(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体電解質体および前記固体電解質体に設けられた一対の電極を有する少なくとも一つ以上のセルを備えるガス検出素子と、電源装置から電源電圧が印加されて発熱し、前記ガス検出素子を加熱して活性化させるヒータとを備えるガスセンサの前記ヒータへの通電を制御するためのガスセンサのヒータ制御方法において、
前記ヒータは16Vより高い電源電圧を有する電源装置に接続され、前記ヒータへの電源電圧の印加を通電または非通電の状態に切り換え可能なスイッチング手段を用いて、30Hz以上のPWM周波数で前記ヒータへの通電をPWM制御するにあたり、
前記ヒータに印加される実効値が、常温からガス検知可能となる温度までの時間が15秒未満となる電圧値であり、且つ16V未満となる電圧値となるように、100%未満のduty比であって、前記ヒータの温度変化が0.1秒当たり25℃未満となる前記duty比を前記スイッチング手段に設定して前記PWM制御を行うことを特徴とするガスセンサのヒータ制御方法。
固体電解質体および前記固体電解質体に設けられた一対の電極を有する少なくとも一つ以上のセルを備えるガス検出素子と、電源装置から電源電圧が印加されて発熱し、前記ガス検出素子を加熱して活性化させるヒータとを備えるガスセンサの前記ヒータへの通電を制御するためのガスセンサのヒータ制御装置であって、
前記ヒータは16Vより高い電源電圧を有する電源装置に接続され、前記ヒータへの電源電圧の印加を通電または非通電の状態に切り換え可能なスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を30Hz以上のPWM周波数で駆動し、前記ヒータへの通電をPWM制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記ヒータに印加される実効値が、常温からガス検知可能となる温度までの時間が15秒未満となる電圧値であり、且つ16V未満となる電圧値となるように、100%未満のduty比であって、前記ヒータの温度変化が0.1秒当たり25℃未満となる前記duty比を前記スイッチング手段に設定して前記PWM制御を行うことを特徴とするガスセンサのヒータ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電源電圧が従来よりも高い車両(例えば、16Vを超える電源電圧を有する車両)にガスセンサを用いたいという要望がある。この場合に、PWM制御によってヒータに印加する実効電圧が、従来の実効電圧と同様になるように、電源電圧に合わせたduty比を設定して通電したところ、検出素子にクラックを生ずる虞があることが分かった。発明者らによる検討の結果、PWM制御の1周期におけるONタイム(通電期間)が従来よりも短くなったとしても、ONタイム中にヒータに印加される電圧(以下、「印加電圧」ともいう。)が従来よりも高くなったことから、ONタイム中のヒータの温度上昇が従来よりも急峻になってしまうことがわかった。これに対し、ONタイム中のヒータの温度上昇を低減するために、ONタイムが短くなるようにduty比を下げると、ヒータに印加される実効電圧が低くなるので、ヒータの温度上昇カーブが従来よりも緩やかになってしまい、検出素子の活性化に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ヒータに印加する電源電圧が従来よりも高くとも、加熱による検出素子にかかる負荷を抑制しつつ、検出素子の早期活性化を図ることができるガスセンサのヒータ制御方法およびヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、固体電解質体および前記固体電解質体に設けられた一対の電極を有する少なくとも一つ以上のセルを備えるガス検出素子と、電源装置から電源電圧が印加されて発熱し、前記ガス検出素子を加熱して活性化させるヒータとを備えるガスセンサの前記ヒータへの通電を制御するためのガスセンサのヒータ制御方法において、前記ヒータは16Vより高い電源電圧を有する電源装置に接続され、前記ヒータへの電源電圧の印加を通電または非通電の状態に切り換え可能なスイッチング手段を用いて、30Hz以上のPWM周波数で前記ヒータへの通電をPWM制御するにあたり、前記ヒータに印加される実効値が、
常温からガス検知可能となる温度までの時間が15秒未満となる電圧値であり、且つ16V未満となる電圧値となるように、100%未満のduty比であって、前記ヒータの温度変化が0.1秒当たり25℃未満となる前記duty比を前記スイッチング手段に設定して前記PWM制御を行うガスセンサのヒータ制御方法が提供される。
【0008】
第1態様に係るガスセンサのヒータ制御方法によれば、PWM周波数を30Hz以上に設定している。これにより、1周期あたりのONタイムを短くでき、16Vよりも高い電源電圧をヒータに印加しても、ONタイム中のヒータの温度上昇幅を低く抑えることができる。よって、30Hz以上のPWM周波数で、ヒータの温度変化が0.1秒当たり25℃未満となるduty比に設定してPWM制御を行えば、検出素子にかかる負荷を抑制できる。その上、ONタイムを短くしたとしても、ヒータに印加される電圧の実効値は維持できるため、検出素子の早期活性化を図ることができる
。
【0009】
本発明の第2態様によれば、固体電解質体および前記固体電解質体に設けられた一対の電極を有する少なくとも一つ以上のセルを備えるガス検出素子と、電源装置から電源電圧が印加されて発熱し、前記ガス検出素子を加熱して活性化させるヒータとを備えるガスセンサの前記ヒータへの通電を制御するためのガスセンサのヒータ制御装置であって、前記ヒータは16Vより高い電源電圧を有する電源装置に接続され、前記ヒータへの電源電圧の印加を通電または非通電の状態に切り換え可能なスイッチング手段と、前記スイッチング手段を30Hz以上のPWM周波数で駆動し、前記ヒータへの通電をPWM制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ヒータに印加される実効値が、
常温からガス検知可能となる温度までの時間が15秒未満となる電圧値であり、且つ16V未満となる電圧値となるように、100%未満のduty比であって、前記ヒータの温度変化が0.1秒当たり25℃未満となる前記duty比を前記スイッチング手段に設定して前記PWM制御を行うガスセンサのヒータ制御装置が提供される。
【0010】
第2態様に係るガスセンサのヒータ制御装置は、制御手段がスイッチング手段を駆動するPWM周波数を30Hz以上に設定している。これにより、1周期あたりのONタイムを短くでき、16Vよりも高い電源電圧をヒータに印加しても、ONタイム中のヒータの温度上昇幅を低く抑えることができる。よって、30Hz以上のPWM周波数で、ヒータの温度変化が0.1秒当たり25℃未満となるduty比に設定してPWM制御を行えば、検出素子にかかる負荷を抑制できる。その上、ONタイムを短くしたとしても、ヒータに印加される電圧の実効値は維持できるため、検出素子の早期活性化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化したガスセンサのヒータ制御方法およびヒータ制御装置の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、
図1を参照し、ヒータ制御装置の一例として、全領域空燃比センサ2の駆動を制御するセンサ制御装置1を挙げ、その電気的な構成について説明する。
【0013】
図1に示す、センサ制御装置1は、車両に搭載される電子制御ユニット(ECU)であり、全領域空燃比センサ2と電気的に接続する。本実施の形態におけるガスセンサは、エンジンから排出される排気ガスに含まれる酸素濃度に応じて出力値(検出信号の値)がリニアに変化する、いわゆる全領域空燃比センサ2を、その一例とする。なお、全領域空燃比センサ2については公知のものを使用しているため、その構造等の詳細については説明を省略し、概略的な構成について、以下に説明する。
【0014】
全領域空燃比センサ2は、図示外のハウジング内に、細長で長尺な板状をなすセンサ素子5を保持した構造を有する。全領域空燃比センサ2からは、このセンサ素子5が出力する信号を取り出すための信号線が引き出されており、全領域空燃比センサ2とは離れた位置に取り付けられるセンサ制御装置1と電気的に接続されている。
【0015】
センサ素子5は、公知のように、排気ガス中の酸素濃度を検出するためのガス検出素子6と、ガス検出素子6を加熱するためのヒータ素子7とが一体となった素子である。ガス検出素子6は、ジルコニアを主体とし酸素イオン伝導性を有する固体電解質体の両面にPtを主体とする電極を形成した2種類のセル(Vsセル61、Ipセル62)を内蔵する。ガス検出素子6は、上記のVsセル61およびIpセル62を積層しつつ排気ガスを導入可能な小部屋であるガス検出室(図示外)を形成し、そのガス検出室内に両セルの一方の電極をそれぞれ露出した構造をなす。この両セルの一方の電極は互いに導通し、図示しない信号線を介してセンサ制御装置1が備えるASIC20(後述)のCOMポートに接続される。また、Vsセル61の他方の電極は、上記ガス検出室内に導入される排気ガス中の酸素濃度を検出する際に基準となる酸素基準電極として機能するものであり、図示しない信号線を介してASIC20のVs+ポートに接続される。そしてIpセル62の他方の電極は、ガス検出室内と外気との間での酸素交換を行うためガス検出素子6の外気に曝されており、電気的にはASIC20のIp+ポートに接続される。
【0016】
ヒータ素子7は、ガス検出素子6の固体電解質体を加熱して早期活性化を図り、活性化後には、固体電解質体の温度を維持してガス検出素子6の動作の安定性を確保する。ヒータ素子7は、アルミナを主体とする2枚の絶縁基体間に、白金を主体とする発熱抵抗体71を挟んで配設した構造を有する。なお、センサ素子5の具体的な構造については公知であり、
図1では全領域空燃比センサ2を電気的な回路構成として示している。
【0017】
次に、全領域空燃比センサ2が接続されるセンサ制御装置1の概略的な構成について説明する。センサ制御装置1は、マイクロコンピュータ10、ASIC20、およびヒータ制御回路30を有する。また、図示しないが、他にもエンジンの制御に関わる様々な回路(装置)を有する。マイクロコンピュータ10は、ASIC20およびヒータ制御回路30を介して全領域空燃比センサ2への電力の供給を制御するとともに、ガス検出素子6から排気ガス中の酸素濃度に応じた電流値を電圧信号として得る。
【0018】
マイクロコンピュータ10は、自動車のエンジンの駆動等を電子的に制御するための装置である。マイクロコンピュータ10は、各種の制御プログラムの実行に従い、ASIC20を含む、自身に接続される各回路(装置)を制御して、燃料の噴射タイミングや点火時期を制御する。そのためにマイクロコンピュータ10は、図示外の信号入出力部を介して、全領域空燃比センサ2に対する電力の供給を制御するための信号を、ASIC20やヒータ制御回路30に出力する。また、マイクロコンピュータ10は、ASIC20を介し、全領域空燃比センサ2の出力(検出信号)を取得する。さらに、マイクロコンピュータ10には、エンジンのピストン位置や回転数を検出できるクランク角や、燃焼圧などの情報も入力される。
【0019】
このマイクロコンピュータ10には、公知の構成のCPU11、ROM12、およびRAM13が搭載されている。CPU11は、上記の制御を含む各種制御を実行し、ROM12には、これらの各種制御を行うためのプログラムや初期値等が記憶されている。RAM13には、プログラムの実行に使用される各種変数やフラグ、カウンタ等が一時的に記憶される。
【0020】
次に、ASIC20は、全領域空燃比センサ2の駆動制御を行うための回路を集積して1チップ化し、センサ制御装置1に容易に組み込めるようにした特定用途向け集積回路である。ASIC20は、マイクロコンピュータ10から入力される信号に応じてガス検出素子6に電力を供給するとともに、ガス検出素子6による酸素濃度の検出結果をマイクロコンピュータ10に出力する。具体的に、ASIC20は、ガス検出素子6のVsセル61に微小な定電流Icpを流し、上記他方の電極側に酸素イオンを移動させて酸素を溜め込ませ、酸素基準電極として機能させる。また、Vsセル61の一対の電極間に生ずる起電力Vsを検出し、あらかじめ定められた基準電圧(例えば450mV)との比較を行う。この比較結果に基づき、Ipセル62の一対の電極間に流すポンプ電流Ipの向きや大きさを制御することで、Ipセル62によるガス検出室への酸素の汲み入れやガス検出室からの酸素の汲み出しが行われるようにする。また、Vsセル61、Ipセル62は内部抵抗を有するが、その抵抗値(内部抵抗値、インピーダンス)は、固体電解質体の温度上昇に応じて低下する特性を有し、内部抵抗値とVsセル61、Ipセル62の温度との間に所定の相関関係があることが知られている。ASIC20は、Vsセル61の内部抵抗値の変化を別途検出し、マイクロコンピュータ10に出力する。
【0021】
ヒータ制御回路30は、センサ素子5に設けられたヒータ素子7の発熱抵抗体71の両端に、バッテリ8からの電圧Vhを印加する。詳細には、ヒータ制御回路30は、発熱抵抗体71への通電をPWM制御(パルス幅変調制御)によって行うためのスイッチング素子31(例えばトランジスタ)を備えている。発熱抵抗体71の両端に印加する電圧Vhの電圧波形のduty比は、マイクロコンピュータ10のCPU11が算出する。具体的には、ASIC20がVsセル61の加熱状態に応じた内部抵抗値を検出し、CPU11が、その内部抵抗値の変化に基づき、公知の演算式、またはあらかじめ作成したテーブルに従って、duty比を求める。ヒータ制御回路30は、CPU11が出力するパルス信号に乗せ、duty比に応じた電圧波形をなす電圧Vhを発熱抵抗体71に印加する。発熱抵抗体71は発熱し、Ipセル61およびVsセル62を加熱する。なお、ヒータ制御回路30のスイッチング素子31として、上記のトランジスタに限らず、FET等を用いてもよい。
【0022】
ところで、
図2に示すように、発熱抵抗体71に通電した場合のヒータ素子7の温度上昇と通電時間との関係を表す温度上昇カーブ(以下、「昇温カーブ」ともいう。)は、発熱抵抗体71への電力に応じたカーブ(温度の変動態様)を描くことが知られている。ガス検出素子6の早期活性化のためにはヒータ素子7(発熱抵抗体71)に供給する電力を増やし、ヒータ素子7の温度をより短時間で活性化可能な温度に到達させることが好ましい。しかし、ガス検出素子6は、短時間での温度上昇幅が大きいとクラックや割れを生ずる虞がある。
【0023】
本実施形態では、固体電解質体にかかる負荷を抑制しつつもガス検出素子6の早期活性化を図ることができるような昇温カーブとして、ヒータ素子7へ印加される実効電圧が12Vとなる昇温カーブ(以下、「12V昇温カーブ」ともいう。なお、
図2において、12V昇温カーブを点線で示す。)を設定している。もっとも、センサ制御装置1を搭載する車両によって、バッテリ8の電源電圧が異なる場合がある。ゆえにセンサ制御装置1は、ヒータ素子7の温度上昇が12V昇温カーブを描くようにPWM制御を行っている。
【0024】
具体的に、本実施形態では、特に電源電圧が16Vより高いバッテリ8に接続した場合に、CPU11がヒータ制御回路30に対して出力するパルス信号について、そのPWM周波数を30Hz以上、例えば100Hzに設定している。すなわち、センサ制御装置1のCPU11は、PWM周期の1周期においてduty比によって設定されるタイミングでスイッチング素子31の1回のON/OFFを行うが、そのPWM周期の1周期を0.01秒(100Hzの場合)とし、PWM制御を行う。その上、ヒータ素子7の温度変化が0.1秒当たり25℃未満となるduty比に設定している。この2つの設定により、ヒータ素子7に印加するバッテリ8の電源電圧が16Vよりも高くとも、ガス検出素子6にかかる負荷を抑制することができる。
【0025】
ヒータ素子7に対するPWM制御を上記の設定に基づいて行う理由について、以下に説明する。なお、ヒータ素子7へ印加される実効電圧が12Vとなる場合に描く12V昇温カーブにおいて、通電を開始して所定時間が経過したときのヒータ素子7の温度をT1℃、その0.1秒後におけるヒータ素子7の温度をT2℃とする。
【0026】
例えば、センサ制御装置1を電源電圧16Vのバッテリ8に接続し、PWM周波数を10Hzに設定し、12V昇温カーブを目標にduty比を設定したPWM制御を行う場合について考える。PWM周波数が10Hzであるので、PWM周期の1周期は0.1秒である。
図3に示すように、通電を開始して所定時間が経過したときから0.1秒後におけるヒータ素子7(発熱抵抗体71)の温度がT2℃になるように、CPU11は、Vsセル61の内部抵抗値に基づく演算によりduty比を求める。通電開始から所定時間後のヒータ素子7(発熱抵抗体71)の温度が、12Vの電源電圧を印加した場合と同じくT1℃であれば、CPU11は、電圧実効値が12Vとなるようにduty比を設定する。この場合、0秒からP秒までスイッチング素子31がONとなり、ヒータ素子7に16Vが印加され、P秒から0.1秒までスイッチング素子31がOFFとなる。ヒータ素子7(発熱抵抗体71)は、スイッチング素子31がONの間(以下、「ONタイム」ともいう。)に16Vの電圧の印加によって温度がTx℃上昇し、スイッチング素子31がOFFの間(以下、「OFFタイム」ともいう。)に自然冷却により温度が低下して、所定時間の0.1秒後の温度がT2℃になる。
【0027】
なお、
図3とは異なり、
図2に示す12V昇温カーブにおいてOFFタイム中も温度上昇がみられる点について説明する。なお、
図2において、ヒータ素子7の温度は、ヒータ素子7の表面でヒータ素子7の内部に形成した発熱抵抗体71のパターンに対応する位置に、熱電対を接触させて配置し、温度検出器で測定した実測値である。ゆえに、昇温カーブにおいては、温度検出器の分解能に起因して、PWM周期よりも細かい段状の温度変化を示す場合がある。ONタイム中には、発熱抵抗体71の発熱によって、ヒータ素子7の温度が上昇する。その後、OFFタイムとなると、
図3のように発熱抵抗体71の温度は低下するが、ヒータ素子7の表面の温度よりも発熱抵抗体71の温度がまだ高いため、ヒータ素子7の温度は上昇する。その後、ヒータ素子7の表面の温度が上昇し、発熱抵抗体71の温度に近づいた時には、温度上昇幅は小さくなるが、ヒータ素子7表面の温度上昇は継続する。よって、
図3において、ヒータ素子7の温度はONタイムに上昇し、OFFタイムに下降するとしたが、説明の便宜によるものであり、発熱抵抗体71そのものの温度を測定した場合やPWM周波数が非常に低い場合には反映される場合がある。一方、ヒータ素子7の表面温度を測定した場合は、
図2に示すように、PWM周期の1周期ごとに温度上昇幅に変化を生じながらも温度が上昇する状態を継続する場合がある。
【0028】
ここで発明者らは、バッテリ8の電源電圧を16Vより高い32Vとし、センサ制御装置1が12V昇温カーブを目標にPWM制御を行った場合に、ガス検出素子6にクラックや割れを生ずる場合があることを確認した。
【0029】
なお、
図2に示すように、12V昇温カーブは、単位時間当たりの温度上昇幅が通電開始から経過した時期によって異なる。12V昇温カーブにおいて、単位時間当たりの温度上昇幅は、通電の初期において大きい。発明者らは、この通電の初期における単位時間当たりの温度上昇幅を制御することにより、ガス検出素子6に負荷がかかるとクラックや割れを生じやすい時期、例えばヒータ素子7の温度が上昇した時期であっても、ガス検出素子6のクラックや割れを抑制できる知見を得た。
【0030】
そこで、センサ制御装置1に電源電圧32Vのバッテリ8を接続し、PWM周波数を上記同様10Hzに設定して、
図2に示すように、12V昇温カーブを目標にduty比を設定したPWM制御を行う場合について考える。
図4に示すように、PWM周期の1周期は0.1秒である。通電開始から所定時間経過後におけるヒータ素子7(発熱抵抗体71)の温度がT1℃であるので、CPU11は、ヒータ素子7に印加する電圧の実効値が12Vとなるようにduty比を設定する。ヒータ素子7には0秒からQ秒までのONタイムにおいて32Vが印加され、Q秒から0.1秒までのOFFタイムを経て1周期が経過する。32Vが印加されるONタイムにおけるヒータ素子7(発熱抵抗体71)の温度上昇率(傾き)は、電源電圧が16Vの場合よりも大きい。ヒータ素子7(発熱抵抗体71)は、ONタイムに32Vの電圧の印加によって温度がTy℃上昇し、OFFタイムに自然冷却により温度が低下して、上記同様、所定時間の0.1秒後の温度がT2℃になる。PWM周波数が10Hzで電源電圧が32Vの場合においてONタイムに上昇するヒータ素子7の温度Ty℃は、PWM周波数が10Hzで電源電圧が16Vの場合においてONタイムに上昇する温度Tx℃よりも高い。
【0031】
なお、
図2において、PWM周波数が10Hzで電源電圧が32Vの場合(この場合の昇温カーブを一点鎖線で示す。)、ヒータ素子7の温度上昇幅は、最大で、0.1秒当たり25.5℃であった。
【0032】
このように、センサ制御装置1に接続するバッテリ8の電源電圧が32Vである場合、PWM周波数が10Hzであるため、ONタイム中の温度上昇がTy℃と比較的高くなっており、ガス検出素子6に負荷がかかりやすくなる。その結果、ガス検出素子6に、クラックや割れが発生する虞がある。
【0033】
そして、バッテリ8の電源電圧が16Vより高い32Vの場合のPWM制御において、センサ制御装置1が12V昇温カーブを目標とした場合に固体電解質体にかかる負荷を抑制するには、ヒータ素子7への電力を低減することが考えられる。もっとも、電力の低減によってヒータ素子7の温度上昇が遅くなると、ガス検出素子6の早期活性化に影響が出る。そこで発明者らは、PWM周波数に注目し、PWM周波数を高くすることで1周期あたりの温度上昇幅を抑えつつ、ガス検出素子6の早期活性化を図ることを考えた。
【0034】
センサ制御装置1を電源電圧32Vのバッテリ8に接続し、PWM周波数を100Hzに設定し、12V昇温カーブを目標にduty比を設定したPWM制御を行う場合について考える。
図5に示すように、PWM周期の1周期は0.01秒である。通電開始から所定時間経過後におけるヒータ素子7(発熱抵抗体71)の温度がT1℃であるので、CPU11は、ヒータ素子7に印加する電圧の実効値が12Vとなるようにduty比を設定する。ヒータ素子7には0秒からR秒までのONタイムにおいて32Vが印加され、R秒から0.1秒までのOFFタイムを経て1周期が経過する。32Vが印加されるONタイムにおけるヒータ素子7(発熱抵抗体71)の温度上昇率(傾き)は、
図4の場合と同様であり、電源電圧が16Vの場合よりも大きい。ヒータ素子7は、ONタイムに32Vの電圧の印加によって温度がTz℃上昇し、OFFタイムに自然冷却により温度が低下する。このような温度上昇と下降を10周期繰り返し、ヒータ素子7は、上記同様、所定時間の0.1秒後の温度がT2℃になる。PWM周波数が100Hzで電源電圧が32Vの場合においてONタイムに上昇するヒータ素子7の温度Tz℃は、PWM周波数が10Hzで電源電圧が32Vの場合においてONタイムに上昇する温度Ty℃よりも低い。
【0035】
なお、
図2において、PWM周波数が100Hzで電源電圧が32Vの場合(この場合の昇温カーブを実線で示す。)、ヒータ素子7の温度上昇幅は、最大で、0.1秒当たり18.3℃であった。
【0036】
このように、センサ制御装置1に接続するバッテリ8の電源電圧が32Vである場合、PWM周波数が100Hzとすることで、ONタイム中の温度上昇がTz℃と比較的低くなっている。上記した電源電圧が32VでPWM周波数が10Hzの場合にはTy℃であった温度上昇と比べて確実に低くなっており、その結果、ガス検出素子6に負荷がかかりにくく、クラックや割れを抑制することができる。
【0037】
つまり、PWM周波数を高く設定し、PWM周波数の1周期の時間を短くすれば、1周期あたりのONタイムも短くできる。ゆえに、16Vよりも高い電源電圧をヒータ素子7に印加しても、ONタイム中のヒータの温度上昇幅を低く抑えることができる。よって、32Vのバッテリ8に接続し、100HzのPWM周波数で、ヒータの温度変化が0.1秒当たり25℃未満となるduty比に設定してPWM制御を行えば、検出素子にかかる負荷を抑制できる。その上、ONタイムを短くしたとしても、ヒータに印加される電圧の実効値は維持できる。よって、ガス検出素子6の早期活性化のため12V昇温カーブを目標にヒータ素子7に印加する電圧の実効値を制御してPWM制御を行えば、ヒータ素子7(発熱抵抗体71)に供給する電力を従来通りに確保でき、早期活性化を図ることができる。
【0038】
電源電圧が32Vの場合にPWM周波数を30Hz以上とし、12V昇温カーブを目標にduty比を設定してPWM制御を行っても、ガス検出素子6にクラックや割れは生じなかった。発明者らは、バッテリ8の電源電圧が16Vより高い場合の12V昇温カーブを目標とするPWM制御において、PWM周波数が30Hz以上であればガス検出素子6にクラックや割れが生じないことを確認した。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。センサ制御装置1は自動車のECUを例としたが、ECUとは独立の制御装置を設けてもよい。ガスセンサの一例として全領域空燃比センサを挙げたが、本発明は、固体電解質体を基体とするガス検出素子と、固体電解質体を加熱して早期活性化を図るヒータ素子を備えるガスセンサ、例えば、酸素センサ、NOxセンサ、エアクオリティセンサ、HCセンサ等に適用してもよい。また、センサ制御装置1では、ヒータ素子7へ印加される実行電圧が12Vとなる昇温カーブ(つまり、12V昇温カーブ)を描くようにPWM制御を行っていたが、これに限られず、例えば、ヒータ素子に印加される実行電圧が10Vとなる昇温カーブ(つまり、10V昇温カーブ)や、8Vとなる昇温カーブ(つまり、8V昇温カーブ)を描くようにPWM制御を行っても良い。つまり、実行電圧としては、常温からガス検知可能となる温度までの時間が15秒未満となる電圧値であり、且つ16V未満となる電圧値であればよい。