(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924989
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】超音波送受波器
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
【請求項の数】1
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2012-52887(P2012-52887)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-187814(P2013-187814A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229081
【氏名又は名称】日本セラミック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市居 宏
【審査官】
松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−085998(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状ケースと、前記有底筒状ケースの内底面に接着固定された圧電素子と、前記圧電素子の前記有底筒状ケースに固定された面と反対の面に半田付けされたリード線と、前記圧電素子の上に密着するように敷かれた前記リード線を通す貫通穴を有する吸音材と、
前記吸音材の貫通穴に充填された吸音材穴埋シリコーンと、前記有底筒状ケースの内側に充填された封止用シリコーンとからなる超音波送受波器において、前記吸音材の貫通穴の直径が前記リード線周囲と前記貫通穴の内縁との隙間に前記吸音材穴埋シリコーンが満たされるために前記リード線の最大直径より大きく、且つ前記圧電素子の前記有底筒状ケースに固着された面と反対の面に半田付けされた半田の水平方向の最大直径未満であることによって、前記吸音材穴埋シリコーンが前記圧電素子へ接触しないことを特徴とする超音波送受波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波周波数帯の送信、受信を行う超音波送受波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の実施の形態に関わる超音波送受波器において、超音波送受波器を車のバンパー等に埋め込み設置し、車周辺の障害物を検出しようとした場合、超音波送受波器にパルスバースト電気信号を入力することにより、超音波送受波器からその入力パルスバースト電気信号に応じた超音波信号が発信され、発信された超音波信号は障害物に到達し、障害物に当たった超音波信号は、その障害物で反射され、その反射された超音波信号の一部が同じ超音波送受波器に戻ってくる。超音波送受波器はその反射信号を受信することによって障害物を検出している。
【0003】
図3は、従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。
図3において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面から入出力リード線5a、また、有底筒状ケース2から入出力リード線5bを半田付け等により取り出す。ここで入出力リード線5aを半田付けすることでできる半田フィレット部分は素子半田7と呼ぶこととする。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に、圧電素子1と入出力リード線5a、及び有底筒状ケース2と入出力リード線5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面に
図4に示すように入出力リード線5bを通すための穴が開けられているシリコン発泡体等から成る吸音材3を載置し、その吸音材3の穴を埋めるように吸音材穴埋シリコーン6を充填する。さらにシリコン材、ウレタン材等から成る封止用シリコーン4を有底筒状ケース2の内部に充填し構成する。
【0004】
しかしながら、このような構造の超音波送受波器では感度特性のばらつきが大きく、低い感度特性を持つものが発生することが課題であったが、それが何に起因しているか不明であった。
本発明は、超音波周波数帯の送信、受波を行う超音波送受波器に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−237796号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】谷腰欣司著 「超音波とその使い方−超音波送受波器・超音波モータ」 日刊工業新聞 1994年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、低い感度特性のものが何に起因して発生するか不明であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
今回、感度特性は吸音材の穴径に依存していることが判明した。そして更に本発明の結果、吸音材の穴の直径をリード線の最大直径より大きくしてリード線周囲と貫通穴内縁との隙間に吸音材穴埋シリコーンが充填されるようにし、且つ素子半田の水平方向最大直径未満として有底筒状ケース内部に充填される封止用シリコーン材が圧電素子へ接触しないようにすることで、高い感度特性を維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低い感度特性が発生せず、感度特性のばらつきが少ない優れた製品を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【
図3】従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【
図5】本発明の実施の形態に関わる吸音材の穴径と超音波送受波器の感度の関係
【発明を実施するための形態】
【0011】
図5に吸音材3の貫通穴の直径を変えたときの感度特性の値を示す。この実験では、外径Φ12mm、高さ8mmのアルミ合金からなる有底筒状ケース2の底面にΦ5.3mmの圧電素子1を接着している。圧電素子1に半田付けした入出力リード線5aは圧電素子1に対して垂直に出ており、その入出力リード線5aの直径は0.25mmのものを使用している。半田素子7の大きさは半田フィレットの直径が1.5mmとなる条件で作製しており、これは圧電素子1との接触面積はほぼ1.77平方mmとなる。そして、実験に用いた吸音材3の厚みは1.5mm、貫通穴の直径は0.25mmから2.5mmのものを使用した。
図5の表は、吸音材3の貫通穴の直径が2mmを超えると急激に感度特性が低下し始めることを示している。貫通穴の直径が2mmの時の面積は3.14平方mmであり、素子半田7の圧電素子1との接触面積に対して178%である。ここで吸音材3の穴径が2.1mm以上のものを使用した超音波送受波器を分解し内部を観察したところ、圧電素子1と吸音材穴埋シリコーン6が接着していたが、1.8mmから2.0mm以下の場合は圧電素子1への接触は認められるが、接着はしていなかった。また1.8mm以下では圧電素子1上の素子半田7への接着はしているが、圧電素子1には接触すらしていなかった。すなわち圧電素子1に対して吸音材穴埋シリコーン6が接着することで感度特性に悪影響があることがわかった。素子半田7の位置と大きさが感度特性に大きく影響を与える事は経験的にわかっていたが、従来は手作業による半田付けが主流であり、素子半田の位置や大きさのばらつきが大きく、吸音材3の貫通穴は作業性を重視した大きさで作られてきた。そのため、感度特性が低くなっても素子半田7の影響が大きいと考え、吸音材3の貫通穴の大きさについては詳しく調べられては来なかった。しかし、最近では半田付けに自動機を導入することで、半田素子7の位置や大きさの制御が容易になり、ばらつきが小さくなっているので、吸音材3の貫通穴を小さくしても作業性への影響は少ないと考えられる。以上のことから、吸音材3の貫通穴の直径をリード線の最大直径より大きくして、リード線周囲と貫通穴内縁との隙間に吸音材穴埋シリコーンが充填されるようにし、且つ素子半田の水平方向最大直径未満として有底筒状ケース内部に充填される封止用シリコーン材が圧電素子へ接触しないようにすることで、高い感度特性を維持することができる。なお、当該貫通穴の形状は、リード線周囲と貫通穴内縁の隙間が生じる程度に大きく、且つ貫通穴の内縁最大直径が素子半田の水平方向直径未満であることを満たす限りは、三角形・四角形・五角形等の多角形形状としても構わない
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。
図1において、アルミニウム材等から成り、筒の直径がΦ12mm以上Φ18mm以下である有底筒状ケース2の底面内部に圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面から入出力リード線5a、また、有底筒状ケース2から入出力リード線5bを半田付け等により取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、更に、圧電素子1と入出力リード線5a、及び有底筒状ケース2と入出力リード線5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面にシリコン発泡体等から成り、
図2のように2mm以下で、かつ入出力リード線5aの直径より大きい穴径を持つ吸音材3を載置し、その穴にシリコン材から成る吸音材穴埋シリコーン6を充填した後、その上からシリコン材、ウレタン材等から成る封止用シリコーン4を有底筒状ケース2の内部に充填し構成する。
ちなみに、吸音材3の成形方法として、シート状のシリコン発泡体等から金型で打ち出した場合の吸音材の穴の寸法公差は、寸法狙いをΦ2.0mmとした時でも±0.2mm程度は容易に発生し得るばらつきがあり、従来構造で入出力リード線を通すために作業性を重視し、Φ2.0mmを寸法狙いとした場合には、穴径がΦ2.0mmより大きい吸音材を使用した超音波送受波器が製造されていた恐れがある。そのため、吸音材3の寸法狙いは寸法公差が±0.2mmの時はΦ1.8mmとする。
【符号の説明】
【0013】
1 圧電素子
2 有底筒状ケース
3 吸音材
4 封止用シリコーン
5a 入出力リード線
5b 入出力リード線
6 吸音材穴埋シリコーン
7 素子半田