(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医療分野に用いられる薬液ボトルや点滴用の輸液ボトル等の薬剤容器には、針でその薬液を取り出せるようにするため、そのキャップとして、ゴム栓や、外枠体の内側に弾性栓体(例えば、ゴムやエラストマー樹脂等)を設けたものが用いられている。後者のキャップに於いては、外枠体を薬剤容器の口部に溶着等することにより取り付けられる。そして、使用時には弾性栓体に、取り出し用チューブを備えた注射針を突き刺し、薬剤容器を上側にし、キャップを下側に配置することにより、当該取り出し用チューブを介して容器内の輸液を取り出す。また、この様な医療用キャップには、薬液や輸液の漏洩防止や空気に触れることによる変質を防止するため、密閉性が求められる。
【0003】
前記医療用キャップとしては、例えば、弾性栓体の接液面と外枠体の底面保持部の上部とが融着しており、かつ前記弾性栓体の側面部と前記外枠体の側周部の内壁とは非融着状態で接触している構造のものが提案されている(下記特許文献1参照)。当該特許文献1によれば、ゴム特性が改善され、再シール性の向上も図れることが開示されている。
【0004】
しかし、従来の医療用キャップであると、弾性栓体と外枠体との密着が十分でない場合がある。この様な医療用キャップに於いては、針刺しの際に弾性栓体と外枠体の位置がずれて両者の間に空隙が生じたり、そのために2本目の針を刺すことや、再度針刺しを行うことが困難になるという問題がある。
【0005】
前記の問題を解決するため、下記特許文献2には、弾性栓体の接液面が、円中心方向へ向かって凸の傾斜を有した医療用キャップが開示されている。当該医療用キャップであると、外枠体から弾性栓体の水平方向成分に圧力が加わった状態であるため、再シール性の向上及び針抜けの防止が可能になる。
【0006】
また、下記特許文献3には、熱可塑性エラストマー成形品の外縁を抱囲するように、硬質プラスチックを、溶融射出して圧接させる複合材料成形品の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、熱可塑性エラストマー成形品は硬質プラスチックから圧縮応力を受けた状態で内嵌され、これにより、気密性及び液密性の向上が図れると記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2及び3に開示されている医療用キャップであっても、液漏れや針抜けの発生防止が不十分であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、弾性栓体と、当該弾性栓体を内部で保持する支持体とを有する医療用キャップであって、弾性栓体と支持体の位置ズレによる空隙の発生を防止し、針刺し時の液漏れがなく、また針抜けに対する保持力や復元力に優れるなど、密閉性の確保に優れた医療用キャップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、医療用キャップ及びその製造方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明に係る医療用キャップは、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体を内部で保持する支持体とを有する医療用キャップであって、前記支持体は、前記弾性栓体を取り囲んで収容する内部壁と、前記内部壁を取り囲む外部壁とを備え、前記内部壁と外部壁の間隙には、環状壁を備えた内栓が、当該環状壁を圧入させることにより設けられており、前記弾性栓体は、前記支持体との接触面で溶着し、かつ、前記内栓とは溶着しておらず、前記弾性栓体には、前記環状壁の圧入により前記内部壁から圧力が加えられていることを特徴とする。
【0012】
前記の構成によれば、支持体が弾性栓体との接触面で溶着した構造となっている。この為、例えば弾性栓体に針刺しをする際に弾性栓体と支持体の位置ズレにより空隙が生じるのを防止することができる。さらに、液漏れの発生を防止し密閉性の確保が図れる。また、前記内栓の環状壁が、支持体に於ける外部壁と内部壁の間隙に圧入されているので、針抜けに対する保持力及び復元力にも優れ、更に針抜き後の再シール性も向上させることができる。また、前記の構成では、内栓の環状壁は弾性栓体に接触することなく圧入されたものであるので、圧入時の摩擦により当該弾性栓体に対し変形が加えられることもない。その結果、弾性栓体の位置ズレを防止することができる。尚、前記「圧入」とは、外部壁と内部壁の間隙に内栓の環状壁を強制的に挿入し、外部壁及び内部壁に圧力を加えながら環状壁を嵌め込むことを意味する。
【0013】
前記の構成に於いて、前記支持体に於ける内部壁には、少なくとも1つの切り欠き部が設けられていることが好ましい。当該構成であると、支持体の内部壁と外部壁の間隙に内栓の環状壁を圧入させることにより、内部壁をその直径が縮小する方向に変形させることができる。これにより、前記環状壁の圧入による圧力を、内部壁を介して弾性栓体に対しより効果的に伝達させることが可能になり、内部壁と弾性栓体との密着性を一層向上させることができる。
【0014】
また、前記の構成に於いて、前記外部壁の内面における頂部には、圧入された内栓を保持するための環状溝が設けられ、前記内栓には、その環状壁に於ける底部の周縁部において、前記環状溝と嵌合して前記内栓を係止する環状の突条部が設けられていることが好ましい。圧入された内栓に対しては、支持体の外部に押し出そうとする力が働くが、前記の構成であると、内栓に設けられた環状の突条部と、外部壁に設けられた環状溝とが嵌合することにより、当該内栓を係止する。その結果、内栓が支持体の外部に押し出されるのを防止することできる。
【0015】
また、前記の構成に於いて、前記内栓は、輸液用バッグに用いられるポートの先端部に設けられたものであることが好ましい。
【0016】
本発明に係る医療用キャップの製造方法は、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体を内部で保持する支持体とを有する医療用キャップの製造方法であって、金型内に前記弾性栓体を設け、前記金型内のキャビティに溶融樹脂を射出することにより、当該弾性栓体を取り囲んで収容する内部壁と、前記内部壁を取り囲む外部壁とを備え、かつ、接触面において当該弾性栓体と溶着した前記支持体を作製する工程と、前記支持体に於ける内部壁と外部壁の間隙に圧入させることが可能な環状壁を備えた内栓を作製する工程と、前記支持体に於ける内部壁と外部壁の間隙に、前記内栓に於ける環状壁を圧入させる工程とを有することを特徴とする。
【0017】
前記の方法に於いては、予め作製しておいた弾性栓体を金型内に設けた状態で支持体を成形することにより、当該弾性栓体と接触面で溶着し一体的に成形させた支持体を作製する。さらに、別に作製しておいた環状壁を備える内栓を、弾性栓体と一体的に成形された支持体と組み合わせる。当該組み合わせは、支持体の外部壁と内部壁の間隙に、内栓の環状壁を強制的に挿入(圧入)して行う。この圧入により、内栓の環状壁は支持体の外部壁及び内部壁に圧力を加えるので、例えば、内部壁に対してはその直径が縮小する方向に変形させることができる。その結果、内部壁の内部に収容されている弾性栓体に対して、当該内部壁を介して圧力を加えることができ、針抜けに対する保持力や復元力にも優れ、針抜き後の再シール性も良好な医療用キャップが得られる。
【0018】
また、前記の内栓の圧入においては、内栓の環状壁が弾性栓体に接触することがないので、圧入時の摩擦により当該弾性栓体に対し変形が加えられることがない。その結果、弾性栓体の位置ズレを防止し、製造効率の向上が図れる。
【0019】
また、前記方法により作製された医療用キャップは、支持体が弾性栓体との接触面で溶着した構造となっているので、例えば弾性栓体に針刺しをする際に弾性栓体と支持体の位置ズレにより空隙が生じるのを防止することができる。さらに、液漏れの発生を防止し密閉性の確保が図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の医療用キャップは、弾性栓体と、これを内部で保持する支持体とを有するものであり、前記支持体は、前記弾性栓体を取り囲んで収容する内部壁と、前記内部壁を取り囲む外部壁とを備え、更に、環状壁を備えた内栓が、前記内部壁と外部壁の間隙に当該環状壁を圧入させて設けられた構成を備えている。加えて、弾性栓体は支持体との接触面において溶着した構造となっているので、弾性栓体に対し針刺しを行っても、弾性栓体の位置ズレにより空隙が生じるのを防止することができる。その結果、液漏れ等の発生を防止することができ、密閉性に優れたものにできる。また、弾性栓体には内部壁から圧力が加えられているため、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、更に針抜き後の再シール性も良好である。
【0021】
また、内栓の環状壁の圧入は、内部壁と外部壁の間隙に行うので、弾性栓体に接触させることもない。そのため、弾性栓体に対し不要な摩擦や抵抗を与えず、弾性栓体の変形や当該弾性栓体の位置ズレの防止が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る医療用キャップについて、
図1〜
図3を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
図1は、本実施の形態に係る医療用キャップを説明するための断面模式図である。また、
図2は前記医療用キャップにおける弾性栓体を備えた支持体を説明するための断面模式図であって、同図(a)は支持体の内部に弾性栓体が一体的に設けられた状態を表し、同図(b)は前記弾性栓体を省略し支持体のみを表す。
図3は、前記医療用キャップにおける内栓を説明する為の断面模式図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る医療用キャップ10は、支持体1、弾性栓体2及び内栓3を少なくとも備える。
前記支持体1は、その内部で弾性栓体2を保持することが可能であり、具体的には、当該弾性栓体2を取り囲んで収容する内部壁12と、内部壁12を取り囲む外部壁11とを少なくとも一体的に備えている(
図2(a)参照)。また、内部壁12は接触面において弾性栓体2と溶着しており、これにより弾性栓体2と支持体1とが一体的に成形されている。ここで、前記「溶着」とは、後述の通り、支持体1を射出成形等により成形する際に注入される溶融樹脂の熱により、これに接した弾性栓体2の表面が溶融した結果、当該支持体1の成形後に、支持体1と弾性栓体2とがその接触面において結合した状態にあることを意味する。
【0025】
前記内部壁12には、
図2(b)に示すように、切り欠き部14が設けられていることが好ましい。これにより、内部壁12をその直径が縮小する方向に変形させることが容易になる。切り欠き部14は内部壁12に少なくとも一箇所設けられていれば足りるが、複数の切り欠き部14を設ける場合には、対角線上に対となる様に配置するのが好ましい。これにより、内部壁12の変形を等方向に均一に行うことが可能なり、弾性栓体2に加える圧力に偏りが生じるのを防止することができる。但し、本発明は、切り欠き部14を設けない環状の内部壁であってもよい。この場合、内部壁12の厚さは外部壁11と比較して薄いものが好ましい。これにより、内部壁をその直径が縮小する方向に変形させることが容易になる。切り欠き部14を設ける場合の内部壁12の厚さは、具体的には0.1mm〜2.5mmの範囲内が好ましく、0.2mm〜1mmの範囲内がより好ましい。また、切り欠き部14を設けない場合の内部壁12の厚さは、0.1mm〜2mmの範囲内が好ましく、0.2mm〜0.8mmの範囲内がより好ましい。
【0026】
また、切り欠き部14の切り欠きの深さは特に限定されず、
図2(b)に示すように、内部壁12の底部に達するものでもよい。また、内部壁12の厚さに適宜対応させて任意の深さに変更してもよい。更に、切り欠き部14の切り欠き形状は、
図2(b)に於いては長方形状であるが、内部壁12をその直径が縮小する方向に変形させることが可能な形状であれば特に限定されるものではない。
【0027】
内部壁12の高さは特に限定されないが、
図2(a)に示すように弾性栓体2をその内部に収容したときに、当該弾性栓体2の高さと同じか、あるいは高い方が好ましい。これにより、内部壁12は弾性栓体2の側周面23を全て覆う様にして収容し、かつ、効果的に弾性栓体2に圧力を加えることできる。前記内部壁12の高さは、具体的には2.5mm〜14mmの範囲内が好ましく、3mm〜11mmの範囲内がより好ましい。
【0028】
また、内部壁12の形状は特に限定されるものではない。例えば、
図2(b)に示すように、内部壁12の断面形状が頂部に向かうに従い先細りとなる形状であってもよい。これにより、外部壁11との間隙を、頂部では広くすると共に、底部に向かうに従い狭くすることができる。その結果、内栓3の環状壁31の圧入を容易にすると共に、当該間隙への嵌め込みを確実にすることができる。その一方、内部壁12の底部の厚さを頂部と同等又は薄くしてもよい。これにより、内部壁12の底部に於いても弾性栓体2に加える圧力を大きくすることができる。尚、内部壁12の厚さは、前述の数値範囲内で適宜設定するものとする。
【0029】
また、内部壁12の底部には、弾性栓体2を溶着した状態で載置可能にする載置部13が設けられている。また、載置部13は、内部壁12から中心方向に環状に張り出す様にして設けられている。これにより、弾性栓体2の針刺面22の周縁部を支持することができる。その結果、外部壁11と内部壁12の間隙に内栓3の環状壁31が圧入される際には、弾性栓体2が支持体1から外部に押し出されるのを防止することができる。さらに、載置部13には、弾性栓体2との嵌合を可能にする環状の突条部が設けられていてもよい。これにより、弾性栓体2が支持体1から外部に押し出されるのを一層防止することができる。また、本実施の形態に於いては、載置部13が環状の場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、所定の間隔で複数の載置部を設けた態様であってもよい。この場合、隣接する載置部の離間距離は、内栓3の環状壁を圧入する際に、支持体1から押し出されない程度に弾性栓体2を支持できる態様であれば、特に限定されない。また、本実施の形態に於いては、支持体1において載置部13を省略した構造を採用することも可能である。弾性栓体2は内部壁12と溶着した状態にあり、内栓3の環状壁31を外部壁11と内部壁12の間隙に圧入しても、当該弾性栓体2が位置ズレしたり、脱落するのを防止できるからである。
【0030】
前記外部壁11の頂部には、圧入後の内栓3を、その状態に維持するための係止部を設けてもよい。これにより、内栓3が支持体1の外部に押し出されるのを防止することできる。そのような係止部として、外部壁11の頂部に於いて環状のものが支持体1の内部に向かう方向に張り出した形状のものや、外部壁11の頂部に於いて、内部に向かう方向に張り出した一つ以上の凸状のものが所定の間隔で配置されたものが挙げられる。
【0031】
更に、外部壁11の頂部には、
図2(a)及び2(b)に示すように、輸液容器や採血管、バイアル瓶等の薬剤容器の口部との超音波溶着等による接合を容易にするため、外部壁11の外側に張り出したフランジ部17が設けられている。
【0032】
前記外部壁11の高さは、前記内部壁12よりも高い方が好ましい。内部壁12よりも低いと、薬剤容器の口部に医療用キャップ10を取り付ける際に、内部壁12がその取付けを阻害する場合があるからである。前記外部壁11の高さは、具体的には4mm〜20mmの範囲内が好ましく、5mm〜18mmの範囲内がより好ましい。また、外部壁11の厚さは特に限定されないが、内栓3が圧入された場合にも支持体1の形状を保持させるという観点からは、内部壁12よりも厚い方が好ましい。前記外部壁11の厚さは、具体的には0.3mm〜3mmの範囲内が好ましく、0.4mm〜2mmの範囲内がより好ましい。
【0033】
前記外部壁11と内部壁12の間隙の距離は、後述する内栓3の環状壁31の形状等に応じて適宜設定することができる。具体的には、0.3mm〜5mmの範囲内が好ましく、0.5mm〜2mmの範囲内であることがより好ましい。また、間隙の距離は、前記数値範囲内に於いて、外部壁11及び内部壁12の底部に向かうに従い狭くしてもよい。これにより、環状壁31の圧入の容易化が図れる。
【0034】
前記支持体1を構成する材料としては、合成樹脂のうち、医療用途としての安全性が確立されたものであれば足りる。中でも熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の従来医療用途に用いられている樹脂が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
弾性栓体2は、接液面21を上側にし、針刺面22を下側にして支持体1に於ける内部壁12の内部に収容されるのが好ましい。また、前述の通り、弾性栓体2は、その側周面23において内部壁12と接触し溶着している。また、針刺面22側の周縁部においても載置部13と接触し溶着している。そのため、弾性栓体2は支持体1と一体的な構造となっている。尚、前記接液面21とは、薬液等が接する面を意味する。また、針刺面22とは、本実施の形態に係る医療用キャップ10が薬剤容器に装着され、薬液等を取り出す際に、注射針により針刺しが行われる面を意味する。
【0036】
また、前記弾性栓体2の全体形状は特に限定されないが、例えば
図2(a)に示す円柱状のものが好ましい。弾性栓体2の直径は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。尚、弾性栓体2の形状は
図2(a)に示すような形態に限定されるもではない。例えば、支持体1の載置部13に環状の突条部を設けた場合には、当該突条部と嵌合可能な環状溝を針刺面22側に設けた弾性栓体であってもよい。また、針刺面及び接液面の両方ともフラットな形状の弾性栓体であってもよい。さらに、針刺面側に、脱落防止のために、少なくとも一段の階段状の段差部を備えた弾性栓体であってもよい。
【0037】
弾性栓体2の特性については特に限定されず、医療用注入針等が貫通できる程度の硬度を有していればよい。また、通常の保管の際に容易に変形したり、破損したりしない程度の形状保持性を有するものが好ましい。弾性栓体2の硬度は、JIS K6253法による測定に於いて、A5〜A50であることが好ましく、A10〜A45であることがより好ましい。
【0038】
前記弾性栓体2に用いる材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマーが挙げられる。前記ゴムとしては特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等が例示できる。また、熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系等が例示できる。中でも共役ジエン系の熱可塑性エラストマーに水素添加した熱可塑性エラストマー(SEBS、SEPS、HSBR、SEBR、CEBC)が好適である。
【0039】
また、弾性栓体2の直径は特に限定されず、通常は10mm〜30mmの範囲内で設定される。更に、弾性栓体2の厚みは内部壁12の高さと同一又は小さければ特に限定されないが、好ましくは2.5mm〜12mm、より好ましくは3mm〜9mmの範囲内である。また、針刺面22側に前記環状溝を設ける場合、その深さは特に限定されないが、好ましくは0.2mm〜2mm、より好ましくは0.3mm〜1.5mmの範囲内である。
【0040】
弾性栓体2の製造方法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性エラストマーを圧潰しながら行うコンプレッション成形や射出成形により製造可能である。
【0041】
前記内栓3は、
図3に示すように、支持体1に於ける外部壁11と内部壁12の間隙に圧入するための環状壁31を少なくとも備える構成であればよい。同図に示す内栓3は輸液用等のバックやボトル等の容器に用いられるポート41又はポート部の先端部に設けられた構成である。また、前記ポート41と内栓3は相互に独立した部材を結合したものでもよく、あるいは一体的に成形されたものでもよい。
【0042】
さらに、前記内栓3における環状壁31の高さは、外部壁11と内部壁12の間隙の深さと同一又は小さいことが好ましい。環状壁31の高さが外部壁11と内部壁12の間隙の深さよりも大きいと、外部壁11と内部壁12の間隙に圧入する際に、内栓3と支持体1のフランジ部17と接合部35(後述の実施の形態2に於いては環状溝62と突条部72)を密着させるのが困難になる。環状壁31の高さは、具体的には、2.5mm〜14mmの範囲内が好ましく、3mm〜11mmの範囲内がより好ましい。尚、環状壁31の高さは、フランジ部17と接合部35とが密着した状態において、内部壁12の頂点に接する水平線を基準とした垂直方向の高さを意味する。
【0043】
また、本実施の形態に係る弾性栓体2は内部壁12や載置部13の接触面において溶着しているため、例えば、針刺し等の際に弾性栓体2が脱落することがない。しかしながら、内栓3には、弾性栓体2を接液面21側から支持するための支持部を設けてもよい。これにより、内栓3の圧入によって、弾性栓体2が接液面21側に押し出されるのを防止することができる。前記支持部は、環状壁31の内側面に環状に設けられていることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、所定の間隔で複数の支持部が設けられた構造であってもよい。この場合、隣接する支持部の離間距離は、内栓3の環状壁を圧入する際に、支持体1から押し出されない程度に弾性栓体2を支持できる態様であれば、特に限定されない。支持部が環状に設けられる場合、その厚さや内径は、弾性栓体2を十分に支持し得る程度であれば特に限定されない。但し、内径が小さ過ぎると(すなわち、支持部が大き過ぎると)、弾性栓体2に対して針刺しを行う際の針刺し面積が小さくなり好ましくない。尚、支持部には、弾性栓体2との嵌合を可能にする環状の突条部が設けられていてもよい。これにより、弾性栓体2を確実に支持することができ、位置ズレや脱落を一層防止することができる。
【0044】
更に、環状壁31の厚さは特に限定されないが、外部壁11と内部壁12の間隙の大きさや、弾性栓体2の圧縮特性等に応じて適宜設定される。具体的には、環状壁31の厚さは、0.3mm〜6mmの範囲内が好ましく、0.5mm〜3mmの範囲内がより好ましい。
【0045】
前記環状壁31の形状は特に限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、環状壁31の断面形状が頂部に向かうに従い先細りとなる形状であってもよい。これにより、外部壁11と内部壁12の間隙への環状壁31の圧入を容易にすることができる。また、頂部から底部に於いて厚さが均一のものであってもよい。何れの場合に於いても、環状壁31の厚さは、前記数値範囲内で設定される。
【0046】
尚、外部壁11の頂部に、圧入後の内栓3を、その状態に維持するための係止部を設ける場合には、前記内栓3における環状壁31の底部の周縁部に、前記係止部との係止を可能にする環状の段差部を設けるのが好ましい。これにより、内栓3を支持体1内部に装着した際に、当該内栓3が支持体1の外部に押し出されるのを防止することできる。
【0047】
内栓3に用いられる構成材料は特に限定されない。例えば、前記支持体1に用いられる構成材料と同様のものを採用することができる。
【0048】
内栓3を支持体1に於ける外部壁11と内部壁12の間隙に圧入することにより、当該内部壁12をその直径が縮小する方向に変形させることができる。その結果、内部壁12の内側に収容されている弾性栓体2は内部壁12から圧力を受ける。弾性栓体2に加えられる圧力は、内部壁12に設けられる切り欠き部14の形状や厚さにもよるが、通常は、弾性栓体2の中心軸に於ける針刺面方向に向かって作用する。また、弾性栓体2に加えられる圧力は針刺面22側に向かうに従い小さくなる。この作用により、弾性栓体2自身が有する復元力が弾性栓体2の側周面の方向に働き拡張しようとする結果、内部壁12との密着性が向上する。これにより、弾性栓体2の針刺面22に針刺しを行った際には、液漏れの発生を防止し、かつ、針抜けに対する保持力及び復元力も向上させることができる。更に、針抜け後の再シール性にも優れたものにできる。尚、弾性栓体2の接液面21側及び針刺面22側は、それぞれ中央部が凸状に僅かに膨出した形状になる場合がある。
【0049】
また、内栓3の環状壁31の圧入は、外部壁11と内部壁12の間隙に対して行われる。外部壁11と弾性栓体2の間隙に対して行われるのではない。そのため、内栓3の圧入時に環状壁31が弾性栓体2に対し摩擦に起因した変形を生じさせることがない。これにより、内栓3の圧入時における弾性栓体2の変形を防止し、当該弾性栓体2の位置ズレを防ぐことができる。
【0050】
次に、本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法について説明する。当該医療用キャップの製造方法は、金型内に弾性栓体2を設け、前記金型内のキャビティに溶融樹脂を射出することにより、当該弾性栓体2を取り囲んで収容する内部壁12と、前記内部壁12を取り囲む外部壁11とを備え、かつ、接触面において当該弾性栓体2と溶着した前記支持体1を作製する工程と、前記支持体1に於ける内部壁12と外部壁11の間隙に圧入させることが可能な環状壁31を備えた内栓3を作製する工程と、前記支持体1に於ける内部壁12と外部壁11の間隙に、前記内栓3に於ける環状壁31を圧入させる工程とを少なくとも有する。
【0051】
前記支持体1の作製工程は、例えば、従来公知の射出成形や二色成形等により行うことができる。即ち、支持体1の成形を可能にするキャビティが形成され得る金型を用意する。次に、金型の型閉じの際に、その内部に弾性栓体2を設けておく。続いて、支持体1の構成材料となる樹脂を溶融し、この溶融樹脂を前記キャビティ内に注入する。このときの溶融樹脂の射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂は所定時間冷却される。型開き後、内部壁12等に弾性栓体2が溶着した支持体1が得られる。
【0052】
その一方、
図1に示す形態の前記内栓3の作製工程は、例えば、従来公知の射出成形により行うことができる。即ち、型閉じの際に、内栓3の成形を可能にするキャビティが形成され得る金型を用意する。次に、内栓3の構成材料となる樹脂を溶融し、この溶融樹脂を前記キャビティ内に注入する。このときの溶融樹脂の射出圧力についても特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂は所定時間冷却される。型開き後、内栓3が得られる。
【0053】
続いて、内部壁12と外部壁11の間隙に、内栓3に於ける環状壁31を圧入させる。この圧入により、内栓3の環状壁31は支持体1の外部壁11及び内部壁12に圧力を加えることができ、その結果、内部壁12の内部に溶着した状態で収容されている弾性栓体2に対しても、当該内部壁12を介して圧力を加えることができる。このとき、内栓3の環状壁31は弾性栓体2に接触することがないので、環状壁31の圧入時に弾性栓体2に対し不要な摩擦や抵抗を生じさせることがない。その結果、弾性栓体2の位置ズレを防止し、製造効率の向上が図れる。また、弾性栓体2と内部壁12の密着性が優れているので、針刺しを行った際に、液漏れが発生するのを防止することができる。また、針抜けに対する保持力及び復元力にも優れ、更に針抜き後の再シール性も向上させることができる。
【0054】
尚、本実施の形態に係る医療用キャップは、前記の態様に限定されるものではない。例えば、
図4に示すように輸液ボトル50における口部51の先端に内栓52が設けられた場合の医療用キャップ30であってもよい。前記輸液ボトル50における口部51と内栓52は、相互に独立した部材を結合したものでもよく、あるいは一体的に成形されたものでもよい。
【0055】
この場合、
図4に示す内栓52の作製工程は、例えば、従来公知のブロー成形により行うことができる。即ち、型閉じの際に、内栓52の外面の成形を可能にするキャビティが形成され得る金型と内栓52の口部内面の成形を可能にするブローピンを用意する。次に、内栓52の構成材料となる樹脂を溶融し、この溶融樹脂からなるパリソンを前記キャビティ間に注下する。この後、キャビティを閉じ口部内面にブローピンを打ち込みエアーをブローする。このときのブロー圧力についても特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。キャビティとブローピンにより形成された溶融樹脂は所定時間冷却される。型開き後、内栓52が得られる。
【0056】
これらの態様であっても、支持体が弾性栓体との接触面で溶着した構造となっているので、例えば弾性栓体に針刺しをする際に弾性栓体と支持体の位置ズレにより空隙が生じるのを一層防止することができる。さらに、液漏れの発生を防止し密閉性の確保が図れる。また、前記内栓の環状壁が、支持体に於ける外部壁と内部壁の間隙に圧入されているので、針抜けに対する保持力及び復元力にも優れ、更に針抜き後の再シール性も向上させることができる。更に、内栓52の環状壁53は、弾性栓体2に接触することなく圧入されたものであるので、圧入時の摩擦により当該弾性栓体2に対し変形が加えられることがない。その結果、弾性栓体2の位置ズレも防止できる。
【0057】
また、本実施の形態に於いては、弾性栓体2の接液面21を被覆するための隔膜部を備えた構成であってもよい。弾性栓体2を構成する熱可塑性エラストマー材料は、ゴム材料に比べて極めて衛生的な材料であるが、使用する薬液によっては、弾性栓体2との接触が好ましくない場合も考えられる。従って、前記隔膜部を設けることにより、薬液が接触する箇所を容器と同一又は類似した性質の材料とすることができる。
【0058】
前記隔膜部としては、弾性栓体2に融着させたラミネートフィルム、内栓3に接合させたフィルム、内栓3と一体成形された膜部あるいは薄層等が挙げられる。前記ラミネートフィルムとしては特に限定されず、前記合成樹脂からなる内栓3と融着可能なものが使用される。具体的には、例えば フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル樹脂又はこれらの混合物等を主成分とするプラスチツクフィルムが挙げられる。隔膜部の厚さは特に限定されないが、0.01mm〜1mmの範囲内が好ましく、0.03mm〜0.5mmの範囲内がより好ましい。隔膜部の厚さを1mm以下にすることにより、針刺しの際の貫通を可能にする。その一方、隔膜部の厚さを0.01mm以上にすることにより、当該隔膜部が破断等するのを防止することができる。
【0059】
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態に係る医療用キャップを説明する。
本実施の形態に係る医療用キャップは、実施の形態1に係る医療用キャップと比較して、支持体と内栓がフランジ部の溶着により接合された構造に替えて、嵌合構造により接合された構造を採用した点が異なる。
図5は、本実施の形態に係る医療用キャップ60を説明するための断面模式図である。また、
図6は前記医療用キャップにおける弾性栓体を備えた支持体を説明するための断面模式図であって、同図(a)は支持体の内部に弾性栓体が一体的に設けられた状態を表し、同図(b)は前記弾性栓体を省略し支持体のみを表す。
図7は、前記医療用キャップにおける内栓を説明する為の断面模式図である。なお、以下に於いては、前記実施の形態の医療用キャップと同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
図5及び
図6(a)示すように、本実施の形態に係る医療用キャップ60においては、支持体61の外部壁11の内面における頂部に、圧入後の内栓71を、その状態に維持するための環状溝62が設けられている。環状溝62は、内栓71に於ける環状壁31の突条部(詳細は後述する)と嵌合可能な形状及び大きさであればよい。これにより、内栓71が支持体61の外部に押し出されるのを防止することできる。
【0061】
前記内栓71は輸液用等のバックやボトル等の容器に用いられるポート74の先端部に設けられた構成である(
図7参照)。また、前記ポート74と内栓71は相互に独立した部材を結合したものでもよく、あるいは一体的に成形されたものでもよい。
【0062】
また、前記内栓71の環状壁31に於ける底部の周縁部には、前記支持体61に於ける環状溝62と嵌合可能であり、内栓71を係止するための環状の突条部72が設けられているのが好ましい。これにより、内栓71を支持体61に装着した際に、当該内栓71が支持体61の外部に押し出されるのを防止することできる。
【0063】
本実施の形態に於いては、弾性栓体2と支持体61の接触面、より具体的には弾性栓体2の側周面23と内部壁12、及び弾性栓体2の針刺面22側の周縁部と載置部13との接触面において溶着している。これにより、針刺しの際に、弾性栓体2が脱落したり位置ズレが生じることがない。その結果、内栓71においては、弾性栓体2を接液面21側から支持するための部材の形成を省略することができる。
【0064】
内栓71の構成材料については、前述の場合と同様である。尚、内栓71には、弾性栓体2の針刺面22に対する針刺しを容易に行うとの観点から、開口しているのが好ましい。
【0065】
尚、本実施の形態に於いても、支持体61に内栓3を圧入後の状態を維持することを目的として、外部壁11の頂部に前記係止部を設け、環状壁31の底部の周縁部に、前記係止部との係止を可能にする環状の段差部を設けることが可能である。
【0066】
また、本実施の形態に係る医療用キャップは、支持体1における載置部13に環状の突条部を設け、弾性栓体2に当該突条部との嵌合を可能にする環状溝を設けてもよい。これにより、弾性栓体2の位置ズレや脱落を一層防止することができる。
【0067】
さらに、弾性栓体2の接液面21に、これを被覆するための隔膜部を備えた構成を採用することもできる。これにより、本実施の形態に於いても、弾性栓体2が薬液等と接触するのを防止することができる。隔膜部の態様や材料、厚さ等の寸法については特に限定されず、実施の形態1において述べたのと同様である。