特許第5925260号(P5925260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925260
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】勾配算出装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 99/00 20090101AFI20160516BHJP
   B62M 6/40 20100101ALI20160516BHJP
【FI】
   B62J99/00 K
   B62J99/00 J
   B62M6/40
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-167797(P2014-167797)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-107789(P2015-107789A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-220945(P2013-220945)
(32)【優先日】2013年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隼也
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−255081(JP,A)
【文献】 特開2001−140706(JP,A)
【文献】 特開平07−017450(JP,A)
【文献】 特開2009−184437(JP,A)
【文献】 特開2001−108580(JP,A)
【文献】 特開平10−035567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 99/00
B62M 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の運転者によって前記自転車に入力される第1エネルギーに関するパラメータを検出する第1検出部と、
自転車の走行速度を検出する速度検出部と、
前記自転車及び前記運転者の総重量を記憶する記憶部と、
前記第1検出部によって検出される前記パラメータに基づき第1エネルギーを算出し、前記速度検出部によって検出される走行速度及び前記記憶部に記憶されている前記自転車及び前記運転者の総重量に基づき第2エネルギーを算出し、前記第1エネルギー及び前記第2エネルギーに基づいて勾配を算出する制御部と、を備える勾配算出装置。
【請求項2】
自転車に入力される第1エネルギーに関するパラメータを検出する第1検出部と、
自転車の走行速度を検出する速度検出部と、
前記自転車及び前記自転車の運転者の総重量を記憶する記憶部と、
前記第1検出部によって検出される前記パラメータに基づき第1エネルギーを算出し、前記速度検出部によって検出される走行速度及び前記記憶部に記憶されている前記自転車及び前記運転者の総重量に基づき第2エネルギーを算出し、前記第1エネルギー及び前記第2エネルギーに基づいて勾配を算出する制御部と、を備える勾配算出装置。
【請求項3】
前記第1検出部は、前記自転車のクランクに作用する踏力を検出する踏力検出部と、前記クランクの回転速度を検出する回転速度検出部と、を含み、
前記制御部は、前記踏力検出部によって検出される前記踏力及び前記回転速度検出部によって検出される前記回転速度を前記パラメータとして、前記第1エネルギーを算出する、請求項1又は2に記載の勾配算出装置。
【請求項4】
前記踏力検出部は、前記自転車のクランク軸に作用するトルクを前記踏力として検出する、請求項3に記載の勾配算出装置。
【請求項5】
前記回転速度検出部は、前記クランクのケイデンスを前記回転速度として検出する、請求項3又は4に記載の勾配算出装置。
【請求項6】
前記制御部は、第1時間において入力される前記第1エネルギーと、前記第1時間の前の第2時間から前記第1時間にかけての前記第2エネルギーの変化量と、に基づき、前記第1時間における第3エネルギーの変化量を算出し、前記算出された第3エネルギーの変化量に基づき前記勾配を算出する、請求項1又は2に記載の勾配算出装置。
【請求項7】
前記制御部は、第1時間において入力される前記第1エネルギーと、前記第1時間の前の第2時間から前記第1時間にかけての前記第2エネルギーの変化量と、に基づき、前記第1時間における第3エネルギーの変化量を算出し、前記算出された第3エネルギーの変化量に基づき前記勾配を算出し、
前記回転速度検出部は、前記自転車の車輪に取り付けられ、前記車輪の回転軸まわりに回転する被検出体を検出するように構成されており、
前記第1および第2時間は、前記回転速度検出部によって前記被検出体が検出される間隔に基づいて定義される、請求項3から5のいずれかに記載の勾配算出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1エネルギーから前記第2エネルギーの変化量を減算することによって、前記第3エネルギーの変化量を算出する、請求項6または7に記載の勾配算出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1時間において前記自転車が走行した距離と、前記第3エネルギーの変化量と、に基づいて前記勾配を算出する、請求項6から8のいずれかに記載の勾配算出装置。
【請求項10】
前記制御部は、次の式(1)によって算出される第1部分エネルギーを前記第1時間分合計することによって前記第1エネルギーを算出する、請求項から9のいずれかに記載の勾配算出装置。
【数1】
式中、p1は第1部分エネルギー、Tはトルク、nはケイデンス、Δtは前記踏力検出部のサンプリング間隔を示す。
【請求項11】
前記制御部は、次の式(2)によって、前記第2エネルギーの変化量を算出する、請求項から10のいずれかに記載の勾配算出装置。
【数2】
式中、mは自転車と運転者との総重量、vは前記第1時間における走行速度、vは前記第2時間における走行速度を示す。
【請求項12】
前記自転車のブレーキの作動状態を検出するブレーキ検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記ブレーキ検出部の検出結果に基づき前記ブレーキが作動していると判断したときは、前記勾配を算出しない、請求項1から11のいずれかに記載の勾配算出装置。
【請求項13】
前記第1エネルギーは、前記自転車の運転者によって前記自転車に入力されるエネルギーと、前記自転車に搭載された走行補助用電動機によって前記自転車に入力されるエネルギーとを含む、
請求項2に記載の勾配算出装置。
【請求項14】
前記第1検出部は、前記自転車のクランクに作用する踏力を検出する踏力検出部と、前記クランクの回転速度を検出する回転速度検出部と、前記走行補助用電動機による補助動力を検出する補助動力検出部と、を含み、
前記制御部は、前記踏力検出部によって検出される前記踏力と、前記回転速度検出部によって検出される前記回転速度と、前記補助動力検出部によって検出される前記補助動力とを、前記パラメータとして、前記第1エネルギーを算出する、
請求項13に記載の勾配算出装置。
【請求項15】
前記第1検出部は、前記自転車のクランクに作用する踏力を検出する踏力検出部と、前記クランクの回転速度を検出する回転速度検出部と、を含み、
前記制御部は、前記踏力検出部によって検出される前記踏力と、前記回転速度検出部によって検出される前記回転速度と、少なくとも前記踏力に応じて設定される補助動力と、を前記パラメータとして、前記第1エネルギーを算出する、
請求項13に記載の勾配算出装置。
【請求項16】
前記記憶部は、前記踏力と前記補助動力との対応関係を示す補助動力情報をさらに記憶し、
前記制御部は、前記踏力検出部によって検出される前記踏力と、前記補助動力情報とに基づき、前記補助動力を算出する、
請求項15に記載の勾配算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配算出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車の運転者は、坂道を登る際、より快適に坂道を登ることができるように、変速機、又はサスペンションなどを操作する。したがって、自転車が走行するにあたって、走行路の勾配検知は重要である。例えば、特許文献1には、傾斜センサ(坂道センサ)によって走行路の勾配を検出し、自動的に変速機を作動させる自転車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−108982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した自転車は、傾斜センサからの情報に基づき、変速制御部が変速機を作動させる。しかしながら、上述した自転車は、勾配を検出するためのみに用いられる傾斜センサを新たに設置する必要があるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、傾斜センサを用いることなく自転車の走行路の勾配を算出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る勾配算出装置は、第1検出部と、速度検出部と、記憶部と、制御部とを備える。第1検出部は、少なくとも自転車の運転者によって自転車に入力される第1エネルギーに関するパラメータを検出する。速度検出部は、自転車の走行速度を検出する。記憶部は、自転車及び運転者の総重量を記憶する。制御部は、第1検出部によって検出されるパラメータに基づき第1エネルギーを算出する。また、制御部は、速度検出部によって検出される走行速度及び記憶部に記憶されている自転車及び運転者の総重量に基づき第2エネルギーを算出する。また、制御部は、第1エネルギー及び第2エネルギーに基づいて勾配を算出する。
【0007】
この構成によれば、制御部は、自転車に入力される第1エネルギーに関するパラメータと、走行速度と、自転車及び運転者の総重量とによって、勾配を算出することができる。すなわち、上述した勾配算出装置は、第1検出部と速度検出部とを用いることによって、勾配を算出することができる。このため、上記勾配算出装置は、勾配を検出することのみにしか使用されない傾斜センサを用いることなく、勾配を算出することができる。
【0008】
本発明の第2側面に係る勾配算出装置は、第1検出部と、速度検出部と、記憶部と、制御部とを備える。第1検出部は、自転車に入力される第1エネルギーに関するパラメータを検出する。速度検出部は、自転車の走行速度を検出する。記憶部は、自転車及び運転者の総重量を記憶する。制御部は、第1検出部によって検出されるパラメータに基づき第1エネルギーを算出する。また、制御部は、速度検出部によって検出される走行速度及び記憶部に記憶されている自転車及び運転者の総重量に基づき第2エネルギーを算出する。また、制御部は、第1エネルギー及び第2エネルギーに基づいて勾配を算出する。
【0009】
好ましくは、第1検出部は、踏力検出部と、回転速度検出部とを含む。踏力検出部は、自転車のクランクに作用する踏力を検出する。回転速度検出部は、クランクの回転速度を検出する。制御部は、踏力検出部によって検出される踏力、及び回転速度検出部によって検出される回転速度をパラメータとして、第1エネルギーを算出する。
【0010】
好ましくは、制御部は、第1時間において入力される第1エネルギーと、第2時間から第1時間にかけての第2エネルギーの変化量と、に基づき、第1時間における第3エネルギーの変化量を算出する。そして、制御部は、算出された第3エネルギーの変化量に基づき勾配を算出する。
【0011】
好ましくは、制御部は、第1エネルギーから第2エネルギーの変化量を減算することによって、第3エネルギーの変化量を算出する。
【0012】
好ましくは、制御部は、第1時間において自転車が走行した距離と、第3エネルギーの変化量と、に基づいて勾配を算出する。
【0013】
好ましくは、踏力検出部は、自転車のクランク軸に作用するトルクを踏力として検出する。
【0014】
好ましくは、回転速度検出部は、クランクのケイデンスを回転速度として検出する。
【0015】
好ましくは、制御部は、次の式(1)によって算出される第1部分エネルギーを前記第1時間分合計することによって第1エネルギーを算出する。
【0016】
【数1】

式中、pは第1部分エネルギー、Tはトルク、nはケイデンス、Δtは前記踏力検出部のサンプリング間隔を示す。
【0017】
好ましくは、制御部は、次の式(2)によって、第2エネルギーの変化量を算出する。
【0018】
【数2】

式中、mは自転車と運転者との総重量、vは第1時間における走行速度、vは第2時間における走行速度を示す。
【0019】
好ましくは、勾配算出装置は、自転車のブレーキの作動状態を検出するブレーキ検出部をさらに備える。制御部は、ブレーキ検出部の検出結果に基づきブレーキが作動していると判断したときは、勾配を算出しない。
【0020】
第1エネルギーは、自転車の運転者によって自転車に入力されるエネルギーと、自転車に搭載された走行補助用電動機によって自転車に入力されるエネルギーとを含んでもよい。
【0021】
第1検出部は、踏力検出部と、回転速度検出部と、補助動力検出部とを含んでもよい。踏力検出部は、自転車のクランクに作用する踏力を検出する。回転速度検出部は、クランクの回転速度を検出する。補助動力検出部は、走行補助用電動機による補助動力を検出する。制御部は、踏力検出部によって検出される踏力と、回転速度検出部によって検出される回転速度と、補助動力検出部によって検出される補助動力とを、パラメータとして、第1エネルギーを算出する。
【0022】
第1検出部は、踏力検出部と、回転速度検出部とを含んでもよい。踏力検出部は、自転車のクランクに作用する踏力を検出する。回転速度検出部は、クランクの回転速度を検出する。制御部は、踏力検出部によって検出される踏力と、回転速度検出部によって検出される回転速度と、少なくとも踏力に応じて設定される補助動力と、をパラメータとして、第1エネルギーを算出する。
【0023】
記憶部は、踏力と補助動力との対応関係を示す補助動力情報をさらに記憶していてもよい。制御部は、踏力検出部によって検出される踏力と、補助動力情報とに基づき、補助動力を算出する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、傾斜センサを用いることなく勾配を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】自転車の側面図。
図2】勾配算出装置の構成を示すブロック図。
図3】自転車が上る坂道を示す概略図。
図4】勾配算出装置の動作を示すフローチャート。
図5】変形例1に係る勾配算出装置の構成を示すブロック図。
図6】変形例1に係る勾配算出装置の動作を示すフローチャート。
図7】変形例4に係る自転車の側面図。
図8】変形例4に係るアシスト機構の構成を示すブロック図。
図9】変形例4に係る勾配算出装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る勾配算出装置の実施形態、及びこれを用いた自転車について図面を参照しつつ説明する。図1は、勾配算出装置を用いた自転車101の側面図である。
【0027】
図1に示すように、勾配算出装置を用いた自転車101は、フレーム102、ハンドル104、駆動部105、前輪106f、後輪106rを備えている。また、自転車101は、フロントブレーキ107f、リアブレーキ107r、フロントブレーキレバー108f、リアブレーキレバー108r、及び表示装置109をさらに備えている。
【0028】
駆動部105は、チェーン110と、ペダル111が装着されたクランク112と、を有している。クランク112は、クランク軸112aと、一対のクランクアーム112bとを含む。各クランクアーム112bは、クランク軸112aの両端部に設けられる。
【0029】
図2は、実施形態に係る勾配算出装置1を示すブロック図である。図2に示すように、勾配算出装置1は、踏力検出部2、回転速度検出部3、速度検出部4、制御部5、及び記憶部51を備えている。なお、踏力検出部2及び回転速度検出部3が、本発明の第1検出部に相当する。
【0030】
踏力検出部2は、クランク112に作用する踏力を検出する。例えば、踏力検出部2はトルクセンサであって、クランク112のクランク軸112aに作用するトルクを検出する。詳細には、踏力検出部2は、クランク軸112aに作用するトルクに応じた信号(例えば電圧)を出力する。トルクセンサは、例えば磁歪式センサであってもよいし、歪ゲージであってもよい。この踏力検出部2によって検出されたトルクに関する情報が、制御部5に送られる。
【0031】
回転速度検出部3は、クランク112の回転速度を検出する。例えば、回転速度検出部3は、ケイデンスセンサであって、クランク112のケイデンスを回転速度として検出する。詳細には、回転速度検出部3は、フレーム102に取り付けられ、クランクアーム112bに取り付けられた磁石を検出する。回転速度検出部3によって検出された回転速度に関する情報は、制御部5に送られる。
【0032】
速度検出部4は、自転車101の走行速度を検出する。例えば、速度検出部4は、速度センサである。詳細には、速度検出部4は、自転車101のフロントフォーク103上に取り付けられ、前輪106fのスポークの1本に取り付けられた磁石40を検出する(図1参照)。この速度検出部4によって検出された自転車101の走行速度に関する情報は、制御部5に送られる。なお、制御部5は、前輪106fが1回転する毎に自転車101の走行速度を算出する。そして、この前輪106fが1回転する毎に算出される各走行速度は、前輪106fが1回転する間における自転車101の平均走行速度を示す。具体的には、制御部5は、前輪106fのタイヤ周長を、前輪106fが1回転するのに要した時間tで除算することによって、前輪106fが1回転する毎に自転車101の走行速度を算出する。
【0033】
制御部5は、第1エネルギー及び第2エネルギーを算出するとともに、算出された第1及び第2エネルギーに基づき、勾配を算出する。ここで、第1エネルギーは、自転車101の運転者によって自転車101に入力されるエネルギーを示す。すなわち、第1エネルギーは、運転者が自転車101のペダル111を漕ぐことによって自転車101に入力されるエネルギーを示す。
【0034】
詳細には、制御部5は、踏力検出部2によって検出される踏力と、回転速度検出部3によって検出される回転速度、すなわちケイデンスとに基づき、第1時間tにおいて入力される第1エネルギーPを算出する。具体的には、制御部5は、まず、次の式(1)に基づき、第1部分エネルギーpを算出する。ここで、第1部分エネルギーpとは、第1時間tにおいて自転車101に入力される第1エネルギーPのうち、踏力検出部2のサンプリング間隔Δtにおいて自転車101に入力されるエネルギーをいう。
【0035】
【数1】

式(1)において、p(W)は第1部分エネルギー、T(N・m)は踏力検出部2によって検出されるトルク、n(rpm)はケイデンス、Δt(s)は踏力検出部2のサンプリング間隔を示す。
【0036】
そして、制御部5は、上記第1部分エネルギーpに基づき、第1時間tにおいて自転車101に入力される第1エネルギーPを算出する。詳細には、制御部5は、第1部分エネルギーpの第1時間tにおける積分値を第1エネルギーPとして算出する。ここで、第1時間tは、速度検出部4が、前輪106fのスポークの1本に取り付けられた磁石40を検出する間隔、すなわち、前輪106fが1回転する時間とすることができる。よって、第1時間tは、一定時間ではなく、前輪106fの回転毎に異なる時間となり得る。
【0037】
また、制御部5は、速度検出部4によって検出された走行速度と、自転車及び運転者の総重量に基づき、第1時間tの前の速度検出間隔である第2時間tから第1時間tにかけての第2エネルギーの変化量Pを算出する。具体的には、制御部5は、次の式(2)に基づき、第1時間tにおける第2エネルギーの平均値と、第2時間tにおける第2エネルギーの平均値と、から第2エネルギーの変化量Pを算出する。
【0038】
【数2】

式(2)において、m(kg)は自転車101と自転車101の運転者との総重量、v(m/s)は第1時間tにおける走行速度、v(m/s)は第2時間tにおける走行速度を示す。詳細には、走行速度v(m/s)は、第1時間tにおける平均走行速度を示し、v(m/s)は第2時間tにおける平均走行速度を示す。ここで、第2時間tが存在しない場合、すなわち第1時間tが、自転車が走り出してから初めての速度検出間隔である場合には、vを0として第2エネルギーの変化量Pが算出されるようにしてもよい。ここで、自転車101と運転者との総重量mは、記憶部51に記憶される。記憶部51は、制御部5のメモリによって構成してもよいし、制御部5とは別の記憶装置によって構成してもよい。
【0039】
制御部5は、第1時間tにおいて入力される第1エネルギーP,及び第2時間tから第1時間tにかけての第2エネルギーの変化量Pに基づき、第1時間tにおける第3エネルギーの変化量Pを算出する。詳細には、制御部5は、次の式(3)で示すように、第1エネルギーPから第2エネルギーの変化量Pを減算することにより、第3エネルギーの変化量Pを算出する。
=P−P・・・(3)
【0040】
第3エネルギーの変化量Pは、第1時間tにおける位置エネルギーの変化であるので、第3エネルギーの変化量Pは、下記の式(4)によって表すことができる。
=mgh・・・(4)
式(4)において、h(m)は、図3に示すように、第1時間tに自転車101が移動した垂直方向の距離を示す。すなわち、距離hは、第1時間tにおける、自転車101の位置の高さ方向の変化を示す。なお、図3は、坂道の一部を示す概略図である。詳細には、図3は、第1時間tの間において、自転車101が進む走行距離yの分の坂道を示す概略図である。また、式(4)において、m(kg)は、自転車と運転者との総重量、g(m/s)は重力加速度を示す。
【0041】
上記式(3)より算出される第3エネルギーの変化量P、記憶部51に記憶される自転車と運転者との総重量m、及び重力加速度gに基づき、上記式(4)によって、垂直方向の距離hを求めることができる。
【0042】
制御部5は、第1時間tにおける走行距離yと、垂直方向の距離hから、勾配Sを算出する。具体的には、図3に示すように、制御部5は、第1時間tと、第1時間tにおける平均走行速度vとを乗算することによって、走行距離yを算出することができる。そして、制御部5は、第1時間tに自転車101が移動した水平方向の距離x、すなわち、第1時間tにおける自転車101の位置の水平方向の変化は、下記の式(5)によって算出する。
【0043】
【数3】
【0044】
制御部5は、上記式(4)によって算出される垂直方向の距離hと、上記式(5)によって算出される水平方向の距離xとに基づき、下記式(6)によって勾配S(%)を算出する。
【0045】
【数4】
【0046】
また、制御部5は、下記式(7)によって、坂道の傾斜角度θを算出してもよい。
【0047】
【数5】
【0048】
制御部5は、算出した勾配Sなどを、ハンドル104などに装着された表示装置109などに表示させることができる。以上のように、制御部5は、前輪106fが回転する毎に、勾配Sを算出することができる。なお、制御部5は、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、CPU(Central processing unit),RAM(random access memory),ROM(read only memory),I/Oインターフェイスなどを含む。
【0049】
次に、勾配算出装置1による勾配算出方法について、図4を参照しつつ説明する。図4は、勾配を算出する際の勾配算出装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0050】
制御部5は、第1時間tに入力される第1エネルギーPに関するパラメータを取得する(ステップS1)。詳細には、制御部5は、踏力検出部2によって検出されたクランク軸112aに作用するトルクに関する情報を、取得する。また、制御部5は、回転速度検出部3によって検出されたクランク112のケイデンスに関する情報を、取得する。
【0051】
次に、制御部5は、上記式(1)に基づき、踏力検出部2のサンプリング間隔Δtにおいて自転車101に入力される第1部分エネルギーpを算出する(ステップS2)。
【0052】
次に、制御部5は、第1時間tにおいて自転車101に入力される第1エネルギーPを算出する(ステップS3)。詳細には、制御部5は、上記第1部分エネルギーpの第1時間tにおける積分値を第1エネルギーPとして算出する。
【0053】
次に、制御部5は、第2時間tから第1時間tにかけての第2エネルギーの変化量Pに関するパラメータを取得する(ステップS4)。詳細には、制御部5は、記憶部51に記憶された自転車101と運転者との総重量mを取得する。また、制御部5は、速度検出部4によって検出された第1時間tおよび第2時間tにおける自転車101の平均走行速度に関する情報を、取得する。
【0054】
次に、制御部5は、上記式(2)に基づき、第2時間tから第1時間tにかけての第2エネルギーの変化量Pを算出する(ステップS5)。
【0055】
次に、制御部5は、上記式(3)に基づき、第1時間tにおける第3エネルギーの変化量Pを算出する(ステップS6)。
【0056】
そして、制御部5は、勾配Sを算出する(ステップS7)。詳細には、制御部5は、ステップS6において得られたPと上記式(4)とに基づき、第1時間tに自転車101が移動した垂直方向の距離hを求める。そして、制御部5は、この垂直方向の距離hと、式(5)とに基づいて、第1時間tに自転車101が移動した水平方向の距離xを求める。そして、制御部5は、垂直方向の距離hと、水平方向の距離xと、上記式(6)とに基づいて、勾配Sを算出する。
【0057】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0058】
変形例1
勾配算出装置1は、さらにブレーキ検出部を備えていてもよい。図5は変形例1に係る勾配算出装置1の構成を示すブロック図である。図5に示すように、変形例1に係る勾配算出装置1は、ブレーキ検出部6をさらに備えている。なお、ブレーキ検出部6以外の構成は、上記実施形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0059】
ブレーキ検出部6は、自転車101のフロントブレーキ107f及びリアブレーキ107rの少なくとも一方の作動状態を検出する。例えば、ブレーキ検出部6は、フロントブレーキレバー108f及びリアブレーキレバー108rの少なくとも一方が握られたか否かを検出するブレーキセンサとすることができる。ブレーキ検出部6は、ブレーキの作動状態に関する情報を制御部5に出力する。
【0060】
制御部5は、図6に示すように、ブレーキ検出部6による検出結果を取得する(ステップS21)。制御部5は、ブレーキ検出部6の検出結果に基づき、フロントブレーキ107f及びリアブレーキ107rの少なくとも一方が作動しているか否か判断する(ステップS22)。
【0061】
制御部5は、フロントブレーキ107f及びリアブレーキ107rの少なくとも一方が作動していると判断すると(ステップS22のYes)、ステップS21の処理に移行する。例えば、制御部5は、ブレーキ検出部6の検出結果に基づき、フロントブレーキレバー108f及びリアブレーキレバー108rの少なくとも一方が握られたと判断すると、ステップS21の処理に移行する。
【0062】
一方、制御部5は、フロントブレーキ107f及びリアブレーキ107rが作動していないと判断すると(ステップS22のNo)、ステップS1の処理に移行する。例えば、制御部5は、ブレーキ検出部6の検出結果に基づき、フロントブレーキレバー108f及びリアブレーキレバー108rが握られていないと判断すると、ステップS1の処理に移行する。なお、ステップS1〜ステップS7の処理は、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
変形例2
上記実施形態における自転車101と運転者との総重量mは、運転者によって入力することができてもよいし、予め設定されていてもよい。総重量が予め設定されているときは、例えば、平均的な総重量mが予め記憶部51に記憶されていてもよい。
【0064】
変形例3
上記実施形態では、第1時間tは、速度検出部4のサンプリング間隔、詳細には前輪106fが1回転する時間としているが、特にこれに限定されない。例えば、第1時間tは、前輪106fが2回転する時間としてもよいし、前輪106fが3回転以上する時間としてもよい。また、その他にも、第1時間tは、前輪106fが回転する時間とは関係のない時間として、設定することができる。例えば、第1時間tは、予め設定された時間であってもよい。
【0065】
変形例4
図7は、変形例4に係る勾配算出装置1を用いた自転車201の側面図である。図7に示すように、変形例4に係る勾配算出装置1を用いた自転車201には、アシスト機構115と、アシスト機構115の電源としての着脱可能な充電池113とが、搭載されている。充電池113は、例えばニッケル水素電池およびリチウムイオン電池等を用いた蓄電池であり、フレーム102に着脱可能に搭載される。
【0066】
図8は、変形例4に係るアシスト機構115のブロック図である。図8に示すように、アシスト機構115は、モータ116(走行補助用電動機の一例)と、モータードライバ117と、を含んでいる。モータ116は、クランク軸112aを介してまたは直接的にチェーン110に対して補助動力を出力することでチェーン110を駆動させる。
【0067】
図9は、変形例4に係る勾配算出装置1のブロック図である。図9に示すように、変形例4に係る勾配算出装置1は、補助動力検出部7をさらに備える。補助動力検出部7の一例は、磁歪素子および検出コイルを有するトルクセンサである。補助動力検出部7は、モータ116によって自転車201に入力される補助動力を検出する。すなわち、補助動力検出部7は、モータ116から出力される補助動力を検出する。なお、変形例4では、踏力検出部2、回転速度検出部3、及び補助動力検出部7が、本発明の第1検出部に相当する。
【0068】
変形例4において、第1エネルギーPは、自転車201の運転者及びモータ116によって自転車201に入力されるエネルギーである。制御部5は、自転車201の運転者によって自転車201に入力されるエネルギーと、モータ116によって自転車201に入力されるエネルギーとの和を、第1エネルギーPとして算出する。
【0069】
変形例4において、制御部5が第1エネルギーPを算出する方法について、図4を参照しつつ説明する。制御部5は、運転者によって自転車201に入力されるエネルギーを上記実施形態と同様に算出する。すなわち、制御部5は、踏力検出部2によって検出される踏力と、回転速度検出部3によって検出される回転速度、すなわちケイデンスとに基づき、運転者によって自転車201に入力されるエネルギーを算出する。
【0070】
また、制御部5は、モータ116によって自転車201に入力されるエネルギーについて、制御部5は、以下のようにして算出する。制御部5は、補助動力検出部7によって検出されたアシスト機構115のモータ116の補助動力に関する情報を、取得する(ステップS1)。
【0071】
次に、制御部5は、サンプリング間隔Δtにおいて自転車201に入力される補助動力の部分エネルギーを算出する(ステップS2)。
【0072】
次に、制御部5は、第1時間tにおいて、アシスト機構115によって自転車201に入力される補助動力を算出する。詳細には、補助動力の部分エネルギーの第1時間tにおける積分値を、アシスト機構115によって自転車201に入力される補助動力によるエネルギーとして算出する。
【0073】
そして、制御部5は、自転車201の運転者によって自転車201に入力されるエネルギーと、走行補助用電動機116から出力される補助動力によるエネルギーとの和を、第1時間tにおける第1エネルギーPとして算出する(ステップS3)。
【0074】
なお、変形例4において、勾配算出装置1は、補助動力検出部7を有していなくてもよい。すなわち、図2に示すように、制御部5は、踏力検出部2によって検出された踏力と、補助動力情報とに基づいて、補助動力を算出してもよい。なお、補助動力情報は、踏力と補助動力との対応関係を示す情報であって、記憶部51に記憶されている。すなわち、モータ116によって自転車201に入力される補助動力は、踏力に応じて設定される。例えば、踏力が大きくなるにしたがって、補助動力も大きくなる。この踏力と補助動力との対応関係を示したものが、補助動力情報である。
【符号の説明】
【0075】
1 勾配算出装置
2 踏力検出部
3 回転速度検出部
4 速度検出部
5 制御部
6 ブレーキ検出部
7 補助動力検出部
116 モータ
51 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9