(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924661
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ランダムオービタル器具によるロボット式表面前処理
(51)【国際特許分類】
B24B 27/00 20060101AFI20160516BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
B24B27/00 A
B05C9/10
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-254607(P2011-254607)
(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公開番号】特開2012-121133(P2012-121133A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】12/962,594
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】レイノルド アール. パナゴ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ シー. ヴァナヴェリー
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−098754(JP,A)
【文献】
特開平10−099956(JP,A)
【文献】
米国特許第01368752(US,A)
【文献】
特開平03−281189(JP,A)
【文献】
特開2001−148361(JP,A)
【文献】
特開平04−319500(JP,A)
【文献】
米国特許第04263755(US,A)
【文献】
特開平09−253990(JP,A)
【文献】
特開2005−334990(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0072297(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第2645405(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/00
B05C 9/10
B24D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の表面前処理を実施する装置であって、
バッキングパッドとモータを備え、該モータにより任意の軌道運動で該バッキングパッドを移動させる表面前処理器具と、
前記器具に連結された第1のボールジョイントと、
前記第1のボールジョイントに連結された第2のボールジョイントと、
前記器具を航空機の表面に押し付けるために、前記第2のボールジョイントに連結されたロボットエンドエフェクタと
を備える装置。
【請求項2】
前記表面前処理器具がランダムオービタルサンダである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のボールジョイントと第2のボールジョイントとが直列に連結され、前記ランダムオービタルサンダが、前記直列に連結された両ボールジョイントによって前記ロボットエンドエフェクタに連結されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記器具に一定の圧力を掛けるために、前記エンドエフェクタが、前記第2のボールジョイントに連結された線形アクチュエータを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記エンドエフェクタおよび前記線形アクチュエータが、前記バッキングパッドの運動の方向には変形しない、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記線形アクチュエータが、空気式2重圧縮シリンダと、前記シリンダ内の圧力を調節する圧力レギュレータとを備え、それによって、一定の力が前記器具に掛かる、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
各ボールジョイントの回転が15度以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
プラットフォームと、前記プラットフォームの表面上にウェッジとをさらに備え、前記ウェッジが、前記表面前処理に用いられ、前記バッキングパッドに取り付けられた媒体を前記バッキングパッドから分離させるシャベルノーズ先端部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記先端部が、前記媒体の縁部を前記バッキングパッドから分離する前に前記バッキングパッド円盤から前記媒体の中央部分を分離するような寸法および形状を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記器具を前記ウェッジ先端部に向かって移動させるために、前記ウェッジに隣接して表面ローラをさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記媒体はサンドペーパ、不織研削パッドもしくはポリッシング媒体、または研磨媒体である、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
複数の媒体を積層する保持具と、前記複数の媒体を隔てる金属円盤とを備える、前記複数媒体を前記バッキングパッドに自動的に取り付ける手段をさらに具備し、前記バッキングパッドが、前記金属円盤の1つを磁気で結合させる磁石部分を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記手段が、金属円盤が前記バッキングパッドに取り付けられたか否かを判定するために配置された少なくとも1つの光学センサをさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
塗装用に航空機の表面を前処理するために請求項1に記載の装置を使用するステップと、前記前処理された表面を塗装するために別のロボットエンドエフェクタを使用するステップとを含む方法。
【請求項15】
前記表面前処理が、研磨、研削、ポリッシング及びスクラビングである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記表面の前処理が、研磨、研削、ポリッシング及びスクラビングである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
航空機に対して、表面前処理、ならびにプライマ、下塗料、および装飾塗料の塗布を自律的に実施することができるロボットシステムが望まれる。その種システムは、安定したプロセスを実現する。その種システムはまた、塵埃の吸い込みや人間工学的作業環境不良などの人間の健康への危害を取り除く。
【背景技術】
【0002】
表面前処理には、航空機表面の研磨を含む。ランダムオービタルサンダによる研磨が望ましい。ランダムオービタルサンダは、任意の軌道で高速に研磨することができる。
【0003】
しかし、ランダムオービタルサンダではチャタリングが起きることがある。チャタリングは、研磨媒体が、研磨する表面に正常に留まらないので、望ましくない。チャタリングはまた、研磨中に不整なパターンや除去を生じるので、望ましくない。それにより、チャタリングの結果として、表面仕上げが一様でなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オービタルサンダでのチャタリングを減少させ、または無くすことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の実施形態によれば、装置が、任意の軌道運動でバッキングパッドを移動させる表面前処理器具と、器具に連結された第1のボールジョイントと、第1のボールジョイントに連結された第2のボールジョイントと、器具を表面に押し付けるために、第2のボールジョイントに連結されたロボットエンドエフェクタとを備える。
【0006】
本明細書の別の実施形態によれば、装置が、ロボットエンドエフェクタと、直列に連結された第1および第2のボールジョイントと、直列に連結された両ボールジョイントによってロボットエンドエフェクタに連結されたランダムオービタルサンダとを備える。
【0007】
本明細書の別の実施形態によれば、方法が、研磨媒体をランダムオービタルサンダのバッキングパッドに取り付け、それから取り外すために、サンダに結合されたロボットエンドエフェクタを使用するステップを含む。研磨媒体を取り付けるステップが、各研磨円盤がそれに対応する金属円盤上に来るように、薄い金属円盤を挿入して複数の研磨円盤を積層するステップと、磁化されたバッキングパッドを有するサンダを積層上に移動し、それによって金属円盤をバッキングパッドに磁気で固締するために、ロボットエンドエフェクタを使用するステップとを含む。研磨円盤が、それに対応するプレートとバッキングパッドとの間に固締され、それによって、バッキングパッドに固着される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】航空機を塗装するために装置を使用する方法の図である。
【
図5】人手を介さずに研磨円盤をランダムオービタルサンダに取り付け、それから取り外すためのシステムの図である。
【
図7a】研磨円盤を取り外し中のランダムオービタルサンダの図である。
【
図7b】研磨円盤を取り外し中のランダムオービタルサンダの図である。
【
図7c】研磨円盤を取り外し中のランダムオービタルサンダの図である。
【
図9】すべて人手を介さずに、消耗した研磨円盤をランダムオービタルサンダから取り外し、新しい研磨円盤をサンダに取り付ける方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
表面100を前処理する器具110を示す
図1を参照する。表面100は、平坦な形状をもち得る。器具110は、バッキングパッド120を任意の軌道運動において駆動するモータ(図示せず)をハウジング140内に備える。表面前処理は、バッキングパッド120に取り付けられた媒体130によって実施される。媒体130の例には、それらに限定されないが、サンドペーパ、不織研削パッド、およびポリッシング媒体が含まれる。表面前処理には、それらに限定されないが、研磨、研削、ポリッシング、およびスクラビングが含まれる。
【0010】
作業中、力が、器具110に矢印Fの方向に加えられる。力によって、表面前処理器具110が表面100に押し付けられ、モータがバッキングパッド120を任意の軌道運動において駆動する。
【0011】
次に、成形面100に表面前処理を施す装置210を示す
図2を参照する。装置210は、表面前処理器具110と、器具110に連結された第1のボールジョイント220と、第1のボールジョイント220に連結された第2のボールジョイント230と、第2のボールジョイント230に連結されたロボットエンドエフェクタ240とを備える。
【0012】
ロボットエンドエフェクタ240は、線形アクチュエータ250を備える。作動に際し、線形アクチュエータ250は、第1のボールジョイント220および第2のボールジョイント230の直列連結に対して一定の力を加える。ボールジョイント220および230は、次いで、その力を表面前処理器具110に伝達し、それによって、表面前処理器具110が表面100に押し付けられる。
【0013】
ボールジョイント220、230を示す
図3をさらに参照する。各ボールジョイント220および230は、角度δまでの旋回を行うことができる球状接触面330によって結合された第1のロッド端部310および第2のロッド端部320を備える。一部の実施形態では、δ=35度である。ボールジョイント220とボールジョイント230とは、第1のボールジョイント220の外ねじ340を第2のボールジョイント230の内ねじ350に係合させることによって、直列に連結することができる。
【0014】
別の実施形態では、ボールジョイントの回転を15度以下に制限することによって、特定の所望の結果を達成することができる。
【0015】
第1のボールジョイント220の内ねじ350がエンドエフェクタ240に係合する。第2のボールジョイント230の外ねじ340が表面前処理器具110のハウジングと係合する。
【0016】
直列に連結されたボールジョイント220および230は意外な結果をもたらす。すなわち、それらボールジョイントは、作動に際し、器具110のチャタリングを防止する。2つのボールジョイント220および230は、負荷した下向きの力を器具110の上端かつ中心に掛けた状態で、水平方向の運動を許容する。チャタリングを防止することによって、器具110が表面100に対して垂直を保ち、エンドエフェクタ240が、一定の下向きの圧力を維持することができる。
【0017】
一部の実施形態では、線形アクチュエータ250が、第2のボールジョイント230に連結された空気式2重圧縮シリンダを備える。圧縮シリンダは、圧縮空気を利用して線形力を発生させる。圧縮シリンダは、パッドの運動方向には剛である。2重作動圧縮シリンダは、ストローク全体に亘って圧力が一定に保持されるので、有利である。それとは対照的に、単一作動シリンダでは、力は、内部スプリングの変位に基づいて変化する。
【0018】
圧縮空気の調節は、圧力変換器によって行うことができる。変換器は、入力圧力をDC電圧によって調節する。変換器は、危険な場所での使用に備えて掃気したチャンバ内に収容することもできる。
【0019】
一部の実施形態では、エンドエフェクタ240は、線形アクチュエータ250に装着された角度付き屈曲部基台をさらに備え得、ロボット屈曲部が屈曲部基台に取り付けられている。屈曲部は、空気式シリンダを任意の向き(たとえば、0、30、45、および90度)に配置することができる。
【0020】
次に、装置210を使用して航空機を塗装する方法を示す
図4を参照する。ブロック410で、航空機を塗装ハンガ内に駐機する。一部の実施形態では、塗装ハンガは、フットボール場の面積を有するclass 1 division 1(C1D1)の場所であり得る。C1D1の場所は、着火濃度のその種ガスまたは蒸気が存在し得る場所を意味する。
【0021】
ブロック420では、装置210を使用して航空機の表面を研磨する。研磨円盤130がそのバッキングパッド120に取り付けられている器具110を、チャタリングせずに作動させる。その結果、一様な表面仕上げが達成される。
【0022】
ブロック430では、第2のエンドエフェクタを使用して研磨済み表面を塗装する。塗装は、装置210が別の表面を研磨している間に、研磨済み表面に実施することができる。
【0023】
装置210は、スパークを避けるために、電気機器の代わりに空気式ツールを使用することができる。空気式装置は、C1D1の場所に適している。
【0024】
器具110の作動中、消耗した研磨円盤はバッキングパッド120から取り外され、新しい研磨円盤が再び取り付けられる。以下の段落では、ロボットエンドエフェクタを使用して、人手をまったく介さずに、研磨媒体をバッキングパッド120に取り付け、そこから取り外すシステムを説明する。
【0025】
次に、研磨円盤130を器具110のバッキングパッド120に取り付け、それから取り外すためのシステム510を示す
図5を参照する。着脱システム510は、プラットフォーム520(たとえばテーブル)と、プラットフォーム520の上面上のウェッジ530とを備える。ウェッジ530は、「シャベルノーズ」先端部540と呼ばれる鋭く細長い先端部540を有する。
【0026】
着脱システム510は、器具110をシャベルノーズリップ540に向かって移動させるためにローラテーブル550をさらに備える。移動方向を矢印Mによって示す。ローラテーブル550は、移動方向を横切って延在する複数のローラ560を備える。
【0027】
研磨円盤130を器具110から取り外すために、ロボットエンドエフェクタ240は、研磨円盤130がローラ560に載るように器具110をローラテーブル550上に置く。エンドエフェクタ240は、次いで、器具110をシャベルノーズ先端部540に向かって移動させる。研磨円盤130は、ローラ560上を低い摩擦(すなわち、研磨円盤130を固形面上で移動するより遥かに低い摩擦)で移動する。
【0028】
シャベルノーズ先端部540は、バッキングパッド120と研磨円盤130との境界に位置する。器具110が、シャベルノーズ先端部540に入り込むにつれて、シャベルノーズ先端部540が、研磨円盤130をバッキングパッド120から分離する(
図7aおよび7b参照)。エンドエフェクタ240は、研磨円盤130がバッキングパッド120から完全に分離されるまで(
図7C参照)、移動方向に器具110を移動させ続ける。取り外し中は、研磨円盤130を回転させない。
【0029】
さらに
図6を参照する。ウェッジ530の目的は、研磨円盤130をバッキングパッド120から徐々に取り外すことである。垂直中心線からの先端部540の最初の角度は、α=40°±5°であり得、先端部540の第2の角度はβ=20°±5°であり得る。先端部540の深さは約D=4インチである。そのような先端部540を使用することによって、研磨円盤130は、縁はバッキングパッド120に接触したままで、中心から分離を開始する。縁部が接触したままでなければ、研磨円盤130は、下方に折れ曲がり、取り外せない。ウェッジ530の先端部540がパッド120の終端部に到達した後は、ウェッジ530の残りの部分が外側の領域を次第に分離し始める。円盤130が完全に分離された後は、円盤130は、ウェッジ530の下に配置された箱の中に落下する。
【0030】
研磨円盤130は、マジックテープ(登録商標)材によってバッキングパッド120に取り付けることができる。マジックテープ材は、付加的機能を果たす。すなわち、バッキングパッド120上のマジックテープ材は、サンダ110がウェッジ530の上面上を移動するとき、摩擦を減少させる。したがって、研磨円盤130が分離した後、マジックテープ材は、ウェッジ530に沿って低摩擦で移動する。
【0031】
研磨円盤130を分離した後、ウェッジ530の端部に配置されたチューブ(図示せず)を、バッキングパッド120に圧縮空気を吹き付けるために使用することができる。圧縮空気は、バッキングパッド120から塵埃を吹き飛ばす。
【0032】
ウェッジ530をボールジョイント220および230と組み合わせて使用することによって、相乗効果をもたらす。すなわち、それによって、バッキングパッド120が、新しい研磨円盤120を取り付けることができる既知の位置に配置される。
【0033】
次に、バッキングパッド120を既知の位置に動かす様子を示す
図7a、7b、および7cを参照する。器具110は、バッキングパッド120を楕円軌道で動かし、同時にバッキングパッド120を回転させるモータを備える。オービタルサンダ110が停止したとき、バッキングパッドは不定位置に動く。
【0034】
図7aに示されるように、サンダ110は、ローラテーブル550上に置かれ、ウェッジ530に向かって移動させられる。移動は矢印Mの方向である。線形アクチュエータ250が、矢印Fによって示される下向きの力を掛ける。ボールジョイント220および230は一直線に揃えられて、器具110に下向きの力を掛けることになる。
【0035】
図7bに示すように、ウェッジ530が、バッキングパッド120および研磨円盤130と接触する。ウェッジ先端部540が、接触し、バッキングパッド120から研磨円盤130を分離し始めるにつれて、摩擦力が、ボールジョイント220と230とを蝶番運動させる。ボールジョイント220および230は、水平方向には固定されていないので、器具110のモータは適合することができる。
【0036】
図7cに示すように、研磨円盤130がバッキングパッド120から分離され、サンダ110がウェッジ530上を移動させられる。摩擦力が、モータを偏倚位置に付勢し続ける(モータの設計に基づく)。その結果、バッキングパッド120が既知の位置に動かされる。消耗した研磨円盤130を取り外し、バッキングパッド120を既知の位置に動かすことによって、新しい研磨円盤130を取り付けることができる。
【0037】
次に、薄い(約30ミル)金属円盤820を交互に挿入した研磨円盤の積層810を示す
図8を参照する。各研磨円盤130は、一方の面にグリット材830を、反対側の面にマジックテープ材840を有する。各研磨円盤130は、対応する金属円盤820の上に配置されている。すなわち、マジックテープ材840は上に向き、グリット材830は下に向いて、それに対応する金属円盤820に載っている。
【0038】
さらに
図9を参照する。ブロック910では、エンドエフェクタ240が、器具110を研磨円盤130と金属円盤820との積層810の上に移動させる。
【0039】
ブロック920では、器具110を研磨円盤130上に配置する。バッキングパッド120は、下に重なる金属円盤820を磁気で引き付ける磁化部分(たとえば外周部)を有する。この磁気吸引の結果として、下層の金属円盤820がバッキングパッド120に磁気で固締され、それによって、研磨円盤130が、それらの間に固締されて、バッキングパッド120に固着される。
【0040】
ブロック930では、次いで、エンドエフェクタ240が、器具110を積層810から持ち上げる。この時点では、器具110は、研磨円盤130および金属円盤820の両方を担持しているはずである。
【0041】
ブロック940で、金属円盤820が持ち上げられたか否かの判定が行われる。たとえば、器具110を光学センサ上に配置することができる。金属円盤820が持ち上げられている場合は、センサが金属円盤820からの反射を検出する。金属円盤820が持ち上げられていない場合は、反射は検出されず(バッキングパッド120は光を反射しないと仮定して)、操作は中止または停止される(ブロック950)。その場合、研磨円盤130をバッキングパッド120に取り付けるために人手の介入が必要になり得る。
【0042】
金属円盤820を取り外すために、エンドエフェクタ240が、バッキングパッド120の磁化部分と少なくとも同じ強さの取外し磁石570の上に器具110を配置する(ブロック960)。取外し磁石570は、金属円盤をバッキングパッド120から引き離す。取外し磁石570は、プラットフォーム520と一体にすることもできる(
図5に示す通り)。
【0043】
一実施形態では、バッキングパッド120の縁部を取外し磁石570上に配置し、次いで引き離す。これにより、取外し磁石570に、金属円盤820を縁部から引張り、それによって金属円盤820をバッキングパッド120から引き離すだけの優位な力が与えられる。この時点で、金属円盤820は、取外し磁石570とバッキングパッド120の磁化部分との間に一時的に浮かされる。取外し磁石570は、金属円盤820をバッキングパッドの縁部から確保するほどの十分な強さの強度はなく、したがって、金属円盤820は、それ自体の重量によって近くの保留容器中に落下する。
【0044】
金属円盤820がバッキングパッド120から取り外されたか否かを感知する(ブロック970)ために、光学センサを設けることができる。たとえば、光学センサを、保留容器の真上に配置することができる。金属円盤820が分離され、容器に向かって落下すれば、光学センサが反射光を検出する。この反射光が、金属円盤820がバッキングパッド120から分離されたことの合図になる。次いで、オービタルサンダ110は研磨に使用される(ブロック980)。
【0045】
反射光が検出されない場合、金属円盤120がバッキングパッド120から取り外されなかったことが想定される。したがって、操作が中止または停止され得る(ブロック950)。
【0046】
着脱システムは、まったく人手を介さずに、研磨媒体を取り外し、取り付けることができる。円盤の着脱を自動化することによって、塵埃の吸入などの人間の健康への危害が排除される。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
表面前処理を実施する装置であって、
任意の軌道運動でバッキングパッドを移動させる表面前処理器具と、
前記器具に連結された第1のボールジョイントと、
前記第1のボールジョイントに連結された第2のボールジョイントと、
前記器具を表面に押し付けるために、前記第2のボールジョイントに連結されたロボットエンドエフェクタと
を備える装置。
(態様2)
前記表面前処理器具がランダムオービタルサンダである、態様1に記載の装置。
(態様3)
前記第1のボールジョイントと第2のボールジョイントとが直列に連結され、前記ランダムオービタルサンダが、前記直列に連結された両ボールジョイントによって前記ロボットエンドエフェクタに連結されている、態様2に記載の装置。
(態様4)
前記器具に一定の圧力を掛けるために、前記エンドエフェクタが、前記第2のボールジョイントに連結された線形アクチュエータを備える、態様1に記載の装置。
(態様5)
前記エンドエフェクタおよび前記線形アクチュエータが、パッドの運動の方向には剛である、態様4に記載の装置。
(態様6)
前記線形アクチュエータが、空気式2重圧縮シリンダと、前記シリンダ内の圧力を調節する圧力レギュレータとを備え、それによって、一定の力が前記器具に掛かる、態様4に記載の装置。
(態様7)
各ボールジョイントの回転が15度以下である、態様1に記載の装置。
(態様8)
プラットフォームと、前記プラットフォームの表面上にウェッジとをさらに備え、前記ウェッジが、前記バッキングパッドから媒体を分離させるシャベルノーズ先端部を有する、態様1に記載の装置。
(態様9)
前記先端部が、前記媒体の縁部を前記バッキングパッドから分離する前に前記バッキングパッド円盤から前記媒体の中央部分を分離するような寸法および形状を有する、態様8に記載の装置。
(態様10)
前記器具を前記ウェッジ先端部に向かって移動させるために、前記ウェッジに隣接して表面ローラをさらに備える、態様8に記載の装置。
(態様11)
前記器具が前記ウェッジによって停止させられたとき、前記ボールジョイントが、前記パッドを既知の位置に動かす、態様8に記載の装置。
(態様12)
媒体を積層する保持具と、前記媒体を隔てる金属円盤とを備える、媒体を前記バッキングパッドに自動的に取り付ける手段をさらに具備し、前記バッキングパッドが、前記金属円盤の1つを磁気で結合させる磁石部分を有する、態様8に記載の装置。
(態様13)
前記手段が、金属円盤が前記バッキングパッドに取り付けられたか否かを判定するために配置された少なくとも1つの光学センサをさらに備える、態様12に記載の装置。
(態様14)
塗装用に航空機の表面を前処理するために態様1に記載のロボットエンドエフェクタを使用するステップと、前記前処理された表面を塗装するために別のロボットエンドエフェクタを使用するステップとを含む方法。
(態様15)
研磨媒体をランダムオービタルサンダのバッキングパッドに取り付け、それから取り外すために、前記サンダに結合されたロボットエンドエフェクタを使用するステップを含む方法であって、研磨媒体を取り付けるステップが、
各研磨円盤がそれに対応する金属円盤上に来るように、薄い金属円盤を挿入して複数の研磨円盤を積層するステップと、
磁化されたバッキングパッドを有する前記サンダを前記積層上に移動し、それによって前記金属円盤を前記バッキングパッドに磁気で固定するために、前記ロボットエンドエフェクタを使用するステップであって、それにより、研磨円盤を、それに対応するプレートと前記バッキングパッドとの間に固締して、前記バッキングパッドに固着するステップと
を含む方法。
(態様16)
前記研磨媒体を取り外すステップが、前記バッキングパッドがウェッジのシャベルノーズ部分に当接するまで前記サンダをローラプラットフォームに沿って移動させるために前記ロボットエンドエフェクタを使用するステップを含み、その後、研磨円盤を前記バッキングパッドから取り外す、態様15に記載の方法。
【符号の説明】
【0047】
100 表面
110 表面前処理器具
120 バッキングパッド
130 媒体、研磨円盤
140 ハウジング
210 装置
220 第1のボールジョイント
230 第2のボールジョイント
240 ロボットエンドエフェクタ
250 線形アクチュエータ
310 第1のロッド端部
320 第2のロッド端部
330 球状接触面
340 外ねじ
350 内ねじ
510 着脱システム
520 プラットフォーム
530 ウェッジ
540 シャベルノーズ先端部
550 ローラテーブル
560 ローラ
570 取外し磁石
810 研磨円盤の積層
820 金属円盤
830 グリット材
840 マジックテープ材