(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5924749
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】粘着テープ繰り出し器
(51)【国際特許分類】
B65H 35/07 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
B65H35/07 N
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-197455(P2015-197455)
(22)【出願日】2015年10月5日
【審査請求日】2015年10月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515276439
【氏名又は名称】工藤 満泰
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】工藤 満泰
【審査官】
冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
再公表特許第2011/030395(JP,A1)
【文献】
特開平03−264471(JP,A)
【文献】
実開昭47−032693(JP,U)
【文献】
実開昭52−077884(JP,U)
【文献】
特開2014−005142(JP,A)
【文献】
特開平08−113415(JP,A)
【文献】
実開平05−075250(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープロールを回動可能に支持するロール支持部と、
前記粘着テープロールから繰り出された粘着テープを切断可能なテープ切断部と、
切断された前記粘着テープの端部を折り曲げて接着面同士を接合させる端部折り曲げ手段と、
前記粘着テープを着脱可能に支持するテープ支持部と、
を有する粘着テープ繰り出し器であって、
前記端部折り曲げ手段は、
前記粘着テープロールの軸と平行であり、前記粘着テープロールの軸方向の一部に亘って前記粘着テープと重複し、前記粘着テープの接着面と着脱可能に接触する折り曲げ軸と、
前記粘着テープの基材側から前記粘着テープに接触し、前記折り曲げ軸を支軸として前記粘着テープの端部を折り曲げて挟持する、軸部と翼部とを有する挟持部と、を有し、
前記折り曲げ軸は、前記ロール支持部と前記テープ切断部との間に位置し、
前記テープ支持部は、前記折り曲げ軸と前記ロール支持部との間に位置しており、
挟持部の軸部は、一方端部が固定され、この一方端部を支点として他方端部が回転することにより、翼部が昇降可能となっており、
粘着テープの端部を折り曲げるにあたり、前記テープ切断部に支持されている粘着テープの端部に向けて、粘着テープの基材側から挟持部の翼部を降下させて折り曲げ軸と略接触させ、挟持部のヒンジ状部材の翼部を閉じることにより、粘着テープの端部を折り曲げ軸を支軸として折り曲げる、粘着テープ繰り出し器。
【請求項2】
前記端部折り曲げ手段が、さらに、前記折り曲げ軸を、前記粘着テープから離間するように、前記粘着テープロールの軸方向に向かって移動させる折り曲げ軸移動手段を有する、請求項1に記載の粘着テープ繰り出し器。
【請求項3】
前記折り曲げ軸移動手段が、駆動手段により前記折り曲げ軸を移動させる、請求項2に記載の粘着テープ繰り出し器。
【請求項4】
前記折り曲げ軸と略接触する高さに保持されるように、前記挟持部を支持する挟持部支持部を有する、請求項1から3のいずれかに記載の粘着テープ繰り出し器。
【請求項5】
前記挟持部が駆動手段により昇降し、且つ前記粘着テープの端部を折り曲げて挟持する、請求項1から4のいずれかに記載の粘着テープ繰り出し器。
【請求項6】
前記折り曲げ軸の表面が、前記粘着テープロールの軸と平行な複数の稜線を有している、請求項1から5のいずれかに記載の粘着テープ繰り出し器。
【請求項7】
前記折り曲げ軸が、前記粘着テープロールの軸方向の25%以上35%以下に亘って前記粘着テープと重複している、請求項1から6のいずれかに記載の粘着テープ繰り出し器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに折り曲げられた端部を形成可能な粘着テープ繰り出し器に関する。
【背景技術】
【0002】
セロハンテープ等の粘着テープは、事務用や包装用の用途において任意の長さに切断され、書類等を他の物品の特定の部位等に一時的に張り付けたり、包装用紙を固定したりするために使用されている。しかしながら、粘着テープはこれを単独で放置すると、その粘着性故に、粘着テープの端部が粘着テープロール本体に再付着して一体となり、粘着テープを使用することが必要な際に、粘着テープロールからの粘着テープの端部の剥離に時間がかかり、且つ剥離された粘着テープ端部も一部が欠損してしまう可能性がある、といった問題があった。
【0003】
このような問題に対処するため、通常、粘着テープロールは、テープカッターに保持されて使用されている。テープカッターの一例としては、例えば、特許文献1に、テープカッター本体と、粘着テープロールを支持するロール支持部と、繰り出された粘着テープを切断するテープ切断部で構成されるテープカッターが開示されている。
【0004】
ところで、セロハンテープ等の粘着テープは、上述のとおり、紙類の一時的な固定の目的に使用される場合が多く、使用後に剥離して紙類等の固定を解除する可能性があるものの、使用中に接着面から粘着テープが容易に離脱しないよう、その粘着強度は相応に強いものとなっている。このため、粘着テープの全面を他の物品に接着させた場合、紙類等の固定を解除する際に粘着テープを剥離させようとすると、粘着テープの端部の一部が欠損する等して、剥離することに手間がかかったり、剥離することが困難になったりすることがあった。このような事態を防止するため、短期間のうちに剥離することが想定される粘着テープについては、その端部を折り曲げ、端部の接着面同士を接着させて粘着テープが他の物品に接着しないつまみしろを形成し、この部分をつまんで引き上げることにより容易に粘着テープを他の物品から剥離できるようにしていた。しかしながら、繰り出した粘着テープについて、指先での作業によりつまみしろを形成することは非常に煩雑な作業であり、且つ粘着テープの接着面に皮脂が付着する等により、粘着テープの外観をも損ねることが知られていた。
【0005】
そのような問題に対処した発明としては、特許文献2及び3に、粘着テープの接着面側と着脱可能に接触するテープ支持部と、粘着テープを切断可能なテープ切断部とを備え、粘着テープの切断時にテープ切断部をテープ支持部側に移動可能とした粘着テープ繰り出し器が開示されている。特許文献2及び3の発明において、テープ切断部をテープ支持部側に移動させた場合、テープ切断部とテープ支持部に位置する粘着テープは、テープ切断部とテープ支持部とを基点として、湾曲した環を形成するため、これを指で押しつぶすことにより、粘着テープの接着面同士を接合させ、容易につまみしろを形成させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−005142号公報
【特許文献2】特開平08−113415号公報
【特許文献3】実開平05−075250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2及び3の粘着テープ繰り出し器のいずれも、粘着テープに、テープ切断部とテープ支持部とを基点とした、湾曲した環を形成させることができるものの、最終的に、粘着テープの接着面同士を接合させる際には、指先で上記の環を押しつぶさなければならず、この際、場合によっては、粘着テープの接着面に皮脂等を付着させ、粘着テープの外観を損ねる恐れがあった。従って、本発明は、折り曲げられた端部(つまみしろ)を形成可能な粘着テープ繰り出し器であって、粘着テープの接合面同士を接着させるに当たって、指先を使用した煩雑な作業を極力回避可能であり、粘着テープの外観を損ねる危険を低減できる粘着テープ繰り出し器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記の課題にかんがみ鋭意研究を行った。その結果、ロール支持部とテープ切断部との間に位置し、粘着テープロールの軸と平行で、粘着テープの接着面と着脱可能に接触する折り曲げ軸と、折り曲げ軸を支軸として粘着テープの端部を折り曲げて挟持する挟持部と、を備えた粘着テープ繰り出し器によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 本発明の第1の態様は、粘着テープロールを回動可能に支持するロール支持部と、前記粘着テープロールから繰り出された粘着テープを切断可能なテープ切断部と、切断された前記粘着テープの端部を折り曲げて接着面同士を接合させる端部折り曲げ手段と、前記粘着テープを着脱可能に支持するテープ支持部と、を有する粘着テープ繰り出し器であって、前記端部折り曲げ手段は、前記粘着テープロールの軸と平行であり、前記粘着テープロールの軸方向の一部に亘って前記粘着テープと重複し、前記粘着テープの接着面と着脱可能に接触する折り曲げ軸と、前記粘着テープの基材側から前記粘着テープに接触し、前記折り曲げ軸を支軸として前記粘着テープの端部を折り曲げて挟持する挟持部と、を有し、前記折り曲げ軸は、前記ロール支持部と前記テープ切断部との間に位置し、前記テープ支持部は、前記折り曲げ軸と前記ロール支持部との間に位置している、粘着テープ繰り出し器である。
【0010】
(2) 本発明の第2の態様は、(1)に記載の粘着テープ繰り出し器であって、前記端部折り曲げ手段が、さらに、前記折り曲げ軸を、前記粘着テープから離間するように、前記粘着テープロールの軸方向に向かって移動させる折り曲げ軸移動手段を有することを特徴とする。
【0011】
(3) 本発明の第3の態様は、(2)に記載の粘着テープ繰り出し器であって、折り曲げ軸移動手段が、駆動手段により前記折り曲げ軸を移動させることを特徴とする。
【0012】
(4) 本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の粘着テープ繰り出し器であって、挟持部が昇降可能であることを特徴とする。
【0013】
(5) 本発明の第5の態様は、(4)に記載の粘着テープ繰り出し器であって、折り曲げ軸と略接触する高さに保持されるように、前記挟持部を支持する挟持部支持部を有することを特徴とする。
【0014】
(6) 本発明の第6の態様は、(4)又は(5)に記載の粘着テープ繰り出し器であって、前記挟持部が駆動手段により昇降し、且つ前記粘着テープの端部を折り曲げて挟持することを特徴とする。
【0015】
(7) 本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の粘着テープ繰り出し器であって、折り曲げ軸の表面が、前記粘着テープロールの軸と平行な複数の稜線を有していることを特徴とする。
【0016】
(8) 本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載の粘着テープ繰り出し器であって、折り曲げ軸が、前記粘着テープロールの軸方向の25%以上35%以下に亘って前記粘着テープと重複していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘着テープ繰り出し器は、粘着テープの基材側から粘着テープに接触し、折り曲げ軸を支軸として粘着テープの端部を折り曲げて挟持する挟持部を有しているので、この挟持部を介して、粘着テープの折り曲げた端部の接着面同士を接合させることにより、粘着テープの接着面同士を接合させる際に指先の使用を極力回避しつつ、粘着テープの端部につまみしろを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】挟持部が上昇した状態の本発明の粘着テープ繰り出し器を示す図面である。
【
図2】挟持部が降下した状態の本発明の粘着テープ繰り出し器を示す図面である。
【
図3】挟持部により、粘着テープの端部が折り曲げられた後の粘着テープ繰り出し器の様子を示す図面である
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1から
図3を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通して、同一の部材には同一の符号を付している。本明細書において、粘着テープロール10の軸方向とは、粘着テープロール10から粘着テープが繰り出される際、粘着テープが回転する回転軸と平行な方向であって、
図1から
図3中、Yで示される方向であり、粘着テープロール10の円周方向とは、粘着テープロール10から粘着テープが繰り出される任意の方向であって、粘着テープロール10の軸方向と垂直な任意の方向であり、例えば、
図1から
図3中、Xで示される方向である。
【0020】
<粘着テープ繰り出し器>
図1は挟持部6が上昇した状態の本発明の粘着テープ繰り出し器1を示す図面であり、
図2は挟持部6が降下した状態の本発明の粘着テープ繰り出し器1を示す図面である。
図3は、挟持部6により、粘着テープの端部が折り曲げられた後の本発明の粘着テープ繰り出し器の様子を示す図面である。本発明の粘着テープ繰り出し器1は、ロール支持部2と、テープ切断部3と、端部折り曲げ手段と、テープ支持部5と、を有する。
【0021】
[ロール支持部]
ロール支持部2は、粘着テープロール10を回動可能に支持するものであり、指等により粘着テープを繰り出す際に、ロール支持部2が粘着テープロール10と共に回動するように構成されている。このような構成により、粘着テープロール10の外表面上の粘着テープロール10が繰り出される部位が、テープ切断部3側に位置することとなり、粘着テープロール10から粘着テープを継続して繰り出すことを可能にする。ロール支持部2の具体的な構成としては、粘着テープロール10を回動可能に支持可能で、粘着テープロール10の継続した繰り出しを阻害しないものであれば、どのような構成を採用してもよいが、一般的には、粘着テープロール10の中空の中芯の内側から粘着テープロール10を支持する略円筒状や略多角形状の支持筒と、この支持筒を回動可能に保持する台座とを有するロール支持部2を採用することが好ましい。
【0022】
なお、本発明において、特にセロハンテープなどの幅の狭い粘着テープを繰り出すために粘着テープ繰り出し器1を使用する場合、後述する折り曲げ軸4を支軸として挟持部6で粘着テープの端部につまみしろを形成した後には、折り曲げ軸4を移動させずに、つまみしろを指でつまんで、つまみしろを折り曲げ軸4の反対方向に離間させる場合がある。このような場合に、つまみしろを離間させる際の応力により、粘着テープロールがロール支持部2から離脱することがないよう、ロール支持部2にはストッパ21が形成されていてもよい。なお、特に幅の狭い粘着テープロールを使用する場合、粘着テープロールの固定位置を調整するため、ロール支持部2に粘着テープロールと位置調整スペーサ(図示せず)を同時に保持させる場合があるが、上記のストッパ21は、この位置調整スペーサを保護する役割をも果たすものである。
【0023】
[テープ切断部]
テープ切断部3は、粘着テープロール10から繰り出された粘着テープを切断可能なものである。テープ切断部3の構成としては、粘着テープを切断できるものであれば、特に限定されるものではないが、一般には、粘着テープロール10から繰り出された粘着テープを、粘着テープの接着面側から一時的に支持可能であり、且つ粘着テープを支持する支持面において、粘着テープを切断する構成のものが採用される。ここで、テープ切断部3には、粘着テープを支持面において切断できるように、鋸歯状の刃が設けられることが一般的である。本発明において、テープ切断部3は、後述する端部折り曲げ手段により粘着テープの端部を折り曲げる際に、粘着テープの接着面がテープ切断部3から容易に離脱するよう、テープ切断部3は、粘着テープの接着面との接触面が出来るだけ小さくなるように構成されていることが好ましく、鋸歯状の刃のみにより構成されていることがさらに好ましい。
【0024】
ここで、テープ切断部3は、後述する折り曲げ軸4に対して移動可能であることが好ましい。そのような構成を採用することにより、テープ切断部3と折り曲げ軸4との間の距離を調整することができ、粘着テープの端部に形成されるつまみしろの長さを調整することが可能になる。また、テープ切断部3には、後述する折り曲げ軸4と粘着テープの重複度合いを所定の度合いに維持する目安となる、図示しない可動式の目安板を有していることが好ましい。可動式の目安板を有していることにより、粘着テープを切断する際に、粘着テープが折り曲げ軸4に重複する度合いを、好ましい度合いとして設定した度合いに調整することを容易なものとできる。
【0025】
[端部折り曲げ手段]
端部折り曲げ手段は、切断された粘着テープの端部を折り曲げて接着面同士を接合させるように作用するものであり、折り曲げ軸4と、挟持部6とを有し、好ましくは、折り曲げ軸移動手段7を有する。折り曲げ軸4は、ロール支持部2とテープ切断部3との間に位置しており、折り曲げ軸4とロール支持部2との間には、後述するテープ支持部5が設けられている。
【0026】
(折り曲げ軸)
折り曲げ軸4は、粘着テープロール10の軸と平行であり、粘着テープロール10の軸方向の一部に亘って粘着テープと重複し、粘着テープの接着面と着脱可能に接触しており、粘着テープの端部を折り曲げ、接着面同士を接合させる際には、折り曲げの支軸として作用する一方で、折り曲げられた粘着テープの接着面同士が接合された後には、粘着テープの接合面がこの折り曲げ軸4から離脱できる構成となっている。折り曲げ軸4が粘着テープロール10の軸と平行であることにより、粘着テープの端部を折り曲げた後、接合した粘着テープの接着面から折り曲げ軸4を離脱させる際に、折り曲げ軸4を粘着テープロール10の軸方向に変位させるか、粘着テープの端部を粘着テープロール10の軸方向に変位させることにより、接着した粘着テープの接合面の各接着面を剥離させることなく、接着面から折り曲げ軸4を離脱させることができる。このため、折り曲げ軸4と粘着テープとの重複部位を粘着テープロール10の軸方向の一部とした構成と相俟って、折り曲げ軸4を粘着テープの接着面から離脱させやすくすることができる。
【0027】
折り曲げ軸4は、粘着テープと接触する部位の表面において、粘着テープロール10の軸と平行な複数の稜線を有していることが好ましい。折り曲げ軸4の表面にこのような稜線が形成されていることにより、折り曲げ軸4の表面と粘着テープの接着面との接触面が小さくなると共に、折り曲げ軸4を移動させる際の表面摩擦も低減できることから、より小さな応力で、粘着テープの接着面から折り曲げ軸4を離脱させることができるようになる。なお、折り曲げ軸4の表面に形成されている稜線の本数は、3本から4本程度であることが最も好ましく、稜線の先端部は、その接地面積ができるだけ狭くなるように成形されていることが好ましい。さらに、粘着テープを折り曲げ軸4から容易に離脱させるため、折り曲げ軸4の表面は、セラミック等、粘着テープとの粘着性の低い素材で形成されていてもよい。折り曲げ軸4は、粘着テープロール10の軸方向の25%以上35%以下に亘って粘着テープと重複していることが好ましく、30%以上33%以下に亘って粘着テープロール10と重複していることがさらに好ましい。粘着テープと折り曲げ軸4の重複度合を以上のように調整することにより、切断された粘着テープの端部折り曲げの際の支軸としての折り曲げ軸4の機能を維持しつつも、折り曲げられた粘着テープの接着面を接合させた後には、より少ない応力で折り曲げ軸4を粘着テープの接着面から離脱させることができる。
【0028】
(挟持部及び挟持部支持部)
挟持部6は、粘着テープの基材側から粘着テープに接触し、折り曲げ軸4を支軸として粘着テープの端部を折り曲げて挟持するものである。なお、挟持部6は、粘着テープロール10からの粘着テープの繰り出しを妨害しないよう、
図1から
図3に示すように昇降可能な構造となっていてもよい。挟持部6は、粘着テープを挟持可能なように、例えば、ヒンジ状の構造を有しており、挟持部6の軸部を中心に挟持部6の翼部が回転することにより、粘着テープを挟み込める構造となっている。ここで、挟持部6が粘着テープを挟持する際には、折り曲げ軸4が支軸となって粘着テープを折り曲げるので、挟持部6と折り曲げ軸4とが略接触する高さに保持される必要があり、好ましくは、挟持部6の軸と折り曲げ軸4とが略接触する高さに保持される。挟持部6をこのような高さに保持する構成に加え、各種作業の安定性を向上させるため、端部折り曲げ手段は、挟持部支持部61を有していることが好ましい。
【0029】
ここで、上述のとおり、本発明の好ましい態様においては、挟持部6は昇降可能な構造を有するが、
図1に示すように、挟持部6の一方端部を固定し、この一方端部を支点として他方端部が回転することにより、挟持部6が昇降可能な構造を採用した場合、挟持部支持部61は、挟持部6のヒンジ状部材と他方端部との間に、他方端部を支持する形で設けられることが好ましい。挟持部6は、粘着テープロール10から粘着テープを繰り出す際には上昇して、粘着テープの繰り出しを妨害しないようにするとともに、切断された粘着テープの端部を折り曲げる際には、粘着テープに向かって降下し、粘着テープの端部を折り曲げて挟持可能なものとなる。なお、本発明においては、挟持部6に駆動手段が備えられていてもよく、この駆動手段により挟持部6が昇降し、且つ粘着テープの端部を挟持して保持してもよい。また、挟持部支持部61は、挟持部6のヒンジ状部材と他方端部との間に設けられているものに限定されず、折り曲げ軸4の土台部分で挟持部6を保持していてもよい。
【0030】
[テープ支持部]
テープ支持部5は、粘着テープを着脱可能に支持する構成を有するものであり、折り曲げ軸4とロール支持部2との間に設けられている。本発明の粘着テープ繰り出し器1を長期間使用しない状況において、粘着テープの接着面を折り曲げ軸4やテープ切断部3と接触したままにした場合、粘着テープの接着面がこれら折り曲げ軸4やテープ切断部3に固着してしまう可能性がある。このため、粘着テープ繰り出し器1を使用しない場合は、粘着テープを折り曲げ軸4やテープ切断部3から離脱させる必要があるが、そのまま放置した場合、粘着テープに再付着してしまうため、そのような再付着を防止するため、つまみしろを有する粘着テープをテープ支持部5に係合させることが好ましい。また、テープ支持部5は、粘着テープを適切な位置に保持する役割も果たし、テープ切断部3、折り曲げ軸4、及び粘着テープロールを水平に維持する役割も兼ねるものである。テープ支持部5は、粘着テープを容易に係合できるようにするため、例えば、粘着テープロールの回転軸に平行な2本の軸を備えるものであってもよく、この2本の軸の間に粘着テープを挟みこむようにして係合するものであってもよい。また、テープ支持部5が上述した2本の軸からなる構成を採用する場合、これら2本の軸の一方端部が開放され、開放された端部から粘着テープを2本の軸の間に挿入可能な構成としてもよい。
【0031】
[折り曲げ軸移動手段]
本発明の粘着テープ繰り出し器1を使用して、粘着テープにつまみしろを形成した場合において、粘着テープの幅が狭い場合には、指先等を使用してつまみしろを折り曲げ軸4から離間させることが好ましいが、特に幅の広い粘着テープを使用する場合には、折り曲げ軸移動手段7を使用して折り曲げ軸を粘着テープから離間させることが好ましい。この折り曲げ軸移動手段7は、折り曲げ軸4を、粘着テープから離間するように、粘着テープロール10の軸方向に向かって移動させるものである。ここで、折り曲げ軸移動手段7の具体的な構成としては、特に限定されるものではないが、例えば、折り曲げ軸4を、粘着テープロール10の軸方向の粘着テープから離間する方向に牽引可能なワイヤ71と、折り曲げ軸4を、粘着テープと接触する位置に保持する弾性部材と、の組み合わせを挙げることができる。このような折り曲げ軸移動手段7によれば、粘着テープの端部を折り曲げる際には、弾性部材の作用により折り曲げ軸4を粘着テープと接触する位置に保持可能であるとともに、粘着テープの端部を折り曲げ、接着面同士を接合させた後には、ワイヤ71により折り曲げ軸4を牽引して、折り曲げ軸4を粘着テープロール10の軸方向の粘着テープから離間する方向に移動させることができる。ここで、例えば、ワイヤ71には、駆動手段が備えられていてもよく、この駆動手段により、ワイヤ71を介して折り曲げ軸4を牽引してもよい。
【0032】
<粘着テープ繰り出し器の作用>
本発明の粘着テープ繰り出し器1は、以下に説明するように作用する。まず、粘着テープを、ロール支持部2に回動可能に支持された粘着テープロール10から繰り出し、粘着テープの接着面をテープ切断部3に接触させて粘着テープを切断する(
図1)。粘着テープの切断後、切断部に支持されている粘着テープの端部に向けて、挟持部6を降下させて、これを折り曲げ軸4と略接触させ(
図2)、挟持部6のヒンジ状部材の翼部を閉じると、粘着テープは折り曲げ軸4を支軸として折り曲げられ、さらに折り曲げられた端部の接着面同士が接合する(
図3)。その後、例えば、作業上、迅速性が求められる場合には、指先を使用して粘着テープの端部を折り曲げ軸4から離間させるか、折り曲げ軸移動手段7により、折り曲げ軸4を、粘着テープから離間するように、粘着テープロール10の軸方向に向かって移動させると、粘着テープの接着面から折り曲げ軸4が離脱し、つまみしろが形成された粘着テープ端部が出現する。そして、粘着テープロール10から、再び、粘着テープを繰り出し、つまみしろが形成された端部と接着面が露出している粘着テープとを一体として、テープ切断部3で切断することにより、つまみしろが形成された粘着テープが分離される。
【0033】
本発明の粘着テープ繰り出し器1は、挟持部6を有しているので、この挟持部6を介して、粘着テープの折り曲げた端部の接着面同士を接合させることにより、接着面同士の接合に際して、指先の使用を極力回避しつつ、粘着テープの端部につまみしろを形成することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 粘着テープ繰り出し器
2 ロール支持部
21 ストッパ
3 テープ切断部
4 折り曲げ軸
5 テープ支持部
6 挟持部
61 挟持部支持部
7 折り曲げ軸移動手段
71 ワイヤ
10 粘着テープロール
X 粘着テープロールの円周方向
Y 粘着テープロールの軸方向
【要約】
【課題】折り曲げられた端部(つまみしろ)を形成可能な粘着テープ繰り出し器であって、指先の使用を極力回避可能で、粘着テープの外観を損ねる危険を低減できる粘着テープ繰り出し器を提供すること。
【解決手段】切断された粘着テープの端部を折り曲げて接着面同士を接合させる端部折り曲げ手段を有する粘着テープ繰り出し器であって、端部折り曲げ手段は、粘着テープロールの軸と平行であり、粘着テープロールの軸方向の一部に亘って粘着テープと重複し、粘着テープの接着面と着脱可能に接触する折り曲げ軸と、粘着テープの接着面と着脱可能に接触するテープ支持部と、粘着テープの基材側から粘着テープに接触し、折り曲げ軸を支軸として粘着テープの端部を折り曲げて挟持する挟持部と、折り曲げ軸を、粘着テープから離間するように、粘着テープロールの軸方向に向かって移動させる折り曲げ軸移動手段と、を有する粘着テープ繰り出し器。
【選択図】
図2