特許第5924877号(P5924877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924877
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】光学フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20160516BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160516BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B32B7/02 103
   G02F1/13363
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-129107(P2011-129107)
(22)【出願日】2011年6月9日
(65)【公開番号】特開2012-255926(P2012-255926A)
(43)【公開日】2012年12月27日
【審査請求日】2014年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 丈也
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−240544(JP,A)
【文献】 特開2009−122715(JP,A)
【文献】 特開2006−209097(JP,A)
【文献】 特開2004−118185(JP,A)
【文献】 特開2007−041520(JP,A)
【文献】 特開2011−003262(JP,A)
【文献】 特開2008−164925(JP,A)
【文献】 特開2005−055486(JP,A)
【文献】 特開2006−227360(JP,A)
【文献】 特開2006−309025(JP,A)
【文献】 特開2006−350294(JP,A)
【文献】 特開2009−075481(JP,A)
【文献】 特開2009−086257(JP,A)
【文献】 特開2009−181104(JP,A)
【文献】 特許第4595005(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性基を有する液晶性材料(材料a)から形成され、配向固定がなされていないホメオトロピック配向層(層A)からなるポジティブCプレート上に、感光性基を有する液晶性材料(材料b)から形成された光配向層(層B)からなるポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートを形成し、ついで、層Aと層Bの積層体に、非偏光性の紫外線を照射することにより、前記層Aと前記層Bにおける配向を固定するとともに、両配向層を、界面における感光性基同士の化学結合により、接着剤を介することなく直接密着して積層することを特徴とする光学フィルム積層体を製造する方法であって、
支持体上に塗布された前記材料aを80〜130℃に加熱後冷却することにより前記層Aを形成する工程と、前記層A上に前記材料bを塗布した後、直線偏光性紫外線を照射し、その後前記材料bの等方相転移温度以下の温度で加熱を行うことにより、前記層Bを形成する工程とを含み、層Bを形成する前記工程の後、前記非偏光性の紫外線の照射を行う、光学フィルム積層体の製造方法
【請求項2】
請求項において、層Aは、支持体フィルム上に材料aを溶媒に溶解した溶液を塗布して層を形成し、乾燥・加熱して製造される光学フィルム積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項において、層Bは、層A上に材料bを溶媒に溶解した溶液を塗布して層を形成、乾燥し、ついで直線偏光性紫外線を照射することにより製造される光学フィルム積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項のいずれか1項において、材料aと、材料bとが、それぞれ下記の化学式1、2、または3で示される側鎖を有する重合性単位を含む液晶性ポリマーからなることを特徴とする、光学フィルム積層体の製造方法。
【化1】
【化2】
【化3】
但し、[化1]および[化2]のそれぞれの式において、nは1〜12、mは1〜12の整数をそれぞれ示し、XまたはYは、none、−COO、−OCO−、−N=N−、−C=C−または−C64−をそれぞれ表し、W1はシンナモイル基、カルコン基、シンナミリデンキ基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体を表すか、または、−H、−OH、もしくは−CNを表し、W2は、シンナモイル基、カルコン基、シンナミリデンキ基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体を表すか、または、−H、−OHもしくは−CNを表し、[化3]の式において、sは0または1を表し、tは1〜3の整数を表し、RはH、アルキル基,アルキルオキシ基またはハロゲンを表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に使用する光学フィルム積層体に関し、詳しくは、液晶表示装置の視野角特性を改善する光学補償機能を有する光学フィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、広視野角化、高コントラスト化が求められている。このような液晶表示装置としてIPS(In-plane Switching:IPS)モードなどの液晶表示装置(LCD)が挙げられる。しかしながら、このような液晶表示装置においても、液晶表示装置の前面、裏面に配置される直交する2枚の偏光板を斜めから見た場合、2枚の偏光板の吸収軸が見かけ上直交からずれてくることにより、黒表示時の光漏れが生じ、コントラストが低下するという問題点がある。
このような問題点から、特許文献1では、IPS−LCDにおいて、正の一軸性の光学異方性を有しており、その光軸は基板面に対して垂直な方向(z方向)に延びている第一の補償層(ポジティブCプレート)と正の一軸性の光学異方性を有しており、その光軸は基板面に平行な方向に延びている第2の補償層(ポジティブAプレート)により観察方向による視角特性を改善する方法がシミュレーションによって提案されている。
また、特許文献2では、A延伸フィルム、液晶性材料からなる面内1軸性を発現した層(ポジティブAプレート)と液晶性材料からなるホメオトロピック層(ポジティブCプレート)を配置する構成が提案されている。
更に、特許文献3には、ホモジニアス配列に配向させた液晶組成物の固化層または硬化層からなるポジティブAプレートとホメオトロピック配列に配向させた液晶組成物の固化層または硬化層からなるポジティブCプレートからなる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−133408号公報
【特許文献2】特開2009−122715号公報
【特許文献3】特許4592005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、具体的なフィルム構成に関する記載はなく、実施例も示されていない。また、特許文献2では、実施例において、ポジティブAプレートとして延伸されたPC(ポリカーボネート)フィルムまたはCOP(シクロオレフィンポリマー)フィルムを用い、ポジティブCプレートとしてUV硬化型垂直配向された液晶フィルムを用いる例が記載されているが、それらを積層し固定する手段についてはなんら明確にされていない。特許文献3では、液晶組成物の固化層または硬化層を用いることは液晶表示装置の薄型化に貢献するものとして提案されているが、これらを積層する手段として各光学素子(偏光板、ポジティブAプレート、ポジティブCプレートおよび液晶セル)の隙間に接着剤層または粘着剤層を満たす方法が記載されている。このような方法では、ポジティブAプレートとポジティブCプレートを薄型化できるが、それらを接着または粘着するためには接着剤層または粘着剤層を省くことができず、この接着剤層または粘着剤層の分だけ層厚が厚くなるという問題点があり、薄型化が十分に達成されていない。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ポジティブCプレートとポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートとからなる光学補償フィルム層をさらに薄型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、接着剤や粘着剤を用いることなく(以下、本明細書では、接着剤と粘着剤とを総称して単に接着剤と称することがある。)、ポジティブCプレートとポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートとを直接密着させて積層できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明第1の構成は、感光性基を有する液晶性材料から構成されたポジティブCプレートと、感光性基を有する液晶性材料から構成されたポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートと、が積層された光学フィルム積層体において、
前記ポジティブCプレートと前記ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートとが、接着剤を介することなく、直接密着して積層されてなることを特徴とする光学フィルム積層体である。
【0008】
前記ポジティブCプレートは、ホメオトロピック配向層からなることが好ましく、前記ポジティブAプレートおよび光学的二軸性プレートが、それぞれ光配向層からなることが好ましい。
【0009】
本発明第2の構成は、偏光板と、前記の光学フィルム積層体と、を含む液晶表示パネルである。
【0010】
前記液晶パネルにおいて、偏光板と、ポジティブCプレートと、ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートと、液晶セルとが、この順に配置される場合には、前記ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートの面内遅相軸が偏光板の吸収軸と平行していることが好ましく、偏光板と、ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートと、ポジティブCプレートと、液晶セルとが、この順に配置される場合には、前記ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートの面内遅相軸が偏光板の吸収軸と直交していることが好ましい。
【0011】
本発明第3の構成は、感光性基を有する液晶性材料(材料a)から形成され、配向固定がなされていないホメオトロピック配向層(層A)からなるポジティブCプレート上に、感光性基を有する液晶性材料(材料b)から形成された光配向層(層B)からなるポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートを形成し、ついで層Aおよび層Bの積層体に、非偏光性の紫外線を照射することにより、前記層Aと前記層Bにおける配向を固定するとともに、両配向層を、接着剤を介することなく直接密着して積層することを特徴とする光学フィルム積層体を製造する方法である。
【0012】
前記層Aは、支持体フィルム上に材料aを溶媒に溶解した溶液を塗布して層を形成し、乾燥(脱溶媒)・加熱して製造することが好ましい。また、前記層Bは、層A上に材料bを溶媒に溶解した溶液を塗布して層を形成、乾燥し、ついで直線偏光性紫外線を照射することにより製造することが好ましい。
【0013】
材料aの感光性基と、材料bの感光性基が、光によって互いに反応する感光性基であることが好ましく、材料aの感光性基と、材料bの感光性基が、同一であることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明第1の構成によれば、前記ポジティブCプレートと前記ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートとが、接着剤を介することなく、直接密着して積層された光学フィルム積層体が得られることから、該光学フィルム積層体は、薄型化された光学補償フィルムとして用いることができる。前記ポジティブCプレートと前記ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートとは密着していることから、両プレート間で剥離することなく、耐久性の高い光学補償フィルムとなる。
【0015】
本発明第2の構成によれば、偏光板と前記の光学フィルム積層体とを含む液晶表示パネルにおいて、前記光配向層の面内遅相軸が偏光板の吸収軸と直交または平行していることにより、正面視の透過光は位相差を受けることなく、直交する2枚の偏光板を斜めから見た場合に生じる光漏れが低減する効果を奏する。
【0016】
本発明第3の構成によれば、ホメオトロピック配向層(ポジティブCプレート)上に、光配向層(ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレート)が、接着剤を用いることなく密着して、両層間で剥離の起こりがたい光学フィルム積層体が得られるので、薄型化した液晶表示装置を得ることができる。ホメオトロピック配向層と光配向層の両層の形成を一連の工程で実施できるので、効率的な製造ラインの設定が可能である。
【0017】
本発明において、材料aの感光性基と、材料bの感光性基とが、光によって互いに反応する感光性基である場合、さらに好ましくは材料aの感光性基と、材料bの感光性基とが同一である場合には、両プレートを構成する層Aと層Bとの界面において材料aと材料bの感光性基同士が光反応により結合されやすく、さらに強固な密着構造を得ることができるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の光学フィルム積層体の一例を示す模式図である。
図2】本発明の液晶パネルにおける偏光板と光学フィルム積層体の配置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(光学フィルム積層体の基本構成)
本発明の光学フィルム積層体は、ポジティブCプレートとポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートとの積層体から構成されている。
本発明において、ポジティブCプレートとは、面内の主屈折率をnx(遅相軸方向)、ny(進相軸方向)とし、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、屈折率分布がnz>nx=nyを満足する正の一軸性位相差光学素子をいう。かかるポジティブCプレートは、感光性基を有する液晶性材料から形成されたホメオトロピック配向層から構成されている。
本発明において、ポジティブAプレートとは、屈折率分布がnx>ny=nzを満足する正の一軸性位相差光学素子をいう。かかるポジティブAプレートは、感光性基を有する液晶性材料から形成され、通常、ホモジニアス配向層から構成されている。
本発明において、光学的二軸性プレートとは、屈折率分布がnx>nz>ny、nx>ny>nzなどを含み、nx≠ny≠nzを満足する二軸性位相差光学素子をいう。
本発明においては、上記のポジティブCプレートとポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートとが、接着剤を介することなく直接積層され、しかも層間剥離を起こすことはない。ポジティブCプレートの形成とポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートの形成を以下に開示する特定の方法により行うことにより、接着剤を介することなく、層間剥離のない光学フィルム積層体を得ることができる。
【0020】
図1は、本発明の光学フィルム積層体の一例を示す模式図である。本発明の光学フィルム積層体1は、ポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレート2とポジティブCプレート3とが、界面4で接着剤を介することなく、直接積層されている。
【0021】
(ポジティブCプレート)
本発明において、ポジティブCプレートは、感光性基を有する液晶性材料から形成されたホメオトロピック配向層から構成されている。ここで、ホメオトロピック配向とは、液晶性材料がフィルム法線方向に対し、平行かつ一様に配向した状態、すなわち、垂直配向した状態をいう。ホメオトロピック配向することができる液晶性材料は、液晶性ポリマーであっても、液晶性モノマーであってもよい。
【0022】
(ポジティブAプレート)
本発明において、ポジティブAプレートは、感光性基を有する液晶性材料から形成されたホモジニアス配向層から構成されている。ここで、ホモジニアス配向とは、液晶性材料がフィルム平面に対して平行に、かつ同一方位に配列している状態(光学的一軸性)をいう。ホモジニアス配向させることのできる液晶性材料は、液晶性ポリマーであっても液晶性モノマーであってもよい。
【0023】
(光学的二軸性プレート)
本発明において、光学的二軸性プレートは、感光性基を有する液晶性材料から形成された、液晶性材料がフィルム平面において二軸配向している層から構成されている。二軸配向している層を形成することのできる液晶性材料は、液晶性ポリマーであっても液晶性モノマーであってもよい。
【0024】
(光配向層)
上記のポジティブAプレート(光学的一軸性)と光学的二軸性プレートとは、面内でメソゲンが配向して光学的異方性を示す光配向層であるので、以下の記載において光配向層と称することがある。
【0025】
(感光性基を有する液晶性材料)
本発明において、ポジティブCプレート(ホメオトロピック配向層)、ポジティブAプレート(ホモジニアス配向層)、および光学的二軸性プレートを形成するために用いられる感光性基を有する液晶性材料としては、(i)シンナモイル基、カルコン基、シンナミリデンキ基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基(または、それらの誘導体)などの感光性基と(ii)液晶性ポリマーのメソゲン成分と
して多用されているビフェニル、ターフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼンなどの置換基と、をスペーサーを介してまたは介さず結合した構造を含む側鎖を有する感光性側鎖型液晶性ポリマーが挙げられる。なお、側鎖末端にカルボキシル基を有する感光性の側鎖を有し、該側鎖末端のカルボキシル基の水素結合による2量化により剛直な構造を形成し、側鎖自体にメソゲン基を構造に含まなくとも液晶性を発現するポリマーも本発明において好ましく用いられる。上記の感光性側鎖型液晶性ポリマーを構成する主鎖としては、上記側鎖をスペーサーを介して結合した炭化水素、アクリレート、メタクリレート、シロキサン、マレインイミド、N−フェニルマレインイミドなどが挙げられる。これらのポリマーは同一の繰り返し単位からなる単一重合体または構造の異なる側鎖を有する複数の単位からなる共重合体、あるいは感光性基を含む側鎖を有する単位に、感光性基を含まない側鎖を有する単位を液晶性を損なわない程度に配合して得られる共重合体のいずれであってもよい。なお、本発明において感光性基とは、光照射により他の分子と結合する官能基をいう。また、本発明において、液晶性材料とは、材料単独に物理的な外部刺激(加熱、冷却、電場、磁場、せん断の印加等)を与えた時に液晶性を示すか、または溶媒や非液晶性成分との混合により液晶性を発現する材料をいう。
さらに、耐熱性を向上させるために、上記ポリマーに反応性基を導入し、イソシアネート材料、エポキシ材料などの架橋剤により、液晶性を損なわない程度に架橋構造を導入したポリマーであってもよく、また、下記の低分子材料として2官能性の低分子材料を加えて重合し、架橋性ポリマーを含有するようにしてもよい。
【0026】
(ホメオトロピック配向層、光配向層の形成)
本発明において、ホメオトロピック配向層は、上記の液晶性材料(液晶性ポリマー)、好ましくは、後述する化学式1〜3で示される液晶性材料(液晶性ポリマー)を、溶媒に溶解した溶液からフィルムを製膜し、溶媒を除去後、加熱することにより形成することができる。
本発明において、光配向層は、上記の液晶性材料(液晶性ポリマー)に必要により下記に記載する低分子化合物を加えた組成物を、溶媒に溶解した溶液からフィルムを製膜し、溶媒を除去後、直線偏光性の紫外線を照射、加熱することにより形成することができる。
上記により形成されたホメオトロピック配向層および光配向層は、さらに非偏光性の紫外線を照射することによりそれぞれの配向を固定することができる。
【0027】
(積層体の形成)
本発明の光学フィルム積層体は、まず、上記の方法によりホメオトロピック配向層を形成し、ついで、形成されたホメオトロピック配向層の上に、直接、上記の方法により光配向層を形成する、あるいは、まず、光配向層を形成し、ついで、光配向層上にホメオトロピック配向層を形成することにより製造することができる。このことにより、接着剤を介することなく、ホメオトロピック配向層と光配向層とからなる光学フィルム積層体を形成することができる。以下、本明細書においては、まずホメオトロピック配向層を形成し、ついで光配向層を形成する場合について具体的に説明する。
【0028】
(ホメオトロピック配向層を形成するポリマー)
本発明においてホメオトロピック配向層を形成するために用いられるポリマーとしては、下記の化学式1、2または3で示される側鎖を有するモノマーを用いて形成されるポリマーが好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
前記[化1]および[化2]のそれぞれの式において、nは1〜12、mは1〜12の
整数をそれぞれ示し、XまたはYは、none、−COO、−OCO−、−N=N−、−C=C−または−C64−をそれぞれ表し、W1はシンナモイル基、カルコン基、シンナミリデンキ基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体を表すか、または、−H、−OH、もしくは−CNを表し、W2は、シンナモイル基、カルコン基、シンナミリデンキ基、ビフェニルアクリロイル基、フリルアクリロイル基、ナフチルアクリロイル基もしくはそれらの誘導体を表すか、または、−H、−OHもしくは−CNを表す。
【0032】
上記の式で表わされる側鎖のなかで、W1およびW2がーH、−OHまたはーCNで表わされる側鎖を有するモノマーは感光性を示さないが、この材料を用いる場合には、側鎖に感光性基を有するモノマーと共重合することにより、本発明において用いられる感光性基を有する液晶性ポリマーを得ることができる。共重合する場合において、上記の式で表わされる感光性を示さないモノマーの割合が高いほどホメオトロピック配向しやすいポリマーを得やすいが、共重合割合はホメオトロピック配向性と液晶性とのバランスを見て適宜設定することができる。この場合、側鎖に感光性基を有する液晶性モノマーとしては、後述の光配向層を形成するために用いられる液晶性モノマーと化学構造が同一または類似するものを用いることが、ホメオトロピック配向層と光配向層との界面における密着を高める点で好ましい。
【0033】
【化3】
【0034】
[化3]の式において、sは0または1を表し、tは1〜3の整数を表し、RはH、ア
ルキル基,アルキルオキシ基またはハロゲンを表す。
【0035】
上記の化学式1〜3で表わされる側鎖を有するモノマー単位から形成される液晶性ポリマー、必要により、上記の液晶性ポリマーに低分子化合物、その他の成分(重合触媒など)を加え、これらを適当な溶剤に溶解して調製される塗布液を支持体上に塗布し、溶剤を除去することにより液晶性ポリマー層を支持体上に形成することができる。
溶剤としては、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、トルエン、テトラヒドロフラン、o−ジクロロベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、これらの溶媒は、単独または混合して用いられる。塗布液を支持体上に塗布して、溶剤を除去する過程において、形成される層はホメオトロピック配向を示し始め、乾燥後、さらに加熱を行うことによりホメオトロピック配向は増強される。乾燥は常温で行ってもよく、材料の等方相転移温度以下の温度に加熱して行ってもよい。なお、材料によっては、支持体フィルムの表面においてホメオトロピック配向を示す場合がある。
支持体としては、種々の高分子フィルムの中から適宜選択して用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーフィルム、ビスフェノールA・炭酸共重合体などのポリカーボネート系ポリマーフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン・プロピレン共重合体などの直鎖または分枝状ポリオレフィンフィルム、ポリアミド系フィルム、イミド系ポリマーフィルム、スルホン系ポリマーフィルムなどが挙げられる。
【0036】
上記の化学式1〜3で表わされる側鎖を有する重合性単位を含む液晶性ポリマーを上記の溶媒に溶解した溶液を上記の支持体上に所定厚みのフィルムになるように、スピンコート、ロールコート、スクリーン印刷法、ナイフコート、スプレーコートなどの塗布方法により塗布し、塗布後、乾燥して溶媒を除去し、さらに、80〜130℃、好ましくは、100〜120℃に加熱後、冷却することにより、ホメオトロピック配向層を形成することができる。上記のようにして形成されたホメオトロピック配向層に偏光性紫外線を照射しても、配向にはほとんど影響はなくホメオトロピック配向を維持することができる。このようにして形成されたホメオトロピック配向層は、非偏光性の紫外線を照射することにより配向を固定することができるが、本発明においては、後述するように、光配向層を積層した後で行う必要がある。
【0037】
(光配向層の形成)
上記のようにして形成されたホメオトロピック配向層上に、上記の式1〜3で示される側鎖を有する単位を含む液晶性ポリマー、好ましくは、上記のホメオトロピック層を形成した液晶性ポリマーと同じ液晶性ポリマーを用いて、これを溶媒に溶解した液晶性ポリマー溶液を、前記ホメオトロピック配向層上に塗布し、塗布後乾燥し、乾燥後加熱を行うことなく直線偏光性紫外線を照射、加熱することにより、液晶性ポリマーは光配向層を形成し、ついで、非偏光性の紫外線を照射することにより、この配向を固定することができる。
【0038】
また、上記のようにして形成されたホメオトロピック配向層上に、上記の式1〜3で示される側鎖を有する重合性モノマーとは異なる液晶性ポリマーから、上記の方法により光配向層を形成することができる。
かかる光配向層を形成する液晶性ポリマーとしては、特開平11−189665号公報、特開2002−202409号公報、特開2004−170595号公報、特開2005−232345号などにより本出願人により開示された液晶性ポリマーを用いることができるが、なかでも、ホメオトロピック配向層を形成する液晶性ポリマーと化学構造的に類似性の高いものを選ぶことが、両層間の界面における密着性が得られやすい点から好ましい。例えば、ホメオトロピック配向層を形成する液晶ポリマーの感光性基と光配向層を形成する液晶ポリマーの感光性基がシンナモイル基である場合には、一対のシンナモイル基のそれぞれの二重結合が開いてシクロブタン結合を形成することができることから(下記の化学式4参照)、両層間の界面においても同様な反応により二量化が起こり、界面において強固な密着を得ることができるものと考えられる。
【0039】
【化4】
【0040】
(低分子材料)
本発明において、光配向層における配向を増強するために前記の感光性基を有する液晶性ポリマーに低分子材料を混合し、その混合物に直線偏光性紫外線を照射し、本発明における光配向層を形成するのが好ましい。かかる低分子材料としては、メソゲン成分として知られているビフェニル、ターフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼンなどの置換基を有し、このような置換基とアリル、アクリレート、メタクリレート、桂皮酸基(またはその誘導体基)などの官能基を、前記のような屈曲成分を介して結合した液晶性を有するものが好ましく用いられる。これらの低分子材料は、単一の材料として用いられるだけでなく、複数の材料が混合されてもよい。このような低分子材料は、液晶性ポリマーに対して、5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲内で加えるのが好ましく、このような低分子材料を加える場合、低分子材料の重合を促進するため、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体; ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体などの光増感剤を加えるのが好ましい。
【0041】
(直線偏光性紫外線照射)
感光性基を有する液晶性ポリマーまたは前記ポリマーに低分子材料を混合した混合物を、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、トルエン、テトラヒドロフラン、o−ジクロロベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解して調製された溶液を、ホメオトロピック配向層上に塗布乾燥してフィルムを形成する。この場合の乾燥は常温で行ってもよく、材料にもよるが例えば60℃以下の低温度で加熱して行ってもよい。温度を上げすぎると形成されるフィルムが白濁することがある。ついで、形成されたフィルムに直線偏光性紫外線が照射される。この照射により、液晶性ポリマーは光学的一軸または二軸に配向する。この光反応を進めるには、感光性基の部分が反応し得る波長の光の照射を要する。側鎖の種類によっても異なるが、一般に200-500nmであり、中でも250-400nmの有効性が高い場合が多い。このような直線偏光性の紫外線照射がなされても、ホメオトロピック配向層の配向は実質的に影響されない。
【0042】
(直線偏光紫外線照射後の加熱)
偏光性紫外線照射後、フィルムを加熱することにより、フィルム内の分子運動により、光反応を起こさなかった重合体の側鎖と低分子材料は、光反応した側鎖と同じ方向に再配向する。その結果、フィルム全体において、照射した直線偏光の電界振動方向かつ照射光進行方向に対し垂直方向に重合体の側鎖と低分子材料の分子が配向し、複屈折性が誘起され光配向層となる。偏光性紫外線照射後の加熱は、この再配向を促進する。加熱温度は、ホメオトロピック層の材料の等方相転移温度以下に設定することが好ましい。このように露光したのち加熱し未反応側鎖を配向させたフィルムまたは加熱下で露光し配向させたフィルムを該高分子の軟化点以下まで冷却すると分子が凍結されて、光配向層が得られる。冷却は通常の放置冷却で行うことが好ましく、急速な冷却を行うと、再配向が不十分になる場合がある。
【0043】
(非偏光性の紫外線照射)
ついで、前記の光配向層に非偏光性の紫外線を照射するのが好ましい。非偏光性紫外線を照射すると、フィルム中に残存している未反応の感光性基を有する液晶性ポリマーが反応して配向が固定され、安定した光配向層が形成されるともに、ホメオトロピック配向層における配向も固定される。また、ホメオトロピック配向層と光配向層との界面において、それぞれの層を形成している液晶性ポリマーの感光性基間に光反応が生じ、両層間の高い密着性に寄与していると考えられる。なお、非偏光性紫外線の照射は、通常、加熱することなく行われるが、位相差値を調整(低下)する必要がある場合には、加熱して行うこともできる。
【0044】
上記のようにして光配向層を形成することができるが、用いる液晶性ポリマーを構成する側鎖、主鎖の選択、低分子化合物の配合、溶媒の選択、乾燥条件、紫外線照射条件などの選択により、得られた光配向層は、光学的二軸性を示す場合だけでなく、光学的一軸性(ホモジニアス配向)を示す場合もある。
【0045】
以上のようにして、ホメオトロピック配向層上に直接、接着剤を用いることなく、光配向層を形成することにより、本発明の光学フィルム積層体を形成することができる。支持体上に形成された光学フィルム積層体は、液晶パネルを構成する偏光板または液晶セルに粘着剤を塗布しておけば、その上に転写することにより、支持体フィルムから分離することができる。
【0046】
(ホメオトロピック配向層および光配向層の厚み)
ホメオトロピック配向層および光配向層の厚みは、それぞれ0.3〜3μmであることが好ましく、0.5〜2.5μmであることがさらに好ましい。
本発明によれば、ホメオトロピック配向層および光配向層とからなる光学フィルム積層体が、0.6〜6μmという非常に薄く形成できることから、従来の液晶表示装置に使用されている光学補償フィルム(薄くても15μmの厚みあり)に比べて、表示装置の薄型化が達成される。
【0047】
本発明に係る光学フィルム積層体の耐剥離性の点からは、ホメオトロピック配向層を形成する感光性液晶性ポリマーの感光性基と、光配向層を形成する液晶性ポリマーの感光性基とが、光によって互いに反応する感光性基であることが好ましく、さらに、両方の感光性基が同じであることが、ホメオトロピック配向層と光配向層との界面において、紫外線照射により、接するポリマー感光性基同士が化学的な結合をすることにより、密着性が高まることから好ましい。なお、前述した感光性基のなかで、シンナモイル基、カルコン基、シンナミリデンキ基の感光性基同士、ビフェニルアクリロイル等のアクリロイル基を有する感光性基同士は、互いに反応する感光性基である。
【0048】
(液晶表示パネル)
上記の光学フィルム積層体、偏光板および液晶セルとから液晶表示パネルが構成される。偏光板、液晶セルとしては、公知のものがいずれも用いられる。偏光板としては、通常、ヨウ素または二色性染料を含有するポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする一軸延伸フィルムが用いられる。また、液晶セルとしては、透過型、反射型、半透過型の各種液晶セルを挙げることができる。液晶セルにおける液晶配向によるモードとして例を挙げると、TN型、STN型、VA(vertical alignment)型、MVA(multi-domain vertical alignment)型、OCB(optically compensated bend)型、ECB(electrically controlled biriefringence)型、HAN(hybrid-aligned nematic)型、IPS(in-plane switching)、双安定ネマチック(Bistable Nematic)型、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)型、ハーフトーングレイスケール型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶を利用した表示方式等を挙げることができる。
【0049】
(液晶パネル構成要素の配置)
図2は、本発明に係る液晶パネルを構成する光学フィルム積層体(ポジティブCプレートとポジティブAプレートまたは光学的二軸性プレートからなる光配向層)と偏光板の配置例を示しており、2枚の偏光板11,11のうち視認側の偏光板(バックライト側でない方)11と液晶セル(図示せず)の位置14との間に光学フィルム積層体が配置されている、図2(a)の態様では、視認側の偏光板11側にポジティブCプレート(ホメオトロピック配向層)12が配置され、図2(b)の態様では、視認側の偏光板11側に光配向層13が配置されている。図2(a)の態様では、視認側の偏光板11の吸収軸の方向と光配向層13の面内遅相軸とは平行に配置され、図2(b)の態様では、視認側の偏光板11の吸収軸と光配向層13の面内遅相軸とは直交するように配置されている。なお、図2では、本発明に係る光学フィルム積層体が視認側の偏光板に配置した例を示したが、視認側の偏光板だけでなくバックライト側の偏光板に配置してもよい。
【0050】
(液晶表示パネルの用途)
上記の光学フィルム積層体と偏光板とから構成されるが本発明の液晶表示パネルは、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の液晶表示装置に用いることができる。なかでも、本発明の液晶パネルは、液晶表示装置、なかでもIPSモードの液晶表示装置に好適に用いられ、液晶テレビに特に好適に用いられる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。本発明の実施例及び比較例において用いた材料に関する合成方法を以下に示す。また、本発明の実施例及び比較例で得られたサンプルのポジティブCプレートであるかポジティブAプレートであるかの判定は、下記のようにして行った。
【0052】
(単量体1)
4,4'−ビフェニルジオールと2−クロロエタノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4−ヒドロキシ−4'−ヒドロキシエトキシビフェニルを合成した。この生成物に、アルカリ条件下で1,6−ジブロモヘキサンを反応させ、4−(6−ブロモヘキシルオキシ)−4'−ヒドロキシエトキシビフェニルを合成した。次いで、リチウムメタクリレートを反応させ、化学式5で示される単量体1を合成した。
【0053】
【化5】
【0054】
(単量体2)
単量体1に、塩基性の条件下において、塩化シンナモイルを加え、化学式6に示される単量体2を合成した。
【0055】
【化6】

【0056】
(単量体3)
p−クマル酸と6−クロロ−1−ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)桂皮酸を合成した。この生成物にp−トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ、化学式7で示される単量体3を合成した。
【0057】
【化7】
【0058】
(低分子材料1)
4,4'−ビフェニルジオールと6−ブロモヘキサノールを、アルカリ条件下で反応させ、4,4'− ビス(6−ブロモヘキシルオキシ)ビフェニルを合成した。次いで、塩基性の条件下において、メタクリル酸クロライドを加え反応させ、生成物を再結晶することにより化学式8に示される低分子材料1を合成した。
【0059】
【化8】
【0060】
(重合体1)
単量体1と単量体2をモル比3:7でテトラヒドロフラン中に溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して、70℃で24時間重合することにより感光性の重合体1を得た。この重合体1は液晶性を呈した。
【0061】
(重合体2)
単量体2をテトラヒドロフラン中に溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して、70℃で24時間重合することにより感光性の重合体2を得た。この重合体2は液晶性を呈した。
【0062】
(重合体3)
単量体3をジオキサン中に溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して、70℃で24時間重合することにより感光性の重合体3を得た。この重合体3は液晶性を呈した。
【0063】
(ポジティブCプレート、ポジティブAプレートおよび二軸性プレートの判定方法)
自動複屈折率計を用いて、クリスタルローテーション法によって位相差値の角度依存性を求め、その角度依存性に基づいて判定した。
【0064】
〔実施例1〕
重合体1をシクロヘキサノンに溶解し、ここに重合体1に対し0.02重量部の市販(東京化成)の4、4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを添加し溶液1を調製した。この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にスピンコーターを用いて約1.5μmの厚みとなるよう塗布した。この基板を室温(約25℃)で乾燥させ、続いて、100℃まで加熱後冷却し、第1の塗布膜を形成した。次に、4.2重量%の重合体2と0.8重量%の低分子材料1をトルエンに溶解し、ここに重合体2と低分子材料1の合算重量に対し0.02重量部の市販[東京化成工業(株)製]の4、4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを添加し溶液2を調製した。この溶液2を第1の塗膜上にスピンコーターを用いて約1.8μmとなるように塗布し、乾燥し、第1の塗膜上に第2の塗布膜を形成した。ここで、第1の塗膜には光照射することなく、配向を固定しないまま(感光性基が未反応のまま)、第1の塗膜上に第2の塗布膜を形成した。
続いてこの塗膜に、高圧水銀灯からの光を、グランテラープリズムを用いて直線偏光性として300秒間照射し、続いて、100℃で加熱後、30分間掛けて室温まで徐冷し、配向を誘起させた。更に、配向を固定するために高圧水銀灯からの光を直線偏光に変換せずに1500秒間照射した。
【0065】
このようにして作製した塗膜は、粘着剤を用いて、PET支持体から液晶セルまたは偏光板に転写することができた。また、その光学特性はポジティブCプレート(ホメオトロピック配向層)とポジティブAプレート(光配向層)の積層体からなる光学特性を有していることが確認され、直交する2枚の偏光板を斜めから見た場合に生じる光漏れを低減することができた。更に、第1の塗布膜と、第2の塗布膜の塗膜界面の密着性を確認するため、セロテープ(登録商標)を用いて塗膜界面での剥離を試みたが塗膜界面での剥離は観察されず、良好な密着性を有していることが確認された。
【0066】
〔実施例2〕
重合体3を1、4−ジオキサンに溶解し溶液3を調製した。この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にスピンコーターを用いて約1.5μmの厚みとなるよう塗布した。この基板を室温(約25℃)で乾燥させ、続いて、130℃まで加熱後冷却し溶液3の第1の塗布膜を形成した。次いで、再度、溶液3を用いて、第1の塗膜上にスピンコーターを用いて約2.0μmとなるように塗布し、乾燥し、第1の塗膜上に第2の塗布膜を形成した。ここで、第1の塗膜には光照射することなく、配向を固定しないまま(感光性基が未反応のまま)、第1の塗膜上に第2の塗布膜を形成した。
続いてこの塗膜に、高圧水銀灯からの光を、グランテラープリズムを用いて直線偏光性として300秒間照射し、続いて、130℃で加熱後、30分間掛けて室温まで徐冷し、配向を誘起させた。更に、配向を固定するために高圧水銀灯からの光を直線偏光に変換せずに900秒間照射した。
【0067】
このようにして作製した塗膜は、粘着剤を用いて、PET基材から液晶セル、偏光板に転写することができた。また、その光学特性はポジティブCプレートと面内異方性を有する層の積層体からなる光学特性を有していることが確認された。更に、第1の塗布膜と、第2の塗布膜の塗膜界面の密着性を確認するため、セロテープを用いて塗膜界面での剥離を試みたが塗膜界面での剥離は観察されず、良好な密着性を有していることが確認された。
【0068】
〔比較例1〕
重合体1をシクロヘキサノンに溶解し、ここに重合体1に対し0.02重量部の市販(東京化成)の4、4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを添加し溶液1を調製した。この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にスピンコーターを用いて約1.5μmの厚みとなるよう塗布した。この基板を室温(約25℃)で乾燥させ、続いて、100℃まで加熱後、30分間掛けて冷却した。続いて高圧水銀灯からの光を直線偏光に変換せずに1500秒間照射し、配向を固定し、第1の塗布膜(ホメオトロピック配向層)を形成した。次に、4.2重量%の重合体2と0.8重量%の低分子材料1をトルエンに溶解し、ここに重合体2と低分子材料1の合算重量に対し0.02重量部の市販(東京化成)の4、4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを添加し溶液2を調製した。この溶液2を第1の塗膜上にスピンコーターを用いて約1.8μmとなるように塗布し、乾燥し、第1の塗膜上に第2の塗布膜を形成した。
続いてこの塗膜に、高圧水銀灯からの光を、グランテラープリズムを用いて直線偏光性として300秒間照射し、続いて、100℃で加熱後、30分間掛けて室温まで徐冷し、配向を誘起させた。更に、配向を固定するために高圧水銀灯からの光を直線偏光に変換せずに1500秒間照射した。
【0069】
このようにして作製した塗膜は、粘着剤を用いて、PET基材から液晶セル、偏光板に転写することができた。また、その光学特性はポジティブCプレートとポジティブAプレートの積層体からなる光学特性を有していることが確認され、直交する2枚の偏光板を斜めから見た場合に生じる光漏れを低減することができた。しかしながら、第1の塗布膜と、第2の塗布膜の塗膜界面の密着性を確認するため、セロテープを用いて塗膜界面での剥離を試みると、塗膜界面での剥離は観察され、塗膜界面での密着性が低く実用できるものではなかった。
【0070】
〔比較例2〕
重合体3を1、4−ジオキサンに溶解し溶液3を調製した。この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にスピンコーターを用いて約1.5μmの厚みとなるよう塗布した。この基板を室温(約25℃)で乾燥させ、続いて、130℃まで加熱後、30分間掛けて冷却した。続いて高圧水銀灯からの光を直線偏光に変換せずに1500秒間照射し、第1の塗布膜(ホメオトロピック配向層)を形成した。次いで、再度、溶液3を用いて第1の塗膜上にスピンコーターを用いて約2.0μmとなるように塗布し、乾燥し、第1の塗膜上に第2の塗布膜を形成した。
続いてこの塗膜に、高圧水銀灯からの光を、グランテラープリズムを用いて直線偏光性として300秒間照射し、続いて、130℃で加熱後、30分間掛けて室温まで徐冷し、配向を誘起させた。更に、配向を固定するために高圧水銀灯からの光を直線偏光に変換せずに900秒間照射した。
【0071】
このようにして作製した塗膜は、粘着剤を用いて、PET基材から液晶セル、偏光板に転写することができた。また、その光学特性はポジティブCプレートと面内異方性を有する層の積層体からなる光学特性を有していることが確認された。しかしながら、第1の塗布膜と、第2の塗布膜の塗膜界面の密着性を確認するため、セロテープを用いて塗膜界面での剥離を試みると、塗膜界面での剥離は観察され、塗膜界面での密着性が低く実用できるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明の光学フィルム積層体によれば、薄型化された光学補償機能を有する光学フィルムが得られるので、液晶表示装置の薄型化に貢献することができる。本発明の液晶パネルは、液晶表示装置および液晶テレビに好適に用いられる。
【0073】
以上の通り、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1: 光学フィルム積層体
2: ポジティブAプレート
3: ポジティブCプレート
4: 界面
11: 偏光板
12: ポジティブCプレート(ホメオトロピック配向層)
13: 光配向層
14: 液晶セルが配置される位置
図1
図2