(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1配管への締結用のフランジが設けられた基端部と、第2配管に取り付けられる先端部とを有し、前記第1配管と前記第2配管との接続に用いられる曲り配管を検査するための治具であって、
前記フランジとの締結によって前記曲り配管の前記基端部を固定するように構成されたベース部と、
前記曲り配管の前記先端部の外径よりも大きい内径を有し、前記先端部を囲んで前記先端部の外周面との間に検査用の環状隙間を形成するためのリング部と、
前記第1配管への前記基端部の取付け位置と前記第2配管への前記先端部の取付け位置との相対関係に応じて前記ベース部への前記基端部の取付け位置に対する前記リング部の相対位置が定まるように、前記ベース部上に前記リング部を支持するように構成されたサポート部とを備えることを特徴とする曲り配管の検査用治具。
前記サポート部は、前記フランジが前記ベース部に締結された状態における前記曲り配管の両側において、該曲り配管に沿って前記ベース部上に立設される一対のサポート板を含み、
各サポート板は、前記曲り配管の前記先端部が前記基端部に対してなす角度に応じて、前記ベース部に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記リング部は、一対の前記サポート板間に架け渡されるように各サポート板の前記傾斜面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の曲り配管の検査用治具。
第1配管への締結用のフランジが設けられた基端部と、第2配管に取り付けられる先端部とを有し、前記第1配管と前記第2配管との接続に用いられる曲り配管の検査方法であって、
ベース部と、前記曲り配管の前記先端部の外径よりも大きい内径を有するリング部と、前記第1配管への前記基端部の取付け位置と前記第2配管への前記先端部の取付け位置との相対関係に応じて前記ベース部への前記基端部の取付け位置に対する前記リング部の相対位置が定まるように、前記ベース部上に前記リング部を支持するように構成されたサポート部とを含む検査用治具を用いて、前記曲り配管の前記基端部に対する前記先端部の相対位置が許容範囲内であるか判定する第1判定ステップを備え、
前記第1判定ステップでは、前記フランジとの締結により前記曲り配管の前記基端部を前記検査用治具の前記ベース部に固定した状態で、前記曲り配管の前記先端部の外周面と前記リング部の内周面との間に形成される環状隙間に基づいて、前記基端部に対する前記先端部の相対位置が許容範囲内であるか判定することを特徴とする曲り配管の検査方法。
前記先端部の前記外周面と前記リング部の前記内周面との間に許容範囲内の大きさの環状隙間が形成された状態を維持しながら、前記フランジの前記ベース部への締結が可能か否かを判断することで、前記第2配管に前記曲り配管の前記先端部を取り付けた状態で前記第1配管への前記フランジの締結が可能か否かを判定する第2判定ステップをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の曲り配管の検査方法。
前記先端部の前記外周面と前記リング部の前記内周面との間に許容範囲内の大きさの環状隙間が形成された状態を維持しながら、前記フランジの前記ベース部への締結が可能か否かを判断することで、前記第2配管に前記曲り配管の前記先端部を取り付けた状態で前記第1配管への前記フランジの締結が可能か否かを判定する第2判定ステップをさらに備え、
前記第2判定ステップでは、前記第1配管に前記フランジを締結するための締結ボルトを用いて、前記フランジの前記ベース部への締結が可能か否かを判断することを特徴とする請求項8に記載の曲り配管の検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検査装置は、エルボの溶接部における欠陥を特定するためのものであり、曲り配管の接続先の配管との関係で補修後の曲り配管が所望の形状であるかという観点で曲り配管の検査を行うものではない。
【0007】
したがって、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、曲り配管の接続先の配管との関係で補修後の曲り配管が所望の形状であるかを調べるための曲り配管の検査用治具及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る曲り配管の検査用治具は、第1配管への締結用のフランジが設けられた基端部と、第2配管に取り付けられる先端部とを有し、前記第1配管と前記第2配管との接続に用いられる曲り配管を検査するための治具であって、
前記フランジとの締結によって前記曲り配管の前記基端部を固定するように構成されたベース部と、
前記曲り配管の前記先端部の外径よりも大きい内径を有し、前記先端部を囲んで前記先端部の外周面との間に検査用の環状隙間を形成するためのリング部と、
前記第1配管への前記基端部の取付け位置と前記第2配管への前記先端部の取付け位置との相対関係に応じて前記ベース部への前記基端部の取付け位置に対する前記リング部の相対位置が定まるように、前記ベース部上に前記リング部を支持するように構成されたサポート部とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記検査用治具では、曲り配管の基端部のベース部への取付け位置に対するリング部の相対位置は、第1配管への曲り配管の基端部の取付け位置と第2配管への曲り配管の先端部の取付け位置との相対関係に応じて定まっている。すなわち、曲り配管の基端部を上記検査用治具のベース部に取り付けた状態における曲り配管の先端部に対するリング部の相対位置は、当該曲り配管を第1配管に実際に組み付けたときにおける曲り配管の先端部に対する第2配管の相対位置に対応している。
そのため、曲り配管の基端部を上記検査用治具のベース部に取り付けた際に曲り配管の先端部とリング部との間に形成される環状隙間を利用して、第1配管及び第2配管との関係で、曲り配管の基端部に対する先端部の相対位置が許容範囲内であるか調べることができる。すなわち、曲り配管の基端部を基準として、曲り配管の形状を確認することができる。
【0010】
一実施形態において、前記ベース部には、前記フランジに設けられた複数の締結用穴に対応してクリアランス穴が複数設けられており、各クリアランス穴に対応して、前記ベース部の前記フランジの取付け面の反対側に設けられる複数の位置決めナットと、前記ベース部の前記フランジの取付け面の反対側に各位置決めナットを固定するための固定部材と、前記締結用穴に嵌合可能な外径を有し、前記締結用穴と前記クリアランス穴とに挿通され、前記固定部材によって前記ベース部に固定された前記位置決めナットに螺着される複数の位置決めボルトとをさらに備え、前記固定部材によって前記ベース部に固定された状態における各位置決めナットの前記位置決めボルトがねじ込まれるねじ穴の位置を基準として、前記サポート部によって支持される前記リング部の位置が決まっている。
位置決めナットは、固定部材によってベース部のフランジ取付け面の反対側に固定される。そのため、位置決めナットは、ベース部のクリアランス穴の穴径精度の影響を受けず、ベース部の所定位置に固定部材によって保持される。その結果、位置決めナットのねじ穴にねじ込まれる位置決めボルトの位置も正確に決まる。さらに、位置決めボルトは、曲り配管のフランジに設けられた締結用穴に嵌合可能な外径を有するから、位置決めボルトによって曲り配管のフランジのベース部への取付け位置は位置決めボルトによって正確に定まる。一方、サポート部によって支持されるリング部の位置は、位置決めナットのねじ穴を基準として決められている。よって、曲り配管の基端部を基準とした曲り配管の形状確認をより正確に行うことができる。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記サポート部は、前記フランジが前記ベース部に締結された状態における前記曲り配管の両側において、該曲り配管に沿って前記ベース部上に立設される一対のサポート板を含み、各サポート板は、前記曲り配管の前記先端部が前記基端部に対してなす角度に応じて、前記ベース部に対して傾斜した傾斜面を有し、前記リング部は、一対の前記サポート板間に架け渡されるように各サポート板の前記傾斜面に取り付けられる。
このように、一対のサポート板間に架け渡すように各サポート板の傾斜面にリング部を取り付けることで、ベース部に対するリング部の取付け位置及び角度の精度を向上させることができる。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記サポート部は、前記フランジが前記ベース部に締結された状態における前記曲り配管の前記先端部側において、前記ベース部上に立設されるサポート柱を含み、前記サポート柱は、前記曲り配管の前記先端部が前記基端部に対してなす角度に応じて、前記ベース部に対して傾斜した傾斜面を有し、前記リング部は、前記サポート柱の前記傾斜面に取り付けられる。
このように、フランジがベース部に締結された状態における曲り配管の先端部側においてベース部上に立誠されたサポート柱の傾斜面にリング部を取り付けることで、ベース部に対するリング部の取付け位置及び角度の精度を向上させることができる。
【0013】
一実施形態において、少なくとも前記リング部が、前記ベース部に対して着脱可能に構成される。
これにより、検査用治具への曲り配管のセッティング及び取り外しの作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の少なくとも一実施形態に係る曲り配管の検査方法は、第1配管への締結用のフランジが設けられた基端部と、第2配管に取り付けられる先端部とを有し、前記第1配管と前記第2配管との接続に用いられる曲り配管の検査方法であって、
ベース部と、前記曲り配管の前記先端部の外径よりも大きい内径を有するリング部と、前記第1配管への前記基端部の取付け位置と前記第2配管への前記先端部の取付け位置との相対関係に応じて前記ベース部への前記基端部の取付け位置に対する前記リング部の相対位置が定まるように、前記ベース部上に前記リング部を支持するように構成されたサポート部とを含む検査用治具を用いて、前記曲り配管の前記基端部に対する前記先端部の相対位置が許容範囲内であるか判定する第1判定ステップを備え、
前記第1判定ステップでは、前記フランジとの締結により前記曲り配管の前記基端部を前記検査用治具の前記ベース部に固定した状態で、前記曲り配管の前記先端部の外周面と前記リング部の内周面との間に形成される環状隙間に基づいて、前記基端部に対する前記先端部の相対位置が許容範囲内であるか判定することを特徴とする。
【0015】
上記検査方法に用いられる検査用治具では、曲り配管の基端部のベース部への取付け位置に対するリング部の相対位置は、第1配管への曲り配管の基端部の取付け位置と第2配管への曲り配管の先端部の取付け位置との相対関係に応じて定まっている。すなわち、曲り配管の基端部を上記検査用治具のベース部に取り付けた状態における曲り配管の先端部に対するリング部の相対位置は、当該曲り配管を第1配管に実際に組み付けたときにおける曲り配管の先端部に対する第2配管の相対位置に対応している。
そのため、曲り配管の基端部を上記検査用治具のベース部に取り付けた際に曲り配管の先端部とリング部との間に形成される環状隙間を利用して、第1配管及び第2配管との関係で、曲り配管の基端部に対する先端部の相対位置が許容範囲内であるか調べることができる。すなわち、曲り配管の基端部を基準として、曲り配管の形状の検査を行うことができる。
【0016】
一実施形態において、上記検査方法は、前記先端部の前記外周面と前記リング部の前記内周面との間に許容範囲内の大きさの環状隙間が形成された状態を維持しながら、前記フランジの前記ベース部への締結が可能か否かを判断することで、前記第2配管に前記曲り配管の前記先端部を取り付けた状態で前記第1配管への前記フランジの締結が可能か否かを判定する第2判定ステップをさらに備える。
これにより、曲り配管の先端部を第2配管に接続した状態で、曲り配管の基端部の第1配管への締結が可能であるか否かについて、上記検査用治具を用いた検査を行うことができる。すなわち、曲り配管の先端部を基準として、第1配管及び第2配管への曲り配管の組付けが実際に可能であるか調べることができる。
【0017】
一実施形態において、前記ベース部には、前記フランジに設けられた複数の締結用穴に対応してクリアランス穴が複数設けられており、各クリアランス穴に対応して、前記ベース部の前記フランジの取付け面の反対側に複数の位置決めナットを固定するステップと、前記締結用穴に嵌合可能な外径を有する位置決めボルトを前記締結用穴と前記クリアランス穴とに挿通し、前記ベース部に固定された前記位置決めナットに前記位置決めボルトを螺着するステップとを備え、前記検査用治具は、前記ベース部に固定された状態における各位置決めナットの前記位置決めボルトがねじ込まれるねじ穴の位置を基準として、前記サポート部によって支持される前記リング部の位置が決まっており、前記第1判定ステップでは、前記位置決めボルトを前記位置決めナットに螺着して前記フランジを前記ベース部に締結した状態で、前記相対位置が前記許容範囲内であるか判定する。
位置決めナットは、固定部材によってベース部のフランジ取付け面の反対側に固定される。そのため、位置決めナットは、ベース部のクリアランス穴の穴径精度の影響を受けず、ベース部の所定位置に固定部材によって保持される。その結果、位置決めナットのねじ穴にねじ込まれる位置決めボルトの位置も正確に決まる。さらに、位置決めボルトは、曲り配管のフランジに設けられた締結用穴に嵌合可能な外径を有するから、位置決めボルトによって曲り配管のフランジのベース部への取付け位置は位置決めボルトによって正確に定まる。一方、サポート部によって支持されるリング部の位置は、位置決めナットのねじ穴を基準として決められている。よって、位置決めボルトを位置決めナットに螺着した状態で第1ステップを実施することで、曲り配管の基端部を基準とした曲り配管の形状確認をより正確に行うことができる。
【0018】
一実施形態において、上記検査方法は、前記先端部の前記外周面と前記リング部の前記内周面との間に許容範囲内の大きさの環状隙間が形成された状態を維持しながら、前記フランジの前記ベース部への締結が可能か否かを判断することで、前記第2配管に前記曲り配管の前記先端部を取り付けた状態で前記第1配管への前記フランジの締結が可能か否かを判定する第2判定ステップをさらに備え、前記第2判定ステップでは、前記第1配管に前記フランジを締結するための締結ボルトを用いて、前記フランジの前記ベース部への締結が可能か否かを判断する。
第1判定ステップでは、締結用穴に嵌合可能な外径を有する位置決めボルトを用いて、曲り配管の基端部を基準とした曲り配管の形状の検査が行われる。一方、第2判定ステップでは、位置決めボルトではなく、第1配管にフランジを実際に締結するための締結ボルトを第2判定ステップで用いて、曲り配管の先端部を基準として、第1配管及び第2配管の曲り配管への組付けが可能か否かについて検査が行われる。こうして、第1判定ステップと第2判定ステップとで、曲り配管のフランジと検査用治具のベース部との締結に用いるボルトを使い分けることで、検査用治具によって上述の2種類の検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、曲り配管の基端部を上記検査用治具のベース部に取り付けた際に曲り配管の先端部とリング部との間に形成される環状隙間を利用して、第1配管及び第2配管との関係で、曲り配管の基端部に対する先端部の相対位置が許容範囲内であるか調べることができる。すなわち、曲り配管の基端部を基準として、曲り配管の形状を確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
以下では、ガスタービン燃焼器の尾筒エルボを検査対象とした実施形態について説明を行う。しかし、発電プラント、化学プラント、ガスプラント、水処理プラント等を含む種々の用途で任意の部位に用いられる曲り配管についても本発明の検査用治具及び検査方法を適用できることはいうまでもない。
【0023】
図1は、一実施形態における検査対象としての尾筒エルボを備えたガスタービン燃焼器を示す図である。
図2は、
図1における尾筒エルボ周辺の詳細構造を示す図である。
【0024】
図1に示すように、ガスタービン燃焼器1(以下、“燃焼器1”と称する。)は、圧縮機とガスタービンとの間において車室2の内部空間に設けられている。燃焼器1は、パイロットノズル3A及びメインノズル3Bを含む燃焼ノズル3と、燃焼ノズル3を覆う内筒4と、内筒4に接続されて燃焼ガスをガスタービン側に導く尾筒6とを含む。
なお、内筒4は“スワラ支持筒”と称されることがあり、尾筒6は“燃焼筒”や“トランジションピース”と称されることがある。
【0025】
圧縮機から供給される圧縮空気は、車室2の内部空間に流入した後、内筒4の内部に取り込まれて燃焼用空気として用いられる。燃焼ノズル3は、不図示の燃料供給管から供給される燃料(パイロット燃料及びメイン燃料)を噴射し、燃焼用空気を用いて前記燃料を燃焼させる。こうして燃焼器1内において生じた燃焼ガスは、尾筒6を介してガスタービンに供給される。
【0026】
燃焼器1では、部分負荷運転時における燃焼領域の空燃比を調節するために、車室2の内部空間から尾筒6内に圧縮空気を取り込むためのバイパスダクト7が設けられている。そして、バイパスダクト7を介して尾筒6内に流入する圧縮空気の流量は、バイパスダクト7内に設けられたバイパス弁8によって調節されるようになっている。バイパス弁8は、燃焼領域における空燃比が所望の範囲内に維持されるように、ガスタービンの負荷に応じて開度制御される。
【0027】
バイパスダクト7は、バイパス弁8が搭載されるバルブ支持配管(第2配管)9と、バルブ支持配管9を尾筒(第1配管)6に接続するための尾筒エルボ(曲り配管)10とで構成される。尾筒エルボ10にはフランジ13が設けられている。このフランジ13は、尾筒6に設けられたフランジ6Aと締結される。これにより、バイパスダクト7が尾筒6に接続される。
なお、尾筒エルボ10のフランジ13と、尾筒6のフランジ6Aとは、インロー部11において嵌合されるようになっていてもよい。すなわち、フランジ13には環状の突起15が設けられており、この突起15と、突起15に対応してフランジ6Aに設けられた凹部とがインロー部11において嵌合するようになっていてもよい。
【0028】
図2(a)に示すように、尾筒エルボ10は、尾筒(第1配管)6側のフランジ6Aとの締結用のフランジ13が設けられた基端部12と、バルブ支持配管(第2配管)9に取り付けられる先端部14とを含む。尾筒エルボ10は、基端部12と先端部14との間で湾曲した形状を有し、先端部14の端面は基端部12の端面に対して傾斜角αを有している。
【0029】
図2(b)に示すように、尾筒エルボ10のフランジ13には、締結ボルト18が挿通される締結用穴16が設けられている。一方、尾筒(第1配管)6側のフランジ6Aにも、締結ボルト18が挿通されるクリアランス穴17が設けられている。締結ボルト18の先端側には雄ねじ部が形成されており、該雄ねじ部にナット19が螺着されるようになっている。締結用穴16及びクリアランス穴17に締結ボルト18を挿通し、締結ボルト18の雄ねじ部にナット19を螺着することで、フランジ13とフランジ6Aとが締結される。
なお、締結用穴16及びクリアランス穴17には雌ねじは切られておらず、締結用穴16及びクリアランス穴17の壁面と締結ボルト18との間には隙間が形成されるようになっている。かかる隙間は、例えば0.5mm程度の大きさである。
【0030】
次に、上記構成の尾筒エルボ10の検査用治具について説明する。
図3は、一実施形態における尾筒エルボ10の検査用治具を示す側面図である。
図4は、
図3のB方向から視た検査用治具の正面図である。
図5は、
図3のC方向から視た検査用治具のベース部を示す図である。
【0031】
図3及び4に示すように、検査用治具20は、ベース部22と、開口25を有するリング部24と、リング部24をベース部22上に支持するサポート部30とを含む。
【0032】
図3及び5に示すように、ベース部22は、検査用治具20に取り付けられた状態における尾筒エルボ10のフランジ13に設けられた複数の締結用穴16に対応した位置に、クリアランス穴40が設けられている。各クリアランス穴40は、概ね、ベース部22に固定されるフランジ13の締結用穴16の中心が通る円形状の軌跡(締結用穴16のPCD:Pitch Circle Diameter)41上に位置している。
幾つかの実施形態において、ベース部22のクリアランス穴40は、燃焼器1の実機におけるクリアランス穴17(
図2(b)参照)と同一形状である。具体的には、クリアランス穴40には雌ねじは切られておらず、クリアランス穴40に締結ボルト18を挿通すれば、クリアランス穴40の壁面と締結ボルト18の軸部の外周面との間には例えば0.5mm程度の大きさの間隙が形成される。
ベース部22の背面側には、各クリアランス穴40に対応して凹部42が設けられている。各クリアランス穴40は、対応する凹部42の底面に開口している。なお、各凹部42には、雌ねじが形成されたねじ穴44が複数個設けられている。ねじ穴44は、クリアランス穴40と同様に、凹部42の底面に開口している。
【0033】
幾つかの実施形態において、サポート部30は、
図3及び4に示すように、ベース部22にフランジ13が固定された状態における尾筒エルボ10の両側において、尾筒エルボ10に沿ってベース部22上に立設される一対のサポート板32を含む。各サポート板32は、少なくとも一つのピン34でベース部22に対して位置決めされ、少なくとも一つの締結部材36によってベース部22に取り付けられる。
また、各サポート板32は、尾筒エルボ10の先端部14が基端部12に対してなす角度αに応じて、ベース部22に対して傾斜した傾斜面33を有する。
図3に示す実施形態では、傾斜面33は、ベース部22に対して角度αだけ傾斜している。
【0034】
幾つかの実施形態において、リング部24は、
図3及び4に示すように、一対のサポート板32間に架け渡されるように各サポート板32の傾斜面33に取り付けられる。リング部24の傾斜面33への取付けは、雄ねじ27が形成されたテーパピン26を用いて行ってもよい。リング部24の両側の端部及び各サポート板32の傾斜面33に設けられたテーパ穴にテーパピン26を打ち込むことで、リング部24をサポート板32に対して高精度に位置合わせすることができる。
なお、リング部24の開口25は、尾筒エルボ10の先端部14の外径よりも大きい。すなわち、リング部24は、尾筒エルボ10の先端部14の外径よりも大きい内径を有し、ベース部22にフランジ13が固定された状態における尾筒エルボ10の先端部14の外周面との間に検査用の環状隙間G1(
図6(a)参照)を形成するようになっている。
【0035】
少なくともリング部24は、ベース部22に対して着脱自在に設けられている。
具体的には、各サポート板32は、締結部材36によってベース部22に着脱自在に固定されている。また、リング部24は、テーパピン26によって各サポート板32に固定されているが、テーパピン26の雄ねじ27に螺着したナット28を回転させれば、テーパピン26を抜き取って、一対のサポート板32,32からリング部24を取り外すことも可能である。
【0036】
続いて、上記構成の検査用治具20の使用方法について説明する。
図6(a)及び(b)は、検査用治具20の使用状態を示す図である。
【0037】
図6(a)に示すように、位置決めボルト46及び位置決めナット48を用いて、尾筒エルボ10のフランジ13がベース部22に固定される。
幾つかの実施形態では、ベース部22の凹部42内に位置決めナット48を配置し、位置決めナット48を固定部材45によってベース部22に位置決め及び固定する。
図6(a)に示す実施形態では、固定部材45は、各凹部42に複数個設けられたねじ穴44にねじ込まれるボルトである。(なお、
図6(a)には1個のボルト45のみが示されているが、実際には、各凹部42に設けられた複数個のねじ穴44(
図5参照)のそれぞれにボルト45がねじ込まれている。)
ベース部22に対して固定された位置決めナット48には、フランジ13の締結用穴16及びベース部22のクリアランス穴40に挿通された位置決めボルト46がねじ込まれる。こうして、尾筒エルボ10のフランジ13がベース部22に固定される。
【0038】
位置決めボルト46の軸部47は、締結ボルト18の軸部の外径よりも大きく、且つ、締結用穴16に嵌合可能な外径を有する。そのため、締結用穴16の壁面と軸部47との間に形成される隙間は、締結用穴16の壁面と締結ボルト18との間の隙間よりも小さい。締結用穴16の壁面と軸部47との間の隙間は、例えば、0.05〜0.1mm程度である。
幾つかの実施形態では、位置決めボルト46は、締結用穴16の直径よりもわずかに小さい外径の軸部47を有するボルトである。この場合、締結用穴16の壁面と軸部47の外周面とが密着し、両者間には実質的に隙間は形成されず、両者の相対位置決めが可能である。
【0039】
位置決めナット48は、固定部材45によって、ベース部22のクリアランス穴40の穴径精度の影響を受けず、ベース部22の所定位置に保持される。その結果、位置決めナット48のねじ穴にねじ込まれる位置決めボルト46の位置も正確に決まる。さらに、位置決めボルト48の軸部47は締結ボルト18の軸部よりも大径であり、締結用穴16の壁面と軸部47との間の隙間は比較的小さい。そのため、各締結用穴16のPCD41(
図5参照)は、各位置決めナット48のねじ穴の中心(ナット中心)が通る円形状の軌跡と一致する。
このようにして、位置決めボルト46によって位置決めされた尾筒エルボ10のフランジ13は、ベース部22のクリアランス穴40の穴径精度の影響を受けずに、ベース部22に対して位置が正確に定まる。
【0040】
一方、検査用治具20のリング部24は、サポート部30によって、ベース部22に対して固定部材45により位置決めされた位置決めナット48のねじ穴を基準として所定位置に支持される。すなわち、各位置決めナット48のナット中心が通る円形状の軌跡(締結用穴16のPCD41)に対してリング部24の中心が所定の相対的な位置関係となるように、ピン34及びテーパピン26によって、一対のサポート板32を介して、ベース部22に対するリング部24の位置決めが行われる。なお、ここでいう“所定の相対的な位置関係”とは、尾筒(第1配管)6側のフランジ6Aへの尾筒エルボ10の基端部12の取付け位置と、バルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の先端部14の取付け位置との相対関係に応じた位置関係である。
そのため、尾筒エルボ10のフランジ13をベース部22に取り付けた状態における尾筒エルボ10の先端部14に対するリング部24の相対位置は、尾筒エルボ10を尾筒6に実際に組み付けたときにおける先端部14に対するバルブ支持配管9の相対位置に対応している。
【0041】
したがって、尾筒エルボ10の先端部14の外周面とリング部24の内周面との間に形成される環状隙間G1を利用して、尾筒(第1配管)6及びバルブ支持配管(第2配管)9との関係で、尾筒エルボ10の基端部12に対する先端部14の相対位置が許容範囲内であるか調べることができる。すなわち、尾筒エルボ10の基端部12(正確には、締結用穴16のPCD41)を基準として、尾筒エルボ10の形状を確認することができる。
例えば、複数の周方向位置における環状隙間G1の大きさを計測し、これらの計測値のバラツキが許容範囲内に収まっているかを確認することで、尾筒エルボ10の形状に関する検査を行ってもよい。
【0042】
また、検査用治具20では、尾筒6(第1配管)側にフランジ13を締結するための締結ボルト18及びナット19を用い、尾筒6(第1配管)及びバルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の組み付けが可能かという観点での検査も行うことができる。
この検査を行うには、
図6(b)に示すように、尾筒エルボ10の先端部14の外周面とリング部24の内周面との間の環状隙間G2を許容範囲内に維持しながら、締結ボルト18及びナット19を用いてフランジ13のベース部22への締結が可能か否かを判断する。これにより、尾筒エルボ10の先端部14をバルブ支持配管(第2配管)9に実際に接続した状態で、尾筒エルボ10の基端部12の尾筒(第1配管)6のフランジ6Aへの締結が可能か否かを調べることができる。すなわち、尾筒エルボ10の先端部14を基準として、尾筒(第1配管)6及びバルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の組付け実際に可能であるか検査することができる。
なお、このような検査が行えるのは、尾筒(第2配管)6のフランジ6Aのクリアランス穴17に模したクリアランス穴40がベース部22に形成されているためである。
【0043】
さらに、他の実施形態に係る尾筒エルボ10の検査用治具について説明する。
図7は、他の実施形態に係る尾筒エルボ10の検査用治具を示す側面図である。
図8(a)は
図7のD方向から視た検査用治具の正面図であり、
図8(b)は
図8(a)のF−F断面図である。
図9は、
図7のE方向から視た検査用治具のベース部を示す図である。
なお、
図7〜9では、
図3〜6に示す実施形態の検査用治具と共通する部分には同一の符号を付し、以下ではその説明を適宜省略する。
【0044】
図7及び8に示すように、検査用治具50は、ベース部52と、リング位置調整部54及び開口55を有するリング部53と、リング位置調整部54を介してリング部53をベース部52上に支持するサポート部56とを含む。
【0045】
図7及び9に示すように、ベース部52は、尾筒エルボ10のフランジ13に設けられた複数の締結用穴16に対応した位置に、クリアランス穴40が設けられている。各クリアランス穴40は、概ね、ベース部52に固定されるフランジ13の締結用穴16のPCD41上に位置している。
なお、ベース部52の背面側には、各クリアランス穴40に対応して凹部42が設けられている。各クリアランス穴40は、対応する凹部42の底面に開口している。各凹部42には、雌ねじが形成されたねじ穴44が複数個設けられている。ねじ穴44も、クリアランス穴40と同様に、凹部42の底面に開口している。
【0046】
幾つかの実施形態において、サポート部56は、
図7及び8に示すように、ベース部52にフランジ13が固定された状態における尾筒エルボ10の先端部14側において、ベース部52上に立設されるサポート柱57を含む。サポート柱57は、少なくとも一つの締結部材59によってベース部52に取り付けられる。
【0047】
また、
図8(a)及び(b)に示すように、サポート柱57の上面には、尾筒エルボ10の軸方向(尾筒エルボ10の基端部12に対して、先端部14が曲がる方向で、
図7に示すD方向)に直交する方向に沿ってV字溝58が設けられている。V字溝58は、尾筒エルボ10の先端部14側に位置する傾斜面58a及び傾斜面58aに比べて先端部14からの距離が大きい傾斜面58bによって形成されている。傾斜面58a及び傾斜面58bは、互いに略直交している。傾斜面58aの傾きは、尾筒エルボ10の先端部14が基端部12に対してなす角度αに応じて、決定される。
【0048】
また、傾斜面58bの中央近傍には、尾筒エルボ10の軸方向に沿って、断面U字状の円形溝62が形成されている。円形溝62は、サポート柱57の上面からV字溝58の溝底(傾斜面58a,58bの交線)までの間に設けられている。
【0049】
リング部53は、リング位置調整部54を介して、サポート柱57の傾斜面58a,58bに取り付けられる。すなわち、
図7、8(a)及び8(b)に示すように、リング位置調整部54には、傾斜面58bに対向して配置される側面54bの中央近傍で、傾斜面58bに形成された円形溝62に対向する位置に、側壁54bから突出する凸部54aが形成されている。凸部54aを形成する側面54cは、互いに平行な面となるように形成され、傾斜面54bに形成された円形溝62の両側の側壁の間に嵌まり込むように形成されている。
【0050】
上記リング部53及びサポート柱57の構成により、リング位置調整部54を傾斜面58a及び傾斜面58bに接触するように載置して、凸部54aを円形溝62の側壁に沿わせて嵌め込むことにより、尾筒エルボの軸方向及び軸方向に直交する方向の尾筒エルボ10の先端部14に対するリング部53の位置決めができる。すなわち、リング位置調整部54の側面54bと傾斜面58bが接触する当たり面で、リング部53の軸方向の位置が定まり、リング位置調整部54の凸部54aがサポート柱57の円形溝62に嵌まり込む位置で、軸方向に直交する方向のリング部53の位置が定まる。
【0051】
リング部53の傾斜面58aへの取付けは、上述の方法でリング部53を位置決めした後、締結部材61を用いて固定される。
【0052】
リング部53の開口55は、尾筒エルボ10の先端部14の外径よりも大きい。すなわち、リング部53は、尾筒エルボ10の先端部14の外径よりも大きい内径を有し、ベース部52にフランジ13が固定された状態における尾筒エルボ10の先端部14の外周面との間に検査用の環状隙間G1(
図10(a)参照)を形成するようになっている。
【0053】
少なくともリング部53は、サポート部56を介して、ベース部52に対して着脱自在に設けられている。
幾つかの実施形態では、サポート柱57は、締結部材59によってベース部52に着脱自在に固定される。同様に、リング部53は、締結部材61によってサポート柱57に着脱自在に固定される。
【0054】
続いて、上記構成の検査用治具50の使用方法について説明する。
図10(a)及び(b)は、検査用治具50の使用状態を示す図である。
検査用治具50は、サポート部56の構成が検査用治具20のサポート部30の構成と異なるものの、検査用治具50の使用方法は検査用治具20と同様である。すなわち、検査用治具50を使用して尾筒エルボ10の検査を行う場合、まずは、位置決めボルト46及び位置決めナット48を用いて、尾筒エルボ10のフランジ13をベース部52に固定する。幾つかの実施形態では、ベース部52の凹部42に位置決めナット48を配置し、位置決めナット48を固定部材45によってベース部22に位置決め及び固定する。
図10(a)に示す実施形態では、固定部材45は、各凹部42に設けられた複数個のねじ穴44にねじ込まれるボルトである。(なお、
図10(a)には1個のボルト45のみが示されているが、実際には、各凹部42に設けられた複数個のねじ穴44(
図9参照)のそれぞれにボルト45がねじ込まれている。)
ベース部52に対して固定された位置決めナット48には、フランジ13の締結用穴16及びベース部52のクリアランス穴40に挿通された位置決めボルト46がねじ込まれる。こうして、尾筒エルボ10のフランジ13がベース部52に固定される。
【0055】
位置決めナット48は、固定部材45によって、ベース部52のクリアランス穴40の穴径精度の影響を受けず、ベース部52の所定位置に保持される。その結果、位置決めナット48のねじ穴にねじ込まれる位置決めボルト46の位置も正確に決まる。さらに、位置決めボルト48の軸部47は締結ボルト18の軸部よりも大径であり、締結用穴16の壁面と軸部47との間の隙間は比較的小さい。そのため、各締結用穴16のPCD41(
図9参照)は、各位置決めナット48のねじ穴の中心(ナット中心)が通る円形状の軌跡と一致する。
こうして、位置決めボルト46によって位置決めされた尾筒エルボ10のフランジ13は、ベース部52のクリアランス穴40の穴径精度の影響を受けずに、ベース部52に対して位置が正確に定まる。
【0056】
一方、検査用治具50のリング部53は、サポート部56によって、ベース部52に対して固定部材45により位置決めされた位置決めナット48のねじ穴を基準として所定位置に支持される。すなわち、各位置決めナット48のナット中心に対してリング部53の中心が所定の相対的な位置関係となるように、サポート部56によりベース部52上に支持されたリング部53の位置は定められている。なお、ここでいう“所定の相対的な位置関係”とは、尾筒(第1配管)6側のフランジ6Aへの尾筒エルボ10の基端部12の取付け位置と、バルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の先端部14の取付け位置との相対関係に応じた位置関係である。
そのため、尾筒エルボ10のフランジ13をベース部52に取り付けた状態における尾筒エルボ10の先端部14に対するリング部53の相対位置は、尾筒エルボ10を尾筒6に実際に組み付けたときにおける先端部14に対するバルブ支持配管9の相対位置に対応している。
【0057】
したがって、尾筒エルボ10の先端部14の外周面とリング部53の内周面との間に形成される環状隙間G1を利用して、尾筒(第1配管)6及びバルブ支持配管(第2配管)9との関係で、尾筒エルボ10の基端部12に対する先端部14の相対位置が許容範囲内であるか調べることができる。すなわち、尾筒エルボ10の基端部12(正確には、締結用穴16のPCD41)を基準として、尾筒エルボ10の形状を確認することができる。
【0058】
また、検査用治具50でも、検査用治具20と同様に、尾筒6(第1配管)側にフランジ13を締結するための締結ボルト18及びナット19を用い、尾筒6(第1配管)及びバルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の組み付けが可能かという観点での検査も行うことができる。
この検査を行うには、
図10(b)に示すように、尾筒エルボ10の先端部14の外周面とリング部53の内周面との間の環状隙間G2を許容範囲内に維持しながら、締結ボルト18及びナット19を用いてフランジ13のベース部52への締結が可能か否かを判断する。これにより、尾筒エルボ10の先端部14をバルブ支持配管(第2配管)9に実際に接続した状態で、尾筒エルボ10の基端部12の尾筒(第1配管)6のフランジ6Aへの締結が可能か否かを調べることができる。すなわち、尾筒エルボ10の先端部14を基準として、尾筒(第1配管)6及びバルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の組付け実際に可能であるか検査することができる。
【0059】
以上説明したように、上述の実施形態では、尾筒エルボ(曲り配管)10の基端部12のベース部22,52への取付け位置に対するリング部24,54の相対位置は、尾筒(第1配管)6への基端部12の取付け位置とバルブ支持配管(第2配管)9への先端部14の取付け位置との相対関係に応じて定まっている。すなわち、尾筒エルボ10の基端部12を上記検査用治具20,50のベース部22,52に取り付けた状態における尾筒エルボ10の先端部14に対するリング部24,54の相対位置は、尾筒エルボ10を尾筒6に実際に組み付けたときにおける尾筒エルボ10の先端部14に対するバルブ支持配管9の相対位置に対応している。
そのため、尾筒エルボ10の基端部12を上記検査用治具20,50のベース部22,52に取り付けた際に尾筒エルボ10の先端部14とリング部24,54との間に形成される環状隙間G1を利用して、尾筒6のフランジ6A及びバルブ支持配管9との関係で、尾筒エルボ10の基端部12に対する先端部14の相対位置が許容範囲内であるか調べることができる。すなわち、尾筒エルボ10の基端部12を基準として、尾筒エルボ10の形状を確認することができる。
【0060】
ここで、燃焼器1では、ガスタービンプラントの起動・停止の繰り返しによって尾筒エルボ10が温度変化を何度も経験し、尾筒エルボ10の欠陥や損傷につながる可能性がある。そのため、尾筒エルボ10を燃焼器1から取り外し、尾筒エルボ10の溶接補修を実施したい場合がある。ところが、尾筒エルボ10に溶接補修を施すと、溶接歪みの影響によって溶接補修後の尾筒エルボ10の形状を把握しがたくなる。そのため、尾筒エルボ10の欠陥・損傷が許容基準内である場合にはブレンディング(金属表面の研削による欠陥除去)のみを行って尾筒エルボ10を再利用する一方で、欠陥・損傷が許容基準外であれば補修不可として扱い、新品の尾筒エルボ10に交換するといった対応が現実的である。ところが、このような対応では、補修による尾筒エルボ10の寿命延長効果が見込めず、ガスタービンプラントのランニングコストが嵩む。
この点、上述の実施形態に係る検査用治具20,50を用いれば、溶接補修後における尾筒エルボ10の検査を適切に行うことができる。よって、溶接補修による尾筒エルボ10の寿命延長効果を期待できる。
【0061】
なお、上述の実施形態に係る検査用治具20,50では、尾筒エルボ10のフランジ13を位置決めボルト46によって位置決めした状態で尾筒エルボ10の形状を確認できる。すなわち、上述の実施形態における環状隙間G1を利用した検査手法では、尾筒エルボ10のフランジ13(正確には、締結用穴16のPCD41)を基準として尾筒エルボ10の形状を確認する。
これは、溶接補修による尾筒エルボ10の熱歪みによる影響をインロー部11も受けている可能性があるため、溶接補修による熱歪みの影響を受けにくいフランジ13の締結用穴16を基準として、尾筒エルボ10の形状に関する検査を正確に行うためである。
【0062】
次に、上述の実施形態に係る検査用治具20,50を活用した尾筒エルボ10の補修及び検査の作業手順について説明する。
【0063】
図11は、尾筒エルボ10の補修及び検査の作業手順を示すフローチャートである。
【0064】
同図に示すように、はじめに、検査用治具20,50のベース部22,52の凹部42に位置決めナット48を配置し、固定部材45によって位置決めナット48をベース部22,52に位置決めする(ステップS2)。
【0065】
そして、ステップS4において、ガスタービンプラントの運転後、燃焼器1から取り外した尾筒エルボ10をベース部22,52上に載置する。この際、検査用治具20,50のベース部22,52から少なくともリング部24,53を取り外しておき、尾筒エルボ10のベース部22,52へのセッティングを容易に行えるようにしておく。
【0066】
続いて、
図6(a)及び
図10(a)に示すように、尾筒エルボ10のフランジ13の締結用穴16及びベース部22,52のクリアランス穴40に位置決めボルト46を挿通し、位置決めボルト46の先端側に位置決めナット48を螺着し、フランジ13をベース部22,52に固定する(ステップS6)。この状態で、ステップS8において、サポート部30,56を介してリング部24,53をベース部22,52に取り付ける。
【0067】
そして、ステップS10において、尾筒エルボ10の先端部14の外周面とリング部24,53の内周面との間に形成される環状隙間G1を計測する。
この環状隙間G1の計測結果から、ガスタービンプラントの運転に起因した尾筒エルボ10の熱変形、歪み、高温腐食等の影響を推定し、尾筒エルボ10の溶接補修内容を検討する(ステップS12)。そして、ステップS14において、検査用治具20,50から尾筒エルボ10を一旦取り外し、尾筒エルボ10に対して溶接補修を施す。
【0068】
そして、溶接補修時における熱歪みの影響を調べるため、検査用治具20,50を用いた尾筒エルボ10の形状に関する検査を再度行う(ステップS16〜S24)。
具体的には、固定部材45によって位置決めナット48をベース部22,52に位置決めし(ステップS16)、溶接補修後の尾筒エルボ10をベース部22,52上に載置し(ステップS18)、位置決めボルト46を位置決めナット48に螺着してフランジ13をベース部22,52に固定する(ステップS20)。この状態で、サポート部30,56を介してリング部24,53をベース部22,52に取り付け(ステップS22)、先端部14とリング部24,53との間の環状隙間G1を計測し、その計測値が許容範囲内であるか確認する(ステップS24)。
なお、ステップS24にて環状隙間G1の計測値が許容範囲を逸脱している場合、尾筒エルボ10の溶接補修を再度行うこととし、当該計測値が許容範囲内に収まるまでステップS12〜S24を繰り返してもよい。
【0069】
さらに、検査用治具20,50を用いて、溶接補修後の尾筒エルボ10の尾筒6及びバルブ支持配管9への組み付けが可能かという観点での検査を行う(ステップS26〜S28)。
具体的には、位置決めボルト46及び位置決めナット48を検査用治具20,50から取り外し(ステップS26)、先端部14とリング部24,53との間の環状隙間G2を管理範囲内に維持しながら、締結ボルト18及びナット19を用いたフランジ13のベース部22,52への締結が可能か確認する(ステップS28)。
なお、ステップS28にてベース部22,52にフランジ13を締結できなかった場合、尾筒エルボ10の溶接補修を再度行うこととし、ベース部22,52へのフランジ13の締結が行えるまで、ステップS12〜S28を繰り返してもよい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0071】
例えば、上述の実施形態に係る検査用治具20,50では、基端部12を基準とした尾筒エルボ10の形状に関する第1検査と、先端部14を基準とした尾筒エルボ10の組付けの可能性に関する第2検査との両方を行うためのものである。そのため、検査用治具20,50では、前記第2検査を行うために尾筒6のフランジ6Aのクリアランス穴17に模したクリアランス穴40がベース部22,52に設けられるとともに、前記第1検査を行うために位置決めナット48及び位置決めナット48をベース部22,52に位置決めするための固定部材45が設けられている。
【0072】
しかし、他の実施形態では、第1検査と第2検査とを別々の検査用治具により行う場合、それぞれの検査を行うための検査用治具のフランジ13との締結部分周辺の構成を互いに異ならせてもよい。
【0073】
図12(a)は第1検査を行うための検査用治具のフランジ13との締結部分周辺の構成を示す断面図であり、
図12(b)は第2検査を行うための検査用治具のフランジ13との締結部分周辺の構成を示す断面図である。
なお、ここでの検査用治具は、フランジ13との締結部分周辺の構成を除けば検査用治具20,50と同様であるから、以下ではフランジ13との締結部分周辺の構成のみについて説明する。
【0074】
第1検査を行うための検査用治具では、
図12(a)に示すように、位置決めボルト46の先端側の雄ねじと螺合する雌ねじが形成されたねじ穴62がベース部22,52に設けられている。そのため、ねじ穴62にねじ込まれる位置決めボルト46の位置は、ベース部22,52に対して正確に決まる。さらに、位置決めボルト48の軸部47は締結ボルト18の軸部よりも大径であり、締結用穴16の壁面と軸部47との間の隙間は比較的小さい。よって、各締結用穴16のPCD41は、ベース部22,52のねじ穴62の中心が通る円形状の軌跡と一致する。こうして、位置決めボルト46によって位置決めされた尾筒エルボ10のフランジ13は、ベース部52に対して位置が正確に定まる。
第1検査を行うための検査用治具において、リング部24,53は、サポート部30,56によって、ベース部22,52のねじ穴62を基準として所定位置に支持される。なお、ここでいう“所定の相対的な位置関係”とは、尾筒(第1配管)6側のフランジ6Aへの尾筒エルボ10の基端部12の取付け位置と、バルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の先端部14の取付け位置との相対関係に応じた位置関係である。
そのため、尾筒エルボ10のフランジ13をベース部22,52に取り付けた状態における尾筒エルボ10の先端部14に対するリング部24,53の相対位置は、尾筒エルボ10を尾筒6に実際に組み付けたときにおける先端部14に対するバルブ支持配管9の相対位置に対応している。よって、尾筒エルボ10の先端部14の外周面とリング部53の内周面との間に形成される環状隙間G1を利用して、尾筒(第1配管)6及びバルブ支持配管(第2配管)9との関係で、尾筒エルボ10の基端部12に対する先端部14の相対位置が許容範囲内であるか調べることができる。すなわち、尾筒エルボ10の基端部12(正確には、締結用穴16のPCD41)を基準として、尾筒エルボ10の形状を確認することができる。
【0075】
第2検査を行うための検査用治具では、
図12(b)に示すように、尾筒6のフランジ6Aのクリアランス穴17を模したクリアランス穴64がベース部22,52に設けられている。そのため、尾筒6(第1配管)側にフランジ13を締結するための締結ボルト18及びナット19を用い、尾筒6(第1配管)及びバルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の組み付けが可能かという観点での検査も行うことができる。
第2検査を行うには、尾筒エルボ10の先端部14の外周面とリング部53の内周面との間の環状隙間G2を許容範囲内に維持しながら、締結ボルト18及びナット19を用いてフランジ13のベース部22,52への締結が可能か否かを判断する。これにより、尾筒エルボ10の先端部14をバルブ支持配管(第2配管)9に実際に接続した状態で、尾筒エルボ10の基端部12の尾筒(第1配管)6のフランジ6Aへの締結が可能か否かを調べることができる。すなわち、尾筒エルボ10の先端部14を基準として、尾筒(第1配管)6及びバルブ支持配管(第2配管)9への尾筒エルボ10の組付け実際に可能であるか検査することができる。