【実施例】
【0096】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0097】
[ヒドロシラン化合物の作製]
(製造例1:1−(ジメチルシリル)ナフタレンの合成)
1−ヨードナフタレン(2541mg,10mmol)のジエチルエーテル(Et
2O)溶液(40mL)に、n−ブチルリチウム(nBuLi)のヘキサン溶液(6.25mL,nBuLiが10mmol)を窒素雰囲気下および−5℃でゆっくり滴下し、15分撹拌した。次に、クロロジメチルシラン(1135mg,12mmol)をさらに加えて室温で2時間撹拌した後、HCl水溶液(濃度10重量%)および蒸留水で分液操作を行った。水層をEt
2Oで抽出し、残った有機層にNa
2SO
4を加えて濾過、濃縮した。次に、得られた混合物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製して、1769mg(9.5mmol)の1−(ジメチルシリル)ナフタレン(1)を収率95%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0098】
【化1】
【0099】
得られた1−(ジメチルシリル)ナフタレンは、
1H−NMR測定により同定した。
1H−NMR測定の重溶媒にはCDCl
3を使用した(以降の製造例においても同じである)。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):8.11−8.13(d,J=8.4Hz,1H),7.86−7.90(m,2H),7.72−7.74(d,J=6.6Hz,1H),7.45−7.56(m,3H),4.84−4.90(m,1H),0.50−0.51(d,J=3.6Hz,6H)
【0100】
(製造例2:1−(ジメチルシリル)ピレンの合成)
1−ブロモピレン(843mg,3mmol)のEt
2O(25mL)/THF(5mL)溶液に、nBuLiのヘキサン溶液(1.88mL,nBuLiが3mmol)を窒素雰囲気下および−5℃でゆっくり滴下し、30分撹拌した。次に、クロロジメチルシラン(339mg,3.6mmol)をさらに加えて室温で2時間撹拌した後、HCl水溶液(濃度10重量%)および蒸留水で分液操作を行った。水層をCH
2Cl
2で抽出し、残った有機層にNa
2SO
4を加えて濾過、濃縮した。次に、得られた混合物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製して、735mg(2.82mmol)の1−(ジメチルシリル)ピレン(2)を収率94%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0101】
【化2】
【0102】
得られた1−(ジメチルシリル)ピレンは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):8.38−8.40(d,J=9.2Hz,1H),8.17−8.22(t,J=7.6Hz,3H),8.12−8.17(t,J=9.2Hz,2H),8.03−8.10(dd,J=6.0,9.2Hz,2H),7.99−8.03(t,J=7.6Hz,1H),5.05−5.11(m,1H),0.60−0.61(d,J=4.0Hz,6H)
【0103】
(製造例3:(ジメチルシリル)フェロセンの合成)
フェロセン(1860mg,10mmol)およびカリウム−t−ブトキシド(tBuOK,168mg,1.5mmol)のTHF溶液を、窒素雰囲気下および−78℃で15分撹拌した。次に、t−ブチルリチウム(tBuLi)のヘキサン溶液(12.5mL,tBuLiが20mmol)を窒素雰囲気下および−70℃でゆっくり滴下し、90分撹拌した。次に、クロロジメチルシラン(2838mg,30mmol)をさらに加え、冷却槽から取り出して室温で2時間撹拌した。次に、反応混合物にEt
2Oを加えた後、HCl水溶液(濃度10重量%)および蒸留水で分液操作を行った。水層をEt
2Oで抽出し、残った有機層にNa
2SO
4を加えて濾過、濃縮した。得られた混合物を蒸留操作により精製して、1806mg(7.4mmol)の(ジメチルシリル)フェロセン(3)を収率74%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0104】
【化3】
【0105】
得られた(ジメチルシリル)フェロセンは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.38−4.44(m,1H),4.35−4.36(t,J=1.6Hz,2H),4.14(s,7H),0.30−0.31(d,J=3.6Hz,6H)
【0106】
(製造例4:(3−クロロプロピル)ジメチルシランの合成)
クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムダイマー([IrCl(cod)]
2,2.6mg,Irが0.003mmol)、塩化アリル(3.25mL,40mmol)および1,5−シクロオクタジエン(10μL,0.08mmol)の混合物にクロロジメチルシラン(5.18mL,46mmol)を加え、40℃で6時間撹拌した。次に、得られた混合物を減圧下で蒸留することによりクロロ(3−クロロプロピル)ジメチルシラン(6293mg,36.8mmol)を収率92%で得た。
【0107】
次に、得られたクロロ(3−クロロプロピル)ジメチルシラン(6293mg,36.8mmol)を、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH
4、1398mg,36.8mmol)のEt
2O(40mL)溶液に窒素雰囲気下および0℃でゆっくり加え、室温で2時間撹拌した。次に、得られた混合物を氷冷し、Na
2SO
4・10H
2Oをゆっくり加えて撹拌した。これをセライト濾過し、CH
2Cl
2で洗い、さらに減圧下で蒸留することで、4477mg(32.8mmol)の(3−クロロプロピル)ジメチルシラン(4)を塩化アリルより収率82%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0108】
【化4】
【0109】
得られた(3−クロロプロピル)ジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.85−3.90(m,1H),3.50−3.54(t,J=7.2Hz,2H),1.78−1.85(m,2H),0.68−0.73(m,2H),0.09−0.10(d,J=4.0Hz,6H)
【0110】
また、得られた(3−クロロプロピル)ジメチルシランは、併せて
13C−NMRおよび
29Si−NMRによっても同定した。
13C−NMRおよび
29Si−NMRのプロファイルをそれぞれ
図1,2に示す。
【0111】
(製造例5:(3−ブロモプロピル)ジメチルシランの合成)
[IrCl(cod)]
2(2.6mg,Irが0.003mmol)、臭化アリル(3.49mL,40mmol)および1,5−シクロオクタジエン(10μL,0.08mmol)の混合物にクロロジメチルシラン(5.18mL,46mmol)を加え、40℃で17時間撹拌した。次に、得られた混合物を減圧下で蒸留することによりクロロ(3−ブロモプロピル)ジメチルシラン(6443mg,35.6mmol)を収率89%で得た。
【0112】
次に、得られたクロロ(3−ブロモプロピル)ジメチルシラン(6443mg,35.6mmol)をLiAlH
4(1352mg,35.6mmol)のEt
2O(40mL)溶液に窒素雰囲気下および0℃でゆっくり加え、室温で2時間撹拌した。次に、得られた混合物を氷冷し、Na
2SO
4・10H
2Oをゆっくり加えて撹拌した。これをセライト濾過し、CH
2Cl
2で洗い、さらに減圧下で蒸留することで、6082mg(33.6mmol)の(3−ブロモプロピル)ジメチルシラン(5)を臭化アリルより収率84%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0113】
【化5】
【0114】
得られた(3−ブロモプロピル)ジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.85−3.90(m,1H),3.39−3.43(t,J=6.8Hz,2H),1.86−1.93(m,2H),0.68−0.73(m,2H),0.09−0.10(d,J=3.6Hz,6H)
【0115】
(製造例6:1−(3−ジメチルシリルプロピル)ナフタレンの合成)
[IrCl(cod)]
2(0.6mg,Irが0.8μmol)および1,5−シクロオクタジエン(2.5μL,0.02mmol)の混合物に1−アリルナフタレン(1682mg,10mmol)およびクロロジメチルシラン(1.54mL,11.5mmol)を加え、40℃で12時間撹拌した。
【0116】
次に、得られた混合物を氷冷し、Et
2O(30mL)を加え、さらにトリエチルアミン(Et
3N,2038mg,20mmol)およびイソプロピルアルコール(iPrOH,900mg,15mmol)をそれぞれ滴下し、室温で30分撹拌した。次に、得られた粗生成物をセライトで濾過し、減圧下で濃縮した。次に、ショートパスカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/Et
2O=20/1(体積比))に通して溶媒を濃縮して、1−[(3−ジメチルイソプロポキシシリル)プロピル]ナフタレン(2345mg,8.2mmol)を得た。
【0117】
次に、得られた1−[(3−ジメチルイソプロポキシシリル)プロピル]ナフタレン(2345mg,8.2mmol)を、LiAlH
4(312mg,8.2mmol)のTHF溶液(20mL)に窒素雰囲気下および0℃でゆっくり加え、その後、60℃で2時間撹拌した。次に、得られた混合物を氷冷し、Na
2SO
4・10H
2Oをゆっくり加えて撹拌した。これをセライト濾過し、CH
2Cl
2で洗い、減圧下で濃縮し、さらにカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)で精製することで、1622mg(7.1mmol)の1−(3−ジメチルシリルプロピル)ナフタレン(6)を収率71%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0118】
【化6】
【0119】
得られた1−(3−ジメチルシリルプロピル)ナフタレンは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):8.04−8.06(d,J=8.4Hz,1H),7.85−7.87(d,J=6.8Hz,1H),7.71−7.73(d,J=8.0Hz,1H),7.45−7.53(m,2H),7.39−7.42(t,J=7.6Hz,1H),7.32−7.34(d,J=6.8Hz,1H),3.86−3.91(m,1H),3.09−3.13(t,J=7.6Hz,2H),1.78−1.86(m,2H),0.73−0.77(m,2H),0.07−0.08(d,J=3.6Hz,6H)
【0120】
(製造例7:(3−アジドプロピル)ジメチルシランの合成)
アジ化ナトリウム(NaN
3、1170mg,18.0mmol)のジメチルフォルムアミド(DMF)溶液(24mL)に、製造例5で作製した(3−ブロモプロピル)ジメチルシラン(2172mg,12mmol)を窒素雰囲気下で加え、60℃で12時間撹拌した。次に、反応混合物を室温まで冷却し、蒸留水を加えてペンタンで分液操作を行った。水層をペンタンで抽出し、集めたペンタン層をブライン(飽和食塩水)で洗浄した。これをNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、1681mg(11.7mmol)の(3−アジドプロピル)ジメチルシラン(7)を収率98%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0121】
【化7】
【0122】
得られた(3−アジドプロピル)ジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.85−3.90(m,1H),3.24−3.28(t,J=6.8Hz,2H),1.61−1.69(m,2H),0.62−0.67(m,2H),0.09−0.10(d,J=3.6Hz,6H)
【0123】
(製造例8:(3−アミノプロピル)ジメチルシランの合成)
M. X. Dung et al., "InP Quantum Dot-Organosilicon Nanocomposites", Bulletin of Korean Chemical Society, vol. 33 (2012), No. 5, pp. 1491-1504に記載の方法に従い、以下の式(8)に示す(3−アミノプロピル)ジメチルシランを得た。
【0124】
【化8】
【0125】
(製造例9:[3−(ジメチルシリル)プロピル]アクリルアミドの合成)
製造例8で作製した(3−アミノプロピル)ジメチルシラン(585mg,5.0mmol)およびトリエチルアミン(531mg,5.25mmol)のCH
2Cl
2溶液(4mL)を窒素雰囲気下で0℃に冷却し、そこに塩化アクリロイル(475mg,5.25mmol)のCH
2Cl
2溶液(20mL)をゆっくり滴下した後、冷却槽から取り出し、室温で12時間撹拌した。得られた反応混合物に蒸留水を加え、水層をCH
2Cl
2で抽出し、集めた有機層をNa
2SO
4で乾燥させた。次に、有機層を濾過し、減圧下で濃縮して、795mg(5mmol)の[3−(ジメチルシリル)プロピル]アクリルアミド(9)を定量的に得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0126】
【化9】
【0127】
得られた[3−(ジメチルシリル)プロピル]アクリルアミドは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):6.26−6.30(dd,J=2.0,16.8Hz,1H),6.05−6.12(m,1H),5.66(bs,1H),5.62−5.65(dd,J=1.2,10Hz,1H),3.84−3.89(m,1H),3.31−3.36(q,J=7.2Hz,2H),1.55−1.62(m,2H),0.58−0.63(m,2H),0.07−0.08(d,J=4.0Hz,6H)
【0128】
(製造例10:1−(3−ジメチルシリルプロピル)イミダゾールの調製)
水素化ナトリウム(NaH,144mg,6.0mmol)のDMF懸濁溶液(24mL)に、窒素雰囲気下、0℃でイミダゾール(408mg,6.0mmol)を少しずつ加え、45分撹拌した。次に、製造例5で作製した3−(ブロモプロピル)ジメチルシラン(905mg,5.0mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。次に、得られた反応混合物に蒸留水を加え、CH
2Cl
2で水層を抽出した。次に、有機層をブラインで洗浄後、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル(EtOAc)/ヘキサン=3/1(体積比))で精製して、781mg(4.7mmol)の1−(3−ジメチルシリルプロピル)イミダゾール(10)を収率93%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0129】
【化10】
【0130】
得られた1−(3−ジメチルシリルプロピル)イミダゾールは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):7.47(s,1H),7.06(s,1H),6.91(a,1H),3.91−3.94(t,J=7.6Hz,2H),3.83−3.89(m,1H),1.88(bs,1H),1.77−1.85(m,2H),0.52−0.57(m,2H),0.07−0.08(d,J=3.6Hz,6H)
【0131】
(製造例11:1−(3−ジメチルシリルプロピル)−3−メチルイミダゾリウムアイオダイドの合成)
製造例10で作製した1−(3−ジメチルシリルプロピル)イミダゾール(504mg,3.0mmol)のCH
2Cl
2溶液(6mL)に、窒素雰囲気下でヨウ化メチル(MeI,426mg,3.0mmol)を加え、40℃で24時間撹拌した。反応終了後、減圧下で濃縮して、930mg(3.0mmol)の1−(3−ジメチルシリルプロピル)−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド(11)を定量的に得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0132】
【化11】
【0133】
得られた1−(3−ジメチルシリルプロピル)−3−メチルイミダゾリウムアイオダイドは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):10.17(s,1H),7.47(s,1H),7.37(a,1H),4.32−4.36(t,J=7.2Hz,2H),4.14(s,3H),3.83−3.89(m,1H),1.92−2.00(m,2H),0.60−0.65(m,2H),0.10−0.11(d,J=3.6Hz,6H)
【0134】
(製造例12:N−[3−(ジメチルシリル)プロピル]フタルイミドの合成)
カリウムフタルイミド(1556mg,8.4mmol)のDMF溶液(14mL)に製造例5で作製した(3−ブロモプロピル)ジメチルシラン(1267mg,7.0mmol)を加え、70℃で15時間撹拌した。次に、得られた反応混合物にHCl水溶液(濃度10重量%)を加え、EtOAcで分液抽出した。次に、集めた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。次に、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/Et
2O=3/2(体積比))で精製して、1628mg(6.6mmol)のN−[3−(ジメチルシリル)プロピル]フタルイミド(12)を収率94%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0135】
【化12】
【0136】
得られたN−[3−(ジメチルシリル)プロピル]フタルイミドは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):7.83−7.87(m,2H),7.69−7.73(m,2H),3.83−3.88(m,1H),3.66−3.70(t,J=7.2Hz,2H),1.67−1.75(m,2H),0.60−0.65(m,2H),0.07−0.08(d,J=4.0Hz,6H)
【0137】
(製造例13:(3−ニトロプロピル)ジメチルシランの合成)
亜硝酸ナトリウム(NaNO
2,725mg,10.5mmol)のDMF溶液(14mL)に、製造例5で作製した3−(ブロモプロピル)ジメチルシラン(1267mg,7.0mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。次に、Et
2Oおよび蒸留水を加えて分液抽出し、有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。次に、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/EtOAc=5/1(体積比))で精製して、329mg(2.2mmol)の(3−ニトロプロピル)ジメチルシラン(13)を収率32%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0138】
【化13】
【0139】
得られた(3−ニトロプロピル)ジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.36−4.40(t,J=7.2Hz,2H),3.87−3.92(m,1H),2.02−2.10(m,2H),0.62−0.66(m,2H),0.11−0.12(d,J=3.6Hz,6H)
【0140】
(製造例14:3−(ジメチルシリルプロピル)マグネシウムクロリドの調製)
THF(1mL)および一片のI
2を窒素雰囲気下でマグネシウム(365mg,15mmol)に加え5分間静置した。次に、THF(9mL)および製造例4で作製した(3−クロロプロピル)ジメチルシラン(1365mg,10mmol)を加えて70℃で2時間撹拌し、対応するグリニャール試薬である3−(ジメチルシリルプロピル)マグネシウムクロリド(14)を得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0141】
【化14】
【0142】
(製造例15:4−(ジメチルシリル)酪酸の合成)
製造例14で作製した3−(ジメチルシリルプロピル)マグネシウムクロリドのTHF溶液(10mL,9.0mmol)を常圧の二酸化炭素雰囲気下、室温で12時間撹拌した。次に、HCl水溶液(濃度10重量%)を加え、水層をEt
2Oで抽出した。次に、集めた有機層に飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)水溶液を加えて分液し、水層をHCl水溶液(濃度10重量%)で中和した後、Et
2Oで抽出した。残る有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。次に、濾過操作をし、減圧下で濃縮して得られた混合物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/EtOAc=3/1(体積比))で精製して、618mg(4.2mmol)の4−(ジメチルシリル)酪酸(15)を収率47%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0143】
【化15】
【0144】
得られた4−(ジメチルシリル)酪酸は、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):11.96(s,1H),3.77−3.82(m,1H),2.17−2.21(t,J=7.2Hz,2H),1.46−1.54(m,2H),0.52−0.57(m,2H),0.02−0.03(d,J=3.6Hz,6H)
【0145】
(製造例16:4−(ジメチルシリル)酪酸エチルの合成)
−30℃に冷却したクロロギ酸エチル(1172mg,10.8mmol)のTHF溶液(2mL)に、製造例14で作製した3−(ジメチルシリルプロピル)マグネシウムクロリドのTHF溶液(10mL,9.0mmol)を窒素雰囲気下でゆっくり滴下し、−30℃で1時間撹拌した。次に、冷却槽から取り出し、室温に戻しながら1時間撹拌を続けた。次に、得られた混合溶液を減圧下で濃縮し、Et
2OおよびHCl水溶液(濃度10重量%)を加え分液操作を行った。水層をEt
2Oで抽出し、得られた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。次に、濾過操作をし、減圧下で濃縮して得た混合物をクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/EtOAc=30/1(体積比))で精製して、1394mg(8.9mmol)の4−(ジメチルシリル)酪酸エチル(16)を収率89%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0146】
【化16】
【0147】
得られた4−(ジメチルシリル)酪酸エチルは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.11−4.15(q,J=6.8Hz,2H),3.84−3.89(m,1H),2.32−2.36(t,J=7.2Hz,2H),1.65−1.73(m,2H),1.25−1.29(t,J=7.2Hz,3H),0.60−0.65(m,2H),0.08−0.09(d,J=4.0Hz,6H)
【0148】
(製造例17:[3−(ジメチルシリル)プロピル]ジエチルホスフェートの合成)
−30℃に冷却したジエチルクロロホスフェイト(1864mg,10.8mmol)のTHF溶液(2mL)に、製造例14で作製した3−(ジメチルシリルプロピル)マグネシウムクロリドのTHF溶液(10mL,9.0mmol)を窒素雰囲気下でゆっくり滴下し、−30℃で1時間撹拌した。次に、冷却槽から取り出し、室温に戻しながら1時間撹拌した。次に、得られた混合溶液を減圧下で濃縮し、CH
2Cl
2を加え、HCl水溶液(濃度10重量%)およびNaHCO
3で分液操作を行った。水層をCH
2Cl
2で抽出し、得られた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。次に、濾過操作をし、減圧下で濃縮して得た混合物をクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/EtOAc=1/2(体積比))で精製して、1992mg(8.4mmol)の[3−(ジメチルシリル)プロピル]ジエチルホスフェート(17)を収率93%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0149】
【化17】
【0150】
得られた[3−(ジメチルシリル)プロピル]ジエチルホスフェートは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.02−4.16(m,4H),3.83−3.88(m,1H),1.61−1.83(m,4H),1.31−1.34(t,J=7.2Hz,6H),0.68−0.73(m,2H),0.08−0.09(d,J=3.6Hz,6H)
【0151】
(製造例18:3−メルカプトプロピルジメチルシランの合成)
0℃に冷却した硫黄(346mg,10.8mmol)のTHF溶液(2mL)に、製造例14で作製した3−(ジメチルシリルプロピル)マグネシウムクロリドのTHF溶液(10mL,9mmol)を窒素雰囲気下で加え、室温で12時間撹拌した。次に、得られた反応混合物をEt
2OおよびHCl水溶液(濃度10重量%)で分液操作を行った。次に、水層をEt
2Oで抽出し、得られた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。次に、濾過し、減圧下で濃縮して、ジスルフィド体を含む3−(メルカプトプロピル)ジメチルシランの混合物(1073mg)を得た。次に、得られた混合物(1073mg)をLiAlH
4(304mg,8mmol)のEt
2O(16mL)溶液に加え、40℃で1時間撹拌した。次に、得られた反応混合物にHCl水溶液(濃度10重量%)を加えて分液し、水層をEt
2Oで抽出し、集めた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。その後、溶液を濾過し、減圧下で蒸留して、820mg(6.1mmol)の(3−メルカプトプロピル)ジメチルシラン(18)を収率68%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0152】
【化18】
【0153】
得られた(3−メルカプトプロピル)ジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.84−3.89(m,1H),2.52−2.57(q,J=7.6Hz,2H),1.62−1.70(m,2H),1.33−1.37(t,J=7.6Hz,1H),0.66−0.71(m,2H),0.08−0.09(d,J=3.6Hz,6H)
【0154】
(製造例19:4−(ジメチルシリル)ブタノールの合成)
0℃に冷却したパラフォルムアルデヒド(332mg,11.0mmol)のTHF溶液(2mL)に、製造例14で作製した3−(ジメチルシリルプロピル)マグネシウムクロリドのTHF溶液(10mL,9.2mmol)を窒素雰囲気下で加え、室温で18時間撹拌した。次に、反応混合物にEt
2OおよびHCl水溶液(濃度10重量%)を加えて分液抽出し、集めた有機層をブラインで洗浄した後、Na
2SO
4で乾燥させた。その後、濾過し、減圧下で濃縮し、蒸留して、1095mg(8.3mmol)の4−(ジメチルシリル)ブタノール(19)を収率90%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0155】
【化19】
【0156】
得られた4−(ジメチルシリル)ブタノールは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.83−3.88(m,1H),3.64−3.67(t,J=6.4Hz,2H),1.58−1.65(m,2H),1.39−1.47(m,2H),1.19(bs,1H),0.59−0.64(m,2H),0.07−0.08(d,J=3.6Hz,6H)
【0157】
(製造例20:(3−ベンゾイルプロピル)ジメチルシランの合成)
マグネシウム(365mg,15mmol)を収容した二ツ口フラスコを真空雰囲気下で加熱した後、窒素で置換し、Et
2O(2mL)および少量のI
2を加えた。次に、混合物を45℃に加熱し、製造例4で作製した(3−クロロプロピル)ジメチルシラン(1365mg、10mmol)のEt
2O溶液(10mL)をゆっくりと加え、45℃で4時間攪拌した。次に、上澄み溶液を、氷冷したベンゾニトリル(1236mg,12.0mmol)のEt
2O溶液(2mL)にゆっくりと加え、45℃で15時間攪拌した。次に、得られた反応混合物にEt
2OおよびHCl水溶液(濃度10重量%)を加え、分液操作を行った。得られた有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。次に、減圧下で濃縮し、クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/EtOAc=20/1(体積比))で精製して、1339mg(6.5mmol)の(3−ベンゾイルプロピル)ジメチルシラン(20)を収率65%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0158】
【化20】
【0159】
得られた(3−ベンゾイルプロピル)ジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):7.95−7.98(m,2H),7.54−7.58(s,1H),7.44−7.49(m,2H),3.86−3.91(m,1H),3.00−3.03(t,J=7.2Hz,2H),1.77−1.85(m,2H),0.66−0.71(m,2H),0.09−0.10(d,J=3.6Hz,6H)
【0160】
(製造例21:7−[(3−ジメチルシリル)プロポキシ]クマリンの合成)
0℃に冷却した水素化ナトリウム(72mg,3.0mmol)のDMF溶液(9mL)に、ウンベリフェロン(486mg,3.0mmol)を窒素雰囲気下で少しずつ加え、30分攪拌した。次に、製造例5で作製した(3−ブロモプロピル)ジメチルシラン(655mg,3.6mmol)を加えて60℃で12時間攪拌した。次に、得られた反応混合物に蒸留水およびCH
2Cl
2を加えて分液抽出し、有機層をブラインで洗浄した後、Na
2SO
4で乾燥させた。その後、濾過し、減圧下で濃縮し、クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/EtOAc=8/1(体積比))で精製して、677mg(2.58mmol)の7−[(3−ジメチルシリル)プロポキシ]クマリン(21)を収率86%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0161】
【化21】
【0162】
得られた7−[(3−ジメチルシリル)プロポキシ]クマリンは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):7.63−7.65(d,J=9.6Hz,2H),7.36−7.38(d,J=8.8Hz,2H),6.80−6.85(m,2H),6.24−6.26(d,J=9.2Hz,1H),3.98−4.01(t,J=6.8Hz,2H),3.89−3.94(m,1H),1.83−1.91(m,2H),0.70−0.75(m,2H),0.11−0.12(d,J=3.6Hz,6H)
【0163】
製造例1〜9,11〜13,15〜21で作製したヒドロシラン化合物を以下の表1にまとめる。表1に示すヒドロシラン化合物のうち、1−(ジメチルシリル)ピレン(製造例2)、(ジメチルシリル)フェロセン(製造例3)、1−(3−ジメチルシリルプロピル)ナフタレン(製造例6)、(3−アジドプロピル)ジメチルシラン(製造例7)、[3−(ジメチルシリル)プロピル]アクリルアミド(製造例9)、1−(3−ジメチルシリルプロピル)−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド(製造例11)、(3−ニトロプロピル)ジメチルシラン(製造例13)、4−(ジメチルシリル)酪酸(製造例15)、4−(ジメチルシリル)酪酸エチル(製造例16)、[3−(ジメチルシリル)プロピル]ジエチルホスフェート(製造例17)、4−(ジメチルシリル)ブタノール(製造例19)、および(3−ベンゾイルプロピル)ジメチルシラン(製造例20)は新規な化合物である。また、製造例11で作製した1−(3−ジメチルシリルプロピル)−3−メチルイミダゾリウムアイオダイドの前駆体である1−(3−ジメチルシリルプロピル)イミダゾール(製造例10)も新規な化合物である。
【0164】
【表1】
【0165】
[実施例1:シリカゲル表面の修飾]
メソポーラスシリカであるシリカゲル(MCM−41、100mg)を減圧下、180℃で6時間乾燥させた後、ヒートガンを用いてさらに乾燥させた。次に、乾燥後のシリカゲルを室温まで冷却した後、窒素雰囲気下において、CH
2Cl
2(3.0mL)、ヒドロシラン化合物(0.5mmol,シリカのSi−OH基に対しておよそ1当量)、およびトリスペンタフルオロフェニルボラン(B(C
6F
5)
3,1.3mg,5μmol,シリカのSi−OH基に対しておよそ1mol%)を順次加え、室温で5分間静置した。実施例1は24種類のヒドロシラン化合物を用いたが(実施例1−1から1−24)、いずれの場合にも、B(C
6F
5)
3を加えた時点で水素が発生した。次に、水素の発生が終了したことを確認した後、得られたシリカゲルを濾過して、CH
2Cl
2で十分に洗浄した。次に、洗浄後のシリカを減圧下、室温で2時間乾燥させて、ヒドロシラン化合物の分子構造Aにより表面が修飾された(官能基化された)シリカゲルを得た。
【0166】
この反応の反応式を以下に示す。以下の反応式において、ヒドロシラン化合物は「SiH(CH
3)
2−FG」(FGは官能基)で示す。なお、実施例1−8では、ヒドロシラン化合物として「SiH
2CH
3−FG」を用いた。
【0167】
【化22】
【0168】
(実施例1−1)
ヒドロシラン化合物として、製造例1で作製した1−(ジメチルシリル)ナフタレンを用いた。
【0169】
(実施例1−2)
ヒドロシラン化合物として、製造例2で作製した1−(ジメチルシリル)ピレンを用いた。
【0170】
(実施例1−3)
ヒドロシラン化合物として、市販の1−(ジメチルシリル)ベンゼンを用いた。
【0171】
(実施例1−4)
ヒドロシラン化合物として、製造例3で作製した(ジメチルシリル)フェロセンを用いた。
【0172】
(実施例1−5)
ヒドロシラン化合物として、市販の1−(ジメチルシリルメチル)ベンゼンを用いた。
【0173】
(実施例1−6)
ヒドロシラン化合物として、製造例4で作製した(3−クロロプロピル)ジメチルシランを用いた。
【0174】
(実施例1−7)
ヒドロシラン化合物として、市販の(3−クロロプロピル)メチルシランを用いた。
【0175】
(実施例1−8)
ヒドロシラン化合物として、製造例5で作製した(3−ブロモプロピル)ジメチルシランを用いた。
【0176】
(実施例1−9)
ヒドロシラン化合物として、製造例7で作製した(3−アジドプロピル)ジメチルシランを用いた。
【0177】
(実施例1−10)
ヒドロシラン化合物として、製造例8で作製した(3−アミノプロピル)ジメチルシランを用いた。
【0178】
(実施例1−11)
ヒドロシラン化合物として、製造例18で作製した3−メルカプトプロピルジメチルシランを用いた。
【0179】
(実施例1−12)
ヒドロシラン化合物として、製造例13で作製した(3−ニトロプロピル)ジメチルシランを用いた。
【0180】
(実施例1−13)
ヒドロシラン化合物として、製造例17で作製した[3−(ジメチルシリル)プロピル]ジエチルホスフェートを用いた。
【0181】
(実施例1−14)
ヒドロシラン化合物として、製造例16で作製した4−(ジメチルシリル)酪酸エチルを用いた。
【0182】
(実施例1−15)
ヒドロシラン化合物として、製造例15で作製した4−(ジメチルシリル)酪酸を用いた。
【0183】
(実施例1−16)
ヒドロシラン化合物として、製造例21で作製した7−[(3−ジメチルシリル)プロポキシ]クマリンを用いた。
【0184】
(実施例1−17)
ヒドロシラン化合物として、製造例19で作製した4−(ジメチルシリル)ブタノールを用いた。
【0185】
(実施例1−18)
ヒドロシラン化合物として、市販の1−(ジメチルシリル)ドトリアコンタンを用いた。
【0186】
(実施例1−19)
ヒドロシラン化合物として、製造例6で作製した1−(3−ジメチルシリルプロピル)ナフタレンを用いた。
【0187】
(実施例1−20)
ヒドロシラン化合物として、製造例9で作製した[3−(ジメチルシリル)プロピル]アクリルアミドを用いた。
【0188】
(実施例1−21)
ヒドロシラン化合物として、製造例12で作製したN−[3−(ジメチルシリル)プロピル]フタルイミドを用いた。
【0189】
(実施例1−22)
ヒドロシラン化合物として、製造例11で作製した1−(3−ジメチルシリルプロピル)−3−メチルイミダゾリウムアイオダイドを用いた。
【0190】
(実施例1−23)
ヒドロシラン化合物として、市販の2−メチル−2−(ジメチルシリル)プロパンを用いた。
【0191】
(実施例1−24)
ヒドロシラン化合物として、製造例20で作製した(3−ベンゾイルプロピル)ジメチルシランを用いた。
【0192】
実施例1−1から1−24の全ての場合において、B(C
6F
5)
3を加えた時点で水素が発生し、シリカゲルの表面に存在するSi−OH基とヒドロシラン化合物との間で脱水素縮合反応が進行することが確認された。また、同じく全ての場合において、室温での5分間の静置の間に水素の発生が停止し、この反応が室温において短時間に進行することが確認された。実施例1−1から1−24において作製した表面修飾シリカゲルに対する赤外分光分析(IR)の評価結果を
図3〜26にそれぞれ示す。
図3〜26に示すIRのプロファイルから、各実施例において、ヒドロシラン化合物の分子構造Aによるシリカゲル表面への修飾がなされていることが確認された。シリカゲルのSi−OH基と反応可能な基が分子構造Aに含まれる場合(例えば、カルボキシル基が分子構造Aに含まれる実施例1−15)においても、シリカゲルのSi−OH基とヒドロシリル基との間に選択的に脱水素縮合反応が進行した。換言すれば、実施例1−15ではカルボキシル基を含む分子構造Aにより基材表面の修飾が達成できた。このようなカルボキシル基を修飾構造に残した表面修飾が従来は不可能であったため、これらの実施例は本開示の方法が非常に高い工業的有用性を有することを示している。なお、IR測定は、日本分光社製FT/IR−4000を用いて、拡散反射スペクトル法により行った。以降の実施例および比較例においても同様である。
【0193】
IRの評価とは別に、実施例1−1から1−24において作製した表面修飾シリカゲルに対して元素分析を行い、シリカゲル表面への分子構造Aの担持量を評価した。評価結果を以下の表2に示す。
【0194】
【表2】
【0195】
[比較例1:白金系触媒の使用]
シリカゲル(MCM−41、100mg)を減圧下、180℃で6時間乾燥させた後、ヒートガンを用いてさらに乾燥させた。次に、乾燥後のシリカゲルを室温まで冷却した後、窒素雰囲気下において、トルエン(3.0mL)、製造例4で作製した(3−クロロプロピル)ジメチルシラン(63mg,0.5mmol,シリカのSi−OH基に対しておよそ1当量)、および白金系触媒であるジ-μ-クロロジクロロビス(エチレン)二白金(II)(2.94mg,5μmol,シリカのSi−OH基に対しておよそ1mol%)を順次加え、室温で10分間攪拌した。次に、水素の発生が終了したことを確認した後、得られたシリカゲルを濾過して、トルエンで十分に洗浄した。次に、洗浄後のシリカを減圧下、室温で2時間乾燥させて、ヒドロシラン化合物の分子構造Aにより表面が修飾された(官能基化された)シリカゲルを得た。なお、この白金系触媒は、特許文献1で使用されているシス−ジクロロビス(スチレン)白金(II)と同様の触媒活性を示す。
【0196】
この反応の反応式を以下に示す。
【0197】
【化23】
【0198】
比較例1で作製した表面修飾シリカゲル、および比較例1と同じヒドロシラン化合物を用いて実施例1−6で作製した表面修飾シリカゲルの外観を
図27に示す。
図27に示すように、ボラン触媒を用いて作製した実施例1−6の表面修飾シリカゲル(
図27内、左側の試料)は、表面修飾前のシリカゲルと同様に白色であったが、白金系触媒を用いて作製した比較例1の表面修飾シリカゲル(
図27内、右側の試料)は着色していた。この着色は、シリカゲル表面への金属化合物(白金化合物)の吸着により生じたと考えられた。
【0199】
次に、比較例1で作製した表面修飾シリカゲルのIRの評価結果を
図28に示す。実施例1−6で作製した表面修飾シリカゲルのIRの評価結果(
図8)と比較すると、ボラン触媒を用いた実施例1−6(
図8)では、C−H伸縮運動に起因する吸収ピークが波数3000cm
−1付近に大きく見えており、分子構造Aの効率的な担持がなされていることが示唆された。これに対して、白金系触媒を用いた比較例1(
図28)では、同様の吸収ピークが見られず、分子構造Aの担持がほとんどなされていないことがわかった。
【0200】
次に、比較例1および実施例1−6で作製したそれぞれの表面修飾シリカゲルから5mgを採取し、これを500℃まで温度上昇させたときの重量減少量を熱重量測定装置(SII製、TG/DTA7200)を用いて評価した。温度上昇の制御は、25℃から1分間に10℃ずつ昇温させ;200℃に達した時点で当該温度に10分間保持し;その後、さらに1分間に10℃ずつ昇温させ;500℃に達した時点で当該温度に10分間保持;とした。評価結果を
図29に示す。
図29に示すように、有機官能基が燃焼する260℃付近からの重量減少について、実施例1−6では約650μgの減少が確認されたが、比較例1ではほとんど減少が確認されなかった。すなわち比較例1では、シリカゲル表面への分子構造Aによる修飾がほとんどなされていないことが確認された。
【0201】
[比較例2:トリエチルシラノールとヒドロシラン化合物との反応]
比較例2では、ヒドロシラン化合物を基材表面の修飾に使用するのではなく、ヒドロシラン化合物と、Si−OH基を有するトリエチルシラノール分子とを反応させることを試みた。具体的に、ヒドロシラン化合物として製造例8で作製した(3−アミノプロピル)ジメチルシランを用い、シリカゲルの代わりにトリエチルシラノールをヒドロシラン化合物と同じ当量用いた以外は実施例1と同様にして、両者の反応の進行を試みた。しかし、反応は進行せず、原料がそのまま回収された。これは、低分子同士のいわゆる均一系の反応において、アミノ基がボラン触媒に配位し、ボラン触媒の触媒能がアミノ基の被毒により失活したためと推定された。一方、実施例1−10では、(3−アミノプロピル)ジメチルシランによるシリカゲル表面の修飾が達成されているが、これは基材表面にOH基が存在することによって当該OH基とアミノ基とが無数のイオンペアを形成し、アミノ基が触媒毒として作用しなかったためと推定された。比較例2の結果からは、基材表面の修飾と、均一系における反応との間で、反応性に関して全く異なる挙動が生じることが確認された。
【0202】
[実施例2:原子移動ラジカル重合(ATRP)剤への応用]
(ATRP剤として機能する分子構造Aを有するヒドロシラン化合物の作製)
よく乾燥させたシュレンク管(内容積20mL)に、1.00当量の4−ジメチルシリルブタノール(265mg,2.00mmol)、1.05当量のトリエチルアミン(0.293mL,2.1mmol)および溶媒として1.60mLのジクロロメタンを窒素雰囲気下および室温で収容し、攪拌した。これとは別に、よく乾燥させたナスフラスコ(内容積30mL)に、1.05当量の2−ブロモイソブチリルブロミド(0.258mL,2.1mmol)を窒素雰囲気下および室温で収容し、さらに溶媒として8.00mLのジクロロメタンを加え、攪拌した。次に、先程のシュレンク管を0℃まで冷却した後、ナスフラスコ内の2−ブロモイソブチルブロミド溶液を滴下し、室温で12時間攪拌した。次に、ジクロロメタンで抽出を行い、ブラインで有機層を洗った。次に、得られた抽出液を無水Na
2SO
4で脱水し、濾過し、濾液をエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。次に、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/AcOEt=10/1(体積比),Rf値=0.6)にて精製し、500mg(1.78mmol)の2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(4−ジメチルシリル)ブチルを単離収率89%で得た。この反応の反応式を以下に示す。反応式に示すように、作製したヒドロシラン化合物はATRP剤として機能する分子構造Aを有し、分子構造Aはカルボニル基を有する。
【0203】
【化24】
【0204】
得られた2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(4−ジメチルシリル)ブチルは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.073(d,J=3.6Hz,6H),0.597−0.646(m,2H),1.424−1.503(m,2H),1.691−1.761(m,2H),1.934(s,6H),3.825−3.879(m,1H),4.170−4.202(t,2H)
【0205】
また、得られた2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(4−ジメチルシリル)ブチルはIR測定によっても同定した。得られたIRスペクトルを
図30に示す。
【0206】
(シリカゲル表面の修飾)
1当量のシリカゲル(MCM−41、100mg)をシュレンク管(内容積20mL)に収容し、180℃で4時間、真空乾燥させた後、ヒートガンを用いてさらに乾燥させた。次に、乾燥後のシリカゲルを室温まで冷却した後、窒素雰囲気下においてCH
2Cl
2(3.0mL)を加え、攪拌した。次に、シュレンク管内を攪拌しながら、1当量の2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(4−ジメチルシリル)ブチル(141mg,0.5mmol)を滴下した。次に、B(C
6F
5)
3(2.56mg,1mol%)を素早く加え、室温で静置したところ、水素の発生が5分間続いた。次に、水素の発生が終了したことを確認した後、シュレンク管の内容物をCH
2Cl
2を用いて濾過し、得られた固体を真空乾燥した。このようにして、ヒドロシラン化合物の分子構造Aにより表面が修飾された(官能基化された)シリカゲルを得た。
【0207】
この反応の反応式を以下に示す。
【0208】
【化25】
【0209】
得られた表面修飾シリカゲルに対するIRの評価結果を
図31に示す。
図31に示すIRのプロファイルから、ヒドロシラン化合物の分子構造Aによるシリカゲル表面への修飾がなされていることが確認された。また、分子構造A中のカルボニル基はそのまま保持されており、ヒドロシラン化合物のSi−H基が、カルボニル基ではなく、基材であるシリカゲルのSi−OH基に対して選択的に反応したことが確認された。
【0210】
(ATRP剤としての反応)
よく乾燥させたシュレンク管(内容積20mL)に、CuBr(2.75mg,0.0192mmol)およびスチレンモノマー(0.687mL,6mmol)を収容し、さらに溶媒として0.825mLのアニソールを室温、窒素雰囲気下で加え、攪拌した。次に、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルエチレントリアミン(PMDETA,8.07μL,0.0384mmol)を滴下した後、100℃まで昇温し、系内が均一になるまで攪拌した。これとは別に、上記作製した表面修飾シリカゲルを、よく乾燥させたシュレンク管(内容積20mL)に室温下で収容して窒素置換し、そのまま窒素雰囲気下でCuBrおよびスチレンモノマーの上記混合液をキャニュラーで滴下した。次に、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エチル(1.23μL,0.0084mmol)を攪拌しながら滴下した後、得られた混合溶液を100℃まで昇温し、12時間攪拌を続けた。12時間経過後、ジクロロメタンを用いて遠心分離を4回行い、得られた固体を真空乾燥した。この反応の反応式を以下に示す。
【0211】
【化26】
【0212】
得られた表面修飾シリカゲルに対するIRの評価結果を
図32に示す。
図32に示すIRのプロファイルから、反応式の右辺に示す修飾がシリカゲルの表面になされていることが確認された。
【0213】
[実施例3:アクリレート構造を含む分子構造Aによる表面修飾]
(ヒドロシラン化合物の作製)
よく乾燥させたシュレンク管(内容積20mL)に、1.00当量の4−ジメチルシリルブタノール(265mg,2.00mmol)、1.05当量のトリエチルアミン(0.293mL,2.1mmol)および溶媒として1.60mLのジクロロメタンを窒素雰囲気下および室温で収容し、攪拌した。これとは別に、よく乾燥させたナスフラスコ(内容積30mL)に、1.05当量の塩化アクリロイル(0.170mL,2.1mmol)を窒素雰囲気下および室温で収容し、さらに溶媒として8.00mLのジクロロメタンを加え、攪拌した。次に、先程のシュレンク管を0℃まで冷却した後、ナスフラスコ内の塩化アクリロイル溶液を滴下し、室温で12時間攪拌した。次に、ジクロロメタンで抽出を行い、ブラインで有機層を洗った。次に、得られた抽出液を無水Na
2SO
4で脱水し、濾過し、濾液をエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。次に、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロフォルム,Rf値=0.7)にて精製し、150mg(0.805mmol)のアクリル酸(4−ジメチルシリル)ブチルを単離収率40%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0214】
【化27】
【0215】
得られたアクリル酸(4−ジメチルシリル)ブチルは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.073(d,J=3.6Hz,6H),0.596−0.645(m,2H),1.419−1.403(m,2H),1.676−1.747(m,2H),3.823−3.875(m,1H),4.147−4.180(t,2H),5.806−5.836(q,1H),6.091−6.160(q,1H),6.379−6.426(q,1H)
【0216】
また、得られたアクリル酸(4−ジメチルシリル)ブチルはIR測定によっても同定した。得られたIRスペクトルを
図33に示す。
【0217】
(シリカゲル表面の修飾)
1当量のシリカゲル(MCM−41、100mg)をシュレンク管(内容積20mL)に収容し、180℃で4時間、真空乾燥させた後、ヒートガンを用いてさらに乾燥させた。次に、乾燥後のシリカゲルを室温まで冷却した後、窒素雰囲気下においてCH
2Cl
2(3.0mL)を加え、攪拌した。次に、シュレンク管内を攪拌しながら、1当量のアクリル酸(4−ジメチルシリル)ブチル(93.2mg,0.5mmol)を滴下した。次に、B(C
6F
5)
3(2.56mg,1mol%)を素早く加え、室温で静置したところ、水素の発生が5分間続いた。次に、水素の発生が終了したことを確認した後、シュレンク管の内容物をCH
2Cl
2を用いて濾過し、得られた固体を真空乾燥した。このようにして、ヒドロシラン化合物の分子構造Aにより表面が修飾された(官能基化された)シリカゲルを得た。
【0218】
この反応の反応式を以下に示す。
【0219】
【化28】
【0220】
得られた表面修飾シリカゲルに対するIRの評価結果を
図34に示す。
図34に示すIRのプロファイルから、ヒドロシラン化合物の分子構造Aによるシリカゲル表面への修飾がなされていることが確認された。
【0221】
[実施例4:可逆的付加開裂連鎖重合(RAFT)剤への応用]
(RAFT剤として機能する分子構造Aを有するヒドロシラン化合物の作製)
製造例18で作製した3−メルカプトプロピルジメチルシラン(402.94mg,3mmol)および二硫化炭素(456.84mg,6mmol)を、窒素雰囲気下でCHCl
3(2mL)に溶解させ、さらにトリエチルアミン(607.14mg,6mmol)を室温で滴下して3時間攪拌した。次に、(1−ブロモエチル)ベンゼン(555.18mg,3mmol)を室温で滴下し、20時間攪拌した。反応終了後、塩酸(濃度10重量%)水溶液を加え、CHCl
3を用いて分液した。集めた有機層はブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、878.5mgの3−ジメチルヒドロシリルプロピル−1−フェニルエチルトリチオカーボネートを収率93%で得た。この反応の反応式を以下に示す。反応式に示すように、作製したヒドロシラン化合物は、RAFT剤として機能する分子構造Aを有する。
【0222】
【化29】
【0223】
得られた3−ジメチルヒドロシリルプロピル−1−フェニルエチルトリチオカーボネートは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.073(d,J=3.6Hz,6H),0.722−0.671(m,2H),1.687−1.764(m,5H),3.357(t,2H),3.869−3.834(m,1H),5.333(q,1H),7.396−7.282(m,5H)
【0224】
また、得られた3−ジメチルヒドロシリルプロピル−1−フェニルエチルトリチオカーボネートはIR測定によっても同定した。得られたIRスペクトルを
図35に示す。
【0225】
(シリカゲル表面の修飾)
1当量のシリカゲル(MCM−41、80mg)をシュレンク管(内容積20mL)に収容し、180℃で4時間、真空乾燥させた後、ヒートガンを用いてさらに乾燥させた。次に、乾燥後のシリカゲルを室温まで冷却した後、窒素雰囲気下においてCH
2Cl
2(2.4mL)を加え、攪拌した。次に、シュレンク管内を攪拌しながら、1当量の3−ジメチルヒドロシリルプロピル−1−フェニルエチルトリチオカーボネート(126mg,0.4mmol)を滴下した。次に、B(C
6F
5)
3(2.05mg,1mol%)を素早く加え、室温で静置したところ、水素の発生が5分間続いた。次に、水素の発生が終了したことを確認した後、シュレンク管の内容物をCH
2Cl
2を用いて濾過し、得られた固体を真空乾燥した。このようにして、ヒドロシラン化合物の分子構造Aにより表面が修飾された(官能基化された)シリカゲルを得た。
【0226】
この反応の反応式を以下に示す。
【0227】
【化30】
【0228】
得られた表面修飾シリカゲルに対するIRの評価結果を
図36に示す。
図36に示すIRのプロファイルから、ヒドロシラン化合物の分子構造Aによるシリカゲル表面への修飾がなされていることが確認された。
【0229】
(RAFT剤としての反応)
上記作製した表面修飾シリカゲル(40mg)と、アクリル酸n−ブチル(1026mg)およびアゾビスイソブチロニトリル(1mg)とを、1,4−ジオキサンに混合し、70℃で16時間攪拌した。次に、CH
2Cl
2を用いて遠心分離し、得られたシリカゲルを4回洗浄した。この反応の反応式を以下に示す。
【0230】
【化31】
【0231】
得られた表面修飾シリカゲルに対するIRの評価結果を
図37に示す。
図37に示すIRのプロファイルから、反応式の右辺に示す修飾がシリカゲルの表面になされていることが確認された。なお、アクリル酸n−ブチルのIRプロファイルを、
図38に併せて示す。
【0232】
[実施例5:紙の表面の修飾]
実施例5では、基材に紙(日本製紙クレシア製、キムワイプ)を用い、当該紙の表面をヒドロシラン化合物の分子構造Aで修飾した。
【0233】
(実施例5−1)
主面の面積が1.2cm
2となるように裁断したキムワイプを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS,100mg,0.02mmol)、B(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、1mL)の混合液に窒素雰囲気下で浸漬し、室温で5分静置した。浸漬した時点で水素が発生したが、5分経過の間に水素の発生は見られなくなった。静置後、混合液からキムワイプを取り出し、塩化メチレンで洗浄し、乾燥させ、キムワイプの主面における水の接触角をぬれ性評価装置(ニック製、LSE−ME1)を用いて評価したところ、接触角は136°であった(以降の実施例においても、接触角は同様に測定した)。表面修飾されたキムワイプの主面の接触角の状態を
図39に示す。
【0234】
(実施例5−2)
キムワイプの浸漬を空気下で行った以外は実施例5−1と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾されたキムワイプを得た。このキムワイプの主面における水の接触角は138°であった。
【0235】
(実施例5−3)
混合液に使用した塩化メチレンを通常の(非脱水の)ものとした以外は実施例5−2と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾されたキムワイプを得た。このキムワイプの主面における水の接触角は119°であった。
【0236】
(実施例5−4)
脱水塩化メチレンの代わりに脱水ヘキサン(アルドリッチ製)を用いて混合液を調製するとともに、浸漬後の洗浄に塩化メチレンの代わりにヘキサンを用いた以外は実施例5−2と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾されたキムワイプを得た。このキムワイプの主面における水の接触角は138°であった。
【0237】
(実施例5−5)
混合液に使用したヘキサンを通常の(非脱水の)ものとした以外は実施例5−4と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾されたキムワイプを得た。このキムワイプの主面における水の接触角は119°であった。
【0238】
(実施例5−6)
主面の面積が3.5cm
2となるように裁断したキムワイプを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS,1000mg,0.20mmol)、B(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、4mL)の混合液に窒素雰囲気下で浸漬し、室温で5分静置した。浸漬した時点で水素が発生したが、5分経過の間に水素の発生は見られなくなった。静置後、混合液からキムワイプを取り出し、塩化メチレンで洗浄し、乾燥させ、キムワイプの主面における水の接触角を評価したところ、接触角は134°であった。
【0239】
実施例5−1〜5−6では表面の大きな接触角が達成されたが、この大きな接触角は、PHMSの分子構造Aの修飾によってキムワイプの主面が疎水化および撥水化されたためと考えられた。なお、修飾前のキムワイプは、よく知られているように、またその名称からも明らかであるように非常に良く水を吸引する。
【0240】
(実施例5−7)
主面の面積が14cm
2となるように裁断したキムワイプを、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS,500mg,0.10mmol)、B(C
6F
5)
3(5mg,0.01mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、2mL)の混合液に窒素雰囲気下で浸漬し、室温で5分静置した。浸漬した時点で水素が発生したが、5分経過の間に水素の発生は見られなくなった。静置後、混合液からキムワイプを取り出し、塩化メチレンで洗浄し、乾燥させて、表面修飾キムワイプを得た。得られた表面修飾キムワイプに対するIRの評価結果を
図40に示す。
図40に示すように、PMHSのSi−O−Si結合に由来する強い吸収ピークが波数1000cm
−1付近に確認され、PMHS由来の分子構造Aによってキムワイプの表面が修飾されていることが確認された。
【0241】
[実施例6:不織布の表面の修飾]
実施例6では、基材に不織布(廣瀬製紙製、素材はビニロン1036、ビニロン1048、ポリエステル(PET)80、PET100、コットン)を用い、当該不織布の表面をヒドロシラン化合物の分子構造Aで修飾した。
【0242】
(実施例6−1)
主面の面積が1.2cm
2となるように裁断したビニロン1036の不織布を、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS,100mg,0.02mmol)、B(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(1mL)の混合液に窒素雰囲気下で浸漬し、室温で5分静置した。浸漬した時点で水素が発生したが、次第に水素の発生はおさまり、5分経過の間に水素の発生は見られなくなった。静置後、混合液からビニロン1036不織布を取り出し、塩化メチレンで洗浄し、乾燥させ、ビニロン1036不織布の主面における水の接触角を評価したところ、接触角は136°であった。表面修飾されたビニロン1036不織布の主面の接触角の状態を
図41に示す。
【0243】
また、表面修飾前のビニロン1036不織布に対するIRの評価結果を
図42(a)に、表面修飾後のビニロン1036不織布に対するIRの評価結果を
図42(b)に示す。
図42(b)に示すように、表面修飾後のビニロン1036不織布では、表面修飾前には見られない、PMHSの分子構造Aに由来するピークおよび波数1100cm
−1付近のピーク形状の変化が観察された。
【0244】
(実施例6−2)
ビニロン1036の不織布の代わりにビニロン1048の不織布を用いた以外は実施例6−1と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾された不織布を得た。この不織布の主面における水の接触角は136°であった。
【0245】
また、表面修飾前のビニロン1048不織布に対するIRの評価結果を
図43(a)に、表面修飾後のビニロン1048不織布に対するIRの評価結果を
図43(b)に示す。
図43(b)に示すように、表面修飾後のビニロン1048不織布では、表面修飾前には見られない、PMHSの分子構造Aに由来するピークおよび波数1100cm
−1付近のピーク形状の変化が観察された。
【0246】
(実施例6−3)
ビニロン1036の不織布の代わりにポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET)80の不織布を用いた以外は実施例6−1と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾された不織布を得た。この不織布の主面における水の接触角は132°であった。
【0247】
また、表面修飾前のPET80不織布に対するIRの評価結果を
図44(a)に、表面修飾後のPET80不織布に対するIRの評価結果を
図44(b)に示す。
図44(b)に示すように、表面修飾後のPET80不織布では、表面修飾前には見られない、PMHSの分子構造Aに由来するピークおよび波数1100cm
−1付近のピーク形状の変化が観察された。
【0248】
(実施例6−4)
ビニロン1036の不織布の代わりにポリエステル100の不織布を用いた以外は実施例6−1と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾された不織布を得た。この不織布の主面における水の接触角は136°であった。
【0249】
また、表面修飾前のPET100不織布に対するIRの評価結果を
図45(a)に、表面修飾後のPET100不織布に対するIRの評価結果を
図45(b)に示す。
図45(b)に示すように、表面修飾後のPET100不織布では、表面修飾前には見られない、PMHSの分子構造Aに由来するピークおよび波数1100cm
−1付近のピーク形状の変化が観察された。
【0250】
(実施例6−5)
ビニロン1036の不織布の代わりにコットンの不織布を用いた以外は実施例6−1と同様にして、PMHSの分子構造Aによって表面が修飾された不織布を得た。表面修飾前のコットン不織布に対するIRの評価結果を
図46(a)に、表面修飾後のコットン不織布に対するIRの評価結果を
図46(b)に示す。
図46(b)に示すように、表面修飾後のコットン不織布では、表面修飾前には見られない、PMHSの分子構造Aに由来するピークおよび波数1100cm
−1付近のピーク形状の変化が観察された。
【0251】
[実施例7:ガラスの表面の修飾]
実施例7では、基材に自動車のサイドガラスを用い、当該ガラスの表面をヒドロシラン化合物の分子構造Aで修飾した。
【0252】
最初に、マスキングテープを用いて、サイドガラスの12cm×12cmの領域の表面のみを露出させた。次に、当該表面を、コロナ放電処理機(信光電気計装製、コロナフィットCFG−500)を用いてコロナ放電処理(9kV)した。次に、処理後のガラス表面に、PMHS(2000mg,6.54mmol)、B(C
6F
5)
3(30mg,0.06mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、5mL)の混合液を塗布し、1分放置した後、当該表面を塩化メチレンおよびヘキサンで洗浄し、乾燥させた。このような処理を行った当該ガラスの表面は、水を弾き、PMHSの分子構造Aの修飾による疎水化および撥水化が確認された。処理後の当該ガラスの表面を
図47に示す。
図47に示すように、サイドガラスにおける処理後の領域では付着した水により形成された水滴が、その大きな接触角により、すぐに落下した。
【0253】
[実施例8:粉末表面の修飾]
(実施例8−1)
シリカゲルの粉末(300mg)を真空雰囲気下で加熱して乾燥させた後、PMHS(150mg,0.06mmol)と脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、3mL)とを加えて攪拌した。次に、攪拌混合物に、B(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、0.5mL)の混合溶液を滴下し、室温で5分間攪拌した。攪拌を止めた時点で水素の発生は停止していた。次に、上澄み液を取り除き、取り除いた量と同程度の量の塩化メチレンを加えて攪拌し、シリカゲル粉末を洗浄した。この洗浄を3回繰り返した後、乾燥させて、PMHSの分子構造Aによる表面修飾がなされたシリカゲル粉末を得た。
【0254】
得られたシリカゲル粉末を不織布上に薄く配置し、その上に水滴を垂らしたところ、
図48に示すように目視でみた接触角にして140°を超える液滴となり、表面修飾によりシリカゲル粉末に撥水性が付与されていることが確認された。
【0255】
(実施例8−2)
シリカゲル粉末の代わりにアルミナ粉末(300mg)を用いた以外は実施例8−1と同様にして、PMHSの分子構造Aによる表面修飾がなされたアルミナ粉末を得た。得られたアルミナ粉末を不織布上に薄く配置し、その上に水滴を垂らしたところ、
図49に示すように目視でみた接触角にして140°を超える液滴となり、表面修飾によりアルミナ粉末に撥水性が付与されていることが確認された。
【0256】
[実施例9:接合体の作製]
(実施例9−1)
木粉(2.0g)とPMHS(3.0g,6.0mmol)とを室温で混合し、そこへB(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、2mL)の混合液を徐々に添加した。添加後、室温および空気下で3分間静置したところ、容器の形状に固化した木粉の接合体が得られた。得られた接合体を
図50に示す。得られた接合体は強固であり、手で割ることができなかった。
【0257】
(実施例9−2)
シリカゲル粒子(関東化学製シリカゲル60N 100−210μm,2.0g)とPMHS(3.0g,6.0mmol)とを室温で混合し、そこへB(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、2mL)の混合液を徐々に添加した。添加後、室温および空気下で3分間静置したところ、容器の形状に固化したシリカゲル粉末の接合体が得られた。得られた接合体を
図51に示す。得られた接合体は強固であり、手で割ることができなかった。
【0258】
(実施例9−3)
アルミナ粉末(和光純薬製012−01965,4.0g)とPMHS(3.0g,6.0mmol)とを室温で混合し、そこへB(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、2mL)の混合液を徐々に添加した。添加後、室温および空気下で3分間静置したところ、容器の形状に固化したアルミナ粉末の接合体が得られた。得られた接合体を
図52に示す。得られた接合体は強固であり、手で割ることができなかった。
【0259】
(実施例9−4)
木粉(2.0g)とPMHS(3.0g,6.0mmol)とを室温で混合し、そこへB(C
6F
5)
3(10mg,0.02mmol)および脱水塩化メチレン(アルドリッチ製、2mL)の混合液を徐々に添加した。添加後、0.1MPaの圧力を混合物に印加しながら室温および空気下で3分間静置したところ、容器の形状に固化した木粉の接合体が得られた。得られた木粉の接合体をガスバーナーの炎に3分間晒したところ、炎に直接接している部分こそ外観に変化が見られたものの、接合体の内部は燃焼することなく炎に晒す前の状態を保っていた。すなわち、作製した接合体は難燃性であった。
【0260】
[ヒドロシラン化合物の作製その2]
以下の製造例22〜38にて作製したヒドロシラン化合物は、全て新規な化合物である。
【0261】
(製造例22:5,6−エポキシヘキシルジメチルシランの合成)
CuCN(97.3mg,1.09mmol)および以下の化学式の左辺左側の化合物(1.00g,10.9mmol)に、溶媒であるTHF(12mL)を窒素雰囲気下にて加えた。次に、全体を−78℃に冷却して以下の化学式の左辺右側の化合物のTHF溶液(17.0mL,14.1mmol)を滴下した後、−20℃で3時間攪拌して反応を進行させた。反応終了後、飽和NH
4Cl水溶液を加えてクエンチし、水層をEt
2Oで抽出した。残った有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過および濃縮することによって粗生成物を得た。次に、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、6−クロロ−5−ヒドロキシヘキシルジメチルシランを収率92%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0262】
【化32】
【0263】
得られた6−クロロ−5−ヒドロキシヘキシルジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.07−0.06(d,J=3.6Hz,6H),0.62−0.57(m,2H),1.58−1.36(m,6H),3.50−3.46(dd,J=6.8,6.8Hz,1H),3.66−3.63(dd,J=3.2,3.2Hz,1H),3.87−3.78(m,2H)
【0264】
次に、得られた6−クロロ−5−ヒドロキシヘキシルジメチルシランを用いて以下の反応を進行させた。具体的に、NaH(251mg,10.5mmol)を加えた反応容器に、溶媒であるTHF(26.2mL)を窒素雰囲気下にて加えた。次に、上記作製した6−クロロ−5−ヒドロキシヘキシルジメチルシラン(1.93g,9.96mmol)を加えて80℃まで昇温し、4.5時間攪拌して反応を進行させた。反応終了後、飽和NH
4Cl水溶液を加えてクエンチし、水層をエーテルで抽出した。残った有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過および濃縮することによって粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、5,6−エポキシヘキシルジメチルシランを収率68%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0265】
【化33】
【0266】
得られた5,6−エポキシヘキシルジメチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.07−0.06(d,J=3.6Hz,6H),0.62−0.58(m,2H),1.60−1.37(m,6H),2.48−2.46(dd,J=2.8,2.4Hz,1H),2.76−2.74(t,4.0Hz,1H),2.93−2.89(m,1H),3.87−3.82(m,1H)
【0267】
(製造例23:(3−ジメチルシリルプロピル)トリフルオロアセトアミドの合成)
(3−アミノプロピル)ジメチルシラン(1170mg,10mmol)およびトリエチルアミン(2.8mL,20mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)に、窒素雰囲気下および0℃で、無水トリフルオロ酢酸(1.69mL,12mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)を滴下した。次に、全体を室温まで昇温し、15時間撹拌した。次に、反応混合物にイオン交換水を加えて分液し、水層を塩化メチレンで抽出した。次に、残った有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過して得られた溶液を減圧下で濃縮することで、(3−ジメチルシリルプロピル)トリフルオロアセトアミド(2130mg,10mmol)を定量的に得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0268】
【化34】
【0269】
得られた(3−ジメチルシリルプロピル)トリフルオロアセトアミドは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):6.37(br,1H),3.85−3.90(m,1H),3.34−3.39(q,J=7.2Hz,2H),1.59−1.67(m,2H),0.58−0.63(m,2H),0.09−0.10(d,J=4.0Hz,6H)
【0270】
(製造例24:フタロイルポリメチルヒドロシロキサン(PMHS−Pht)の合成)
塩化白金酸六水和物(0.7mg,1μmol)に2−プロパノール(50μL)を加えた後、さらにアリルフタルイミド(3748mg,20mmol)およびトルエン(5mL)を加えた。このようにして作製した混合液を60℃に加熱して、当該混合液にポリメチルヒドロシロキサン(2450mg,40mmol)を滴下し、窒素雰囲気下にて12時間撹拌して反応を進行させた。次に、反応混合物を室温に冷却し、フロリジル(Florisil、登録商標)を用いてヘキサン/酢酸エチル混合溶液(混合体積比:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)により濾過した。次に、得られた濾液を濃縮し、フタロイル基を有するヒドロシラン誘導体PMHS−Pht(5580mg)を収率90%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0271】
【化35】
【0272】
得られたPMHS−Phtは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):7.55−7.90(m,80H),4.61(s,20H),3.50−3.70(m,40H),1.58−1.78(m,40H),0.45−0.62(m,40H),0.00−0.25(m,138H)
【0273】
以降の製造例25〜38では、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)のヒドリド基を変換することによって、種々の有機変性ポリメチルヒドロシランを合成した。具体的には、PMHSに存在する複数個のヒドロシリル基の一部を変性させ、変性したヒドロシリル基以外のヒドロシリル基を残存させる手法により、種々のポリマーヒドロシラン誘導体を合成した。合成は、ヒドロシリル化反応を用いる方法と、ヒドロシリル基をクロロシリル基に変換した後、求核剤を作用させる方法と、の2通りの方法で行った。製造例25〜33では前者の方法を、製造例34〜38では後者の方法を実施した。後者の方法では、遷移金属触媒を用いることなく誘導体の合成が可能である。白金触媒などの遷移金属触媒は、0.001mol%などのごく少量の触媒量で反応を進行させる。しかし、反応後、触媒の完全な除去が困難であることから、得られた誘導体の安定性を損ね、徐々に水素ガスが発生する可能性がある。変性基の種類によるが、後者の方法では、このような問題を回避でき、流通および保存に適した誘導体が得られる。
【0274】
(製造例25:3−クロロプロピル基を有する変性PMHSの合成)
乾燥させた試験管にPMHS(2.45g,1mmol)、トルエン1mL、塩化アリル(1.53g,20mmol)および0.01Mの塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液(0.1mL)を加えた。試験管内を窒素で置換した後、封管し、100℃で12時間攪拌して反応を進行させた。次に、反応混合物をフロリジルを用いて濾過した後、エバポレーターにより未反応の塩化アリルおよびトルエンを留去して、3−クロロプロピル基を有する変性PMHSを得た。この反応の反応式を以下に示す。右辺におけるXは、水素原子、塩素原子または3−クロロプロピル基であり、その存在比は20:5:15である。
【0275】
【化36】
【0276】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.65−4.79(br,20H),3.43−3.63(br,30H),1.76−1.91(br,30H),1.58−1.71(br,15H),0.92−1.01(br,30H),0.03−0.25(m,123H)
【0277】
(製造例26:3−アミノプロピル基を有する変性PMHSの合成)
乾燥させた試験管にPMHS(2.45g,1mmol)、トルエン1mL、アリルアミン(1.53g,20mmol)および0.01Mの塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液(0.1mL)を加えた。試験管内を窒素で置換した後、封管し、100℃で12時間攪拌して反応を進行させた。次に、反応混合物をフロリジルを用いて濾過した後、エバポレーターにより未反応のアリルアミンおよびトルエンを留去して、3−アミノプロピル基を有する変性PMHSを得た。この反応の反応式を以下に示す。右辺におけるXは、水素原子または3−アミノプロピル基であり、その存在比は20:20である。
【0278】
【化37】
【0279】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.61−4.72(br,20H),2.62−2.73(br,40H),1.34−1.59(br,40H),1.20−1.38(br,40H),0.78−0.99(br,40H),0.03−0.25(m,138H)
【0280】
(製造例27:3−アセトキシプロピル基を有する変性PMHSの合成)
乾燥させた試験管にPMHS(2.45g,1mmol)、トルエン1mL、アリルアセテート(1.53g,20mmol)および0.01Mの塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液(0.1mL)を加えた。試験管内を窒素で置換した後、封管し、100℃で12時間攪拌して反応を進行させた。次に、反応混合物をフロリジルを用いて濾過した後、エバポレーターにより未反応の塩化アリルおよびトルエンを留去して、3−アセトキシプロピル基を有する変性PMHSを得た。この反応の反応式を以下に示す。右辺におけるXは、水素原子または3−アセトキシプロピル基であり、その存在比は20:20である。
【0281】
【化38】
【0282】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.65−4.79(br,20H),3.97−4.06(br,40H),1.99−2.11(br,60H),1.57−1.77(br,40H),1.31−1.46(br,40H),0.03−0.25(m,138H)
【0283】
(製造例28:クロロシリル部位をイソプロポキシ化した変性PMHSの合成)
乾燥した20mLシュレンクチューブに、製造例25で作製した3−クロロプロピル基を有する変性PMHS(3.77g,1mmol)、トルエン1mLおよび2−プロパノール(7.7mL,10mmol)を加え、窒素雰囲気下で30分攪拌した。次に、エバポレーターで未反応の2−プロパノールおよびトルエンを留去して、イソプロポキシ基を有する変性PMHSを得た。この反応の反応式を以下に示す。この反応式の左辺におけるXは、水素原子、塩素原子または3−クロロプロピル基であり、その存在比は20:5:15である。右辺におけるXは、水素原子、イソプロポキシ基および3−クロロプロピル基であり、その存在比は20:5:15である。
【0284】
【化39】
【0285】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.65−4.79(br,20H),4.08−4.27(br,5H),3.45−3.61(br,30H),1.75−1.92(br,30H),1.13−1.23(br,30H),0.92−1.01(br,30H),0.03−0.25(m,138H)
【0286】
(製造例29:3−アジドプロピル基を有する変性PMHSの合成)
乾燥した20mLシュレンクチューブに、製造例28で作製した変性PMHS(465mg,0.1mmol)、DMF4mL、およびアジ化ナトリウム(195mg,3mmol)を加え、窒素雰囲気下、65℃で12時間攪拌した。次に、蒸留水を加えた後、酢酸エチルで抽出し、さらに硫酸ナトリウムにより脱水した後、濾過し、減圧下で乾燥させて、3−アジドプロピル基を有する変性PMHSを得た。この反応の反応式を以下に示す。左辺におけるXは、水素原子、イソプロポキシ基および3−クロロプロピル基であり、その存在比は20:5:15である。右辺におけるXは、水素原子、イソプロポキシ基および3−アジドプロピル基であり、その存在比は20:5:15である。
【0287】
【化40】
【0288】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.62−4.73(br,20H),4.09−4.23(br,5H),3.18−3.28(br,30H),1.54−1.73(br,30H),1.13−1.21(br,30H),0.90−0.98(br,30H),0.03−0.25(m,138H)
【0289】
(製造例30:3−ブロモプロピル基を有する変性PMHSの合成)
乾燥させた試験管にPMHS(390mg,1mmol)、トルエン1mL、臭化アリル(121mg,2mmol)、[IrCl(cod)]
2(0.27mg,0.0004mol),シクロオクタジエン(COD:0.86mg,0.008mol)を加えた。次に、試験管内を窒素で置換した後、封管し、60℃で12時間攪拌を行った。次に、フロリジルで濾過した後、エバポレータで未反応の臭化アリルおよびトルエンを留去して、3−ブロモプロピル基を有する変性PMHSを得た。この反応の反応式を以下に示す。この反応式の左辺および右辺におけるRは、臭素原子である。
【0290】
【化41】
【0291】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.65−4.72(br,2H),3.35−3.44(br,4H),1.85−1.99(br,4H),0.60−0.76(br,4H),0.03−0.25(br,30H)
【0292】
(製造例31:炭化水素基(アルキル基であるC
12H
25基)を有する変性PMHSの合成)
塩化白金酸六水和物(0.7mg,1μmol)に2−プロパノール(50μL)を加え、ドデセン(3367mg,20mmol)およびトルエン(5mL)を加えた。この混合液を100℃に加熱し、ポリメチルヒドロシロキサン(2450mg,40mmol)を滴下し、窒素雰囲気下で12時間撹拌した。次に、反応混合物を室温に冷却し、フロリジルを用いてヘキサンで濾過した。次に、濾液を濃縮して、ドデシル基(C
12H
25基)を有するヒドロシラン誘導体(PMHS−C
121:1);(5350mg)を収率92%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0293】
【化42】
【0294】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.70(s,20H),1.20−1.30(m,400H),0.86−0.90(t,J=7.2Hz,60H),0.45−0.58(br,40H),0.02−0.20(m,138H)
【0295】
(製造例32:アルキル基(C
18H
37基)を有する変性PMHSの合成)
塩化白金酸六水和物(0.7mg,1μmol)に2−プロパノール(50μL)を加え、オクタデセン(5050mg,20mmol)およびトルエン(5mL)を加えた。この混合液を100℃に加熱し、ポリメチルヒドロシロキサン(2450mg,40mmol)を滴下し、窒素雰囲気下で12時間撹拌した。次に、反応混合物を室温に冷却し、フロリジルを用いてヘキサンで濾過した。次に、濾液を濃縮して、オクタデシル基(C
18H
37基)を有するヒドロシラン誘導体(PMHS−C
181:1);(7125mg)を収率95%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0296】
【化43】
【0297】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.70(s,20H),1.20−1.38(m,640H),0.86−0.90(t,J=7.2Hz,60H),0.45−0.58(br,40H),0.02−0.20(m,138H)
【0298】
(製造例33:パーフルオロヘキシルエチル基を有する変性PMHSの合成)
(パーフルオロヘキシル)エチレン(3460mg,10mmol)およびポリメチルヒドロシロキサン(1225mg,0.5mmol)をトルエン(3mL)と混合し、これを40℃に加熱した後、Karstedt触媒(0.5mg,0.5μmol)を加えて窒素雰囲気下で12時間撹拌した。次に、反応混合物を室温に冷却し、フロリジルを用いてヘキサンで濾過した。次に、濾液を濃縮して、パーフルオロヘキシルエチル基を有するヒドロシラン誘導体PMHS−Rf(3758mg)を収率88%で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0299】
【化44】
【0300】
得られた変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.70(s,20H),1.95−2.80(m,15H),1.52−1.60(m,5H),1.15−1.22(m,7H),0.75−0.90(m,13H),0.05−0.30(m,138H)
【0301】
(製造例34:ポリアリルメチルヒドロシロキサンの合成)
トリクロロイソシアヌル酸(159mg,0.68mmol)の塩化メチレン(8mL)溶液に、窒素雰囲気かつ0℃下にて、末端トリメチルシリル保護されたポリメチルヒドロシロキサンMn=〜390(400mg,1.02mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。次に、得られた白色懸濁液を窒素下でセライト濾過し、減圧下で濃縮することでポリクロロメチルヒドロシロキサンを得た。得られたポリクロロメチルヒドロシロキサンに対して、アリルマグネシウムブロミド0.86M(Et
2O溶液、2.8mL,2.4mmol)を0℃で滴下し、室温で2時間撹拌した。その後、全体をジエチルエーテルで希釈した後、濃度10重量%の塩酸を加えて分液操作を行った。分液操作により得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、ポリアリルメチルヒドロシロキサン(472mg)を得た。
【0302】
この反応では、ポリメチルヒドロシロキサンとトリクロロイソシアヌル酸とを反応させてポリメチルヒドロシロキサンのヒドロシラン基を塩素化させた後、求核剤であるアリルグリニャール試薬と反応させて、ポリアリルメチルヒドロシロキサンを得ている。このとき、ポリメチルヒドロシロキサンとトリクロロイソシアヌル酸との混合比によって、塩素化を受けるヒドロシラン基の数を制御することが可能である。また、様々な求核剤と反応させることによって、官能基の組成が異なる多種のPMHS複合材料を合成できる。
【0303】
得られたポリアリルメチルヒドロシロキサンに対するIRの評価結果を
図53に、
1H−NMRの評価結果を
図54に示す。
【0304】
(製造例35)
製造例35では、製造例34で作製したポリアリルメチルヒドロシロキサンから、ポリエポキシメチルヒドロシロキサンへの変換を行った。
【0305】
製造例34で作製したポリアリルメチルヒドロシロキサン(250mg,0.0856mmol)と、メタクロロ過安息香酸(mCPBA;133mg,0.770mmol)とを窒素雰囲気下にてCHCl
3(10mL)に溶解し、5℃で2日間攪拌した。反応終了後、ジメチルスルフィドを加えることにより、残留したmCPBAをクエンチした。その後、飽和NaHCO
3水溶液で洗浄し、水層をCHCl
3で抽出した。次に、飽和NH
4Cl水溶液で中和し、有機層をMgSO
4で乾燥させた。最後に、濾過および濃縮することで、ポリエポキシメチルヒドロシロキサンを得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0306】
【化45】
【0307】
得られたポリエポキシメチルヒドロシロキサンは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。ケミカルシフト3.04ppm、2.79ppmおよび2.47ppmは、エポキシのピークに対応する。また、
1H−NMRの評価結果を
図55に示す。
δ(ppm):0.29−0.07(m),0.92−0.84(m),2.47(br),2.79(br),3.04(br),4.72(br)
【0308】
(製造例36)
製造例36では、PMHSとエピクロロヒドリンとから、ポリ(クロロイソプロポキシ)メチルヒドロシロキサンを合成した。
【0309】
PMHS(200mg,0.0816mmol)とエピクロロヒドリン(151mg,1.63mmol)とを反応容器に加え、CH
2Cl
2(8mL)に溶解させた後、触媒量のB(C
6F
5)
3(5.00mg,0.00977mmol)を加えて室温で20分攪拌した。反応終了後、Et
3Nを加えてB(C
6F
5)
3をクエンチし、濃縮することによってポリ(クロロイソプロポキシ)メチルヒドロシロキサンを得た。この反応の反応式を以下に示す。右辺のnおよびmは、1:1であった。
【0310】
【化46】
【0311】
得られたポリ(クロロイソプロポキシ)メチルヒドロシロキサンは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.22−0.13(m,138H),1.30−1.28(d,J=8.0Hz,60H),3.50−3.37(m,40H),4.24−4.17(m,20H),4.73(s,20H)
【0312】
(製造例37)
製造例36では、PMHSと3官能エポキシドとから、ポリ(エポキシ)メチルヒドロシロキサンを合成した。
【0313】
PMHS(50mg,0.0204mmol)およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(84.5mg,0.280mmol)を窒素雰囲気下にて反応容器に加え、シクロヘキサン(15mL)に溶解させた。次に、全体を70℃まで昇温させ、触媒量のB(C
6F
5)
3(5.00mg,0.00977mmol)とジフェニルエーテルとを加えた。その後、70℃で15時間攪拌した。反応終了後、トリエチルアミンを加えてB(C
6F
5)
3をクエンチし、濃縮することによってポリ(エポキシ)メチルヒドロシロキサンを得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0314】
【化47】
【0315】
得られたポリ(エポキシ)メチルヒドロシロキサンに対するIRの評価結果を
図56に示す。波数1135cm
−1付近にSi−O−C結合に対応するブロードなピークが確認されたことから、上記反応式の反応が進行したと考えられる。
【0316】
(製造例38)
製造例38では、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシランとPMHSとの縮合反応により、パーフルオロ変性PMHSを合成した。
【0317】
乾燥したシュレンクチューブに、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン(0.66mmol,241.35mg)およびPMHS(0.197mmol,500mg)を窒素雰囲気下にて収容し、溶媒として脱水ヘキサン6mLを加えて攪拌した。次に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(0.078mmol,40mg)をすばやく加えて30分間攪拌した。攪拌開始から30分後、トリエチルアミンを数滴加えて触媒を失活させた。その後、セライト(登録商標)を用いてヘキサンで反応溶液を濾過し、濾液をエバポエータにて濃縮した後、真空乾燥して、パーフルオロアルキル基を有するヒドロシラン誘導体を得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0318】
【化48】
【0319】
得られたパーフルオロ変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。また、
1H−NMRの評価結果を
図57に示す。
δ(ppm):0.28−0.07(br,138H),0.95−0.81(br,9H),2.22−2.04(br,8H),4.75−4.65(br,24H)
【0320】
[実施例10:ミクロフィブリル化したセルロースの表面の修飾(疎水化)]
実施例10では、ミクロフィブリル化したセルロースの表面を疎水化した。これにより、例えば、セルロースナノフィブリルの有機溶媒への分散度、溶解度を向上させることができ、セルロースナノフィブリル(CNF)複合材料の創製がより容易となる。CNF複合材料は、強度が高く、かつ軽量化が容易であることなどから、次世代材料としての使用が強く期待できる。具体的な用途は、例えば、自動車のボディ、パーソナルコンピューターなどの電気製品の筐体である。
【0321】
セルロースナノフィブリルに対して、以下の3通りの方法で前処理を実施した。
【0322】
・方法1:ミクロフィブリル化セルロース(またはセルロースナノフィブリルもしくはセルロースナノファイバー)として市販されているセリッシュ(ダイセルファインケム製)100gをガラスフィルターに詰めた後、ここにアセトン50mLを5回、塩化メチレン50mLを3回、次いでシクロヘキサン50mLを2回、順次常圧下で通過させることにより、シクロヘキサンに溶媒置換されたミクロフィブリル化セルロースを得た。
【0323】
・方法2:セリッシュ100gを内容積200mLのナスフラスコに収容し、当該フラスコにディーンスターク装置およびジムロート冷却器を設置した。次に、当該フラスコにトルエン100mLを加え、95℃に昇温して12時間攪拌することで、共沸により脱水させたミクロフィブリル化セルロースを得た。
【0324】
・方法3:セリッシュ100gを減圧下50℃で8時間乾燥させ、水分を除去した。次に、得られた凝集セルロースをミルで砕いて微細化させた。
【0325】
(実施例10−1:PMHSによる表面修飾)
方法1で作製したミクロフィブリル化セルロースの表面をPMHSにより修飾した。具体的に、シクロヘキサンを含むミクロフィブリル化セルロース(セルロースナノファイバー)2gにシクロヘキサン5mLを加え、さらにPMHS1gおよびジフェニルエーテル30mgを加えた。次に、反応混合物を50℃に昇温し、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン10mgを加え、10分間激しく撹拌した。その後、室温に冷却し、ガラスフィルターで濾別した後、ヘキサンで洗浄して、表面がPMHSにより修飾されたミクロフィブリル化セルロース(PMHS−CNF)を得た。得られたPMHS−CNFをクロロホルムに分散させると、未修飾のものに比べてその分散度が大きく向上した。この修飾の反応式を以下に示す。
【0326】
【化49】
【0327】
これとは別に、方法1で作製したミクロフィブリル化セルロースの代わりに、方法2で作製したミクロフィブリル化セルロースを用いてPMHSによる同様の表面修飾を行ったところ、同様の結果が得られた。
【0328】
(実施例10−2:PMHS−C
12による表面修飾)
方法3で作製したミクロフィブリル化セルロースの表面を、製造例31で作製したアルキル基(C
12H
25基)を有する変性PMHS(PMHS−C
12)により修飾した。具体的に、方法3で作製したミクロフィブリル化セルロース(セルロースナノファイバー)1gに、トルエン3mL、製造例31で作製したPMHS−C
121gおよびジフェニルエーテル30mgを加えた。次に、この混合物を60℃に加熱した後、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン10mgを加えて10分間激しく撹拌した。その後、室温に冷却し、遠心分離にて溶液を除去した後、ヘキサンで洗浄および遠心分離を3回繰り返すことで未反応のPMHS−C
12および触媒を除去した。これにより、表面がPMHS−C
12により修飾されたミクロフィブリル化セルロース(PMHS C
12−CNF)を得た。この修飾の反応式を以下に示す。
【0329】
【化50】
【0330】
次に、このように作製した修飾ミクロフィブリル化セルロースにクロロホルムを加えた後、遠心分離した。そして、遠心分離により得たクロロホルム溶液を濃縮した後、CDCl
3に溶解させ、
1H−NMR測定により当該溶液に含まれる物質を同定した。その評価結果を
図58に示す。
図58に示すように、化学シフト3.5〜3.9ppm近傍に、セルロースに由来する新たな複数のピーク(セルロースの酸素原子が結合している炭素原子、すなわちグルコース骨格の炭素原子に結合している水素原子に由来するピーク)が観察され、すなわち、表面修飾セルロースナノファイバーのクロロホルムへの溶解が確認された。
【0331】
また、方法3で作製したミクロフィブリル化セルロースの代わりに、以下の方法で作製したミクロフィブリル化セルロースを用いた場合にも同様に、表面がPMHS−C
12により疎水化されたシリコーン修飾セルロースナノファイバーが得られた。当該方法は、石原ら(Journal of American Chemical Society, 2009, vol. 131, pp. 251-262)により報告された、Potassium 2-Iodo-5-methylbenzene sulfonateおよびoxoneを用いたアルコールの酸化法に従い、純パルプP50(サンヨー化成製)をアセトニトリル中で反応させる方法である。この方法は非水系で実施できることから、例えば、非水系のまま、パルプからのセルロースナノファイバーの作製および作製した当該ナノファイバーの表面修飾を実施できるなど、産業上の意義が大きい。
【0332】
(実施例10−3:PMHS−C
18による表面修飾)
方法3で作製したミクロフィブリル化セルロースの表面を、製造例32で作製したアルキル基(C
18H
37基)を有する変性PMHS(PMHS−C
18)により修飾した。具体的に、PMHS−C
12の代わりにPMHS−C
18を用いた以外は実施例10−2と同様にして、PMHS−C
18によるミクロフィブリル化セルロースの表面修飾を実施し、表面がPMHS−C
18により修飾されたミクロフィブリル化セルロース(PMHS C
18−CNF)を得た。この修飾の反応式を以下に示す。
【0333】
【化51】
【0334】
次に、このように作製した修飾ミクロフィブリル化セルロースにクロロホルムを加えた後、遠心分離した。そして、遠心分離により得たクロロホルム溶液を濃縮した後、CDCl
3に溶解させ、
1H−NMR測定により当該溶液に含まれる物質を同定した。その評価結果を
図59に示す。
図59に示すように、化学シフト3.5〜3.9ppm近傍に、セルロースに由来する新たな複数のピークが観察され、すなわち、表面修飾セルロースナノファイバーのクロロホルムへの溶解が確認された。
【0335】
また、方法3で作製したミクロフィブリル化セルロースの代わりに、上記石原らが報告したアルコールの酸化法に従い、純パルプP50をアセトニトリル中で反応させて作製したミクロフィブリル化セルロースを用いた場合にも同様に、表面がPMHS−C
18により疎水化されたシリコーン修飾セルロースナノファイバーが得られた。
【0336】
(実施例10−4:PMHSによるパルプの繰り返し修飾)
パルプの表面をPMHSにより修飾した後、パルプを粉砕して細粒化し、細粒化したパルプに対してさらにPMHSによる修飾を2回繰り返して表面修飾パルプを得た。PMHSによる各々の修飾は、ミクロフィブリル化セルロースの代わりにパルプまたは細粒化したパルプを用いた以外は実施例10−1と同様に行った。得られた表面修飾パルプをクロロホルムに分散させると、未修飾のパルプに比べてその分散度が大きく向上した。すなわち、このようにして、有機溶媒に可溶であるセルロースが得られることが確認された。
【0337】
[実施例11:パーフルオロヘキシルエチル基を有する変性PMHSによるガラスの修飾]
実施例11では、パーフルオロヘキシルエチル基を有する変性PMHS(製造例33で作製した変性PMHSと同じ)によるガラス表面の修飾を行った。具体的に、(パーフルオロヘキシル)エチレン300mgの塩化メチレン溶液に、コロナ処理によって表面を活性化させた、主面の面積が4cm
2のガラス板を入れ、さらにジフェニルエーテル10mgおよびトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン10mgを順次加えた後、室温で10分間、超音波振動下で反応させた。このようにして得た表面修飾ガラスをヘキサンで十分に洗浄した後、当該主面における水の接触角を測定すると108°であった。
【0338】
[実施例12:窒素含有ヒドロシランのセルロース表面への修飾]
(実施例12−1)
セルロースパウダー400mesh(和光純薬製)200mgに、シクロヘキサン2mLおよび(3−ジメチルシリルプロピル)トリフルオロアセチルアミド1gならびにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン10mgを順次加えた。次に、混合物を、室温および超音波振動下で10分間反応させた。次に、反応混合物を濾過し、ヘキサンで洗浄した後、室温で乾燥させて、アミド修飾セルロースパウダーを得た。この反応の間、水素の発生が確認されるとともに、得られたセルロースの表面に疎水性が付与されたことが確認された。この反応の反応式を以下に示す。右辺の「N」は、−NH(C=O)CF
3を示す。
【0339】
【化52】
【0340】
(実施例12−2)
(3−ジメチルシリルプロピル)トリフルオロアセチルアミド1gの代わりに(3−アジドプロピル)ジメチルシラン0.7gを用いた以外は、実施例12−1と同様にして、アジド修飾セルロースパウダーを得た。この反応の反応式を以下に示す。右辺の「N」は、−N
3を示す。
【0341】
【化53】
【0342】
(実施例12−3)
実施例12−1で使用したセルロースパウダー200mgにトルエン2mL、製造例24で作製したPMHS−Pht1g、およびジフェニルエーテル30mgを加え50℃に加熱した。次に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン10mgを加え、10分間激しく撹拌した。次に、反応混合物を濾過し、クロロホルムで洗浄した後、室温で乾燥させて、フタロイル修飾セルロースパウダーを得た。この反応の間、激しい水素発生が確認されるとともに、得られたセルロースの表面に疎水性が付与されたことが確認された。この反応の反応式を以下に示す。右辺の「N」は、フタロイル基を示す。
【0343】
【化54】
【0344】
[実施例13:酸化物表面の修飾]
(実施例13−1:酸化ジルコニウム)
最初に、前処理として、酸化ジルコニウム粉末(和光純薬工業製)をナスフラスコに入れ、真空下で加熱して乾燥させた。次に、乾燥したナスフラスコ内に、上記前処理を行った酸化ジルコニウム200mg、シクロヘキサン4mL、ポリメチルヒドロシロキサン250mgおよび数滴のジフェニルエーテルを加えた。次に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン5mgを加え、5分間撹拌した。攪拌終了後、内容物をガラスフィルターにて濾過し、濾別した固体を真空乾燥して、表面修飾酸化ジルコニウム粉末を得た。
【0345】
得られた粉末に対するIRの測定結果を
図60に示す。
【0346】
得られた酸化ジルコニウム粉末を不織布上に薄く配置し、その上に水滴を垂らしたところ、
図61に示すような液滴となり、表面修飾により酸化ジルコニウム粉末に撥水性が付与されていることが確認された。目視で見た接触角は112°であったが、粉末上の液滴の接触角を測定するために液滴を過度に大きくする必要があったことから、実際の接触角よりも小さな値になっていると考えられる。実施例13−2〜13−4で評価した粉末上の接触角についても同様である。
【0347】
(実施例13−2:酸化インジウム)
最初に、前処理として、酸化インジウム粉末(和光純薬工業製)をナスフラスコに入れ、真空下で加熱して乾燥させた。次に、乾燥したナスフラスコ内に、上記前処理を行った酸化インジウム200mg、シクロヘキサン4mL、ポリメチルヒドロシロキサン250mgおよび数滴のジフェニルエーテルを加えた。次に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン5mgを加え、5分間撹拌した。攪拌終了後、内容物をガラスフィルターにて濾過し、濾別した固体を真空乾燥して、表面修飾酸化インジウム粉末を得た。
【0348】
得られた酸化インジウム粉末を不織布上に薄く配置し、その上に水滴を垂らしたところ、
図62に示すような液滴となり、表面修飾により酸化インジウム粉末に撥水性が付与されていることが確認された。目視で見た接触角は118°であった。
【0349】
(実施例13−3:酸化セリウム)
最初に、前処理として、酸化セリウム粉末(Aldrich製)をナスフラスコに入れ、真空下で加熱して乾燥させた。次に、乾燥したナスフラスコ内に、上記前処理を行った酸化セリウム200mg、シクロヘキサン4mL、ポリメチルヒドロシロキサン250mgおよび数滴のジフェニルエーテルを加えた。次に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン5mgを加え、5分間撹拌した。攪拌終了後、内容物をガラスフィルターにて濾過し、濾別した固体を真空乾燥して、表面修飾酸化セリウム粉末を得た。
【0350】
得られた酸化セリウム粉末を不織布上に薄く配置し、その上に水滴を垂らしたところ、
図63に示すような液滴となり、表面修飾により酸化セリウム粉末に撥水性が付与されていることが確認された。目視で見た接触角は126°であった。
【0351】
(実施例13−4:酸化チタン)
最初に、前処理として、酸化チタン粉末(和光純薬工業製)をナスフラスコに入れ、真空下で加熱して乾燥させた。次に、乾燥したナスフラスコ内に、上記前処理を行った酸化チタン200mg、シクロヘキサン4mL、ポリメチルヒドロシロキサン250mgおよび数滴のジフェニルエーテルを加えた。次に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン5mgを加え、5分間撹拌した。攪拌終了後、内容物をガラスフィルターにて濾過し、濾別した固体を真空乾燥して、表面修飾酸化チタン粉末を得た。
【0352】
得られた酸化チタン粉末を不織布上に薄く配置し、その上に水滴を垂らしたところ、
図64に示すような液滴となり、表面修飾により酸化チタン粉末に撥水性が付与されていることが確認された。目視で見た接触角は118°であった。
【0353】
(実施例13−5:タルク)
粒状タルク1gにシクロヘキサン4mLを加え、さらにポリメチルヒドロシロキサン600mgおよびトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン10mgを順次加えた。これを室温で5分間撹拌した後、ガラスフィルターで濾過してヘキサンで十分に洗浄した。このようにして得た表面修飾タルクは撥水性を有しており、例えば、水に一週間浮かべても吸湿して沈降しないことを確認した。
【0354】
[実施例14:木粉およびパルプへのチオ化合物の担持と、担持体を用いた金属イオンの除去への応用]
(実施例14−1)
実施例14−1では、PMHSと3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールとの反応によるチオ化合物変性PMHSの合成を行った。具体的に、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール15.0eq(5.58g,30.0mmol)を内容積300mLの二口ナスフラスコに収容し、窒素雰囲気下にて、150mLのシクロヘキサンに溶解させたPMHS(4.9mg,2.0mmol)溶液を加えた後、1.5mol%トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン15mg(0.03mmol)を添加して水素発生が起こらなくなるまで6時間攪拌した。このようにして、チオ化合物変性PMHS(3,6−ジチア−1,8−オクタンジオキシポリメチルヒドロシロキサン)を得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0355】
【化55】
【0356】
得られたチオ化合物変性PMHSは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):4.61−4.87(br,27H),3.79−4.10(br,26H),2.65−2.89(br,52H),0.06−0.32(m,138H)
【0357】
(実施例14−2)
実施例14−2では、実施例14−1で作製したチオ化合物変性PMHSを用いて木粉の表面を修飾し、当該表面における金属イオンの吸着を確認した。具体的には次のとおりである。実施例14−1で形成した攪拌後の反応溶液に木粉を投入し、さらに12時間攪拌した。次に、木粉をジエチルエーテルで洗浄した後、乾燥させた。次に、乾燥後の木粉20gをエリュート管に充填して、そこに濃度4.0mmol/LのCuSO
4水溶液100mLを通し、木粉を通過した後の濾液の吸光度をUV検出器により評価して、CuSO
4の木粉への吸着量を求めた。結果、91%に相当する0.36mmolの銅イオンが木粉に吸着除去されたことが確認された。
【0358】
[ヒドロシラン化合物の作製その3]
(製造例39)
窒素雰囲気下、1,4−ジブロモベンゼン(5000mg,21.2mmol)をシクロペンチルメチルエーテル(CPME;25mL)に溶解させ、これを−5℃まで冷却した後に、
nBuLi(13.5mL,21.2mmol)および
iPrMgCl(8.15mL,10.6mmol)を加え、2時間攪拌した。次に、クロロジメチルシラン(2.47mL,22.3mmol)を加えて室温で2時間攪拌し、反応を進行させた。反応終了後、飽和NH
4Cl水溶液を加えてクエンチし、水層をジエチルエーテルで抽出した。次に、得られた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させた。その後、ろ過および濃縮により粗生成物を得た。最後に、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、以下の反応式の右辺の化合物を得た(4235mg,収率93%)。
【0359】
【化56】
【0360】
得られた当該化合物は、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.33(d,J=4.0Hz,6H),4.42−4.36(m,1H),7.40(d,J=8.4Hz,2H),7.50(d,J=8.0Hz,2H)
【0361】
次に、窒素雰囲気下、Mg(669mg,27.9mmol)をTHF(2mL)に浸し、少量のジブロモエタンを加えてMgを活性化させた。次に、上記得られた化合物(4000mg,18.6mmol)およびTHF(13mL)を室温で滴下し、2時間攪拌して、以下の反応式の右辺の化合物である4−ジメチルシリルフェニルマグネシウムブロミドを得た(0.9M)。この化合物は、新規ヒドロシラン化合物である。
【0362】
【化57】
【0363】
次に、窒素雰囲気下、反応容器にDMF(1.23mL,15.9mmol)を加え、0℃に冷却した後、得られた4−ジメチルシリルフェニルマグネシウムブロミド(18.0mL,16.7mmol)をグリニャール試薬として滴下し、室温で2時間攪拌して反応を進行させた。反応終了後、飽和NH
4Cl水溶液を加えてクエンチし、ジエチルエーテルで水層を抽出した。得られた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させた。その後、ろ過および濃縮して、粗生成物を得た。次に、得られた粗組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下の反応式の右辺の化合物を得た(2213mg,収率72%)。
【0364】
【化58】
【0365】
得られた当該化合物は、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.39(d,J=4.4Hz,6H),4.50−4.44(m,1H),7.72(d,J=7.6Hz,2H),7.85(d,J=8.4Hz,2H),10.0(s,1H)
【0366】
次に、窒素雰囲気下、得られた化合物(1000mg,6.09mmol)をCH
2Cl
2(14mL)に溶解させ、BF
3・Et
2O(172.7mg,1.22mmol)および1,2−エタンジチオール(630mg,6.70mmol)を加え、室温で6時間攪拌して反応を進行させた。反応終了後、水で洗浄し、水層をCH
2Cl
2で抽出した。得られた有機層はMgSO
4で乾燥させ、ろ過および濃縮して粗生成物を得た。最後に、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、以下の反応式の右辺の化合物である4−(1,3−ジチアン−2−イル)ジメチルシリルベンゼンを得た(1398mg,収率96%)。この化合物は、新規ヒドロシラン化合物である。
【0367】
【化59】
【0368】
得られた当該化合物は、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):0.34(d,J=3.6Hz,6H),3.56−3.33(m,4H),4.44−4.39(m,1H),5.64(s,1H),7.51(d,J=2.8Hz,4H)
【0369】
(製造例40)
(3−ブロモプロピル)ジメチルシラン(543mg,3mmol)およびトリエチルアミン(306mg,3mmol)の脱水アセトニトリル(2mL)溶液をシールドチューブに窒素雰囲気下で封入し、80
oCで20時間撹拌した。得られた混合物を減圧下で濃縮して残った白色固体をエーテルで洗浄し、さらに減圧下で乾燥させることにより、トリエチル−3−(ジメチルシリルプロピル)アンモニウムブロミド(735mg,2.6mmol)を87%の収率で得た。この化合物は、新規ヒドロシラン化合物である。
【0370】
この反応の反応式を以下に示す。
【0371】
【化60】
【0372】
得られた当該化合物は、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.87−3.92(m,1H),3.50−3.56(q,J=6.8Hz,6H),3.30−3.35(m,2H),1.69−1.77(m,2H),1.39−1.43(t,J=7.2Hz,9H),0.64−0.69(m,2H),0.13−0.14(d,J=3.6Hz,6H)
【0373】
(製造例41)
窒素雰囲気下、トリフェニルホスフィン(2306mg,8.8mmol)のジエチルエーテル(9mL)溶液に、(3−アジドプロピル)ジメチルシラン(1144mg,8.0mmol)を加え、室温で12時間撹拌して反応を進行させた。反応終了後、エーテルを減圧下にて留去し、N−ジメチルヒドロシリルプロピルイミノトリフェニルホスホランを得た。この化合物は、新規ヒドロシラン化合物である。この反応の反応式を以下に示す。
【0374】
【化61】
【0375】
次に、得られたN−ジメチルヒドロシリルプロピルイミノトリフェニルホスホランにH
2O(0.87mL,48mmol)を加え、さらに室温で24時間撹拌して反応を進行させた。次に、得られた反応混合物をNa
2SO
4で乾燥し、セライト濾過に次いで減圧下で濃縮した。このようにして得た粗生成物を蒸留精製することにより、(3−アミノプロピル)ジメチルシラン(702mg,6.0mmol)を収率75%で得た。この方法では、製造例8の方法に比べて(3−アミノプロピル)ジメチルシランの収率を向上できる。
【0376】
この反応の出発物質からの反応式を、以下に示す。
【0377】
【化62】
【0378】
得られた(3−アミノプロピル)ジメチルシランは、
1H−NMR測定および
13C−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
1H−NMR δ(ppm):3.83−3.89(m,1H),2.67−2.70(t,J=6.8Hz,2H),1.44−1.52(m,2H),1.38(bs,2H),0.56−0.61(m,2H),0.07−0.08(d,J=3.6Hz,6H);
13C−NMR δ(ppm):−4.37,11.28,28.84,45.37
【0379】
(製造例42)
アジ化ナトリウム(4.68g,60mol)のDMF(60mL)溶液に(3−クロロプロピル)メチルシラン(6.10g,50mmol)を加え、60
oCで12時間撹拌した。次に、撹拌混合物を室温まで冷却した後、蒸留水を加え、ペンタンで分液操作を行った。次に、得られたペンタン層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、さらに減圧下で濃縮して、(3−アジドプロピル)メチルシラン(6.0g,47mmol)を93%の収率で得た。この反応の反応式を以下に示す。
【0380】
【化63】
【0381】
得られた(3−アジドプロピル)メチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.71−3.76(quin.,J=4.0Hz,2H),3.26−3.29(t,J=6.8Hz,2H),1.65−1.72(m,2H),0.71−0.77(m,2H),0.15−0.17(t,J=4.4Hz,3H)
【0382】
次に、トリフェニルホスフィン(2885mg,11mmol)のジエチルエーテル(50mL)溶液を0
oCに冷却し、得られた(3−アジドプロピル)メチルシラン(1290mg,10mol)をゆっくり滴下した。このようにして得た反応混合物を室温で4時間撹拌した後、エーテルを減圧下にて留去し、N−メチルジヒドロシリルプロピルイミノトリフェニルホスホランを得た。この化合物は、新規ヒドロシラン化合物である。この反応の反応式を以下に示す。
【0383】
【化64】
【0384】
次に、得られたN−メチルジヒドロシリルプロピルイミノトリフェニルホスホランにH
2O(0.22mL,12mmol)を加え、4時間撹拌した。その後、硫酸ナトリウムを加えて未反応の水を除去した後、濾過し、得られた溶液を減圧下で蒸留することにより、(3−アミノプロピル)メチルシラン(484mg,4.7mmol)を47%の収率で得た。この反応の、(3−アジドプロピル)メチルシランからの反応式を、以下に示す。
【0385】
【化65】
【0386】
得られた(3−アミノプロピル)メチルシランは、
1H−NMR測定により同定した。同定されたケミカルシフトは以下のとおりである。
δ(ppm):3.67−3.72(quin.,J=4.0Hz,2H),2.66−2.70(t,J=6.8Hz,2H),1.48−1.55(m,4H),0.64−0.70(m,2H),0.13−0.15(t,J=4.4Hz,3H)