特許第5925083号(P5925083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5925083大口径配管用耐圧閉止装置および大口径配管用耐圧閉止装置の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925083
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】大口径配管用耐圧閉止装置および大口径配管用耐圧閉止装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/128 20060101AFI20160516BHJP
   G01N 3/12 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   F16L55/128
   G01N3/12
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-180179(P2012-180179)
(22)【出願日】2012年8月15日
(65)【公開番号】特開2014-37860(P2014-37860A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(72)【発明者】
【氏名】杉江 大樹
(72)【発明者】
【氏名】諸沢 右也
(72)【発明者】
【氏名】小倉 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】小谷 貴彦
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−081599(JP,U)
【文献】 実開昭54−179523(JP,U)
【文献】 実開平01−124544(JP,U)
【文献】 特開昭62−184991(JP,A)
【文献】 特開昭58−196431(JP,A)
【文献】 特開昭58−151589(JP,A)
【文献】 特開2001−173879(JP,A)
【文献】 実開平06−006888(JP,U)
【文献】 実開昭60−064237(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L55/10−55/18
G01N 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧試験が行われる配管の内周面に固定され、チューブ内へ流体を導入するための流体導入部を有するリング状の弾性チューブと、前記弾性チューブを保持する保持溝を有する保持部と、前記内周面に着脱自在に固定され、前記保持部を支持する支持部材とを備え、前記配管を閉止する大口径配管用耐圧閉止装置であって、
前記保持部は、
前記弾性チューブのリング内周に挿入され、軸外周面が前記保持溝の溝底面を構成する軸部、および、前記軸部の一端側の外周からリング状に突出するように形成されて前記保持溝の一方の溝側面を構成するフランジ部を有する第1の保持板と、
前記軸部の他端側に着脱自在に固定され、前記保持溝の他方の溝側面を構成する第2の保持板と、を備え、
前記支持部材は、
前記第1および第2の保持板の一方が載置される第1および第2の係止部と、
両端に前記第1および第2の係止部が着脱自在に設けられ、前記第1および第2の係止部を前記内周面に押圧して固定する柱状部材と、を有し、
加圧された流体が前記流体導入部を介して前記弾性チューブに導入されることにより、前記弾性チューブが前記内周面に固定されて前記配管が閉止されることを特徴とする大口径配管用耐圧閉止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の大口径配管用耐圧閉止装置において、
前記弾性チューブの断面形状が矩形であることを特徴とする大口径配管用耐圧閉止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の大口径配管用耐圧閉止装置において、
前記弾性チューブの、前記配管の内周面に接触する領域を凹凸面としたことを特徴とする大口径配管用耐圧閉止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の大口径配管用耐圧閉止装置において、
前記第1および第2の保持板の一方には、他方の保持板方向へ突出するネジ棒が形成され、
前記他方の保持板には、前記ネジ棒が貫通する貫通孔が形成され、
前記他方の保持板の前記貫通孔を貫通した前記ネジ棒にナット螺合されて、前記第1および第2の保持板が互いに固定されていることを特徴とする大口径配管用耐圧閉止装置。
【請求項5】
請求項に記載の大口径配管用耐圧閉止装置設置方法であって、
配管内に前記支持部材を固定する第1の工程と、
前記第1および第2の保持板の内の、前記ネジ棒が形成された保持板を前記支持部材に載置する第2の工程と、
前記第1の保持板の軸部に前記弾性チューブを装着する第3の工程と、
前記ネジ棒が前記貫通孔を貫通するように前記第1および第2の保持板を互いに合わせ、前記ネジ棒に前記ナットを螺合させて前記第1および第2の保持板を互いに固定する第4の工程と、
前記弾性チューブに設けられた前記流体導入部から加圧された流体を導入する第5の工程と、を有することを特徴とする大口径配管用耐圧閉止装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉給水ポンプ駆動用蒸気タービン等に用いられる大口径配管の耐圧試験時に、配管内に配置される耐圧閉止装置、および耐圧閉止装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉給水ポンプ駆動用蒸気タービン(以下RFPTと略す)の排気管耐圧試験時には、溶接タイプの耐圧閉止板が使用されている。この耐圧閉止板を使用する場合、工場で配管内面に耐圧閉止板を片側全周溶接にて取付け、工場耐圧試験を実施する。その後、耐圧閉止板を取付けた状態で現地へ納入し、現地耐圧試験を実施する。現地耐圧試験後に溶接部を切断し、切断部に対してグラインダー掛け等の処理を施し、非耐圧部に対して非破壊検査を実施するようにしている。
【0003】
一方、特許文献1には、配管の開放端に臨時に取り付けることのできる閉塞栓が開示されている。この閉塞栓では、袋内に圧縮空気やその他の流体を導入しておき、その袋を両側から押さえ板で挟むことにより、袋の外周部が配管の内周面に押し付けられ、それにより配管の閉塞が行われる。その際、ナットを締め込むことで袋内の圧力を増加させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−115625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大口径配管に対して従来から用いられている溶接方式の閉止板の場合には、上述したように、取り付け作業および取り外し作業が煩雑であるとともに、閉止板切断後に切断部の処理や非破壊検査が必要となる。特に、上述したようなタービン排気管の場合には、閉止板取り付け箇所が10箇所程度もあり、耐圧試験に付随する閉止板取り外しや非破壊検査に手間がかかっていた。
【0006】
一方、特許文献1に記載の閉塞栓の場合には、取り付け・取り外しが容易であるが、次のような問題がある。直径が2m近くもある大口径配管に用いる場合には、耐圧試験用流体の圧力が加わる面積が大きくなるため、大きな力が閉塞栓に加わる。しかしながら、特許文献1に記載の閉塞栓の場合には、袋を両側から押さえ板で挟む構造であるため、袋を配管内周面に押し付ける力が弱く、流体圧力に耐え得るだけの十分な摩擦力が得られない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、耐圧試験が行われる配管の内周面に固定され、チューブ内へ流体を導入するための流体導入部を有するリング状の弾性チューブと、弾性チューブを保持する保持溝を有する保持部と、内周面に着脱自在に固定され、前記保持部を支持する支持部材とを備え、配管を閉止する大口径配管用耐圧閉止装置であって、保持部は、弾性チューブのリング内周に挿入され、軸外周面が保持溝の溝底面を構成する軸部、および、前記軸部の一端側の外周からリング状に突出するように形成されて保持溝の一方の溝側面を構成するフランジ部を有する第1の保持板と、軸部の他端側に着脱自在に固定され、保持溝の他方の溝側面を構成する第2の保持板と、を備え、支持部材は、第1および第2の保持板の一方が載置される第1および第2の係止部と、両端に第1および第2の係止部が着脱自在に設けられ、第1および第2の係止部を内周面に押圧して固定する柱状部材と、を有し、加圧された流体が流体導入部を介して弾性チューブに導入されることにより、弾性チューブが内周面に固定されて配管が閉止されることを特徴とする。
請求項の発明は、請求項に記載の大口径配管用耐圧閉止装置設置方法であって、配管内に支持部材を固定する第1の工程と、第1および第2の閉止板の内のネジ棒が形成された閉止板を支持部材に載置する第2の工程と、第1の閉止板の軸部にシール部材を外挿する第3の工程と、ネジ棒が貫通孔を貫通するように第1および第2の閉止板を互いに合わせ、ネジ棒にナットを螺合させて第1および第2の閉止板を互いに固定する第4の工程と、シール部材に設けられた流体導入部から加圧された流体を導入する第5の工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐圧シール性に優れ、配管への取り付けおよび取り外しが容易な大口径配管用耐圧閉止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施の形態の耐圧閉止装置1が取り付けられた配管2の一例を示す図である。
図2図2は、配管2内に取り付けられた耐圧閉止装置1を示す断面図である。
図3図3は、チューブ14を示す図である。
図4図4は、閉止板12を示す図である。
図5図5は、閉止板13を示す図である。
図6図6は、L1およびP2の設定例を示す図である。
図7図7は、耐圧閉止装置1の配管2への取り付け作業を説明する図である。
図8図8は、閉止板12,13の第1の変形例を示す図である。
図9図9は、閉止板12,13の第1の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本実施の形態の耐圧閉止装置1が取り付けられた配管2の一例を示す図である。配管2は、RFPTと復水器配管との間に接続されるRFPT排気管である。配管2には、タービン側に接続されるフランジ2aと、復水器配管側に接続されるフランジ2bとが設けられている。耐圧閉止装置1は工場にて取り付けられ、工場耐圧試験部(符号A側の部分)は工場にて耐圧試験が行われる。また、現地耐圧試験部(符号B側の部分)は、配管2を現地でタービンに接続し、フランジ2b側に復水器側配管を接続した後に耐圧試験が行われる。現地での耐圧試験が終了したならば、耐圧閉止装置1は配管2から外される。
【0011】
図2は、配管2内に取り付けられた耐圧閉止装置1を示す断面図である。耐圧閉止装置1は、チューブ14と、チューブ14を保持する保持部としての閉止板12,13とを備えている。図3はチューブ14を示す図であり、図4は閉止板12を示す図であり、図5は閉止板13を示す図である。
【0012】
図3に示すように、チューブ14は、断面形状が略矩形の中空リングである。チューブ14の材料には、天然ゴムやウレタン等の弾性材が用いられている。チューブ14の側面には、チューブ14の内部に加圧された流体(水や油)を導入するための配管16が設けられている。チューブ14の外周面は、複数の溝14aが形成されて凹凸面となっている。図3に示す例では、溝14aは外周面の周方向に沿って形成されているが、凹凸構造を構成するものであれば必ずしもこの方向に限らない。
【0013】
図4に示すように、閉止板12の片側の面(閉止板13に対向する面)には、4本のネジ棒120が立設されている。ネジ棒120は溶接にて閉止板12に固定する構造であっても良いし、削り出しで閉止板12に形成しても良い。一方、閉止板13は、図5に示すように、中央の軸部13aと、軸部13aの外周面からリング上に突出したフランジ部13bとを有している。軸部13aには、閉止板12のネジ棒120が挿通される貫通孔130が4つ形成されている。寸法L2は、フランジ部13bのシール側端面から軸部13aの端面までの寸法である。閉止板12,13には、例えば、鋼材が用いられる。なお、図5において、二点鎖線は閉止板13に固定された状態の閉止板12を示しており、閉止板13に閉止板12を固定することによって、チューブ14を保持するための保持溝Gが形成される。
【0014】
図2に示すように、チューブ14は閉止板13の軸部13aの外周に外挿するように装着される。そして、各ネジ棒120が貫通孔130に挿通されるように閉止板12,13を組み付け、ネジ棒120に螺合させたナット15を締め付ける。その結果、閉止板12,13およびチューブ14が一体化されて、耐圧閉止装置1が組み上がる。チューブ14内には、配管16を介して加圧された流体(水や油)が注入される。チューブ14内の圧力が所定値となったならば、バルブ16aを閉じる。その結果、チューブ14の外周面が配管2の内周面に押し付けられた状態で、耐圧閉止装置1が配管2内に固定される。なお、耐圧閉止装置1を配管2に装着する際には、耐圧試験部側に閉止板12が向くように取り付けられる。
【0015】
チューブ14に加圧された流体が導入されると、流体圧力によりチューブ14は膨張し、リング状チューブ14の外周面は配管内周面に押し付けられ、チューブ内周面は閉止板13の軸部外周面に押し付けられ、チューブ側面は閉止板12およびフランジ部13bに押し付けられる。その結果、閉止板12,13と配管内周面との隙間はチューブ14によって封止され、耐圧閉止装置1によって左右の領域が遮断される。
【0016】
なお、加圧された流体を導入することによってチューブ14は膨張するので、保持溝Gの溝幅を規定する軸部13aの寸法L2は、チューブ14の幅L1(膨張前の幅)よりも若干大きくても良い。逆に、L1>L2であっても、軸部13aにチューブ14を装着した後に、チューブ14を挟み付けるように閉止板12と閉止板13を一体化するので、チューブ14の取り付けの作業性に影響はない。
【0017】
配管2の内周面に固定された耐圧閉止装置1は、耐圧試験の際には耐圧試験部側に面した閉止板12およびチューブ14の側面に試験圧力P1が作用する(図2参照)。しかし、チューブ14と配管2の内周面との摩擦力は、試験圧力P1による図示右方向への力Fより大きくなるように設定されているので、試験圧力P1によって耐圧閉止装置1が外れたり、移動したりすることはない。
【0018】
例えば、配管2の内径が1796.8(mm)の場合について、耐圧閉止装置1の各部の寸法の一例を示す。このとき、閉止板12,13の外径D3,D5を1690(mm)、閉止板13の軸部13aの外径D4を1590(mm)、チューブ14の膨張前の外径D2を1790(mm)のように設定する。なお、チューブ14の外周面には溝14aが形成されているが、計算においては、外周面が配管内周面に押し付けられることにより溝14aは押しつぶされ、幅L1の全面が接触しているものと考える。また、実際にそのような状況となるように溝14aの寸法(幅、深さ)は設定される。
【0019】
なお、閉止板12,13の外径寸法は、チューブ14の外径寸法に近いほうが、チューブ14の側面方向の膨張が制限され、チューブ外周面が配管2の内周面に効果的に押し付けられる。一方、閉止板12,13の外径が配管2の内径に近づくと、配管内に耐圧閉止装置1を取り付ける際に、閉止板12,13が配管内周面を傷つけるおそれがある。そのため、閉止板12,13の外径寸法は、上述した寸法例のように、チューブ14の外径と内径の平均値程度に設定するのが好ましい。
【0020】
上述のように耐圧閉止装置1の各部の寸法に設定した場合の、チューブ14の幅寸法L1と流体圧力P2との関係を調べる。なお、試験圧力はP1=0.13(MPa)=0.13(N/mm2)とする。ここでは、チューブ14の材料としてウレタンを用いる場合について検討し、ウレタンの静止摩擦係数μを0.74であるとして計算を行う。
【0021】
P1=0.13(N/mm2)なので、そのときに耐圧閉止装置1に作用する右方向の力F(図2参照)は、F=P1×πr(N)となる。チューブ14と配管内周面との最大静止摩擦力F0がF以上であれば、力Fによって耐圧閉止装置1がずれることはない。そして、最大静止摩擦力F0はF0=μ×Nと表されるので、F=F0のときF=μ×N、ゆえにN=F1/μで表される。なお、NはFに耐えるために最低限必要なチューブ14を配管2に押し付ける内圧力Wの反力なのでN=Wである。内圧力Wはチューブ14の全周均等に加わり保守的過ぎるため、チューブ14の1mm2あたりに必要な流体圧力P2が実質Fに耐えるために最低限必要なチューブ14の内圧力となり、P2=W/(L1×2πr)で表される。上述から、P2とL1との関係は次式(1)で表される。
P2=(F1/μ)×{1/(L1×2πr)}
P2×L1=F1/(2πrμ) …(1)
【0022】
図6に示す表は、式(1)を満たすL1とP2との組を例示したものである。データN0.1では、チューブ内圧P2は耐圧試験圧力P1よりも大きくなるが、L1がより大きいデータN0.2〜6では、P2をP1よりも小さく抑えることができる。耐圧閉止装置1を固定した部分の配管2への影響(チューブ14の押し付け力の影響)を考えると、P2<P1のように設定するのが好ましい。また、L1が大きくなるほど耐圧閉止装置1の重量が増すので、L1は可能な限り小さいほうが好ましい。よって、図6に示すデータ例では、L1=100(mm)のように設定するのが好ましい。なお、摩擦係数はチューブに用いる弾性材の材質・硬さによって決まるため、最終的には、試験を行って材質、硬さ、幅L1、内圧を選定する必要がある。
【0023】
なお、本実施の形態では、チューブ14の材料としてウレタンを使用しているが、弾性材料として、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、等を用いるようにしても良い。
【0024】
チューブ14の材料に要求される性質としては、試験圧力P1が作用した時にチューブ14の形状を保持できる程度の硬さがあること、静止摩擦係数が大きいこと、耐圧試験用流体およびチューブ内に導入される加圧流体(例えば、水や油)に対して耐性が高いこと、等がある。また、チューブ14の外周面に凹凸加工を施して溝14aを形成することで、配管内周面とチューブ14との間の摩擦力(変形損失摩擦)を増幅することができる。その結果、チューブ14が滑り難くなる。この凹凸面の機能を効果的に生かすためには、チューブ14を構成する弾性材料に、ある程度の伸び率が要求される。以上のことを考慮すると、ウレタンがチューブ材料として適している。また、ニトリルゴムやフッ素ゴムも耐水性、耐油性に優れている。
【0025】
なお、上述の計算で示したように、本実施形態において溝14aは必須要件ではなく、溝14aを設けなくても耐圧閉止装置1はその機能を十分に満足することができる。
【0026】
図7は、耐圧閉止装置1の配管2への取り付け作業を説明する図である。まず、配管2内に耐圧閉止装置1を搬入する前に、図7に示すようなストッパー100を配管2内に取り付ける。図7は配管2内に取り付けられたストッパー100を示す図であり、図7(a)は配管2の軸に垂直な方向から見た図であり、図7(b)は、配管2の軸に沿った断面図である。ストッパー100は、係止部101a,101b、支柱102、ナット103、座金104を備えている。係止部101a,101bには、ゴム等の弾性部材で形成された当接部105が設けられている。図7(a)に示すように、ストッパー100は、当接部105のみが配管内周面に当接するように取り付けられるので、配管内周面に傷がつくのを防止することができる。
【0027】
図7(b)に示すように、下側の係止部101aには矩形孔106が形成されている。一方、支柱102の下端には矩形断面の係合部102aが形成されている。支柱102の係合部102aを係止部101aの矩形孔106に挿入することで、支柱102が係止部101aに取り付けられる。また、支柱102の上端部分にはネジ部102bが形成されている。係止部101bには貫通孔107が形成されており、支柱102のネジ部102bは貫通孔107を貫通している。ネジ部102bに螺合しているナット103を回転させることにより、係止部101bは図示上側に移動して配管内周面に押し付けられると共に、下側の係止部101aも配管内周面に押し付けられる。
【0028】
ストッパー100を配管内に取り付けたならば、チューブ14を閉止板13の軸部13aに取り付ける。次いで、図7の二点鎖線で示すように、閉止板12を、係止部101aの上に配置するようにストッパー100に立て掛ける。そして、ストッパー100に立て掛けられた閉止板12に、チューブ14が取り付けられた閉止板13を向かい合わせに配置する。その後、閉止板13を貫通している各ネジ棒120にナット15を取り付けて締め付けることにより、閉止板12,13が互いに固定される。
【0029】
この段階では、チューブ14と配管内周面との間には隙間が生じている。そして、配管16を介して加圧された流体をチューブ14内に導入することによりチューブ14は膨張し、チューブ外周面が配管内周面に押し付けられる。その結果、耐圧閉止装置1全体が、配管2の内周面に固定されることになる。なお、耐圧試験はストッパー100が取り付けられた状態で行われる。ストッパー100は、試験後に耐圧閉止装置1を分解する際にも使用される。
【0030】
本実施の形態では、チューブ空洞内に加圧流体を導入してチューブ14を膨張させることにより、チューブ14が配管内周面、閉止板12,13に押し付けられるようにしている。そのため、チューブ14は配管内周面や保持溝Gの面形状に倣って変形し、それらに密着する。また、チューブ接触面は均一な力で配管内周面に押し付けられ、シール性に優れるとともに、より大きな摩擦力を得ることができる。
【0031】
上述した実施形態ではチューブ14の断面形状を矩形状としているが、円形断面のチューブを使用しても構わない。ただし、保持溝Gは断面形状が矩形であるため、円形断面のチューブ14を用いた場合、チューブ14の膨張変形量が小さい場合、配管内周面およびシール溝面との接触面積を十分に取れないおそれがある。その結果、必要とする摩擦力を得られない場合がある。一方、チューブ14の断面形状を矩形状とすることで、より確実に必要な接触面積を確保することができ、十分な摩擦力を得ることができる。
【0032】
また、上述したように、閉止板13を閉止板12に対して着脱自在に固定されるような構造とし、閉止板12に軸部13aが対向するように閉止板12,13を一体とすることで、チューブ14が装着される保持溝Gが形成されるようにした。そのため、閉止板12,13およびチューブ14を個別に配管内に搬入し、その後にそれらを組み立てることで、一体となった耐圧閉止装置1を配管内に取り付けることができる。
【0033】
タービン排気管等に用いられる大口径配管の場合、上述したように直径が2m程度あって、耐圧閉止装置1も大重量とならざるを得ない。そのため、上述のように容易に分解・組立が可能な構成とすることで、作業性向上を図ることができる。さらに、耐圧閉止装置1を配管2に取り付ける際に、組み立て前の閉止板12を立て掛けておくストッパー100を用いることで、組立・分解作業が容易となる。
【0034】
RFPT排気管の場合、従来の溶接型の閉止板が10箇所程度設けられていて、複数のエリア毎に耐圧試験を行っている。本実施の形態の耐圧閉止装置1は、取り付け・取り外しが簡単であって、取り付け位置を容易に変更ができるため、複数のエリア毎に耐圧試験を行う場合にも適している。なお、耐圧試験範囲は、設計圧力の変わり目、耐圧試験対象外設備の隔離、作業工程、作業性等により、JSME(日本機械学会)規格に基づき設定される。
【0035】
(変形例1)
図8は、閉止板12,13の第1の変形例を示す図である。変形例1では、閉止板12側に軸部12aおよびフランジ部12bを形成した。この場合も、ネジ棒120は、耐圧検査領域側に面する閉止板12に形成される。この場合、閉止板12を図7のストッパー100に立てかけた状態で、軸部12aにチューブ14を取り付けることができ、作業性に優れている。なお、ネジ棒120が設けられている部分(軸部12a)は厚いので、ネジ棒120をスタッドボルトで形成しても良い。
【0036】
(変形例2)
図9は、閉止板12,13の第2の変形例を示す図である。変形例2では、軸部13aの中央部分に貫通孔13cを形成して、閉止板13の重量を削減するようにした。それにより、組立・分解時の作業性がさらに向上する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態では下記のような作用効果を奏する。
(1)耐圧閉止装置1は、配管2の内周面に固定されるチューブ14と、チューブ14を保持する保持溝Gを有する保持部としての閉止板12,13とを備える。閉止板13は、チューブ14のリング内周に挿入され、軸外周面が保持溝Gの溝底面を構成する軸部13a、および、該軸部13aからリング状に突出するように形成されて保持溝Gの一方の溝側面を構成するフランジ部13bを有し、閉止板12は、軸部13aの他端側に着脱自在に固定され、保持溝Gの他方の溝側面を構成する。そして、加圧された流体が配管16を介してチューブ14に導入されることにより、チューブ14が配管2の内周面に固定されるとともに、配管2が閉止される。
【0038】
このように閉止板12,13を着脱自在に構成したことにより、これらの部品を個別に配管内に搬入し、配管内で組み立てて配管に固定することができる。そのため、搬入・搬出の際の軽量化が図れ、耐圧閉止装置1の取り付け・取り外し作業を容易とすることができる。また、流体の圧力によりチューブ14を配管内周面に押し付けるようにしたので、均一な圧力で押し付けられるとともに、面形状に倣って押し付けられる。そのため、シール性の向上が図れるとともに、必要な摩擦力を確実に確保することができる。
【0039】
(2)また、チューブ14を矩形断面形状とすることにより、配管内周面に対する接触面積を大きくすることができ、試験圧力に対する位置ズレ防止効果をより向上させることができる。
【0040】
(3)さらに、チューブ14の配管内周面に接触する領域を凹凸面としたことにより、摩擦力(変形損失摩擦)を増幅することができ、配管内周面に耐圧閉止装置1をより強固に固定することができる。
【0041】
(4)閉止板12には、他方の閉止板13の方向へ突出してその閉止板13を貫通するネジ棒120が形成され、閉止板13には、ネジ棒120が貫通する貫通孔130が形成されている。そして、閉止板13の貫通孔130を貫通したネジ棒120にナット15を螺合させることで、閉止板12,13が互いに固定される。そのため、閉止板12を耐圧試験領域側に配置することで、耐圧閉止装置1の遮蔽性を良好とすることができる。
【0042】
(5)配管内に固定されて、ネジ棒120が形成された閉止板12が係止されるストッパー100を備えたことで、閉止板12への閉止板13の組付作業が容易となる。
【0043】
(6)さらに、ストッパー100の配管内への固定作業、ネジ棒が形成された閉止板12をストッパー100に係止する作業、閉止板13の軸部13aにチューブ14を装着する作業、ネジ棒120が貫通孔130を貫通するように閉止板12,13を互いに合わせ、ネジ棒120にナット15を螺合させて閉止板12,13を互いに固定する作業、チューブ14に設けられた配管16から加圧された流体を導入する作業、の順に耐圧閉止装置1を組み立てることにより、作業効率の向上を図ることができる。
【0044】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。
【符号の説明】
【0045】
1:耐圧閉止装置、2:配管、12,13:閉止板、12a,13a:軸部、12b,13b:フランジ部、14:チューブ、14a:溝、ナット15、配管16、バルブ16a、100:ストッパー、101a、101b:係止部、102:支柱、105:当接部、120:ネジ棒、130:貫通孔、G:保持溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9