特許第5924973号(P5924973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924973
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   A61B8/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-32364(P2012-32364)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-165923(P2013-165923A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029791
【氏名又は名称】日立アロカメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 隆也
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−033350(JP,A)
【文献】 特開2010−057562(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122099(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示面を備えた可搬型の装置本体を有する超音波診断装置において、
前記装置本体の姿勢又は姿勢変化を表す検出信号を出力する検出器と、
検査者用画像及び被検者用画像を生成する画像形成手段と、
前記検出器から出力された検出信号に基づいて、前記表示面に表示される画像の内容を変更する手段であって、前記検出信号に基づいて前記表示面に前記検査者用画像を表示する検査者用画像表示モード及び前記表示面に前記被検者用画像を表示する被検者用画像表示モードの中から表示モードを選択する制御手段と、
を含み、
前記制御手段は、前記検出信号に基づいて前記装置本体の正立姿勢から倒立姿勢への被検者向け姿勢変更を判定する判定手段を含み、
前記制御手段は、前記被検者向け姿勢変更が判定された場合に前記被検者用画像表示モードを選択する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記判定手段は、更に前記装置本体の倒立姿勢から正立姿勢への検査者向け姿勢変更を判定し、
前記制御手段は、前記検査者向け姿勢変更が判定された場合に前記検査者用画像表示モードを選択する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項記載の装置において、
前記検査者用画像は超音波画像及び検査者用情報を含む画像であり、
前記被検者用画像は前記超音波画像を含むが前記検査者用情報を含まない画像である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記装置本体はタブレット形である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項記載の装置において、
前記被検者向け姿勢変更は前記装置本体の水平軸周りの一方側回転運動であり、
前記検査者向け姿勢変更は前記装置本体の水平軸周りの他方側回転運動である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項記載の装置において、
記制御手段は、
前記検査者用画像表示モードから前記被検者用画像表示モードへの移行時に前記装置本体に対して表示画像を上下に回転させて当該表示画像を倒立させ、
前記被検者用画像表示モードから前記検査者用画像表示モードへの移行時に前記装置本体に対して表示画像を上下に回転させて当該表示画像を正立させる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、特に、可搬型の装置本体を有する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において超音波診断装置が活用されている。超音波診断装置は、生体に対して超音波を送受波し、これにより得られる受信信号に基づいて超音波画像を形成する装置である。近時、可搬型の超音波診断装置が実用化されている。かかる超音波診断装置は、一般に、表示器及び入力器を備えバッテリを内蔵した装置本体と、装置本体に接続されたプローブと、によって構成される。タブレット型(スマートフォンのような形状を含む)の装置本体も実用化されている。かかる平板型装置本体においては表示器と入力器とが一体化されて表示入力パネルが構成されている。そのような装置本体においては、少数の物理的なスイッチだけが設けられる。装置本体が薄いプレート状の形態をもっているので、またその表面の実質的全部又は主要部が表示画面を構成しているので、表示画面を観察する者に対して装置本体を正対させることは容易である。そのような超音波診断装置を往診医療、救急医療、病室診療等で利用することが期待されている。
【0003】
超音波診断装置には超音波画像上にコメントを記入する機能を備えており、検査者(検査技師、医師)においてその機能を使って各種の情報が入力される。例えば、悪性腫瘍のマーキングやその可能性を示す文字(未確定診断情報等)の記入が行われることもある。そのような情報は被検者に対してその場で見せるべきでないものである。表示画面は通常、検査者に対して向けられており、被検者からは死角になるかあるいは見難い状態にあるので、被検者において記入情報が容易に知得されてしまうことはない。
【0004】
一方、インフォームドコンセントの観点から被検者に対して診断画像を見せて説明する行為が行われることも多い。上記のような被検者に見せたくない情報が超音波画像に含まれている場合には超音波画像を被検者に提供しながら説明することが困難となる。不用意に表示画面を被検者に見せてしまうおそれ、被検者が覗き込んでしまうおそれもある。被検者に画像を見せる際にコメント等を消去するならば再入力の手間が生じ、被検者に画像を見せてからコメント等を記入するならば最適なタイミングで入力作業を行えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−20839号公報
【特許文献2】特開2009−101073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、超音波診断装置において、表示器を支持するアーム機構に角度センサを設け、その出力に基づいて被検者に対して表示画面を向けたことを検知し、その検知により被検者に見せたくない情報を非表示とする技術が開示されている。しかし、アーム機構を備えていないタブレット型超音波診断装置での表示管理については記載されていない。特許文献2には、検査者用の表示器の他に被検者用の表示器を備える超音波診断装置が開示されている。それぞれの表示内容を変えることにより被検者への必要以上の情報提供が回避されている。
【0007】
本発明の目的は、姿勢変化の自由度が高い可搬型の装置本体を備えた超音波診断装置において、検査者及び被検者のそれぞれに対して適切な画像が提供されるようにすることにある。あるいは、本発明の目的は、被検者にとって不適切な情報がその被検者に対して不用意に提供されないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像を表示する表示面を備えた可搬型の装置本体を有する超音波診断装置において、前記装置本体の姿勢又は姿勢変化を表す検出信号を出力する検出器と、前記検出器から出力された検出信号に基づいて、前記表示面に表示される画像の内容を変更する制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、装置本体に検出器が設けられ、その検出器により装置本体の姿勢又は姿勢変化を表す情報(検出信号)を取得して、それに基づいて表示画像の内容を制御することが可能である。例えば、装置本体の姿勢又は姿勢変化を特定することにより、表示面が検査者に向けられている状態か被検者に向けられている状態かを判別することができる。つまり、表示面を観察している者を判別して表示画像の内容をその者に適合したものに変更することが可能となる。なお、検出信号は表示内容の制御以外の制御に利用することもでき、例えば、画像の上下反転制御、表示輝度の制御、画面内レイアウトの制御、等に利用することができる。
【0010】
可搬型の装置本体は、タブレット形又は平板形に形成してもよく、そのような形態であれば装置本体の反転操作が容易である。装置本体と超音波送受波器(プローブユニット)との間でワイヤレス伝送を行わせるようにするのが望ましく、その場合、装置本体の機動性を高めることとができる。もっとも、装置本体に対してケーブルを介してプローブが接続されてもよい。
【0011】
望ましくは、更に検査者用画像及び被検者用画像を生成する画像形成手段を含み、前記制御手段は、前記検出信号に基づいて前記表示面に前記検査者用画像を表示する検査者用画像表示モード及び前記表示面に前記被検者用画像を表示する被検者用画像表示モードの中から表示モードを選択する。望ましくは、前記検査者用画像は超音波画像及び検査者用情報を含む画像であり、前記被検者用画像は前記超音波画像を含むが前記検査者用情報を含まない画像である。
【0012】
上記構成によれば、表示面が被検者に向けられた場合に被検者用画像を表示でき、表示面が検査者に向けられた場合に検査者画像を表示できる。後者の検査者画像は、超音波画像の他、検査者において記入した画像診断結果を示す文章やコメント等を含むものであってもよい。それには、通常、画像診断に必要な情報及び事後的に追加した情報が含まれる。後者の被検者画像は、インフォームドコンセント等の局面において被検者に対して見せる画像であり、それは通常、超音波画像を含む。但し、被検者に見せたくない情報についてはその表示が制限される。被検者用画像に臓器名称、解剖図等の参照情報を含めるようにしてもよい。そのような構成によれば被検者の画像観察上の便宜を図ることができる。
【0013】
望ましくは、前記制御手段は、前記検出信号に基づいて前記装置本体の正立姿勢から倒立姿勢への被検者向け姿勢変更及び前記装置本体の倒立姿勢から正立姿勢への検査者向け姿勢変更を判定する判定手段を含み、前記表示制御手段は、前記被検者向け姿勢変更が判定された場合に前記被検者用画像表示モードを選択し、前記検査者向け姿勢変更が判定された場合に前記検査者用画像表示モードを選択する。望ましくは、前記被検者向け姿勢変更は前記装置本体の水平軸周りの一方側回転運動であり、前記検査者向け姿勢変更は前記装置本体の水平軸周りの他方側回転運動である。
【0014】
通常、検査者は、横臥した被検者側を向いており(あるいは被検者に対して半身の姿勢となっており)、そのような位置関係では通常、装置本体の表示面が検査者を向き、被検者からは表示面とは反対側の背面が見える。被検者に対して表示面を見せたい場合、垂直軸周りに装置本体を回転させる操作か、水平軸周りに装置本体を回転させる操作が行われる。上記構成によれば、後者の操作が行われた場合に自動的に表示モードを切り替えることが可能である。前者の操作が検知できる場合、それに基づいて自動的に表示モードを切り替えるようにしてもよいが、一般的にそれを行うには複雑な仕組みが必要となるから、後者の操作に表示モード切り替えを連動させるのが望ましい。
【0015】
望ましくは、前記制御手段は、前記検査者用画像表示モードから前記被検者用画像表示モードへの移行時に前記装置本体に対して表示画像を上下に回転させて当該表示画像を倒立させ、前記被検者用画像表示モードから前記検査者用画像表示モードへの移行時に前記装置本体に対して表示画像を上下に回転させて当該表示画像を正立させる。この構成によれば、表示モードの切換時に、画像内容の変更と共に画像の上下回転を行わせることができる。検査者用画像から被検者用画像への切り替えは装置本体の姿勢変更に伴って表示内容が被検者から読めるようになる前に行われるのが望ましく、被検者用画像から検査者用画像への切り替えは装置本体の姿勢変更に伴って表示内容が被検者から読めなくなった以後に行われるのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、姿勢変化の自由度が高い可搬型の措置本体を備えた超音波診断装置において、検査者及び被検者のそれぞれに対して適切な画像を提供することができる。あるいは、被検者にとって不適切な情報がその被検者に対して不用意に提供されないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
図2図1に示した装置本体の斜視図である。
図3】表示画像を構成する複数のプレーンを示す図である。
図4】絶対座標系と装置本体の座標系とを示す図である。
図5】正立姿勢から倒立姿勢への姿勢変更を示す図である。
図6】倒立姿勢から正立姿勢への姿勢変更を示す図である。
図7】縦から横への姿勢変更を示す図である。
図8図1に示す超音波診断装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。この超音波診断装置は、医療の分野において用いられ、生体に対する超音波の送受波により超音波画像を形成する装置である。
【0020】
図1において、超音波診断装置は、大別して、装置本体10及びプローブユニット12により構成されている。装置本体10は、後に図2を用いて説明するようにタブレット形または平板形の形態を有しており、可搬型の装置が構成されている。プローブユニット12は送受波器として機能するものであり、本実施形態において、プローブユニット12と装置本体10との間においてはワイヤレスにより信号が伝送されている。もちろんそれらの間がケーブルにより接続されてもよい。
【0021】
プローブユニット12について詳述する。プローブユニット12は、図1に示す実施形態において、アレイ振動子14、送受信部20及び通信部22を備えている。更にバッテリ24を内蔵している。それらの構成がプローブケース内に収容されてもよいが、プローブヘッドとそれに接続された中継ボックスにより構成されてもよい。
【0022】
アレイ振動子14は、複数の振動素子からなる1Dアレイ振動子である。アレイ振動子14によって超音波ビーム16が形成され、それを電子的に走査することによりビーム走査面18が形成される。ビーム走査面18は二次元データ取込領域である。電子走査方式としては電子セクタ走査、電子リニア走査等が知られている。
【0023】
送受信部20は、送信ビームフォーマ及び受信ビームフォーマである。送信時において、送信部20から複数の送信信号がアレイ振動子14に供給され、これによって送信ビームが形成される。受信時において生体内からの反射波がアレイ振動子14にて受波され、これによりアレイ振動子14から複数の受信信号が並列的に送受信部20へ出力される。送受信部20においては、複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、これにより整相加算後の受信信号としてビームデータを出力する。
【0024】
通信部22は装置本体10側に設けられた通信部28との間で通信を行うモジュールである。本実施形態においてはワイヤレス伝送方式が採用されており、電波、赤外線等を用いて信号が伝送されている。通信部28から通信部22に対して制御信号が送られており、通信部22から通信部28に対して受信データがが送られている。もちろん他の必要な信号も2つの通信部22,28間において伝送される。
【0025】
したがって、装置本体10側から送られる制御信号が通信部28、通信部22を介して送受信部20へ送られ、送受信部20はその制御信号に基づいて、送信信号の生成及び受信信号の処理を実行する。受信ビームフォーマの一部の機能がプローブユニット12に設けられ、残りの機能が装置本体10側に設けられてもよい。バッテリ24はプローブユニット12内の各構成に対して電力を供給するものである。
【0026】
次に、装置本体10について詳述する。上述したように、通信部28は通信部22との間でワイヤレス方式により信号の伝送を行うモジュールである。通信部28から出力される各ビームデータが信号処理部30に送られている。信号処理部30はビームデータに対して検波処理、対数圧縮処理等の各種の信号処理を適用するモジュールである。画像形成部32は、複数のビームデータすなわち受信フレームデータに基づいて表示フレームデータすなわちBモード画像(二次元白黒断層画像)を形成するモジュールである。それにより生成された画像データは表示処理部34を経由してタッチパネル46のうちの表示器48へ出力されている。
【0027】
表示処理部34は、表示画像を構成する機能を有し、具体的には、画像合成機能、カラー演算機能等を備えている。上述したタッチパネル46は、表示器48及び入力器50で構成され、本実施形態においては表示器48が液晶ディスプレイにより構成されており、入力器50はその液晶ディスプレイに重合されたタッチスクリーンにより構成されている。入力器50からの情報が主制御部36へ送られている。
【0028】
主制御部36は図1に示された各構成の動作制御を行うものである。主制御部36の有する機能のうちで、姿勢判定機能が姿勢判定部38として表されており、表示制御機能が表示制御部40として表されている。主制御部36に対しては姿勢センサ42からの信号が送られている。姿勢センサ42は、後に説明するように、傾きセンサ、加速度センサ、ジャイロ等からなり、装置本体10の姿勢又は姿勢変化を検出するためのものである。本実施形態においては、本体座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれの軸まわりにおける回転角度が検出されている。
【0029】
姿勢判定部38は、姿勢センサ42からの出力信号に基づいて装置本体が現状どのような姿勢にあるのかを判定する。特に、本実施形態においては、後に説明するように正立姿勢から倒立姿勢への姿勢変更及び倒立姿勢から正立姿勢への姿勢変更が判定されている。
【0030】
表示制御部40は姿勢判定部38の判定結果に基づいて、表示内容を制御するモジュールであり、正立姿勢から倒立姿勢への姿勢変更が判定された場合、被検者用画像が表示器48に表示されるようにする。すなわち被検者用画像表示モードを選択する。一方、姿勢判定部38によって、倒立姿勢から正立姿勢への姿勢変更が判定された場合、表示制御部40は表示器48に検査者用画像が表示されるように制御を行っている。すなわちその場合には、検査者用画像表示モードが選択される。
【0031】
検査者用画像は、後に説明するように、超音波画像、第1グラフィック画像及び第2グラフィック画像からなるものであり、ここで、第1グラフィック画像は検査者の他、被検者に対しても見せて構わない情報である。第2グラフィック画像は検査者に対してだけ見せる画像すなわち被検者に対しては見せたくない情報である。それは、検査者により入力されたコメントやアノテーションなどである。例えば、画像上において疾患部位を特定するマーキングが行われた場合や可能性がある疾患名が記入された場合、それらの情報は被検者に対して見せたくないものであり、そのような場合にはその情報は第2グラフィック画像として管理されることになる。検査者用画像は、超音波画像と第1グラフィック画像とからなるものであり、それには第2グラフィック画像は含まれない。このように、超音波画像以外の情報について属性を管理することにより、表示モードの切替によって画像内容を切り替えることが可能となる。
【0032】
図1に示されるスイッチ44は電源スイッチであり、そこからの信号が主制御部36へ与えられている。バッテリ52は装置本体10内の各構成に対して電力を供給するものである。符号53は本実施形態においてソフトウエアの機能として実現される部分を示している。すなわち、通信部28から出力される情報はソフトウエアによって処理されており、具体的には、符号53はCPUとそれにより実行されるプログラムに相当している。もちろん、一部の機能が専用のプロセッサによりソフトウエア処理されてもよい。主制御部36は、上述したように、通信部28,22を介してプローブユニット12側に設けられた送受信部20の動作制御も行っている。ただし、プローブがケーブルを介して装置本体に接続される通常の構成を採用することもでき、その場合においては送受信部20が装置本体10内に設けられる。ちなみに、姿勢変更の対象となる装置本体を実質的にタッチパネル46あるいは表示器48だけから構成されるようにしてもよい。すなわち、少なくとも表示器を含む部分の姿勢変更を判定して、表示器に表示される表示内容を切り替えるように構成するのが望ましい。
【0033】
なお、図1においては、ドプラ情報の処理部等が図示省略されている。一般的な超音波診断装置に設けられている他の構成が装置本体10に含まれてもよい。
【0034】
図2図1に示した装置本体10の斜視図が示されている。装置本体10は本実施形態において、タブレット形を有しておりそれは表示面を構成するタッチパネル46を備えている。タッチパネル46には表示画面が表示されており、それは超音波画像48を含むものである。更に表示画像は入力部50を有しており、入力部50上には例えば仮想的なキーボード、手書き入力部52が設けられる。仮想的な入力部は複数のキーアイコンにより構成され、個々のアイコンへのタッチにより任意の文字を入力することが可能である。また手書き入力部52を利用して、タッチペンにより手書き入力を行うことが可能である。そのような機能を利用して、超音波画像48上にあるいはその近傍にコメントやアノテーションを付加することができ、そのような情報が符号54で示されている。具体的には、符号54は診断情報を示している。診断情報54は検査者において必要な情報であるが、必ずしも被検者に対しては見せたくない情報である。したがって、本実施形態においては、装置本体10の姿勢を判定することにより、そのような診断情報54の表示及び非表示が選択的に切り替えられている。
【0035】
図3には、表示画像62の構成が示されている。本実施形態においては、表示画像62は、第1プレーン56、第2プレーン58、及び第3プレーン60を合成した画像として構成されている。第1プレーン56は超音波画像を含むプレーンであり、第2プレーン58は検査者及び被検者の双方に対して見せても構わない第1グラフィック画像を含むプレーンであり、第3プレーン60は、検査者に対してのみ表示する第2グラフィック画像を含むプレーンである。
【0036】
したがって、検査者画像は、第1プレーン56から第3プレーン60までの3つの画像を合成した画像として構成され、一方、被検者用画像は第1プレーン56及び第2プレーン58だけを合成した画像、すなわち第3プレーン60を含まない画像として構成される。
【0037】
図4には、絶対座標系と装置本体10上において定義される座標系とが示されている。絶対座標系は重力あるいは鉛直方向を基準として定められるものであり、それは直交するX軸、Y軸、Z軸により構成されるものである。Z軸は鉛直方向を向いている。X軸及びY軸は水平軸である。これに対し、装置本体10上における可動座標系としてx軸、y軸及びz軸が定義される。それらはセンサ42の検出原点を通過しており、ここでz軸は装置本体10の長軸に相当し、x軸は装置本体10の短軸に相当し、それらは表示面の縦及び横に相当している。y軸は表示面の法線に相当し、すなわち表示面に対して直交している軸である。
【0038】
本実施形態においては、センサ42により、装置本体10について、X軸まわりの回転角度、Y軸まわりの回転角度及びZ軸まわりの回転角度が検出されている。ちなみに、表示面が縦の向きになった場合及び横の向きになった場合のいずれにおいても表示画像が正立するように画像を90度ローテーションさせる機能が搭載されている。そのほか、後に説明するように正立姿勢から倒立姿勢への変更及び倒立姿勢から正立姿勢への変更を判定する機能が搭載されている。
【0039】
図5には、正立姿勢から倒立姿勢への姿勢変更が概念的に示されている。図5において、S1は正立姿勢を示している。正立姿勢と言っても、ここでは、表示面64Aを斜め上方に向けた傾斜した姿勢である。これを正立姿勢と定義している。符号100で示すように、検査者において斜め下方の視線をもって表示面64Aが観察されることになる。また符号102で示すように、そのような正立姿勢において検査者の指やタッチペンにより入力が行われることになる。もちろん正立姿勢が完全に垂直になった姿勢であってもよいし、表示面64Aがより上向きになる姿勢であってもよい。
【0040】
そのような正立姿勢からS2で示されるように姿勢変更が開始される。具体的には、装置本体10Aの背面を下向きにしつつ、水平軸まわりにおいて装置本体10Aが回転するように姿勢が変更される。図5においては、垂直軸であるZ軸に対するz軸の回転角度が示されている。
【0041】
そのような姿勢変更の途中において、S6で示されるように、画像の回転及び表示モードの変更が実行される。画像の回転は表示されている画像を上下に反転させるものであり、すなわち180度回転させるものである。表示モード変更は検査者用画像表示モードから被検者用画像表示モードへの変更を意味している。S4は倒立姿勢を示している。その倒立姿勢は、表示面64Bを斜め上方へ向けつつ、装置本体10Bが傾斜した状態である。もちろん表示面64Bがより上向きとなってもよいし、あるいは装置本体10Bが完全に垂直状態になってもよい。正立姿勢においてセンサ42Aは装置本体10Aから見て上部に位置していたが、倒立姿勢においては、装置本体10Bから見てセンサ42Bは下部に位置している。符号104は倒立姿勢にある装置本体10Bにおける表示面64Bの観察方向を示している。すなわち被検者において斜め上方から観察が行われることになる。
【0042】
以上のように、正立姿勢から倒立姿勢への姿勢変更があると、その途中において姿勢変更が判定され、その判定に基づいて表示モードの変更が実行される。それと共に画像の回転が実行される。正立姿勢においては検査者用画像が表示されていたが、上記の表示モード変更により、倒立姿勢においては被検者用画像を表示させることができる。すなわち被検者に対して見せたくない情報を隠すことが可能となる。
【0043】
ちなみに、正立姿勢から倒立姿勢への姿勢変更の判定は、例えばZ軸に対するz軸の回転角度が一定角度になった時点で判定するようにしてもよい。ちなみに、正立姿勢において装置本体10Aが横倒しの状態となっている場合、そこから姿勢変更を判定する際には、Z軸に対するx軸の回転角度を判断基準にすればよい。
【0044】
図6には、倒立姿勢から正立姿勢への姿勢変更が概念的に示されている。S4で示す倒立姿勢において装置本体10Bはその表示面64Bを被検者の方向に向けており、すなわち斜めの姿勢となっている。そこから装置本体10Bの背面を下方に向けつつ、水平軸まわりにおいて装置本体10Bが他方方向に回転運動すると、S7で示す正立姿勢となる。S5は姿勢変更の開始を表しており、そこから姿勢変更の途中で、S6で示すように、画像回転と表示モード変更が実行される。すなわち倒立姿勢から正立姿勢への姿勢変更が判定された時点において、表示されている画像が上下に反転され、それとともに、被検者用画像表示モードから検査者用画像表示モードへの変更が実行される。これにより表示内容が通常の内容に戻されることになる。符号10Cは正立姿勢にある装置本体を示しており、符号64Cは正立姿勢での表示面を示している。センサ42Cは再び装置本体10Cに対して上部に位置している。
【0045】
図7には、縦から横への姿勢変更が示されている。符号10Dは倒立状態にある装置本体を示しており、ここにおいてセンサ42Dは装置本体10Dから見て下部に位置している。表示面64Dは斜め上方を向いている。表示面64Dの法線がy軸である。このように、装置本体10Dの長軸であるz軸が斜め下方を向いており、すなわち装置本体10Dは縦の姿勢を有している。
【0046】
その状態から、y軸まわりに装置本体10Dを回転させると、すなわちS8に示すように、縦から横への姿勢変更を行うと、符号10Eで示すように装置本体10が横向きの姿勢となる。この場合においてx軸すなわち短軸が斜め方向となっており、長軸は水平軸に一致している。表示面64Eは姿勢変更前と同様に斜め上方を向いている。
【0047】
本実施形態においては、このような縦から横あるいは横から縦への姿勢変更があっても、表示モードは維持されている。すなわち被検者用画像が表示されている状態において、y軸まわりの回転運動が生じてもその画像内容それ自体は変更されない。ただし、姿勢変更に伴って画像を90度ローテーションさせる処理が実行されている。縦と横との間において姿勢変更があった場合、S9に示すように、正立姿勢と倒立姿勢との間での姿勢変更を判定するための基準姿勢が更新される。図示の例では横向きの姿勢が基準姿勢とされており、すなわちx軸が判定用の基準軸として認識され、そのx軸とZ軸との間の角度に基づいて表示モードの切替が実行される。
【0048】
図8には、図1に示した装置の動作がフローチャートとして示されている。図8には特に姿勢変更に伴う表示制御の内容が示されている。
【0049】
S10においては、基準姿勢の初期登録が行われる。すなわち、装置本体が縦の姿勢にあるか横の姿勢にあるかの区別が行われる。縦の姿勢にある場合、判定用の基準軸としてz軸が選択され、横の姿勢にある場合には判定用の基準軸としてx軸が選択される。
【0050】
S12においては、表示制御を行う必要のある装置本体の回転すなわち姿勢変更があったか否かが判断されている。ここでは水平軸まわりの回転あるいは表示面の法線軸まわりの回転の何れかが発生したか否かが判断されている。図5及び図6に示したように、装置本体の背面を下向きにしながらの水平軸まわりの回転運動が発生した場合、S14においては表示モードが変更される。すなわち、検査者用画像表示モードから被検者用画像表示モードへの変更又は被検者用画像表示モード検査者用画像表示モードへの変更の何れかが実行される。それと共に、S16において、画像を上下に反転させる処理が実行される。S18においては基準姿勢が更新される。例えば正立姿勢から倒立姿勢への変更後に表示面の法線まわりにおいて装置本体が回転されたような場合S18において基準姿勢の更新が実行される。S24において終了が判断されるまで、S12以降の各構成が繰り返し実行される。
【0051】
S12において、表示面の法線まわりの回転運動が行われたと判断された場合、すなわち45度以上の回転が行われた場合、S20において画像を90度回転させる処理が実行される。すなわち表示面の回転に伴い画像がユーザから見て見やすいように画像回転を行わせるものである。S22においては基準姿勢が更新されることになる。以上のように法線軸まわりの回転運動が行われても、表示モードの変更は実行されておらず、そのような変更は水平軸まわりの回転運動が生じた場合にだけ行われている。
【0052】
上記の動作例においては、基準姿勢が更新されているため、すなわち装置本体が横向きにあってもあるいは縦向きにあってもそこからの姿勢変更を的確に判断することが可能である。ちなみに、表示面が完全に上方を向くような場合あるいはそれに近い状態となった場合には、正立姿勢及び倒立姿勢の何れの姿勢とも判断困難であるため、その場合においては被検者用画像の表示を優先させるようにしてもよい。あるいはそのような特別な状態における表示動作の内容をユーザにおいてプリセットできるように構成してもよい。
【0053】
以上の実施形態においては、装置本体の姿勢に基づいて表示画像の内容の切替が行われていたが、装置本体の姿勢に基づいて軌道調整等の他の制御が行われるようにしてもよい。何れにしても、軌道性あるタブレット形の装置本体10についてはその表示面の向きを容易に変更可能でありそのような場合に上記の構成を適用するのが特に望ましい。
【符号の説明】
【0054】
10 装置本体、12 プローブユニット、14 アレイ振動子、36 主制御部、38 姿勢判定部、40 表示制御部、42 姿勢センサ、46 タッチパネル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8