(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基は、前記抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのリジン残基のアミノ基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
前記複合体は、前記デキストラン誘導体あるいは前記抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントに結合した少なくとも1つの追跡分子をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体。
前記デキストラン誘導体は、前記デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成されるキャッピングされた少なくとも1つのアルデヒド基を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合体。
前記デキストラン誘導体が、前記デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成された複数のアルデヒド基を含み、かつ前記デキストラン誘導体の1つまたは複数のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成された実質的に全ての前記アルデヒド基がキャッピングされている、請求項6に記載の複合体。
BSHは、ステップb)において過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよびUV光からなる群から選択されるラジカル開始剤の存在下でステップa)から得られる前記アルケニル化デキストランと反応する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
前記BSH−デキストランの前記少なくとも1つのD−グルコピラノシル残基が、ステップc)において過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸および酢酸鉛(IV)からなる群から選択される酸化剤を用いて酸化的に開裂される、請求項8〜11のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
前記方法が、ステップc)から得られる前記酸化的に開裂したBSH−デキストランまたはステップd)から得られる前記複合体を追跡分子と反応させるステップをさらに含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
前記方法が、ステップc)から得られる前記酸化的に開裂したBSH−デキストランまたはステップd)から得られる前記複合体の未反応のアルデヒド基をキャッピングするステップe)をさらに含む、請求項8〜13のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
前記未反応のアルデヒド基が、エタノールアミン、リシン、グリシンまたはトリスなどの親水性のキャッピング剤を用いてキャッピングされる、請求項14に記載の複合体。
前記デキストランが、約3から約2000kDa、または約10から約100kDa、または約5から約200kDa、または約10から約250kDaの範囲の分子質量を有する、請求項8〜15のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
前記酸化的に開裂したBSH−デキストランは、前記酸化的に開裂したBSH−デキストランおよび前記抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントをステップd)において約6から8のpHを有する水性リン酸緩衝液中で室温においてインキュベートすることにより前記抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントと反応する、請求項8〜16のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントおよび少なくとも1つのデキストラン誘導体であって、
デキストラン誘導体が、少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位の炭素2、3または4から選択される少なくとも1つの炭素が式
−O−(CH
2)
n−S−B
12H
112−
(式中、nは3から10の範囲である)
の置換基によって置換された、少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位を含み、かつ
デキストラン誘導体は、デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される少なくとも1つのアルデヒド基と抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基との間の反応によって形成される結合を介して抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントに結合する、
デキストラン誘導体を含む複合体に関する。
【0016】
複合体は、ホウ素中性子捕捉療法における使用に適する。「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)は、非放射性ホウ素−10が低エネルギー熱中性子を照射されて生物学的に有害なアルファ粒子およびリチウム−7原子核を生じる、標的放射線療法を指すと理解されるべきである。非放射性ホウ素−10は、腫瘍局在複合体などの腫瘍局在薬剤内にそれを組み込むことにより標的とされ得る。
【0017】
本明細書において「EGFR1」は、配列番号1に記載される配列を有するヒト上皮成長因子受容体1(EGFR1)を指すと理解されるべきである。
【0018】
「抗EGFR1抗体」は、EGFR1に特異的に結合する抗体を指すと理解されるべきである。「特異的に結合する」と言う語は、結合相手の可能性がある複数の異なるタンパク質のプールから、EGFR1のみが結合するまたは有意に結合するという程度まで、EGFR1と任意の他のタンパク質とを区別する抗体の能力を指す。単なる例として、特異的な結合および/または速度論的測定は、例えばBiacore装置上で表面プラズモン共鳴に基づく方法を利用することによって、ELISAなどの免疫学的手法によってまたは例えばタンパク質マイクロアレイによってアッセイしてよい。
【0019】
「そのEGFR1結合フラグメント」は、EGFR1に特異的に結合する能力がある抗EGFR1抗体の任意のフラグメントを指すと理解されるべきである。
【0020】
一実施形態において、抗EGFR1抗体は、セツキシマブ、イムガツズマブ(imgatuzumab)、マツズマブ、ニモツズマブ、ネシツムマブ、パニツムマブまたはザルツムマブである。
【0021】
一実施形態において、抗EGFR1抗体は、セツキシマブである。
【0022】
一実施形態において、セツキシマブは、配列番号2および3に記載される配列を有する。
【0023】
一実施形態において、セツキシマブは、配列番号2および3に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0024】
一実施形態において、抗EGFR1抗体は、ニモツズマブである。
【0025】
一実施形態において、ニモツズマブは、配列番号4および5に記載される配列を有する。
【0026】
一実施形態において、ニモツズマブは、配列番号4および5に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0027】
抗EGFR1抗体は、例えばscFv、単一ドメイン抗体、Fv、VHH抗体、二重特異性抗体、タンデム二重特異性抗体、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Db、dAb−Fc、taFv、scDb、dAb
2、DVD−Ig、Bs(scFv)
4−IgG、taFv−Fc、scFv−Fc−scFv、Db−Fc、scDb−Fc、scDb−C
H3またはdAb−Fc−dAbで有り得る。さらには、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントは、一価単一特異性、多価単一特異性、二価単一特異性または多価多重特異性の形態で存在し得る。
【0028】
一実施形態において、抗EGFR1抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。この文脈において、「ヒト抗体」と言う語は、当技術分野において通常用いられるように、ヒト由来の配列からフレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)の両方が生じる変異性の領域を有する抗体を意味すると理解される。この文脈において、「ヒト化抗体」と言う語は、当技術分野において通常用いられるように、ヒト由来の抗体のCDRからの残基が所望の特異性、親和性および能力を有する非人類(マウス、ラットまたはウサギなど)のCDRからの残基で置換されている抗体を意味すると理解される。
【0029】
一実施形態において、抗EGFR1抗体フラグメントは、セツキシマブのFabフラグメントを含む。一実施形態において、抗EGFR1 Fabフラグメントは、配列番号6および3に記載される配列を有する。一実施形態において、抗EGFR1 Fabフラグメントは、配列番号6および3に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0030】
一実施形態において、抗EGFR1抗体は、セツキシマブのF(ab’)2フラグメントを含む。一実施形態において、抗EGFR1 F(ab’)2フラグメントは、配列番号7および3に記載される配列を有する。一実施形態において、抗EGFR1 F(ab’)2フラグメントは、配列番号7および3に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0031】
「デキストラン」は、直鎖がD−グルコピラノシル単位間のα−1,6グリコシド結合からなる、様々な長さの鎖から構成される分岐グルカンを指すと理解されるべきである。分岐は、α−1,3グリコシド結合、ならびに、より少ない程度に、α−1,2および/またはα−1,4グリコシド結合を介して結合される。デキストラン分子の直鎖の一部が、下記の略図に描かれる。
【化1】
【0032】
「D−グルコピラノシル単位」は、単一のD−グルコピラノシル分子を指すと理解されるべきである。デキストランはしたがって、複数のD−グルコピラノシル単位を含む。デキストランにおいて、それぞれのD−グルコピラノシル単位は、少なくとも1つの他のD−グルコピラノシル単位にα−1,6グリコシド結合を介して、α−1,3グリコシド結合を介してまたは両方を介して結合する。
【0033】
デキストランのそれぞれのD−グルコピラノシル単位は、下記の略図において1から6の番号を付けられた、6個の炭素原子を含む。略図は、α−1,6グリコシド結合を介して2つの他のD−グルコピラノシル単位(図示せず)に結合した単一のD−グルコピラノシル単位を示す。
【化2】
【0034】
炭素2、3および4は、遊離ヒドロキシル基を含み得る。D−グルコピラノシル単位の炭素3がエーテル結合を介して第2のD−グルコピラノシル単位の炭素1に結合した、α−1,3グリコシド結合を介して第2のD−グルコピラノシル単位に結合したD−グルコピラノシル単位では、炭素2および4が、遊離ヒドロキシル基によって置換され得る。D−グルコピラノシル単位の炭素2または4がエーテル結合を介して第2のD−グルコピラノシル単位の炭素1に結合した、α−1,2またはα−1,4グリコシド結合を介して第2のD−グルコピラノシル単位に結合したD−グルコピラノシル単位では、それぞれ、炭素3および4または2および3が、遊離ヒドロキシル基によって置換され得る。
【0035】
炭水化物命名法は、実質的にIUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる勧告に従う(例えばCarbohydrate Res.1998,312,167;Carbohydrate Res.1997, 297,1;Eur.J. Biochem.1998,257,293)。
【0036】
「デキストラン誘導体」と言う語は、少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位の炭素2、3または4から選択される少なくとも1つの炭素が式
−O−(CH
2)
n−S−B
12H
112−
(式中、nは3から10の範囲である)
の置換基によって置換されたデキストランであって、かつ
デキストラン誘導体は、デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される少なくとも1つのアルデヒド基と抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基との間の反応によって形成される結合を介して抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントに結合する、デキストランを指すと理解されるべきである。デキストラン誘導体は、例えば下記に述べるような、基本デキストラン構造への他の修飾をさらに含んでいてよい。
【0037】
「BSH」、「B
12H
11−SH」および「Na
2B
12H
11SH」は、ナトリウムメルカプトドデカボラートおよび水素化ホウ素スルフヒドリルの別名でも知られる、ボロカプテイトナトリウムを指すと理解されるべきである。「B
12H
112−」はしたがって、BSHの水素化ホウ素部分を指す。
【0038】
少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位の炭素2、3および4から選択される1つまたは複数の、すなわち1つ、2つまたは3つの炭素は、式−O−(CH
2)
n−S−B
12H
112−の置換基によって置換されていてよい。
【0039】
一実施形態において、nは、3、4、5、6、7、8、9または10である。一実施形態において、nは、3から4の範囲内、または3から5の範囲内、または3から6の範囲内、または3から7の範囲内、または3から8の範囲内、または3から9の範囲内である。
【0040】
デキストランのD−グルコピラノシル単位は、ヒドロキシル基によって置換された2つの隣接する炭素間の結合の酸化開裂によって開裂され得る。酸化開裂は、隣接のジオール、すなわち2つの(遊離した)ヒドロキシル基が隣接位を占めるD−グルコピラノシル単位を開裂する。炭素2、3および4が遊離ヒドロキシル基を含有するD−グルコピラノシル単位はしたがって、炭素2と3または炭素3と4との間で酸化的に開裂され得る。したがって炭素2と3との間の結合および炭素3と4との間の結合から選択される結合は、酸化的に開裂され得る。デキストランのD−グルコピラノシル単位は、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸および酢酸鉛(IV)などの酸化剤または隣接のジオールを酸化的に開裂する能力がある任意の他の酸化剤を用いる酸化開裂によって開裂され得る。
【0041】
D−グルコピラノシル単位の酸化開裂は、酸化開裂によって形成される鎖のそれぞれの端部に1つのアルデヒド基がある、2つのアルデヒド基を形成する。複合体において、アルデヒド基は、原則として遊離アルデヒド基であってよい。しかしながら、複合体における遊離アルデヒド基の存在は、典型的には望ましくない。したがって遊離アルデヒド基は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基、または例えば追跡分子を用いてキャッピングするかまたは反応させてよい。
【0042】
デキストラン誘導体は、デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される少なくとも1つのアルデヒド基と抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基との間の反応によって形成される結合を介して抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントに結合する。
【0043】
デキストラン誘導体は、デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される少なくとも1つのアルデヒド基と抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基との間の反応によって形成される基を介しても抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントに結合し得る。
【0044】
酸化開裂によって形成されるアルデヒド基は、水溶液などの溶液中のアミノ基と容易に反応する。しかし、得られる基または形成される結合は、多様な場合があり必ずしも容易には予測および/または特徴付けられない。デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される少なくとも1つのアルデヒド基と抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基との間の反応は、例えばシッフ塩基の形成をもたらし得る。したがってそれを介してデキストラン誘導体が抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントに結合する基は、例えばシッフ塩基(イミン)または還元されたシッフ塩基(第二級アミン)で有り得る。
【0045】
一実施形態において、デキストラン誘導体は、約3から約2000kDaの範囲内の分子質量を有する。この文脈において、デキストラン誘導体の分子質量は、デキストランおよびその置換基を含有するデキストラン誘導体の分子質量を含むが、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの分子質量は含まないものとして理解されるべきである。一実施形態において、デキストラン誘導体は、約30から約300kDaの範囲内の分子質量を有する。
【0046】
一実施形態において、複合体は、約10から約300個または約20から約150個の式−O−(CH
2)
n−S−B
12H
112−の置換基を含む。
【0047】
一実施形態において、複合体は、約300個のホウ素原子(300B)、約800個のホウ素原子(800B)、約900個のホウ素原子(900B)または約1200個のホウ素原子を含む。例えば「900B」は、1モルのタンパク質当たり、BSH分子中に約900モルのホウ素原子を担持する、1モルのデキストランを担持する複合体を指す。
【0048】
抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントは、典型的にはN末端アミン基および/またはリジン残基のアミノ基などの少なくとも1つのアミノ基を含有する。
【0049】
一実施形態において、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのリジン残基のアミノ基である。
【0050】
一実施形態において、複合体は、デキストラン誘導体あるいは抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントに結合した少なくとも1つの追跡分子をさらに含む。
【0051】
「追跡分子」は、検出可能な分子を指す。こうした検出可能な分子は、
14Cなどの放射性同位体、放射性同位体を含む化合物、放射性核種、放射性核種を含む化合物、蛍光標識分子(例えばFITC、TRITC、AlexaおよびCy色素など)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)などのキレート剤、またはガドリニウム−DTPA(ガドリニウム−ジエチレントリアミン五酢酸)などのMRI活性分子であってよい。追跡分子のデキストラン誘導体あるいは抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントへの結合を達成するための手順は、当技術分野によく知られている。追跡分子は、複合体が患者に投与されて特異的細胞を標的とした後に複合体の位置を特定することを可能にしてよく、このようにして、低エネルギー熱中性子照射を標的とされる複合体の位置に向けることができる。
【0052】
一実施形態において、追跡分子は、デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される少なくとも1つのアルデヒド基と追跡分子の基との間の反応によって形成される結合または基を介してデキストラン誘導体に結合する。適した追跡分子の基は、例えばアミノ基で有り得る。
【0053】
デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される1つまたは複数のアルデヒド基は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基あるいは追跡分子と反応しないことがあり得る。
【0054】
一実施形態において、デキストラン誘導体は、デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成されるキャッピングされた少なくとも1つのアルデヒド基を含む。
【0055】
少なくとも1つのアルデヒド基は、還元シッフ塩基などの、適した基によってキャッピングされてよい。
【0056】
少なくとも1つのアルデヒド基は、少なくとも1つのアルデヒド基とエタノールアミン、リシン、グリシンまたはトリスなどの親水性のキャッピング剤との間の反応によって形成される基によってもキャッピングされ得る。
【0057】
一実施形態において、エタノールアミンは、
14Cを含む。
【0058】
キャッピングは、NaCNBH
3などの、還元剤を用いて安定化してよい。したがって還元シッフ塩基などのキャッピング基が、形成され得る。
【0059】
一実施形態において、デキストラン誘導体は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基あるいは追跡分子と反応せずかつキャッピングされているデキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される少なくとも1つのアルデヒド基を含む。
【0060】
一実施形態において、デキストラン誘導体の1つまたは複数のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される実質的に全てのアルデヒド基が、キャッピングされている。
【0061】
一実施形態において、デキストラン誘導体は、デキストラン誘導体の1つまたは複数のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される実質的に全てのアルデヒド基がキャッピングされている、デキストラン誘導体のD−グルコピラノシル単位の酸化開裂によって形成される複数のアルデヒド基を含む。
【0062】
一実施形態において、デキストラン誘導体の少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位の炭素2、3または4から選択される少なくとも1つの炭素は、式
−O−(CH
2)
mCH=CH
2
(式中、mは1から8の範囲である)
の置換基によって置換されている。こうした実施形態は典型的には望ましくないが、前記置換基がBSHと反応しなかった場合には、副生物として発生し得る。
【0063】
一実施形態において、複合体は、
a)デキストランの少なくとも1つのヒドロキシル基をアルケニル化してアルケニル化デキストランを取得するステップと、
b)ボロカプテイトナトリウム(BSH)をステップa)から得られるアルケニル化デキストランと反応させてBSH−デキストランを取得するステップと、
c)アルデヒド基が形成されるようにBSH−デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル残基を酸化的に開裂するステップと、
d)ステップc)から得られる酸化的に開裂したBSH−デキストランを抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントと反応させて複合体を取得するステップと
を含む方法によって取得可能である。
【0064】
本発明は、
a)デキストランの少なくとも1つのヒドロキシル基をアルケニル化してアルケニル化デキストランを取得するステップと、
b)ボロカプテイトナトリウム(BSH)をステップa)から得られるアルケニル化デキストランと反応させてBSH−デキストランを取得するステップと、
c)アルデヒド基が形成されるようにBSH−デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル残基を酸化的に開裂するステップと、
d)ステップc)から得られる酸化的に開裂したBSH−デキストランを抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントと反応させて複合体を取得するステップと
を含む方法によって取得可能な複合体にも関する。
【0065】
一実施形態において、デキストランは、約3から約2000kDa、または約10から約100kDa、または約5から約200kDa、または約10から約250kDaの範囲の分子質量を有する。前記範囲の分子質量を有するデキストランは、ステップa)〜d)に従っていないデキストランを指すと理解されるべきである。
【0066】
この文脈において、「アルケニル化」または「アルケニル化する」と言う語は、アルケニルエーテルを与えるデキストランのD−グルコピラノシル単位へのアルケニル基の移動を指すと理解されるべきである。言い換えれば、デキストランのD−グルコピラノシル単位の少なくとも1つのヒドロキシル基が、アルケニルオキシ基になる。
【0067】
ステップa)において、デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位の炭素2、3または4に結合したヒドロキシル基の1つまたは複数が、アルケニル化反応において反応し得る。デキストランのD−グルコピラノシル単位の1つまたは複数、あるいは多数が、アルケニル化され得る。
【0068】
一実施形態において、デキストランは、ステップa)においてアルケニル化剤であって、式
X−(CH
2)
mCH=CH
2
(式中、mは1から8の範囲であり、かつXはBr、ClまたはIである)
に従う構造を有するアルケニル化剤を用いてアルケニル化される。
【0069】
一実施形態において、mは、1、2、3、4、5、6、7または8である。一実施形態において、mは、1から2の範囲内、または1から3の範囲内、または1から4の範囲内、または1から5の範囲内、または1から6の範囲内、または1から7の範囲内である。
【0070】
一実施形態において、アルケニル化剤は、臭化アリルである。
【0071】
一実施形態において、ステップa)から得られるアルケニル化デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位の炭素2、3または4から選択される少なくとも1つの炭素は、式
−O−(CH
2)
mCH=CH
2、
(式中、mは1から8の範囲である)
の置換基によって置換される。
【0072】
一実施形態において、mは、1、2、3、4、5、6、7または8である。一実施形態において、mは、1から2の範囲内、または1から3の範囲内、または1から4の範囲内、または1から5の範囲内、または1から6の範囲内、または1から7の範囲内である。
【0073】
ステップb)において、BSHのスルフヒドリル基は、アルケニル化デキストランのアルケニル基と反応してBSH−デキストランを形成してチオエーテルを与え得る。1つまたは複数のBSH分子が、アルケニル化デキストランと反応し得る。したがって、ステップb)から得られるBSH−デキストランは、複数のBSH部分(すなわち式−S−B
12H
112−の基)を含有し得る。BSHのスルフヒドリル基は、2つ以上のアルケニル基を含有する単一のアルケニル化D−グルコピラノシル単位のアルケニル基または2つ以上のアルケニル化D−グルコピラノシル単位のアルケニル基と反応し得る。
【0074】
したがってステップb)から得られるBSH−デキストランは、少なくとも1つのD−グルコピラノシル単位の炭素2、3または4から選択される少なくとも1つの炭素が式
−O−(CH
2)
n−S−B
12H
112−
(式中、nは3から10の範囲である)
の置換基によって置換されたデキストラン誘導体であり得る。
【0075】
一実施形態において、ステップb)から得られるBSH−デキストランは、約10から約100個または約20から100個の置換基あるいは約10から約300個または約20から約150個の式−O−(CH
2)
n−S−B
12H
112−(式中、nは3から10の範囲である)を含む。
【0076】
一実施形態において、BSHは、ステップb)においてラジカル開始剤の存在下でステップa)から得られるアルケニル化デキストランと反応する。ラジカル開始剤は、BSHのスルフヒドリル基(1つまたは複数)間およびアルケニル化デキストランのアルケニル基(1つまたは複数)との反応を触媒する能力がある。
【0077】
この文脈において、「ラジカル開始剤」は、温和な条件下でラジカル種を生成する能力がありかつラジカル反応を促進する薬品を指すと理解されるべきである。「ラジカル開始剤」と言う語は、UV(紫外線)光も指し得る。UV光照射は、例えば適した光開始剤の存在下で、ラジカルを発生する能力がある。適したラジカル開始剤には、これに限定されないが、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムなどの無機過酸化物、有機過酸化物およびUV光が含まれる。
【0078】
一実施形態において、BSHは、ステップb)において過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよびUV光からなる群から選択されるラジカル開始剤の存在下でステップa)から得られるアルケニル化デキストランと反応する。
【0079】
ステップb)において、ステップa)から得られるアルケニル化デキストランに対するBSHの重量比またはモル比は、(デキストラン誘導体の)デキストラン部分当たりのBSH部分の数(すなわち式−O−(CH
2)
n−S−B
12H
112−の置換基の数)が異なる複合体を得るために適切に選択してよい。BSH−デキストランのデキストラン部分当たりのBSH部分の数は、例えば実施例2に記載のように核磁気共鳴によってまたは実施例9に記載のように誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によって測定され得る。
【0080】
一実施形態において、ステップb)において存在するアルケニル化デキストランに対するBSHの比率は、1:5から2:1の範囲、または重量で1:4から1:1の範囲、または重量で1:2から3:4の範囲である。典型的には、アルケニル化デキストランに対するBSHの比率が高いほど、BSH−デキストランのデキストラン部分当たりのBSH部分の数が多い。
【0081】
過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムなどの、ラジカル開始剤の比率も、ステップb)において異なっていてよい。一実施形態において、BSHおよび/またはステップb)において存在するデキストランに対するラジカル開始剤の比率は、1:5から2:1の範囲、または重量で1:4から1:1の範囲、または重量で1:2から3:4の範囲である。
【0082】
一実施形態において、ステップb)におけるアルケニル化デキストランに対するラジカル開始剤の比率は、1:5から2:1の範囲、または重量で1:4から1:1の範囲、または重量で1:2から3:4の範囲である。
【0083】
上述の通り、炭素2と3との間の結合および炭素3と4との間の結合から選択される結合は、ステップc)において酸化的に開裂され得る。酸化開裂では、D−グルコピラノシル環は、隣接のジオール間で開かれて、2つのアルデヒド基を残す。ステップc)から得られる酸化的に開裂したBSH−デキストランのアルデヒド基は、複合体を得るために抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントと反応してよい。アルデヒド基は、アミノ基などの適した基と反応してよい。
【0084】
BSH−デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル残基は、原則として、遊離ヒドロキシル基によって置換された2つの隣接の炭素間のD−グルコピラノシル単位を酸化的に開裂する能力がある任意の酸化剤を用いて酸化的に開裂され得る。酸化剤も、BSH−デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル残基を実質的に特異的に酸化的に開裂できるように選択してよい。こうした酸化剤は、BSH−デキストランの他の基または部分を酸化しない場合がある。
【0085】
一実施形態において、BSH−デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル残基は、ステップc)において過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸および酢酸鉛(IV)からなる群から選択される酸化剤を用いて酸化的に開裂される。
【0086】
一実施形態において、BSH−デキストランの少なくとも1つのD−グルコピラノシル残基は、ステップc)において水溶液中で酸化的に開裂される。
【0087】
一実施形態において、方法は、ステップc)から得られる酸化的に開裂したBSH−デキストランまたはステップd)から得られる複合体を追跡分子と反応させるステップをさらに含む。
【0088】
この文脈において、追跡分子は、本書に記載されている任意の追跡分子であってよい。
【0089】
追跡分子は、ステップc)から得られる酸化的に開裂したBSH−デキストランの少なくとも1つのアルデヒド基と反応し得る。少なくとも1つのアルデヒド基と反応し得る追跡分子の適した基は、例えばアミノ基で有り得る。
【0090】
一実施形態において、方法は、ステップc)から得られる酸化的に開裂したBSH−デキストランまたはステップd)から得られる複合体の未反応のアルデヒド基をキャッピングするステップe)をさらに含む。
【0091】
一実施形態において、未反応のアルデヒド基は、エタノールアミン、リシン、グリシンまたはトリスなどの親水性のキャッピング剤を用いてキャッピングされる。
【0092】
一実施形態において、親水性のキャッピング剤は、エタノールアミン、リシン、グリシンおよびトリスからなる群から選択される。
【0093】
一実施形態において、
14Cを含むエタノールアミンは、追跡分子である。
【0094】
一実施形態において、ステップa)、b)、c)およびd)から選択される1つまたは複数のステップは、水溶液中で実行される。適した水溶液は、例えば約6から8のpHを有する水性リン酸緩衝液であってよい。
【0095】
一実施形態において、ステップa)〜d)の全ては、水溶液中で実行される。
【0096】
抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントは、典型的にはN末端アミン基および/またはリジン残基のアミノ基などの少なくとも1つのアミノ基を含有する。ステップd)において、ステップc)から得られる酸化的に開裂したBSH−デキストランのアルデヒド基は、したがって抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの少なくとも1つのアミノ基と反応し得る。
【0097】
一実施形態において、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのアミノ基は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントのリジン残基のアミノ基である。
【0098】
一実施形態において、酸化的に開裂したBSH−デキストランは、酸化的に開裂したBSH−デキストランおよび抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントをステップd)において室温で約6から8のpHを有する水性リン酸緩衝液中でインキュベートすることによって抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントと反応する。
【0099】
複合体は、例えば実施例4に記載のように、例えばゲルろ過によって、精製してよい。
【0100】
本発明は、さらに原核宿主細胞における抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの産生に関する。他のポリペプチド産生系と比較して、細菌、特に大腸菌(E.coli)は、多数の独特な利点を提供する。使用される原料物質(すなわち細菌細胞)は、安価かつ成長が容易であり、したがって産生のコストを削減する。原核宿主は、例えば、哺乳類の細胞よりもずっと早く成長し、遺伝子操作のより迅速な分析を可能にする。より短い世代時間および拡大の容易性も、細菌発酵を大量タンパク質産生のためのより魅力的手段にする。大腸菌(E.coli)を含めた多くの細菌種のゲノム構造および生物活性は、良く研究されていて広範囲の適したベクターが利用可能であり、望ましい抗体の発現をより簡便にしている。原核生物系における抗体または抗体フラグメント発現は、様々な規模で実行され得る。振とうフラスコ培養(2〜5リットルの範囲)は、典型的には5mg/リットルより少ない産生物(例えば抗体フラグメント)を発生するのに対して、発酵系においては50〜300mg/リットル規模が得られ得る。
【0101】
さらには、原核宿主細胞は、アグリコシル化(aglycosylated)抗−EGFR抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの産生を可能にし得る。
【0102】
一実施形態において、原核宿主細胞は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの
i)軽鎖可変領域および
ii)重鎖可変領域
をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む。「1つまたは複数のポリヌクレオチド」と言う語は、1種または複数の配列を介して直接または間接的に、共有結合していても良くしていなくても良い2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド分子を指し得る。例えば、2つ以上のポリヌクレオチドが、1つの発現カセットまたはベクターに含まれ得る。一例として、2つ以上のポリヌクレオチドは、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方を含む融合タンパク質をコードするように、直接または間接的に、融合していてよい。これらは、2つの分離した発現カセットまたはベクターにも含まれ得る。「1つまたは複数のポリヌクレオチド」と言う語は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドあるいはポリヌクレオチドストレッチを含む単一の、連続的なポリヌクレオチド分子も指し得る。
【0103】
一実施形態において、宿主細胞は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントをコードする本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態によるポリヌクレオチドを含む。宿主細胞は、抗EGFR1抗体またはEGFR1結合フラグメントを集合的にコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含み得る。ベクターは、例えば、発現ベクターなどの組み換えベクターなど任意の種類であってよい。
【0104】
種々の原核宿主細胞のいずれも用いてよい。
【0105】
一実施形態において、原核宿主細胞は、大腸菌(E.coli)細胞である。
【0106】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、大腸菌(E.coli)細胞などの宿主細胞のために最適化されたコドンである。
【0107】
一実施形態において、原核宿主細胞は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方をコードする単一の連続的なポリヌクレオチドを含む。こうした連続的なポリヌクレオチドは、ジシストロニックまたはポリシストロニックであってよい。
【0108】
一実施形態において、原核宿主細胞は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの重鎖可変領域をコードする別のポリヌクレオチドを含む。
【0109】
一実施形態において、軽鎖可変領域は、シグナルペプチドが先頭に付加している。ポリヌクレオチドはしたがって、軽鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドおよび軽鎖可変領域の両方をコードする。シグナルペプチドは、軽鎖可変領域の直前に付加していてもよく、またはシグナルペプチドと軽鎖可変領域との間に配列ストレッチがあってもよい。シグナルペプチドは、gIII、malE、phoA、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択され得る。シグナルペプチドは、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群からも選択され得る。これらのシグナルペプチドは、大腸菌(E.coli)などの原核宿主細胞における抗体またはフラグメントの産生において特に高い収率を可能にし得る。
【0110】
一実施形態において、重鎖可変領域は、シグナルペプチドが先頭に付加している。シグナルペプチドは、gIII、malE、phoA、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択され得る。シグナルペプチドは、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群からも選択され得る。
【0111】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、シグナルペプチドが先頭に付加している。
【0112】
一実施形態において、軽鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチド以外である。
【0113】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、独立にgIII、malE、phoA、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0114】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、独立にompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0115】
一実施形態において、軽鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドと同一であって、かつシグナルペプチドは、gIII、malE、phoA、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0116】
一実施形態において、軽鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドと同一であって、かつシグナルペプチドは、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0117】
一実施形態において、軽鎖可変領域は、pelBシグナルペプチドが先頭に付加しかつ重鎖可変領域は、ompAシグナルペプチドが先頭に付加している。
【0118】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方とも、stIIシグナルペプチドが先頭に付加している。
【0119】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号8に記載される配列および配列番号9に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0120】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号8に記載される配列または配列番号8と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%一致する配列、および配列番号9に記載される配列または配列番号9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0121】
一実施形態において、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8に記載される配列を含むかまたはそれらからなりかつ重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号9に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0122】
一実施形態において、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8に記載される配列、または配列番号8と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号9に記載される配列、または配列番号9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0123】
一実施形態において、原核宿主細胞は、抗体の抗EGFR1結合フラグメントの
i)軽鎖および
ii)重鎖
をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む。
【0124】
一実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、FabまたはscFvである抗EGFR1結合フラグメントをコードする。
【0125】
一実施形態において、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号10に記載される配列を含むかまたはそれらからなり、かつ重鎖配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号11に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0126】
一実施形態において、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号10に記載される配列、または配列番号10と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ重鎖配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号11に記載される配列または配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0127】
一実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、配列番号10に記載される軽鎖配列および配列番号11に記載される重鎖配列を含むかまたはそれらからなる。
【0128】
一実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、配列番号10に記載される軽鎖配列または配列番号10と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列、および配列番号11に記載される重鎖配列または配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0129】
一実施形態において、宿主細胞は、配列番号12に記載される配列または配列番号12と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなるポリヌクレオチドを含む。
【0130】
一実施形態において、宿主細胞は、配列番号13に記載される配列または配列番号13と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなるポリヌクレオチドを含む。
【0131】
一実施形態において、宿主細胞は、シャペロンタンパク質および/またはシャペロンタンパク質をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む。シャペロンタンパク質は、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、FkpAおよび/またはDsbG)などの、原核シャペロンタンパク質であってよい。
【0132】
一実施形態において、シャペロンタンパク質は、宿主細胞内で過剰発現している。
【0133】
一実施形態において、シャペロンタンパク質は、DsbAおよび/またはDsbCである。
【0134】
一実施形態において、シャペロンタンパク質は、DnaK、DnaJ、GrpE、Skp、FkpA、GroEL、およびGroESからなる群から選択される。
【0135】
一実施形態において、シャペロンタンパク質は、Skpである。
【0136】
本明細書で使用する場合「原核宿主細胞」という語は、組み換えプラスミドまたはベクターなどの、外因性ポリヌクレオチドの導入によって遺伝子改変されている、または遺伝子改変される能力がある原核細胞を指すことが意図される。こうした語は、特定の対象である細胞だけではなくこうした細胞の子孫も指すことが意図されることを理解すべきである。突然変異または環境の影響のいずれかが原因で後に続く世代においてある種の変異が発生し得るので、こうした子孫は、実際には、親細胞と一致しない場合があるが、それでもやはり本明細書で使用する場合「原核宿主細胞」という語の範囲内に含まれる。
【0137】
原核宿主細胞は、例えば発現またはクローニングベクターにおいて、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントをコードする上記のポリヌクレオチドでトランスフェクトおよび好ましくは形質転換されて、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の抗体もしくは抗体フラグメント配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて変性された従来型の栄養培地において培養される。原核宿主と共に用いるために適したプロモーターには、PhoAプロモーター、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系ならびにtacまたはtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。しかしながら、細菌(他の既知の細菌など)において機能的な他のプロモーターは、同様に適する。それらのヌクレオチド配列は公表されており、それによって熟練作業者が対象とする軽鎖および重鎖をコードするシストロンにリンカーまたはアダプターを用いてそれらを作動可能に結合して(Siebenlistら、(1980) Cell 20: 269)任意の必要とされる制限部位を供給することを可能にする。
【0138】
一実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、T7、T5およびRhamからなる群から独立に選択されるプロモーターによって駆動される、すなわち作動可能に結合される。
【0139】
一実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、プロモーターT7によって駆動される。抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントを産生するために用いられる原核宿主細胞は、一般に「Molecular Cloning」 laboratory manual (Michael GreenおよびJosepHSambrook、第4版、Cold Spring Harbour Laboratory Press、2012年)に記載されるように培養してよい。本発明の抗体を発現するために適した原核宿主細胞には、グラム陰性またはグラム陽性生物などの、古細菌および真正細菌が含まれる。有用な細菌の例には、エシェリキア属(例えば、大腸菌(E.coli))、桿菌(例えば、B.subtilis)、腸内細菌、シュードモナス属種(例えば、P.aeruginosa)、ネズミチフス菌、セラチア菌、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ属またはパラコッカス属が含まれる。一実施形態において、グラム陰性細胞が用いられる。一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、本発明のための宿主として用いられる。大腸菌(E.coli)株の例には、W3110株(Bachmann、Cellular and Molecular Biology、第2巻(ワシントンD.C.:米国微生物学会、1987年)、1190〜1219頁、ATCC Deposit No. 27,325)および遺伝子型W3110ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 Δomp TΔ(nmpc−fepE) degP41 kanR(米国特許第5,639,635号)を有する33D3株を含めたそれらの誘導体ならびに63C1株および64B4株が含まれる。他の株およびそれらの誘導体、例えばE.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coli、1776(ATCC 31,537)およびE.coli RV308(ATCC 31,608)も適する。これらの例は、限定ではなく例示である。適切な細菌を選択するために細菌の細胞におけるレプリコンの再製可能性を考慮することが一般に必要で有り得る。例えば、大腸菌(E.coli)種は、レプリコンを供給するためにpBR322、pBR325、pACYC 177、またはpKN410などの良く知られたプラスミドが用いられる場合に宿主として適切に用いられ得る。典型的には宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌してよく、かつ追加のプロテアーゼ阻害剤は望ましくは細胞培養に組み込まれ得る。
【0140】
一実施形態において、宿主細胞は、1種または複数のタンパク質分解酵素が欠損している。
【0141】
一実施形態において、タンパク質分解酵素は、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、およびLonからなる群から選択される。
【0142】
形質転換後、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの産生に用いられた原核細胞は、当技術分野において既知でありかつ選択された宿主細胞の培養に適した培地中で育てられる。適した培地の例には、Luria broth(LB)、Terrific broth(TB)ならびに酵母抽出物、大豆加水分解物および他の植物加水分解物などの栄養補給剤を加えた最小合成培地が含まれる。一部の実施形態において、培地は、発現ベクターを含有する原核細胞の成長を選択的に可能にするために発現ベクターの構造に基づいて選択された選択剤も含有する。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の成長のために培地に加えられる。炭素、窒素および無機リン酸塩の供給源以外の任意の必要な補給剤も、単独でまたは別の補給剤または複合窒素供給源などの培地との混合物として導入されて適切な濃度で含まれていてよい。場合によっては培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトールおよびジチオスレイトールからなる群から選択される1種または複数の還元剤を含有してよい。
【0143】
原核宿主細胞は、適した温度で培養される。大腸菌(E.coli)成長のために、例えば、好ましい温度は、約20℃から約39℃の範囲である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5から約9の範囲の任意のpHであってよい。大腸菌(E.coli)のためには、pHは、好ましくは約6.8から約7.4、およびより好ましくは約7.0である。発現ベクターにおいて誘導性プロモーターが用いられる場合、抗EGFR1抗体またはEGFR1結合フラグメントタンパク質発現は、プロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。
【0144】
一実施形態において、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントは、原核宿主細胞のペリプラズムへ分泌されかつそこから回収される。タンパク質回収は典型的には、一般に浸透圧衝撃、音波処理または溶解などの手段により、微生物を破壊することを伴う。一旦細胞が破壊されると、細胞片または細胞全体は、遠心分離またはろ過によって取り出され得る。タンパク質は、例えば、Fabフラグメントの精製に適したアフィニティー樹脂クロマトグラフィーまたはプロテインLカラムによって、さらに精製してもよい。あるいは、タンパク質は、培養培地に移されてその中で単離してもよい。細胞は、ろ過される培養および培養上清から取り出して産生したタンパク質のさらなる精製のために濃縮してよい。発現したポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロットアッセイなどの一般的な既知の方法を用いてさらに単離および特定してよい。
【0145】
本発明の一態様において、抗EGFR1抗体またはEGFR1結合フラグメント産生は、発酵法によって大量に行われる。種々の大規模流加発酵手順が、組み換えタンパク質の産生のために利用可能である。大規模発酵は、少なくとも500リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および養分、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー供給源)を分散させるために撹拌羽根を使用する。小規模発酵は、一般には容積が約100リットル以下の発酵槽における発酵を指し、約1リットルから約100リットルの範囲であり得る。
【0146】
発酵法においては、タンパク質発現の誘導は、典型的には細胞が適した条件下で成長した後に開始されて細胞の段階が早期定常期である、所望の密度、例えば、約180〜220のOD
550まで行われる。採用されるベクター構造に従って、当技術分野において知られかつ上述されているような、種々の誘導物質を用いてよい。細胞は、誘導に先立ってより短い期間成長させて良い。細胞は、通常約12〜50時間誘導されるが、より長いまたはより短い誘導時間を用いてもよい。
【0147】
抗EGFR1抗体またはEGFR1結合フラグメントの産生収率および品質を改善するために、種々の発酵条件を変更してよい。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切な集合およびフォールディングを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、および/またはDsbG)、SkpまたはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルシス、トランス−イソメラーゼ)などのシャペロンタンパク質を過剰発現させる追加のベクターを、宿主原核細胞を同時形質転換するために用いてよい。シャペロンタンパク質は、適切なフォールディングおよび細菌宿主細胞において産生される異種タンパク質の溶解性を促進することが実証されている。Chenら、(1999)J.Biol.Chem. 274:19601〜19605、Georgiouら、米国特許第6,083,715号、Georgiouら、米国特許第6,027,888号、BothmannおよびPluckthun(2000)J.Biol.Chem. 275:17100〜17105、RammおよびPluckthun、(2000)J.Biol.Chem. 275:17106〜17113、Arieら、(2001)Mol.Microbiol.39:199〜210。
【0148】
一実施形態において、DnaK/DnaJ/GrpE、Skp、Skp/FkpA、GroEL/GroESなどのシャペロンは、大腸菌(E.coli)などの細菌宿主細胞において発現する。
【0149】
発現した抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの(特にタンパク質分解感受性であるもの)タンパク質分解を最小化するために、タンパク質分解酵素が欠損しているある種の宿主株を用いてよい。例えば、宿主細胞株は、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびそれらの組み合わせなどの既知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子における遺伝子突然変異(1種または複数)を生じさせるために改変してもよい。一部の大腸菌(E.coli)プロテアーゼ欠損株は、入手可能であり、例えば、Jolyら、(1998)、supra、Georgiouら、米国特許第5,264,365号、Georgiou、米国特許第5,508,192号、Haraら、Microbial Drug Resistance、2:63〜72(1996)に記載されている。
【0150】
一実施形態において、タンパク質分解酵素が欠損しておりかつ1種または複数のシャペロンタンパク質を過剰発現しているプラスミドで形質転換された大腸菌(E.coli)株が、本発明の発現系において宿主細胞として用いられる。
【0151】
抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの精製は、当技術分野において承認されている方法を用いて達成してよい。以下の手順(免疫親和性で分留またはイオン交換カラム、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカまたはDEAEなどの陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、および例えばSephadex G−75を用いるゲルろ過)は、適した精製手順の例示である。
【0152】
一実施形態において、固相に固定化されたプロテインAは、抗EGFR1抗体の免疫親和性精製に用いられる。
【0153】
一実施形態において、固相に固定化されたプロテインLは、本発明の抗EGFR1抗体フラグメントの免疫親和性精製に用いられる。
【0154】
精製の第1ステップとして、上述のような細胞培養から導かれる調製物は、プロテインAまたはプロテインLが固定化された固相に適用されて抗EGFR1抗体のプロテインAへの特異的な結合、またはFabフラグメントなどの抗EGFR1抗体フラグメントのプロテインLへの特異的な結合を可能にする。次いで固相は、固相に非特異的に結合した汚染物質を除去するために洗浄される。最後に抗体または抗体フラグメントを、溶離によって固相から回収する。
【0155】
一実施形態において、軽鎖可変領域は、pelBシグナルペプチドが先頭に付加しかつ重鎖可変領域は、ompAシグナルペプチドが先頭に付加し、宿主細胞は、シャペロンタンパク質Skpおよび/またはシャペロンタンパク質Skpをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ宿主細胞は、タンパク質分解酵素LonおよびOmpTが欠損している。
【0156】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、stIIシグナルペプチドが先頭に付加し、宿主細胞は、シャペロンタンパク質Skpおよび/またはシャペロンタンパク質Skpをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ宿主細胞は、タンパク質分解酵素LonおよびOmpTが欠損している。
【0157】
抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの
i)軽鎖可変領域および
ii)重鎖可変領域
をコードするポリヌクレオチドも、開示される。
【0158】
「ポリヌクレオチド」と言う語は、この文脈において1つまたは複数の配列を介して直接または間接的に共有結合していてもよくしていなくてもよい1つ、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド分子を指し得る。例えば、2つ以上のポリヌクレオチドが、1つの発現カセットまたはベクターに含まれ得る。一例として、2つ以上のポリヌクレオチドは、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方を含む融合タンパク質をコードするように、直接または間接的に、融合していてよい。これらは、2つの分離した発現カセットまたはベクターにも含まれ得る。「ポリヌクレオチド」と言う語は、抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントの軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドストレッチを含む単一の、連続的なポリヌクレオチド分子も指し得る。ポリヌクレオチドは、ジシストロニックまたはポリシストロニックであってよい。
【0159】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞のために最適化されたコドンである。宿主細胞は、大腸菌(E.coli)細胞などの原核細胞であってよい。
【0160】
一実施形態において、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8に記載される配列または配列番号8と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。一実施形態において、重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号9に記載される配列または配列番号9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0161】
一実施形態において、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8に記載される配列を含むかまたはそれらからなりかつ重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号9に記載される配列を含むかまたはそれらからなる。
【0162】
一実施形態において、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8に記載される配列、または配列番号8と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号9に記載される配列、または配列番号9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0163】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、抗体の抗EGFR1結合フラグメントの
i)軽鎖および
ii)重鎖
をコードする。
【0164】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、FabまたはscFvである抗EGFR1結合フラグメントをコードする。
【0165】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号10に記載される軽鎖配列、または配列番号10と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0166】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号11に記載される重鎖配列、または配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0167】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号10に記載される軽鎖配列および配列番号11に記載される重鎖配列を含むかまたはそれらからなる。
【0168】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号10に記載される軽鎖配列、または配列番号10と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列、および配列番号11に記載される重鎖配列、または配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0169】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号12に記載される配列、または配列番号12と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0170】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号13に記載される配列、または配列番号13と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなる。
【0171】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、シグナルペプチドが先頭に付加している。ポリヌクレオチドはしたがって、シグナルペプチドおよび軽鎖可変領域、ならびにシグナルペプチドおよび重鎖可変領域の両方をコードする。2つのシグナルペプチドは、互いに独立に選択してよく、または同一のシグナルペプチドであってよい。
【0172】
一実施形態において、軽鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチド以外である。
【0173】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、独立にgIII、malE、phoA、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0174】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、独立にompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0175】
一実施形態において、軽鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドと同一であって、かつシグナルペプチドは、gIII、malE、phoA、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0176】
一実施形態において、軽鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドは、重鎖可変領域の先頭に付加しているシグナルペプチドと同一であって、かつシグナルペプチドは、ompA、pelB、stIIおよびstIIからなる群から選択される。
【0177】
一実施形態において、軽鎖可変領域は、pelBシグナルペプチドが先頭に付加しかつ重鎖可変領域は、ompAシグナルペプチドが先頭に付加している。
【0178】
一実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方とも、stIIシグナルペプチドが先頭に付加している。
【0179】
ポリヌクレオチドは、作動可能に結合してもよく、すなわちプロモーターによって駆動されるか、またはプロモーターを含む。プロモーターは、ポリヌクレオチドの効率的な発現を可能にし得る。プロモーターは、誘導性プロモーターであってもよく、それによってポリヌクレオチドの誘導性発現を可能にする。
【0180】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、T7、T5およびRhamからなる群から選択されるプロモーターによって駆動される、すなわち作動可能に結合する、またはそれを含む。
【0181】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモーターT7によって駆動されるかまたはそれを含む。一実施形態において、原核宿主細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、または少なくとも500mg/Lの抗EGFR1抗体または抗EGFR1抗体のEGFR1結合フラグメントを産生する。一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、もしくは少なくとも500mg/Lの抗EGFR1抗体または抗EGFR1抗体のEGFR1結合フラグメントを産生する。
【0182】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、または少なくとも500mg/Lの抗EGFR1 Fabを産生する。
【0183】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、または少なくとも500mg/Lの抗EGFR1 scFvを産生する。
【0184】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、配列番号8に記載されるポリヌクレオチドまたは配列番号8と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列、および配列番号9に記載される配列または配列番号9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、もしくは少なくとも500mg/Lの抗EGFR1抗体または抗EGFR1抗体のEGFR1結合フラグメントを産生する。
【0185】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、配列番号8に記載されるポリヌクレオチドまたは配列番号8と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列、および配列番号9に記載される配列または配列番号9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、もしくは少なくとも500mg/Lの抗EGFR1 Fabまたは抗EGFR1 scFvを産生する。
【0186】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、配列番号8に記載されるポリヌクレオチドおよび配列番号9に記載される配列を含むかまたはそれらからなりかつ大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、もしくは少なくとも500mg/Lの抗EGFR1 Fabまたは抗EGFR1 scFvを産生する。
【0187】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、配列番号10に記載されるポリヌクレオチド、または配列番号10と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列、および配列番号11に記載される重鎖配列または配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、もしくは少なくとも500mg/Lの抗EGFR1抗体または抗EGFR1抗体のEGFR1結合フラグメントを産生する。
【0188】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、配列番号10に記載されるポリヌクレオチド、または配列番号10と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列、および配列番号11に記載される重鎖配列、または配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、または少なくとも500mg/Lの抗EGFR1 Fabを産生する。
【0189】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、配列番号12に記載されるポリヌクレオチド、または配列番号12と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、または少なくとも500mg/Lの抗EGFR1 scFvを産生する。
【0190】
一実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞は、配列番号13に記載されるポリヌクレオチド、または配列番号13と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%一致する配列を含むかあるいはそれらからなり、かつ大腸菌(E.coli)細胞は、少なくとも20mg/L、少なくとも30mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、または少なくとも500mg/Lの抗EGFR1 scFvを産生する。
【0191】
本発明は、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体を含む医薬組成物にさらに関する。
【0192】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでいてよい。適した薬学的に許容可能な担体の例は、当技術分野においてよく知られており例えばリン酸緩衝食塩水、水、油/水エマルション、湿潤剤、およびリポソームが含まれ得る。こうした担体を含む組成物は、当技術分野においてよく知られている方法によって配合され得る。医薬組成物は、賦形剤、添加剤、防腐剤、同時に投与される他の医薬組成物、および同類のものなどの他の成分をさらに含んでいてよい。
【0193】
一実施形態において、医薬組成物は、1つまたは複数の本発明の実施形態による有効量の複合体を含む。
【0194】
一実施形態において、医薬組成物は、1つまたは複数の本発明の実施形態による治療的有効量の複合体を含む。
【0195】
複合体の「治療的有効量」または「有効量」という語は、がん細胞が中性子放射で衝撃される場合またはBNCTを受ける場合にがん細胞の成長を調節するおよび/または患者の疾患を治療するための用法量を指すと理解されるべきである。治療的有効量は、患者の年齢、体重、性別、食餌および医学的状態、疾患の重症度、ならびに使用される特定の複合体の活性、効能、薬物動態学的および毒物学特徴などの薬理学的考慮事項を含めた、種々の要因に従って選択してよい。治療的有効量は、Physicians Desk Reference 2004などの、標準的な医療テキストを参照することによっても決定され得る。患者は、男性または女性であってよく、かつ乳幼児、子供または大人であってよい。
【0196】
「治療」または「治療する」という語は、病気または健康状態の異常と闘い、軽減し、和らげまたは緩和して、この病気によって、例えば、がん疾患などで害された生活状態を改善することを目的として患者を手当てする、看護する、および看病する従来の観念および意味において用いられる。
【0197】
一実施形態において、医薬組成物は、例えば経口、非経口、経皮、腔内、動脈内、髄腔内、腫瘍内(i.t.)、および/または鼻腔内の投与あるいは組織内への直接注入のための組成物を含む。医薬組成物の投与は、異なる方法で、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、腫瘍内、局部的または皮内の投与によって達成されてよい。
【0198】
本発明は、薬物として使用するための1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体あるいは1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体を含む医薬組成物にさらに関する。
【0199】
本発明は、ホウ素中性子捕捉療法のための薬物として使用するための1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体あるいは1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体を含む医薬組成物にさらに関する。
【0200】
「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)は、非放射性ホウ素−10が低エネルギー熱中性子を照射されてアルファ粒子およびリチウム−7原子核を生じる、標的放射線療法を指すと理解されるべきである。非放射性ホウ素−10は、腫瘍局在複合体などの腫瘍局在薬剤内にそれを組み込むことにより標的とされ得る。
【0201】
本発明は、ホウ素中性子捕捉療法において使用するための1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体あるいは1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体を含む医薬組成物にさらに関する。
【0202】
本発明は、がんの治療において使用するための1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体あるいは1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体を含む医薬組成物にさらに関する。
【0203】
一実施形態において、がんは、頭頸部がんである。
【0204】
一実施形態において、がんは、頭頸部がん、白血病、リンパ腫、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、大腸がん、胃がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、多剤耐性がんおよび精巣がんからなる群から選択される。
【0205】
本発明は、ホウ素中性子捕捉療法によるがんの治療において使用するための1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体あるいは1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体を含む医薬組成物にさらに関する。
【0206】
本発明は、薬物の製造における1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物の使用にさらに関する。
【0207】
本発明は、ホウ素中性子捕捉療法のための薬物の製造における1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物の使用にさらに関する。
【0208】
本発明は、がんの治療のための薬物の製造における1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物の使用にさらに関する。
【0209】
一実施形態において、がんは、頭頸部がんである。
【0210】
一実施形態において、がんは、頭頸部がん、白血病、リンパ腫、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、大腸がん、胃がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、多剤耐性がんおよび精巣がんからなる群から選択される。
【0211】
本発明は、ホウ素中性子捕捉療法によるがんの治療のための薬物の製造における1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物の使用にさらに関する。
【0212】
一実施形態において、薬物は、ホウ素中性子捕捉療法による頭頸部がんの腫瘍内治療用である。
【0213】
一実施形態において、薬物は、ホウ素中性子捕捉療法による頭頸部がんの静脈内治療用である。
【0214】
一実施形態において、薬物は、ホウ素中性子捕捉療法による頭頸部がんの腫瘍内および静脈内治療用である。
【0215】
本発明は、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物が有効量でヒトに投与される、ヒトにおけるEGFR1発現腫瘍細胞の成長の治療および調節の方法にも関する。
【0216】
一実施形態において、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物は、ホウ素中性子捕捉療法において有効量でヒトに投与される。
【0217】
一実施形態において、ホウ素の濃度は、複合体または医薬組成物の投与後に腫瘍細胞において分析される。
【0218】
一実施形態において、ホウ素の濃度は、複合体または医薬組成物の投与後に血液において分析される。
【0219】
一実施形態において、ホウ素の濃度は、複合体または医薬組成物の投与後に筋肉において、または他の非腫瘍組織において分析される。
【0220】
腫瘍細胞、血液または両方におけるホウ素の濃度は、例えば誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)または誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP−AES)(例えば実施例9)によって分析または測定され得る。これらの方法は、試料中のホウ素原子の量(モル)または濃度を測定する。
【0221】
腫瘍細胞、血液または両方におけるホウ素の濃度は、例えば追跡分子を含む複合体の実施形態を用いて追跡分子の濃度を分析または測定することによって、間接的にも分析または測定され得る。例えば、追跡分子が蛍光性または放射性である場合、追跡分子の蛍光性または放射性が測定または視覚化され得る。
【0222】
一実施形態において、ホウ素の濃度は、複合体または医薬組成物の投与後に腫瘍細胞および血液において分析され、腫瘍細胞中のホウ素の濃度の血液中のホウ素の濃度に対する比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、110:1、120:1、130:1、140:1、150:1、200:1、210:1、220:1、230:1、240:1、または250:1より高い。
【0223】
一実施形態において、ホウ素の濃度は、複合体または医薬組成物の投与後に、腫瘍細胞および筋肉、または他の非腫瘍組織において分析され、腫瘍細胞中のホウ素の濃度の筋肉、または他の非腫瘍組織中のホウ素の濃度に対する比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、110:1、120:1、130:1、140:1、150:1、200:1、210:1、220:1、230:1、240:1、または250:1より高い。
【0224】
一実施形態において、腫瘍細胞中のホウ素の濃度の血液、筋肉、または他の非腫瘍組織中のホウ素の濃度に対する比率は、腫瘍細胞中のホウ素原子の血液、筋肉、または他の非腫瘍組織中のホウ素原子に対するモル比である。
【0225】
本発明は、EGFR1タンパク質発現細胞集団の成長を調節するための方法であって、
1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体あるいは1つまたは複数の本発明の実施形態による医薬組成物を、EGFR1タンパク質発現細胞集団と接触させるステップ
を含む方法にも関する。
【0226】
一実施形態において、EGFR1タンパク質発現細胞集団は、がん細胞集団または腫瘍細胞集団である。
【0227】
この文脈において、「がん細胞集団」と言う語は、1つまたは複数のがん細胞集団を指すと理解されるべきである。
【0228】
複合体は、細胞集団、例えば、血液、血漿、肺、胸部、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、脳、骨、卵巣、精巣、およびリンパ器官のがんなどを含めたがん細胞、より好ましくは肺、結腸、前立腺(colon prostrate)、血漿、血液または結腸がんとin vitro、in vivoおよび/またはex vivoで接触させてよく、「がん細胞集団の成長を調節する」は、分裂してより多くの細胞を産生させないように細胞集団の増殖を抑制すること、例えば、未処理の細胞と比較して細胞分裂における増加速度を低減すること、細胞集団を死滅させることおよび/または細胞集団(がん細胞など)が転移するのを防ぐことを含む。細胞集団の成長は、in vitro、in vivoまたはex vivoで調節してよい。
【0229】
一実施形態において、がんは、頭頸部がん、白血病、リンパ腫、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、大腸がん、胃がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、多剤耐性がんおよび精巣がんからなる群から選択される。
【0230】
本発明は、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物が有効量でヒトに投与される、ヒトにおける腫瘍細胞の成長を治療するおよび/または調節するならびに/あるいは腫瘍細胞を予防する方法にさらに関する。
【0231】
一実施形態において、有効量は、治療的有効量である。
【0232】
一実施形態において、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物は、ホウ素中性子捕捉療法において有効量でヒトに投与される。
【0233】
一実施形態において、腫瘍細胞は、白血病細胞、リンパ腫細胞、乳がん細胞、前立腺がん細胞、卵巣がん細胞、大腸がん細胞、胃がん細胞、扁平上皮がん細胞、小細胞肺がん細胞、頭頸部がん細胞、多剤耐性がん細胞、および精巣がん細胞、転移性の、進行した、薬剤またはホルモン耐性、多剤耐性がん細胞、ならびにその変種からなる群から選択される。
【0234】
本発明は、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物が有効量でヒトに投与される、ヒトにおけるがんを治療する方法にさらに関する。
【0235】
一実施形態において、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物は、ホウ素中性子捕捉療法において有効量でヒトに投与される。
【0236】
一実施形態において、有効量は、治療的有効量である。
【0237】
一実施形態において、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物は、静脈内にホウ素中性子捕捉療法における治療的有効量でヒトに投与される。
【0238】
一実施形態において、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物は、腫瘍内にホウ素中性子捕捉療法における治療的有効量でヒトに投与される。
【0239】
一実施形態において、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物は、腫瘍内および静脈内にホウ素中性子捕捉療法における治療的有効量でヒトに投与される。
【0240】
一実施形態において、1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体または医薬組成物は、頭頸部腫瘍へ腫瘍内にホウ素中性子捕捉療法における治療的有効量でヒトに投与される。
【0241】
一実施形態において、がんは、頭頸部がん、白血病、リンパ腫、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、大腸がん、胃がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、多剤耐性がんおよび精巣がんからなる群から選択される。
【0242】
一実施形態において、1つまたは複数の実施形態による複合体または医薬組成物は、
1つまたは複数の実施形態による原核宿主細胞を培養するステップと、
抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントを単離および/あるいは精製するステップと
を含む方法によって取得可能な抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントを含む。
【0243】
一実施形態において、1つまたは複数の実施形態による複合体または医薬組成物の抗EGFR1抗体またはそのEGFR1結合フラグメントは、配列番号14または配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0244】
本発明は、1つまたは複数の実施形態による複合体あるいは1つまたは複数の実施形態による医薬組成物が有効量でヒトに投与される、ヒトにおけるEGFR1発現腫瘍細胞の成長を治療または調節するための方法にも関する。上に述べる本発明の実施形態は、互いに任意の組み合わせで用いてもよい。実施形態の幾つかは、共に組み合わせられて本発明のさらなる実施形態の形を取り得る。本発明が関係する製品、使用法または方法は、上に述べる本発明の実施形態の少なくとも1つを含んでいてよい。
【0245】
1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体は、いくつかの有利な特性を有する。
【0246】
1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体は、低エネルギー中性子照射が無いので相対的に非毒性でありかつ抗原性が低い。
【0247】
複合体は、複合体分子当たり多数のホウ素−10原子を含有する。さらには、複合体は、比較的良好な水溶性を示す。
【0248】
1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体は、良好な薬物動態も示す。複合体は、血液における適した保持率、標的とする細胞における高い取り込みならびに標的としない細胞および器官における低い取り込みを有する。
【0249】
複合体の産生プロセスは、比較的単純であり水溶液中で実行してよい。
【0250】
1つまたは複数の本発明の実施形態による複合体は、製造時または生理学的条件、例えば血液、血清、血漿もしくは組織内において化学的または生化学的分解に対して十分に安定である。
【実施例】
【0251】
以下において、本発明が、より詳細に記載される。ここで本発明の実施形態が詳細に参照され、その実施例が添付の図面において例示される。下記の記述は、幾つかの本発明の実施形態を当業者が本開示に基づいて本発明を利用できるように詳細に開示する。ステップの多くは本明細書に基づいて当業者に明らかになるので、実施形態の全てのステップが詳細に説明されているというわけではない。
【0252】
実施例1.デキストランのアリル化
200mgのデキストラン70kD(Sigma)を2mlの0.6M NaOHに溶解した。250μlの臭化アリル(Sigma)を加えて、60℃で3時間反応を進行させた。次いで反応混合物を1M酢酸で中和して生成物を10体積の冷アセトン(−20℃)を用いて沈殿により単離した。沈殿物を遠心分離によって回収してアセトンで2回洗った。アリル化デキストラン(図式1)を、
1H−NMR分析にかけ、アリル化のレベルは約36%であることが示された。
【化3】
図式1。臭化アリルの使用によるデキストランのアリル化。
【0253】
実施例2.アリルデキストランへのBSHの添加
実施例1に記載のように調製した50mgのアリルデキストラン70kD、50mgの過硫酸アンモニウムおよび50mgのボロカプテイトナトリウム(BSH、Katchem Ltd, Czech Republic)を、0.5mlのH
2Oに溶解した。
【0254】
反応を、50℃で2時間進行させた。反応生成物、BSH−デキストラン(図式2)を、遠心ろ過器(Amicon、10Kカットオフ)を用いて限外ろ過で単離した。
1H−NMR分析は、デキストラン鎖当たり1200個のホウ素原子に相当する、平均で100BSH単位がアリルデキストランに結合したことを示した(
図1)。小さな変更で、例えばデキストランにおけるよりも低いアリル化レベルの使用によって、デキストラン鎖当たり約900個のホウ素または800個のホウ素を有するBSHデキストランが得られた。
【化4】
図式2。過硫酸塩触媒反応におけるアリルデキストランへのボロカプテイトナトリウムの添加。
【0255】
上述の反応におけるBSHおよび過硫酸塩の量を変えることにより、明らかにより低いBSHレベルを有するBSH−デキストランを調製することが可能であった:1)20mgのアリルデキストラン、15mgの過硫酸アンモニウムおよび15mgのBSHを含有する反応において、単離されたBSH−デキストランは、デキストラン鎖当たり約700個のホウ素原子を含有することが分かった。2)20mgのアリルデキストラン、10mgの過硫酸アンモニウムおよび10mgのBSHを含有する反応において、単離されたBSH−デキストランは、デキストラン鎖当たり約560個のホウ素原子を含有することが分かった。3)20mgのアリルデキストラン、5mgの過硫酸アンモニウムおよび5mgのBSHを含有する反応において、単離されたBSH−デキストランは、デキストラン鎖当たり約360個のホウ素原子を含有することが分かった。
【0256】
実施例3.BSH−デキストランの酸化
実施例2に記載のように調製した50mgのBSH−デキストランを、3mlの0.1M酢酸ナトリウム中25mM NaIO
4、pH5.5に溶解した。反応管を、アルミニウム箔で覆って室温で一晩インキュベートした。反応生成物、酸化BSH−デキストラン(図式3)を、遠心ろ過器(Amicon、10Kカットオフ)を用いて限外ろ過で単離した。
【化5】
図式3。過ヨウ素酸ナトリウムの使用によるBSH−デキストランの酸化。
【0257】
実施例4.抗EGFR1 Fab/F(ab’)2への酸化BSH−デキストランの複合体化
2mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中2mg(40nmol)の抗EGFR1 Fabを、1.6mlのPBS中5.1mg(60nmol)の酸化BSH−デキストラン(実施例3)と混合した。反応を、室温で一晩進行させた。反応に400μlの0.5M NaCNBH
3を加えてアルデヒド−リシン結合を安定させ反応を室温で2時間インキュベートした。800μlの0.2Mエタノールアミン−HCl pH8を加えて反応を室温で1時間インキュベートした。400μlの0.5M NaCNBH
3を加えてエタノールアミンキャッピングを安定させ反応を室温で2時間インキュベートした。低分子量試薬を、洗浄溶離剤としてPBSを用いて製造業者の説明に従いAmicon遠心ろ過器ユニット(MWCO 30K)によって除去した。
【0258】
2mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中2mg(40nmol)の抗EGFR1 F(ab’)2を、1.6mlのPBS中2.56mg(30nmol)の酸化BSH−デキストラン(実施例3)と混合した。上記のように複合体を安定させ、キャッピングして限外ろ過で精製した。
【0259】
両方の複合体を、10%アセトニトリル(ACN)−50mM Tris−HCl、pH7.5を溶離緩衝液として用いてYarra 3μm SEC−3000ゲルろ過カラム(300x7.8mM、Phenomenex)を備えたAekta(Aeはアーウムラウト) purifier(GE Healthcare)によって分析した(
図2)。
【0260】
実施例5.抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2、ならびに対照−Fabおよび−F(ab’)2フラグメントの生成
FabおよびF(ab’)2フラグメントを、市販のセツキシマブ(Erbitux、Roche)またはCHO細胞(Freedom CHO−Sキット、Invitrogen)において産生されたセツキシマブのいずれかから生成した。セツキシマブを産生する安定な細胞株の発育のためにFreedom CHO−Sキット(Life Technologies)を使用した。作業は、製造業者の説明に従って行った。重鎖および軽鎖配列をコードする最適化ヌクレオチド配列を、GeneArt (Life Technologies)から購入してpCEP4発現ベクター(Life Technologies)内へ別々にクローン化した。安定した発現のために、FreeStyle(商標)CHO−S細胞を、直線化した1:1の軽鎖および重鎖ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクタントを、ピューロマイシンおよびメトトレキサートで選別した後に限界希釈クローニングによってクローン単離を行った。クローン化細胞株を、拡大して産生性について評価した。
【0261】
対照−Fabおよび−F(ab’)2フラグメントを、市販のオマリズマブ(抗−IgE)(Xolair、Novartis)から生成した。
【0262】
抗EGFR1 Fabフラグメントを、固定化パパイン(Pierce)で製造業者の説明に従い小さな変更を加えて抗体を消化することにより調製した。用いた基質に対する酵素の比率は1:60(w/w)でありインキュベート時間は7時間であった。Fabフラグメントを、固定化プロテインAのカラム(Thermo Scientific)で製造業者の説明に従って未消化のIgGおよびFcフラグメントから分離した。
【0263】
抗EGFR1 F(ab’)2フラグメントを、製造業者の説明に従ってFragIT MaxiSpin(Genovis)を用いてまたは製造業者の説明に従い小さな変更を加えてFabricator酵素(Genovis)を用いてのいずれかで抗体を消化することにより調製した。50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.6中の抗体のmg当たり120単位の酵素でFabricator酵素消化を行い、インキュベート時間は+37℃で1時間であった。F(ab’)2フラグメントを、製造業者の説明に従って固定化HiTrapプロテインLカラム(GE Healthcare)で精製した。反応緩衝液を、Amicon Ultra濃縮器(Millipore)(10kDaカットオフ)でPBSに交換した。
【0264】
生成したフラグメントをSDS−PAGEで特定してそれぞれのフラグメントのタンパク質濃度を280nmにおけるUV吸光度を測定することにより決定した。
【0265】
実施例6ホウ素複合体のSDS−PAGE分析
抗EGFR1 FabおよびF(ab’)2フラグメントのホウ素複合体を、複合体化が成功していることおよび複合体化後に非複合体化FabまたはF(ab’)2フラグメントが存在しないことを確認するためにSDS−PAGEを用いて分析した。
図3は、非還元条件(パネルA)および還元条件(パネルB)下の勾配ゲル(Bio−Rad、4〜15%)において異なる量のホウ素を有する抗EGFR1 Fab/F(ab’)2ホウ素複合体のSDS−PAGE分析を示す。パネルAの結果は、非複合体化FabまたはF(ab’)2フラグメントが見えないので複合体化が完了している(またはほぼ完了している)ことを示す。BSHは、負に帯電した分子でありかつタンパク質に複合した場合に複合体のゲル上での移動速度は、その理論分子量に基づいて予想されるよりも速い。
図3の実施例(パネルA)は、大量のホウ素を有する複合体は、より少量のホウ素を有する複合体(例えば比較レーン1、2、4および6)よりも非還元ゲル上でより早く移動することを示す。
図3の結果(パネルA)は、複合体の大部分が、試料が2つの異なる種類の複合体の混合物を含有することを意味する非還元ゲル上の2つの帯に分離することも示す。還元条件におけるホウ素複合体のSDS−PAGE分析(
図3、パネルB)は、異なる量のホウ素を有する全てのFab複合体が還元条件下のゲル上と同様に移動することを示す(レーン1、2、4、6)。同様に、異なる量のホウ素を有する還元F(ab’)2複合体は、全く同様に移動する(レーン3、5、7)。一般に、還元ホウ素複合体は、非還元複合体よりもゲル上で早く移動する。
【0266】
実施例7.ホウ素複合体のIn vitro内在化アッセイ
ホウ素複合体のAlexaFluor488標識
5μgのAlexaFluor488カルボン酸、スクシンイミジルエステル標識(Invitrogen)を、100μgのホウ素複合体(抗EGFR1−Fab、抗EGFR1−F(ab’)2、抗EGFR1−mAb、対照−Fab、対照−F(ab’)2、対照−mAb)または対応する非複合体化化合物と共に100μlのPBS中10μlの1M NaHCO
3、pH9を含有する緩衝液中で室温で15分間インキュベートした。インキュベート後に過剰標識を、Amicon Ultra濃縮器(Millipore)(10kDaカットオフ)で緩衝液をPBSに交換することに除去した。それぞれの化合物のタンパク質濃度を、280nmにおけるUV吸光度を測定することにより決定して製造業者(Invitrogen)の説明に従って標識度を計算した。
【0267】
ホウ素複合体のトリチウム標識
蒸発によるトルエン溶媒の除去後、100μCiのトリチウム標識N−スクシンイミジルプロピオン酸(Perkin Elmer)を、100μgの抗EGFR1−Fab−BSH(800B)−Dex、抗EGFR1−F(ab’)2−BSH(800B)−Dex、抗EGFR1−mAbおよび対照−mAbと共に100μlのPBS中20μlの1M Na−ホウ酸緩衝液、pH8.8を含有する緩衝液中でインキュベートした。反応を室温で一晩進行させて次にAmicon Ultra濃縮器(10kDaカットオフ)を用いて緩衝液をPBSに交換することにより過剰標識を除去した。放射能の量を、液体シンチレーションカクテル(Ultima Gold、Perkin Elmer)の存在下でシンチレーションカウンターを用いて測定した。化合物中のトリチウム標識の量を、cpm/タンパク質μgとして計算した。
【0268】
細胞培養
HSC−2細胞(口腔のヒト扁平上皮細胞がん腫、JCRB細胞バンク、日本)およびFaDu細胞(咽頭のヒト扁平上皮細胞がん腫、ATCC)を、2%グルタミン、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンと共にイーグル最小必須培地中でT75フラスコにおいて培養した。HEK(ヒト胚腎臓、ATCC)細胞を、2%グルタミン、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するダルベッコ改変イーグル培地中でT75フラスコにおいて培養した。
【0269】
蛍光顕微鏡検査法において視覚化した内在化アッセイ
HSC−2細胞(5x10
4)を、チャンバースライド上に播種して24時間成長させた。次いで細胞を、10μg/mlのAlexaFluor488標識されたBSH−複合体を含有する100μlの培地中で+37℃または+4℃で3時間インキュベートした。インキュベート後に細胞をPBSで2回洗って4%パラホルムアルデヒドで20分間固定した。マウント培地(DAPIを有するProlong Gold褪色防止試薬)を加えて細胞を顕微鏡カバーガラスで覆った。細胞を、蛍光顕微鏡検査法(Zeiss Axio Scope A1、ProgRes C5、JENOPTIK AG)で撮影した。
【0270】
HSC−2腫瘍細胞株による抗EGFR1−F(ab’)2−BSH(900B)−Dexおよび非複合体化抗EGFR1−F(ab’)2の内在化を、蛍光顕微鏡検査法により分析した(
図4)。実験は、+4℃で実行し(化合物は細胞表面には結合するが内在化はできない)および+37℃(細胞は表面結合化合物を内在化できる)で実行した。非複合体化抗EGFR1−F(ab’)2およびホウ素複合体の両方とも、+4℃で細胞表面に結合して(パネルAおよびB)+37℃で内在化した(パネルCおよびD)。実際には、ホウ素複合体は、非複合体化抗EGFR1−F(ab’)2よりも効率よく内在化した。抗EGFR1−Fab−BSH(900B)−DexおよびEGFR1−mAb−BSH(900B)−Dexならびに対応する非複合体化抗EGFR1−Fabおよび抗EGFR1−mAbを用いた内在化アッセイは、
図4に示すデータに非常に類似した結果を与えた(図示せず)。内在化へのホウ素添加の効果は、異なる量のホウ素を有するホウ素複合体(抗EGFR1−Fab−BSH−Dexおよび抗EGFR1−F(ab’)2−BSH−Dex)を用いて試験した。結果は、より多くのホウ素を有する複合体は、+37℃において低いホウ素添加を有する複合体よりもHSC−2細胞によってより効率よく内在化されることを示す(図示せず)。対照−F(ab’)2−BSH(900B)−Dexは、非常に弱く内在化しただけであった(図示せず)。
【0271】
内在化アッセイ(FACS)
HSC−2、FaDuおよびHEK細胞(2x10
5)を、24ウェルプレート上に播種して24時間成長させた。次いで細胞を、5μg/mlのAlexaFluor488標識化合物を含有する300μlの培地中で+37℃で3時間インキュベートした。インキュベート後に細胞をPBSで2回洗って100μlのTrypsin−EDTAで+37℃で10分間インキュベートすることにより分離した。細胞を、300μlの培地を加えることにより中和してPBS中で再懸濁させてフローサイトメーター(FACS LRS II)を用いて分析した。それぞれの試料の平均蛍光強度を、FACS Divaソフトウェアを用いて計算した。表1〜3に示すデータは、蛍光強度がそれぞれの化合物のための標識度に正規化された「正規化平均蛍光強度」として表わされる。
【0272】
FACSを用いたアッセイ
蛍光標識されたホウ素複合体(900個のホウ素原子)および非複合体化AbフラグメントのヒトHNCがん細胞株HSC−2による内在化を、FACSを用いて評価した。結果は、細胞が+37℃でインキュベートされた場合に生じる内在化に加えて細胞表面結合した化合物を示す(表1)。抗EGFR1−Fab−BSH−Dexは、他のホウ素複合体または非複合体化抗EGFR1−Fabよりも効率よく内在化した。他の抗EGFR1ホウ素複合体(抗EGFR1−F(ab’)2−BSH−Dexおよび抗EGFR1−mAb−BSH−Dex)は、非複合体化抗EGFR1−Fabおよび抗EGFR1−F(ab’)2と同等に良好に内在化した。対照−F(ab’)2および−mAbのホウ素複合体は、非常に弱く内在化した。
【0273】
表1.蛍光標識されたホウ素複合体および非複合体化化合物のHSC−2細胞による細胞表面結合および内在化。分析はFACSによって実行して蛍光強度はそれぞれの化合物のための標識度に正規化した。
【表1】
【0274】
抗EGFR1 F(ab’)2および−Fabから異なる量のホウ素(360〜900個のホウ素原子)を有するホウ素複合体を合成して内在化過程におけるホウ素添加の影響を調査した。実施例は、ヒトHNCがん細胞株HSC−2および対照ヒト細胞株HEKを用いる蛍光標識された複合体での内在化アッセイを示す。フローサイトメトリー分析からの結果は、細胞が+37℃でインキュベートされた場合に生じる内在化に加えて細胞表面結合した化合物を示す(表2)。抗EGFR1 Abフラグメントの全てのホウ素複合体の内在化は、フローサイトメトリーによって分析されたように非常に類似した。しかしながら、顕微鏡法を用いた実験は、より多くのホウ素を有する複合体がより低いホウ素添加を有する複合体よりも効率よく内在化したことを明らかにした(図示せず)。
【0275】
表2.異なる量のホウ素を有する蛍光標識されたホウ素複合体のHSC−2およびHEK細胞による細胞表面結合および内在化。分析はフローサイトメトリーによって実行し蛍光強度はそれぞれの化合物のための標識度に正規化した。
【表2】
【0276】
蛍光標識されたホウ素複合体(1200または800個のホウ素原子)および非複合体化AbフラグメントのヒトHNCがん細胞株(HSC−2およびFaDu)および対照細胞株HEKによる内在化を、フローサイトメトリーを用いて評価した。結果は、細胞が+37℃でインキュベートされた場合に生じる内在化に加えて細胞表面結合した化合物を示す(表3)。抗EGFR1−Fab−BSH(1200B)−Dexおよび非複合体化抗EGFR1−Fabは、HSC−2およびFaDu細胞によって最強の内在化を示した。FaDu細胞による内在化は、HSC−2細胞よりも一貫して弱く、細胞表面におけるより少量のEGFR1受容体が原因である可能性が高い。対照ホウ素複合体(対照−Fab−BSH(800B)−Dexおよび対照−F(ab’)2−BSH(800B)−Dex)および対応する非複合体化化合物は、非常に弱く内在化した。対照細胞株HEKは、ホウ素複合体および非複合体化化合物を非常に弱く内在化しただけであった。
【0277】
表3.蛍光標識されたホウ素複合体(1200Bまたは800B)および非複合体化化合物のHSC−2、FaDuおよびHEK細胞による細胞表面結合および内在化。分析はフローサイトメトリーによって実行して蛍光強度はそれぞれの化合物のための標識度に正規化した。
【表3】
【0278】
放射標識された試料での内在化アッセイ
HSC−2、FaDuおよびHEK細胞(2x10
5)を、24ウェルプレート上に播種して24時間成長させた。次いで細胞を、5μg/mlのトリチウム標識化合物を含有する300μlの培地中で+37℃で3時間インキュベートした。インキュベート後に培地を取り出して細胞をPBSで3回洗い300μlの1M NaOHを加えることにより溶解した。培地および細胞溶解物中の放射能の量を、液体シンチレーションカクテル(Ultima Gold)の存在下でシンチレーションカウンターで測定した。内在化した化合物の量を、ウェルあたりの放射能の総量から計算して100000細胞に正規化した。
【0279】
抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2ならびに非複合体化抗EGFR1−mAbのホウ素複合体(800個のホウ素原子)を、トリチウムでタンパク質部分のリジン残基に標識した。放射標識化合物での内在化アッセイを、ヒトHNCがん細胞株、HSC−2およびFaDu、ならびに対照として細胞株HEKを用いて実行した。結果は、細胞が+37℃でインキュベートされた場合に生じる内在化に加えて細胞表面結合した化合物を示す。結果(表4)は、抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2のホウ素複合体が、HSC−2およびFaDu細胞によって非複合体化抗EGFR1−mAbと同じ程度に効率よく内在化したことを示す。HSC−2細胞による内在化は、FaDu細胞によるよりも100倍強く、HSC−2細胞における細胞表面のより多量のEGFR1受容体が原因である可能性が高い。対照細胞株HEKは、非常に弱い内在化を示しただけであった。
【0280】
表4.放射標識されたホウ素複合体のHSC−2、FaDuおよびHEK細胞による内在化。内在化した化合物の量を、ウェルあたりの放射能の総量から計算して100000細胞に正規化した。結果は、3回の測定の平均+/−標準偏差である。
【表4】
【0281】
実施例8.トリチウム標識された複合体でのIn vivo実験
液体シンチレーション計数法のためのマウス組織および血液試料の調製
重みづけしたマウス器官を、0.2gの組織当たり1mlの組織可溶化剤(Solvable(商標)、Perkin Elmer)に溶解した。試料を、+60℃で一晩インキュベートした。次いで300μlの溶解した器官当たり150μlのH
2O
2を加えて試料を+60℃で1時間インキュベートした。骨を、最初に1M HClで+60℃で一晩、次いでSolvableおよびH
2O
2で処理した。器官中の放射能の量を、液体シンチレーションカクテル(Ultima Gold(商標)、Perkin Elmer)の存在下でシンチレーションカウンターで測定した。データは、組織のgにおける総注入量のパーセントとして表わされる。結果は、3匹のマウスの平均+/−標準誤差である。マウスのそれぞれが2つの腫瘍を有するので、腫瘍における結果は、6回の測定の平均+/−標準誤差である。
【0282】
クリアランス試験における血液試料を、エッペンドルフチューブに集めて100μlのSolvableを追加して+60℃で一晩インキュベートした後に体積を測定した。次いで100μlのH
2O
2を加えて試料を+60℃で1時間インキュベートした。血液試料中の放射能の量を、液体シンチレーションカクテル(Ultima Gold、Perkin Elmer)の存在下でシンチレーションカウンターで測定した。データは、総注入量のパーセントとして表わされる。結果は、2匹のマウスの平均である。
【0283】
非腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の血液クリアランス
同齢の成体雌マウス(Harlan HSD:Athymic nude Foxn1nu)を使用した。800Bおよび300Bホウ素添加を有する抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2の放射標識された(3H)ホウ素複合体を、100μlのPBS中で尾静脈を介して静脈内に注入した。注入量は、マウス当たり30μg=1.3〜2x106cpmでありかつ試料当たり2匹のマウスを用いた。注入の前後に異なる時点で約10μlの血液試料を採取して放射能を計数した。実験の終わり(48時間)にマウスをと殺して器官を採取し複合体の組織体内分布の測定のために放射能を計数した。
【0284】
非腫瘍マウスにおける血液クリアランス試験を、800Bおよび300Bホウ素添加を有する抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2の3H標識されたホウ素複合体を用いて実行した。ホウ素添加が血液循環からの複合体のクリアランス率への影響を有するかどうかを見るために2つの異なるホウ素添加を用いた。結果は、ホウ素複合体の血液クリアランスが高速でありホウ素添加と無関係であることを示す(表5)。クリアランス率は、対応する非複合体化F(ab’)2およびFabフラグメントのクリアランスと同等であった(図示せず)。組織分布調査は、ホウ素複合体が48時間でどの器官にも蓄積されていないことを示す(図示せず)。
【0285】
表5.非腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の血液クリアランス。結果は、2回の測定の平均である。時間は投与後の時間(分)であり値は総注入量の%である。
【表5】
【0286】
HSC−2腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の体内分布
同齢の成体雌マウス(Harlan HSD:Athymic nude Foxn1nu)を使用した。EME−培地および50%マトリゲル中の150μl中250万から300万個のHSC−2細胞(JCRP細胞バンク、日本)を、ヌードマウスの両方の脇腹に接種した。マウス当たり少なくとも1つの腫瘍が少なくとも直径6mmのサイズ(6〜10mm)に成長して腫瘍体積がおおよそ100〜500mm
3に相当した時に投薬した。抗EGFR1−Fab/F(ab’)2および対照−Fab/F(ab’)2の放射標識された(3H)ホウ素複合体(800B)を、100μlのPBS中で尾静脈を介して静脈内に注入した。注入量は、マウス当たり50μg=1.3〜2.6x106cpmでありかつ試料当たり3匹のマウスを用いた。異なる時点(24時間、48時間および72時間)でマウスをと殺して器官を採取し複合体の組織体内分布の決定のために放射能を計数した。
【0287】
ホウ素複合体の組織分布(表6)は、抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2のホウ素複合体が腫瘍内に蓄積したが任意の他の器官には蓄積せず、一方で対照ホウ素複合体は腫瘍内に有意には蓄積しなかったことを示す。抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2のホウ素複合体の腫瘍蓄積は、24時間で最高であり、その後の時点(48時間および72時間)においてはゆっくり減少した。
【0288】
表6.HSC−2腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の体内分布。結果は、6回の測定の平均+/−標準誤差である腫瘍を除いて3回の測定の平均+/−標準誤差を表わす。値は、総注入量/器官gの%である。
【表6】
【0289】
HSC−2異種移植マウスにおけるホウ素複合体の腫瘍対血液の分布を、異なる時点(24時間、48時間および72時間)において計算した(表7)。腫瘍/血液比は、抗EGFR1−Fab複合体については4〜5であり、抗EGFR1−F(ab’)2複合体については2〜6であった。抗EGFR1−Fab−BSH−Dexは、抗EGFR1−F(ab’)2−BSH−Dex(48時間)よりも早く最大比率に達した(24時間)。対照複合体の腫瘍/血液比は、調査を通して一定のレベルのままであった(約1〜2)。
【0290】
表7.HSC−2腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の腫瘍/血液分布。結果は、血液試料については3回の測定の平均に基づき腫瘍(マウス当たり2腫瘍)については3回の測定の平均に基づいて+/−標準偏差したものである。
【表7】
【0291】
FaDu腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の体内分布
同齢の成体雌マウス (Charles River Crl:Athymic nude Foxn1nu)を使用した。EME−培地および50%マトリゲル中の150μl中300万個のFaDu細胞(ATCC) を、ヌードマウスの両方の脇腹に接種した。マウス当たり少なくとも1つの腫瘍が少なくとも直径6mmのサイズ(6〜10mm)に成長して腫瘍体積がおおよそ100〜500mm
3に相当した時に投薬した。抗EGFR1−Fab/F(ab’)2および対照−Fab/F(ab’)2の放射標識された(3H)ホウ素複合体(800Bまたは1200B)を、100μlのPBS中で尾静脈を介して静脈内に注入した。注入量は、マウス当たり50μg=2.3〜2.7x10
6cpmでありかつ試料当たり3匹のマウスを用いた。異なる2時点(24時間および48時間)でマウスをと殺して器官を採取し複合体の組織体内分布の測定のために放射能を計数した。
【0292】
FaDu異種移植腫瘍マウスにおける体内分布調査を、抗EGFR1−F(ab’)2−BSH(800B)−Dexおよび抗EGFR1−Fab(800Bまたは1200B)−BSH−Dexならびに対照−F(ab’)2および−Fabのホウ素複合体(800B)を用いて実行した。複合体を、タンパク質のリジン残基に放射標識(3H)した。腫瘍および血液を含めた、組織試料中の放射能を、異なる2時点(24時間および48時間)において計数した。ホウ素複合体の組織分布(表8)は、抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2のホウ素複合体が腫瘍内に蓄積したが任意の他の器官には有意には蓄積せず、一方で対照ホウ素複合体は腫瘍内に有意には蓄積しなかったことを示す。対照−F(ab’)2−BSH(800B)−Dexは、24時間でまだ血液循環中および全ての器官中に見られ得るが、48時間で循環から除去された。抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2のホウ素複合体の腫瘍蓄積は、24時間で最高であり48時間で減少した。
【0293】
表8.FaDu腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の体内分布。結果は、6回の測定の平均+/−標準誤差である腫瘍を除いて3回の測定の平均+/−標準誤差を表わす。値は、総注入量/器官gの%である。
【表8】
【0294】
FaDu異種移植マウスにおけるホウ素複合体の腫瘍対血液分布を、24時間および48時間において計算した(表9)。腫瘍/血液比は、1200個のホウ素を有する抗EGFR1−Fabおよび−F(ab’)2複合体について24時間で約7であり、48時間で標識タンパク質が分解されて細胞の外に分泌されたことを示唆する3〜4に比率が減少した。800個のホウ素を有する抗EGFR1−Fab複合体の腫瘍/血液比は、両方の時点において約4〜5であった。対照複合体の比は、一定のレベルのままであった(約1〜2)。
【0295】
表9.FaDu腫瘍マウスにおけるホウ素複合体の腫瘍/血液分布。結果は、血液試料については3回の測定の平均に基づき腫瘍(マウス当たり2腫瘍)については6回の測定の平均に基づいて+/−標準偏差したものである。
【表9】
【0296】
実施例9.誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によるBSH−デキストラン中のホウ素の定量(BSH−デキストラン1モル当たりのホウ素のモル数)
BSH−デキストランのホウ素添加をBSH−デキストランのプロトン−NMRスペクトルから概算して(
図1)試料中のホウ素の量を定量するためにICP−MSを用いた。本実施例において分析したBSH−デキストラン試料は、NMR分析に基づいて約1200個のホウ素を含有すると概算された。約2.1μg(0.0228nmol)のBSH−デキストラン(平均分子量92kDa)を、基本的にはLaaksoら、2001年、Clinical Chemistry 47、1796〜1803に記載のようにマイクロ波アシスト湿式灰化で液化してICP−MSによって分析した。異なる希釈の試料は、ICP−MSによって分析してバックグラウンドホウ素を試料から引いた。7回の測定の平均を表している結果は、試料が約0.341μg(31.5nmol)のホウ素原子を含有する、または1モルのBSH−デキストランが1381モルのホウ素原子を含有することを示す。
【0297】
実施例10.In vivo実験およびホウ素定量
同齢の成体雌マウス(Charles River Crl:Athymic nude Foxn1nu)を使用した。EME−培地および50%マトリゲル中の150μl中230万個のHSC−2または500万個のFaDu細胞を、ヌードマウスの右脇腹に接種した。腫瘍が少なくとも直径6mmのサイズ(6〜10mm)に成長して腫瘍体積がおおよそ100〜500mm
3に相当した時に投薬した。抗−EGFR−Fab−BSH(1200)−dexまたは抗−EGFR−F(ab’)2−BSH(1200)−dex(共に非標識)複合体を、100μlのPBS中で尾静脈を介して静脈内に注入した。注入量は、マウス当たり50μgまたは250μgでありかつ試料当たり3匹のマウスを用いた。マウスを24時間および48時間でと殺してホウ素測定のために器官を採取した。
【0298】
マイクロ波加熱炉(Milestone、ETHOS 1200)内の密閉されたテフロン(登録商標)容器中で組織試料(血液を含む)を消化した。消化温度は200Cであり消化の継続時間は50分であった。消化において用いた酸は、HNO
3(6.0ml、E. Merck、Suprapur)であった。冷却後に反応生成溶液を、Milli−Q水で25mlに希釈した。消化した試料をICP−MS分析のために1%HNO
3でさらに希釈した(1:10または1:50)。試料に内部標準ベリリウムを加えて試料中の最終濃度である、10ppbのBeを得た。分析のためにSpectrascanの単一元素標準溶液(H
2O中にH
3BO
3として1000ug/mlのホウ素)から1、5、10および20μg/L濃度の標準溶液を希釈した。分析のための対照試料を、SPEX(CLMS−4)による多元素混合標準液から調製した。分析は、高分解能セクターフィールド誘導結合プラズマ質量分析計(HR−ICP−MS、Element2、Thermo Scientific)で行った。希釈試料中のホウ素の濃度は、低分解能(R≒300)および中分解能(R≒4000)モードの両方で10Bおよび11Bのピークから規定した。試料間で試料導入系を、最初に5%HNO
3で次いで1%HNO
3で洗ってホウ素に典型的な記憶効果を排除した。
【0299】
24時間における2つのHSC−2腫瘍マウスの最初のホウ素分析は、筋肉当たりのホウ素腫瘍比が5.3および6.3であったことを示す。
【0300】
血液からの最初のホウ素測定は非決定的または検出限界を超えたので血液の代わりに筋肉を対照組織として用いた。
【0301】
実施例11.
14C標識抗EGFR1 Fab BSH−デキストランでのIn vivo実験
抗EGFR1 Fab BSH−デキストランの調製
BSH−デキストランを、それぞれ実施例1および2に記載のように調製した。NMR分析によるとBSH−デキストランは約650個のホウ素を含有した。酸化は、実施例3に記載の通りであるが2回分において行い、一方は50mgで他方は100mgのBSH−デキストランであった。
【0302】
抗EGFR1 Fabフラグメントを、実施例5に記載のようにパパイン消化によって調製した。複合体化反応を実施例4の通りであるが、4回分において実行し、1)29mgの酸化BSH−デキストランおよび10.4mgの抗EGFR1 Fab、2)16.5mgの酸化BSH−デキストランおよび5.9mgの抗EGFR1 Fab、3)50mgの酸化BSH−デキストランおよび19.8mgの抗EGFR1 Fab、4)50mgの酸化BSH−デキストランおよび19.7mgの抗EGFR1 Fabで合わせて55.8mgの抗EGFR1 Fabを得た。全てを、実施例6におけるようにSDS−PAGEにおいて分析してそれぞれの試料をAlexa Fluor 488−NHSで標識した。Alexa Fluor 488標識分子での内在化アッセイを、実施例7に記載のようにHSC−2細胞で実行した。
【0303】
非標識Fab−BSH−デキストラン回分を組み合わせて39mgの抗EGFR1 Fab BSH−デキストランを得た。試料緩衝液を、非標識と
14C標識の抗EGFR1 Fab BSH−デキストランとを組み合わせることおよびそれに続くろ過滅菌法に先だってPBS中5%マンニトール−0.1%Tween80に交換した。
【0304】
14C標識抗EGFR1 Fab BSH−デキストランの調製
3mgのFab−BSH−デキストラン(エタノールアミンキャッピング前)を、(実施例4におけるように)NaCNBH
3を含有するPBS中66μCi の
14C−エタノールアミン(American Radiolabeled Chemicals Inc.)で一晩インキュベートによって
14C標識してその後2時間キャッピングを非放射性エタノールアミンで終了して、実施例4に記載のように低分子量試薬を除去した。本反応は、9.21μCiの放射能を含有する
14C標識抗EGFR1 Fab BSH−デキストランを生じた。
【0305】
動物試験用に
14C標識抗EGFR1 Fab BSHデキストランを、非標識「冷」抗EGFR1 Fab BSHデキストランと表10に示す分量で混合した。
【0306】
表10.試験物質の調製
【表10】
【0307】
14C標識抗EGFR1 Fab BSH−デキストランでのIn vivo実験
異種移植マウスを、HSC−2細胞を右脇腹に接種して腫瘍が少なくとも直径8mmのサイズ(8〜12mm)に成長して腫瘍体積がおおよそ200〜800mm
3に相当する時に投薬したことを除いて実施例8に記載のように生成した。放射標識された(
14C)抗EGFR1−Fabホウ素複合体を、5%マンニトールおよび0.1%ポリソルベートを含有する100μlのPBS中で尾静脈を介して静脈内にまたは腫瘍内投与(グループX)のいずれかによって注入した(調査グループは表10に示す)。試料当たり3匹のマウスを用いた。それぞれのマウスに、約400000cpmの複合体を投与した(上記の動物試験用の抗EGFR1 Fab BSHデキストラン複合体の調製、表10を参照)。24時間または48時間でマウスをと殺して(グループIX)器官を採取し複合体の組織体内分布の測定のために放射能を計数した。血液試料も、ホウ素複合体の投与後30分、2時間、および8時間で採取した。
【0308】
組織を、
14C定量用に実施例8に記載のように調製した。クリアランス試験における血液試料は、200μlのSolvableおよび90μlのH
2O
2を用いたことを除いて実施例8におけるように調製した。結果は、3匹のマウスの平均である。
【0309】
表11は、
14C標識抗EGFR1 Fabデキストラン複合体を投与したマウスについての血液に対する腫瘍の比を示す。
【0310】
表11.HSC−2腫瘍マウスにおける
14Cホウ素複合体の腫瘍/血液比。血液中の放射能は0%であると判定されたので(全ての血液試料がバックグラウンドレベルの差し引き後に陰性であった)G IXについての値は腫瘍/脳比である。グループI:250μg、グループII:500μg、グループIII:1000μg、グループIV:1500μg、グループV:2000μg、グループX:250μg、グループVIII:250μg+2時間後250μg、およびグループIX:250μg+24時間250μg。グループXの腫瘍内投与を除いた全てのグループは静脈内投与。器官はグループIXの48時間を除き24時間で採取。グループVIIIの腫瘍/血液比は1匹のマウスからである(グループ中の1つの血液cpm値の存在によるもの)。
【表11】
【0311】
表12.3つのグループにおける
14Cホウ素複合体の血液クリアランス。左列は投与後時間(分/時間)を示し値は総注入量/血液gの%である。
【表12】
【0312】
実施例12.直接ホウ素定量による抗EGFR1 Fab BSH−デキストランでのIn vivo実験
抗EGFR1 Fab BSH−デキストランの調製
抗EGFR1 Fab BSH−デキストランを、それぞれ実施例1および2に記載のように調製した。実施例3に記載のように酸化を行ったが2回分で行い、一方は80mg、他方は96mgのBSH−デキストランであった。NMR分析によるとBSH−デキストラン試料は、それぞれ約880個および500個のホウ素を含有した。
【0313】
抗EGFR1 Fabフラグメントを、実施例5に記載のようにパパイン消化により調製した。複合体化反応は、実施例4におけるように実行したが、4回分であり、2回分は15.7mgの抗EGFR1 Fabおよび40mgのox−BSH−デキストラン、他の2回分は18.8mgの抗EGFR1 Fabおよび48mgのox−BSH−デキストランで行った。
【0314】
全てのホウ素複合体を、実施例6におけるようにSDS−PAGEにおいて分析してAlexa Fluor(登録商標) 488−NHSで標識した。HSC−2細胞での内在化アッセイを、実施例7に記載のようにAlexa Fluor標識分子で実行した。
【0315】
試料緩衝液を、マウス試行試料の調製およびろ過滅菌に先だってPBS中5%マンニトール−0.1%Tween80に交換した。
【0316】
抗−EGFR Fab BSH−デキストランでのIn vivo実験
実施例11におけるように異種移植マウスを生成した。抗−EGFR Fab BSH−デキストランを、100μlのマンニトール/Tween/PBS溶液で静脈内にまたは40μlのマンニトール/Tween/PBS溶液で腫瘍内(i.t.)に投与した。i.t.投与では単一の注入部位を通して針を腫瘍内に通過させ開扇法(fanning technique)で動かして試験物質を腫瘍全体にくまなく分散させた。腫瘍のサイズおよび形状に応じて、合計で3または4通過を用いた。
【0317】
器官は24時間で採取し血液試料は30分、2時間、および8時間で採取した(調査グループIIおよびV)。
【0318】
ホウ素の定量
上述のようにICP−MSによる直接ホウ素定量のために組織を調製した。約150mgのNIST参照標準1573トマト葉を含有する3種の対照試料も消化した。消化した試料を、1:10または1:100に希釈した。
【0319】
表13は、選択された器官中のホウ素を例示し表14は、腫瘍の血液に対する比率を示す。腫瘍内投与は、静脈内投与と比較して著しく高い腫瘍ホウ素濃度を示す。
【0320】
表13.ホウ定量によるHSC−2腫瘍マウスにおける抗EGFR1 Fab BSH−デキストラン複合体の体内分布。結果は、4回の測定の平均+/−標準誤差を表す。調査グループは、グループI:緩衝液のみ(マンニトール/Tween/PBS)静脈内、グループII:2mg静脈内、グループIII:2mg+デキストラン静脈内、グループIV:250μg腫瘍内、グループV:2mg腫瘍内であった。値は、器官g中のホウ素μgである。スチューデントのt検定を、グループII対IIIおよびグループIV対Vの腫瘍ホウ素値について(Statistica 12ソフトウェア[StatSoft]を用いて)実行した。グループIVおよびVは、ホウ素量間で有意差を示した(p値=0.009)。
【表13】
【0321】
表14.腫瘍対血液比+/−SEM。
【表14】
【0322】
実施例13.大腸菌(E.coli)における抗EGFR1 Fabの産生
抗EGFR1 Fabのペリプラズム分泌のためのシグナルペプチドの最適化
抗EGFR1 Fabのための発現戦略は、安定なジスルフィド架橋が形成され得るペリプラズムを標的とした。
【0323】
市販のベクターセットpDD441−SSKT(T5プロモーター、カナマイシン選択)を、シグナルペプチドの最適化のために用いた。以下のシグナルペプチド、i)MalE(マルトース結合タンパク質)、ii)pelB(ペクチン酸リアーゼ)、iii)ompA(外膜プロテインA)、iv)phoA(細菌性アルカリホスファターゼ)およびv)gIII(PRVエンベロープ糖タンパク質)を使用した。ベクターpGF115〜pGF119は、合成DNA配列、高忠実度ポリメラーゼを有するPCR増幅およびルーチンツールとしてシームレスなギブソンアセンブリを用いることによって構築した。加えて、Carterら1992:High level E.coli expression and production of bivalent humanized antibody fragment、Biotechnology(N Y)、10(2)163〜7に従って重鎖および軽鎖の両方のためにシグナルペプチドstII(耐熱性エンテロトキシンII)を有するベクターpGF150を構築した。ベクターpGF150は、ジシストロニックであり発現のためのT7プロモーターを有した。抗EGFR1 Fabのための発現カセットは、重鎖と軽鎖との間の内部リボソーム結合部位を有するジシストロニックであった。シグナルペプチド最適化のための一般的な発現ベクター構成を、
図5に例示する。ベクターpGF115〜pGF119におけるシグナルペプチドの組み合わせを表15に示す。
【0324】
表15.ベクターpGF115〜pGF119におけるシグナルペプチドの組み合わせ。
【表15】
【0325】
ベクターpGF115〜pGF119を、製造業者の説明に従ってプログラムEc2でパルス出力したBiorad GenePulserを用いてE.coli W3110エレクトロコンピテント(ATCC microbiology collection)細胞に形質転換した。形質転換を、LB+アガー+カナマイシン25mg/Lに平板化して+37℃で一晩培養した。
【0326】
単一のコロニーを、標準的プロトコールに従って発現スクリーニングにかけた。1日目に、一晩の前培養を、最終濃度20mg/Lでカナマイシンを補った5mlの液体LBに接種し、220rpmで振動させた状態で+37°で培養した。2日目に、200μLの一晩の前培養を、10mLの液体LB+カナマイシン10mg/Lに再接種した。培養を、OD
600がレベル0.6〜0.9に達するまで+37°で220rpmで振動させ続けた。Fab産生をIPTGで誘導し、最終濃度500μMであった。培養を、+20℃で、220rpmで一晩振動させ続けた。1mLの試料を、誘導後4時間および一晩の時点から採取した。細胞を、遠心分離8000xGで10分によって採取し、上清を廃棄し、ペレットを100μlの10xTE pH7.5(100mM Tris−HCl、10mM EDTA)に再懸濁させた。試料を、室温で勢いよく1時間ボルテックスし、16000xGで10分造粒して上清(sup)をペリプラズム抽出物として新しいエッペンドルフチューブに採取した。
【0327】
ペリプラズム抽出物を、ウエスタンブロットでさらに分析した。100μlの抽出物を、20μlの還元または非還元添加液のいずれかと混合した。20μlの混合物を、4〜20%のPrecise Tris−Glycine SDS−Pageゲル(Thermo Scientific)に添加した。ゲルを、1xLaemmli泳動緩衝液(running buffer)中で200Vで約45分実行してTris−Glycineブロッティング緩衝液中のニトロセルロース膜に350mAで約45分ブロットした。SDS−PageおよびブロッティングのためにBioRad Mini−protean系を用いた。ブロットした膜を、PBS中の1%BSAでブロックした。ペルオキシダーゼ複合体(Sigma Aldrich、カタログ番号A0293)およびLuminata Forte Western HRP基質(Millipore、カタログ番号WBLUF0500)と共に抗−ヒトIgG(Fab特異的)で検出を行った。化学発光反応を、富士フィルムLuminescent Image Analyzer LAS4000で検出した。
【0328】
いくつかの発現培養からのウエスタンブロット分析によると、ベクターpGF119およびpGF115は、他よりも良好であるように見えた。ペリプラズムに産生されたFabの量は保ったが、しかしながら、これらの初期実験における0.3〜0.8mg/Lのレベルであった。ベクターpGF119において用いた組み合わせ(HCのためにompAシグナルペプチドおよびLCのためにpelBシグナルペプチド)を、継続のために選択した。
【0329】
抗EGFR1 Fabの重鎖および軽鎖両方を標的とするペリプラズムのためにT7プロモーターおよびシグナル配列stIIを有するベクターpGF150を、株BL21(De3)に形質転換した。他と比較すると、これは、ベクターpGF119において用いられる場合、少なくとも軽鎖のためのpelBおよび重鎖のためのompAと同様に良好に見えた。
【0330】
Fab発現のためのプロモーターの最適化
3つの異なるプロモーター(IPTG−誘導性のT5、IPTG−誘導性のT7およびラムノース誘導性のRham)を、予備スクリーニングにおいて用いた。市販のベクターpET−15b、pD441およびpD881由来のプロモーター配列である。HCのためにシグナルペプチドompAおよびLCのためにpelBを用いた。発現カセットを、ジシストロニックな方法(それぞれのベクターにおける重鎖と軽鎖との間の内部リボソーム結合部位taaGGATCCGAATTCAAGGAGATAAAAAatg(配列番号22))で構築した。ベクターコードおよびプロモーターを表16に示す。
【0331】
表16.Fab発現のためのプロモーター系の最適化、使用したベクターおよびプロモーター。
【表16】
【0332】
pGF119およびpGF132を、上述のようにE.coli株W3110に電気穿孔した。T7プロモーターベクターpGF121を、供給業者によって提供されたヒートショックプロトコールに従ってE.coli BL21(De3)ケミカルコンピテント細胞(New England Biolabs)に形質転換した。ペリプラズム抽出物の発現培養、試料調製および分析を、上述のように行った。第1の比較は、株W3110 pGF119とBL21(De3) pGF121との間で行った。ペリプラズム抽出物を、10XTE緩衝液および0.05%デオキシコール酸塩緩衝液で並行して作成した。
【0333】
図6において例証されるように、T7プロモーターはT5プロモーターよりもわずかに優れていたが、注目するほどの差ではなかった。それでもW3110 pGF119およびBL21(De3) pGF121株での繰り返し実験は、BL21(De3) pGF121を用いた発現培養がW3110 pGF119よりも安定で再現性があることを明らかにした。W3110 pGF119を用いるよりもより速い成長速度および高い細胞密度が、BL21(De3) pGF121を用いて達成された(データは示さず)。
【0334】
プロモータースクリーニングにおける第2のステップは、W3110 pGF132(ラムノース誘導性のプロモーター)を用いた小規模培養からの予備発現レベルを分析することであった。ラムノース誘導プロモーターの利点の1つは、ラムノース濃度を変化させることによって発現レベルを微調整し得ることである。対象の幾つかのタンパク質で、より低い発現レベルが、実際には標的タンパク質の正確なフォールディングおよび集合ならびに産生株のより高い細胞密度が理由でより高い全体的な力価に繋がった。そのことからラムノースの濃度を増加して10mlの液体LB培養(0、0.25mM、1mM、4mMおよび8mM)で平行して誘導を行った。3つの異なる誘導後温度(+20℃、+28℃および+37℃)を用いた。1mlの試料を、誘導後4時間の時点で採取した。試料採取、ペリプラズムの抽出および分析を、実施例1に記載のように行った。
【0335】
図7に示すように、ラムノース誘導性のプロモーターでの発現レベルは、BL21(De3) pGF121(T7プロモーター)で達成されるレベルより低いままであった。ラムノースの濃度を増加することでのプロモーター制御は、+20℃で最も機能的であった。それでも、ラムノース系での最高力価は、+28℃において達成された。
【0336】
上述の繰り返し実験に基づいて、BL21(De3)およびT7プロモーター系を、大腸菌(E.coli)における抗EGFR1 Fabの産生のための基本プラットフォームとして選択した。
【0337】
大腸菌(E.coli)細胞における発現のための抗EGFR1 Fabのコドン最適化
大腸菌(E.coli)のための異なるコドン最適化パターンを有する3つのHC/LC配列および当初CHO細胞のために最適化した1つのHC/LC配列を試験した。ベクターを、pGF119に関して述べたようにジシストロニックな方法およびT5プロモーター駆動の発現で構築した。発現宿主は、E.coli W3110であった。ペリプラズム抽出物の小規模培養、試料採取および分析を、上述のように行った。ベクターpGF119における配列を、ベースラインレベルとして選択した。コドン最適化パターンは、発現レベルに劇的影響を与えた(表17)。大腸菌(E.coli)変種2(pGF128)およびCHO細胞最適化(pGF126)配列は、W3110宿主株において作用せず、ウエスタンブロットによって発現培養から微量のFabが検出されたのみであった。大腸菌(E.coli)変種3(pGF129)で達成された発現レベルは、有意により良好であったが、やはりベースラインレベルと同様であった。ベクターのほとんどが既に大腸菌(E.coli)変種1(pGF119)で作成されていたためおよびコドン最適化パターンを変更することによりベースラインと比較して改善が無かったため、ベクターpGF119からの大腸菌(E.coli)変種1配列(配列番号10および配列番号11)を、使用のために選択した。
【0338】
表17.異なるコドン最適化パターンを有する抗EGFR1 Fabコード配列を試験。ベクターのコーディングおよび結果。
【表17】
【0339】
ジシストロニックをデュアルプロモーターベクター構成と比較
ジシストロニックなベクター構成において、リボソーム結合部位を含めた、重鎖と軽鎖との間のスペーサー配列は、比較的短く、pGF119において25ヌクレオチドだけである。重鎖と軽鎖との間のこのスペースを拡大するために、鎖の両方とも別々のT5またはT7プロモーターの対照の下でそれぞれ発現した、ベクターpGF120およびpGF131を構築した。ベクターを、ジシストロニックなベクターpGF121上の既存の配列を利用することにより構築した。完成したら、pGF120をW3110株に電気穿孔してpGF131をBL21(De3)およびLemo21(De3)大腸菌(E.coli)ケミカルコンピテント細胞に形質転換した。上記のように小規模発現試験を行ってジシストロニックとデュアルプロモーターベクターとの間の比較を行った(pGF119対pGF120、pGF121対pGF131)。
【0340】
図8において実証されるように、デュアルT5プロモーターは、明らかにジシストロニック構成よりも抗EGFR1 Fab産生について効率的であった。T7プロモーターを用いると、差は明白ではなかったが、ジシストロニックな構成を用いるよりも大量の非集合Fab鎖がデュアルプロモーター系で存在したことが分かった。計画した次の最適化ステップは、シャペロンヘルパープラスミドを発現株に適用して正確なフォールディングおよび集合を促進することであった。継続のためにT7プロモーター(ベクターpGF131)を有するデュアルプロモーター構成を選択した。
【0341】
シャペロンヘルパープラスミドの構築
Fab発現を増大するために、ベクターpGF131での共発現のためのペリプラズムおよび細胞質のシャペロンを選択した。シャペロンヘルパープラスミドのための主鎖ベクターとして、pCDF−1b(Novagen)を選択した。pCDF−1bは、T7プロモーター、lacオペレーター、CloDF13由来の複製開始点の複製およびストレプトマイシン/スペクチノマイシン抗生物質耐性を有する。これはpETベクターとの共発現に適合し、かつその理由からpET−15b主鎖を有するpGF133と一緒に発現させるのに適する。
【0342】
シャペロン配列は、PCRおよび高忠実度phusionポリメラーゼ(Thermo Scientific)で大腸菌(E.coli)ゲノムDNAから増幅したPCRであった。増幅したフラグメントを、従来の消化/連結クローニングおよびシームレスなギブソンアセンブリを利用してpCDF−1b主鎖にクローン化した。シャペロンヘルパープラスミドの構成を、表18〜20においてより詳細に記述する。5〜7。
【0343】
表18.シャペロンヘルパープラスミドpGF134、pGF135、pGF137、pGF138のクローニング戦略。
【表18】
【0344】
表19.シャペロンヘルパープラスミドの構築のために使用したプライマー配列。
【表19】
【0345】
表20.使用したシャペロン。
【表20】
【0346】
ヘルパープラスミドでの抗EGFR1 Fab共発現
ベクターpGF131を、製造業者の説明に従ってBL21(De3)およびLemo21(De3)ケミカルコンピテント細胞に形質転換した。少数のクローンを選んで上述のように予備発現培養によって抗EGFR1 Fabの発現を確認した。最良のクローンを、シャペロンヘルパープラスミドでの共発現のためのバックグラウンドとして選択した。
【0347】
BL21(De3) pGF131およびLemo21(De3) pGF131エレクトロコンピテント細胞を、下記のように構築した。5mlの前培養を、カナマイシン20mg/Lを補った液体LB中で一晩成長させた。2日目に、1mlの前培養を、カナマイシン20mg/Lを有する50mlの液体LBに再接種した。培養を、OD
600がレベル0.5に達するまで+37℃、220rpmで約3時間継続した。細胞を、遠心分離、10分間8000xgによって採取して10mlの10%氷冷グリセロールに再懸濁させた。遠心分離による採取を繰り返し、その後5mlの10%氷冷グリセロールに再懸濁させた。細胞を、10x500ulのアリコートに分取して−80℃で保管した。
【0348】
シャペロンヘルパープラスミドpGF134およびpGF135を、BioRad Gene Pulser、プログラムEc2でBL21(De3)およびLemo21(De3)株に電気穿孔した。混合物を、+37℃における短い前培養後にLB+km+streに平板化して平板を+37℃において一晩培養した。上記のように予備発現培養を行った。
【0349】
図9において例証されるように、SKPシャペロンは、産生への明らかに有益な影響を有するが、発現プラスミドpGF131だけに宿るバックグラウンド株に対する差は、顕著ではなかった。それでも、シャペロンヘルパープラスミドでのクローンは、より早く成長してより高い細胞密度を達成する傾向があった。シャペロンヘルパープラスミドpGF134での培養も、より再現性があり安定であった。ペリプラズムのシャペロンヘルパープラスミドpGF4134(SKPシャペロン)とpGF135(SKPおよびFkpAシャペロン)との間には差が無かった。ヘルパープラスミドpGF138からの細胞質のシャペロンDnaK/J GrpEの発現は、発現レベルをさらには改善しなかった。その理由からLemo21(De3) pGF131 pGF134株およびBL21(De3) pGF131 pGF134株を、継続および発酵過程開発のために選択した。
【0350】
抗EGFR一本鎖
シグナル配列ompA(配列番号13)を有する抗EGFR1 ScFvのための発現ベクターpGF155を構築して高忠実度ポリメラーゼおよびギブソンアセンブリでpET−15b主鎖にPCR増幅した。構築において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを、配列番号30に記載される15−merリンカー配列をコードするG4Sリンカー/スペーサー配列(配列番号29)によって分離した。
【0351】
ベクターpGF155を、単独またはシャペロンヘルパープラスミドとの組み合わせのいずれかでバックグラウンド株BL21(De3)に形質転換して、発現レベルを10mLの予備培養に基づいて評価する。
【0352】
発酵槽培養した大腸菌(E.coli)株(BL21[DE3]pGF131pGF134)における抗EGFR1 Fab産生、酵母抽出物を補った培養。
接種
いくつかの(5〜8コロニー)大腸菌(E.coli)コロニー(BL21[DE3]pGF131pGF134)を、カナマイシン(25mg/L)およびストレプトマイシン(30mg/L)を補った5mlの液体LB培地におけるLB寒天平板から接種した。接種材料(第1の接種材料)を、+37℃、220rpmで、5時間インキュベートした。1mlの第1の接種材料を用いて500mlの振とうフラスコ内でカナマイシン(25mg/L)およびストレプトマイシン(30mg/L)を補った100mlの接種材料培養培地(下記)を接種した(第2の接種材料)。第2の接種材料を、+37℃、220rpmで、<16時間インキュベートした。10mlの第2の接種材料を、500mlの振とうフラスコ内でカナマイシン(25mg/L)およびストレプトマイシン(30mg/L)を補った100mlの接種材料培養培地(下記)に移した(第3の接種材料)。第3の接種材料を、+37℃、220rpmでOD
600約2.0が達成されるまでインキュベートしてこの接種材料を用いて発酵槽培養容器(2l)内でカナマイシン(25mg/L)およびストレプトマイシン(30mg/L)を補った900mlの発酵槽回分培養培地(下記)を接種して1000mlの最終体積およびOD
600値0.2を得た。
【0353】
表21.接種材料培養培地成分(FeCl
3x6H
2OからMgSO
4x7H
2Oまで微量金属元素[TME])。
【表21】
【0354】
表22.発酵槽回分培養培地(FeCl
3x6H
2OからMgSO
4x7H
2Oまで微量金属元素[TME])。
【表22】
【0355】
発酵回分段階
発酵槽培養容器の接種後、Biostat(登録商標)B Plus Digital Control Unitを用いて以下のパラメータを設定した:
−温度+37℃
−pH6.8(12.5% NH3、15% H3PO4)
−pO2(カスケードモード)>25%
−撹拌速度15%〜75%(=300rpm〜1500rpm)
−気体流(空気)13%〜50%(=0.4L〜1.5L)
【0356】
発酵回分段階の約8.5時間の時点で、DOT(溶存酸素圧)値が突然頂点に達してその結果撹拌スピードおよび気体流が減少した。これは、回分培養培地(25g/l)中に存在するグルコースの枯渇および発酵回分段階の終わりを示した。OD
600値31は、発酵回分段階中に達した。
【0357】
発酵流加段階
FS(供給液)1.1(67%Glc、2%MgSO
4)を、発酵槽培養容器内に0.24mL/分で6時間20分注入した。このFS1.1流加段階中にOD600値70に達した。
【0358】
FS1.2(50%Glc、1.5%MgSO
4、7.4g/100mLの酵母抽出物、発酵槽回分培養培地と比較して15倍のTME[微量金属元素]濃度、0.32g/Lのチアミン)を、発酵槽培養容器に0.24mL/分で7時間注入した。OD
600値134に達した。ここで11時間40分ポンプの速度を0.13mL/分に減速した。OD
600値は、134から増加しなかった。酵母抽出物の補充無しで別の発酵槽運転も実行してこの発酵槽運転は下記の通りウエスタンブロッティング分析で見積もられるように約20mg/Lの抗EGFR1 Fabを生じた。
【0359】
流加段階中の培養懸濁液におけるグルコース濃度は、Keto−diabur−test 5000スティック(Roche、カタログ番号:10647705187)を用いて製造業者の説明に従って観察した。
【0360】
タンパク質合成の誘導
タンパク質合成のIPTG誘導に先立って、培養温度を+37℃から+20℃に下げた。タンパク質合成のIPTG誘導(最終IPTG濃度1mM)をOD600値86において実行した。タンパク質合成の誘導は、16時間実行した。
【0361】
発酵ラウンド中の試料の回収
ウエスタンブロット分析用の試料(2X1mLのペレット試料および2X1mLの上清試料)を、異なる時点で回収した。誘導前試料を、タンパク質合成のIPTG誘導の直前に取った。別の試料の組を、4時間の誘導時点で回収した。最後の試料の組を、培養採取の前に16時間の誘導時点で回収した。細胞を、試料中で造粒して(+4℃、5000Xg、15分)上清を新しいチューブに移した。試料を、ウエスタンブロット法を用いて分析するまで−20℃で保管した。
【0362】
細胞採取
発酵培養懸濁液を、Watson Marlow 504U 056.3762.00ポンプを用いてSLA 3000遠心分離チューブ(Sorvall RC6)に回収して、遠心分離チューブを平衡させた。細胞を造粒して(+4℃、5000Xg、60分)上清を破棄した。細胞ペレットを−20℃で保管した。
【0363】
ペリプラズム発現した抗EGFR1 Fabのウエスタンブロット分析
1mLの発酵培養懸濁液に相当するペレット試料を、1mLの10xTE pH7.5(100mM Tris−HCl、10mM EDTA)中に再懸濁させた。試料を、室温で2時間勢いよくボルテックスし、+4℃、12000xgで60分間造粒して上清をペリプラズム抽出物として回収した。
【0364】
ペリプラズム抽出物を、ウエスタンブロッティングでさらに分析した。100μLの抽出物を、25μLの非還元添加液と混合した。12.5μLの混合物を、4〜20%のPrecise Tris−Glycine SDS−Pageゲル(Thermo Scientific)に添加した。ゲルを、1xLaemmli泳動緩衝液中で200Vで約45分動かしてTris−Glycineブロッティング緩衝液中のニトロセルロース膜に350mAで約1.5時間ブロットした。SDS−PageおよびブロッティングのためにBioRad Mini−protean系を用いた。ブロットした膜を、PBS中の1%BSAでブロックした。ペルオキシダーゼ複合体(Sigma Aldrich、カタログ番号A0293)およびLuminata Forte Western HRP基質(Millipore、カタログ番号WBLUF0500)と共に抗−ヒトIgG(Fab特異的)で検出を行った。化学発光反応を、富士フィルムLuminescent Image Analyzer LAS4000で検出した。
【0365】
10μLのそれぞれの培養上清試料を、2.5μLの非還元添加液と混合してこれらの試料をペリプラズム抽出物試料に関して上述のようにSDS−PAGEゲル中で実行してニトロセルロース膜上でブロットした。
図10に結果を示す。
【0366】
Fab精製
ろ過したペリプラズム抽出物の緩衝液を、5mlの陽イオン交換カラム(HiTrap SP FF、 GE Healthcare)による第1の精製ステップに先だってAmicon Ultra 10K遠心ろ過器を用いて50mM MES pH6に交換した。移動相Aは50mM MES pH6であり移動相Bは50mM MES pH6+500mM NaClであった。実施前に試料を1.2μmの膜を通してろ過した。最初は、10%試料をカラムに流速2.5ml/分で5分間注入し、その後流速を5ml/分に変更した。カラムを、相Aの57.5mlで実行し、次いで35mlより多く0%Bから100%Bの直線濃度勾配を適用した。2.5mlの画分を回収して画分A5〜A9を貯蔵した。試料の残りを、上述のように2回の別々の運転において実行して画分A5〜A10を貯蔵した(
図11)。パパイン消化した抗EGFR1 Fabを、対照として用いた。
【0367】
貯蔵した画分(A5〜A10)を、緩衝液を交換せずにプロテインLカラム(1ml)に注入した。プロテインLを、試料注入中は流速0.2ml/分でならびに洗浄および溶離中は1ml/分で実行した。移動相Aは、PBSおよびBは、0.1M クエン酸ナトリウム pH3であった。試料を、100%Bで溶離した。鋭いピークで溶離したタンパク質(
図12)および画分A5〜A7を貯蔵して2M Tris−HCl pH9で中和した。2つの精製ステップ後のFabの収量は約44mg/Lになると概算された。別の回分を、プロテインL精製のみにかけてこれはFab画分の約72mg/Lを与えた。パパイン消化した抗EGFR1 Fabを、対照として用いた。
【0368】
貯蔵した画分を、SDS−PAGEにおいて分析した。プロテインLカラムを用いたクロマトグラフの実行からのこれら3つの貯蔵した試料のそれぞれ24μLを、6μLの還元添加液と混合してSDS−PAGEゲル中で実行した。ゲルを、クマシー系の染料で染色した(
図13)。
【0369】
実施例14.抗EGFR1 Fabおよび抗EGFR1 Fab BSH−デキストランのEGFR1への結合
プロテインA精製した抗EGFR1産生CHO細胞を、パパイン消化し、NAb Protein A Plus Spinカラムで精製して二分岐オリゴ糖および1つのGlcNAc単位を残す高マンノースを非グリコシル化Fabフラグメントが得られるようにアスパラギンに開裂する組み換えEndo F2(Elizabethkingia meningosepticum(E.coli、Calbiochemにおいて産生される))で処理した。100mUの酵素を約1mgの抗EGFR1 Fabに加えて50mM NaAc pH4.5中で+37℃で一晩インキュベートした。
【0370】
100μgの抗EGFR1 Fabおよび100μgの抗EGFR1 Fab BSH−デキストランを、Amersham Cy3 mono−reactiveを用いて製造業者の説明に従ってCy3標識してマイクロアレイ印刷に用いられるクエン酸/リン酸緩衝液pH7中で0.5mg/mlの溶液を調製した。
【0371】
6種の異なる分子のアレイ(HER2、ヒトEGFR1、CD64、CD16a、HSAおよび抗デキストランIgG)を、アミン反応性のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化したマイクロアレイスライド上に印刷した(それぞれの分子について4つの平行な点)。Cy3標識した抗EGFR1 Fab BSH−デキストラン複合体および抗EGFR1 Fabを、スライドの別々のウェル上で0.4nMから900nMの範囲の8種の濃度でインキュベートした。非特異的な結合を、10x非複合体化BSHデキストランを用いて除去した。スライドの洗浄後にレーザースキャナーを用いて蛍光シグナルを検出した。それぞれの濃度点についての平均強度および標準偏差を、4つの平行なデータ点から計算した。K
d値を、データをラングミュア等温式:
F=(F
max[p])/([p]+K
d)
(式中、F=蛍光強度、F
max=飽和における最大強度、[p]=Cy3標識分子の濃度およびK
d=解離定数)に適合させることにより決定した。
【0372】
抗EGFR1 Fab BSH−デキストラン複合体は、解離定数約K
d=97nMでEGFR1に結合した。非複合体化Fabは、抗EGFR1 Fab BSHデキストランと比較して約2倍高いEGFR1への親和性を有する(
図14)。HER2、CD64、CD16a、HSAまたは抗デキストランIgGに結合している抗EGFR1 Fab BSH−デキストランまたは非複合体化Fabは、検出限界以下であった。
【0373】
技術の進歩に伴って本発明の基本的着想が種々の方法において実践され得ることは当業者に明らかである。本発明およびその実施形態はしたがって、上記の実施例には限定されず、むしろこれらは特許請求の範囲内で変更し得る。