【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、開発項目「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発/共通基盤研究/過渡現象を利用する大規模蓄電システムの非破壊劣化診断技術」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池等の蓄電池を利用した大規模な蓄電池充電システムの利用が各方面で進められている。かかるシステムにおいては、運用中(充放電中)に蓄電池の状況をリアルタイムに把握すること、すなわち、蓄電池に対して特別な電圧や電流を印加することなく、蓄電池と等価な回路を短時間の間に合成することが求められている。
【0003】
通常、蓄電池は、
図1に示すような等価回路で表すことができる(例えば、非特許文献1参照)。同図に示すように、蓄電池の等価回路は、起電力V
0を出力する直流電圧源Eと、抵抗R
B0と、電気二重層を表す抵抗R
B1〜R
BMおよびコンデンサC
B1〜C
BMからなるM個の並列回路とから構成されている。事前に等価回路(抵抗R
B0と抵抗R
B1〜R
BMの抵抗値およびコンデンサC
B1〜C
BMの静電容量値)が分かっていれば、運用中に直流電圧源Eの起電力V
0を推定し、これに基づいてSOC(State of Charge)を正確に把握し、充電電流値を調整する等のきめ細かな充電制御が可能となる。また、事前に起電力V
0が分かっていれば、運用中に等価回路を合成することができ、等価回路を構成する各素子の素子値が初期の値からどの程度変化したのかに基づいて、蓄電池の劣化度合いを診断することが可能になる。
【0004】
蓄電池の等価回路を合成するための手法としては、交流インピーダンス測定法が知られている。しかしながら、同測定法による等価回路の合成では、蓄電池単体に対して特殊な電流(電圧)を印加し、それに対する電圧(電流)を測定する必要があるので、運用中に等価回路を合成することができないという問題があった。また、同測定法による等価回路の合成は、複雑な複素計算を要することから計算負荷が高くならざるを得ないという問題もあった。
【0005】
蓄電池の等価回路を合成するための別の手法として、周波数変換法も従来から知られている。しかしながら、この方法を用いた等価回路の合成も上記交流インピーダンス測定法の場合と同様に複雑な複素計算が必要であるとの問題を有していた。
【0006】
なお、複雑な計算を必要としない比較的簡単な等価回路の合成方法があれば、蓄電池の分野だけでなく、コンピュータシミュレーションを用いた設計・解析が行われる様々な分野においてもメリットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、運用を一時中断して被合成回路に特別な電圧または電流を印加することなく、比較的簡単な計算で被合成回路の等価回路を合成することができる等価回路合成方法並びに等価回路合成装置、およびリアルタイムに被合成回路の状態を診断することができる回路診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る等価回路合成方法は、被合成回路と等価な、複数の素子からなる予め定められた形式の等価回路を合成するための方法であって、被合成回路の各N個(ただし、Nは2以上の整数)の電圧値V
Bおよび電流値I
Bをサンプリングにより取得するステップと、N個の電圧値V
Bから当該被合成回路に含まれる直流電圧源の影響を取り除いてN個の電圧値V
Zを得るステップと、N個の電圧値V
Zからなる電圧波形およびN個の電流値I
Bからなる電流波形をそれぞれz変換し、電圧関数V
Z(z)および電流関数I
B(z)を求めるステップと、電圧関数V
Z(z)および電流関数I
B(z)の比をとることによりz領域におけるN次のインピーダンス関数Z
B(z)またはアドミタンス関数Y
B(z)を求めるステップと、有理関数近似によりインピーダンス関数Z
B(z)またはアドミタンス関数Y
B(z)をM次(ただし、Mは0<M<Nの関係を満足する整数)のインピーダンス関数Z
BP(z
-1)またはアドミタンス関数Y
BP(z
-1)に近似するステップと、等価回路のz領域における回路方程式とインピーダンス関数Z
BP(z
-1)またはアドミタンス関数Y
BP(z
-1)を突き合わせることにより、等価回路を構成する複数の素子の素子値を決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記等価回路合成方法における有理関数近似は、例えば、0≦z
-1≦1の範囲から選ばれた近似点z
a-1まわりのパデ近似とすることができる。この場合は、インピーダンス関数Z
B(z)またはアドミタンス関数Y
B(z)のz=1における接線とz=∞における接線との交点に基づいて近似点z
a-1を選ぶのが好ましい。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る等価回路合成装置は、被合成回路と等価な、複数の素子からなる予め定められた形式の等価回路を合成するための装置であって、被合成回路のN個(ただし、Nは2以上の整数)の電圧値V
Bをサンプリングにより取得する電圧計と、被合成回路のN個の電流値I
Bをサンプリングにより取得する電流計と、電圧計によって取得されたN個の電圧値V
Bおよび電流計によって取得されたN個の電流値I
Bに基づいて、等価回路を構成する複数の素子の素子値を決定する演算部と、を備え、演算部は、N個の電圧値V
Bから当該被合成回路に含まれる直流電圧源の影響を取り除いてN個の電圧値V
Zを得、N個の電圧値V
Zからなる電圧波形およびN個の電流値I
Bからなる電流波形をそれぞれz変換して電圧関数V
Z(z)および電流関数I
B(z)を求め、電圧関数V
Z(z)および電流関数I
B(z)の比をとることによりz領域におけるN次のインピーダンス関数Z
B(z)またはアドミタンス関数Y
B(z)を求め、有理関数近似によりインピーダンス関数Z
B(z)またはアドミタンス関数Y
B(z)をM次(ただし、Mは0<M<Nの関係を満足する整数)のインピーダンス関数Z
BP(z
-1)またはアドミタンス関数Y
BP(z
-1)に近似し、等価回路のz領域における回路方程式とインピーダンス関数Z
BP(z
-1)またはアドミタンス関数Y
BP(z
-1)を突き合わせることにより、等価回路を構成する複数の素子の素子値を決定することを特徴とする。
【0012】
上記等価回路合成装置における有理関数近似は、例えば、0≦z
-1≦1の範囲から選ばれた近似点z
a-1まわりのパデ近似とすることができる。この場合は、インピーダンス関数Z
B(z)またはアドミタンス関数Y
B(z)のz=1における接線とz=∞における接線との交点に基づいて近似点z
a-1を選ぶのが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る回路診断方法は、上記等価回路合成方法を用いて被合成回路を構成する複数の素子の素子値を決定するステップと、素子値が予め設定された範囲内にあるか否か、または素子値の経時的変化が予め想定されている変化の範囲内であるか否かに基づいて、被合成回路の状態を診断するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運用を一時中断して被合成回路に特別な電圧または電流を印加することなく、比較的簡単な計算で被合成回路の等価回路を合成することができる等価回路合成方法並びに等価回路合成装置を提供することができる。また、本発明によれば、リアルタイムに被合成回路の状態を診断することができる回路診断方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。なお、以下では、蓄電池の等価回路を合成する場合(第1実施例)、および接地インピーダンスの等価回路を合成する場合(第2実施例)について説明する。
【0017】
[第1実施例]蓄電池
まず、第1実施例として、蓄電池の等価回路の合成について説明する。蓄電池の等価回路を合成するためには、蓄電池の電圧(
図1のV
B)および電流(I
B)の値を取得するための電圧計および電流計と、取得した電圧値V
Bおよび電流値I
Bに基づいて等価回路を構成する素子の素子値を決定するマイコン等からなる演算部とが必要となる。しかしながら、通常、これらは蓄電池充電システムに備えられているので、本発明に係る等価回路合成方法によって等価回路を合成する際に、既存の蓄電池充電システムにわざわざハードウェア的な変更を加える必要はない。
【0018】
図2に、本実施例に係る等価回路合成方法のフローチャートを示す。同図に示すように、本実施例に係る等価回路合成方法は、蓄電池の電圧値V
Bおよび電流値I
Bを取得する第1ステップS1と、電圧値V
Bから電圧値V
Zを計算する第2ステップS2と、z変換により電圧関数V
Z(z)および電流関数I
B(z)を求める第3ステップS3と、インピーダンス関数Z
B(z)を求める第4ステップS4と、有理関数近似によりインピーダンス関数Z
B(z)をより低次のものに近似する第5ステップS5と、等価回路を構成する複数の素子の素子値を決定する第6ステップS6とを含む。これらのステップのうち、第1ステップS1は上記電圧計および電流計により実行され、その他のステップS2〜S6は演算部により実行される。
【0019】
第1ステップS1では、電圧計および電流計が蓄電池の電圧値v
B(kΔt)および電流値i
B(kΔt)をサンプリングにより取得する。ここで、kは0≦k≦N−1の変数、Nは取得するサンプル数、Δtはサンプリング間隔である。サンプル数Nおよびサンプリング間隔Δtは、サンプリング定理に基づいて決定すればよい。通常、蓄電池の電圧波形および電流波形を高い周波数領域まで精度よく再現する必要がある場合は、Δtを小さく設定すればよい。また、蓄電池の電圧波形および電流波形を低い周波数領域まで精度よく再現する必要がある場合は、サンプリング時間(N・Δt)が長くなるようにサンプル数Nおよびサンプリング間隔Δtを設定すればよい。
【0020】
第1ステップS1で取得した電圧値v
B(kΔt)および電流値i
B(kΔt)は、順次演算部に送られ、一時的に格納される。
【0021】
第2ステップS2では、取得したN個の電圧値v
B(kΔt)から蓄電池に含まれる直流電圧源Eの影響を取り除いてN個の電圧値v
Z(kΔt)を得る。具体的には、電圧値v
B(kΔt)からV
0を引くことにより電圧値v
Z(kΔt)を求める。電圧値V
0としては、N個の電圧値v
B(kΔt)の電圧波形から類推した値、または被合成回路の種別に応じて予め定めておいた値を使用すればよい。
【0022】
なお、当然ではあるが、
図8に示す接地インピーダンスのような直流電圧源Eを含まない回路を合成する場合は、電圧値v
B(kΔt)と電圧値v
Z(kΔt)が等しくなる。
【0023】
第3ステップS3では、第2ステップS2で求めたN個の電圧値v
Z(kΔt)からなる電圧波形および第1ステップS1で取得したN個の電流値i
B(kΔt)からなる電流波形をそれぞれz変換し、次式で表される電圧関数V
Z(z)および電流関数I
B(z)を求める。
【数1】
【数2】
【0024】
第4ステップS4では、第3ステップS3で求めた電圧関数V
Z(z)および電流関数I
B(z)の比をとることにより蓄電池の内部インピーダンスZ
B(
図1参照)に関するインピーダンス関数Z
B(z)を求める。次式に示すように、インピーダンス関数Z
B(z)は、z領域におけるN次の有理関数である。
【数3】
【0025】
第5ステップS5では、第4ステップS4で求めたN次のインピーダンス関数Z
B(z)をM次のインピーダンス関数Z
BP(z
-1)に近似する。使用する有理関数近似としては、近似点z
a-1まわりのテイラー展開を利用したパデ近似が特に好適である。
【数4】
【0026】
次数Mは、
図1に示す等価回路のRC並列回路の数に対応した、0<M<Nの条件を満足する整数である。サンプル数Nは100以上、次数Mは1〜5の範囲に設定されることが多いので、通常はM≪Nの関係が成立する。次数Mを大きくすると合成により得られる等価回路の精度は上がる傾向にあるが、その一方で、第6ステップS6における計算が複雑化したり、物理的にあり得ない不安定な回路が合成されたりし易くなる。次数Mを決めるにあたっては、これらのメリットおよびデメリットを考慮する必要がある。
【0027】
演算部の処理能力に余裕がある場合は、試行錯誤法を用いて、不安定な回路が合成されない範囲で最も大きな整数(ただし、予め設定しておいた最大値M
MAXを超えない整数)を次数Mとしてもよい。
【0028】
図3に示すように、インピーダンス関数Z
B(z)は、z
-1が1よりも大きいところで極をもつ。このため、本実施例では、0≦z
-1≦1の範囲で近似点z
a-1を選ぶ。これにより、インピーダンス関数Z
B(z)の値が大きく変動する極の近傍で近似が行われ、第5ステップS5における近似誤差が大きくなってしまうのを防ぐことができる。
【0029】
近似誤差をさらに少なくしたい場合は、
図3に示すインピーダンス関数Z
B(z)のグラフ上にz
-1=0(z=∞)における接線L1とz
-1=1(z=1)における接線L2とを引き、接線L1と接線L2の交点に基づいて近似点z
a-1を選べばよい。これにより、インピーダンス関数Z
B(z)の特性が最もよく表れている点のまわりで近似を行い、等価回路の精度を高めることができる。
【0030】
第6ステップS6では、等価回路のz領域における回路方程式と、(4)式を極p
kと留数r
kを用いた形に変形してなる(5)式とを突き合わる。
【数5】
そして、これにより得られた(6)式〜(8)式を用いて、等価回路を構成する各素子(抵抗R
B0、抵抗R
B1〜R
BM、コンデンサC
B1〜C
BM)の素子値を決定する。
【数6】
【数7】
【数8】
【0031】
次に、本発明の第1実施例に係る等価回路合成方法と、最小二乗法ベースの近似手法であるARMAモデル導出法を用いた比較例に係る等価回路合成方法とにより、蓄電池の等価回路を合成した検証結果について説明する。なお、本検証では、表1に示す5つの素子(R
B0、R
B1、R
B2、C
B1、C
B2)からなる蓄電池に対して
図4(A)に示す電流パルスを印加したところ、
図4(B)に示す電圧波形が得られたものとして等価回路の合成を行った。また、本検証では、サンプル数N、サンプリング間隔Δt、および次数Mを、それぞれ250個、2[s]、および2とした。
【表1】
【0032】
図4に示す電流・電圧波形そのものに基づいて等価回路を合成した場合、および
図4(A)に示す電流波形に最大振幅約0.01[A]のランダムノイズを重畳させたものと
図4(B)に示す電圧波形に最大振幅約1[mV]のランダムノイズを重畳させたものとに基づいて等価回路を合成した場合の各素子の素子値を表2に示す。
【表2】
【0033】
表1に示す正解値との比較から明らかなように、ノイズの有無にかかわらず、第1実施例に係る等価回路合成方法によって決定された素子値は、正解値から大きく外れることがなかった。これに対して、比較例に係る等価回路合成方法では、ほとんどの素子の素子値が正解値から大きく外れた結果となった。なお、比較例に係る等価回路合成方法では、ノイズありの条件で次数Mを2に設定して合成を行うと、1以下のところに極p
kが現れる不安定な回路が合成されたため、次数Mを1とした。R
B2およびC
B2の値が記載されていないのは、このためである。
【0034】
図5は、ステップS1およびS2により得られた取得電圧波形(破線)と、第1実施例に係る等価回路合成方法によって合成した等価回路に対して
図4(A)に示す電流パルスを印加したときの電圧波形(○印)と、比較例に係る等価回路合成方法によって合成した等価回路に対して同一の電流パルスを印加したときの電圧波形(△印)とを重ねて表示したグラフである。同図に示すように、第1実施例の電圧波形(○印)は、比較例の電圧波形(△印)に比べ、取得電圧波形(破線)に対する誤差が非常に少なかった。
【0035】
図6は、表1に示す各素子からなる蓄電池の本来の周波数特性(破線)と、第1実施例に係る等価回路合成方法によって合成した等価回路の周波数特性(○印)と、比較例に係る等価回路合成方法によって合成した等価回路の周波数特性(△印)を重ねて表示したグラフである。内部インピーダンスZ
Bの絶対値に関する
図6(A)のグラフにおいても、内部インピーダンスZ
Bの角度に関する
図6(B)のグラフにおいても、第1実施例の周波数特性(○印)は、比較例の周波数特性(△印)に比べ、本来の周波数特性(破線)の変化の傾向をよく再現していた。
【0036】
以上のように、第1実施例に係る等価回路合成方法(等価回路合成装置)によれば、蓄電池に等価な回路を精度よく合成することができた。
【0037】
この等価回路を利用すれば、例えば、内部インピーダンスZ
Bによる電圧降下V
Z(
図1参照)を測定した電流I
Bから推定することができるので、測定した電圧V
Bと推定したV
Zとの差を計算することにより、SOCに相当する起電力V
0を推定することができる。また、この等価回路を利用すれば、例えば、(i)ある素子の素子値が予め設定された範囲内にあるか否か、または、(ii)ある素子の素子値の経時的変化が予め想定されている変化の範囲内であるか否かに基づいて、蓄電池の状態を診断することもできる。
【0038】
[第2実施例]接地インピーダンス
続いて、接地インピーダンスの等価回路を、本発明の第2実施例に係る等価回路合成方法と、ARMAモデル導出法を用いた比較例に係る等価回路合成方法とにより合成した検証結果について説明する。なお、本検証では、大地中深さ1mに埋設した1辺10mの田の字型接地電極(
図7参照)の中央部分に電流を注入したときの電圧応答を電磁界解析により予め求めておき、注入した電流の波形(
図9(A)参照)と解析により求めた電圧の波形(
図9(B)参照)とに基づいて、
図8に示す等価回路を合成した。なお、本検証では、サンプル数N、サンプリング間隔Δt、および次数Mを、それぞれ500個、0.5[ns]、および2とし、さらに、インピーダンス関数Z
B(z)、Z
BP(z
-1)の代わりに次式で表されるアドミタンス関数Y
B(z)、Y
BP(z
-1)を用いて合成を行った。その他は第1実施例と同様である。
【数9】
【数10】
【0039】
電磁界解析により求めた素子値の厳密解は表3に示す通りである。
【表3】
【0040】
図9に示す電流・電圧波形そのものに基づいて等価回路を合成した場合、および
図9(A)に示す電流波形に最大振幅約0.01[A]のランダムノイズを重畳させたものと
図9(B)に示す電圧波形に最大振幅約0.17[V]のランダムノイズを重畳させたものとに基づいて等価回路を合成した場合の各素子の素子値を表4に示す。
【表4】
【0041】
比較例に係る等価回路合成方法によって決定された素子値は、ノイズなしの場合とノイズありの場合とで大きな差異が見られた。これに対して、第2実施例に係る等価回路合成方法によって決定された素子値は、ノイズの有無にかかわらずほぼ一定であった。これは、第2実施例に係る等価回路合成方法がノイズに強いことを示している。
【0042】
図10は、解析により得た本来の電圧波形(破線)と、第2実施例に係る等価回路合成方法(ノイズあり)によって合成した等価回路に対して
図9(A)に示す電流を印加したときの電圧波形(○印)と、比較例に係る等価回路合成方法(ノイズあり)によって合成した等価回路に対して同一の電流を印加したときの電圧波形(△印)とを重ねて表示したグラフである。同図に示すように、第2実施例の電圧波形(○印)は、比較例の電圧波形(△印)に比べ、本来の電圧波形(破線)に対する誤差が非常に少なかった。
【0043】
図11は、表3に示す各素子からなる接地インピーダンスの本来の周波数特性(破線)と、第2実施例に係る等価回路合成方法(ノイズあり)によって合成した等価回路の周波数特性(○印)と、比較例に係る等価回路合成方法(ノイズあり)によって合成した等価回路の周波数特性(△印)を重ねて表示したグラフである。アドミタンスY
Bの絶対値に関する
図11(A)のグラフにおいても、アドミタンスY
Bの角度に関する
図11(B)のグラフにおいても、第2実施例の周波数特性(○印)は、比較例の周波数特性(△印)に比べ、本来の周波数特性(破線)の変化の傾向をよく再現していた。
【0044】
以上のように、第2実施例に係る等価回路合成方法(等価回路合成装置)によれば、取得した電流波形および電圧波形にノイズが重畳している場合においても、接地インピーダンスに等価な回路を合成することができた。この等価回路を利用すれば、例えば、複雑かつ面倒な電磁界解析を用いなくても、落雷によって生ずる過渡電圧(雷サージ電圧)を容易に推定することができる。
【0045】
以上、本発明に係る等価回路合成合法並びに装置、および回路診断方法の実施例について説明してきたが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0046】
例えば、本発明によって合成することができる被合成回路は蓄電池および接地インピーダンスに限定されない。本発明によれば、少なくとも1つの抵抗およびのコンデンサからなる任意のRC回路や、少なくとも1つの抵抗およびインダクタからなる任意のRL回路を合成・診断することができる。
【0047】
また、近似点z
a-1の決め方も適宜変更することができる。ただし、極の近傍で近似が行われないよう注意が必要である。