(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【背景技術】
【0003】
湿分硬化性組成物は、水分の存在下で硬化し、多くの産業において有用である接着剤、封止剤及びコーティングなどの架橋された物質を形成する。硬化させるための水分は典型的には雰囲気から又は組成物が適用された基材から得られるが、組成物に添加することもできる(例えば、厚みのある硬化又は限定的な硬化を可能にするために)。
【0004】
湿分硬化性組成物は通常、水分の存在下で反応して硬化した(すなわち、架橋された)物質を形成できる基(例えば、アルコキシシリル又はアシルオキシシリル部分)を有するポリマーを含む。ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスルフィド、これらのブロックコポリマー又はフッ素化誘導体などの非常に様々なポリマーを水分硬化性にすることができ、特定のポリマーは意図される用途に基づいて選択される。例えば、ポリシロキサン又はフッ素化ポリエーテルは、多くの場合、感圧性接着剤との使用に好適な剥離コーティングをもたらすために選択される。
【0005】
アルコキシシリル又はアシルオキシシリル官能基を含む湿分硬化性組成物は、典型的には、2つの反応において硬化する。第一の反応では、アルコキシシリル又はアシルオキシシリル基は、水分及び触媒の存在下で加水分解して、ヒドロキシシリル基を有するシラノール化合物を形成する。第二の反応では、ヒドロキシシリル基は、触媒の存在下で他のヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基又はアシルオキシシリル基と縮合して、−Si−O−Si−結合を形成する。これらの2つの反応は、シラノール化合物の生成と本質的に同時に生じる。これらの反応によく使用される触媒としては、ブレンステッド酸及びルイス酸が挙げられる。単一の物質が両方の反応を触媒作用する場合もある。
【0006】
好ましくは、加水分解及び縮合反応は、湿分硬化性組成物が例えば、基材に対して適用された後、素早く進行する。同時に、しかしながら、反応は、例えば、加工中又は保存中といったように、硬化させるべき時点よりも早期に生じてはならない。
【0007】
多くの場合これらの特性間の良好な均衡を得るのは困難であり、迅速な反応性と保存安定性は互いに対立する特性である。例えば、テトラアルキルチタン酸塩エステルなどの高活性触媒は、湿分硬化反応を促進させるが、同時に、供給槽、コーティング設備並びに他の加工及び操作装置においてゲル化を生じさせてしまうリスクを取らずに物質を加工するのが困難になる恐れがある。水分量の制御は非常に重要であり、水分が極端に少なすぎると硬化速度が遅くなる恐れがあり、あるいは硬化が不完全になる恐れがあり、水分が極端に多量である場合には硬化させるべき時点よりも早期に硬化を引き起こされる恐れがある。
【0008】
加工及び保存を難しくせずに、許容可能な硬化速度を有する湿分硬化性組成物を提供するために様々な手法が用いられてきた。例えば、使用の直前に二部が混合される二部系(一方の部は官能性ポリマーを含み、他方の部は触媒を含む)が開発されてきた。この手法は小規模用途に有用であるものの、大規模製造への効率性に劣っており、二部を混合しなければならないことにより引き起こされる遅延は望ましくないものであった。更に、コーティング操作は、組成物がポット内で硬化する前に迅速に完了させなければならないが、表面積の大きい基材又は大容量の組成物で作業を行う場合にこれは困難であった。
【0009】
湿分硬化反応を開始させる酸化合物を遊離させるのに十分に加熱されるまでは不活性であるアンモニウム塩触媒が開発されている。酸の遊離はアミンも生じるが、これは蒸発により除去されなければならない。更に、触媒を活性化するために使用される熱は、組成物が適用された感熱性基材を損傷させる恐れがある。
【0010】
他の物質(例えば、スルホニウム塩及びヨードニウム塩などのオニウム塩)は、照射(例えば、紫外線による照射)時にその場で酸種を生成させるのに使用されてきた。このような物質は、熱活性化を必要としないことから、感熱性基材を損傷させずに(及び除去を必要とされる望ましくない種を生成せずに)使用できるようにはなるが、これらの物質は比較的高価であり、水分制御を必要とし、一部の基材上では硬化阻害を呈した。
【0011】
ジラウリン酸ジブチルスズなどの従来のスズ触媒は、早期にゲル化させずに加工及びコーティングできる安定な硬化性組成物をもたらすことができる。典型的な湿分硬化系に加えて、スズ触媒を用いることにより、ヒドロシリル基及びヒドロキシシリル基の形態で二重反応性シラン官能基を含む硬化性組成物(脱水硬化系)を硬化させることができることが発見されている。これらの組成物は、感圧性接着剤及び成形型剥離用途に広く使用されてきたが、場合により、貯蔵寿命が比較的短いという欠点があった。更に、スズ触媒の使用は、一般に触媒として採用される有機スズ化合物が現在毒物学的に好ましくないと考えられるため、特に問題となっている。
【0012】
硬化の促進は、室温の加硫シリコーン組成物中でスズ触媒と組み合わせた置換グアニジン、ジオルガノスルホキシド、イミダゾール、アミジン及びアミンなどの化合物を使用することにより達成されてきた。アミジンなどのアミン化合物はまた、湿分硬化性シリル官能性有機ポリマーを硬化させるためのスズ触媒不在下での使用も提案されてきたが、強力な塩基性アミン(水溶液中で少なくとも13.4のpHを呈するもの)についてのみアルコキシシリル官能性ポリマーの実用的硬化性及び基材に対する許容可能な接着を達成した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の「発明を実施するための形態」では、種々の組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。同様に、このような数値範囲は、範囲内に含まれるすべての数を含むことを意味する(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「及び/又は」は、1つ若しくはすべての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同一又は異なる条件下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを目的とするものではない。
「含む(comprises)」という用語及びその変化形は、それらの用語が説明及び請求項に出現する箇所において、限定的な意味を有するものではない。
本明細書で使用するところの「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1以上の」は、互換可能に使用される。
上記「課題を解決するための手段」の節は、すべての実施形態又は本発明のすべての実施を説明しようとするものではない。以下の「発明を実施するための形態」が実施形態をより具体的に例示する。「発明を実施するための形態」にわたり、複数の実施例の一覧を通してガイダンスが提供されており、それら実施例は様々な組み合わせで用いられ得る。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0023】
定義
本特許出願で使用されるとき、
「連結型ヘテロ原子(catenatedheteroatom)」とは、(例えば、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖又は炭素−ヘテロ原子−ヘテロ原子−炭素鎖を形成するために)炭素鎖中で1個以上の炭素原子と置き換わる炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
「硬化」とは、(例えば、触媒を通した)架橋ポリマーネットワークへの変換を意味する。
「フルオロ−」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」、又は「フルオロカーボン」の場合のような基若しくは部分に関して)又は「フッ素化された」とは、炭素に結合した水素原子が少なくとも1つはあるように、部分フッ素化されていることを意味し、
「フルオロケミカル」とはフッ素化又はペルフルオロ化を意味し、
「ヘテロ有機」とは、少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、少なくとも1個のカテネイトヘテロ原子)を含有する有機基又は部分(例えば、アルキル又はアルキレン基)を意味する。
「ヒドロシリル」は、水素原子に直接結合したケイ素原子を含む一価部分又は基を指す(例えば、ヒドロシリル部分は、式−Si(R)
3−p(H)
pを有することができ、式中、pは1、2又は3の整数であり、Rは加水分解性又は非加水分解性基である(好ましくはアルキル又はアリールなどの非加水分解性である))。
「ヒドロキシシリル」は、ヒドロキシル基に直接結合したケイ素原子を含む一価部分又は基を指す(例えば、ヒドロキシシリル部分は、式−Si(R)
3−p(OH)
pを有することができ、式中、pは1、2又は3の整数であり、Rは加水分解性又は非加水分解性基である(好ましくはアルキル又はアリールなどの非加水分解性である))。
「イソシアナト」とは、式−NCOの一価の基又は部分を意味する。
「メルカプト」とは、式−SHの一価の基又は部分を意味する。
「オリゴマー」とは、少なくとも2個の繰り返し単位を含み、かつ分子鎖同士で絡まるような分子量未満の分子量を有する分子を意味し、このような分子は、ポリマーとは異なり、1個の繰り返し単位を除去又は付加しただけでも特性が著しく変化する。
「オキシ」とは、式−O−の二価の基又は部分を意味する。
「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」又は「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロカーボン」の場合のような、基又は部分に関して)若しくは「ペルフルオロ化」とは、完全にフッ素化されたことを意味し、その結果、特記しない限り、フッ素と置換できる炭素に結合した水素原子がないことを意味し、
「ポリシラザン」は、複数のSi−N結合を含む少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指す。
「ポリシロキサザン」は、Si−N結合及びSi−O結合の両方を含む少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指し、簡潔にするために、本願では、「ポリシラザン」は「ポリシロキサザン」及び「ポリ尿素シラザン」も含む。並びに、
「ポリ尿素シラザン」は、複数のSi−N結合を含み、かつ2つの窒素原子のそれぞれに結合している少なくとも1つのカルボニル基を有する少なくとも1つの直鎖、分枝鎖、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指す。
【0024】
成分(a)
本発明の硬化性組成物の成分(a)としての使用に好適な化合物としては、少なくとも1つのヒドロシリル部分(すなわち、ケイ素原子に直接結合した水素原子を含む一価部分)を含む反応性シラン官能基を含む無機化合物及び有機化合物(好ましくは無機化合物)が挙げられる。これらの化合物は、小分子、オリゴマー、ポリマー又はこれらの組み合わせであり得る。好ましくは、これらの化合物はポリマーであり、直鎖、分枝鎖又は環状であり得る。有用なポリマーとしては、ランダム、交互、ブロック又はグラフト構造又はこれらの組み合わせを有するものが挙げられる。
【0025】
成分(a)の分子量及び反応性シラン官能基(ヒドロシリル部分の数及び性質など)は、例えば、成分(b)の反応性シラン官能基の分子量並びに硬化性及び/又は硬化した組成物に所望される特性に応じ、非常に様々であり得る。好ましくは、成分(a)又は成分(b)のいずれかは、少なくとも3つの平均反応性シラン官能基を有し、この二成分(a)及び(b)のもう一方は、架橋された網目構造の形成を可能にするために少なくとも2つの平均反応性シラン官能基を有する。
【0026】
有用な化合物の部類としては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる。
A−[G−Si(R)
3−p−(H)
p]
m (I)
式中、Aは、アルキル(好ましくは1〜約30個の炭素原子を有し、より好ましくは約12〜約20個の炭素原子を有する)、フルオロアルキル(好ましくは1〜約12個の炭素原子を有し、より好ましくは約6〜約10個の炭素原子を有する)、ペルフルオロアルキル(好ましくは1〜約12個の炭素原子を有し、より好ましくは約6〜約10個の炭素原子を有する)、アリール、フルオロアリール、ペルフルオロアリール、シクロアルキル、フルオロシクロアルキル、ペルフルオロシクロアルキル及びこれらの組み合わせから選択される、m価の非ポリマーラジカル(任意選択で少なくとも1個のヘテロ原子を含有する)であるか、あるいは、オリゴマー、又はポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリホスファゼン、フッ素化ポリシロキサン、フッ素化若しくは過フッ素化ポリアクリレート、フッ素化若しくは過フッ素化ポリエーテル、フッ素化若しくは過フッ素化ポリエステル、ポリシラザン、フッ素化ポリシラザン並びにこれらの誘導体及び組み合わせから選択されるポリマーを含むm価のポリマーラジカルであり、各Gは独立して二価結合基であり、各Rは独立してアルキル(好ましくは1〜約4個の炭素原子を有する)、アシル(好ましくは1〜約3個の炭素原子を有する)、シクロアルキル、アリール(好ましくは、フェニル)、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヒドロキシル、トリオルガノシロキシ(−OSi(R’)
3、式中、R’は有機又はヘテロ有機基であり、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する基である)及びこれらの組み合わせから選択され、各pは独立して1、2又は3の整数であり、mは1以上の整数(好ましくは1〜約50、より好ましくは1〜約5)である。各二価結合基Gは、好ましくは独立して共有結合、オキシ、ジオルガノシロキシ、ジヘテロオルガノシロキシ、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン及びこれらの組み合わせから選択される(より好ましくは、共有結合、オキシ、アルキレン、アリーレン及びこれらの組み合わせから選択される)。(A、G及び/又はR中の)ヘテロ原子としては、酸素、イオウ、窒素、リン及びこれらの組み合わせ(好ましくは酸素、イオウ及びこれらの組み合わせ、より好ましくは酸素)を挙げることができる。R及び/Gは、少なくとも2個の炭素原子によりケイ素から分離されるのであれば、フッ素を含有することができる。
【0027】
好ましくは、Aはポリマーラジカルである(より好ましくは、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、フッ素化ポリシロキサン、フッ素化若しくは過フッ素化ポリアクリレート、フッ素化若しくは過フッ素化ポリオレフィン、フッ素化若しくは過フッ素化ポリエーテル、フッ素化若しくは過フッ素化ポリエステル及びこれらの組み合わせから選択され、更により好ましくはポリシロキサン、ポリエーテル、ポリアクリレート、フッ素化ポリシロキサン、フッ素化若しくは過フッ素化ポリエーテル、フッ素化若しくは過フッ素化ポリアクリレート及びこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくはポリシロキサン、フッ素化ポリシロキサンこれらの組み合わせから選択される)。Rは好ましくはアルキル(より好ましくはメチル)であり、pは好ましくは1に等しい。
【0028】
成分(a)として有用な化合物は、本発明の硬化性組成物中で単独で又は様々な化合物の混合物の形態で使用することができる。これらの化合物は、既知の合成方法により調整することができ、一部(例えば、シリコーン水素化物)は市販されている。
【0029】
代表的な合成方法では、少なくとも1つの不飽和(例えば、ビニル)基を有する化合物と、メルカプト基と反応性シラン官能基の両方を有する化合物と、の反応(例えば、フリーラジカル付加)により、反応性シラン官能基を無機又は有機化合物(例えば、ポリマー)に導入することができる。少なくとも1つのイソシアナト基を有する無機又は有機化合物もまた、活性水素含有基と反応性シラン官能基の両方を有する化合物と反応させることができる。ポリマー物質中で、反応性シラン官能基は、このような方法により、成分(b)の性質並びに硬化性及び/又は硬化した組成物に所望される特性に依存して、ポリマー主鎖の末端にて、側鎖の末端にて及び/又は主鎖若しくは側鎖に沿って1つ以上の非末端位置にて、導入することができる。
【0030】
有用なヒドロシリル官能性化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる(式中、Meはメチルである):
HMe
2SiOSiMe
2H、
HMe
2SiC
2H
4SiMe
2H、
HMe
2SiC
6H
4SiMe
2H、
H(Me
2SiO)
nSiMe
2H(例えば、400〜500、1000、6000、28,000又は62,700の重量平均分子量(MW)を有する)、
Me
3SiO(Me
2SiO)
m(MeHSiO)
nSiMe
3(例えば、−MeHSiO−単位の百分率が0.5〜55であり、及び、900〜65,000のMWを有する)、
Me
3SiO(MeHSiO)
nSiMe
3(例えば、1400〜2400のMWを有する)、
HMe
2SiC
3H
6OCH
2R
fCH
2OC
3H
6SiMe
2H(例えば、式中、R
fはC
nF
2n(式中、nは1〜12の整数である)であり、あるいは、R
fは(C
nF
2nO)C
nF
2n(式中、nは1+2、2又は3の整数である)であり、このような物質は、例えば、白金触媒を用い過剰なSiMe
2H
2をオレフィンと縮合することにより、又は、SiMe
2HClをオレフィンと縮合し、塩化物を水素化トリブチルスズで還元することにより、製造することができる)、
HMe
2SiOSiMe
2C
3H
6OCH
2R
fCH
2OC
3H
6SiMe
2OSiMe
2H(例えば、式中、R
fはC
nF
2n(式中、nは1〜12の整数である)であり、あるいは、R
fは(C
nF
2nO)C
nF
2n(式中、nは1+2、2又は3の整数である)であり、このような物質は、オレフィンを、まず過剰なSiMe
2HClにより縮合し、水で加水分解して、成分(b)のジオールを形成し(下記に記載)、その後、SiMe
2Cl
2と縮合させ、還元することにより、製造することができる)、
HMe
2SiOSiMe
2C
2H
4O(C
2H
4O)
nC
2H
4SiMe
2OSiMe
2H(例えば、式中、nは1〜約50の整数である)、
C
2H
5C[(C
2H
4O)
nC
3H
6SiMe
2H]
3(例えば、式中、nは1〜約10の整数である)、
HMe
2SiOSiMe
2C
nH
2nSiMe
2OSiMe
2H(例えば、式中、nは2〜約40の整数である)、
及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせ。
【0031】
好ましいヒドロシリル官能性化合物としては、以下のものが挙げられる(式中、Meはメチルである):
Me
3SiO(Me
2SiO)
m(MeHSiO)
nSiMe
3(例えば、−MeHSiO−単位の百分率が0.5〜55であり、及び、900〜65,000のMWを有する)、
Me
3SiO(MeHSiO)
nSiMe
3(例えば、1400〜2400のMWを有する)、
及びこれらの組み合わせ、特に好ましい化合物Me
3SiOSiHMeOSiHMeOSiMe
3が挙げられる。
【0032】
成分(b)
本発明の硬化性組成物の成分(b)としての使用に好適な化合物としては、少なくとも1つのヒドロキシシリル部分(すなわち、ケイ素原子に直接結合したヒドロキシル基を含む一価部分)を含む反応性シラン官能基を含む無機化合物及び有機化合物(好ましくは無機化合物)が挙げられる。これらの化合物は、小分子、オリゴマー、ポリマー又はこれらの組み合わせであり得る。好ましくは、これらの化合物はポリマーであり、直鎖、分枝鎖又は環状であり得る。有用なポリマーとしては、ランダム、交互、ブロック又はグラフト構造又はこれらの組み合わせを有するものが挙げられる。分子量及び反応性シラン官能基(ヒドロキシシリル部分の数及び性質など)は、例えば、成分(a)の反応性シラン官能基の分子量並びに硬化性及び/又は硬化した組成物に所望される特性に依存して、非常に様々であり得る。
【0033】
成分(a)(少なくとも1つのヒドロシリル部分を含む化合物)が有機ポリマーである場合には、成分(b)(少なくとも1つのヒドロキシシリル部分を含む化合物)は、成分(a)とは異なり、成分(a)の加水分解によりその場で(すなわち、成分(a)及び(c)の存在下で)生じはしない。成分(a)が有機ポリマー以外の化合物である場合には、単一化合物(ヒドロシリル部分とヒドロキシ部分の両方を含み、任意選択でその場で生じる)は、必要に応じて、成分(a)及び成分(b)の両方として機能させることができる。
【0034】
有用な化合物の部類としては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる。
A−[G−Si(R)
3−p−(OH)
p]
m (II)
式中、A、G、p及びmは、式(I)について上記で定義した通りであり、各R(式(I)について上記で定義したように、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含有することができる)は独立してアルキル(好ましくは1〜約4個の炭素原子を有する)、アシル(好ましくは1〜約3個の炭素原子を有する)、シクロアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、水素、トリオルガノシロキシ(−OSi(R’)
3、式中、R’は有機又はヘテロ有機基であり、好ましくは1〜約20個の炭素原子を有する基である)、及びこれらの組み合わせから選択される。Rは好ましくはアルキルである(より好ましくはメチル)。
【0035】
成分(b)として有用な化合物は、本発明の硬化性組成物中で単独で又は様々な化合物の混合物の形態で使用することができる。これらの化合物は、既知の合成方法により調製することができ、一部(例えば、シリコーンジオール)は市販されている。成分(a)について上記で説明したものと類似した合成方法を利用することができる。反応性シラン官能性ポリマー(例えば、反応性シラン官能性ポリ(メタ)アクリレート)もまた、反応性シラン官能性モノマーを反応性コポリマーと共重合させることにより、調製することができる。
【0036】
有用なヒドロキシシリル官能性化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる(式中、Meはメチルである):
HO(SiMe
2O)
nH(例えば、400〜139,000の重量平均分子量(MW)を有する)、
HOSiMe
2O(SiMe(C
2H
4CF
3)O)
mSiMe
2OH(例えば、550〜1200の分子量を有する)、
ポリセスキオキサン樹脂RSiO
1.5、
HOSiMe
2C
3H
6OCH
2R
fCH
2OC
3H
6SiMe
2OH(例えば、式中、R
fはC
nF
2n(式中、nは1〜12の整数である)であり、あるいは、R
fは(C
nF
2nO)C
nF
2n(式中、nは1+2、2又は3の整数である)である)、
HOSiMe
2C
2H
4O(C
2H
4O)
nC
2H
4SiMe
2OH、
HOMe
2SiC
2H
4SiMe
2OH、
HOMe
2SiC
6H
4SiMe
2OH、
及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせ。
【0037】
成分(c)
本発明の硬化性組成物の成分(c)としての使用に好適な光により活性化可能な組成物としては、放射線(好ましくは、紫外線、可視放射線又はこれらの組み合わせ)に曝露すると、アミジン、グアニジン(ビグアニドなどの置換グアニジンを含む)、ホスファゼン、プロアザホスファトラン(Verkade塩基としても既知)及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの塩基を生じる組成物(既知の又は今後開発される化合物又は混合物)が挙げられる。自己プロトン化可能な形態の塩基(例えば、アルギニンなどのアミノ酸)を生じる光により活性化可能な組成物は、通常、自己中和されている塩基の形態ほど好適ではなく、したがって除外される。光により活性化可能な好ましい組成物としては、放射線に曝露すると、アミジン、グアニジン及びこれらの組み合わせ(より好ましくはアミジン及びこれらの組み合わせ、最も好ましくは環式アミジン及びこれらの組み合わせ)から選択される少なくとも1つの塩基を生じるものが挙げられる。
【0038】
列挙されている構造部類の塩基は、上記のように成分(a)と(b)の間の反応を有効に触媒することができることが発見されている。これらの塩基(及びこれらの光により活性化可能な前駆体)は、硬化性組成物中で単独で(個別に)又は混合物(異なる構造部類を含む)の形態で使用することができる。
【0039】
光により活性化可能な有用な組成物としては、放射線に曝露すると、以下の一般式によって表すことができるアミジンを生じるものが挙げられる。
【化1】
式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン又はイオウを含む)及びこれらの組み合わせから選択され、R1、R2、R3及びR4のうちの任意の2つ以上は、一緒に結合して、環構造(好ましくは五員環、六員環又は七員環、より好ましくは六員環又は七員環)を形成することができる。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜約10個の炭素原子、最も好ましくは1〜約6個の炭素原子)を有する。好ましくはR4は水素ではない。
【0040】
少なくとも1つの環構造を含むアミジン(すなわち、環式アミジン)を生じることができる光により活性化可能な組成物が、一般に好ましい。2つの環構造を含む環式アミジン(すなわち、二環式アミジン)を生じることができる光により活性化可能な組成物がより好ましい。
【0041】
光により活性化可能な有用な組成物の代表例としては、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−n−プロピル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−イソプロピル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−n−プロピル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−イソプロピル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせなどのアミジン化合物を生じることができるものが挙げられる。光により活性化可能な好ましい組成物としては、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)及びこれらの組み合わせなどのアミジン化合物を生じることができるものが挙げられ、DBU、DBN及びこれらの組み合わせを生じることができるものがより好ましく、DBUを生じることができるものが最も好ましい。
【0042】
光により活性化可能な有用な組成物としてはまた、放射線に曝露すると、以下の一般式によって表すことができるグアニジンを生じるものが挙げられる。
【化2】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン又はイオウを含む)及びこれらの組み合わせから選択され、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの任意の2つ以上は、一緒に結合して、環構造(好ましくは五員環、六員環又は七員環、より好ましくは五員環又は六員環、最も好ましくは六員環)を形成することができる。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜約10個の炭素原子、最も好ましくは1〜約6個の炭素原子)を有する。好ましくはR5は水素ではない。
【0043】
少なくとも1つの環構造を含むグアニジン(すなわち、環式グアニジン)を生じることができる光により活性化可能な組成物が、一般に好ましい。2つの環構造を含む環式グアニジン(すなわち、二環式グアニジン)を生じることができる光により活性化可能な組成物がより好ましい。
【0044】
有用な光により活性化可能な化合物の代表例としては、1−メチルグアニジン、1−n−ブチルグアニジン、1,1−ジメチルグアニジン、1,1−ジエチルグアニジン、1,1,2−トリメチルグアニジン、1,2,3−トリメチルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1,1,2,3,3−ペンタメチルグアニジン、2−エチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチル−2−n−プロピルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソプロピルグアニジン、2−n−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、TBD(すなわち、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、MTBD(すなわち、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、7−エチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−n−プロピル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−イソプロピル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−n−ブチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−イソブチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−tert−ブチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−シクロヘキシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−n−オクチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−2−エチルヘキシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−デシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、ビグアニド、1−メチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−(2−エチルヘキシル)ビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−n−ブチル−N2−エチルビグアニド、1,1’−エチレンビスグアニド、1−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]ビグアニド、1−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ビグアニド、N’,N”−ジヘキシル−3,12−ジイミノ−2,4,11,13−テトラアザテトラデカンジアミン及びこれらに類するもの並びにこれらの組み合わせなどのグアニジン化合物を生じることができるものが挙げられる。光により活性化可能な好ましい組成物としては、TBD(すなわち、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、MTBD(すなわち、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン及びこれらの組み合わせなどのグアニジン化合物を生じることができるものが挙げられる。光により活性化可能な最も好ましい組成物としては、TBD、MTBD及びこれらの組み合わせを生じることができるものが挙げられる。
【0045】
所望される場合には、JIS Z 8802に従って測定したときに13.4未満のpH値を呈するアミジン及びグアニジン(例えば、1,3−ジフェニルグアニジン、DBU、DBN又はこれらの組み合わせ、好ましくはDBU、DBN又はこれらの組み合わせ)を生じることができる光により活性化可能な組成物を利用することができる。成分(a)が有機ポリマーである場合には、例えば、このような低pHアミジン及びグアニジンを選択することができ、これらは有効に機能することができる。水溶液のpHを判定するための参照方法JIS Z 8802は、重量比10:3のイソプロピルアルコールと水の混合溶媒100gに5ミリモルの塩基を添加することにより、塩基の水溶液をまず調製することにより、行われる。次に、得られた溶液のpHを23℃にてpHメーター(例えば、Horiba Seisakusho Model F−22のpHメーター)を用いて測定する。
【0046】
光により活性化可能な有用な組成物としてはまた、放射線に曝露すると、以下の一般式により表すことができるホスファゼンを生じるものが更に挙げられる。
【化3】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン又はイオウを含む)及びこれらの組み合わせから選択され、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうちの任意の2つ以上は、一緒に結合して、環構造(好ましくは五員環、六員環又は七員環、より好ましくは五員環又は六員環、最も好ましくは六員環)を形成することができる。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜約10個の炭素原子、最も好ましくは1〜約6個の炭素原子)を有する。好ましくはR7は水素ではない。
【0047】
光により活性化可能な有用な組成物の代表例としては、以下のものなどのホスファゼンを生じることができるものが挙げられる:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせ。光により活性化可能な好ましい組成物としては、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン、ホスファゼン塩基P
1−t−Bu−トリス(テトラメチレン)、ホスファゼン塩基P
4−t−Bu及びこれらの組み合わせなどのホスファゼンを生じることができるものが挙げられる。
【0048】
光により活性化可能な有用な組成物としてはまた、放射線に曝露すると、以下の一般式によって表すことができるプロアザホスファトラン塩基(Verkade塩基)を生じるものが更に挙げられる。
【化4】
式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン又はイオウを含む)及びこれらの組み合わせから選択される(水素はあまり好ましくない)。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜約10個の炭素原子、最も好ましくは1〜約6個の炭素原子)を有する。
【0049】
光により活性化可能な有用な組成物の代表例としては、以下のものなどのプロアザホスファトラン化合物を生じることができるものが挙げられる:
【表2】
及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせ。光により活性化可能な好ましい組成物としては、2,8,9−トリイソプロピル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカンを生じることができるものが挙げられる。
【0050】
上記塩基の生成における使用に好適な、光により活性化可能な組成物は既知である。例えば、(例えば、高温下で又は赤外線に曝露して)熱により活性化するとアミジン又はグアニジン塩基を生じることができる塩が、米国特許第5,219,958号(Noomen et al.)に記載されており、この塩の記載は参照により本明細書に組み込まれる。照射するとDBUを生じる第四級アンモニウム塩(すなわち、8−(4’−ベンゾイルフェニルメチル)−8−アザニア−1−アザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンベンゾホルメート)が、K.Suyama et al.,Journal of Photopolymer Science and Technology 19(1),81(2006)により記載されており、この塩及びその合成の記載は参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第6,124,371号(Stanssens et al.)は、照射(例えば、紫外線、電子ビーム、赤外線又はレーザー照射)するとアミジン又はグアニジン塩基を遊離させることができる構造式Z−A(式中、Zは、感光性基であり、Aは強塩基であり、ZはAに共有結合されている)の感光性化合物を記載しており、これらの化合物の記載もまた参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
米国特許第6,277,986号(Hall−Goule et al.)は、光照射(可視光又は紫外光)によりアミジン塩基を遊離できるα−アミノケトン(200〜650ナノメートル(nm)の波長範囲の光を吸収可能である芳香族又はヘテロ芳香族ラジカルを含む)を記載しており、これらのケトンの記載もまた参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第6,551,761号(Hall−Goule et al.)は、例えば、α−アミジニウムケトンの、テトラアリールアルキルボレート及びトリアリールアルキルボレートなどの光により活性化可能な窒素含有塩を記載している。光により活性化可能な塩は、可視光線又は紫外線に曝露するとアミジン、グアニジン又はホスファゼン(及び、明らかに延長によりプロアザホスファトラン)塩基を放出することができ、これらの光により活性化可能な塩の記載は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
本発明の硬化性組成物での使用に好ましい、光により活性化可能な組成物としては、米国特許第7,538,104号(Baudin et al.)に記載のものが挙げられ、これらの組成物(及びこれらの調製方法)の記載は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの組成物は、少なくとも1つの窒素原子上で少なくとも1つのアラルキルラジカルにより置換される少なくとも1つの1,3−ジアミン化合物を含む。アラルキルラジカルは、好ましくは、200nm〜650nmの波長範囲の光を吸収する少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族ラジカルを含む。光の吸収は、アミジン又はグアニジンの生成を引き起こす光脱離を生じる。
【0053】
このような光により活性化可能な組成物の好ましい部類は、以下の式により表される少なくとも1つの1,3−ジアミン化合物を含む。
N(R
7)(R
6)−CH(R
5)−N(R
4)−C(R
1)(R
2)(R
3) (VII)
式中、R
1は、200nm〜650nmの波長範囲の光を吸収し、未置換であるか、又は、C
1〜C
18アルキル、C
2〜C
18アルケニル、C
2〜C
18アルキニル、C
1〜C
18ハロアルキル、−NO
2、−NR
10R
11、−CN、−OR
12、−SR
12、−C(O)R
13、−C(O)OR
14、ハロゲン、式N(R
7)(R
6)−CH(R
5)−N(R
4)−C(R
2)(R
3)−(式中、R
2〜R
7は式VIIについて定義された通りである)の基及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの一価の基により1回以上置換され、上記吸収時に光脱離を引き起こしてアミジン又はグアニジンを生じる、芳香族ラジカル、ヘテロ芳香族ラジカル及びこれらの組み合わせから選択され、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、C
1〜C
18アルキル、フェニル、置換フェニル(すなわち、C
1〜C
18アルキル、−CN、−OR
12、−SR
12、ハロゲン、C
1〜C
18ハロアルキル及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの一価の基により1回以上置換される)及びこれらの組み合わせから選択され、R
5は、C
1〜C
18アルキル、−NR
8R
9及びこれらの組み合わせから選択され、R
4、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11はそれぞれ独立して、水素、C
1〜C
18アルキル及びこれらの組み合わせから選択され、あるいは、R
4とR
6は一緒に、未置換であるか又はC
1〜C
4アルキルラジカル及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の一価の基により置換されたC
2〜C
12アルキレン架橋を形成し、あるいは、R
5とR
7は一緒に、R
4とR
6とは独立して、未置換であるか又はC
1〜C
4アルキルラジカル及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の一価の基により置換されたC
2〜C
12アルキレン架橋を形成し、あるいは、R
5が−NR
8R
9である場合には、R
7とR
9は一緒に、未置換であるか又はC
1〜C
4アルキルラジカル及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の一価の基により置換されたC
2〜C
12アルキレン架橋を形成し、R
12とR
13はそれぞれ独立して、水素、C
1〜C
19アルキル及びこれらの組み合わせであり、R
14は、C
1〜C
19アルキル及びこれらの組み合わせから選択される。
【0054】
アルキル及びハロアルキル基は、直鎖又は分枝鎖であることができ、好ましくは、1〜約12個の炭素原子(より好ましくは1〜約6個の炭素原子)を含有することができる。ハロゲン原子は、好ましくは塩素、フッ素及び/又は臭素(より好ましくは塩素及び/又はフッ素)である。アルケニル基は、直鎖又は分枝鎖であることができ、好ましくは、2〜約12個の炭素原子(より好ましくは2〜約6個の炭素原子)を含有することができる。アルキニル基は、直鎖又は分枝鎖であることができ、好ましくは、2〜約12個の炭素原子(より好ましくは2〜約6個の炭素原子)を含有することができる。
【0055】
好ましい式VIIの1,3−ジアミン化合物としては、式中、R
1が、置換及び未置換の、フェニル、ナフチル、フェナンスリル、アンスリル、ピレニル、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアントレニル、アントラキノニル、ジベンゾフリル、クロメニル、キサンテニル、チオキサンチル、フェノキサチイニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジル、イソキサゾリル、フラザニル、テルフェニル、スチルベニル、フルオレニル、フェノキサジニル及びこれらの組み合わせから選択され、これらのラジカルが、未置換であるか、あるいはC
1〜C
18アルキル、C
2〜C
18アルケニル、C
2〜C
18アルキニル、C
1〜C
18ハロアルキル、−NO
2、−NR
10R
11、−CN、−OR
12、−SR
12、−C(O)R
13、−C(O)OR
14、ハロゲン、式N(R
7)(R
6)−CH(R
5)−N(R
4)−C(R
2)(R
3)−(式中、R
2〜R
7及びR
10〜R
14は式VIIについて定義された通りである)のラジカル又はこれらの組み合わせにより1回以上置換され、あるいは、R
1が、置換又は未置換のビフェニリルラジカルであり、ここで、各フェニル基が独立して、C
1〜C
18アルキル、C
2〜C
18アルケニル、−OH、−CN、−OR
10、−SR
10、ハロゲン、式N(R
7)(R
6)−CH(R
5)−N(R
4)−C(R
2)(R
3)−(式中、R
2〜R
7及びR
10〜R
14は式VIIについて定義された通りである)のラジカル及びこれらの組み合わせから選択される0〜3個(好ましくは0又は1個)の置換基で置換される、ものが挙げられる。
【0056】
より好ましくは、R
1は、置換及び未置換の、フェニル、ナフチル、アンスリル、アントラキノン−2−イル、ビフェニリル、ピレニル、チオキサンチル、チアントレニル、フェノチアジル及びこれらの組み合わせから選択される(更により好ましくは、R
1は、置換及び未置換の、フェニル、アンスリル、ナフチル、アントラキノン−2−イル、ビフェニリル及びこれらの組み合わせから選択され、更に一層好ましくは、R
1は、4−メチルフェニル、ビフェニリル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−シアノフェニル、3−シアノフェニル、2−クロロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、4−エテニルフェニル、4−メチルチオフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、2−ニトロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、ナフチル、アンスリル、アントラキノン−2−イル及びこれらの組み合わせから選択され、あるいは、式N(R
7)(R
6)−CH(R
5)−N(R
4)−C(R
2)(R
3)−のラジカル(式中、R
2〜R
7は式VIIについて定義された通りである)で置換された上記ラジカルから選択され、最も好ましくは、R
1は、フェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2,4−ジメトキシフェニル及びこれらの組み合わせから選択される)。
【0057】
好ましくは、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、C
1〜C
6アルキル及びこれらの組み合わせから選択され(最も好ましくはどちらも水素であり)、R
4とR
6は一緒に、未置換であるか又はC
1〜C
4アルキルラジカル及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の基により置換されたC
2〜C
6アルキレン(好ましくはC
3アルキレン)架橋を形成し、並びに/あるいは、R
5とR
7は一緒に、未置換であるか又はC
1〜C
4アルキルラジカル及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の基により置換されたC
2〜C
6アルキレン(好ましくはC
3〜C
5アルキレン)架橋を形成し、あるいは、R
5が−NR
8R
9である(これは、グアニジン塩基がアミジン塩基ほどには好ましくないために、あまり好ましくない)場合には、R
9とR
7は一緒に、未置換であるか又はC
1〜C
4アルキルラジカル及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の基により置換されたC
2〜C
6アルキレン架橋を形成する。
【0058】
光により活性化可能な有用な組成物の代表例としては、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(アントラセン−9−イル−メチル)−1,5−ジアザ[4.3.0]ノナン、5−(2’−ニトロベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(4’−シアノベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(3’−シアノベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(アントラキノン−2−イル−メチル)−1,5−ジアザ[4.3.0]ノナン、5−(2’−クロロベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(4’−メチルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(2’,4’,6’−トリメチルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(4’−エテニルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(3’−トリメチルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(2’,3’−ジクロロベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(ナフタ−2−イル−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,4−ビス(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナニルメチル)ベンゼン、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、8−ベンジル−6−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、9−ベンジル−1,9−ジアザビシクロ[6.4.0]ドデカン、10−ベンジル−8−メチル−1,10−ジアザビシクロ[7.4.0]トリデカン、11−ベンジル−1,11−ジアザビシクロ[8.4.0]テトラデカン、8−(2’−クロロベンジル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、8−(2’,6’−ジクロロベンジル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、4−(ジアザビシクロ[4.3.0]ノナニルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(ジアザビシクロ[4.3.0]ノナニルメチル)−11’−ビフェニル、5−ベンジル−2−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−ベンジル−7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含むものが挙げられる。
【0059】
光により活性化可能な組成物の好ましい群としては、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(アントラセン−9−イル−メチル)−1,5−ジアザ[4.3.0]ノナン、5−(2’−ニトロベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(4’−シアノベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(3’−シアノベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(アントラキノン−2−イル−メチル)−1,5−ジアザ[4.3.0]ノナン、5−(2’−クロロベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(4’−メチルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(2’,4’,6’−トリメチルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(4’−エテニルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(3’−トリメチルベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(2’,3’−ジクロロベンジル)−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−(ナフタ−2−イル−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,4−ビス(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナニルメチル)ベンゼン、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、8−ベンジル−6−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、8−(2’−クロロベンジル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、8−(2’,6’−ジクロロベンジル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、4−(ジアザビシクロ[4.3.0]ノナニルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(ジアザビシクロ[4.3.0]ノナニルメチル)−11’−ビフェニル、5−ベンジル−2−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、5−ベンジル−7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含むものが挙げられる。
【0060】
光により活性化可能な組成物の第二の好ましい群としては、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、8−ベンジル−6−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、9−ベンジル−1,9−ジアザビシクロ[6.4.0]ドデカン、10−ベンジル−8−メチル−1,10−ジアザビシクロ[7.4.0]トリデカン、11−ベンジル−1,11−ジアザビシクロ[8.4.0]テトラデカン及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含むものが挙げられる。8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、8−ベンジル−6−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含む光により活性化可能な組成物が最も好ましい。
【0061】
光により活性化可能な組成物は、任意選択で(しかしながら、好ましくは)少なくとも1つの光増感剤(例えば、使用される放射線源の発光スペクトルに重複し又は密接に一致し、光により活性化可能な組成物の他の成分(1つ又は複数)へのエネルギー移動又は電子移動により生じる量子収率を改善できる吸収スペクトルを有する化合物)を更に含む。有用な光増感剤としては、芳香族ケトン(例えば、置換又は未置換のベンゾフェノン、置換又は未置換のチオキサントン、置換又は未置換のアントラキノン及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせ)、染料(例えば、オキサジン、アクリジン、フェナジン、ローダミン及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせ)及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい光増感剤としては、芳香族ケトン及びこれらの組み合わせ(より好ましくは、置換又は未置換のベンゾフェノン、置換又は未置換のチオキサントン及びこれらの組み合わせ、最も好ましくは置換又は未置換のベンゾフェノン及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。光増感剤の量は、例えば、その性質、光により活性化可能な組成物の他の成分(1つ又は複数)及び具体的な硬化条件に依存して、非常に様々であり得る。例えば、約0.1重量パーセント〜約0.5重量パーセントの範囲の量が、一部の用途に有用であり得る。
【0062】
硬化性組成物の調製
本発明の硬化性組成物は、(好ましくは撹拌又はかき混ぜながら)本質的に任意の順序で成分(a)、(b)及び(c)を組み合わせることにより調製することができる。好ましくは、成分(a)と(b)をまず組み合わせ、次いで成分(c)を添加する。この組成物は、活性化波長の放射線を実質的に遮断した状態で比較的貯蔵安定的な一部系(三成分すべてを含む)として維持することができる。この組成物は、(任意選択である)溶媒を含む又は含まないこの組成物のコーティング又は他の適用に先立って、例えば、数日又は数週間(比較的長い貯蔵寿命)までの期間にわたって、このような条件下で安定であることができる。
【0063】
成分(a)と(b)の相対量は、これらの性質並びに硬化性及び/又は硬化した組成物に所望される特性に依存して、非常に様々であり得る。化学量論は反応性シラン官能基のモル比は1:1(例えば、ヒドロキシシリル部分のモル当たり1モルのヒドロシリル)であると説明しているが、実践上はヒドロシリル官能基が不足又は過剰していることが有用であり得る(例えば、これは、硬化阻害剤が存在する場合に有用であり得る)。最大で約8:1又は約13:1又は更には約35:1もの(ヒドロシリル部分とヒドロキシシリル部分の)モル比が有用であり得る。成分(c)(光により活性化可能な組成物(1つ又は複数))は、硬化性組成物中に、成分(a)、(b)及び(c)の合計重量に基づいて、例えば、約0.1〜約10重量パーセント(好ましくは約0.1〜約5重量パーセント、より好ましくは約0.5〜約2重量パーセント)の範囲の量で存在し得る。
【0064】
所望される場合には、硬化性組成物には、保存安定性、混合及び/又はコーティングを補助するために、特に成分(a)及び(b)がオリゴマー又はポリマーである場合、少なくとも1つの溶媒又は希釈剤を含ませることができる。本発明の硬化性組成物で使用するのに好適な溶媒としては、芳香族溶媒(例えば、キシレン、トルエン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン及びこれらに類するもの並びにこれらの混合物)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン及びこれらに類するもの並びにこれらの混合物)、アルキルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル及びこれらに類するもの並びにこれらの混合物)、アルカン(例えば、ヘプタン、イソパラフィン系炭化水素及びこれらに類するもの並びにこれらの混合物)、エーテル(例えば、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)及びこれらに類するもの並びにこれらの混合物)及びこれらに類するもの、並びにこれらの混合物などの非プロトン性溶媒が挙げられる。好ましい溶媒としては、芳香族溶媒、アルカン、ケトン及びこれらの混合物が挙げられ、キシレン、ヘプタン、メチルエチルケトン及びこれらの混合物がより好ましく、ヘプタン、メチルエチルケトン及びこれらの混合物が最も好ましい。
【0065】
微量の任意成分を添加して、特定の硬化方法又は用途に対する特定の望ましい特性を硬化性組成物に付与することができる。有用な組成物は、例えば、触媒(所望される場合には共触媒として添加できるスズ触媒などの従来の縮合触媒を含む)、反応開始剤、界面活性剤、安定剤、熱阻害剤、酸化防止剤、難燃剤、接着促進剤、粘着付与剤、可塑剤、剥離変性剤、染料、色素、充填剤及びこれらに類するもの並びにこれらの混合物などの従来の添加剤を含み得る。
【0066】
硬化性組成物の使用及び硬化
本発明の硬化性組成物は、様々な異なる用途に使用することができる。例えば、この組成物は、様々な形状をした物品を形成するために成形型用途で使用することができる(任意選択で少なくとも1つの充填剤と組み合わせて)。組成物(1つ又は複数)を、封止剤、接着剤、剥離コーティング、表面処理剤、ゴム、ハードコート、ソフトコート及びこれらに類するものとしても使用することができる。フッ素化表面処理として使用するとき、ある程度の疎水性及び/又は疎油性を(例えば、表面を保護するため、又は洗浄容易性を高めるために)様々な基材に付与することができる。
【0067】
硬化性組成物の成分(a)及び(b)の両方が二官能性である場合には、塩基触媒の適用は、鎖伸長反応(例えば、シリコーンについては:H(Me
2SiO)
nSiMe
2H+HO(SiMe
2O)
nH→−[O(SiMe
2O)
2n]
x−)をもたらすことができる。比較的少量の多官能性成分(例えば、Me
3SiO(MeHSiO)
nSiMe
3)が硬化性組成物中に含まれる場合、得られる軽度に分枝したポリマーは、エラストマーであることができ、MQ樹脂(1つ又は複数)と化合させて、感圧性接着剤を製造することができる。多官能性成分を大量に使用することで、架橋されたコーティングを生成することができる。ポリペルフルオロエーテルは、最小限の極性連結基で鎖伸長することができ、任意選択で上記のように架橋することができる(例えば、HMe
2SiOSiMe
2C
3H
6OCH
2C
2F
4(C
3F
6O)
10C
2F
4CH
2OC
3H
6SiMe
2OSiMe
2H+H(SiMe
2O)
10H→−[Si Me
2C
3H
6OCH
2R
fCH
2OC
3H
6(SiMe
2O)
13]−
x)。
【0068】
本発明の硬化性組成物(又は別の方法としてその成分)は、様々な異なるコーティングをされた物品を生成するように、本質的に任意の既知の又は今後開発される適用方法により、基材(例えば、シート、繊維又は成形された物体)の少なくとも1つの主表面の少なくとも一部分に適用することができる。本組成物は、有用なコーティングを生成できる本質的に任意のやり方で(及び本質的に任意の厚さで)適用することができる。
【0069】
有用な適用方法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ワイピング、ロールコーティング及びこれらに類するもの、並びにこれらの組み合わせなどのコーティング方法が挙げられる。本組成物は、未希釈形態、又は溶媒溶液(例えば、アルキルエステル、ケトン、アルカン、芳香族及びこれらに類するもの、並びに、これらの混合物などの溶媒)の形態で適用することができる。溶媒を使用する場合、本組成物の有用な濃度は、本組成物の粘度、利用される適用方法、基材の性質、及び所望の特性に依存して、広範囲にわたって変動してもよい(例えば、約1〜約90重量%)。
【0070】
コーティングされた基材の調製における使用に好適な基材としては、固体であり、好ましくは使用される任意のコーティング又は適用溶媒に対して実質的に不活性である物質を含む少なくとも1つの表面を有するものが挙げられる。好ましくは、この硬化性組成物は、化学的相互作用、物理的相互作用、又はこれらの組み合わせ(より好ましくは、これらの組み合わせ)を通して基材表面に接着することができる。
【0071】
好適な基材は、単一材料又は異なる材料の組み合わせを含んでもよく、事実上均質であっても不均質であってもよい。有用な不均質基材としては、物理的支持材(例えば、ポリマーフィルム)上に存在する材料(例えば、金属又はプライマー)のコーティングを含む、コーティングされた基材が挙げられる。
【0072】
有用な基材としては、木材、ガラス、鉱物(例えば、コンクリートなどの人工セラミックス並びに大理石及びこれらに類するものなどの天然石の両方)、ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート及びこれらに類するもの)、金属(例えば、銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛及びこれらに類するもの)、金属合金、金属化合物(例えば、金属酸化物及びこれらに類するもの)、皮革、羊皮紙、紙、クラフト紙、ポリオレフィンでコーティングされた紙、織物、塗面、及びこれらの組み合わせを含むものが挙げられる。好ましい基材としては、ガラス、鉱物、木材、金属、金属合金、金属化合物、ポリマー、及びこれらの組み合わせ(より好ましくは、金属、金属合金、金属化合物、ポリマー、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。好ましくは、基材は、(例えば、約30ダイン/センチメートル以上の表面エネルギーを有する)極性基材である。
【0073】
硬化性組成物は、この組成物の少なくとも一部を光により活性化可能な組成物を活性化するのに適切な波長の放射線に曝露することにより、硬化させることができる。好ましい硬化条件は、具体的な用途並びにそれに付随する要件及び条件によって変化する。水分は存在し得るが、通常は必須ではない。
【0074】
好ましい放射線源及び曝露時間は、例えば、光により活性化可能な組成物の性質及び量に依存して、様々である。紫外線、可視光線及び/又は赤外線源(例えば、約200nm〜約650又は700nm又は最大で約20,000nmの範囲の波長、好ましくは紫外線、可視光線又はこれらの組み合わせ)が有用であり得る。好適な放射線としては、太陽光及び人工供給源からの光が挙げられ、点光源及びフラットラジエーター(flat radiator)の両方を包含する。
【0075】
有用な放射線源の代表例としては、炭素アーク灯、キセノンアーク灯、所望される場合に金属ハロゲン化物にドープした(金属ハロゲン灯)、中圧、高圧及び低圧水銀灯、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、超光化学作用蛍光管、蛍光ランプ、白熱アルゴンランプ、電子閃光灯、キセノン閃光灯、写真投光ランプ、電子ビーム、シンクロトロン又はレーザープラズマにより作り出されるX線、レーザー光源(例えば、エキシマレーザー);及びこれらの組み合わせが挙げられる。放射線源とコーティングされた基材の間の距離は、具体的な用途並びに放射線源のタイプ及び/又は出力に依存して、非常に様々であり得る(例えば、約2cm〜約150cmの範囲の距離が有用であり得る)。
【0076】
硬化は、通常、室温(例えば、約20〜23℃)から約150℃まで又はそれ以上の範囲の温度(好ましくは約20℃〜約125℃、より好ましくは約20℃〜約100℃、最も好ましくは約20℃〜約80℃の温度)にて、照射及び/又はそれに続くコーティングされた基材の加工を行うことにより、作用させることができる。硬化時間は、数秒以下(例えば、室温にて、適量の触媒及び光曝露で)〜数分又は数時間(例えば、少量の触媒及び少量の光の条件下)の範囲であり得る。
【実施例】
【0077】
以下の実施例によって本発明の目的及び利点を更に説明するが、これらの実施例において記載される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不要に限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲に限定することを意味するものではない。
【0078】
材料
特に記載のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分におけるすべての部、百分率、及び比率などは、重量による。特に記載のない限り、すべての化学物質は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)などの化学物質供給業者から入手されており、あるいは、入手可能である。
【0079】
塩基1〜10及び比較塩基C−1〜C−12の予備的スクリーニング
キシレン中の反応性ヒドロキシシリル官能性シロキサンポリマー(1つ又は複数)(ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを含むと言われる)とヒドロシリル官能性ポリシロキサン架橋剤(ポリ(メチル)(水素)シロキサンを含むと言われる)のブレンド(商品名Syl−Off(商標)292でDow Corning Corporation(Midland,MI)から入手されたプレミアム剥離コーティング組成物)の30重量パーセント固形分分散体のサンプルをヘプタンで10重量パーセント固形分に希釈した。塩基1〜10及び比較塩基C−1〜C−12の各々のために、0.02gの塩基(下記の表1に列挙、すべての塩基はAldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した)を5gのSyl−Off(商標)292溶液(ヘプタン中10重量パーセント)に添加し、その後、混合した。得られた混合物を、4番ロッドを用いて、厚さ50マイクロメートルのポリエステルテレフタレート(PET)フィルム(Mitsubishi Polyester Film(Greer,SC)から商品名Hostaphan(商標)3SABで入手、以降3SAB PETフィルムと呼ぶ。シリコーンコーティングの接着を改善するために一方の面が化学的に処理されているか又は下塗りされている)の下塗り面上にコーティングした。得られたコーティングを終えた3SAB PETサンプルを室温(約23℃)にて取っておき、これらの硬化状態(粘着度)をモニターした。コーティングされたサンプルは、コーティングが5分以内に固化した場合に、硬化したとみなした。コーティングされたサンプルは、コーティングが固化せずに室温にて少なくとも24時間にわたって粘着性を維持した場合に、硬化しなかったとみなした。塩基スクリーニングの結果を以下の表1に示す。
【0080】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0081】
(実施例1)
34.0g(0.2mol)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンと200mLのトルエンの混合物を34.2g(0.2mol)のベンジルブロミドと混合した。不溶性油が生じ、その後、10分かけて温度を57℃に上げると白色固体に変化した。4時間後、この固体を濾過し、乾燥させたところ、62.5gの8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン(DBUの8−ベンジル塩、水に可溶)を得た。NaBH
4溶液(1.58g、5.1mmol、4.4MのNaBH
4の14M NaOH溶液、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)を10mLの水で希釈した。次に、この希釈溶液に15mLのt−ブチルメチルエーテル(t−BuOMe)を添加し、得られた混合物を磁気撹拌し、3℃に冷却した。冷却された混合物に、上記のように調製したDBUの8−ベンジル塩3.23gを添加した。2時間後、得られた低温混合物を相分離し、得られた水層をt−BuOMeで抽出し、得られたt−BuOMe溶液を組み合わせ、乾燥させ、剥離したところ、0.86gの生成物(光潜在性触媒混合物)を生じた。この生成物のガス−液体クロマトグラフィー(GLC)分析は、この生成物が、39パーセントの8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカン(熱伝導度検出器によるGLC面積レスポンス、ガスクロマトグラフィー/質量分析装置(GC/MS)分析により同定)と、13パーセントのN−3−ベンジルアミノプロピルアゼピン(GC/MS及び核磁気共鳴(NMR)分析により同定)と、48パーセントのN−(3−ベンジルアミノプロピル)アゼピン−2−オンと考えられるもの(262のGC/MS質量)と、を含有したことを示した。
【0082】
9gのSyl−Off(商標)292剥離コーティング組成物と、0.45gの上記のように調製した光潜在性触媒混合物(39パーセントの8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカンを含有)と、16.34gのヘプタンと、4.1gのメチルエチルケトン(MEK)と、0.11gのベンゾフェノンと、を計量して、120mLガラス製広口びんに入れた。ガラス製広口びんを内容物が均質になるまで振盪した。得られた均質な混合物を、厚さ50マイクロメートルの3SAB PETフィルムの下塗り面上にコーティングした。
【0083】
コーティングされたフィルムを下地板に貼り付け、次に、センチメートル当たり200ワットの水銀灯(Hバルブ)を取り付けた紫外線(UV)処理チャンバー(Model MC−6RQN、Fusion UV Systems,Inc.(Gaithersburg,Maryland)から入手可能)を毎分12メートルの速度で2回通過させた。この灯をコーティングされたフィルムの約15cm上に配置した。UV処理チャンバーに窒素を充填し、酸素濃度を下げた。UV処理チャンバーに入れる前にはフィルム上のコーティングは硬化せず、指でするとすり減った。UV処理チャンバーの第1回通過後、コーティングはほとんど硬化したが、それでもすり減った。UV処理チャンバーの第2回通過後、コーティングは硬化し、指の押圧でもすり減らなかった。
【0084】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含まれる参照された記述内容は、その全体が、それぞれが個々に組み込まれているかのように、参照により組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。