特許第5924589号(P5924589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924589
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/04 20060101AFI20160516BHJP
   A01G 3/053 20060101ALI20160516BHJP
   A01G 3/06 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   A01G3/04 501J
   A01G3/053
   A01G3/06
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-263338(P2012-263338)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108070(P2014-108070A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和也
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−065622(JP,A)
【文献】 特開2005−253458(JP,A)
【文献】 特開2004−261052(JP,A)
【文献】 特開2003−235352(JP,A)
【文献】 特開2012−070679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/00 − 3/08
B25B 21/00 − 21/02
B27B 19/00 − 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機を収容したハウジングと、
前記ハウジングに着脱可能に固定して作業者が把持するハンドルと、
前記ハウジングと前記ハンドルの一方に設けた凹部と、
前記ハウジングと前記ハンドルの他方に設けて前記凹部に嵌合した突部と、
前記凹部と前記突部とに挿通して前記ハンドルを前記ハウジングに固定するための雄ねじ部品と、
前記雄ねじ部品の先端部に締結することにより前記ハンドルを前記ハウジングに固定する雌ねじ部品とを備えた作業機であって、
前記雄ねじ部品を前記雌ねじ部品に締結させて前記ハンドルを前記ハウジングに固定した状態で、前記雄ねじ部品の前記雌ねじ部品との締結部分を含む先端側の長さを前記突部の突出長より長くし、
前記突部の突出方向の先端面と側面との間の角部を面取りしたことを特徴する作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機において、
前記突部は突出方向と交差する方向に延在する前記ハンドルの回り止めのための回り止め部を備え、前記突部の突出長と前記回り止め部の延出する方向と交差する幅方向の長さとの比が1:2〜1:3.3となるように設定したことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッジトリマ、芝刈バリカン等の原動機を収容したハウジングに作業者が把持するハンドルを固定した作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、この種の作業機であるヘッジトリマが開示されている。このヘッジトリマは、ハウジング内に原動機である電動モータを備え、電動モータの作動によりハウジングの下部に設けた一対のシャーブレードを往復動させるものである。ハウジングの前部には作業者が把持して使用する逆U字形をしたハンドルが固定されている。
【0003】
このヘッジトリマにおいては、ハウジング内の部品のメンテナンスをするために、ハンドルはハウジングに対してねじにより着脱可能に固定されている。図6に示したように、逆U字形をしたハンドルの先端部には突部が形成されており、ハンドルの突部はハウジングに形成した凹部に嵌合されている。ハンドルの突部がハウジングの凹部に嵌合した状態にて、ハンドルの外側からねじをハンドルの突部とハウジングの凹部とに挿通し、ねじの先端部にハウジングに設けたナットを締結することで、ハンドルはハウジングに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−139235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のヘッジトリマにおいては、組付け不良等により、ハンドルを固定したねじがナットから弛んでいる場合がある。図6(b)に示したように、ハンドルの先端部の突部は突出方向の先端面と側面との角部が直角に形成されていることで、ねじがナットから弛んでいても、ハンドルの突部が凹部に対してがたつくことなく嵌合して、ねじの弛みに気付きにくかった。このような状態で電動モータを作動させると、ねじがナットから外れて脱落する場合があり得るが、ハンドルの突部の側面がハウジングの凹部の側面に引っ掛かっているために、直ちにハンドルがハウジングから外れることはなかった。しかし、ハウジングに対して大きな負荷が加わると、ハンドルの突部がハウジングの凹部から外れ、最悪の場合には、ハンドルがハウジングから外れることがあり得る。本発明は、ハンドルがハウジングから外れる前に、ハンドルを固定するねじの弛みに早期に気付くことができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、原動機を収容したハウジングと、ハウジングに着脱可能に固定して作業者が把持するハンドルと、ハウジングとハンドルの一方に設けた凹部と、ハウジングとハンドルの他方に設けて凹部に嵌合した突部と、凹部と突部とに挿通してハンドルをハウジングに固定するための雄ねじ部品と、雄ねじの先端部に締結してハンドルをハウジングに固定する雌ねじ部品とを備えた作業機であって、雄ねじ部品を雌ねじ部品に締結させてハンドルをハウジングに固定した状態で、雄ねじ部品の雌ねじ部品との締結部分を含む雄ねじ部品の先端側の長さを突部の突出長より長くし、突部の突出方向の先端面と側面との間の角部を面取りしたことを特徴する作業機を提供するものである。
【0007】
上記のように構成した作業機においては、雄ねじ部品の雌ねじ部品との締結部分を含む雄ねじ部品の先端側の長さを突部の突出長より長くし、突部の突出方向の先端面と側面との間の角部を面取りしたので、雄ねじ部品が雌ねじ部品から弛んでいるときに、雄ねじ部品が雌ねじ部品から抜けて外れる前、すなわち、雄ねじ部品が雌ねじ部品に係合してハンドルがハウジングに固定された状態で、突部の先端の面取りした部分が凹部との間でがたつくことにより、雄ねじ部品が雌ねじ部品から弛んでいることに気づくことができる。これにより、雄ねじ部品が雌ねじ部品に対して弛んで外れることに起因して、ハンドルがハウジングから外れるのを未然に防ぐことができる。
【0008】
上記のように構成した作業機においては、突部は突出方向と交差する方向に延在するハンドルの回り止めのための回り止め部を備え、突部の突出長と回り止め部の延出する方向と交差する幅方向の長さとの比が1:2〜1:3.3となるように設定したときには、凹部に突部を十分に引掛けたうえでハンドルをハウジングに固定できるとともに、突部の先端の面取りした部分が凹部との間で十分にがたついて、雄ねじ部品が雌ねじ部品に対して弛んでいることに気づくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の作業機の一実施形態であるヘッジトリマの側面図である。
図2図1の前後方向に沿った断面図である。
図3図1のアウターハウジングを分解した斜視図である。
図4図1のA−A断面図である。
図5】(a)ハンドルの斜視図であり、(b)ハンドルの先端部の突部を示す拡大図である。
図6】(a)従来のハンドルの斜視図であり、(b)従来のハンドルの先端部の突部を示す拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の作業機の一実施形態であるヘッジトリマを添付図面を参照して説明する。図1及び図2に示したように、ヘッジトリマ10は、ハウジング11内に原動機である電動モータ20を備え、電動モータ20の作動によりクランク機構21を介してハウジング11の下部に設けたブレードアセンブリ22の一対のシャーブレード22a,22bを往復動させるものである。
【0011】
図1図3に示したように、ハウジング11は主として電動モータ20とクランク機構21とを収容したインナハウジング12と、インナハウジング12を防振的に収容するアウタハウジング13とからなる。アウタハウジング13は左右のパーツ13a,13bよりなる。アウタハウジング13の後部には作業者が一方の手で把持するグリップ14が一体的に形成されている。
【0012】
アウタハウジング13の側壁前部の外面下部にはハンドル30を固定するための凹部15が形成されている。凹部15は後述するハンドル30の突部31が嵌合する形状であり、低い円形の柱状をした円柱部の周方向に略等間隔に配置した3箇所から放射状に延びる回り止めのための回り止め部を形成した形状となっている(凹部15の形状はハンドル30の突部31が嵌合する形状であり、ハンドル30の突部31の形状を図4及び図5に詳細に示しているので、凹部15の詳細な図面は省略する)。図3及び図4に示したように、アウタハウジング13の周壁内面には凹部15が形成された位置に内側に突出する円柱形突部16が形成されており、この円柱形突部16の内部の貫通孔にはナット(雌ねじ部品)17が固着されている。なお、凹部15の底壁には円柱形突部16の貫通孔と同心的にナット17に締結するねじ34を挿通する挿通孔15aが形成されている。
【0013】
図1に示したように、アウタハウジング13の側壁前部の下部には、凹部15が形成された位置に、作業者が他方の手で把持して使用する逆U字形をしたハンドル30が着脱可能に固定されている。図5に示したように、逆U字形をしたハンドル30の下部の両側の先端部は互いに内側に向けて屈曲しており、ハンドル30の下部の両先端部には互いに内側に向けて突出して凹部15に嵌合した突部31,31が形成されている。突部31は、円形の低い柱状をした円柱部31aと、円柱部31aの周方向に略等間隔に配置した3箇所から、突部31の突出する方向と直交(交差)する方向にて放射状に延びる回り止め部31b,31c,31dとから構成されている。突部31の突出方向の先端面と、先端面と直交して、突出方向に平行な側面との間の角部は面取りがされた面取り部31eが形成されている。この実施形態においては、突部31の突出方向の高さは3mmとなっており、回り止め部31b,31c,31dの幅方向の長さは6mm,10mm,10mmとなっている。
【0014】
図1及び図4に示したように、ハンドル30の下部には、突部31の円柱部31aの中心軸を通るようにハンドル30の固定のためのねじ34の挿通孔32が貫通して形成されている。挿通孔32のアウタハウジング13側には、突部31の円柱部31aが形成された部分を含めて補強のための金属製のスリーブ33が挿入されている。挿通孔32の内径はねじ34の頭部34aの直径より大きく形成されている。また、スリーブ33の内径はねじ34の頭部34aの直径より小さく、ねじ34のねじ部34bの直径より大きく形成されている。
【0015】
図4に示したように、ハンドル30の挿通孔32にはねじ34が挿通されており、ねじ34の先端部はアウタハウジング13に固着したナット17に締結している。詳述すると、ねじ34の頭部34aはスリーブ33の軸線方向の端面に係止した状態で、ねじ部34bがスリーブ33内と凹部15の挿通孔15aを通り、ねじ部34bの先端部がナット17に締結されている。ねじ34のナット17との締結部分を含む先端側の長さは7mmとなっている。
【0016】
このヘッジトリマ10においては、電動モータ20を作動させると、一対のシャーブレード22a,22bが往復動し、往復動する一対のシャーブレード22a,22bを生垣に当てると、生垣の枝葉が刈り取られる。
【0017】
上記のように構成したヘッジトリマ10は、電動モータ20を収容したハウジング11と、ハウジング11に着脱可能に固定して作業者が把持するハンドル30と、ハウジング11に設けた凹部15と、ハンドル30に設けて凹部15に嵌合する突部31と、凹部15と突部31とに挿通してハンドル30をハウジング11に固定するためのねじ34と、ねじ34の先端部に締結することによりハンドル30をハウジング11に固定するナット17とを備えている。このヘッジトリマ10においては、ねじ34をナット17に締結させてハンドル30をハウジング11に固定した状態で、ねじ34のナット17との締結部分を含む先端側の長さ(7mm)を突部31の突出長(3mm)より長くし、突部31の突出方向の先端面と側面との間の角部を面取りした。
【0018】
このヘッジトリマ10においては、ねじ34をナット17に弛むことなく締結して、ハンドル30をハウジング11に固定した状態では、ハンドル30の突部31はハウジング11の凹部15に対して突出方向に隙間なく嵌合し、突部31の側面は凹部15の側面と隙間なく当接し、ハンドル30の突部31はハウジング11の凹部15に対してがたつかない。
【0019】
このヘッジトリマ10においては、組付け不良などにより、ハンドル30を固定したねじ34がナット17から弛んでいる場合がある。ねじ34がナット17から弛んでいるとと、ハンドル30の突部31がハウジング11の凹部15から突出する方向と反対側に後退している。突部31が凹部15から後退しているときに、突部31の先端部の角部には面取り部31eが形成されているので、突部31は先端部の角部の面取りした範囲で凹部15の側面との間を突出方向と直交する方向に揺動可能となり、突部31が凹部15に対してがたつく。このとき、ねじ34のナット17との締結部分を含む先端側の長さは突部31の突出長より長いので、突部31が凹部15から完全に外れる場合でも、ねじ34が少なくともナット17の一部に係合している。このように、ねじ34がナット17から弛んでいるときに、ねじ34がナット17から抜けて外れる前、すなわち、ねじ34がナット17に係合してハンドル30がハウジング11に固定された状態で、突部31の先端部の角部の面取りした部分が凹部15との間でがたつくことにより、ねじ34がナット17から弛んでいることに気付くことができる。これにより、ねじ34がナット17に対して弛んで外れることに起因して、ハンドル30がハウジング11から外れるのを未然に防ぐことができる。また、ハンドル30をハウジング11に固定したときに、ハンドル30を揺動させて、突部31が凹部15との間でがたつくか否かを調べることで、ねじ34がナット17に弛むことなく締結していることを確認できる。
【0020】
このヘッジトリマ10においては、突部31は突出方向と直交する方向にて、円柱部31aの中心軸から放射状に延在するハンドル30の回り止めのための回り止め部31b,31c,31dを備えている。突部31の突出長は3mmとし、回り止め部31b,31c,31dの放射状に延出する方向と直交する幅方向の長さは6mm,10mm,10mmと設定している。このように、突部31の突出長と回り止め部31b,31c,31dの延出する方向と直交する幅方向の長さとの比は1:2〜1:3.3となるように設定したことで、凹部15に突部31を十分に引掛けたうえでハンドル30をハウジング11に固定できるとともに、上述したように突部31の先端の面取りした部分が凹部15との間で十分にがたつくことで、ねじ34がナット17に対して弛んでいることに気づくことができる。この実施形態においては、突部31には円柱部31aの周方向に略等間隔に配置した3箇所から、突部31の突出する方向と直交する方向にて放射状に延びる回り止め部31b,31c,31dを形成したが、本発明はこれに限られるものでなく、1つ以上の回り止め部を形成したものであってもよい。このときにも、突部31の突出長と回り止め部の幅方向の長さとの比を1:2〜1:3.3となるように設定するのが好ましい。
【0021】
上述した実施形態においては、ハウジング11に凹部15を設け、ハンドル30に凹部15に嵌合する突部31を設けたが、本発明はこれに限られるものでなく、ハウジング11に突部を設け、ハンドル30にハウジング11の突部が嵌合する凹部を設けたものであっても上述したのと同様の作用効果を得ることができる。また、上述した実施形態においては、ハウジング11にナット(雌ねじ部品)17を設け、ハンドル30の挿通孔32を挿通したねじ(雄ねじ部品)25の先端部をナット17に締結させてハンドル30をハウジング11に固定したが、本発明はこれに限られるものでなく、ハンドル30にナット(雌ねじ部品)を設け、ハウジング11に形成した挿通孔に挿通したねじ(雄ねじ部品)をナットに締結させてハンドル30をハウジング11に固定したときにも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
上述した実施形態においては、ハウジング11に雌ねじ部品としてナット17を設けたが、本発明はこれに限られるものでなく、雌ねじ部品としてハウジング11に形成した孔に雌ねじを穿設したものにも適用される。
【0023】
上述した実施形態においては、原動機に作動により振動する電動モータ20を用いたが、本発明はこれに限られるものでなく、作動によって振動する原動機として、ガソリン等の燃料により作動するエンジンをハウジングに収容したヘッジトリマ等の作業機であってもよく、このようにしたときにも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
上述した実施形態は生垣の枝葉を切断するヘッジトリマについて説明したが、本発明の作業機は、原動機を収容したハウジングに作業者が把持するハンドルを着脱可能に固定した、芝刈り機、チェーンソー等の他の作業機にも適用される。
【符号の説明】
【0025】
10…ヘッジトリマ(作業機)、11…ハウジング、15…凹部、17…雌ねじ部品(ナット)、20…電動モータ、30…ハンドル、31…突部、31b〜31d…回り止め部、34…雄ねじ部品(ねじ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6