【実施例】
【0053】
次に、本発明に係る実施例について、具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2(bpym)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをH
+、L
Cをbpym、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。二つのH
+と二つの3-
tBupzとが結合して、二つの3-
tBupzHを形成している。なお、3-
tBupzは、3−t−ブチルピラゾール(3-
tBupzH)のN原子から
プロトンが解離して得られる1価のアニオンを表す。
【0055】
まず、始めに、中間原料である単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[PtCl
2(bpym)](41mg、0.10mmol)および3-
tBupzH(40mg、0.32mmol)を水5mL中、80℃で4時間加熱撹拌を行った。このとき、オレンジ色の懸濁液が黄色溶液に変化した。この黄色溶液に、NH
4PF
6(73mg、0.45mmol)を加えると、沈殿が析出した。この黄色沈殿を濾過し、水で洗浄した後、減圧乾燥した。収量は54mg(収率63%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0056】
【化9】
【0057】
得られた金属錯体は、アセトニトリル、アセトン、THF、DMF、DMSOに易溶であり、ジクロロメタン、メタノール、エタノールに可溶であり、クロロホルム、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテルに難溶であった。
【0058】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3638(w), 3364(w), 3096(w), 2968(m), 1588(s), 1558(m), 1490(m), 1412(s), 1372(w), 1303(w), 1265(w), 1211(w), 1133(m), 1070(w), 1035(w), 846(s), 745(m), 678(w), 558(s)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表1の通りである。ここで、表1中の各項目は、左から、δがピークの化学シフト(ppm)を示し、Shapeがピークの形状を示し、Jが結合定数(Hz)を示し、Int.がピーク強度(相対値)を示し、Assign.がピークの帰属を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=746.6 [M-PF
6]
+【0061】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2(bpym)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(86mg、0.10mmol)のメタノール溶液10mLにKOH(12mg、0.21mmol)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応溶液は、黄色からオレンジ色に変化した。この溶液を、減圧下で濃縮乾固した後に、アセトニトリルを加えて、未反応のKOHをろ別した。オレンジ色のろ液を乾固した後、ジクロロメタンに溶かし、この溶液にヘキサンを加えた。析出したオレンジ色の固体を集め、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は62mg(収率85%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0062】
【化10】
【0063】
この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、オレンジ色に発光した。また、この金属錯体は、アセトニトリル、ジクロロメタン、アセトン、メタノール、エタノール、ベンゼン、DMF、DMSOに易溶であり、クロロホルム、トルエンに可溶であり、水、ヘキサンに難溶であった。
【0064】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3082(s), 2957(s), 2864(m), 1636(w), 1584(s), 1550(m), 1493(s), 1474(m), 1459(m), 1415(s), 1362(m), 1336(m), 1236(s), 1208(m), 1121(w), 1049(s), 991(w), 836(s), 760(m), 746(s), 726(w), 673(m), 559(s), 491(w)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表2の通りである。表2中の各項目は、表1と同様である。
【0065】
【表2】
【0066】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1345.3 [M-PF
6]
+【0067】
次に、金属錯体[Pt
2(bpym)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体の固体状態の発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルを
図2に示す。
【0068】
固体状態の[Pt
2(bpym)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2は、UV光(355nm)で励起すると、638nmに発光極大をもつブロードなスペクトルを示した。また、298K、220K、150Kおよび80Kで発光スペクトルを測定したが、スペクトルの形状に著しい変化は見られなかった。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は0.01未満であり、測定できなかった。
【0069】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行ない、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行なうことにより、τ
1、A
1、τ
2およびA
2の値を得た。これらの結果を、下記表3に記載する。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0070】
【表3】
【0071】
(実施例2)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Ag
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをAg
I、L
Cをbpym、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0072】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例1で説明した方法と同様にして合成した。
【0073】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、[Pt
2Ag
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(69mg、0.078mmol)のメタノール溶液10mLに、AgBF
4(17mg、0.089mmol)およびトリエチルアミン(49μL、0.31mmol)を加えて、遮光しながら室温で3時間撹拌した。このとき、黄色溶液が黄色懸濁液に変化した。黄色固体を集めて、水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は50mg(収率76%)であった。この反応は、下記の化学反応式で表すことができる。
【0074】
【化11】
【0075】
さらに、アセトニトリル/エタノールより再結晶を行い、単結晶を得た。得られた金属錯体は黄色固体であった。この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、緑色に発光した。また、この金属錯体は、アセトニトリル、DMF、DMSOに易溶であり、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メタノール、THF、トルエンに可溶であり、ジエチルエーテル、エタノール、ヘキサン、ベンゼン、水に難溶であった。
【0076】
さらに、IRスペクトル、
1H NMRスペクトルおよび元素分析により、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3108(w), 2954(m), 2922(m), 2860(w), 1584(s), 1552(m), 1495(m), 1458(w), 1409(s), 1360(w), 1333(m), 1247(m), 1207(w), 1178(w), 1143(w), 1081(m), 1033(w), 845(s), 810(m), 778(w), 761(m), 748(s), 697(w), 675(w), 652(w), 558(s), 502(w)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表4の通りである。表4中の各項目は、表1と同様である。
【0077】
【表4】
【0078】
生成物の元素分析を行った結果を、計算値と比較して、表5に示す。ここで、表5中の各項目は、左から、calcdが計算値を示し、foundが分析値を示し、Δがこれらの差(分析値−計算値)を示す。
【0079】
【表5】
【0080】
得られた金属錯体の構造について説明する。得られた金属錯体について、単結晶X線構造解析により分子構造を決定した。その結晶学的データを表6に示す。ここで、表6中の各項目は、上から、組成、式量、測定温度、測定波長(MoKα線=0.71070Å)、晶系、空間群、格子定数(a,b,c,β)、格子体積、Z値、密度、線吸収係数、独立な反射の数、最終R値、R
1値、GOF値である。
【0081】
【表6】
【0082】
また、この金属錯体のカチオンの構造を、
図3のORTEP図に示す。
図3に示すように、このカチオン中には二つのPt原子と二つのAg原子が含まれている。Ag・・・Ag間の中点に、結晶学的な対称中心が存在し、結晶中の半分の原子が独立である。各Pt原子にはビピリミジン(bpym)が二座でキレート配位し、残りの配位座には二つの3−t−ブチルピラゾラト配位子(3-
tBupz)がt−ブチル基に遠い方のN原子で配位している。各Pt原子は{(bpym)Pt(3-t-Bupz)
2}ユニットを形成しており、各ユニットの二つの3-t-Bupz配位子が異なるAg原子に配位することで、二つのPt原子と二つのAg原子を含む12員環を形成している。[Pt
2Ag
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2において、Pt・・・Ag距離は3.4825(4)Åおよび3.6142(4)Åであり、Ag・・・Ag距離は3.0358(8)Åである。また、Pt−N距離は1.976(4)Å〜2.032(4)Åの範囲にあり、Ag−N距離は2.105(4)Åおよび2.112(4)Åである。
【0083】
次に、金属錯体[Pt
2Ag
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体のアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルおよび固体状態の発光スペクトルを測定した。このアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図4に示し、固体状態の発光スペクトルを
図5に示す。
【0084】
[Pt
2Ag
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2のアセトニトリル溶液は、250nmより短波長側に、ビピリミジン配位子のπ−π
*遷移に基づく吸収帯と、350〜500nm付近に幅広い吸収帯を示す。また、固体状態であるこの金属錯体を、298Kで355nmのUV光で励起すると、516nmに発光極大を持つスペクトルが得られた。[Pt
2Ag
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2では、発光スペクトルの振動構造は明瞭ではない。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.181であった。
【0085】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行い、単一指数関数で解析を行うことにより、τ=1.10μsの値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0086】
(実施例3)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Au
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをAu
I、L
Cをbpym、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0087】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例1で説明した方法と同様にして合成した。
【0088】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、[Pt
2Au
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(153mg、0.17mmol)のメタノール溶液10mLに、AuCl(SC
4H
8)(56mg、0.17mmol)およびトリエチルアミン(54μL、0.34mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。このとき、黄色溶液が黄色懸濁液に変化した。黄色固体を集めて、水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
収量は114mg(収率71%)であった。この反応は、下記の化学反応式で表すことができる。
【0089】
【化12】
【0090】
さらに、アセトニトリル/エタノールより再結晶を行い、単結晶を得た。得られた金属錯体は黄色固体であった。この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、深緑色に発光した。また、この金属錯体は、アセトニトリル、アセトン、DMF、DMSOに易溶であり、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、ジエチルエーテル、エタノール、THF、トルエン、ベンゼン、ヘキサンに難溶であった。
【0091】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3120(w), 2953(m), 2866(w), 1585(s), 1552(m), 1486(m), 1458(w), 1409(s), 1359(w), 1333(m), 1251(m), 1209(w), 1182(w), 1149(w), 1101(w), 1034(w), 1017(w), 962(w), 844(s), 810(m), 782(w), 766(m), 748(m), 717(w), 698(w), 676(w), 654(w), 558(s), 515(w
), 761(m), 748(s), 697(w), 675(w), 652(w), 558(s), 502(w)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表7の通りである。表7中の各項目は、表1と同様である。
【0092】
【表7】
【0093】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1737.3 [M-PF
6]
+【0094】
得られた金属錯体の構造について説明する。得られた金属錯体について、単結晶X線構造解析により分子構造を決定した。その結晶学的データを表8に示す。ここで、表8中の各項目は、表6と同じである。
【0095】
【表8】
【0096】
また、この金属錯体のカチオンの構造を、
図6のORTEP図に示す。
図6に示すように、このカチオン中には二つのPt原子と二つのAu原子が含まれている。Au・・・Au間の中点に、結晶学的な対称中心が存在し、結晶中の半分の原子が独立である。各Pt原子にはビピリミジン(bpym)が二座でキレート配位し、残りの配位座には二つの3−t−ブチルピラゾラト配位子(3-
tBupz)がt−ブチル基に遠い方のN原子で配位している。各Pt原子は{(bpym)Pt(3-t-Bupz)
2}ユニットを形成しており、各ユニットの二つの3-t-Bupz配位子が異なるAu原子に配位することで、二つのPt原子と二つのAu原子を含む12員環を形成している。[Pt
2Au
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2において、Pt・・・Au距離は3.5148(3)Åおよび3.5941(3)Åであり、Au・・・Au距離は3.2377(4)Åである。また、Pt−N距離は1.992(4)Å〜2.019(4)Åの範囲にあり、Au−N距離は2.012(4)Åおよび2.019(4)Åである。
【0097】
次に、金属錯体[Pt
2Au
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体のアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルおよび固体状態の発光スペクトルを測定した。このアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図7に示し、固体状態の発光スペクトルを
図8に示す。
【0098】
[Pt
2Au
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2のアセトニトリル溶液は、250nmより短波長側のビピリミジン配位子のπ−π
*遷移に基づく吸収帯と、365nmに吸収極大を示す。また、固体状態であるこの金属錯体を、298Kで355nmのUV光で励起すると、494nmに発光極大を持つスペクトルが得られた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.074であった。
【0099】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行い、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行うことにより、τ
1=0.39μs、A
1=0.42、τ
2=1.32μs、A
2=0.58の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0100】
(実施例4)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Cu
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをCu
I、L
Cをbpym、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0101】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例1で説明した方法と同様にして合成した。
【0102】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、[Pt
2Cu
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(bpym)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(63mg、0.071mmol)のメタノール溶液10mLに、[Cu(CH
3CN)
4](BF
4)(23mg、0.072mmol)およびトリエチルアミン(44.5μL、0.28mmol)を撹拌しながら加え、アルゴン雰囲気下、室温で2時間撹拌した。黄色沈殿を集めて、水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は41mg(収率71%)であった。この反応は、下記の化学反応式で表すことができる。
【0103】
【化13】
【0104】
この金属錯体は、アセトニトリル、アセトン、ベンゼン、DMF、DMSOに易溶であり、クロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、ジエチルエーテル、THFに可溶であり、トルエン、ヘキサン、エタノール、水に難溶であった。
【0105】
さらに、IRスペクトルにより、生成物の同定を行った。IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3107(w), 2955(m), 2876(w), 1585(s), 1552(m), 1496(m), 1459(m), 1410(s), 1362(w), 1331(m), 1248(m), 1209(w), 1180(w), 1142(w), 1082(m), 1033(w), 1017(w), 845(s), 810(m), 777(m), 765(m), 748(s), 722(w), 697(w), 676(m), 652(w), 558(s), 504(w)
【0106】
次に、金属錯体[Pt
2Cu
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体の固体状態の発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルを
図9に示す。
【0107】
固体状態の[Pt
2Cu
2(bpym)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2は、298Kで355nmのUV光で励起すると、542nm付近に発光極大をもつブロードなスペクトルを示すが、測定温度の低下に伴い、徐々に発光スペクトルに振動構造が現れた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.008であった。
【0108】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行ない、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行なうことにより、τ
1、A
1、τ
2およびA
2の値を得た。これらの結果を、下記表9に記載する。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0109】
【表9】
【0110】
(実施例5)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2(bpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをH
+、L
Cをbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。二つのH
+と二つの3-
tBupzとが結合して、二つの3-
tBupzHを形成している。なお、bpyは2,2’−ビピリジンを表す。
【0111】
まず、始めに、中間原料である単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[PtCl
2(bpy)](42mg、0.10mmol)および3-
tBupzH(40mg、0.32mmol)を水5mL中、80℃で4時間加熱撹拌を行った。このとき、黄色懸濁液が黄色溶液に変化した。この黄色溶液に、NH
4PF
6(74mg、0.45mmol)を加えると、白黄色沈殿が析出した。この沈殿を濾過し、水で洗浄した後、減圧乾燥した。収量は35mg(収率39%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0112】
【化14】
【0113】
得られた金属錯体は、アセトニトリル、アセトン、ベンゼンに易溶であり、DMSOに可溶であり、ジエチルエーテル、エタノール、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、メタノール、水に難溶であった。
【0114】
さらに、IRスペクトルにより、生成物の同定を行った。IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3356 (m), 3057 (w), 2967 (m), 2839 (m), 2366 (m), 1612 (s), 1567 (s), 1454 (s), 1368 (s), 1297 (s), 1246 (s), 1213 (s), 1134 (s), 1075 (s), 996 (s), 848 (m), 558 (s)
【0115】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS : m/z=744.3 [M-PF
6]
+【0116】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2(bpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(41mg、0.05mmol)のメタノール溶液10mLにKOH(11.6mg、0.21mmol)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応溶液は、薄い黄色からオレンジ色に変化した。この溶液を、減圧下で濃縮乾固した後に、アセトニトリルを加えて、未反応のKOHをろ別した。オレンジ色のろ液を乾固した後、ジクロロメタンに溶かし、この溶液にヘキサンを加えた。析出したオレンジ色の固体を集め、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は14.1mg(収率20%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0117】
【化15】
【0118】
この金属錯体は、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、DMFに易溶であり、ベンゼン、ヘキサンに可溶であり、水に難溶であった。
【0119】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):2957 (s), 2361 (s), 1633 (m), 1451 (s), 1236 (m), 1047(m), 834 (s), 762(m), 559 (s), 279 (s)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表10の通りである。表10中の各項目は、表1と同様である。
【0120】
【表10】
【0121】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1341.6 [M-PF
6]
+【0122】
次に、金属錯体[Pt
2(bpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体のアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルおよび固体状態の発光スペクトルを測定した。このアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図10に示し、固体状態の発光スペクトルを
図11に示す。
【0123】
濃度が3.44×10
-5Mである[Pt
2(bpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2のアセトニトリル溶液は350nm〜500nm付近に幅広い吸収帯を示す。また、固体状態であるこの金属錯体を、298Kで355nmのUV光で励起すると、582nmに発光極大を示すブロードなスペクトルが得られた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.11であった。
【0124】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行い、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行うことにより、τ
1=0.10μs、A
1=0.36、τ
2=0.46μs、A
2=0.64の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0125】
(実施例6)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをAg
I、L
Cをbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0126】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例5で説明した方法と同様にして合成した。
【0127】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(70mg、0.08mmol)のメタノール溶液(10mL)に、AgBF
4(17mg、0.09mmol)およびトリエチルアミン(50μL、0.31mmol)を加えて、遮光しながら室温で3時間撹拌した。このとき、黄色溶液が黄緑色懸濁液に変化した。この黄緑色固体を集め、水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は53mg(収率75%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0128】
【化16】
【0129】
さらに、アセトニトリル/メタノールより再結晶を行ない、単結晶を得た。得られた金属錯体は黄色固体であった。この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、青緑色に発光した。また、この金属錯体は、エタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、アセトニトリル、アセトンに易溶であり、ジエチルエーテル、クロロホルム、DMSO、ベンゼンに可溶であり、メタノール、水に難溶であった。
【0130】
さらに、IRスペクトル、
1H NMRスペクトルおよび元素分析により、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3439 (w), 3125 (m), 2950 (m), 2360 (m), 1610 (s), 1482 (m), 1455 (s), 1361 (m), 1328 (s), 1177 (s), 1136 (s), 1075 (m), 844 (m), 772 (s), 558 (s), 503 (m), 421 (m)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表11の通りである。表11中の各項目は、表1と同様である。
【0131】
【表11】
【0132】
生成物の元素分析を行った結果を、計算値と比較して、表12に示す。ここで、表12中の各項目は、表5と同様である。
【0133】
【表12】
【0134】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1555.3 [M-PF
6]
+【0135】
得られた金属錯体の構造について説明する。得られた金属錯体について、単結晶X線構造解析により分子構造を決定した。その結晶学的データを表13に示す。ここで、表13中の各項目は、表6と同様である。
【0136】
【表13】
【0137】
また、この金属錯体のカチオンの構造を、
図12のORTEP図に示す。
図12に示すように、このカチオン中には二つのPt原子と二つのAg原子が含まれている。Ag・・・Ag間の中点に、結晶学的な対称中心が存在し、結晶中の半分の原子が独立である。各Pt原子には2,2’−ビピリジン(bpy)が二座でキレート配位し、残りの配位座には二つの3−t−ブチルピラゾラト配位子(3-
tBupz)がt−ブチル基に遠い方のN原子で配位している。各Pt原子は{(bpy)Pt(3-
tBupz)
2}ユニットを形成しており、各ユニットの二つの3-
tBupz配位子が異なるAg原子に配位することで二つのPt原子と二つのAg原子を含む12員環を形成している。[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2において、Pt・・・Pt距離は5.8256(7)Åであり、Pt・・・Ag距離は3.4562(5)および3.6502(4)Åであり、Ag・・・Ag距離は3.0545(5)Åである。また、Pt−N距離は、1.989(3)〜2.012(3)Åの範囲にあり、Ag−N距離は、2.090(3)Åおよび2.096(3)Åである。
【0138】
次に、金属錯体[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体のアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルおよび固体状態の発光スペクトルを測定した。このアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図13に示し、固体状態の発光スペクトルを
図14に示す。
【0139】
濃度が5.27×10
-5Mである[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2のアセトニトリル溶液は、300nm〜350nm付近に二つの吸収極大と350nm〜450nmに幅広い吸収帯を示す。希薄溶液の吸収スペクトルは、Beer則に従わないことにより、低濃度ではPt
2Ag
2錯体の解離平衡が生じるものと考えられる。固体状態であるこの金属錯体を、298Kで355nmのUV光で励起すると、494nmに発光極大をもつ軽微な振動構造を伴ったスペクトルが得られた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.51であった。
【0140】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を80Kで行い、これを単一指数関数で解析を行うことにより、τ=11.03μsの値を得た。固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線は、測定温度の上昇とともに変形した。298Kで測定したこの発光減衰曲線を、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行うことにより、τ
1=1.46μs、A
1=0.12、τ
2=7.87μs、A
2=0.88の値を得た。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0141】
(実施例7)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Au
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをAu
I、L
Cをbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0142】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例5で説明した方法と同様にして合成した。
【0143】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2Au2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(41mg、0.06mmol)のアセトニトリル溶液(10mL)に、AuCl(SC
4H
8)(19mg、0.06mmol)およびトリエチルアミン(18μL、0.11mmol)を加えて、室温で1時間撹拌した。このとき、白黄色の反応溶液が黄色溶液に変化した。この黄色溶液を濃縮し、析出した黄色固体を集め、水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は12mg(収率20%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0144】
【化17】
【0145】
さらに、アセトニトリル/メタノールより再結晶を行ない、単結晶を得た。得られた金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、黄色に発光した。また、この金属錯体は、ヘキサン、ジクロロメタン、エタノール、アセトニトリル、アセトンに易溶であり、ジエチルエーテル、クロロホルム、メタノール、ベンゼン、DMSOに可溶であり、水に難溶であった。
【0146】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3420 (w), 2956 (m), 2676 (m), 2606 (m), 2498 (s), 2360 (s), 1610 (s), 1475 (s), 1454 (s), 1397 (s), 1251 (m), 1210 (m), 1174 (m), 11036 (m), 843 (m), 771 (s), 723 (s), 558 (s), 279 (s)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表14の通りである。表14中の各項目は、表1と同様である。
【0147】
【表14】
【0148】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1536 [M-PF
6]
+【0149】
得られた金属錯体の構造について説明する。得られた金属錯体について、単結晶X線構造解析により分子構造を決定した。その結晶学的データを表15に示す。ここで、表15中の各項目は、表6と同様である。
【0150】
【表15】
【0151】
また、この金属錯体のカチオンの構造を、
図15のORTEP図に示す。なお、この金属錯体は、アセトニトリルを含んだ形で結晶化した。
図15に示すように、このカチオン中には二つのPt原子と二つのAu原子が含まれている。Au・・・Au間の中点に結晶学的な対称中心が存在し、結晶中の半分の原子が独立である。各Pt原子には2,2’−ビピリジン(bpy)が二座でキレート配位し、残りの配位座には二つの3−t−ブチルピラゾラト配位子(3-
tBupz)がt−ブチル基に遠い方のN原子で配位している。各Pt原子は{(bpy)Pt(3-
tBupz)
2}ユニットを形成しており、各ユニットの二つの3-
tBupz配位子が異なるAu原子に配位することで、二つのPt原子と二つのAu原子を含む12員環を形成している。[Pt
2Au
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2において、Pt・・・Pt距離は6.3288(11)Åであり、Pt・・・Au距離は3.4904(8)および3.6463(9)Åであり、Au・・・Au距離は3.3020(8)Åである。 また、Pt−N距離は、1.994(10)〜2.011(10)Åの範囲にあり、Au−N距離は、2.004(9)Åおよび2.025(8)Åである。
【0152】
次に、金属錯体[Pt
2Au
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体のアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルおよび固体状態の発光スペクトルを測定した。このアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図16に示し、固体状態の発光スペクトルを
図17に示す。
【0153】
濃度が4.79×10
-5Mである[Pt
2Au
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2のアセトニトリル溶液は、300nm〜350nm付近に二つの吸収極大と350nm〜450nmに幅広い吸収帯を示す。希薄溶液の吸収スペクトルはBeer則に従わないことから、低濃度ではPt
2Au
2錯体の解離平衡が生じるものと考えられる。固体状態であるこの金属錯体を、298Kで355nmのUV光で励起すると、569nmに発光極大をもつ軽微な振動構造を伴ったスペクトルが得られた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.029であった。
【0154】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行い、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行うことにより、τ
1=0.08μs、A
1=0.54、τ
2=0.48μs、A
2=0.46の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0155】
(実施例8)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Cu
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをCu
I、L
Cをbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0156】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例5で説明した方法と同様にして合成した。
【0157】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2Cu
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(32mg、0.036mmol)のアセトニトリル溶液(10mL)に、[Cu(CH
3CN)
4](BF
4)(11mg、0.035mmol)およびトリエチルアミン(23μL、0.14mmol)を加えて、室温で2時間撹拌した。反応後に黄色の反応溶液を濃縮し、濃縮で生じた黄色沈殿を回収し、これを水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は34mg(収率16%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0158】
【化18】
【0159】
得られた金属錯体は、ジクロロメタン、メタノール、DMSO、ベンゼンに易溶であり、クロロホルムに可溶であり、ジエチルエーテル、エタノール、水、ヘキサンに難溶であった。
【0160】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3125 (w), 2948 (m), 2360 (s), 2342 (m), 1610 (s), 1485 (s), 1455 (s), 1428 (m), 1395 (s), 1360 (m), 1324 (s), 1249 (s), 1179 (m), 1084 (s), 844 (m), 774 (s), 726 (s), 655 (w), 558 (s), 279 (s)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表16の通りである。表16中の各項目は、表1と同様である。
【0161】
【表16】
【0162】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1466 [M-PF
6]
+【0163】
次に、金属錯体[Pt
2Cu
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体のアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルおよび固体状態の発光スペクトルを測定した。このアセトニトリル溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図18に示し、固体状態の発光スペクトルを
図19に示す。
【0164】
5.54×10
-5Mの[Pt
2Cu
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2のアセトニトリル溶液は300nm〜350nm付近に二つの吸収極大と350nm〜450nmに幅広い吸収帯を示す。希薄溶液の吸収スペクトルはBeer則に従わないことから、低濃度ではPt
2Cu
2錯体の解離平衡が生じるものと考えられる。固体状態であるこの金属錯体を、298Kで355nmのUV光で励起すると575nmに発光極大をもつスペクトルが得られた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.025であった。
【0165】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行い、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行うことにより、τ
1=0.04μs、A
1=0.61、τ
2=0.14μs、A
2=0.39の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0166】
(実施例9)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](BF
4)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをAg
+、L
Cをbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがBF
4-である構成である。
【0167】
まず、始めに、中間原料である単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](BPh
4)
2を合成した。具体的には、[PtCl
2(bpy)](40mg、0.10mmol)および3-
tBupzH(40mg、0.32mmol)を水5mL中、80℃で4時間加熱撹拌を行った。このとき、橙色懸濁液が黄色溶液に変化した。この黄色溶液に、NaBPh
4(140mg、0.45mmol)を加えると、白黄色沈殿が析出した。この沈殿を濾過し、水で洗浄した後、減圧乾燥した。収量は90mg(収率90%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0168】
【化19】
【0169】
得られた金属錯体は、DMSO、メタノール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタンに易溶であり、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、THFに可溶であり、ジエチルエーテル、エタノール、水に不溶であった。
【0170】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3054 (m), 2965 (m), 2360 (w), 2342 (w), 1608 (w), 1578 (w), 1476 (s), 1453 (m), 1370 (s), 1264 (s), 1245 (s), 1249 (s), 1130 (m), 733 (s), 705 (s)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表17の通りである。表17中の各項目は、表1と同様である。
【0171】
【表17】
【0172】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](BPh
4)
2を用いて、金属錯体[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](BF
4)
2を合成した。具体的には、[Pt(bpy)(3-
tBupzH)
2](BPh
4)
2(60.0mg、0.05mmol)のメタノール溶液10mLに、AgBF
4(10.1mg、0.05mmol)およびEt
3N(33μL、0.2mmol)を加えて、遮光しながら、室温で3時間撹拌した。反応溶液は、黄色溶液から薄い黄色懸濁液に変化した。この懸濁液を、エバポレーターで濃縮した。析出した黄白色固体を、ろ別し、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は13.8mg(35%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0173】
【化20】
【0174】
この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、緑色に発光した。また、この金属錯体は、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、トルエン、DMSOに易溶であり、クロロホルム、塩化メチレン、THFに可溶であり、ヘキサン、ジエチルエーテル、水に難溶であった。
【0175】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3452 (w), 2957 (m), 2360 (m), 1610 (s), 1492 (m), 1473 (s), 1361 (m), 1328 (s), 1163(s), 1136 (s), 1075 (m), 844 (m), 772 (s), 558 (s), 503 (m), 421 (m)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表18の通りである。表18中の各項目は、表1と同様である。
【0176】
【表18】
【0177】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1497.3 [M-BF
4]
+【0178】
次に、金属錯体[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](BF
4)
2の発光特性について説明する。この金属錯体の固体状態の発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルを
図20に示す。
【0179】
固体状態の[Pt
2Ag
2(bpy)
2(3-
tBupz)
4](BF
4)
2を、298Kで355nmのUV光で励起すると、458nm、489nm、517nmに発光極大をもつ振動構造を伴った発光スペクトルが得られた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.55であった。
【0180】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行ない、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行なうことにより、τ
1=0.26μs、A
1=0
.35、τ
2=10.23μs、A
2=0.65の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0181】
(実施例10)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをH
+、L
Cを
5,5'-dmbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。二つのH
+と二つの3-
tBupzとが結合して、二つの3-
tBupzHを形成している。なお、5,5'-dmbpyは5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジンを表す。
【0182】
まず、始めに、中間原料である単核錯体[Pt(5,5'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[PtCl
2(5,5-dmbpy)](41mg、0.10mmol)のアセトニトリル溶液5mLに3-
tBupzH(41mg、0.32mmol)の水溶液5mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌を行った。このとき、黄色懸濁液が黄色溶液に変化した。この黄色溶液に、NH
4PF
6(73mg、0.45mmol)を加えると、白黄色沈殿が析出した。この沈殿をろ別し、水で洗浄した後、減圧乾燥した。収量は62mg(収率67%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0183】
【化21】
【0184】
得られた金属錯体は、ベンゼン、THF、DMF、DMSOに易溶であり、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタンに可溶であり、クロロホルム、水、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテルに不溶であった。
【0185】
さらに、IRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3427 (m), 3125 (m), 3021 (m), 2965 (s), 2913 (m), 2828 (s), 2359 (m), 1609 (m), 1569 (s), 1486 (s), 1393 (s), 1294 (s), 1133 (s), 1069 (s), 990 (s), 841 (s), 558 (s)
【0186】
さらにまた、ESI−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
ESI-MS:m/z=626 [M-PF
6]
+【0187】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(5,5'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(5,5'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(43mg、0.05mmol)のメタノール溶液10mLに、2当量のKOHを加えて、室温で3時間撹拌した。反応溶液は、白黄色から黄色に変化した。この溶液を濃縮乾固させ、得られた黄色固体をアセトニトリルに溶かし、未反応のKOHをろ別した。黄色のろ液を濃縮乾固させ、得られた固体をジクロロメタンに溶かし、この溶液にヘキサンを加えた。析出した黄色固体を集め、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は29.5mg(81%)であった。の反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0188】
【化22】
【0189】
この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、黄色に発光した。また、この金属錯体は、THF、アセトン、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、DMFに易溶であり、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、DMSOに可溶であり、トルエ
ン、水に不溶であった。
【0190】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3391 (w), 2958 (s), 2360 (m), 2139 (m), 1484 (s), 1387 (m), 1360 (w), 1237 (s), 1045(m), 840 (s), 754 (m), 503(w)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表19の通りである。表19中の各項目は、表1と同様である。
【0191】
【表19】
【0192】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1251.6 [M-PF
6]
+【0193】
次に、金属錯体[Pt
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体の固体状態の発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルを
図21に示す。
【0194】
固体状態の[Pt
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、298Kで355nmのUV光で励起すると、536nmに発光極大を示すブロードな発光スペクトルが得られた。固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.09であった。
【0195】
また、固体状態で発光減衰曲線の測定を行ない、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行なうことにより、τ
1=0.32μs、A
1=0.49、τ
2=0.75μs、A
2=0.51の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0196】
(実施例11)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Ag
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをAg
I、L
Cを5,5'-dmbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0197】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(5,5'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例10で説明した方法と同様にして合成した。
【0198】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(5,5'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、[Pt
2Ag
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(5,5'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(40.1mg、0.04mmol)のアセトニトリル溶液10mLに、AgBF
4(9.7mg、0.05mmol)およびトリエチルアミン(20μL、0.12mmol)を加え、遮光しながら室温で3時間撹拌した。このとき、黄色溶液が黄色懸濁液に変化した。固体をろ別し、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は43mg(61%)であった。この反応は、下記の化学反応式で表すことができる。
【0199】
【化23】
【0200】
この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、青緑色に発光した。また、この金属錯体は、アセトニトリル、アセトンに易溶であり、ジクロロメタン、ベンゼンに可溶であり、ヘキサン、ジエチルエーテル、トルエン、メタノール、エタノール、クロロホルム、水に不溶であった。
【0201】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3658 (w), 3436 (w), 2960 (s), 2360 (w), 1609 (s), 1485 (s), 1391 (s), 1329 (s), 1146(s), 1092 (s), 1018 (s), 839(s), 770(m), 558(s)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表20の通りである。表20中の各項目は、表1と同様である。
【0202】
【表20】
【0203】
次に、金属錯体[Pt
2Ag
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体の固体状態の発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルを
図22に示す。
【0204】
固体状態の[Pt
2Ag
2(5,5'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を、298Kで355nmのUV光で励起すると、475nm、510nm、541nmに発光極大を示す顕著な振動構造を持つ発光スペクトルが得られた。この金属錯体の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.22であった。
【0205】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行ない、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行なうことにより、τ
1=1.88μs、A
1=0.24、τ
2=6.45μs、A
2=0.76の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0206】
(実施例12)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをH
+、L
Cを4,4'-dmbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。二つのH
+と二つの3-
tBupzとが結合して、二つの3-
tBupzHを形成している。なお、4,4'-dmbpyは4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジンを表す。
【0207】
まず、始めに、中間原料である単核錯体[Pt(4,4'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[PtCl
2(4,4-dmbpy)](41mg、0.10mmol)のアセトニトリル溶液5mLに3-
tBupzH(40mg、0.33mmol)の水溶液5mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌を行った。このとき、黄色懸濁液が黄色溶液に変化した。この黄色溶液に、NH
4PF
6(73mg、0.45mmol)を加えると、白黄色沈殿が析出した。この沈殿をろ別し、水で洗浄した後、減圧乾燥した。収量は51mg(収率56%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0208】
【化24】
【0209】
得られた金属錯体は、THF、DMFに易溶であり、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、DMSOに可溶であり、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテルに不溶であった。
【0210】
さらに、IRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3132 (m), 3021 (m), 2966 (s), 2360 (s), 2337 (s), 1621 (s), 1489 (s), 1370 (s), 1132 (s), 991 (s), 848 (s), 558 (s)
【0211】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=626.3 [M-PF
6]
+【0212】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(4,4'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(4,4'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(37mg、0.04mmol)のメタノール溶液10mLに、2当量のKOHを加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液は、白黄色から黄色に変化した。この溶液を濃縮乾固させ、得られた黄色固体をアセトニトリルに溶かし、未反応のKOHをろ別した。黄色のろ液を濃縮乾固した後、得られた固体をジクロロメタンに溶かし、この溶液にヘキサンを加えた。析出した黄色固体を集め、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は12.8mg(42%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0213】
【化25】
【0214】
この金属錯体は、UV光(365nm)の照射下、黄色に発光した。また、この金属錯体は、アセトン、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、DMFに易溶であり、THF、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、DMSO、トルエンに可溶であり、水、ヘキサンに不溶であった。
【0215】
さらに、IRスペクトルおよび
1H NMRスペクトルにより、生成物の同定を行った。
IRスペクトルの同定結果は、次の通りである。
IR(KBr):3347 (w), 2958 (s), 2360 (m), 2342 (m), 1624 (s), 1491 (m), 1418 (w), 1236 (s), 833(s), 560 (s)
また、
1H NMRスペクトルの同定結果は、下記表21の通りである。表21中の各項目は、表1と同様である。
【0216】
【表21】
【0217】
さらにまた、FAB−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
FAB-MS:m/z=1251.6 [M-PF
6]
+【0218】
次に、金属錯体[Pt
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体の固体状態の発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルを
図23に示す。
【0219】
固体状態の[Pt
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
2(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、298Kで355nmのUV光で励起すると、557nmに発光極大を示すブロードなスペクトルが得られた。固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.13であった。
【0220】
また、固体状態であるこの金属錯体の発光減衰曲線の測定を行ない、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行なうことにより、τ
1=0.29μs、A
1=0.61、τ
2=1.13μs、A
2=0.39の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0221】
(実施例13)
本発明の金属錯体の一種である[Pt
2Ag
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。この金属錯体は、上記式(C1)において、M
IIをPt
II、M
IをAg
I、L
Cを4,4'-dmbpy、L
Bを3-
tBupzとし、カウンターアニオンがPF
6-である構成である。
【0222】
まず、中間原料として単核錯体[Pt(4,4'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を、実施例12で説明した方法と同様にして合成した。
【0223】
続いて、中間原料である単核錯体[Pt(4,4'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2を用いて、金属錯体[Pt
2Ag
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2を合成した。具体的には、[Pt(4,4'-dmbpy)(3-
tBupzH)
2](PF
6)
2(40.1mg、0.04mmol)のアセトニトリル溶液10mLにAgBF
4(9.7mg、0.05mmol)およびトリエチルアミン(20μL、0.12mmol)を加え、遮光しながら室温で3時間撹拌した。このとき、黄色溶液が黄色懸濁液に変化した。反応で析出した黄色固体をろ別し、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は9.6mg(23%)であった。また、ろ液を濃縮し、メタノールを加えたところ、黄色固体が析出した。メタノールによって析出させた黄色固体をろ別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。収量は18.2mg(43%)であった。この反応は、下記の化学反応式で示すことができる。
【0224】
【化26】
【0225】
反応で析出した固体は、UV光(365nm)の照射下、黄色に発光した。他方、メタノールによって析出させた固体は、UV光(365nm)の照射下、青色に発光した。これらの黄色に発光する固体および青色に発光する固体は、後述する
1H NMRスペクトルおよびESI−MSデータが一致した。また、黄色に発光する固体も青色に発光する固体も、再結晶を行うと、共に青色に発光する黄色結晶を与えた。これらのデータから、黄色に発光する固体中に含まれる金属錯体および青色に発光する固体中に含まれる金属錯体は、異性体ではなく、同一の金属錯体であり、これらの固体は、金属錯体のパッキングの違いによって発光色が異なっていると考えられる。
【0226】
黄色に発光する固体は、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、DMSOに易溶であり、メタノール、エタノール、ジエチルエーテルに微溶であり、ヘキサンに不溶であった。他方、青色に発光する固体は、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、DMSOに易溶であり、ジエチルエーテルに微溶であり、メタノール、エタノール、ヘキサンに不溶であった。
【0227】
再結晶によって得られた青色に発光する結晶のIRスペクトル、並びに黄色に発光する固体および青色に発光する固体の
1H NMRスペクトルの同定結果は、次の通りである。なお、表22中の各項目は、表1と同様である。
IR(KBr):3471 (w), 2953 (s), 2359 (w), 2341 (w), 1620 (s), 1491 (s), 1329 (s), 1248 (s), 1081(s), 840 (s), 770 (m), 521(s), 501(m)
【0228】
【表22】
【0229】
さらにまた、ESI−MS法により質量分析を行った。結果は、次の通りである。
ESI-MS:1611.6 [M-PF
6]
+【0230】
青色に発光する黄色固体を用いて、ジクロロメタン/エタノールから再結晶を行い、黄色結晶を得た。この結晶を用いて、単結晶X線構造解析により分子構造を決定した。その結晶学的データを表23に示す。ここで、表23中の各項目は、表6と同じである。
【0231】
【表23】
【0232】
また、青色に発光する結晶中のカチオンの構造を、
図24のORTEP図に示す。
図24に示すように、このカチオン中には二つのPt原子と二つのAg原子が含まれている。Ag・・・Ag間の中点に、結晶学的な対称中心が存在し、結晶中の半分の原子が独立である。各々のPt原子には4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン(4,4'-dmbpy)が二座でキレート配位し、残りの配位座には二つの3−t−ブチルピラゾラト配位子(3-
tBupz)がt−ブチル基に遠い方のN原子で配位している。各Pt原子は{(4,4'-dmbpy)Pt(3-
tBupz)
2}ユニットを形成しており、各ユニットの二つの3-
tBupz配位子が異なるAg原子に配位することで、二つのPt原子と二つのAg原子を含む12員環を形成している。[Pt
2Ag
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2において、Pt・・・Pt距離は6.3489(11)Åである。Pt・・・Ag距離は3.5265(8)Åおよび3.5260(8)Åであり、Ag・・・Ag距離は3.0705(8)Åである。また、Pt−N距離は、1.994(5)Å〜2.016(5)Åの範囲にあり、Ag−N距離は、2.096(6)Åおよび2.097(6)Åである。
【0233】
次に、金属錯体[Pt
2Ag
2(4,4'-dmbpy)
2(3-
tBupz)
4](PF
6)
2の発光特性について説明する。この金属錯体の固体状態の発光スペクトルを測定した。黄色に発光する固体の発光スペクトルを
図25に、青色に発光する結晶の発光スペクトルを
図26に示す。
【0234】
黄色に発光する固体を、298Kで355nmのUV光で励起すると、536nmに発光極大を示すスペクトルが得られた。他方、青色に発光する結晶を、298Kで355nmのUV光で励起すると、476nm、510nm、543nmに発光極大を示す振動構造を持つスペクトルが得られた。青色に発光する結晶の固体状態の発光量子収率(Φ)は、0.53であった。
【0235】
また、青色に発光する結晶の固体状態での発光減衰曲線の測定を行ない、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(-t/τ
1)+A
2exp(-t/τ
2))で解析を行なうことにより、τ
1=0.26μs、A
1=0.52、τ
2=0.73μs、A
2=0.48の値を得た(測定温度:298K)。この金属錯体の発光寿命は比較的長く、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。