特許第5925119号(P5925119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5925119大豆粉末又は豆乳を含有する瓶詰め炭酸飲料
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  • 特許5925119-大豆粉末又は豆乳を含有する瓶詰め炭酸飲料 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925119
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】大豆粉末又は豆乳を含有する瓶詰め炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   A23L2/00 T
   A23L2/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-511650(P2012-511650)
(86)(22)【出願日】2011年4月18日
(86)【国際出願番号】JP2011059531
(87)【国際公開番号】WO2011132638
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-96368(P2010-96368)
(32)【優先日】2010年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘▲高▼ 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 久
(72)【発明者】
【氏名】赤石 守寿
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−054019(JP,A)
【文献】 特開昭60−047637(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/002883(WO,A1)
【文献】 特開2006−254803(JP,A)
【文献】 特開2006−129877(JP,A)
【文献】 特開2008−029279(JP,A)
【文献】 特開2004−256143(JP,A)
【文献】 特開2001−125488(JP,A)
【文献】 特開2003−026252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
FROSTI(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆粉末及び/又は豆乳を含有し、大豆由来の固形分含量が5〜0重量%である炭酸飲料が、250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶に充填されてなることを特徴とする、瓶詰め炭酸飲料。
【請求項2】
前記炭酸飲料のpHが5以上である、請求項1に記載の瓶詰め炭酸飲料。
【請求項3】
前記炭酸飲料が、更に糖類を含有する、請求項1又は2に記載の瓶詰め炭酸飲料。
【請求項4】
前記炭酸飲料が、炭酸ガスをガスボリューム0.5〜3.5の割合で含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の瓶詰め炭酸飲料。
【請求項5】
前記炭酸飲料が、大豆粉末を含有し、20℃における粘度が1000mPa・s以下である、請求項1乃至4のいずれかに記載の瓶詰め炭酸飲料。
【請求項6】
大豆粉末及び/又は豆乳を含有し、大豆由来の固形分含量が5〜0重量%である炭酸飲料を、250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶に充填することを特徴とする、該炭酸飲料の風味の保存安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料が充填してなる瓶詰め炭酸飲料に関する。より具体的には、本発明は、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料が、長期保存安定性を備えた状態で充填されている、瓶詰め炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆は、畑の肉とも呼ばれており、動物性蛋白質と類似するアミノ酸組成の蛋白質が豊富で、肉や卵に匹敵する良質の蛋白質を含んでいる。また、大豆には、油分(脂質)も豊富に含まれ、その50%以上が、血液中のコレステロールを下げる働きをするリノール酸であり、成人病、特に高血圧の予防に有効であることも分かっている。更に、大豆は、レシチンも含有しており、脳細胞に作用してボケ防止に効果のあることも知られている。更に、大豆には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンE、ビタミンK等のビタミン類、カルシウム、カリウム、食物繊維等の栄養素も含有している。これらの栄養素は、老化防止、疲労回復、便秘予防等にも有効であることが知られている。また、大豆は、緩和な女性ホルモン様作用がある各種イソフラボンを含んでおり、更年期障害、骨粗鬆症等の予防乃至改善にも有効であること報告されている。
【0003】
このように大豆は、様々な有用栄養素を含んでおり、栄養価が高く、しかも栄養バランスのよい非食肉食品素材として注目されており、近年の消費者の健康志向と相まって、大豆を利用した各種食品や飲料の開発に枚挙に暇がない。
【0004】
一方、大豆由来成分(特に大豆タンパク質)は凝集し易い性質があるため、大豆粉末や豆乳を含む飲料の調製には、飲料が凝固しないように、安定性を付与しておくことが肝要である。とりわけ、炭酸飲料に大豆粉末や豆乳を配合した場合には、大豆由来成分が著しく凝集し易くなり、安定性が損なわれる傾向が強くなる。
【0005】
従来、安定性を改善した豆乳含有炭酸飲料として、大豆固形分含量が3%以下、pHが2.5〜4.0に設定して、炭酸ガスがガスボリューム2.5となるように充填する処方が報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1では、大豆由来成分は、天然成分であるが故に安定性確保が高度に要求されるにも拘わらず、上記炭酸飲料を呈味の劣化を伴うことなく安定に長期保存するために、如何なる形式で保存安定性を確保できるかについては一切検討されていない。
【0006】
このように、従来技術では、大豆粉末又は豆乳を含む炭酸飲料の長期保存技術については、一切検討されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−47637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、一般の炭酸飲料は、意匠効果の観点から、ペットボトル、ビン、缶等の容器を適宜選択して充填されているが、意外なことに、大豆粉末又は豆乳を含有する炭酸飲料は、光に対する安定性が低く、従来の一般的な炭酸飲料に採用されているペットボトルやビンに収容すると、保存安定性が損なわれるという知見を得た。更に意外なことに、一般に光に対して不安定化される要因は、紫外線領域の光線を遮断することによって解消されるが、大豆粉末又は豆乳を含有する炭酸飲料は、紫外線領域の光線を遮断する容器(例えば、褐色瓶)に収容しても、保存安定性を確保できないという知見も得た。そのため、大豆粉末又は豆乳を含有する炭酸飲料を流通、販売する上で、保存安定性を確保する技術を確立することが求められている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料を、長期保存安定性を備えた状態で瓶詰めして製品化する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料を、250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶に充填することによって、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料の風味の低下を抑制して長期保存安定性を確保できることを見出した。250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶は、従来の炭酸飲料では採用されていないビン容器であり、極めて斬新な発想の下に、本発明は完成したものである。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の炭酸飲料を提供する。
項1. 大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料が、250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶に充填されてなることを特徴とする、瓶詰め炭酸飲料。
項2. 前記炭酸飲料のpHが5以上である、項1に記載の瓶詰め炭酸飲料。
項3. 前記炭酸飲料に含まれる大豆由来の固形分含量が1〜30重量%である、項1又は2に記載の瓶詰め炭酸飲料。
項4. 前記炭酸飲料が、更に糖類を含有する、項1乃至3のいずれかに記載の瓶詰め炭酸飲料。
項5. 前記炭酸飲料が、炭酸ガスをガスボリューム0.5〜3.5の割合で含む、項1乃至4のいずれかに記載の瓶詰め炭酸飲料。
項6. 前記炭酸飲料が、大豆粉末を含有し、20℃における粘度が1000mPa・s以下である、項1乃至5のいずれかに記載の瓶詰め炭酸飲料。
項7. 大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料を、250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶に充填することを特徴とする、該炭酸飲料の保存安定化方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料を安定に保持した状態で保存することができるので、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料の商業ベースでの実用化に極めて有用である。
【0013】
また、本発明によれば、充填する炭酸飲料中の大豆由来成分の含量を高めても、保存安定性を確保でき、従来技術では実現できていなかった高濃度の大豆由来成分を含む炭酸飲料を商業ベースで提供することも可能になる。
【0014】
更に、本発明の瓶詰め炭酸飲料において、充填する炭酸飲料において、大豆成分として、大豆粉末を使用する場合には、大豆に含まれるほぼ全ての栄養素を含有することになり、その栄養的価値は極めて高くなる。従来、大豆粉末を含む炭酸飲料については、一切報告されておらず、本発明は、世界で初めて、商業ベースでの実用化も可能な大豆粉末を含む炭酸飲料を提供するものであり、近年益々高まっている消費者の健康志向や多様化する消費者の嗜好性にも対応できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例で使用した各種瓶の光透過性を測定した結果を示す図である。
図2】実施例で、各種瓶詰め炭酸飲料の保存安定性を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.瓶詰め炭酸飲料
本発明の瓶詰め炭酸飲料は、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料が、250〜650nmの波長の光透過率が10%以下である瓶に充填されてなることを特徴とするものである。以下、本発明の瓶詰め炭酸飲料について詳述する。
【0017】
本発明において瓶詰めされる炭酸飲料は、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料である。
【0018】
本発明で使用される炭酸飲料に配合される大豆粉末は、大豆に対して加熱処理及び粉砕処理して得られる大豆粉を使用することができ、一般的な大豆飲料に使用可能なものであれば特に制限されない。
【0019】
本発明で使用される炭酸飲料に配される大豆粉末の製造は、例えば次のごとく実施される。
【0020】
まず、原料大豆を、必要に応じて、割豆、破砕豆、虫食豆、他の種子類、異物等を取り除くための精選処理に供する。当該原料大豆は、豆の表面に付着している土埃等を除去するために、水洗等の洗浄処理に供したものであってもよい。また、当該原料大豆としては、常法に従って、適当な脱皮機、補助脱皮機等を用いて脱皮処理したものが使用される。なお、葉の細胞が物理的に損傷されると酵素類が大豆油に作用して青臭みを発現するため、当該脱皮処理では、割れ、破壊等の子葉に対する機械的な損傷を最小限にして皮を分離することが望ましい。
【0021】
次いで、当該原料大豆に対して蒸煮又は煮沸することによって加熱処理を行う。大豆に含まれる全栄養素をできる限り保持しつつ、風味や食感が良好で、しかも大豆臭が抑制された大豆粉末を得るという観点からは、蒸煮による加熱処理を採用することが望ましい。蒸煮による加熱処理は、通常、65〜105℃で30秒〜30分間、原料大豆と水蒸気を接触さることによって行うことができる。また、煮沸による加熱処理は、沸騰水中に原料大豆を浸漬させることによって行うことができる。
【0022】
斯くして加熱処理された加工大豆を粉砕処理に供して、大豆粉末を得る。粉砕処理を容易ならしめるという観点から、粉砕処理に先だって、加熱処理された加工大豆を乾燥処理に供することが望ましい。具体的には、先ず、加熱処理された加工大豆をロールがけにより圧偏してフレーク状とし、次いで乾燥処理に供する方法が好適に例示される。当該乾燥処理は、減圧乾燥、風乾、加熱乾燥等の公知の方法を採用できるが、有用栄養素の損失が少なく、良好な食感や風味を維持させるという観点からは、減圧乾燥が好適である。また、粉砕処理は、当該技術分野において粉末化に使用されている各種粉砕装置を用いて行うことができる。当該粉砕装置の具体例としては、気流粉砕機(エアーグラインダー)が挙げられる。
【0023】
本発明で使用される炭酸飲料に配合される大豆粉末は、その粒子径については、特に制限されず、飲料として風味を損なわない範囲で適宜設定される。
【0024】
また、本発明で使用される炭酸飲料に配合される豆乳は、一般的に使用されている豆乳を使用することができる。豆乳の製造方法は、当該技術分野で公知である。具体的には、豆乳は、脱皮した原料大豆を磨砕し、これを水に加えて湿式粉砕することにより懸濁液(生ご;豆汁)を作り、この懸濁液を必要に応じて加熱処理した後に、固液分離処理によって固形分(オカラ)を除去することによって製造することができる。
【0025】
本発明において瓶詰めされる炭酸飲料には、大豆由来成分として、上記大豆粉末及び豆乳のいずれか一方を使用してもよく、またこれらの双方を組み合わせて使用してもよい。豆乳はオカラを除去して製造されているのに対して、大豆粉末は大豆に含まれる栄養素を実質的に全て含んでおり、更に大豆粉末を使用する場合には、豆乳に比べて、飲み応えがあり青臭さがないため、配合される大豆由来成分として、好ましくは大豆粉末が挙げられる。
【0026】
本発明で使用される炭酸飲料において、大豆粉末及び/又は豆乳の含有量については、特に制限されるものではないが、例えば、大豆粉末及び/又は豆乳の大豆由来の固形分含量が1〜30重量%、好ましくは3〜21重量%、更に好ましくは5〜10重量%、特に好ましくは7〜10重量%となる範囲が例示される。このように、本発明で使用される炭酸飲料では、大豆由来の固形分を高含量で含んでいても、炭酸による爽快な風味を備えさせつつ、大豆由来成分が凝固せずに安定な状態を維持することができる。即ち、本発明で使用される炭酸飲料は、高含量の大豆由来成分を含むことによって、大豆由来成分の風味及び栄養素を存分に生かしながら、炭酸による爽快な風味及び優れた安定性を兼ね備えさせることも可能になっている。なお、本明細書において、大豆由来の固形分含量とは、マイクロ波乾燥式水分・固形分計を用いて測定される大豆由来成分の量である。
【0027】
本発明で使用される炭酸飲料のpHについては特に制限されないが、当該炭酸飲料の保存安定性を一層向上させるために、pHが5以上になるように調整していることが望ましい。このようなpH範囲を充足することによって、大豆由来成分が高濃度で含まれる場合であっても、大豆由来成分を凝固させずに調製することが可能になるという利点も得られる。本発明で使用される炭酸飲料において保存安定性をより顕著に確保するという観点からは、pHが好ましくは5〜7、更に好ましくは6〜7の範囲が例示される。本発明で使用される炭酸飲料において、pHの調整は、食品に適用可能な公知のpH調整剤を使用することにより行われる。一般的には、炭酸飲料に含有される炭酸は酸性物質であるので、本発明の炭酸飲料を上記pH範囲に調整するには、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸三カリウム、水酸化カルシウム、重曹、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、アルギニン等のアルカリ剤を添加すればよい。
【0028】
また、本発明で使用される炭酸飲料には、糖類を配合してもよい。前述するpH条件を充足しつつ、糖類を含むことによって、大豆由来成分による凝固の抑制効果を一層向上させることが可能になる。本発明で使用される炭酸飲料に配合される糖類としては、食品に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、液糖類(例えば、果糖ブドウ糖液糖)、水あめ、カラメル、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、デキストリン、ソルビトール、イソマルツロース、マルチトール、ステビア、羅漢果等が挙げられる。これらの中でも、大豆由来成分による凝固の抑制効果を増強する作用が高い糖類として、ブドウ糖、ショ糖、果糖、液糖類(例えば、果糖ブドウ糖液糖)、水あめ、カラメル、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、デキストリン、ソルビトール、イソマルツロース、マルチトールが例示される。
【0029】
本発明で使用される炭酸飲料に糖類を配合する場合、その含有量としては、特に制限されるものではないが、例えば、0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%となる範囲が例示される。
【0030】
本発明で使用される炭酸飲料の粘度については、特に制限されるものではなく、炭酸飲料として適した粘度範囲に適宜設定すればよいが、一般的には20℃における粘度が1000mPa・s以下、好ましくは1〜800mPa・s、更に好ましくは1〜500mPa・sが例示される。大豆由来成分として大豆粉末を使用する場合には、上記pH範囲内であり且つ上記粘度範囲を充足させることによって、大豆由来成分が凝固するのを長期間安定に抑制させて、炭酸飲料に一層優れた安定性を備えさせることが可能になる。粘度の調整は、当該技術分野で公知であり、例えば、粘度に影響を与える配合成分(例えば、大豆粉末、豆乳、糖類、増粘剤等)の配合量を適宜調整することによって行われる。なお、本発明において、上記粘度の値は、B型粘度計(ロータNo.19、回転速度6.0rpm、測定温度20℃)での測定値である。
【0031】
本発明で使用される炭酸飲料における炭酸ガス量については、当該炭酸飲料に付与させる炭酸風味(炭酸による爽快感等)を考慮して適宜設定されるが、例えば、ガスボリューム0.5〜3.5、好ましくはガスボリューム1〜3.5、更に好ましくはガスボリューム1.5〜3.5が例示される。このようなガスボリュームを満たすことによって、炭酸による爽快感等が実感可能で、炭酸による良好な風味を実現することができる。なお、ここでいうガスボリュームは、飲料中の炭酸ガス量を表す単位を示し、標準状態(1気圧、20℃)において、飲料の体積に対して飲料に溶けている炭酸ガスの体積の比である。
【0032】
本発明で使用される炭酸飲料には、一般的な飲料と同様に、酸味料、甘味料、保存料、着色料、着香料、安定剤、酸化防止剤、乳化剤、強化剤、増粘剤等の各種添加剤を適当量配合することもできる。
【0033】
本発明で使用される炭酸飲料は、水に配合成分を所定量加え、炭酸ガスを充填することによって調製される。
【0034】
本発明で使用される炭酸飲料において、大豆由来成分として、大豆粉末を使用する場合には、飲料中で大豆粉末の分散性を高めるために、大豆粉末及び必要に応じて他の成分を水に添加した液を均質化処理に供することが望ましい。このように均質化処理を行うことによって、一層優れた食感、特に滑らかさを有する炭酸飲料を得ることができる。均質化処理は、一般的なホモジナイザーを利用することにより行うことができるが、具体的には、ガウリン(GAULIN)社製高圧ホモジナイザー(LAB40)を用いて、約200-1000kgf/cm2、好ましくは約300-800kgf/cm2の条件で実施される。
【0035】
本発明で使用される炭酸飲料において、炭酸ガスの充填は、プレミックス法やポストミックス法等の公知の方法で行うことができる。また、本発明の飲料の劣化を抑制するために、炭酸ガスの充填に先だって、溶液を脱気処理することにより溶液に含まれる酸素を除去してもよい。
【0036】
本発明において、上記炭酸飲料は、250〜650nmの波長の光透過率が10%以下である瓶に充填される。本発明では、このように特定の波長領域の光線を遮断することによって、上記炭酸飲料の長期保存安定性を確保することが可能になる。
【0037】
本発明に使用される瓶は、250〜650nmの波長の光透過率が10%以下を充足する限り特に制限されないが、上記炭酸飲料の保存安定性を一層向上させるために、当該光透過率が好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下であることが望ましい。
【0038】
ここで、本発明が規定する「250〜650nmの波長の光線の透過率」とは、250〜650nmの全波長領域において充足する光透過率を示し、換言すれば、本発明において規定する光透過率の数値範囲は、250〜650nmの全波長領域において満たしていることを意味する。なお、光透過率は分光光度計を用いて測定される。
【0039】
上記光透過率を充足する瓶としては、具体的には、上記光透過率を備えた着色瓶(例えば、黒色の瓶)(以下、非被覆瓶と表記することもある)が挙げられ、また、上記光透過率を備えていない透明又は着色瓶の外側を、所望の光遮断性を備えた被覆フィルム(例えばシュリンクフィルム)等で覆った瓶(以下、被覆瓶と表記することもある)を使用することもできる。
【0040】
また、本発明において上記被覆瓶を使用する場合、1枚の被覆フィルムを使用してもよく、また2枚以上の被覆フィルムを組み合わせて使用してもよい。使用する被覆フィルムの枚数は、使用する被覆フィルムの光透過性や被覆対象となる瓶の光透過性を考慮して適宜設定される。上記被覆瓶の好適な一例としては、茶褐色瓶を、黒色の印刷面2層と白色印刷面1層が積層されているシュリンクフィルム1枚で覆った形態の瓶が例示される。
【0041】
また、本発明において上記被覆瓶を使用する場合、被覆フィルムは、瓶の全面を覆っている必要は必ずしもなく、光照射を受け難い瓶の底部については被覆されていなくてもよい。即ち、本発明において、上記被覆瓶を使用する場合には、瓶の底部以外が、所望の光遮断性を備えた被覆フィルムで覆われていればよい。
【0042】
本発明の瓶詰め炭酸飲料は、上記炭酸飲料を、公知の方法で、上記光透過性を備える瓶に充填することによって製造される。
【0043】
斯くして製造され得た瓶詰め炭酸飲料は、経時的な呈味の劣化や凝集物の発生が抑制されており、常温でも長期保存安定性に優れているので、商業ベースでの実用化に有用である。
【0044】
2.大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料の保存安定化方法
前述するように、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料を、250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶に充填することによって、当該炭酸飲料の保存安定化を実現することができる。
【0045】
従って、本発明は、更に、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料を、250〜650nmの波長の光線の透過率が10%以下である瓶に充填することを特徴とする、該炭酸飲料の保存安定化方法をも提供する。
【0046】
本保存安定化方法において、使用される炭酸飲料や充填する瓶等については、前記「1.瓶詰め炭酸飲料」に記載のものと同様である。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0048】
実施例 大豆粉末含有炭酸飲料の製造、及び安定性の評価
1.大豆粉末含有炭酸飲料の製造
表1に示す組成の大豆粉末含有炭酸飲料を製造した。なお、本大豆粉末含有炭酸飲料に配合した大豆粉末は、半割大豆を蒸煮処理した後に、乾燥及び粉砕処理に供することによって調製した。下記処方1〜3の大豆粉末含有炭酸飲料は、いずれも製造直後に、凝固物の発生等は認められなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
#1粘度は、B型粘度計(東機産業社製、TVB-10形)を用いて、ロータNo.19、回転速度6.0rpm、測定温度20℃の条件で測定した。
【0051】
2.瓶詰め
上記で得られた大豆粉末含有炭酸飲料を表2に示す各種ガラス瓶(容量(100mL)に無菌状態で充填した後に、キャップすることにより、瓶詰め炭酸飲料を製造した。瓶2及び瓶4のシュリンクフィルムは、キャップをした後に、そのキャップ部分を覆う状態で被覆させた。瓶1及び瓶3〜瓶5については、予め、分光光度計(製品名「日立分光光度計」、型式「U−4100」)を用いて光透過性を測定した。測定結果を図1に示す。
【0052】
図1に示される結果から、黒色ガラス瓶である瓶1は、250〜650nmの波長の光を遮断することが分かる。また、茶褐色瓶である瓶3は、550〜650nmの光を約40%透過するが、この瓶3を下記の表2に示されるシュリンクフィルムで覆った瓶4は、250〜650nmの波長の光を遮断することが分かる。これらの結果から、黒色ガラス瓶を当該シュリンクフィルムで覆った瓶2も、250〜650nmの波長の光を遮断することは明らかである。
【0053】
【表2】
【0054】
3.保存安定性の評価
上記で製造した瓶詰め炭酸飲料を10℃で14000ルクスの光暴露条件で1ヶ月間保存を行い、保存開始時、1週間保存後、2週間保存後、及び1ヶ月保存後に、3名の熟練したパネラーにより呈味の判定を行った。なお、呈味は、下記の判定基準に従って評価した。
【0055】
呈味の判定基準
下記の◎、○、×を基準点として、3名のパネラーによって呈味を判定した。
◎:製造直後と同程度の風味が感じられ、大豆に由来する風味と炭酸に由来する爽快感のバランスが非常によい。
○:製造直後に比べて、若干風味が変化しているが、大豆に由来する風味と炭酸に由来する爽快感のバランスが良く、良好な風味が感じられる。
×:製造直後に比べて、風味が損なわれていることが知覚される。
【0056】
なお、風味は、まったり感、重たさ、粉っぽさ、とろみ感、ミルク感、キレ、豆臭さ、青臭み、えぐ味、苦み、生臭さ、甘さ、香気、トゲトゲしさ、TOPノート、溶媒臭、果汁感、完熟感、ボディー感、穀物臭、渋み、油脂臭、金属味、薬味、酸味、発酵臭等を総合的に評価した。
【0057】
4.結果
処方1の炭酸飲料を瓶1〜瓶5に充填した瓶詰め炭酸飲料の保存安定性の結果を図2に示す。この結果から、250〜650nmの波長の光を遮断できる瓶1、瓶2、及び瓶5に、充填された炭酸飲料は、経時的な風味の劣化が抑制され、良好な状態を維持していた。一方、瓶3は、紫外線領域の波長を遮断しているにも拘わらず、経時的な風味の劣化が生じ、商業ベースでの実用化には不向きであることが判明した。
【0058】
また、処方2及び3の炭酸飲料を瓶1〜瓶5に充填した瓶詰め炭酸飲料の保存安定性についても、上記処方1の短鎖飲料と同様の結果であった。
【0059】
以上の結果から、大豆粉末及び/又は豆乳を含有する炭酸飲料の保存安定性を確保するには、充填する瓶として、250〜650nmの波長の光透過性を低減させた瓶を選択することが重要であることが明らかとなった。
図1
図2