【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載した構成のものでは、一定の竿調子を演出できるものであるが、前記した釣り竿用竿体の曲がり方とは異なる曲がりを呈する竿体であることを求められることもある。このような竿調子は、釣り竿用竿体自体の剛性(断面二次モーメント×縦弾性係数)に関係している。
したがって、所望の竿調子を得る場合に、釣り竿用竿体の剛性を整える為に、繊維強化樹脂シートを構成している強化繊維のマトリックス樹脂に対する重量割合を整えたり、弾性率の異なる強化繊維に切り換える等の手法で竿調子を整えていた。
特許文献2に記載した構成のものでは、元竿の構成を提示したものであり、握り部を竿先側の部分より大径化する為に
図1のような大径の握り部を形成したものであり、竿調子を整える為に採られた方策ではないことは明らかである。
また、特許文献3には、スライドガイドを移動調節かつ所望位置で固定するために、穂先竿の竿先側部分略一定の外径を呈するストレート部分に、かつ、ストレート部分の竿元側に一定の割合で外径が拡大するテーパ部分を形成するものが記載されている。また、竿先側から竿元側に掛けて徐々に小径化する部分を設けている構成も示されている。
【0007】
さらには、次のような課題も存在する。
穂先竿は、魚の当たりがあった場合に、手元まで振動等で伝える役割をするが、その当りを目で見ることができれば魚信を捉えることが更に容易になるところから、目で捉える機能が最重要機能と位置付けられる。
魚の当たりを目で感知するに際し、
(イ)短い釣竿では、穂先竿の先端部分のみが魚信に反応して振動しても、釣り人が目視することは比較的容易であるところから、先端部分のみが魚の引きに対応して敏感に反応することが必要であり、先端側程敏感な竿体とすれば、釣り人は小さい魚信をすばやくキャッチできる。
(ロ)一方、長い竿(長尺竿)では、例えば、6m以上の竿では、魚信があった場合、穂先部先端の一定長さの部分が振動しなければ、元竿を手にした釣り人は魚信があっても、穂先部先端の振動を視認することができない。
このような課題に対しても、上記した釣り竿用竿体は応え切れていない面があった。
【0008】
本発明の目的は、滑らかでかつメリハリのある竿調子を演出できるとともに、当たりの目視し易い釣り竿用竿体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、
元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた
繊維強化樹脂シート製の筒状の竿素材で構成される釣り竿用の竿体であって、
前記繊維強化樹脂シートの一辺
が、前記繊維強化樹脂シートが巻回
された状態で、竿体の軸線に沿った直線状に形成されるとともに、前記一辺に対向する他辺が、竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、かつ、前記他辺における竿先側の一定長さに亘って一定の割合で離間する傾斜直線部に形成され、前記傾斜直線部の竿元側端から中間部を介して竿元側部に掛けて、前記対向する一辺から離間する突出円弧形状に形成してあり、
請求項2に係る発明の特徴構成は、
前記
竿素材の製作に使用される芯金
が、竿先側の一定長さに亘って一定の割合で拡径する緩円錐台面部に形成されるとともに、前記緩円錐台面部の竿元側端から中間部を介して竿元側部に掛けて、外向きに膨出する膨出円弧面
部に形成されている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用〕
ここでは、一辺を平行直線状に他辺を曲線形状に形成することによって、従来のように、他辺を傾斜直線状に形成する場合に比べて、この繊維強化樹脂シートを芯金に巻回して竿体として形成した場合に、竿軸線方向に沿った各竿部分の剛性は、一定の変化率で変化するものではなく、変化率が異なったものとなる。
【0011】
〔効果〕
上記のように、竿部分の剛性の変化率を異なるものにできるので、竿体は魚の荷重が掛かった場合に、一定の曲率に沿った曲がりを呈するのではなく、曲率を変化させた曲がりを呈することとなり、竿体の先端部だけが曲がり易い先調子や、竿体の元側から曲がり易い胴調子などを容易に得ることができる釣り竿用竿体を提供できるに至った。
【0012】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた
繊維強化樹脂シート製の筒状の竿素材で構成される釣り竿用の竿体であって、
前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記繊維強化樹脂シートの一辺
が、前記繊維強化樹脂シートが巻回
された状態で、竿体の軸線に沿った平行直線状に形成されるとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、かつ、前記他辺における全長に亘って、前記対向する一辺から離間する突出円弧形状に形成し、穂先側に第1の曲率半径を有する先側繊維強化樹脂シート部分と、第1の曲率半径とは異なる第2の曲率半径を有する元側繊維強化樹脂シート部分とに形成してあり、
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項3記載の
竿素材の製作に使用される芯金は、
(a) 全長に亘って膨出円弧面部を有し、穂先側に第1の曲率半径を有する先側膨出円弧面部と、第1の曲率半径とは異なる第2の曲率半径を有する元側膨出円弧面部とを配して構成してある
か、又は、
(b) 全長に亘って一定の割合で拡径する緩円錐台状面で構成して
ある、
点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
〔作用効果〕
このように、繊維強化樹脂シートの他辺を突出円弧形状とすることによって、従来のように、他辺を直線状に形成した場合に比べて、一辺と他辺との間隔は大きくなっている。これによって、竿体の元側から中間部に掛けての剛性が従来の竿体に比べて大きくなり、かつ、その剛性の変化率も小さなものとなるので、竿元側と中間部においては、魚の荷重が掛かっても比較的曲がりにくい状態を呈する。
これに対して、竿体の竿先端部では、一辺と他辺との間隔が十分小さくなっているので、竿先端部において撓み易くなっている。
このような構成においては、特に短い釣竿に好適であり、穂先竿の先端部分のみが魚信に反応して振動すれば、釣り人が目視することは比較的容易であるところから、釣り人は小さい魚信であってもすばやくキャッチできる。
このように、竿体の先端部のみが曲がり易く、魚信に鋭敏に反応する釣り竿用竿体を提供することができた。
【0014】
〔構成〕
請求項5に係る発明の特徴構成は、元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた
繊維強化樹脂シート製の筒状の竿素材で構成される釣り竿用の竿体であって、
前記
竿素材の製作に使用される芯金は、全長に亘って膨出円弧面部を有し、穂先側に第1の曲率半径を有する先側膨出円弧面部と、第1の曲率半径とは異なる第2の曲率半径を有する元側膨出円弧面部とを配して構成してあり、
前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記繊維強化樹脂シートが前記芯金に巻回される際に、前記芯金の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から一定の比率で離間する傾斜直線状部に形成してある点にある。
【0015】
〔構成〕
請求項6に係る発明の特徴構成は、元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた
繊維強化樹脂シート製の筒状の竿素材で構成される釣り竿用の竿体であって、
前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記繊維強化樹脂シートの一辺
が、前記繊維強化樹脂シートが巻回
された状態で、竿体の軸線に沿った平行直線状に形成
されるとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、かつ、前記他辺における竿先端側から中間部を介して竿元側端近くまで、前記対向する一辺から大きな曲率半径で離間する緩傾斜曲線部分に形成し、前記緩傾斜曲線部分の竿元端側に小さな曲率半径で内向きに湾曲する曲線部分を形成してあり、
請求項7に係る発明の特徴構成は、
請求項6記載の竿素材の製作に使用される芯金は、
(a) 竿先側から中間部を介して竿元側部分近くまで、一定の割合で拡径する緩円錐台面部に形成するとともに、前記緩円錐台面部の竿元側に急拡大した凹入円弧面部を形成する
か、又は、
(b) 全長に亘って一定の割合で拡径する緩円錐台状面で構成してあ
る、
点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間した状態を維持しながら、前記対向する一辺に向かう凹入円弧形状に形成する場合には、凹入円弧状部分では、直線的部分より剛性の変化が大きく、竿先側に向けて大きく縮径部分を形成することとなる。
このように、凹入円弧状の縮径部分が竿元側に形成されると、その縮径部分で剛性が大きく変化し、竿先側に向けては剛性の変化率が大きくはならないので、魚の荷重が掛かった場合に、縮径部分で大きな曲がりを生じ易くなり、前記した胴調子の竿体を作成することができる。
【0017】
〔構成〕
請求項8に係る発明の特徴構成は、元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた
繊維強化樹脂シート製の筒状の竿素材で構成される釣り竿用の竿体であって、
前記
竿素材の製作に使用される芯金は、竿先側から中間部を介して竿元側部分近くまで、一定の割合で拡径する緩円錐台面部に形成するとともに、前記緩円錐台面部の竿元側に急拡大した凹入円弧面部を形成し、
前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記繊維強化樹脂シートが前記芯金に巻回される際に、前記芯金の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から一定の割合で離間する傾斜直線部に形成してある点にある。
【0018】
〔構成〕
請求項9に係る発明の特徴構成は、元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを、細長棒状の芯金に巻回して作成され、
前記繊維強化樹脂シートを、前記繊維強化樹脂シートが前記芯金に巻回される際に、前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記芯金の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、
かつ、(a)前記他辺の少なくとも一部を、曲線形状を呈するものに形成するか、又は、(b)前記対向する一辺から離間する突出円弧形状に形成した、
釣り竿用の竿体を形成する竿体形成用芯金であって、
竿先側から竿元側に掛けて徐々に大径化する円錐台状体に形成するとともに、前記円錐台状体の外周面を外向きに膨らむ膨出円弧面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
〔作用効果〕
円錐台状体の外周面を外向きに膨らむ膨出円弧面に形成することによって、一定の割合で大径化する従来型の芯金に比べて、円錐台状体の外径を大きくすることができて、製作される竿体の剛性を大きくできる。
このような構成の芯金は、請求項3に記載の他辺が円弧状を呈する繊維強化樹脂シートに対応するものであるが、他辺が一定の直線状傾斜状態を示すものであっても、請求項3に記載したような作用効果を奏するものである。
つまり、このような芯金に繊維強化樹脂シートを巻回して作成された竿体においては、竿体の元側から中間部に掛けての剛性が従来の竿体に比べて大きくなり、かつ、その剛性の変化率も小さなものとなるので、竿元側と中間部においては、魚の荷重が掛かっても比較的曲がりにくい状態を呈する。
これに対して、竿体の竿先端部では、一辺と他辺との間隔が十分小さくなっているので、竿先端部において撓み易くなっている。
したがって、芯金の形状を従来と違った構成にすることによって、多様な竿調子を実現できる。
【0020】
〔構成〕
請求項10に係る発明の特徴構成は、元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを、細長棒状の芯金に巻回して作成され、
前記繊維強化樹脂シートを、前記繊維強化樹脂シートが前記芯金に巻回される際に、前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記芯金の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、
かつ、(a)前記他辺の少なくとも一部を、曲線形状を呈するものに形成するか、又は、(b)前記対向する一辺に向かう凹入円弧形状に形成した、
釣り竿用の竿体を形成する竿体形成用芯金であって、
竿先側から竿元側に掛けて徐々に大径化する緩傾斜面部を形成するとともに、前記緩傾斜面部の竿元側に、内向きに凹入する状態で急に拡大する凹入円弧面部を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0021】
〔作用効果〕
このような構成の芯金は、請求項6に記載の他辺が凹入円弧状を呈する繊維強化樹脂シートに対応するものであるが、他辺が一定の直線状傾斜状態を示すものであっても、請求項
6に記載したような作用効果を奏するものである。
つまり、このような芯金に繊維強化樹脂シートを巻回して作成された竿体においては、竿体の中間部から先端部に掛けての緩傾斜面部においては、剛性が従来の竿体に比べて小さくなり、かつ、その剛性の変化率も小さなものとなるので、その部分においては比較的曲がり易くい。一方、凹入状円弧面部においては、急拡大するので、この部分での剛性の変化率が大きくなり、曲がり易くなっている。このことによって、竿元側においては、魚の荷重が掛かっても比較的曲がり易く、胴調子のものになっている。
このことは、竿体が長い釣り竿の穂先竿として使用された場合にも、魚が掛かった場合に竿元側から大きく撓むこととなるので、釣り人が視認することが容易にできるようになり、魚信を捉えやすくなっている。
これに対して、竿体の竿先端部では、一辺と他辺との間隔が十分小さくなっているので、竿先端部において撓み易くなっている。
したがって、芯金の形状を従来と違った構成にすることによって、多様な竿調子を実現できる。