(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924618
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F23R 3/28 20060101AFI20160516BHJP
F23R 3/14 20060101ALI20160516BHJP
F23R 3/18 20060101ALI20160516BHJP
F23R 3/34 20060101ALI20160516BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
F23R3/28 B
F23R3/14
F23R3/18
F23R3/28 D
F23R3/34
F02C7/22 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-129681(P2012-129681)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-253737(P2013-253737A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】松山 竜佐
(72)【発明者】
【氏名】小林 正佳
(72)【発明者】
【氏名】堀川 敦史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 仁志
【審査官】
佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−80669(JP,A)
【文献】
特開2008−196831(JP,A)
【文献】
特開平11−101435(JP,A)
【文献】
特開2002−139221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/18
F02C 7/22
F23R 3/14
F23R 3/28
F23R 3/34
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機からの圧縮空気に燃料を供給して燃焼させる燃料噴射装置であって、
当該燃料噴射装置の径方向中心部に配置されて、燃焼室内に燃料を噴射するパイロット燃料噴射弁と、
前記パイロット燃料噴射弁の外周に配置されて、前記燃焼室内に燃料と空気の予混合気を噴射するメイン燃料噴射弁と、
前記パイロット燃料噴射弁の出口端部と前記メイン燃料噴射弁との間に配置されて、前記燃焼室内に前記圧縮空気を噴射する空気噴射ユニットとを備え、
前記空気噴射ユニットは、該空気噴射ユニットを前記燃焼室から区画する隔壁板と、この隔壁板の下流側に設けられた保炎板と、前記保炎板と前記パイロット燃料噴射弁の出口端部との間に設けられて下流側に開口した第1開口と、前記隔壁板に設けられて前記保炎板と前記隔壁板との間の流入空間に圧縮空気を供給する第2開口とを有し、
前記保炎板が、軸心に対して径方向外側斜め下流方向に傾斜した傾斜部を有する燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1において、前記保炎板は、前記傾斜部の上流側に連なり、軸心方向に延びて前記第1開口の外周を形成する周壁部を有する燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記パイロット燃料噴射弁と前記メイン燃料噴射弁との間が、前記空気噴射ユニットの下流側に圧縮空気の貯留空間を形成する区隔壁により連結されており、前記区隔壁に、前記貯留空間に圧縮空気を導入する導入口が形成されている燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記パイロット燃料噴射弁に、圧縮空気を軸心回りに旋回させるスワーラが設けられている燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガスタービンエンジンなどに用いられる、複数の燃料ノズルを組み合わせた複合型燃料噴射弁を備えた燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮からガスタービンから排出されるNOx(窒素酸化物)などの有害物質を低減することが求められている。従来の航空機用ガスタービン燃焼器の燃料ノズルは拡散燃焼方式であり、同方式では、燃焼反応が量論比で行われるため、火炎温度が高くなる。NOxの排出量は火炎温度に対して指数的に増加する性質をもつため、火炎温度を下げることがNOxの排出量を抑えるための効果的な対策となるが、ガスタービンの高温高圧化が進む現状では、従来の拡散燃焼方式によってNOxの排出量を抑えることには限界がある。
【0003】
火炎温度を抑えるためには、希薄燃焼方式の燃料噴射弁が有効であるとされている。希薄燃焼とは、空気に対する燃料の割合を少なくして燃焼させる方法で、この方法による希薄燃焼では、従来の拡散燃焼方式よりも大きく火炎温度を下げることができる。一方で、希薄燃焼方式は、火炎温度が低いため不安定で不完全な燃焼になる傾向にある。そこで、内側にパイロット噴射弁を、外側にメイン噴射弁を同軸上に配置して、パイロット噴射弁で拡散燃焼方式を用いることにより低出力での安定な燃焼を保ちつつ、高出力ではパイロット噴射弁での拡散燃焼に加えてメイン噴射弁で希薄燃焼を行い、低NOxを実現するコンセントリック燃料噴射弁が用いられている。
【0004】
コンセントリック燃料噴射弁では、パイロット噴射弁のみが運転している低出力時にもメイン噴射弁の流路には大量の空気が流れているので、この空気とパイロット燃焼とが干渉して、パイロット噴射弁の燃焼効率や着火性・保炎性が乏しくなる恐れがある。これを克服するために、パイロット燃焼域とメイン燃焼域とを大きく分離させて、低出力時のメイン通路の空気とパイロット燃焼との干渉を抑制しつつ、中間出力時にパイロット燃焼域とメイン燃焼域とが適度に干渉するように構成して、メイン燃焼域の安定燃焼を図ること(例えば、特許文献1参照)、燃料を、燃焼室の軸心上の逆流領域に集中的に噴射して、低出力時の燃焼効率を向上させること(例えば、特願2011−125481号明細書)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4800523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では、パイロット燃焼域とメイン燃焼域との間に緩衝領域が残るので、低出力時における燃焼効率が不十分である。さらに、特願2011−125481号明細書のように軸心上の逆流領域に集中的に燃料を噴射すると、この領域で燃料過多となり、スモークが発生し易くなる。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、燃料過多によるスモークの発生を抑制しつつ、低出力時および中間出力時のいずれにおいても高い燃焼効率が得られる燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料噴射装置は、圧縮機からの圧縮空気に燃料を供給して燃焼させる装置であって、当該燃料噴射装置の径方向中心部に配置されて、燃焼室内に燃料を噴射するパイロット燃料噴射弁と、前記パイロット燃
料噴射弁の外周に配置されて、前記燃焼室内に燃料と空気の予混合気を噴射するメイン燃料噴射弁と、前記パイロット燃料噴射弁の出口端部と前記メイン燃料噴射弁との間に配置されて、前記燃焼室内に前記圧縮空気を噴射する空気噴射ユニットとを備え、前記空気噴射ユニットは、該空気噴射ユニットを前記燃焼室から区画する隔壁板と、この隔壁板の下流側に設けられた保炎板と、前記保炎板と前記パイロット燃料噴射弁の出口端部との間に設けられて下流側に開口した第1開口と、前記隔壁板に設けられて前記保炎板と前記隔壁板との間の流入空間に圧縮空気を供給する第2開口とを有し、前記保炎板が、軸心に対して径方向外側斜め下流方向に傾斜した傾斜部を有する。
【0009】
この構成によれば、上記傾斜部を有する保炎板により、パイロット燃焼域とメイン空気流との干渉が効果的に防止され、保炎性が高まるとともに燃焼効率が向上する。しかも、第2開口から供給された空気が、前記保炎板と前記隔壁板との間の流入空間に流入して保炎板を冷却するので、保炎板の焼損が防止される。さらには、空気が第1開口から燃焼室内に供給されることによって、パイロット燃焼域で燃料過多の状態を回避できるので、スモークの発生を抑制できる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記保炎板は、前記傾斜部の上流側に連なり、軸心方向に延びて前記第1開口の外周を形成する周壁
部を有することが好ましい。この構成によれば、第2開口から供給される空気が内径側に流入することなく、確実に径方向外側斜め下流方向に導出されるので、より確実に燃焼効率の向上とスモークの抑制を図ることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記パイロット燃料噴射弁と前記メイン
燃料噴射弁との間が、前記空気噴射ユニットの下流側に圧縮空気の貯留空間を形成する区隔壁により連結されており、前記区隔壁に、前記貯留空間に圧縮空気を導入する導入口が形成されていることが好ましい。この構成によれば、区画壁によって圧縮空気の貯留空間を形成し、この貯留空間を介して第1開口および第2開口から圧縮空気を噴射するので、第1開口および第2開口から噴射される空気の分布が均一化される。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記パイロット燃料噴射弁に、圧縮空気を軸心回りに旋回させるスワーラが設けられていることが好ましい。この構成によれば、スワーラによってパイロット燃料噴射弁から噴射される燃料が径方向外側に拡散されるので、保炎板での保炎性が確保され、燃焼効率が一層確実に向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料噴射装置によれば、燃料過多によるスモークの発生を抑制しつつ、低出力時および中間出力時のいずれにおいても高い燃焼効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射装置を備えたガスタービンエンジンの燃焼器を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る燃料噴射装置を示す断面図である。
【
図3】
図2の空気噴射ユニットを拡大して示す断面図である。
【
図4】
図2のメイン燃料噴射弁を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る燃料噴射装置1を備えたガスタービンエンジンの燃焼器CBを示している。この燃焼器CBは、ガスタービンエンジンの図示しない圧縮機から供給される圧縮空気CAに燃料を混合して燃焼させ、その燃焼により発生する高温・高圧の燃焼ガスをタービンに送ってタービンを駆動するものである。
【0016】
燃焼器CBはアニュラ型であり、エンジン回転軸心Cと同心状に配置された、環状のアウタケーシング3とその内側の環状のインナケーシング5とにより、環状の内部空間を有する燃焼器ハウジング7を構成している。この燃焼器ハウジング7の環状の内部空間には、環状の燃焼筒9が燃焼器ハウジング7と同心状に配置されている。燃焼筒9は、環状のアウタライナ11と、その内側に同心状に配置された環状のインナライナ13とで構成されており、内部に環状の燃焼室15を形成している。燃焼筒9の頂壁に、燃焼室15内に燃料を噴射する複数の燃料噴射装置1が、エンジン回転軸心Cと同心状に、つまり燃焼筒9の周方向に、等間隔に配設されている。
【0017】
各燃料噴射装置1は、パイロット噴射弁21と、メイン噴射弁23とを備えている。メイン噴射弁23は、パイロット噴射弁21の外周を囲むようにパイロット噴射弁21の軸心C1と同心状に設けられて予混合気を生成する。各燃料噴射装置1は、燃焼器ハウジング7に取り付けられたステム部26により燃焼器ハウジング7に支持されている。アウタケーシング3およびアウタライナ11を貫通して、着火を行うための点火栓IGが、燃焼筒9の径方向を向き、かつ先端が燃料噴射装置1に近接する配置で設けられている。
【0018】
燃焼器ハウジング7の環状の内部空間には、圧縮機から送給される圧縮空気CAが、エンジン回転軸心Cの回りに周方向に等間隔で配置された複数の空気取入管27を介して導入される。導入された圧縮空気CAは、燃料噴射装置1に供給されるとともに、燃焼筒9のアウタライナ11およびインナライナ13にそれぞれ複数形成された空気導入口から燃焼室15内に供給される。ステム部26は燃料配管ユニットUを形成しており、この燃料配管ユニットUは、パイロット噴射弁21に拡散燃焼のための燃料を供給する第1燃料供給系統F1と、メイン噴射弁23に希薄予混合燃焼のための燃料を供給する第2燃料供給系統F2とを備えている。
【0019】
図2に、燃料噴射装置1の構造の詳細を示す。燃料噴射装置1は、上述のように、径方向中心部に位置するパイロット燃料噴射弁21と、燃料噴射装置1の径方向外側、つまりパイロット燃料噴射弁21の外周に配置されたメイン燃料噴射弁23とを備えており、さらに、パイロット燃料噴射弁21の出口端部とメイン燃料噴射弁23との間に設けられた空気噴射ユニット25を備えている。
【0020】
パイロット燃料噴射弁21は、ステム部26に連結されて燃料を噴射するパイロット燃料噴射ブロック31と、パイロット燃料噴射ブロック31の径方向外側に設けられて、圧縮空気CAを供給する空気供給部33と、パイロット燃料噴射ブロック31からの燃料および空気供給部33からの圧縮空気CAを予混合して燃焼室15内に噴射するパイロット流路35を形成するテーパ状のパイロットノズル37とを有している。パイロット燃料噴射ブロック31の内部には、径方向中央部に、燃料の通路となる燃料供給路39が形成されている。パイロット燃料噴射ブロック31の燃料供給路39は、ステム部26内に形成された、燃料の通路となる第1燃料導入通路41に連通している。
【0021】
より詳細には、パイロット燃料噴射ブロック31の径方向外側に、内側筒状体43が配置され、内側筒状体43の径方向外側に、外側筒状体45が配置され、さらに外側筒状体45の径方向外側に、下流側の先端部が前記パイロットノズル37として形成された円筒状のパイロットシュラウド47が配置されている。このパイロットシュラウド47により、パイロット燃料噴射弁21と、その外側の空気噴射ユニット25とが区画されている。内側筒状体43および外側筒状体45の先端部(下流側端部)は、それぞれ、下流側に向かって縮径となるテーパ状に形成されている。
【0022】
パイロット燃料噴射ブロック31には、径方向に延びる燃料噴射孔49が複数設けられている。また、内側筒状体43と外側筒状体45の間には、パイロット内側空気通路53が形成され、外側筒状体45とパイロットシュラウド47との間には、パイロット外側空気通路55が形成されている。これら空気通路53,55が、空気供給部33を形成している。各空気通路53,55の上流部には、それぞれ、圧縮空気CAを軸心回りに旋回させるパイロット内側スワーラS1およびパイロット外側スワーラS2が設けられている。燃料噴射孔49から噴射された燃料は、空気通路53,55から流入した圧縮空気CAとともに下流側に送られる。
【0023】
パイロットシュラウド47と、このパイロットシュラウド47の径方向外側に配置された、メイン燃料噴射弁23の内周壁を形成するメイン内側シュラウド61との間に、空気噴射ユニット25が形成されている。パイロット燃料噴射弁21のパイロットシュラウド47と、メイン燃料噴射弁23のメイン内側シュラウド61とは、環状の区隔壁63によって連結されている。区隔壁63は、メイン内側シュラウド61に一体形成されており、パイロットシュラウド47のパイロットノズル37の出口端部37a近傍となる軸方向位置に設けられている。この区隔壁63には、軸心方向の貫通孔である導出口65が、周方向の複数個所に設けられている。区隔壁63の導出口65を介して、区隔壁63の上流側に形成された圧縮空気CAの圧縮空気通路67を通過した圧縮空気CAが、区隔壁63の下流側に形成された貯留空間69へ導出される。
【0024】
空気噴射ユニット25を形成するメイン内側シュラウド61の下流側端部は、下流に向かって拡径した形状に形成されている。このメイン内側シュラウド61下流側端部には、径方向内側の上流方向に向かって傾斜する環状の隔壁板71が設けられている。隔壁板71によって、燃焼室15と空気噴射ユニット25とが区画される。隔壁板71の内径側端部には、保炎板73が取り付けられている。
【0025】
保炎板73は、軸心方向に延びる筒状の周壁部73aと、周壁部の下流側端部から下流側に向かって拡径となる傾斜部73bとを有している。つまり、保炎板73の傾斜部は、軸心に対して径方向外側斜め下流方向に傾斜している。保炎板73の周壁部73aが、隔壁板71の内径側端部に取り付けられている。また、保炎板73の傾斜部73bは、
図3に示すように、隔壁板71との間に隙間を存した状態で、隔壁板71にほぼ平行な傾斜角度で延びている。換言すれば、保炎板73の傾斜部73bは、隔壁板71との間に隙間を存した状態で、隔壁板71の内径側端部の下流側を覆っている。
【0026】
保炎板73と、パイロットノズル37の下流端部との間には、径方向の環状の隙間が形成されており、この隙間が、下流側に開口する、第1の開口である内径側空気噴射開口75を形成する。また、隔壁板71の、保炎板73で覆われている部分には、軸心方向に貫通する第2の開口である外径側空気噴射開口77が形成されている。貯留空間69に導出された圧縮空気CAは、一部が内径側空気噴射開口75から燃焼室15内へ向けて、軸心方向に沿って噴射され、残りの一部が、外径側空気噴射開口77を介して、隔壁板71と保炎板73との間の隙間である流入空間79に流入した後に、流入空間79の下流端である噴射口79aから燃焼室15内の径方向外側に向けて噴射される。
【0027】
図2に示すように、メイン燃料噴射弁23は、予混合気を燃焼室15へ導出して噴射する環状の予混合気通路81と、予混合気通路81に軸心方向の上流側から圧縮空気CAaを流入させるメイン外側空気通路83と、予混合気通路81に、径方向内側から径方向外側に向けて圧縮空気CArを流入させるメイン内側空気通路85とを有している。メイン内側シュラウド61の外側に、メインノズルを形成する円筒状のメイン外側シュラウド86が同心状に配置されており、メイン内側シュラウド61とメイン外側シュラウド86との間にメイン予混合気通路81が形成されている。これら予混合気通路81、メイン外側空気通路83およびメイン内側空気通路85が、メイン燃料噴射弁23において予混合気を生成するメイン流路87を形成している。メイン外側空気通路83およびメイン内側空気通路85には、それぞれ、圧縮空気CAa,CArを軸心回りに旋回させるメイン外側スワーラSW3,メイン内側スワーラSW4が設けられている。
【0028】
さらに、メイン燃料噴射弁23には、メイン内側空気通路85に軸心方向の上流側から燃料を噴射する複数のメイン燃料噴射孔89が設けられている。複数のメイン燃料噴射孔89は、軸心C1の回りに周方向に等間隔で、メイン外側空気通路83の径方向内側に配置されている。各メイン燃料噴射孔89は、環状の燃料導入室91から軸心方向下流側に突出する、例えば円柱状のメイン燃料噴射ブロック93の中心部に設けられた貫通孔として形成されている。
【0029】
また、メイン燃料噴射ブロック93は、前記メイン内側空気通路85の前壁(上流側壁)を形成するフランジ状の隔壁95に設けられた軸方向の貫通孔97に臨むように設けられている。
図4に示すように、このようにして形成された、メイン燃料噴射ブロック93と、フランジ状隔壁95の各貫通孔97との間の環状の隙間は、燃料噴射装置1の外部の空気通路および圧縮空気通路67に連通しており、軸心方向の上流側からメイン内側空気通路85に圧縮空気CAを噴射するガイド空気供給通路99を形成している。すなわち、ガイド空気供給通路99は、メイン燃料噴射ブロック93のメイン燃料噴射孔89からの燃料Fの流れに沿うように、軸心方向の上流側からメイン内側空気通路85に圧縮空気CArを噴射する
【0030】
なお、
図2に示すように、燃料噴射装置1において、パイロット燃料噴射弁21のパイロット噴射ブロック31およびメイン燃料噴射弁23のメイン噴射ブロック93を含む上流側の構造体である第1の弁ユニット101は、ステム部27を介して燃焼器ハウジング3に支持されており、前記パイロットノズル37および前記メインノズルを含む下流側の構造体である第2の弁ユニット103が、メイン外側シュラウド86の下流側端部の外周に設けられた支持フランジ105を介して燃焼筒9に支持されている。第1弁ユニットと第2弁ユニット103は、それぞれ別個に組み立てられ、その後に、第1弁ユニット101を第2弁ユニット103に嵌めこむことにより、燃料噴射装置1が組み立てられる。このようにして、第1弁ユニット101は、第2弁ユニット103に対して着脱自在に形成されている。
【0031】
次に、このように構成された燃料噴射装置1の動作について説明する。
図3に示すように、低出力時において、パイロット燃料噴射弁21から噴射された燃料Fおよび第1開口である内径側空気噴射開口75から噴射された空気A1により、燃焼室15内のパイロット燃料噴射弁21の下流側の部分に、パイロット燃焼域Sが形成される。一方で、メイン燃料噴射弁23から噴射される空気は、パイロット燃焼域Sの外側にメイン空気流MAを形成する。保炎板73が、軸心に対して径方向外側斜め下流方向に傾斜した傾斜部73bを有していることにより、パイロット燃焼域Sとメイン空気流MAとの干渉が効果的に防止され、パイロット燃焼域Sにおいて確実に保炎されるとともに、燃焼効率が向上する。したがって、中出力時のみならず低出力時においても燃焼効率を向上させることができる。しかも、第2開口である外径側空気噴射開口77から供給された空気A2が、保炎板73と隔壁板71との間の流入空間79に流入して保炎板73を冷却するので、保炎板73の焼損が防止される。なお、一層確実にパイロット燃焼域Sとメイン空気流MAとの干渉を防止するために、保炎板73は、隔壁板71から0.7〜2.0mm離間していることが好ましく、1.0mm程度離間していることがより好ましい。
【0032】
さらには、内径側空気噴射開口75から空気A1を供給することにより、パイロット燃焼域Sで燃料過多の状態となることが回避できるので、スモークの発生が抑制される。
【0033】
また、保炎板73に、傾斜部73bの上流側に連なり、軸心方向に延びて内径側空気噴射開口75の外周を形成する周壁73aを設けたことにより、外径側空気噴射開口77から供給される空気が内径側に流入することなく、確実に径方向外側斜め下流方向に導出される。したがって、より確実に燃焼効率の向上とスモークの抑制を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態において、前記パイロット燃料噴射弁21と前記メイン噴射弁23との間が、前記空気噴射ユニット25の下流側に圧縮空気CAの貯留空間69を形成する区隔壁63により連結されており、前記区隔壁63に、貯留空間69に圧縮空気を導入する導入口65が形成されている。この貯留空間63を介することにより、第1開口および第2開口から噴射される空気の分布が均一化される。
【0035】
さらに、パイロット燃料噴射弁21に設けられたパイロット内側スワーラSW1およびパイロット外側スワーラSW2によって、パイロット燃料噴射弁21から噴射される燃料が確実に径方向外側に拡散される。これにより、保炎板73での保炎性が確保され、燃焼効率が一層確実に向上する。
【0036】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 燃料噴射装置
15 燃焼室
21 パイロット燃料噴射弁
23 メイン燃料噴射弁
25 空気噴射ユニット
69 流入空間
71 隔壁板
73 保炎板
73b 傾斜部
75 内側空気噴射開口(第1開口)
77 外径側空気噴射開口(第2開口)