(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾き調整部は、前記スラリー供給ノズルの内周面もしくは外周面に押圧力もしくは引戻し力を付与することによって、前記吐出部を弾性変形させて前記導入部の中心軸線に対する前記吐出部の外周面の法線方向の傾きを調整するようになっている請求項3に記載のスラリー供給ノズル。
前記スラリー供給ノズルは、前記吐出部の吐出孔から吐出されるスラリーの吐出速度を調整する速度調整部を備えている請求項1から8のいずれか一項に記載のスラリー供給ノズル。
請求項1から9のいずれか一項に記載のスラリー供給ノズルであって、流路が軸方向へ開口するように並列配置されたモノリス基材の軸方向端部にスラリーを供給するスラリー供給ノズルと、
モノリス基材の軸方向端部に供給されたスラリーをモノリス基材の流路内に流入もしくは伸展させる装置と、
モノリス基材の流路内に流入もしくは伸展させたスラリーを乾燥させ、焼成させる装置と、を備えている排ガス浄化用触媒の製造装置。
請求項1から9のいずれか一項に記載のスラリー供給ノズルを用いて、流路が軸方向へ開口するように並列配置されたモノリス基材の軸方向端部にスラリーを供給する工程と、
モノリス基材の軸方向端部に供給されたスラリーをモノリス基材の流路内に流入もしくは伸展させて、前記流路の内壁をスラリーで被覆する工程と、
前記流路の内壁を被覆するスラリーを乾燥させ、焼成させる工程と、からなる排ガス浄化用触媒の製造方法。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の内燃機関から排出される排気ガスは、炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分を含んでいる。このような有害成分を含む排気ガスは公害や環境悪化などの要因となるため、車両に搭載された排ガス浄化用触媒を介して一定レベルまで浄化された後、外気へ排出されるようになっている。
【0003】
上記する排ガス浄化用触媒は、耐熱性材料からなる所定形状の触媒担体と、無機酸化物などからなり触媒担体の表面に形成された多孔質の担持層と、この担持層に担持された触媒と、から構成され、触媒担体の形状によって、モノリス触媒やパイプ触媒、ペレット触媒などに分類されている。
【0004】
上記する排ガス浄化用触媒のうちモノリス触媒は、排気ガスが流過する軸方向の管状流路を有しており、他の排ガス浄化用触媒と比較して圧力損失が小さく、内燃機関に対する負荷も小さいことから、様々な分野で適用されている。
【0005】
モノリス触媒を構成する触媒担体基材(モノリス基材ともいう。)に形成されたハニカム状などの管状流路の内壁に触媒スラリーをコーティングする方法としては、たとえばウォッシュコート法を挙げることができる。
【0006】
図10は、ウォッシュコート法による従来のコーティング装置を示したものであり、このコーティング装置Aでは、ハニカム状の流路Lが軸方向へ開口するように並列配置されたモノリス基材Mの上端側にスラリー供給ノズルNから触媒スラリーSを供給し、上端側から加圧空気を供給するもしくは下端側から空気を吸引することによって、触媒スラリーSを流路L内に流入もしくは伸展させて、流路Lの内壁を触媒スラリーSで被覆する。そして、流路Lの内壁に塗布された触媒スラリーSを乾燥させ、焼成させることによって、排ガス浄化用触媒を得ることができる。なお、近年では、触媒スラリーSに白金などの貴金属が含有されており、モノリス基材Mの被覆に必要な量だけ、スラリー供給ノズルNから触媒スラリーSをモノリス基材Mの上端側へ供給するようにしている。
【0007】
ところで、触媒スラリーとして一般に使用されるスラリーの粘度は200〜15000mPa・s程度であり、更に粘度が非常に高いものも存在している。このような粘度の高い触媒スラリーを従来のスラリー供給ノズルからモノリス基材の上端側に供給した場合、スラリー供給ノズルから吐出されるスラリーは、そのノズルの中心軸線から外側へ向かうに従って減少する可能性がある。すなわち、
図10で示すように、モノリス基材には、ノズルの中心軸線近傍で多くの触媒スラリーが供給され、その中心軸線から離間するに従って供給される触媒スラリーの量が減少する可能性がある。特に、図示するように、スラリー供給ノズルの内部空間が拡幅している場合には、中心軸線から離間した領域への触媒スラリーの流動量が減少し、その領域での内部圧力が中心軸線近傍よりも減少するため、ノズルの中心軸線近傍へ供給される触媒スラリーの量とその中心軸線から離間した領域へ供給される触媒スラリーの量との差が大きくなる可能性がある。そして、このような状況下で、モノリス基材の上端側から加圧空気を供給するもしくは下端側から空気を吸引し、触媒スラリーを流路内に流入もしくは伸展させると、モノリス基材に形成される触媒コート層の厚みが、モノリス基材全体で不均一となるといった問題が生じ得る。
【0008】
このような問題に対し、特許文献1には、基材上面に貯留されたスラリーの液面を均一化した後に、スラリーを基材の流路内に進展させる基材コーティング装置が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、スラリー供給ノズルに設けられた複数の吐出口の配列の中心部と比較して、前記複数の吐出口の配列の周縁部でその吐出口の径を大きくしたスラリー供給ノズルが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示されている基材コーティング装置によれば、触媒スラリーを流路内に伸展させる前に液面均一化機構により触媒スラリーに遠心力や振動を作用させることによって、基材上面に貯留された触媒スラリーの液面を均一にすることができ、基材の各流路における触媒スラリーの量を均一化することができ、各流路に形成される触媒コート層の厚みを均一化することができる。
【0012】
また、特許文献2に開示されているノズルによれば、複数の吐出口の配列の周縁部でその吐出口の径を大きくすることによって、ノズルの周縁部における触媒スラリーの吐出量を増加させることができる。
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示されている基材コーティング装置においては、モノリス基材全体を回転もしくは振動させる必要があり、装置全体の構成が複雑化且つ大型化するといった課題がある。
【0014】
また、特許文献2に開示されているノズルにおいては、モノリス基材の外形が大きくなるとそれに応じてノズルの外形や周縁部での吐出口の径を大きくする必要がある。このように吐出口の径が大きくなると、その吐出口からスラリーを安定して吐出できなくなり、各流路に形成される触媒コート層の厚みが不均一となることが本発明者等によって確認されている。
【0015】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、たとえば触媒スラリーの粘度が高い状況下においても、簡単な構成でもって、モノリス基材全体に亘って略均一に触媒スラリーを供給することができ、モノリス基材の各流路に形成される触媒コート層を均一化することのできるスラリー供給ノズルと排ガス浄化用触媒の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成すべく、本発明によるスラリー供給ノズルは、スラリーを導入するための筒体からなる導入部と、前記導入部に接続され、該導入部の中心軸線に沿って該導入部から離間するに従って拡幅する内部空間を有する拡幅部と、前記拡幅部の前記導入部から離間した端部に接続され、モノリス基材にスラリーを吐出するための複数の吐出孔が分散して形成された板状部材からなる吐出部と、を備えたスラリー供給ノズルであって、前記吐出部のうち前記吐出孔が形成された部分の外周面は、その法線方向が前記導入部の中心軸線に対して外側へ傾いた方向となる形状を呈しているものである。
【0017】
上記する形態によれば、吐出部のうち吐出孔が形成された部分の外周面が、その法線方向が導入部の中心軸線に対して外側へ傾いた方向となる形状を呈していることによって、吐出部に形成された吐出孔から導入部の中心軸線に対して外側へ傾いた方向へスラリーを吐出することができるため、モノリス基材に対する吐出部の外形を小さくすることができる。よって、たとえばスラリー供給ノズルが導入部の中心軸線に沿って該導入部から離間するに従って拡幅する内部空間を有していて、導入部の中心軸線から離間した領域への触媒スラリーの流動量が減少し、その領域での内部圧力が中心軸線近傍よりも減少する場合であっても、吐出部の外形、すなわち内部空間を有する拡幅部を含むスラリー供給ノズル全体の体格を小型化することができるため、スラリー供給ノズルの内部における圧力を全体に亘って高めることができると共に、その内部における圧力を均一化することができる。そのため、吐出部の吐出孔から吐出されるスラリーの吐出圧を高めることができ、当該スラリーの吐出速度を速めることができ、より確実に導入部の中心軸線から外側へ傾いた方向へスラリーを吐出することができると共に、吐出部の各吐出孔から吐出されるスラリーの吐出速度や吐出量をより均一化することができる。
【0018】
このような吐出部の外周面の形状としては、たとえば前記導入部の中心軸線方向へ向かって凸となる曲面形状や円錐形状、階段形状などを挙げることができる。
【0019】
また、上記するスラリー供給ノズルは、前記吐出部が弾性部材からなり、前記吐出部を弾性変形させて前記導入部の中心軸線に対する前記吐出部の外周面の法線方向の傾きを調整する傾き調整部を備えていることが好ましい。
【0020】
上記する形態によれば、前記傾き調整部により導入部の中心軸線に対する吐出部の外周面の法線方向の傾きを調整することによって、たとえば異なる外径を有するモノリス基材にスラリーを供給する場合やスラリー供給ノズルとモノリス基材との相対的な距離が変更される場合であっても、モノリス基材の外径やスラリー供給ノズルとモノリス基材との相対的な距離に応じた方向へ吐出孔からスラリーを吐出することができる。また、前記傾き調整部により導入部の中心軸線に対する吐出部の外周面の法線方向の傾きを調整することによって、内部空間を有する拡幅部を含むスラリー供給ノズル全体の体格を調整することができるため、スラリー供給ノズルの内部空間の大きさを調整することができ、スラリーの吐出方向と共にその吐出圧や吐出速度を調整することができる。
【0021】
また、上記するスラリー供給ノズルは、前記傾き調整部が、前記スラリー供給ノズルの内周面もしくは外周面に押圧力もしくは引戻し力を付与することによって、前記吐出部を弾性変形させて前記導入部の中心軸線に対する前記吐出部の外周面の法線方向の傾きを調整するようになっていることが好ましい。
【0022】
上記する形態によれば、スラリー供給ノズルの内周面もしくは外周面に押圧力もしくは引戻し力を付与するという簡単な構成で、導入部の中心軸線に対する吐出部の外周面の法線方向の傾きを調整することができる。
【0023】
また、上記するスラリー供給ノズルは、前記傾き調整部が、前記スラリー供給ノズルに着脱自在に取り付けられていることが好ましい。
【0024】
ここで、弾性を有する吐出部の形成素材としては、たとえばシリコンゴム、ポリウレタンゴム、二トリルゴムなどを挙げることができる。
【0025】
また、上記するスラリー供給ノズルは、前記吐出部の複数の吐出孔が、前記導入部の中心軸線から離間するに従って孔径が大きくなることが好ましい。
【0026】
上記する形態によれば、導入部の中心軸線から離間するに従って吐出孔の孔径を大きくすることによって、たとえば、上記するように導入部の中心軸線から離間した領域での内部圧力が中心軸線近傍よりも減少し、導入部の中心軸線から離間するに従って吐出孔から吐出されるスラリーの吐出圧や吐出速度が小さくなる場合であっても、吐出孔から吐出されるスラリーの吐出量を均一化することができる。
【0027】
また、上記するスラリー供給ノズルは、前記吐出部の複数の吐出孔が同心円状に形成されていることが好ましい。
【0028】
上記する形態によれば、吐出部の複数の吐出孔が、当該吐出部に複数形成された円上で同心円状に形成されることによって、前記吐出部における吐出孔の分布を簡単な構成で均一化することができ、吐出孔から吐出されるスラリーの吐出量を吐出部全体亘って略均一化することができる。
【0029】
また、上記するスラリー供給ノズルは、前記吐出部の吐出孔から吐出されるスラリーの吐出速度を調整する速度調整部を備えていることが好ましい。
【0030】
上記する形態によれば、前記速度調整部により吐出部の吐出孔から吐出されるスラリーの吐出速度を調整することによって、たとえば異なる外径を有するモノリス基材にスラリーを供給する場合やスラリー供給ノズルとモノリス基材との相対的な距離が変更される場合であっても、モノリス基材の外径やスラリー供給ノズルとモノリス基材との相対的な距離に応じた速度で吐出孔からスラリーを吐出することができる。
【0031】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造装置は、上記するスラリー供給ノズルであって、流路が軸方向へ開口するように並列配置されたモノリス基材の軸方向端部にスラリーを供給するスラリー供給ノズルと、モノリス基材の軸方向端部に供給されたスラリーをモノリス基材の流路内に流入もしくは伸展させる装置と、モノリス基材の流路内に流入もしくは伸展させたスラリーを乾燥させ、焼成させる装置と、を備えているものである。
【0032】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、上記するスラリー供給ノズルを用いて、流路が軸方向へ開口するように並列配置されたモノリス基材の軸方向端部にスラリーを供給する工程と、モノリス基材の軸方向端部に供給されたスラリーをモノリス基材の流路内に流入もしくは伸展させて、前記流路の内壁をスラリーで被覆する工程と、前記流路の内壁を被覆するスラリーを乾燥させ、焼成させる工程と、からなる方法である。
【発明の効果】
【0033】
以上の説明から理解できるように、本発明のスラリー供給ノズルとそれを用いた排ガス浄化用触媒の製造装置および製造方法によれば、吐出部のうち吐出孔が形成された部分の外周面の法線方向が導入部の中心軸線に対して外側へ傾いた方向となるという極めて簡易な構成によって、たとえば触媒スラリーの粘度が高い状況下においても、モノリス基材全体に亘って略均一に触媒スラリーを供給することができ、モノリス基材の各流路に形成される触媒コート層を均一化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明のスラリー供給ノズルと排ガス浄化用触媒の製造装置および製造方法の実施の形態を説明する。
【0036】
[スラリー供給ノズルの実施の形態1]
まず、
図1〜
図4を参照して、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態1を適用したコーティング装置の全体構成とその稼動形態について概説する。
【0037】
図1〜
図4はそれぞれ、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態1を適用したコーティング装置の全体構成を模式的に示した図であって、
図1は、シリンダにスラリーを導入する工程を説明した図であり、
図2は、
図1で示す工程に続いて、ノズルにスラリーを導入してモノリス基材にスラリーを供給する工程を説明した図であり、
図3は、
図2で示す工程に続いて、モノリス基材へのスラリーの供給を完了する工程を説明した図であり、
図4は、
図3で示す工程に続いて、ノズルから垂れるスラリーを引き戻す工程を説明した図である。
【0038】
図示するコーティング装置100は、流路Lが軸方向へ開口するように並列配置されたモノリス基材Mの下端Mb側を固定保持するための下側保持部14と、モノリス基材Mの上端Ma側を固定保持しながらその上端Ma側に供給されるスラリーSをモノリス基材Mの流路Lに誘導するための上側保持部15と、スラリーを貯留するためのスラリータンク11と、このスラリータンク11と接続された三方弁17と、この三方弁17を介して前記スラリータンク11と連通され、内部にピストン18が嵌挿されたシリンジ12と、このシリンジ12内のピストン18を駆動させるための駆動機構19と、この駆動機構19の駆動を制御するためのコントローラ20と、三方弁17を介して前記スラリータンク11とシリンジ12と連通され、前記下側保持部14と上側保持部15によって保持されるモノリス基材Mの上端Maの鉛直上方に配置されてその上端MaへスラリーSを供給するスラリー供給ノズル(以下ノズルという。)16と、モノリス基材Mの下端Mb側から空気を吸引して上端Ma側に供給されたスラリーSをモノリス基材Mの流路L内に流入もしくは伸展させる吸引装置30と、から大略構成されている。
【0039】
なお、コントローラ20は、前記駆動機構19の駆動を制御するとともに、駆動機構19の駆動と同期してモノリス基材Mの下方から空気を吸引する吸引装置30やモノリス基材Mを搬送する搬送装置(不図示)などの駆動を制御するようになっている。
【0040】
前記スラリー供給ノズル16は、三方弁17を介して前記スラリータンク11とシリンジ12と連通される略円筒体からなる導入部1と、この導入部1と同心に接続されていて、導入部1の中心軸線1Lに沿ってこの導入部1から離間するに従って拡幅する内部空間を有する拡幅部2と、拡幅部2の下側端部2bに接続され、モノリス基材MにスラリーSを吐出するための複数の吐出孔3aが分散して形成された円板状部材からなる吐出部3と、を備えている。
【0041】
なお、拡幅部2は、より具体的には、導入部1と接続される上側端部2aが導入部1の中心軸線1Lに対して略垂直方向に所定長さだけ拡がり、それに続く胴体部2cが導入部1の中心軸線1Lに沿ってこの導入部1から離間するに従って次第に拡幅し、吐出部3と接続される下側端部2bが所定長さだけ導入部1の中心軸線1Lに対して略平行方向となる形状を呈している。
【0042】
ここで、前記吐出部3の外周面3bは、その中心部を除いてその法線方向が前記導入部1の中心軸線1L、すなわち吐出部3の中心軸線に対して外側へ傾いた方向となる形状を呈しており、本実施の形態1では、前記吐出部3の外周面3bは、前記導入部1の中心軸線1L方向でモノリス基材Mの方向(図中、鉛直下方)へ向かって凸となる曲面形状を呈している。
【0043】
また、前記吐出部3の外径3Dは、前記下側保持部14と上側保持部15によって保持されたモノリス基材Mの上端Maの外径MDよりも小さく設計されており、より具体的には、前記吐出部3に形成された複数の吐出孔3aのうち最も外側に形成された吐出孔3aは、モノリス基材Mの上端Maの外形よりも内側に配置されている。
【0044】
なお、前記吐出部3に形成される複数の吐出孔3aは、それぞれが吐出部3の外周面3bに対して略垂直な方向に吐出部3を構成する円板状部材を穿孔するように形成されており、当該吐出孔3aから吐出されるスラリーが吐出部3全体に亘って略均一となるように当該吐出部3に分散配置されている。
【0045】
図示するコーティング装置100を用いてモノリス基材Mの流路Lの内壁に触媒コート層を形成する際には、まず、モノリス基材Mを下側保持部14と上側保持部15によって固定保持してノズル16の鉛直下方に配置する、具体的には、ノズル16の中心軸線1Lとモノリス基材Mの中心軸線が略一致するようにノズル16の鉛直下方に配置するとともに、三方弁17でスラリータンク11とシリンジ12を連通させた状態で、スラリータンク11内にスラリーSを供給する。
【0046】
なお、スラリーSは、たとえば活性アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物と、バインダと、水とからなり、触媒担体の表面にコーティングされて担持層を形成するものである。このスラリーSの粘度は、活性アルミナやシリカなどの粉末の粒径や水などの配合量などを変更することで調整することができ、たとえば200〜30000mPa・s程度である。
【0047】
上記するようにスラリータンク11内にスラリーSを供給した後、
図1で示すように、駆動機構19を用いてピストン18を三方弁17から離間する方向(図中、矢印X1方向)へ所定量だけ駆動させ、スラリータンク11内のスラリーSをシリンジ12内へ導入する。
【0048】
次いで、
図2で示すように、三方弁17を回転させてシリンジ12とノズル16を連通させ、駆動機構19を用いてピストン18を三方弁17およびノズル16の方向(図中、矢印X2方向)へ駆動させ、シリンジ12内へ導入されたスラリーSをノズル16の導入部1へ導入する。導入部1へ導入されたスラリーSは、中心軸線1Lに沿って拡幅部2へ誘導され、拡幅部2で中心軸線1Lに対して垂直方向へ拡がりながら吐出部3に形成された吐出孔3aから吐出される。
【0049】
ここで、スラリーSの粘度、モノリス基材Mの外径MD、ノズル16とモノリス基材Mとの相対的な距離MLなどに応じてシリンジ12内のピストン(速度調整部)18の駆動速度を調整することによって、ノズル16内の圧力を調整することができ、吐出孔3aから吐出されるスラリーSの吐出圧や吐出速度を調整することができ、モノリス基材Mの上端Ma側全体に亘って略均一にスラリーSを供給することができる。
【0050】
そして、
図3で示すように、シリンジ12内のピストン18がそのシリンジ12のノズル16側の底面に当接すると、モノリス基材MへのスラリーSの供給が完了し、モノリス基材Mの上端Ma側には予め定められた量のスラリーSが供給される。
【0051】
上記するようにモノリス基材Mの上端Ma側にスラリーSを供給した後、もしくは、モノリス基材Mの上端Ma側にスラリーSを供給しながら、吸引装置30でモノリス基材Mの下端Mb側から空気を吸引し、モノリス基材Mの上端Ma側に供給されたスラリーSをモノリス基材Mの流路L内に流入もしくは伸展させ、流路Lの内壁をスラリーSで被覆する。なお、不要となったスラリーSは、モノリス基材Mの下端Mb側から外部へ排出する。
【0052】
また、モノリス基材Mの上端Ma側にスラリーSを供給した後は、ノズル16内に残留するスラリーSの一部が吐出部3の吐出孔3aから垂れる可能性がある。そのため、
図4で示すように、駆動機構19を用いてピストン18をシリンジ12内で三方弁17から離間する方向(図中、矢印X1方向)へ所定量だけ引き戻し、吐出部3の吐出孔3aからスラリーSを引き戻して吐出孔3aにおけるスラリーSの垂れを抑制する。
【0053】
モノリス基材Mの流路Lの内壁をスラリーSで被覆したモノリス基材Mは、不図示の搬送装置で乾燥および焼成工程へ搬送され、新たなモノリス基材が下側保持部14と上側保持部15の間に搬送されて保持固定される。このような動作を繰り返すことによって、複数のモノリス基材の流路の内壁にスラリーSを塗布することができる。
【0054】
なお、モノリス基材Mの上端Maへ供給されたスラリーSをモノリス基材Mの流路L内に流入もしくは伸展させる装置として、上記する吸引装置30に代えて、たとえば、モノリス基材Mの上端Ma側から加圧空気を供給してスラリーSをモノリス基材Mの流路L内に流入もしくは伸展させる装置や、重力を利用してスラリーSをモノリス基材Mの流路L内に流入もしくは伸展させる装置などを適用することもできる。
【0055】
次に、
図5を参照して、
図1〜
図4で示すコーティング装置100のスラリー供給ノズル16について詳細に説明する。
【0056】
図5は、
図1〜
図4で示すスラリー供給ノズルを模式的に示した図であって、
図5(a)はその縦断面図であり、
図5(b)は
図5(a)のA−A矢視図である。
【0057】
図5(a)で示すように、スラリー供給ノズル16は、その中心軸線1Lに沿ってスラリーSを導入するための略円筒体からなる導入部1と、この導入部1に接続されていて、導入部1の中心軸線1Lに沿って導入部1から離間するに従って拡幅する内部空間を有する拡幅部2と、拡幅部2の下側端部2bに接続され、複数の吐出孔3aが分散して形成された円板状部材からなる吐出部3と、を備えている。
【0058】
前記拡幅部2は、導入部1と接続される上側端部2aが導入部1の中心軸線1Lに対して略垂直方向に拡がり、それに続く胴体部2cが導入部1の中心軸線1Lに沿って導入部1から離間するに従って次第に拡幅し、吐出部3と接続される下側端部2bが導入部1の中心軸線1Lに対して略平行方向となる形状を呈している。
【0059】
また、前記吐出部3に形成される複数の吐出孔3aは、それぞれが吐出部3の外周面3bに対して略垂直な方向(吐出部3の外周面3bの法線方向3aL)に円板状部材を穿孔するように形成されている。
【0060】
また、前記吐出部3の外周面3bは、前記導入部1の中心軸線1L方向でモノリス基材Mの方向(図中、鉛直下方)へ向かって凸となる曲面形状を呈しており、特にその中心部の吐出孔3aを除いて吐出孔3aが形成された部分の外周面3b(吐出孔3aの中心軸線と吐出部3の外周面3bとの交点部分の外周面3b)の法線方向3aLが、導入部1や吐出部3の中心軸線1Lに対して外側へ傾いた方向となる形状を呈している。
【0061】
さらに、前記吐出部3の外周面3bが前記導入部1の中心軸線1L方向でモノリス基材Mの方向へ向かって凸となる曲面形状を呈しているため、吐出孔3aが形成された部分の外周面3bの法線方向3aLと中心軸線1Lの交差角θ2〜θ4は、中心軸線1Lから離間するに従って(図中、水平方向へ向かうに従って)大きくなっており、中心軸線1Lから離間するに従って中心軸線1Lに対してより外側へ傾いた方向へ吐出孔3aからスラリーSが吐出されるようになっている。
【0062】
また、
図5(b)で示すように、前記吐出部3に形成される吐出孔3aは、1個がその中心部C1に形成されるとともに、36個が中心部C1を中心とする三つの円弧C2〜C4上に同心円状に形成されている。より具体的には、吐出孔3a1が吐出部3の中心部C1に形成されるとともに、6個の吐出孔3a2が中心部C1を中心とする円弧C2上に等間隔に形成され、12個の吐出孔3a3が円弧C2よりも大きな径を有する円弧C3上に等間隔に形成され、18個の吐出孔3a4が円弧C3よりも大きな径を有する円弧C4上に等間隔に形成されている。なお、図示例では、中心部1Cと円弧C2との間隔、円弧C2と円弧C3との間隔、円弧C3と円弧C4との間隔は、それぞれ略同一となっている。
【0063】
さらに、前記吐出部3に形成される吐出孔3aは、中心軸線1Lから離間するに従ってその孔径が大きくなっており、図示例では、吐出部3の中心部C1に形成される吐出孔3a1に対して、円弧C2上に形成される吐出孔3a2は略1.2倍の孔径を有しており、円弧C2上に形成される吐出孔3a2と円弧C3上に形成される吐出孔3a3の孔径は略同一であり、円弧C3上に形成される吐出孔3a3に対して円弧C4上に形成される吐出孔3a4は、略1.5倍の孔径を有している。
【0064】
なお、中心軸線1Lに対する吐出孔3aが形成された部分の外周面3bの法線方向3aLの傾き、吐出部3に形成される吐出孔3aの基数や吐出部3での分布、各吐出孔3aの孔径などは適宜変更することができ、モノリス基材Mの上端Ma側に供給されるスラリーSの量がモノリス基材M全体に亘って略均一であれば、たとえば同じ孔径を有する吐出孔を形成し、中心軸線1Lから離間した領域での吐出孔の分布を増加させてもよい。
【0065】
表1は、
図5で示す実施の形態1のノズル16において、吐出部3の中心部C1に形成される吐出孔3a1の孔径をφ2.9mm、円弧C2、C3上に形成される吐出孔3a2、3a3の孔径をφ3.4mm、円弧C4上に形成される吐出孔3a4をφ5.0mmとし、吐出孔3a4から吐出されるスラリーS(例えば、固形分含有率が35質量%であって、粘度が剪断速度0.4 s
-1で30000mPa・s、剪断速度200s
-1で300mPa・s)の吐出速度を1.0m/sとした場合の、中心軸線1Lに対する吐出孔3a4での外周面3bの法線方向3aLの傾きθ4と、吐出部3とモノリス基材Mの上端Maとの相対的な距離ML(
図2参照)と、吐出孔3a4などから吐出されるスラリーSで供給可能なモノリス基材Mの外径MDと、の関係の一例を示したものである。なお、表1中、モノリス基材Mの外径MDの単位は[mm]である。
【0067】
上記するように、たとえば
図10で示す従来のノズルでは、外径MDが約180mmのモノリス基材Mに対してスラリーSを供給するためにノズルの外径3D(
図1参照)を180mm以上とすると、中心軸線から離間した領域での内部圧力が中心軸線近傍よりも減少し、ノズルの吐出孔から吐出されるスラリーSの吐出速度や吐出量が吐出部全体で不均一となり、モノリス基材Mの上端Ma側に供給されるスラリーSの供給量がモノリス基材M全体に亘って不均一となることが本発明者等によって確認されている。
【0068】
一方で、本実施の形態1のノズルでは、表1で示すように、たとえば中心軸線1Lに対する吐出孔3a4での外周面3bの法線方向3aLの傾きθ4を30度、吐出部3とモノリス基材Mの上端Maとの相対的な距離KLを250mmとすることで、直径が309mmの断面円形のモノリス基材Mに対して略均一に高粘度のスラリーSを供給することができる。
【0069】
このように、本実施の形態1によれば、吐出部3の外周面3bを、前記中心軸線1L方向でモノリス基材Mの方向へ向かって凸となる曲面形状とし、吐出孔3aが形成された部分の外周面3bの法線方向3aLを、前記中心軸線1Lに対して外側へ傾いた方向とすることによって、モノリス基材Mに対する吐出部3の外形を小さくすることができる。そのため、ノズル16の内部における圧力を全体に亘って高めつつその圧力を均一化することができ、たとえばノズル16が中心軸線1Lに沿って導入部1から離間するに従って拡幅する内部空間を有している場合であっても、吐出部3の吐出孔3aから吐出されるスラリーSの吐出圧を高めて当該スラリーSの吐出速度を速めつつ、スラリーSの吐出速度や吐出量を均一化することができる。また、吐出孔3aが形成された部分の外周面3bの法線方向3aLを、拡幅部2の内部空間におけるスラリーSの流れ方向(
図5(a)中、矢印SL方向)に近づけることができるため、中心軸線1Lに対して外側へ傾いた方向へスラリーSを円滑に且つ確実に吐出することができると共に、吐出部3の各吐出孔3aからスラリーSをより均一に吐出することができ、モノリス基材Mの上端Ma側に供給されるスラリーSの供給量をモノリス基材M全体に亘って均一化することができ、モノリス基材Mの各流路Lに形成される触媒コート層を均一化することができる。
【0070】
[スラリー供給ノズルの実施の形態2]
次に、
図6を参照して、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態2を説明する。
図6は、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態2を模式的に示した縦断面図であって、
図6(a)はノズルの吐出部の曲率が小さい状態を示した図であり、
図6(b)はノズルの吐出部の曲率が大きい状態を示した図である。
【0071】
図6で示す実施の形態2のノズル116は、
図5で示す実施の形態1のノズル16に対して、導入部の中心軸線に対する吐出部の外周面の法線方向の傾きを調整する傾き調整部を備えている点が相違しており、その他の構成は
図5で示す実施の形態1のノズル16と同様である。したがって、
図5で示す実施の形態1のノズル16と同様の構成については、同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
図示するように、スラリー供給ノズル116は、その中心軸線101Lに沿ってスラリーSを導入するための略円筒体からなる導入部101と、この導入部101に接続されていて、中心軸線101Lに沿って導入部101から離間するに従って拡幅する内部空間を有する拡幅部102と、拡幅部102の下側端部102bに接続され、複数の吐出孔103aが分散して形成された曲面形状を呈する円板状部材からなる吐出部103と、を備えている。
【0073】
前記拡幅部102は、導入部101と接続される上側端部102aが導入部101の中心軸線101Lに対して略垂直方向に拡がり、それに続く胴体部102cが中心軸線101Lに沿って導入部101から離間するに従って次第に拡幅し、吐出部103と接続される下側端部102bが中心軸線101Lに対して略平行方向となる形状を呈している。
【0074】
前記拡幅部102の胴体部102cのうち上側端部102a近傍には貫通孔102dが形成されており、この貫通孔102dを通って調整部材(傾き調整部)104が挿入され、ノズル116内に挿入された調整部材104の端部104aは、導入部101の中心軸線101Lに対して反対側の吐出部103の内周面103c、より具体的には、複数の吐出孔103aのうち中心軸線101Lに対して最も離間する吐出孔103a4が形成されている円弧と吐出孔103a4よりも内側の吐出孔103a3が形成されている円弧の間の領域の内周面103cに接続されている。すなわち、貫通孔102dを通ってノズル116内に挿入された調整部材104は、当該ノズル116内で相互の動きを阻害しない位置で交差して配置されている。
【0075】
また、胴体部102cの貫通孔102dと調整部材104との間には、例えば樹脂製のシール材105が配設されており、ノズル116内に導入されたスラリーSがノズル116の外部へ漏れないようになっている。また、調整部材104は、シール材105や胴体部102cなどに対して相対的に移動することができ、調整部材104の端部104aで吐出部103の内周面103cを押圧して吐出部103の形状を変更することができ、中心軸線101Lに対する吐出部103の外周面103bの吐出孔103aでの法線方向103aLの傾きθ102〜θ104を変更できるようになっている。
【0076】
ここで、吐出部103は、ノズル116内に導入されたスラリーSの圧力では変形せず、且つ調整部材104による押圧力で比較的容易に変形し得る強度を有する弾性部材から構成されており、その形成素材としては、たとえばシリコンゴム、ポリウレタンゴム、二トリルゴムなどを挙げることができる。
【0077】
なお、図示例では、導入部101の中心軸線101Lに対して対称となる位置に、2本の調整部材104が配設されているが、調整部材104の形状や基数、配設される位置などは適宜変更することができ、吐出部103の形状を変更して中心軸線101Lに対する吐出部103の外周面103bの吐出孔103aでの法線方向103aLの傾きを変更することができれば、たとえば各調整部材104を非対称な位置に配設してもよいし、ノズル116内に挿入された各調整部材104の端部104aを中心軸線101Lに対して同じ側の吐出部103の内周面103cに接続してもよい。また、調整部材104をノズル116に着脱自在に取り付け、たとえばノズル116内に挿入された各調整部材104の端部104aを吐出部103の内周面103cに当接させ、当該調整部材104が不要である場合には、貫通孔102dを通って調整部材104を引き抜き、前記シール材105で貫通孔102dを封止してもよい。
【0078】
図6(a)で示すように、ノズル116の吐出部103の曲率が小さく、中心軸線101Lに対する吐出部103の外周面103bの吐出孔103aでの法線方向103aLの傾きθ102〜θ104が比較的小さい状態から、調整部材104をノズル106内に押し込んで吐出部103の内周面103cを押圧すると、吐出部103が伸長するように弾性変形し、
図6(b)で示すように、吐出部103の曲率が大きくなる(モノリス基材Mの方向へ向かって突出する)ように吐出部103の形状が変化し、中心軸線101Lに対する吐出部103の外周面103bの吐出孔103aでの法線方向103aLの傾きθ102〜θ104が大きくなり、中心軸線101Lに対してより外側へ傾いた方向へ吐出孔103aからスラリーSが吐出されるようになる。
【0079】
また、調整部材104の押圧力を解除したり、調整部材104で吐出部103の内周面103cを引き戻すと、ノズル116の吐出部103の曲率が小さくして、中心軸線101Lに対する吐出部103の外周面103bの吐出孔103aでの法線方向103aLの傾きθ102〜θ104を再び小さくすることができる。
【0080】
このように、本実施の形態2によれば、調整部材(傾き調整部)104の移動量を調整することによって、中心軸線101Lに対する吐出孔103aでの外周面103bの法線方向103aLの傾きθ102〜θ104や、吐出部103とモノリス基材Mの上端Maとの相対的な距離ML(
図2参照)を調整することができ、表1に基づいて説明したように、様々な外径を有するモノリス基材Mに対してスラリーSを供給することができるため、たとえば異なる外径を有するモノリス基材MにスラリーSを供給する場合や、コーティング装置等によってノズル116とモノリス基材Mとの相対的な距離MLが変更される場合であっても、モノリス基材Mの上端Ma側に略均一にスラリーSを供給することができ、モノリス基材Mの各流路Lに形成される触媒コート層を均一化することができる。
【0081】
なお、上記する実施の形態2では、調整部材104をノズル116内に配置し、調整部材104の端部104aで吐出部103の内周面103cを押圧したり、引き戻して吐出部103の形状を変更する形態について説明したが、調整部材をノズルの外部に配置し、調整部材の端部でノズルの外周面を押圧したり、引き戻して吐出部の形状を変更してもよい。たとえば、ノズルの拡幅部と吐出部を弾性部材から構成し、ノズルの拡幅部の外周面を押圧したり、引き戻して吐出部の形状を変更してもよい。また、吐出部を熱によって伸縮自在な部材から構成し、吐出部の熱膨張や熱収縮を利用して吐出部の形状を変更し、中心軸線に対する吐出部の外周面の吐出孔での法線方向の傾きを調整してもよい。このような構成とすることで、ノズル内でのスラリーの流れを円滑化することができ、吐出部の吐出孔から吐出されるスラリーの吐出速度を速めつつ、そのスラリーの吐出速度や吐出量を均一化することができる。
【0082】
[スラリー供給ノズルの実施の形態3]
次に、
図7を参照して、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態3を説明する。
図7は、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態3を模式的に示した縦断面図である。
【0083】
図7で示す実施の形態3のノズル216は、
図5で示す実施の形態1のノズル16に対して、吐出部の形状が相違しており、その他の構成は
図5で示す実施の形態1のノズル16と同様である。したがって、
図5で示す実施の形態1のノズル16と同様の構成については、同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0084】
図示するように、スラリー供給ノズル216は、その中心軸線201Lに沿ってスラリーSを導入するための略円筒体からなる導入部201と、この導入部201に接続されていて、中心軸線201Lに沿って導入部201から離間するに従って拡幅する内部空間を有する拡幅部202と、拡幅部202の下側端部202bに接続され、複数の吐出孔203aが分散して形成された円板状部材からなる吐出部203と、を備えている。
【0085】
ここで、吐出部203の外周面203bは、前記導入部201の中心軸線201L方向でモノリス基材Mの方向(図中、鉛直下方)へ向かって凸となる略円錐形状を呈しており、特にその中心部の吐出孔203aを除いて吐出孔203aが形成された部分の外周面203bの法線方向203aLが、導入部201や吐出部203の中心軸線201Lに対して外側へ傾いた方向となる形状を呈している。
【0086】
本実施の形態3では、前記吐出部203の外周面203bが中心軸線201L方向でモノリス基材Mの方向へ向かって凸となる円錐形状を呈しているため、吐出孔203aが形成された部分の外周面203bの法線方向203aLと中心軸線201Lの交差角θ202〜θ204(中心部の吐出孔203aを除く)は、吐出部203全体に亘って略同一となっており、吐出部203全体に亘って略同一の方向へ吐出孔203aからスラリーSが吐出されるようになっている。
【0087】
このように、本実施の形態3によれば、吐出部203全体に亘って略同一の方向へ吐出孔203aからスラリーSが吐出することができ、たとえば実施の形態1と比較して、中心軸線201L近傍において中心軸線201Lに対してより外側へ傾いた方向へスラリーSを吐出することができるため、モノリス基材Mに対する吐出部203の外形をより小さくすることができ、吐出部203の吐出孔203aから吐出されるスラリーSの吐出圧を高めて当該スラリーSの吐出速度を速めつつ、スラリーSの吐出速度や吐出量を均一化することができ、モノリス基材Mの上端Ma側に供給されるスラリーSの供給量をモノリス基材M全体に亘ってより均一化することができる。
【0088】
なお、たとえば中心軸線201L近傍におけるスラリーSの供給量が不足する場合には、中心軸線201L近傍における吐出孔203aの基数やその分布、各吐出孔3aの孔径などを適宜調整すればよい。
【0089】
[スラリー供給ノズルの実施の形態4]
次に、
図8を参照して、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態4を説明する。
図8は、本発明のスラリー供給ノズルの実施の形態4を模式的に示した縦断面図である。
【0090】
図8で示す実施の形態4のノズル316は、
図5で示す実施の形態1のノズル16や
図7で示す実施の形態3のノズル216に対して、吐出部の形状が相違しており、その他の構成は
図5で示す実施の形態1のノズル16や
図7で示す実施の形態3のノズル216と同様である。したがって、
図5で示す実施の形態1のノズル16や
図7で示す実施の形態3のノズル216と同様の構成については、同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0091】
図示するように、スラリー供給ノズル316は、その中心軸線301Lに沿ってスラリーSを導入するための略円筒体からなる導入部301と、この導入部301に接続されていて、中心軸線301Lに沿って導入部301から離間するに従って拡幅する内部空間を有する拡幅部302と、拡幅部302の下側端部302bに接続され、複数の吐出孔303aが分散して形成された円板状部材からなる吐出部303と、を備えている。
【0092】
ここで、吐出部303の外周面303bは、前記導入部301の中心軸線301L方向でモノリス基材Mの方向(図中、鉛直下方)へ向かって凸となる略階段形状を呈しており、特にその中心部の吐出孔303aを除いて吐出孔303aが形成された部分の外周面303bの法線方向303aLが、導入部301や吐出部303の中心軸線301Lに対して外側へ傾いた方向となる形状を呈している。
【0093】
より具体的には、吐出部303の外周面303bは、中心軸線301L近傍に中心軸線301Lに対して垂直な平面303b1と、平面303b1の外側に連接する中心軸線301Lに対して傾斜した傾斜面303b2と、傾斜面303b2の外側に連接する中心軸線301Lに対して垂直な平面303b3と、平面303b3の外側に連接する中心軸線301Lに対して傾斜した傾斜面303b4と、傾斜面303b4の外側に連接する中心軸線301Lに対して垂直な平面303b5と、平面303b5の外側に連接する中心軸線301Lに対して傾斜した傾斜面303b6と、を有し、前記平面303b1の中央部に吐出孔303a1が形成され、前記傾斜面303b2、303b4、303b6のそれぞれに吐出孔303a2、303a3、303a4が形成されている。
【0094】
本実施の形態4では、前記吐出部303の外周面303bが中心軸線301L方向でモノリス基材Mの方向へ向かって凸となる階段形状を呈し、前記吐出部303の外周面303bがその一部に平面を有することによって、吐出部303の外周面303bを構成する傾斜面の傾きが大きくなり、吐出孔303aが形成された部分の外周面303bの法線方向303aLと中心軸線301Lの交差角θ302〜θ304(中心部の吐出孔303aを除く)が大きくなり、中心軸線301Lに対してより外側へ傾いた方向へ吐出孔303aからスラリーSが吐出されるようになっている。
【0095】
なお、吐出部303の外周面303bを形成する平面や傾斜面の基数や各平面や傾斜面の傾き、大きさなどは適宜変更することができる。また、各傾斜面に形成される吐出孔303aの基数や位置、各吐出孔303aの孔径なども適宜変更することができる。また、図示例では、中心軸線301Lに対する吐出孔303aが形成された部分の外周面303bの法線方向303aLの傾きが略同一であるが、たとえば中心軸線301Lに対する吐出孔303aが形成された部分の外周面303bの法線方向303aLの傾きを傾斜面毎に変更してもよい。
【0096】
このように、本実施の形態4によれば、吐出孔303aが形成された部分の外周面303bの法線方向303aLと中心軸線301Lの交差角θ302〜θ304が大きくなり、たとえば実施の形態3と比較して(特に吐出部の中心軸線方向の長さが同等である場合)、中心軸線301Lに対してより外側へ傾いた方向へ吐出孔303aからスラリーSを吐出することができるため、モノリス基材Mに対する吐出部303の外形をより小さくすることができ、吐出部303の吐出孔303aから吐出されるスラリーSの吐出圧を高めて当該スラリーSの吐出速度を速めつつ、スラリーSの吐出速度や吐出量を均一化することができ、モノリス基材Mの上端Ma側に供給されるスラリーSの供給量をモノリス基材M全体に亘ってより均一化することができる。また、中心軸線301Lに対する吐出孔303aが形成された部分の外周面303bの法線方向303aLの傾きをたとえば傾斜面毎に変更することができ、スラリーSの粘度やモノリス基材Mの外径に応じた方向へ吐出孔303aからスラリーSを吐出することができる。
【0097】
[排ガス浄化用触媒の製造装置および製造方法の実施の形態]
次に、
図9を参照して、上記した実施の形態1〜4のスラリー供給ノズルを用いた排ガス浄化用触媒の製造装置と製造方法について概説する。
図9は、本発明の排ガス浄化用触媒の製造装置の実施の形態を模式的に示した図である。なお、
図9では、実施の形態1のスラリー供給ノズルを用いた排ガス浄化用触媒の製造装置を示している。
【0098】
図示する排ガス浄化用触媒の製造装置1000は、主として流路Lが軸方向へ開口するように並列配置されたモノリス基材Mの流路Lの内壁にスラリーSを塗布するコーティング装置100と、モノリス基材Mの流路Lの内壁に塗布されたスラリーSを乾燥および焼成させる焼成装置500と、から構成されている。
【0099】
前記コーティング装置100は、上記するように、モノリス基材Mの上端MaへスラリーSを供給するスラリー供給ノズル16、モノリス基材Mの上端Maへ供給されたスラリーSをモノリス基材Mの流路L内に流入もしくは伸展させるためにモノリス基材Mの下端Mb側から空気を吸引する吸引装置30、などから構成されている。
【0100】
上記する排ガス浄化用触媒の製造装置1000による排ガス浄化用触媒の製造方法を概説すると、まず、ノズル16を用いてその鉛直下方に配置されたモノリス基材Mの上端Ma側にスラリーSを供給する。
【0101】
モノリス基材Mの上端Ma側にスラリーSを供給した後、もしくは、モノリス基材Mの上端Ma側にスラリーSを供給しながら、吸引装置30でモノリス基材Mの下端Mb側から空気を吸引し、モノリス基材Mの上端Ma側に供給されたスラリーSをモノリス基材Mの流路L内に流入もしくは伸展させ、流路Lの内壁をスラリーSで被覆する。
【0102】
モノリス基材Mの流路Lの内壁をスラリーSで被覆した後、モノリス基材Mを不図示の搬送装置で焼成装置500へ搬送し、その焼成装置500でモノリス基材Mの流路Lの内壁を被覆するスラリーSを乾燥させ、焼成させて流路Lの内壁に触媒コート層を形成する。これにより、流路Lの内壁に略均一な厚みを有する触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒を作製することができる。
【0103】
なお、上記する実施の形態では、ノズルの吐出部が平面視で真円形状を有する形態について説明したが、ノズルの吐出部や導入部、拡幅部などの形状はモノリス基材の外形などに応じて適宜変更することができ、たとえばノズルの吐出部は平面視で楕円形状や多角形状などでもよい。また、ノズルの吐出部や導入部、拡幅部は異なる部材から構成し、吐出部や導入部、拡幅部の各部材同士を接合剤やボルト、ビスなどの適宜の接合手段で接続して作製してもよいし、ノズルの吐出部や導入部、拡幅部を一体成形で作製してもよい。
【0104】
また、上記する実施の形態では、ピストンの駆動速度を調整してノズルの内部圧力を調整する形態について説明したが、たとえばノズルの内部空間に整流プレートなどを配設してノズルの内部空間におけるスラリーの流れ方向や流れ速度を調整してもよい。
【0105】
また、上記する実施の形態のスラリー供給ノズルや排ガス浄化用触媒の製造装置および製造方法は、酸化触媒、還元触媒、三元触媒、NO
X吸蔵型触媒などの種々の触媒の製造に利用することができる。また、自動車用エンジン、自動二輪車用エンジン、汎用エンジン等の排ガス浄化用触媒のほか、たとえば、一般産業用の脱臭処理用触媒、一次エネルギ発生のための接触燃焼用触媒、窒化酸化物の脱硝用触媒などの製造にも適用することができる。
【0106】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。