(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。この現象は、「乱流化」と称される。乱流化によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流化によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。優れたディンプルは、よりよく空気の流れを乱す。優れたディンプルは、大きな飛距離を生む。
【0003】
ディンプルに関する種々の提案が、なされている。特開2005−137692公報には、ディンプルの直径の標準偏差が0.52以下であるゴルフボールが開示されている。特開2007−175267公報には、極近傍のディンプルパターンのユニット数と赤道近傍のディンプルパターンのユニット数とが異なるゴルフボールが開示されている。特開2007−195591公報には、その直径が3.40mm以上であるディンプルの数のディンプル総数に対する比率が90%以上であるゴルフボールが開示されている。特開2008−389公報には、隣接するディンプルのピッチが小さいゴルフボールが開示されている。
【0004】
特開2009−95593公報には、赤道上に位置するディンプルを備えたゴルフボールが開示されている。同様のゴルフボールが、特開2009−95589公報、特開2010−57612公報及び特開2010−57623公報にも開示されている。
【0005】
ゴルフボールの仮想球の表面積に対する、全てのディンプルの面積の合計の比は、占有率と称されている。この占有率は、ゴルフボールの飛行性能に影響を与える。この占有率が大きなゴルフボールが飛行性能に優れていることが、当業者に知られている。
【0006】
ディンプルの直径の標準偏差は、ゴルフボールの飛行性能に影響を与える。この標準偏差が小さなゴルフボールが飛行性能に優れていることが、当業者に知られている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル10が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル10以外の部分は、ランド12である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0018】
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0019】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0020】
コア4の架橋には、共架橋剤が好適に用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物が、共架橋剤と共に有機過酸化物を含むことが好ましい。好ましい有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0021】
コア4のゴム組成物には、充填剤、硫黄、加硫促進剤、硫黄化合物、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、合成樹脂粉末又は架橋されたゴム粉末が配合されてもよい。
【0022】
コア4の直径は30.0mm以上が好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。コア4の直径は42.0mm以下が好ましく、41.5mm以下が特に好ましい。コア4が2以上の層から構成されてもよい。コア4が、その表面にリブを備えてもよい。コア4が中空であってもよい。
【0023】
中間層6に好適なポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0024】
アイオノマー樹脂に代えて、中間層6に他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリウレタンが例示される。2種以上のポリマーが併用されてもよい。
【0025】
中間層6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、中間層6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0026】
中間層6の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。中間層6の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。中間層6の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。中間層6の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。中間層6が2以上の層から構成されてもよい。
【0027】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーは、ポリウレタンである。熱可塑性ポリウレタン及び熱硬化性ポリウレタンが用いられうる。生産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。
【0028】
ポリウレタン成分の硬化剤としては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、カバー8の黄変が抑制される。脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。汎用性及び加工性の観点から、H
12MDIが好ましい。
【0029】
ポリウレタンに代えて、カバー8に他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンが例示される。2種以上のポリマーが併用されてもよい。
【0030】
カバー8には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。
【0031】
カバー8の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。カバー8の厚みは2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。カバー8の比重は0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。カバー8の比重は1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。カバー8が2以上の層から構成されてもよい。
【0032】
ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に、補強層を備えてもよい。補強層は、中間層6と堅固に密着し、カバー8とも堅固に密着する。補強層は、中間層6からのカバー8の剥離を抑制する。補強層の基材ポリマーとしては、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が例示される。
【0033】
図2から7に示されるように、ディンプル10の輪郭は円である。その輪郭が円であるディンプル10は、空力的対称性に優れる。このゴルフボール2は、直径が4.50mmであるディンプルAと、直径が4.40mmであるディンプルBと、直径が4.30mmであるディンプルCと、直径が4.15mmであるディンプルDを備えている。ディンプル10の種類数は、4である。
【0034】
ディンプルAの数は28個であり、ディンプルBの数は122個であり、ディンプルCの数は100個であり、ディンプルDの数は74個である。ディンプル10の総数Nは、324個である。全てのディンプル10の直径の平均値は、4.321mmである。
【0035】
ディンプル10の面積sは、無限遠からゴルフボール2の中心が見られたときの、輪郭線に囲まれた領域の面積である。円形ディンプル10の場合、面積sは下記数式によって算出される。
s = (Dm / 2)
2 ・ π
この数式において、Dmはディンプル10の直径を表す。
図2から7に示されたゴルフボール2では、ディンプルAの面積は15.90mm
2であり、ディンプルBの面積は15.21mm
2であり、ディンプルCの面積は14.52mm
2であり、ディンプルDの面積は13.53mm
2である。
【0036】
全てのディンプル10の面積sの合計の、仮想球の表面積に対する比は、占有率Xと称される。乱流化の観点から、占有率Xは0.78以上が好ましく、0.79以上がより好ましく、0.80以上が特に好ましい。占有率Xは、0.95以下が好ましい。
図2から7に示されたゴルフボール2では、ディンプル10の合計面積は4753.5mm
2である。このゴルフボール2の仮想球の表面積は5728.0mm
2なので、占有率Xは0.830である。
【0037】
全てのディンプル10の直径の標準偏差Yは、0.30以下が好ましい。標準偏差Yが0.30以下であるゴルフボール2では、乱流化が促進される。この観点から、標準偏差Yは0.29以下がより好ましく、0.28以下が特に好ましい。標準偏差Yは、ゼロでもよい。
図2から7に示されたゴルフボール2の標準偏差Yは下記数式によって算出される。
Y = (((4.500 - 4.321)
2 ・ 28 + (4.400 - 4.321)
2 ・ 122 +
(4.300 - 4.321)
2 ・ 100 + (4.150 - 4.321)
2 ・ 74) / 324)
1/2
このゴルフボール2の標準偏差Yは、0.109である。
【0038】
図8のグラフにおいて、横軸は占有率を表し、縦軸は標準偏差Yを表す。
図8において符号L1で示された直線は、下記数式によって表される。
Y = 3.8 ・ X − 2.894
本発明者の得た知見によれば、その座標(X,Y)が直線L1の上又はこの直線L1よりも下方であるゴルフボール2は、飛行性能に優れる。換言すれば、下記数式(I)を満たすゴルフボール2は、飛行性能に優れる。その理由は、乱流化が促進されるからと推測される。
Y ≦ 3.8 ・ X − 2.894 (I)
【0039】
図8のグラフにおいて符号L2で示された直線は、下記数式によって表される。
Y = 3.8 ・ X − 2.944
本発明者の得た知見によれば、その座標(X,Y)が直線L2の上又はこの直線L2よりも下方であるゴルフボール2は、飛行性能により優れる。換言すれば、下記数式(II)を満たすゴルフボール2は、飛行性能に優れる。その理由は、乱流化が促進されるからと推測される。
Y ≦ 3.8 ・ X − 2.944 (II)
【0040】
図8のグラフにおいて符号L3で示された直線は、下記数式によって表される。
Y = 3.8 ・ X − 2.994
本発明者の得た知見によれば、その座標(X,Y)が直線L3の上又はこの直線L3よりも下方であるゴルフボール2は、飛行性能に特に優れる。換言すれば、下記数式(III)を満たすゴルフボール2は、飛行性能に優れる。その理由は、乱流化が促進されるからと推測される。
Y ≦ 3.8 ・ X − 2.994 (III)
【0041】
ディンプル10を配置する際、設計者は、まず基本となるディンプル10の配置を設計し、次に、さらに占有率を上げるべく、複数のディンプル10に囲まれた狭いゾーンに小さなディンプル10を配置させる手段をとることが多い。しかし、この小さなディンプル10は、占有率を上げる効果には寄与するが、標準偏差を小さくする効果を阻害する。小さなディンプル10の配置は、本発明の趣旨と合致しない。本実施形態に係るディンプルパターンの設計では、設計者は、基本となるディンプル10を設計する段階から、隣接するディンプル10の中心間の距離に着目している。設計者は、隣接するディンプル10の中心間の距離がなるべく小さくなるよう、配慮しつつパターンの設計を行っている。従って、小さなディンプル10が配置されなくても、占有率が高められうる。
【0042】
図9には、ディンプル10の中心及びゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った断面が示されている。
図9における上下方向は、ディンプル10の深さ方向である。
図9において二点鎖線14で示されているのは、仮想球である。仮想球の表面は、ディンプル10が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。ディンプル10は、仮想球の表面から凹陥している。ランド12は、仮想球の表面と一致している。本実施形態では、ディンプル10の断面形状は、実質的には円弧である。
【0043】
図9において両矢印Dmで示されているのは、ディンプル10の直径である。この直径Dmは、ディンプル10の両側に共通の接線Tgが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル10のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル10の輪郭を画定する。
図9において両矢印Dpで示されているのは、ディンプル10の深さである。この深さDpは、ディンプル10の最深部と接線Tgとの距離である。
【0044】
それぞれのディンプル10の直径Dmは、2.0mm以上6.0mm以下が好ましい。直径Dmが2.0mm以上であるディンプル10は、乱流化に寄与する。この観点から、直径Dmは2.2mm以上がより好ましく、2.4mm以上が特に好ましい。直径Dmが6.0mm以下であるディンプル10は、実質的に球であるというゴルフボール2の本質を損なわない。この観点から、直径Dmは5.8mm以下がより好ましく、5.6mm以下が特に好ましい。
【0045】
図9において矢印CRで示されているのは、ディンプル10の曲率半径である。曲率半径CRは、下記数式(1)によって算出される。
CR = (Dp
2 + Dm
2 / 4) / (2 * Dp) (1)
その断面形状が円弧でないディンプル10の場合でも、上記数式(1)に基づいて、近似的に曲率半径CRが算出される。
【0046】
十分な占有率Xが達成されるとの観点から、ディンプル10の総数Nは300個以上が好ましく、310個以上がより好ましく、320個以上が特に好ましい。個々のディンプル10が乱流化に寄与しうるとの観点から、総数Nは400個以下が好ましく、390個以下がより好ましく、380個以下が特に好ましい。
【0047】
本発明において「ディンプル10の容積」とは、ディンプル10の輪郭を含む平面とディンプル10の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル10の総容積は250mm
3以上が好ましく、260mm
3以上がより好ましく、270mm
3以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、総容積は400mm
3以下が好ましく、390mm
3以下がより好ましく、380mm
3以下が特に好ましい。
【0048】
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル10の深さDpは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、深さDpは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0050】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、35質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃で18分間加熱して、直径が39.7mであるコアを得た。質量が45.6gであるゴルフボールが得られるよう、硫酸バリウムの量が調整された。
【0051】
50質量部のアイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン8945」)、50質量部の他のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名の「ハイミランAM7329」)、4質量部の二酸化チタン及び0.04質量部のウルトラマリンブルーを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに被覆し、中間層を形成した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。
【0052】
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE)を調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の酸化チタンとからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で6時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みは、10μmであった。
【0053】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン社の商品名「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球体を被覆した。このハーフシェル及び球体を、共に半球状キャビティを備え、キャビティ面に多数のピンプルを備えた上型及び下型からなるファイナル金型に投入し、圧縮成形法にてカバーを得た。カバーの厚みは、0.5mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが多数形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が約42.7mmであり質量が約45.6gである実施例1のゴルフボールを得た。このゴルフボールのディンプルの仕様が、下記の表1に示されている。
【0054】
[実施例2−7及び比較例1−5]
ディンプルの仕様を下記の表1−3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−7及び比較例1−5のゴルフボールを得た。比較例1に係るゴルフボールは、特開2009−95593公報に記載された実施例1に係るゴルフボールのディンプルパターンと同等のディンプルパターンを有している。比較例2に係るゴルフボールは、特開2008−389公報に記載された比較例2に係るゴルフボールのディンプルパターンと同等のディンプルパターンを有している。比較例3に係るゴルフボールは、特開2011−30909公報に記載された比較例2に係るゴルフボールのディンプルパターンと同等のディンプルパターンを有している。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
[飛距離テスト]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、チタン合金製のヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「SRIXON Z−TX」、シャフト硬度:X、ロフト角:8.5°)を装着した。ヘッド速度が50m/secであり、打ち出し角度が約10°であり、バックスピン速度が約2500rpmである条件でゴルフボールを打撃して、発射地点から静止地点までの距離を測定した。テスト時は、ほぼ無風であった。20回の測定で得られたデータの平均値が、下記の表4−6に示されている。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
表4−6に示されるように、各実施例のゴルフボールは飛行性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。