(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部に装着されて、ハウジングと回転軸との間をシールするメカニカルシールであって、シールリングと、該シールリングに対向摺接するメイティングリングとを具備し、前記シールリングおよび前記メイティングリングの一方がハウジングに装着されたシールカバーの機内側にベローズを介して支持され、他方が回転軸と共に回転するメカニカルシールにおいて、
前記シールカバーの機外側において固定されて前記シールリングと前記メイティングリングとの摺動面にクエンチング流体を誘導する断面略L字状のバッフルスリーブを備え、
前記バッフルスリーブはフランジ部と筒状部とが前記フランジ部の内周面と前記筒状部の外周面とにおいて分割され、さらに、前記フランジ部は軸方向において2分割された構成であり、
前記筒状部の外周面と前記フランジ部の軸方向における分割面とにまたがって形成された周溝に弾性変形可能な材料からなるリング状部材が配設され、
前記分割されたフランジ部の締結により前記リング状部材が前記周溝内に圧縮された状態で装着されることを特徴とするメカニカルシール。
前記周溝は、断面形状が略正方形または略菱形であって、前記略正方形または略菱形の2組の対角のうち、一方の対角が前記フランジ部の内周面と前記筒状部の外周面との接合部の近傍に位置し、他方の対角が前記フランジ部の分割面の近傍に位置するように設けられ、前記リング状部材は、断面形状が円形、楕円形または多角形であり、前記分割されたフランジ部が締結された場合、前記周溝により圧縮される大きさであることを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール。
前記周溝は、断面形状が略凧形であって、前記略凧形の2組の対角のうち、短い対角線を有する1組の対角が前記フランジ部の内周面と前記筒状部の外周面との接合部の近傍に位置し、長い対角線を有する1組の対角が前記フランジ部の分割面の近傍に位置し、かつ、長さの長い2本の辺が外径側に位置するように設けられ、前記リング状部材は、前記周溝の前記略凧形断面の外径側の一部を除く略五角形の断面形状であり、前記分割されたフランジ部が締結された場合、前記周溝により圧縮される大きさであることを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール。
前記フランジ部の前記筒状部に対するクランプ力が、前記周溝により圧縮される前記リング状部材の材質、断面形状及び圧縮率、並びに、前記周溝の形状により変更自在であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のメカニカルシール。
【背景技術】
【0002】
従来、密封液が200℃を越えるような高温液において、冷却液によるフラッシングを行わないメカニカルシールとして、
図8に示すような高温用ベローズシール型式のメカニカルシールが知られている(以下「従来技術」という。例えば、特許文献1参照。)。
図8に示される従来技術の高温用ベローズシール型式のメカニカルシールは、回転軸50とハウジング51との間に形成した軸封部53に装着されて、回転軸50とハウジング51との間をシールするメカニカルシールであって、ハウジング51側に取り付けられるカラー54と、カラー54に連結されるベローズ55と、ベローズ55に連結されるリテーナ56と、リテーナ56に嵌合されるシールリング57と、回転軸50側に取り付けられるメイティングリング58と、カラー54の内周側に所定の間隔をおいて設けられた筒状のバッフルスリーブ59を備えている。また、スチームクエンチをシールカバー60の供給孔64からメカニカルシールの静止側内周とバッフルスリーブ59外周とで形成された隙間を流路としてシール端面部に供給し、メカニカルシール部を冷却するとともに、シール端面からにじみ漏れした液を洗浄し、排出している。
【0003】
そして、シールリング57端面の摺動トルクは、リテーナ56→ベローズ55→カラー54に伝わり、シールカバー60にボルト63で固定されたカラー54が受けている。シールリング57端面の潤滑状況の変化による円周方向の微振動(スティックスリップ)はリテーナ56→ベローズ55に伝搬する。この円周方向の微振動を抑えるために、シールカバー60にボルト63で固定されたバッフルスリーブ59がリテーナ56内周部まで伸びており、バッフルスリーブ59の外径とリテーナ最内径とを円周の部分的(多くは4等配)に微小隙間に絞ると共に、ベローズ55の内周面に当接して制振作用を有するダンパー61をバッフルスリーブ59の外周面に装着し、振動した際には、この微小隙間以上に振れないように制振作用を持たせている。
【0004】
このようなメカニカルシールにおいて、通常、カラー54、ベローズ55及びリテーナ56は例えば溶接などで接合され、また、リテーナ56にカーボンなどの摺動材料で作られたシールリング57が密封的に焼嵌めまたは圧入され、これらの部材は、予め工場等において一体的に組み立てられている。
【0005】
しかしながら、従来技術のメカニカルシールには、次のような問題があった。
シールカバー60に各種部材を装着する際、カラー54、ベローズ55、リテーナ56及びシールリング57(以下、「静止側シール部材」という。)はシールカバー60の機内側(被密封流体側)に装着されるようになっているのに対し、バッフルスリーブ59は断面形状がL字型の一体加工品であるため、シールカバー60の機外側(大気側)からしか装着できない。このため、静止側シール部材等とバッフルスリーブ59を予めプレアッセンブリすることができず、現地で組み立てざるを得なかった。また、その際、ベローズ55の内周面とバッフルスリーブ59の外面との間に装着されるダンパー61をバッフルスリーブ59に巻き付け、その後、ベローズ55を挿入するという困難な作業を現地で行わざるを得ないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、静止側シール部材、バッフルスリーブ、及びダンパー等の関連部品を工場、サービスセンター等において確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事における組立工程を少なくすることのできるメカニカルシールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のメカニカルシールは、第1に、ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部に装着されて、ハウジングと回転軸との間をシールするメカニカルシールであって、シールリングと、該シールリングに対向摺接するメイティングリングとを具備し、前記シールリングおよび前記メイティングリングの一方がハウジングに装着されたシールカバーの機内側にベローズを介して支持され、他方が回転軸と共に回転するメカニカルシールにおいて、前記シールカバーの機外側において固定されて前記シールリングと前記メイティングリングとの摺動面にクエンチング流体を誘導する断面略L字状のバッフルスリーブを備え、前記バッフルスリーブはフランジ部と筒状部とが分割された構成であり、前記フランジ部は軸方向において2分割され、前記筒状部の外周面と前記フランジ部の分割面とにまたがって形成された周溝に弾性変形可能な材料からなるリング状部材が配設され、前記分割されたフランジ部の締結により前記リング状部材が前記周溝内に圧縮された状態で装着されることを特徴としている。
この特徴によれば、工場、サービスセンターにおいて、カラー、ベローズ、リテーナ及びシールリングとバッフルスリーブの筒状部及びダンパー等の関連部品とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事における部材の組立工程を省くことができる。このため、組み込み性が向上すると共に、現場作業でのミスを低減することができる。さらに、従来、断面略L字状の一体的なバッフルスリーブを丸棒からに削り出す場合、フランジ部の「外径×筒状部の長さ」の材料が必要であり、また、丸棒断面から略L字状に加工するためには、その大部分を削る必要があり、無駄が多かったが、本発明に係るバッフルスリーブは、フランジ部と筒状部とが別の材料から形成されるため、従来技術におけるような無駄を無くすことができる。さらに、本発明のメカニカルシールではシールカバーの機外側における設置スペースを従来技術に比べて著しく小さくできるため、省スペースでの組立が可能である。さらに、フランジ部をシールカバーに固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部と筒状部との連結形状を保持することができる。このため、振動等の外乱にも十分に耐える機能を備えたバッフルスリーブを得ることができる。
【0009】
また、本発明のメカニカルシールは、第2に、第1の特徴において、前記周溝は、断面形状が略正方形または略菱形であって、前記略正方形または略菱形の2組の対角のうち、一方の対角が前記フランジ部の内周面と前記筒状部の外周面との接合部の近傍に位置し、他方の対角が前記フランジ部の分割面の近傍に位置するように設けられ、前記リング状部材は、断面形状が円形、楕円形または多角形であり、前記分割されたフランジ部が締結された場合、前記周溝により圧縮される大きさであることを特徴としている。
この特徴によれば、フランジ部をシールカバーに固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部と筒状部との連結形状を保持することができることはもちろん、周溝の加工及びリング状部材の形成を容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明のメカニカルシールは、第3に、第1の特徴において、前記周溝は、断面形状が略凧形であって、前記略凧形の2組の対角のうち、短い対角線を有する1組の対角が前記フランジ部の内周面と前記筒状部の外周面との接合部の近傍に位置し、長い対角線を有する1組の対角が前記フランジ部の分割面の近傍に位置し、かつ、長さの長い2本の辺が外径側に位置するように設けられ、前記リング状部材は、前記周溝の前記略凧形断面の外径側の一部を除く略五角形の断面形状であり、前記分割されたフランジ部が締結された場合、前記周溝により圧縮される大きさであることを特徴としている。
この特徴によれば、フランジ部をシールカバーに固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部と筒状部との連結形状を保持することができることはもちろん、リング状部材が圧縮される際に、周溝の略凧形断面の外径側の一部である逃げ部が筒状部の外周面に作用するリング状部材の圧縮反力、すなわち、クランプ力の生成を有効ならしめことができる。さらに、逃げ部の大きさ、すなわち、リング状部材の周溝に対する充填率を変更することでクランプ力を調節することができる。
【0011】
また、本発明のメカニカルシールは、第4に、第1ないし第3のいずれかの特徴において、前記リング状部材は、周方向の1箇所が切断された略C字状の形状をなしていることを特徴としている。
この特徴によれば、リング状部材が外径方向から圧縮された場合、リング状部材は容易に縮径されるので、フランジ部の筒状部に対するクランプ力を確実なものとすることができる。
【0012】
また、本発明のメカニカルシールは、第5に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、前記リング状部材は、金属、ゴムまたはプラスチックから形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、必要とされるクランプ力に応じた材料の選択ができる。
【0013】
また、本発明のメカニカルシールは、第6に、第1ないし第5のいずれかの特徴において、前記リング状部材は、中実または中空の断面を有することを特徴としている。
この特徴によれば、クランプ力の調節が可能となる。
【0014】
また、本発明のメカニカルシールは、第7に、第1ないし第6のいずれかの特徴において、前記フランジ部の前記筒状部に対するクランプ力が、前記周溝により圧縮される前記リング状部材の材質、断面形状及び圧縮率、並びに、前記周溝の形状により変更自在であることを特徴としている。
この特徴によれば、クランプ力を最適なものに設定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)シールカバーの機外側において固定されて前記シールリング及び前記ベローズ等の内周側に延在する断面略L字状のバッフルスリーブを備え、前記バッフルスリーブはフランジ部と筒状部とが分割された構成であることにより、工場、サービスセンターにおいて、カラー、ベローズ、リテーナ及びシールリングとバッフルスリーブの筒状部及びダンパー等の関連部品とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事における部材の組立工程を省くことができる。このため、組み込み性が向上すると共に、現場作業でのミスを低減することができる。さらに、従来、断面略L字状の一体的なバッフルスリーブを丸棒からに削り出す場合、フランジ部の「外径×筒状部の長さ」の材料が必要であり、また、丸棒断面から略L字状に加工するためには、その大部分を削る必要があり、無駄が多かったが、本発明に係るバッフルスリーブは、フランジ部と筒状部とが別の材料から形成されるため、従来技術におけるような無駄を無くすことができる。さらに、本発明のメカニカルシールではシールカバーの機外側における設置スペースを従来技術に比べて著しく小さくできるため、省スペースでの組立が可能である。さらに、フランジ部は軸方向において2分割され、筒状部の外周面とフランジ部の分割面とにまたがって形成された周溝に弾性変形可能な材料からなるリング状部材が配設され、分割されたフランジ部の締結によりリング状部材が周溝内に圧縮された状態で装着されるため、フランジ部をシールカバーに固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部と筒状部との連結形状を保持することができる。このため、振動等の外乱にも十分に耐える機能を備えたバッフルスリーブを得ることができる。
【0016】
(2)周溝は、断面形状が略正方形または略菱形であって、略正方形または略菱形の2組の対角のうち、一方の対角がフランジ部の内周面と筒状部の外周面との接合部の近傍に位置し、他方の対角がフランジ部の分割面の近傍に位置するように設けられ、リング状部材は、断面形状が円形、楕円形または多角形であり、分割されたフランジ部が締結された場合、周溝により圧縮される大きさであることにより、フランジ部をシールカバーに固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部と筒状部との連結形状を保持することができることはもちろん、周溝の加工及びリング状部材の形成を容易に行うことができる。
【0017】
(3)周溝は、断面形状が略凧形であって、略凧形の2組の対角のうち、短い対角線を有する1組の対角がフランジ部の内周面と筒状部の外周面との接合部の近傍に位置し、長い対角線を有する1組の対角がフランジ部の分割面の近傍に位置し、かつ、長さの長い2本の辺が外径側に位置するように設けられ、リング状部材は、周溝の略凧形断面の外径側の一部を除く略五角形の断面形状であり、分割されたフランジ部が締結された場合、周溝により圧縮される大きさであることにより、フランジ部をシールカバーに固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部と筒状部との連結形状を保持することができることはもちろん、リング状部材が圧縮される際に、周溝の略凧形断面の外径側の一部である逃げ部が筒状部の外周面に作用するリング状部材の圧縮反力、すなわち、クランプ力の生成を有効ならしめことができる。さらに、逃げ部の大きさ、すなわち、リング状部材の周溝に対する充填率を変更することでクランプ力を調節することができる。
【0018】
(4)リング状部材は、周方向の1箇所が切断された略C字状の形状をなしていることにより、リング状部材が外径方向から圧縮された場合、リング状部材は容易に縮径されるので、フランジ部の筒状部に対するクランプ力を確実なものとすることができる。
(5)リング状部材は、金属、ゴムまたはプラスチックから形成されることにより、必要とされるクランプ力に応じた材料の選択ができる。
(6)リング状部材は、中実または中空の断面を有することにより、クランプ力の調節が可能となる。
【0019】
(7)フランジ部の前記筒状部に対するクランプ力が、前記周溝により圧縮される前記リング状部材の材質、断面形状及び圧縮率、並びに、前記周溝の形状により変更自在であることにより、クランプ力を最適なものに設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るメカニカルシールを実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0022】
〔実施形態1〕
図1及び2を参照しながら、本発明の実施形態1に係るメカニカルシールを説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るメカニカルシールの一例を示す縦断面図であり、
図1において、参照符号1は、石油精製、石油化学および製鉄化学等において200℃を越えるような高温液、たとえば、石油精製プラントの減圧蒸留設備の熱油を扱う機器、例えば、ポンプ等における軸封部のハウジング、参照符号2はハウジング1にボルト等(図示省略)の固定手段により装着されるシールカバーである。また、図中左側が機内側、図中右側が機外側(大気側)である。
【0023】
図1に示すメカニカルシールは、回転軸3とハウジング1との間に形成した軸封部4に装着されて、回転軸3とハウジング1との間をシールするメカニカルシールであって、シールカバー2の機内側に装着されたカラー6と、該カラー6に連結されるベローズ7と、該ベローズ7に連結されるリテーナ8と、該リテーナ8の端面に焼嵌めまたは圧入されたシールリング9と、回転軸3側に取り付けられるメイティングリング10とを備えている。
【0024】
カラー6は、金属から形成される筒状をなすものであって、環状のガスケット15を介してシールカバー2の機内側に取り付けられている。
ベローズ7は、打抜き加工等によって波形環状に形成した金属製のダイアフラム板を複数枚一列に並べて、隣接するダイアフラム板の外径部間及び内径部間をガス溶接等によって交互に連結して、全体を蛇腹筒状に形成したものであって、一端がカラー6側にガス溶接等によって一体に連結されるようになっている。
【0025】
リテーナ8は、金属から形成され筒状をなすものであって、ベローズ7の他端がガス溶接等によって一体に連結されるようになっている。リテーナ8の材料はベローズ7の材料と同一か、あるいは熱膨張係数がほぼ近似した異種材料からなっている。
通常、リテーナ8、ベローズ7およびカラー6を溶接により一体物として製作後、これらの全表面に特殊窒化クロムや窒化チタンなどの10μm以下の厚みの耐食・耐摩耗性のイオンプレーティングを均一に施工する。これにより、リテーナ8、ベローズ7およびカラー6の全表面が均一な耐食性をもつので、耐食性の低い材料で構成されていても、イオンプレーティングの耐食性が全体の耐食性となり、材料選定の制限が大幅に少なくなる。
【0026】
シールリング9は、炭化珪素、カーボン、その他のセラミックス等から形成される筒状をなすものであって、メイティングリング10との摺動面において回転軸3の軸線に垂直なシール面16を形成している。
【0027】
シールリング9は、リテーナ8の端面に焼嵌めまたは圧入されており、シールリング9の反メイティングリング側のシール端面の面幅はメイティングリング10と摺動するシール端面の面幅とほぼ同じかそれよりもやや狭くしてある。
【0028】
シールリング9、リテーナ8、ベローズ7及びカラー6の内周側には所定の間隔をおいて筒状のバッフルスリーブ17が取り付けられ、このバッフルスリーブ17によってシールカバー2に設けられたクエンチング液供給孔35から供給されるクエンチング液がシール面16に確実に導かれるようになっている。バッフルスリーブ17は、ステンレスなどの硬い材料で製作されるか、硬質クロムメッキ、特殊窒化クロム、あるいは窒化チタンなどの10μm以下の厚みの耐食・耐摩耗性のイオンプレーティングが施されている。
【0029】
リテーナ8の内周側には1個または複数個の切り欠き(図示省略)が設けられている。 一方、シールカバー2に固定されたバッフルスリーブ17の先端が、シールリング9のシール端面側の近くまで伸びて、リテーナ8の切り欠きと微小隙間を持って係合する雄型の歯部(図示省略)が形成され、リテーナ8の切り欠きとバッフルスリーブ17の歯部とが軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18が形成されている。この構造により、シールリング9のシール端面の摺動トルクはバッフルスリーブ17が受けることになり、ベローズ7に摺動トルクが伝わらないため、シール面の潤滑不安定によりシールリング9のシール端面にスティックスリップが発生しても、ベローズ7がスティックスリップの影響を受けることがない。
【0030】
バッフルスリーブ17の外周面とベローズ7の内周面との間に、ベローズ7に振動が起きた場合でもベローズ7の振れ止めを行うためのダンパー19が配設されている。ダンパー19はリング形状、例えば、Cリング形状をしており、バッフルスリーブ17の外周面に形成された環状溝20に装着される。このため、ベローズの疲労を先延ばしにでき、耐久性を確保できる。また、ダンパー19の外周部及びリテーナ8の内周部には、1個または複数個の切り欠きが設けられ、クエンチング液供給孔35から供給されたクエンチング液をバッフルスリーブ17によってシール面16に誘導することができ、シール面16からの微小な漏れ液を洗浄排出することができる。
【0031】
図2は、本発明の実施形態1に係るメカニカルシールの他の例を示す縦断面図であり、リテーナ8の端面とシールリング9の端面とがラップジョイントをもって密封的に接触する点で
図1に示すメカニカルシールと相違するがその他の構成は
図1と同じであり、重複する説明は省略する。
図2に示すメカニカルシールは、回転軸3とハウジング1との間に形成した軸封部4に装着されて、回転軸3とハウジング1との間をシールするメカニカルシールであって、シールカバー2の機内側に装着されたカラー6と、該カラー6に連結されるベローズ7と、該ベローズ7に連結されるリテーナ11と、該リテーナ11端面とラップジョイントをもって密封的に接触するシールリング12と、回転軸3側に取り付けられるメイティングリング10とを備えている。
【0032】
シールリング12は両端面にラッピング仕上げされたシール端面を持っており、シールリング12とリテーナ11とは分離した構造となっており、リテーナ11のシールリング12側端面もラッピング仕上げされたシール端面を持ち、両者の密封は、ラッピング面を合わせて密封するラップジョイント構造を採用している。シールリング12とリテーナ11とは分離した構造となっているため、高温雰囲気でもメイティングリング10と摺動するシールリング12のシール端面の平面度は、熱膨張差による影響を受けないので、密封性が保たれる。また、リテーナ11自体の圧力変形や熱変形にも影響されることがない。さらに、焼嵌めや圧入、その後の熱処理などの特殊工程の必要がなく、それに伴いジグ類も不要となるので、コスト低減および工数低減が図れる。また、シールリング12の交換が容易となる。
【0033】
リテーナ11のシール側端面とシールリング12のシール端面とはベローズ7のばね荷重および流体圧による押し付け力で互いに密封的に接触するが、リテーナ11のシール端面は、シールリング12が回転しないので回転による摺動はしない、ほぼ静止の密封面である。
シールリング12の内周側に切り欠きを設け、バッフルスリーブ17の歯部とが軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18が形成されている。
また、リテーナ11及びシールリング12の外周面において外径を部分的に縮径する環状の凹部14が形成され、この凹部14にリテーナ11とシールリング12との芯出しをするための芯出しケース13が装着されている。
【0034】
図2に示すメカニカルシールは、シールリング12とリテーナ11とは分離した構造となっていること、シールリング12とリテーナ11との密封はラップジョイント構造となっていること、および、シールリング12とバッフルスリーブ17とは軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造となっていることから、シールリング12のシール端面の摺動トルクはバッフルスリーブ17が受けることになり、ベローズ7に摺動トルクが伝わらないため、シール面の潤滑不安定によりシールリング12のシール端面にスティックスリップが発生しても、ラップジョイント部で自在に滑ることにより、ベローズ7がスティックスリップの影響を受けることがない。
【0035】
図1及び2に示すメカニカルシールに用いられるバッフルスリーブ17は、
図3に示すように、フランジ部21と筒状部22とから構成され、断面略L字状をなしており、フランジ部21と筒状部22とは分割された構成である。詳述すると、フランジ部21と筒状部22とは別部材からなり、フランジ部21の内周面23が筒状部22の基端の外周面24に嵌合するように形成されている。また、
図1及び2に示すように、フランジ部21はシールカバー2の機外側に設けられたフランジ部嵌合用の凹部25に嵌入され、ボルト29によりシールカバー2に固定されるように構成されている。
筒状部22の先端部にはリテーナ8の切り欠きと軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18(
図2に示すメカニカルシールにおいてはシールリング12の切り欠きと軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18)が形成され、また、筒状部22の外周面にはベローズ7の内周面との間でベローズ7の振れ止めを行うためのダンパー19を配設するための環状溝20が形成されている。
【0036】
また、
図3に示すように、バッフルスリーブ17のフランジ部21は軸方向において機内側のフランジ部21−1と機外側のフランジ部21−2に2分割され、ボルト孔28が周方向に複数設けられている。また、筒状部22の外周面とフランジ部21の分割面Cとにまたがって形成された周溝26に弾性変形可能な材料からなるリング状部材27が配設されるようになっている。このリング状部材27は、周方向に連続した環状をなしているものの他、周方向の1箇所が切断された略C字状の形状をなしているものでもよい。略C字状の形状をなしたリング状部材の場合、該リング状部材が外径方向から圧縮された場合、リング状部材は容易に縮径されるので、フランジ部の筒状部に対するクランプ力を確実なものとすることができる。
【0037】
周溝26は、断面形状が略正方形であって、この略正方形の2組の対角のうち、一方の対角がフランジ部21の内周面23と筒状部22の外周面24との接合部の近傍に位置し、他方の対角がフランジ部21の分割面Cの近傍に位置するように設けられている。詳述すると、機内側のフランジ部21−1及び機外側のフランジ部21−2のそれぞれの内周側、かつ、分割面C側に位置するコーナ部が略三角形に切り欠かれて切欠部26−1が形成され、この切欠部26−1に対向する筒状部22の外周面24に位置する部分が略三角形に切り欠かれて切欠部26−2が形成され、全体として略正方形の周溝26が形成されている。
なお、上記「略正方形」における「略」は、製造時における誤差等により正確な正方形でない場合も包含されるという趣旨であり、以下の記述における「略」も同趣旨である。
図3では、周溝26は断面形状が略正方形の場合が示されているが、これに限らず、略菱形であってもよい。
【0038】
また、リング状部材27は、断面形状が円形であり、分割されたフランジ部21−1及び21−2がボルト29により締結された場合、周溝26により圧縮される大きさを有し、フランジ部21−1及び21−2の締結によりリング部材27は周溝26により圧縮された状態で装着される。
図3では、リング状部材27の断面形状が円形の場合が示されているが、これに限らず、楕円形または多角形であってもよい。
【0039】
リング状部材27は、例えば、金属、ゴムまたはプラスチックから形成される。
また、リング状部材27の断面は、中実に限らず中空であってもよい。
フランジ部21の筒状部22に対するクランプ力は、周溝26により圧縮されるリング状部材27の材質、断面形状及び圧縮率、並びに、周溝26の形状により変更自在である。例えば、リング状部材27が硬いほど、あるいは、リング状部材27の圧縮率が大きいほど、クランプ力は大きくなる。また、例えば、フランジ部21−1及び21−2の締結によりリング状部材27に対する半径方向の変形率を大きくするような周溝26の形状であれば、クランプ力は大きくなる。
【0040】
図3において、まず、バッフルスリーブ17の筒状部22の外周面24に機内側のフランジ部21−1が嵌合され、続いて、周溝26にリング状部材27が配設され、最後に機外側のフランジ部21−2が嵌合されるが、機外側のフランジ部21−2が嵌合された状態で、ボルト29が締め込まれると、機内側のフランジ部21−1と機外側のフランジ部21−2とは分割面Cが密着するように締結される。この締結の際、リング状部材27は周溝26の切欠部26−1及び26−2から中心に向かう斜め方向からの外力を受け圧縮されるが、この圧縮に伴い、筒状部22に対して径方向の力、すなわち、フランジ部21が筒状部22をクランプする力が発生し、フランジ部21と筒状部22とはしまりばめの状態となる。このため、フランジ部21と筒状部22とは一体的にシールカバー2に固定される。
【0041】
〔実施形態2〕
図4に基づいて、本発明の実施形態2に係るメカニカルシールのバッフルスリーブを説明する。
実施形態2に係るメカニカルシールは、バッフルスリーブに設けられる周溝及びリング状部材の断面形状において実施形態1と相違するが、その他は実施形態1と同じであり、
図4において、
図3と同じ符号は同じ部材を指している。以下、実施形態1と相違する部分について主に説明する。
【0042】
図4において、バッフルスリーブ37は、フランジ部38と筒状部39とから構成され、断面略L字状をなしており、フランジ部38と筒状部39とは分割された構成であり、また、フランジ部38は軸方向において機内側のフランジ部38−1と機外側のフランジ部38−2に2分割され、筒状部39の外周面とフランジ部38の分割面Cとにまたがって形成された周溝33に弾性変形可能な材料からなるリング部材32が配設されるようになっている点で、基本的構造は実施形態1のバッフルスリーブ17と同じである。
【0043】
しかし、
図4に示すように、周溝33は、断面形状が略凧形であって、略凧形の2組の対角のうち、短い対角線を有する1組の対角がフランジ部の内周面30と筒状部39の外周面31との接合部の近傍に位置し、長い対角線を有する1組の対角がフランジ部38の分割面Cの近傍に位置し、かつ、長さの長い2本の辺が外径側に位置するように設けられている。詳述すると、機内側のフランジ部38−1及び機外側のフランジ部38−2のそれぞれの内周側、かつ、分割面C側に位置するコーナ部が略三角形に切り欠かれて切欠部33−1が形成され、この切欠部33−1に対向する筒状部39の外周面31に位置する部分が略三角形に切り欠かれて切欠部33−2が形成され、全体として略凧形の周溝33が形成されている。
なお、本明細書において「凧形」とは、隣り合った2本の辺の長さが等しい組が2組ある四角形のことを指すものであり、該「凧形」では対角線は直交し、異なる長さを持つ2辺によってつくられる2つの向かい合う角の大きさは互いに等しい。
【0044】
リング状部材32は、周溝33の略凧形断面の外径側の一部、すなわち、外径側に位置する略三角形状の逃げ部36を除く略五角形の断面形状をしている。
図4においては、周溝33の外径側に位置する長さの長い2本の辺で形成される溝部がフランジ部38のボルト孔28の位置まで延びているため、リング状部材32がフランジ部38のボルト孔28に嵌入されるボルト29に抵触しないように、ボルト孔28より内径側の周溝33の部分を充填するような形状に形成されている。逃げ部36はリング状部材32が圧縮される際に、筒状部39の外周面31に作用するリング状部材32の圧縮反力、すなわち、クランプ力の生成を有効ならしめるものである。例えば、逃げ部36を極端に大きくするとリング状部材32の圧縮率は大きくなるが、筒状部39の外周面31に作用するクランプ力は小さくなるため好ましくない。逆に、逃げ部36を極端に小さくするとリング状部材32の圧縮時の収縮率が制限され有効なクランプ力が生成されない恐れがある。
逃げ部36の大きさ、すなわち、リング状部材32の周溝33に対する充填率を変更することでクランプ力を調節することができる。
【0045】
略五角形の断面形状をしたリング状部材32は、分割されたフランジ部38−1及び38−2がボルト29により締結された場合、周溝33により圧縮される大きさを有し、フランジ部38−1及び38−2の締結によりリング部材32が周溝33により圧縮された状態で装着される。
リング状部材32は、例えば、金属、ゴムまたはプラスチックから形成される。
また、リング状部材32の断面は、中実に限らず中空であってもよい。
【0046】
図4において、まず、バッフルスリーブ37の筒状部39の外周面31に機内側のフランジ部38−1が嵌合され、続いて、周溝33にリング状部材32が配設され、最後に機外側のフランジ部38−2が嵌合されるが、機外側のフランジ部38−2が嵌合された状態で、ボルト29が締め込まれると、機内側のフランジ部38−1と機外側のフランジ部38−2とは分割面Cが密着するように締結される。この締結の際、リング状部材32は周溝33の切欠部33−1及び33−2から中心に向かう斜め方向からの外力を受け圧縮されるが、この圧縮に伴い、筒状部39の外周面31に対して径方向の力、すなわち、フランジ部38が筒状部39をクランプする力が発生し、フランジ部38と筒状部39とはしまりばめの状態となる。このため、フランジ部38と筒状部39とは一体的にシールカバー2に固定される。
【0047】
次に、
図5ないし
図7を参照しながら、本発明の実施形態に係るメカニカルシール、例えば、
図1に示すメカニカルシールと従来技術におけるメカニカルシールとの組立工程を対比して説明する。
【0048】
(1)プレアッセンブリ
本発明のメカニカルシールでは、工場、サービスセンター(以下、「工場等」という。)において、カラー6、ベローズ7、リテーナ8及びシールリング9とバッフルスリーブ17の筒状部22及びダンパー19とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリする(以下、プレアッセンブリされた部材を「プレアッセンブリ部材」という。)ため、現地工事でプレアッセンブリ部材の組立工程を省くことができる。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、カラー54、ベローズ55、リテーナ56及びシールリング57等の静止側シール部材と断面略L字状で一体型のバッフルスリーブ59とは、シールカバー60の反対側からしか装着できないため、静止側シール部材とバッフルスリーブ59を予めプレアッセンブリすることができない。
(2)現地等における初期状態
本発明のメカニカルシールでは、シールカバー2の機内側にプレアッセンブリ部材及びガスケット15が配置され、機外側にバッフルスリーブ17の分割されたフランジ部21−1及び21−2と、リング状部材27、並びにボルト29が配置される。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、シールカバー60の機内側に静止側シール部材、ダンパー61及びガスケット62が配置され、機外側に一体型のバッフルスリーブ59及びボルト63が配置される。
説明図からわかるように、本発明のメカニカルシールにおける設置スペースL’は従来技術のメカニカルシールにおける設置スペースLに比べて著しく小さい。このように、本発明のメカニカルシールでは、省スペースでの組立が可能である。
(3)二次シール装着
本発明のメカニカルシール及び従来技術のメカニカルシール共に、それぞれ二次シール部材であるガスケット15、ガスケット62がシールカバー側に装着される
(4)スリーブの挿入
従来技術のメカニカルシールでは、シールカバー60の機外側に配置された一体型のバッフルスリーブ59がシールカバー60に挿入される。これに対して、本発明のメカニカルシールでは、バッフルスリーブ17の筒状部22はプレアッセンブリされているので、シールカバー2へのバッフルスリーブ17の挿入は不要である。
(5)関連部品の装着
従来技術のメカニカルシールでは、関連部品であるダンパー61をシールカバー60の機内側からバッフルスリーブ59に巻き付け、その後、静止側シール部材をバッフルスリーブ59の外径側に挿入するが、この作業は若干の困難を伴う。これに対して、本発明のメカニカルシールでは、関連部品であるダンパー19はプレアッセンブリされているので、バッフルスリーブ17の筒状部22に対するダンパー19の装着作業は不要であり、装着ミス、装着漏れなどはなく、設計した性能を確保することができる。
(6)シールの装着
本発明のメカニカルシールでは、バッフルスリーブ17の筒状部22及びダンパー19を含むプレアッセンブリ部材を機内側からシールカバー2に直接装着する。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、ダンパー61をバッフルスリーブ59に巻き付けた状態を維持しつつ、静止側シール部材をバッフルスリーブ59の外径側に挿入するため、正確に装着することが困難である。
(7)ボルト締結
本発明のメカニカルシールでは、バッフルスリーブ17の機内側のフランジ部21−1、リング状部材27及び機外側のフランジ部21−2をシールカバー2の凹部25に位置合わせしながら順次嵌入し、ボルト29を締結する。ボルト29が締め込まれると、フランジ部21−1及び21−2は分割面Cが密着するように締結され、その際、リング状部材27が圧縮され、フランジ部21が筒状部22をクランプした状態、すなわち、しまりばめの状態となる。このため、フランジ部21と筒状部22とは一体的にシールカバー2に固定される。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、バッフルスリーブ59のフランジ部を介してシールカバー60にボルト63を締結する。
【0049】
本発明の実施形態に係るメカニカルシールの効果は以下のとおりである。
(1)本発明に係るバッフルスリーブ17、37はフランジ部21、38と筒状部22、39とが分割された構成であるため、工場等において、カラー6、ベローズ7、リテーナ8及びシールリング9とバッフルスリーブ17、37の筒状部22、39及びダンパー19とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事で部材の組立工程を省くことができる。このため、組み込み性が向上すると共に、現場作業でのミスを低減することができる。さらに、従来、断面略L字状の一体的なバッフルスリーブを丸棒から削り出す場合、「フランジ部の外径×筒状部の長さ」の材料が必要であり、また、丸棒から断面略L字状に加工するためには、その大部分を削る必要があり、無駄が多かったが、本発明に係るバッフルスリーブ17、37は、フランジ部21、38と筒状部22、39とを別の材料から形成するため従来技術におけるような無駄を無くすことができる。
(2)本発明のメカニカルシールではシールカバー2の機外側における設置スペースを従来技術に比べて著しく小さくできるため、省スペースでの組立が可能である。
(3)本発明に係るバッフルスリーブ17、37では、フランジ部21、38は軸方向において2分割され、筒状部22、39の外周面とフランジ部21、38の分割面とにまたがって形成された周溝26、33に弾性変形可能な材料からなるリング状部材27、32が配設され、分割されたフランジ部21−1、21−2、38−1、38−2の締結によりリング状部材27、32が周溝26、33により圧縮された状態で装着されるため、フランジ部21、38をシールカバー2に固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部21、38と筒状部22、39との連結形状を保持することができる。このため、振動等の外乱にも十分に耐える機能を備えたバッフルスリーブを得ることができる。
(4)本発明の実施形態1に係るバッフルスリーブ17の周溝26は、断面形状が略正方形または略菱形であって、略正方形または略菱形の2組の対角のうち、一方の対角がフランジ部21−1、21−2の内周面と筒状部22の外周面24との接合部の近傍に位置し、他方の対角がフランジ部21−1、21−2の分割面Cの近傍に位置するように設けられ、リング状部材27は、断面形状が円形、楕円形または多角形であり、分割されたフランジ部21−1、21−2が締結された場合、周溝26により圧縮される大きさであるため、フランジ部21をシールカバー2に固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部21と筒状部22との連結形状を保持することができることはもちろん、周溝26の加工及びリング状部材27の形成を容易に行うことができる。
(5)本発明の実施形態2に係るバッフルスリーブ37の周溝33は、断面形状が略凧形であって、略凧形の2組の対角のうち、短い対角線を有する1組の対角がフランジ部38−1、38−2の内周面と筒状部39の外周面31との接合部の近傍に位置し、長い対角線を有する1組の対角がフランジ部38−1、38−2の分割面Cの近傍に位置し、かつ、長さの長い2本の辺が外径側に位置するように設けられ、リング状部材32は、周溝33の略凧形断面の外径側の一部を除く略五角形の断面形状であり、分割されたフランジ部38−1、38−2が締結された場合、周溝33により圧縮される大きさであるため、フランジ部38をシールカバー2に固定すると、径方向のクランプ力が作用し、一体型のバッフルスリーブと同等にフランジ部38と筒状部39との連結形状を保持することができることはもちろん、リング状部材32が圧縮される際に、逃げ部36が筒状部39の外周面31に作用するリング状部材32の圧縮反力、すなわち、クランプ力の生成を有効ならしめことができる。さらに、周溝33の略凧形断面の外径側の一部である逃げ部36の大きさ、すなわち、リング状部材32の周溝33に対する充填率を変更することでクランプ力を調節することができる。
(6)リング状部材27、32は、周方向の1箇所が切断された略C字状の形状をなしていることにより、リング状部材27、32が外径方向から圧縮された場合、リング状部材27、32は容易に縮径されるので、フランジ部21、38の筒状部22、39に対するクランプ力を確実なものとすることができる。
(7)本発明に係るバッフルスリーブ17、37では、フランジ部21、38の筒状部22、39に対するクランプ力が、周溝26、33により圧縮されるリング状部材27、32の材質、断面形状及び圧縮率、並びに、周溝26、33の形状により変更自在であるため、クランプ力を最適なものに設定することができる。