含有重合体B8Czを得た。ホウ素含有重合体B8Czの重量平均分子量は、22000であった。また、溶液中での発光量子収率は、74%であった。
【0318】
(実施例4−5)
式(62)で表されるB8ジブロミド(137.3mg、0.25mmol)、下記式(71);
【0319】
【化80】
【0320】
で表されるボロン酸ジエステル(139.0mg、0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg、0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱攪拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg、0.25mmol)を加え1時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg、0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(72);
【0321】
【化81】
【0322】
で表されるホウ素含有重合体B8TPAを得た。ホウ素含有重合体B8TPAの重量平均分子量は、18000であった。また、溶液中での発光量子収率は、60%であった。
【0323】
(実施例4−6)
式(62)で表されるB8ジブロミド(137.3mg、0.25mmol)、下記式(73);
【0324】
【化82】
【0325】
で表されるボロン酸ジエステル(227.3mg、0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg、0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱攪拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg、0.25mmol)を加え1時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg、0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(74);
【0326】
【化83】
【0327】
で表されるホウ素含有重合体B8FspiroTPAを得た。ホウ素含有重合体B8FspiroTPAの重量平均分子量は、5500であった。
【0328】
(実施例4−7)
式(62)で表されるB8ジブロミド(137.3mg、0.25mmol)、下記式(75);
【0329】
【化84】
【0330】
で表されるB8ジエステル(140.5mg、0.251mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間撹拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(240.4mg、0.8mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間撹拌し、脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱撹拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(39.3mg、0.25mmol)を加え1時間撹拌し、さらにフェニルボロン酸(30.5mg、0.25mmol)を加えた。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分撹拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(76);
【0331】
【化85】
【0332】
で表されるホウ素含有重合体PB8を得た。ホウ素含有重合体PB8の重量平均分子量は、11000であった。また、溶液中での発光量子収率は、49%であった。
【0333】
(実施例4−8)
下記式(77);
【0334】
【化86】
【0335】
で表されるBPhPrジブロミド(350mg、0.62mmol)、式(63)で表されるF8ボロン酸ジエステル(348mg、0.62mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pddba;14.3mg、0.016mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(17.5mg、0.062mmol)、炭酸セシウム(1.22g、3.74mmol)、純水(0.09ml)をTHF(9.3ml)に溶解させ、窒素雰囲気下65℃で48時間加熱攪拌した。末端封止のため、ブロモベンゼン(127mg、0.81mmol)を加え5時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(357mg、2.93mmol)を加え5時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエンで希釈した反応溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(78);
【0336】
【化87】
【0337】
で表されるホウ素含有重合体F8BPhPrを得た。ホウ素含有重合体F8BPhPrの重量平均分子量は、10700であった。
【0338】
(実施例4−9)
下記式(79);
【0339】
【化88】
【0340】
で表されるB8Fジブロミド(280mg、0.49mmol)、式(63)で表されるF8ボロン酸ジエステル(281mg、0.50mmol)をトルエン(3ml)とTHF(3ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下、室温で10分間攪拌した。ここへ、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(商品名:Aliquat336、Aldrich社製;20mg)、25質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(EtNOH)水溶液(0.83ml)と蒸留水(0.75ml)との混合水溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。ここにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(8.6mg、0.007mmol)を加えた後、115℃で還流させながら48時間加熱攪拌した。末端封止のため、ブロモベンゼン(101mg、0.64mmol)を加え5時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(283mg、2.32mmol)を加え5時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエンで希釈した反応溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(80);
【0341】
【化89】
【0342】
で表されるホウ素含有重合体F8B8Fを得た。ホウ素含有重合体F8B8Fの重量平均分子量は、126000であった。
【0343】
(実施例4−10)
下記式(81);
【0344】
【化90】
【0345】
で表されるBC6F5ジブロミド(337mg、0.51mmol)、式(63)で表されるF8ボロン酸ジエステル(292mg、0.52mmol)をトルエン(3ml)とTHF(3ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下、室温で10分間攪拌した。ここへ、Aliquat336(21mg)、25質量%EtNOH水溶液(0.86ml)と蒸留水(0.75ml)との混合水溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。ここにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(8.9mg、0.007mmol)を加えた後、115℃で還流させながら48時間加熱攪拌した。末端封止のため、ブロモベンゼン(105mg、0.67mmol)を加え5時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(294mg、2.41mmol)を加え5時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエンで希釈した反応溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(82);
【0346】
【化91】
【0347】
で表されるホウ素含有重合体F8BC6F5を得た。ホウ素含有重合体F8BC6F5の重量平均分子量は、126000であった。
【0348】
(実施例4−11)
式(62)で表されるB8ジブロミド(241mg、0.44mmol)、式(63)で表されるF8ボロン酸ジエステル(500mg、0.90mmol)、下記式(83);
【0349】
【化92】
【0350】
で表される4,7−ジブロモベンゾチアジアゾール(129mg、0.44mmol)をトルエン11mlに溶解させ、窒素雰囲気下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸テトラエチルアンモニウム(1.02g、5.37mmol)を蒸留水3mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素雰囲気下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。ここにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(10.3mg、0.009mmol)を加えた後、115℃で還流させながら48時間加熱攪拌した。末端封止のため、ブロモベンゼン(183mg、1.16mmol)を加え5時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(513mg、4.21mmol)を加え5時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエンで希釈した反応溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(84);
【0351】
【化93】
【0352】
で表されるホウ素含有重合体F8B8BTを得た。ホウ素含有重合体F8B8BTの重量平均分子量は、10800であった。
【0353】
(実施例4−12)
式(62)で表されるB8ジブロミド(290mg、0.71mmol)、式(63)で表されるF8ボロン酸ジエステル(500mg、0.90mmol)、下記式(85);
【0354】
【化94】
【0355】
で表される2,7−ジブロモジベンゾチオフェンジオキシド(131mg、0.35mmol)をトルエン11mlに溶解させ、窒素雰囲気下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸テトラエチルアンモニウム(1.02g、5.37mmol)を蒸留水3mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素雰囲気下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。ここにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(15.5mg、0.013mmol)を加えた後、115℃で還流させながら48時間加熱攪拌した。末端封止のため、ブロモベンゼン(183mg、1.16mmol)を加え5時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(513mg、4.21mmol)を加え5時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエンで希釈した反応溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(86);
【0356】
【化95】
【0357】
で表されるホウ素含有重合体F8B8DBThO2を得た。ホウ素含有重合体F8B8DBThO2の重量平均分子量は、8900であった。
【0358】
(実施例4−13)
式(62)で表されるB8ジブロミド(389mg、0.71mmol)、式(63)で表されるF8ボロン酸ジエステル(500mg、0.90mmol)、下記式(87);
【0359】
【化96】
【0360】
で表されるN,N−ビス(4−ジブロモフェニル)−4−イソブチルアニリン(65mg、0.14mmol)をトルエン11mlに溶解させ、窒素雰囲気下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸テトラエチルアンモニウム(1.02g、5.37mmol)を蒸留水3mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素雰囲気下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。ここにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(15.5mg、0.013mmol)を加えた後、115℃で還流させながら48時間加熱攪拌した。末端封止のため、ブロモベンゼン(183mg、1.16mmol)を加え5時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(513mg、4.21mmol)を加え5時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエンで希釈した反応溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(88);
【0361】
【化97】
【0362】
で表されるホウ素含有重合体F8B8BTを得た。ホウ素含有重合体F8B8BTの重量平均分子量は、25400であった。
【0363】
(実施例4−14)
下記式(89);
【0364】
【化98】
【0365】
で表されるB8ボロン酸ジエステル(161.6mg、0.251mmol)、下記式(90);
【0366】
【化99】
【0367】
で表されるBTジブロミド(73.5mg、0.25mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素雰囲気下、室温で10分間攪拌した。ここへ、炭酸テトラエチルアンモニウム(240.4mg、0.75mmol)を蒸留水0.75mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素雰囲気下、室温でさらに20分間攪拌し脱気を完了させた。ここにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.9mg、0.0025mmol)を加えた後、115℃で還流させながら18時間加熱攪拌した。末端封止のため、ブロモベンゼン(92mg、0.58mmol)を加え1時間攪拌し、さらにフェニルボロン酸(256mg、2.11mmol)を加え1時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエンで希釈した反応溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分攪拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(91);
【0368】
【化100】
【0369】
で表されるホウ素含有重合体B8BTを得た。ホウ素含有重合体B8BTの重量平均分子量は、118000であった。
【0370】
(実施例4−15)
式(59)で表されるホウ素錯体50(440.4mg、0.7mmol)、式(63)で表されるF8ボロン酸ジエステル(392.8mg、0.704mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(8.1mg、0.007mmol)をトルエン3mlに溶解させ、窒素フロー下、室温で10分間撹拌した。ここへ、炭酸アンモニウム塩(673.1mg、2.1mmol)を蒸留水2.1mlに溶解させて調製した水溶液を加え、窒素フロー下、室温でさらに20分間撹拌し、脱気を完了させた。これを115℃で17時間還流加熱撹拌し、末端封止のため、ブロモベンゼン(117.9mg、0.75mmol)を加え4時間撹拌し、さらにフェニルボロン酸(91.5mg、0.75mmol)を加え4時間攪拌した。室温まで放冷し、トルエン溶液を塩酸で1回、純水で2回分液洗浄し、有機層を数ml程度まで濃縮した。濃縮液を300mlのメタノール中へ滴下させそのまま10分撹拌し、得られた沈殿を濾取した。同様の精製過程を合計3回繰り返し、固体を減圧乾燥させることで、下記式(92);
【0371】
【化101】
【0372】
で表されるホウ素含有重合体F8BBPhを得た。ホウ素含有重合体F8BBPhの重量平均分子量は、120000であった。
【0373】
(実施例5)
[1] まず、市販されている平均厚さ2.3mmのFTO付き透明ガラス基板を用意した。
[2] 次に、FTO電極(陰極)を亜鉛粉末と4N塩酸によりエッチングし、パターン形成を行った。
[3] 次に、該FTO電極上に、スプレイ熱分解法により、平均厚さ100nmの酸化チタン(TiO)層(電子注入性金属酸化物層)を形成した。具体的には、ジャーナル・オブ・ヨーロピアン・セラミック・ソサイエティ(Journal of European Ceramic Society)、1999年、第19巻、p.903又はセラミック・トランスアクションズ(Ceramic Transactions)、2000年、第109巻、p.473等を参照して、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタニウム溶液とエタノールを質量比1:10で混合し、450℃で加熱された上記[2]記載のFTO基板上にスプレイ塗布した。
[4] 次に、実施例4−1で得られたホウ素含有重合体F8B8を0.5質量%でキシレンに溶解させ、上記TiO層(電子注入性金属酸化物層)上に、スピンコート法(2000rpm)により塗布した後、乾燥させた。なお、液状材料の乾燥条件は、大気下、室温とした。これにより発光層が得られた。
[5] 上記発光層上に、真空蒸着装置を用いて、平均厚さ10nmで酸化モリブテン(MoO)を蒸着し、正孔注入性金属酸化物層を作製した。
[6] 上記[5]の連続工程で、平均厚さ30nmで金(Au)(陽極)を蒸着し、素子を得た。該素子は、10V付近から青白い発光を確認することができた。
図1
図2
図3
図4