【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本明細書において%および部は特に記載のない限り重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0023】
<実験1>
造粒固化体の製造
以下の手順により、ペーパースラッジ焼却灰の造粒固化体を得た。
・造粒固化体A: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間2秒、約770℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水24重量部、スラリー状消石灰(生石灰濃度14%スラリー)102.5重量部、石炭灰125重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2週間そのまま放置して自然養生した後、180℃で5時間水熱固化処理を行って、ペーパースラッジ焼却灰の水熱固化体を得た(直径は1mm〜5cmであり、1.18mm〜1.6cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体B: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間3秒、約850℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰730重量部に対し、石炭灰150重量部、水700重量部、二水石膏101重量部を、造粒機(クリハラ社製、商品名ELBAミキサー)で、温度50℃、時間265秒で混合し、この造粒物を2日間自然養生して、粒状の造粒固化体を得た(直径は1mm〜5cmであり、1.18mm〜1.6cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
【0024】
このようにして得られた造粒固化体AおよびBについて、その吸水性、元素組成および結晶組成を測定した。
・吸水性:造粒固化体の吸水性について、吸水倍率および点滴吸水度を測定した。吸水倍率とは、サンプルを水に1時間浸漬させ、サンプルの重量の何倍の水を吸収したかというものであり、長時間での吸水性を評価するものである。点滴吸水度は、サンプル表面に水を10μl載せ、水が内部に浸透するまでの時間であり、短時間での吸水性を評価するものである。
・元素組成:蛍光X線(OXFORD INSTRUMENTS社製、商品名ED2000)により元素分析を行った。
・結晶組成:X線回折(PANalytica社製、商品名X'Pert PRO)により結晶組成について分析した。
【0025】
【表1】
【0026】
雑草の生育抑制試験
上記造粒固化体の雑草抑制効果を評価した。ワグネルポット(直径16cm、高さ20cm)に、供試土壌として火山灰土壌(埴壌土)を入れ、その上に上記造粒固化体を約5cmの厚さで敷設した(
図1)。供試雑草としてメヒシバを用い、ポット当たり0.15gのメヒシバ種子を、造粒固化体層の上下に0.075gずつに分けて播種した。播種後のワグネルポットをポットはガラス室内に設置し、適宜に灌水し、播種から1ヶ月後の雑草の生育状況を観察した。
【0027】
試験結果を表2および
図2〜4に示す。表2および
図2〜4から明らかなように、本発明の雑草抑制材によると効果的に雑草の生育を抑制することができた。本発明の造粒固化体Aを用いた場合、対照に比べて、雑草の発生本数を1/4以下まで抑制することができ、また、造粒固化体Bを用いた場合も雑草の発生本数を35%以上抑制できた。
【0028】
【表2】
【0029】
有害物質の溶出性試験
上記造粒固化体について有害物質の溶出性を評価した。環境省告示第46号付表に定める通りに溶出処理を行って、溶出量測定のための検液を作成した。試料(造粒固化体)を非金属製の2mmの目のふるいを通過させ、試料50gと溶媒(純水に塩酸を加え、水素イオン濃度指数が5.8以上6.3以下となるようにしたもの)500mlを混合し、調製した試料液を常温常圧で振とう機(振とう回数毎分約200回、振とう幅4cm以上5cm以下)を用いて、6時間連続して振とうした。得られた液を30分間静置後、毎分約3000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に計り取って、これを検液とした。
環境省告示第18号に準拠し、フッ素は水質環境基準告示付表6に記載のイオンクロマトグラフ法、ホウ素はJIS K0102 47.3に記載のICP発光分光法、全クロムはJIS K0102 65.2.4に記載のICP発光分光法、鉛はJIS K0102 54.3に記載のICP発光分光法にて測定した。
【0030】
以下の表から明らかなように、本発明の造粒固化体は土壌環境基準を満たしており、実用的に問題がないことが分かった。
【0031】
【表3】
<実験2>
造粒固化体の製造
以下の手順により、直径1mm〜5cmの造粒固化体を得た。
・造粒固化体C: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間3秒、約850℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水75重量部、二水石膏20重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2日間自然養生して、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(1.18mm〜1.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体D: 水の添加量を、ペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、80重量部とした以外は、造粒固化体Cと同様に製造を行って、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(5.0mm〜1.6cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体E: 水の添加量を、ペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、85重量部とした以外は、造粒固化体Cと同様に製造を行って、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(1.0cm〜5.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体F: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間2秒、約770℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水22重量部、スラリー状消石灰(生石灰濃度14%スラリー)102.5重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2週間そのまま放置して自然養生した後、180℃で5時間水熱固化処理を行って、直径が1mm〜5cmであるペーパースラッジ焼却灰の水熱固化体を得た(1.18mm〜1.0cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体G: 製紙工場から排出されたペーパースラッジと、廃木屑を主体とする木質系廃棄物を、乾燥重量比1:1の比率で混合した。この混合物を、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間3秒、約850℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水55重量部、二水石膏20重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2日間自然養生して、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(1.18mm〜1.0cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・市販固化体: 比較として、一般ゴミを原料として、これを燃焼後、再焼成(溶融)、造粒して得られる市販固化体を使用した(製品名:アークサンド、多機能エコソイル工法協会製:直径が1mm〜5cmであり、1.18mm〜1.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
このようにして得られた造粒固化体及び市販固化体について、吸水性の測定、雑草の生育抑制試験、有害物質の溶出性試験を、実験1と同様にして行った。また、造粒固化体C、F、G、市販固化体については、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により、平均細孔半径と累積細孔容積を測定した。
【表4】
【表5】
試験結果を表4〜5に示す。表4から明らかなように、本発明の造粒固化体のいずれもが雑草の発生本数を効果的に抑制できた。特に、1.18mm〜1.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占める造粒固化体C、F、Gは雑草抑制効果が大きく、対照(無処理)に比べて、雑草の発生本数を約1/8まで抑制することができた。
また、表4から明らかなように、ペーパースラッジ焼却灰を原料とする本発明の造粒固化体は、一般ゴミの焼却灰を原料とする造粒固化体と比較して、雑草の発生本数を効果的に抑制できた。ペーパースラッジ焼却灰を原料とする本発明の造粒固化体は、一般ゴミの焼却灰を原料とする市販の固化体と比較して平均細孔半径は小さく、累積細孔容積は大きくなっており、このような細孔特性の違いが雑草の発生抑制効果と関係していると推測された。
さらに、表5から明らかなように、本発明の造粒固化体は土壌環境基準を満たしており、実用的に問題がないことが分かった。