特許第5925296号(P5925296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925296
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】カロテノイドを含む小ビーズ
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/41 20160101AFI20160516BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20160516BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20160516BHJP
   A23L 2/58 20060101ALI20160516BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20160516BHJP
   A23K 20/00 20160101ALI20160516BHJP
【FI】
   A23L1/272
   A61K8/02
   A61K8/11
   A61Q19/00
   A61K8/92
   A23L2/00 M
   A23D7/00 500
   A23K1/16 301A
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-505639(P2014-505639)
(86)(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公表番号】特表2014-513525(P2014-513525A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】EP2012057238
(87)【国際公開番号】WO2012143492
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】00706/11
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】シュレーゲル, ベルン
(72)【発明者】
【氏名】バドラート ボーニッシュ, ギャブリエラ
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−517512(JP,A)
【文献】 特表2010−516244(JP,A)
【文献】 特表2010−516245(JP,A)
【文献】 特表2010−516246(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00681931(GB,A)
【文献】 特開平09−071798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00
A23K 20/00
A23L 2/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧冷蔵法または噴霧冷却法を用いることによる小ビーズの製造方法であって、以下のステップ:
1)全ての成分(ワックスおよび/または飽和脂肪を含む)を混合するステップと、
2)チャンバ内へ霧化するステップであって、それが、液滴を収めて凝固させるために十分に冷たい気流と接触させられるステップと
を含み、
前記小ビーズが、
(i)前記小ビーズの全重量に基づいて1重量%〜50重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)前記小ビーズの前記全重量に基づいて50〜99重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または飽和脂肪を含むマトリックス材料と
を含み、
前記マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有し、
前記小ビーズが50μm〜1000μmの平均中間粒径を有する、方法。
【請求項2】
前記小ビーズが、前記小ビーズの前記全重量に基づいて10〜50重量%の少なくとも1つのカロテノイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小ビーズが、前記小ビーズの前記全重量に基づいて15〜45重量%の少なくとも1つのカロテノイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記小ビーズが、前記小ビーズの前記全重量に基づいて20〜40重量%の少なくとも1つのカロテノイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記小ビーズの前記マトリックス材料の滴点が40〜70℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記小ビーズの前記カロテノイドが、α−またはβ−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、8’−アポ−β−カロテン酸エステル(エチルエステルなど)、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチンおよびクロセチンからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記小ビーズの前記カロテノイドがβ−カロテンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記小ビーズの前記ワックスおよび/または飽和脂肪が、モノステアリン酸グリセリン、カルナバワッス、キャンデリラワックス、パルミチン酸、ステアリン酸および飽和菜種油からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記小ビーズが、少なくとも1つのさらなる補助剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記補助剤が酸化防止剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化防止剤が、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC、パルミチン酸アスコルビル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびエトキシキンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記小ビーズが、前記小ビーズの前記全重量に基づいて0重量%〜5重量%の少なくとも1つのさらなる補助剤を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記成分の混合物が霧化の前に粉砕される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により得られる小ビーズが使用される、食品、飼料製品およびパーソナルケア製品の製造方法。
【請求項15】
前記食品、飼料製品およびパーソナルケア製品中の前記少なくとも1つのカロテノイドの量が1〜12ppmである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
食品が製造される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記食品がソフトドリンクである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記食品がマーガリンである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのカロテノイドと、30〜85℃の間の滴点を有するワックスおよび/または脂肪を含むマトリックス材料とを含む小ビーズ(beadlet)に関し、このような小ビーズの製造、およびこのような小ビーズの組成物における使用にも関する。
【0002】
現今、カロテノイドを含む多数の形態の製剤が利用可能である。固体、液体またはペースト様の製剤が知られている。これらの処方には不都合がある。液体製剤は不均一になる傾向があるので、それを回避するために定期的に振とうさせなければならない。
【0003】
固体製剤に関する問題は、例えば、
i)粉塵の問題(取扱いが容易でないこと、および爆発の危険性)、
ii)粒子が互いにくっつき合うこと
である。
【0004】
本発明の目的は、製造するのが容易であり、取扱いが良好および安全でもある製剤の形態を見出すことであった。
【0005】
少なくとも1つのカロテノイドおよびマトリックス(特定の明確に定義された特性を有するワックスおよび/または脂肪)を含むビードレタ(beadleta)の形態の製剤を製造すると、上記のような不都合を有しない製剤が得られることが見出された。
【0006】
そしてさらに、このような小ビーズは、穏やかな製造手順である噴霧冷蔵法を用いることによって製造することができる。この方法の原理は広く知られている。
【0007】
本発明に従う小ビーズの主な利点は、以下の、
(i)油(相)中への良好で急速な分散性と、
(ii)良好な流動性(非粘着性、粉塵がない、そして投与するのが容易である)(この特性は、本質的に、1つの容器から別の容器へ移したときに材料の損失をもたらすことがなく、小ビーズが貯蔵されていた容器は、容易にきれいにされ得る)と、
(iii)最終市場製品((食料品)店で販売される消費者製品)における小ビーズの色飽和度および色安定性が(低温殺菌の後でも)良好なことと
である。
【0008】
従って、本発明は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて1重量%(wt%)〜50重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて50重量%〜99重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(I)であって、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(I)に関する。
【0009】
百分率の合計が常に100%になることは明らかである。この要件は全ての組成物に適用される。
【0010】
小ビーズ(脂溶性物質を含む)およびその製造方法は、従来技術、例えば、米国特許出願公開第2006/0115534号明細書および米国特許第4,670,247号明細書から分かっている。これらの小ビーズは通常良好な貯蔵安定性を有するが、このような小ビーズ中の脂溶性物質の濃度は低い。通常、含量は、小ビーズの全重量に基づいて5〜15重量%(wt%)の間である。
【0011】
本発明により、冷却噴霧乾燥造粒技術を用いることによって、非粘着性で粉塵のない小ビーズを形成することが可能であった。さらに、これらの小ビーズは、小ビーズの全重量に基づいて50重量%までの少なくとも1つのカロテノイドを含むことができる。
【0012】
本発明に従う小ビーズ中の少なくとも1つのカロテノイドの好ましい量は、10重量%〜50重量%、15重量%〜50重量%、20重量%〜50重量%、10重量%〜45重量%、15重量%〜45重量%、20重量%〜45重量%、10重量%〜40重量%、15重量%〜40重量%および20重量%〜40重量%である(全て小ビーズの全重量に基づく)。
【0013】
その結果として、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料(マトリックス材料は30〜85℃の滴点を有することを特徴とする)の好ましい量は、50重量%〜90重量%、50重量%〜85重量%、50重量%〜80重量%、55重量%〜90重量%、55重量%〜85重量%、55重量%〜80重量%、60重量%〜90重量%、60重量%〜85重量%および60重量%〜80重量%である(全て小ビーズの全重量に基づく)。
【0014】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて10重量%〜50重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて50〜90重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(II)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(II)である。
【0015】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて15重量%〜50重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて50重量%〜85重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(III)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(III)である。
【0016】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて20重量%〜50重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて50重量%〜80重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(IV)において、マトリックス材料が30〜85℃℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(IV)である。
【0017】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて10重量%〜45重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて55重量%〜90重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(V)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(V)である。
【0018】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて15重量%〜45重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて55重量%〜85重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(VI)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(VI)である。
【0019】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて20重量%〜45重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて55重量%〜80重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(VII)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(VII)である。
【0020】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて10重量%〜40重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて60重量%〜90重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(VIII)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(VIII)である。
【0021】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて15重量%〜40重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて60重量%〜85重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(IX)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(IX)である。
【0022】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
(i)小ビーズの全重量に基づいて20重量%〜40重量%の少なくとも1つのカロテノイドと、
(ii)小ビーズの全重量に基づいて60重量%〜80重量%の、少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含むマトリックス材料と
を含む小ビーズ(X)において、マトリックス材料が30〜85℃の滴点を有することを特徴とする小ビーズ(X)である。
【0023】
「小ビーズ」という用語は、本明細書で使用される場合、直径50μm〜1000μm(好ましくは、250μm〜850μm)の平均(中間の)粒径を有する小さい別々の粒子を指す。粒径はこれよりも大きくても小さくてもよい。小ビーズの粒径は、(走査)電子顕微鏡法などの周知の方法に従って決定することができる。小ビーズは、通常、ほぼ球形である。小ビーズは、カプセル化形態の1つまたは複数の活性成分を含有する。
【0024】
従って、本発明のさらなる実施形態は、直径50μm〜1000μm(好ましくは、250μm〜850μm)の平均(中間の)粒径を有する小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)および/または(X)である小ビーズ(XI)に関する。
【0025】
本発明に従う小ビーズは、少なくとも1つのカロテノイドを含む。「カロテノイド」という用語は、本明細書で使用される場合、食品、飲料、動物飼料、化粧品または薬物のための着色剤として使用することができる、カロテンまたは構造的に関連するポリエン化合物を含む。このようなカロテノイドの例は、α−もしくはβ−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、8’−アポ−β−カロテン酸エステル(エチルエステルなど)、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチンまたはクロセチン、あるいはこれらの混合物である。好ましいカロテノイドはβ−カロテンである。
【0026】
従って、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つのカロテノイドが、α−またはβ−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、8’−アポ−β−カロテン酸エステル(エチルエステルなど)、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチンおよびクロセチンからなる群から選択される、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)および/または(XI)である小ビーズ(XII)に関する。
【0027】
本発明のより好ましい実施形態は、カロテノイドがβ−カロテンである、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)および/または(XI)である小ビーズ(XII’)に関する。
【0028】
百分率の合計が常に100%になることは明らかである。
【0029】
本発明に従う小ビーズは、30〜85℃、好ましくは40〜70℃の滴点を有する少なくとも1つのワックスおよび/または水和脂肪を含む。本発明との関連でのワックスは、特徴的に長鎖アルキルからなる有機化合物である。天然ワックス(植物、動物)は、通常、脂肪酸および長鎖アルコールのエステルである。合成ワックスは、官能基のない長鎖炭化水素である。
【0030】
脂肪は、一般に有機溶媒に可溶性であり、そして大抵は水に不溶性である幅広いグループの化合物からなる。本発明との関連での水和脂肪(または飽和脂肪)は、一般に、グリセロールおよび脂肪酸のトリエステルである。脂肪酸は炭素および水素原子の鎖であり、一端にカルボン酸基を有する。このような脂肪は、天然または合成起源を有することができる。(多価)不飽和脂肪を水和させて、水和(飽和)脂肪を得ることが可能である。
【0031】
少なくとも1つのワックスおよび/または脂肪を含むマトリックスは、30〜85℃の滴点を有する。材料の滴点は、標準化された条件下で材料が融解し始めるときの温度(単位、℃)である。材料は、物質の状態が固体から液体へ変化されるまでの間加熱される。滴点は、最初の1滴が材料から放出されるときの温度である。滴点(Tropfpunkt)の決定は、標準規格DIN ISO 2176に記載されるように行われる。
【0032】
本発明に適したワックスおよび水和脂肪の好ましい例は、モノステアリン酸グリセリン、カルナバワックス、キャンデリラワックス、パルミチン酸、ステアリン酸および水和菜種油である。これらの化合物はそのまま使用することも混合物として使用することもできる。
【0033】
従って、本発明の好ましい実施形態は、30〜85℃(好ましくは、40〜70℃)の滴点を有する少なくとも1つのワックスおよび/または脂肪が、モノステアリン酸グリセリン、カルナバワックス、キャンデリラワックス、パルミチン酸、ステアリン酸および水和菜種油からなる群から選択される、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)および/または(XII’)である小ビーズ(XIII)に関する。
【0034】
小ビーズは、さらなる補助剤(助剤)を含むことができる。小ビーズが何のために使用されるかによって、補助剤は変わり得る。これらの補助剤は、物理的安定性、貯蔵安定性、視覚認知などのその特性をさらに改善することにより製剤のために有用であり得る。助剤は、これらの組成物の特性、物理的安定性、貯蔵安定性、視覚認知、消化管での制御放出、pH調節、耐酸化性などを改善することにより、食品または飼料製品における適用のためにも有用であり得る。これらの助剤の濃度は、これらの助剤の使用に応じて変わり得る。これらの補助剤は、通常、小ビーズの全重量に基づいて0重量%〜5重量%の量で存在する。
【0035】
小ビーズは場合により、例えば酸化防止剤を含むことができる。
【0036】
酸化防止剤は活性成分の酸化を防止し、従って、生物活性、色および/または色強度などの活性剤の所望の特性が保存される。典型的な酸化防止剤は、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC、パルミチン酸アスコルビル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(ブチル化ヒドロキシトルエンまたはBHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、エトキシキン(EMQ)などである。
【0037】
これらの化合物はそのまま使用することも混合物として使用することもできる。本発明の小ビーズは、小ビーズの全重量に基づいて0〜5重量%の少なくとも1つの酸化防止剤を含む。
【0038】
従って、本発明の好ましい実施形態は、小ビーズの全重量に基づいて0重量%〜5重量%の少なくとも1つの補助剤を含む小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)および/または(XIII)である小ビーズ(XIV)に関する。
【0039】
本発明のより好ましい実施形態は、小ビーズの全重量に基づいて0重量%〜5重量%の少なくとも1つの酸化防止剤を含む小ビーズ(XIV)である小ビーズ(XIV’)に関する。
【0040】
本発明のさらにより好ましい実施形態は、小ビーズの全重量に基づいて0重量%〜5重量%の、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC、パルミチン酸アスコルビル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(ブチル化ヒドロキシトルエンまたはBHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)およびエトキシキン(EMQ)からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤を含む小ビーズ(XIV)である小ビーズ(XIV’’)に関する。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態は、小ビーズの全重量に基づいて0重量%〜5重量%の、ビタミンE(トコフェロール)である少なくとも1つの酸化防止剤を含む小ビーズ(XIV)である小ビーズ(XIV’’’)に関する。
【0042】
小ビーズは、通常、噴霧冷蔵(spray chilled)技術または噴霧冷却(spray cooling)技術を用いることにより製造される。この技術は、噴霧乾燥の分野で広く知られている。例えば、Food Science & Technology 15(2004),330−347において動向が記載されている。
【0043】
噴霧冷蔵または噴霧冷却技術(方法)のステップは、
1)全ての成分(ワックスおよび/または水和脂肪を含む)mを混合するステップと、
2)チャンバ内へ霧化するステップであって、それが、液滴を収めて(case)凝固させるために十分に冷たい気流と接触させられるステップと
である。
【0044】
また、霧化の前に混合物が粉砕されることも好ましい。粉砕ステップは、種々のタイプのミル、すなわちコロイドミルまたはボールミルによって実行することができる。
【0045】
また本発明は、噴霧冷蔵法または噴霧冷却法を用いることによる、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)および/または(XIV’’’)の製造にも関する。
【0046】
また本発明は、噴霧冷蔵法または噴霧冷却法を用いる、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)および/または(XIV’’’)の製造にも関し、本方法は、以下のステップ:
1)全ての成分(ワックスおよび/または水和脂肪を含む)を混合するステップと、
2)チャンバ内へ霧化するステップであって、それが、液滴を収めて凝固させるために十分に冷たい気流と接触させられるステップと
を含む。
【0047】
好ましくは、本発明は、噴霧冷蔵法または噴霧冷却法を用いる、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)および/または(XIV’’’)の製造にも関し、本方法は、以下のステップ:
1)全ての成分(ワックスおよび/または水和脂肪を含む)を混合するステップと、
2)成分の混合物を(好ましくは、コロイドミルまたはボールミルにより)粉砕するステップと、
3)チャンバ内へ霧化するステップであって、それが、液滴を収めて凝固させるために十分に冷たい気流と接触させられるステップと
を含む。
【0048】
カロテノイド粒子(小ビーズの内部)は通常20μmよりも小さい粒径(d0.9)を有する。ボールミルが使用される場合、カロテノイド粒子は通常10μmよりも小さい粒径(d0.9)を有する。
【0049】
従って、本発明は、カロテノイド粒子(小ビーズの内部)が20μmよりも小さい粒径(d0.9)を有する、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)および/または(XIV’’’)である小ビーズ(XV)にも関する。
【0050】
従って、本発明は、カロテノイド粒子(小ビーズの内部)が10μmよりも小さい粒径(d0.9)を有する、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)および/または(XIV’’’)である小ビーズ(XV’)にも関する。
【0051】
本発明に従う小ビーズは、多数の適用分野において使用することができる。それは、食品、飼料製品およびパーソナルケア製品において使用することができる。好ましいのは食品における使用であり、非常に好ましいのは、上記のような小ビーズの、マーガリンおよび飲料(ソフトドリンクなど)における使用である。このような製品において使用される量は、製品および所望される色合いに大きく依存する。
【0052】
小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)、(XIV’’’)、(XV)および/または(XV’)は食品、飼料製品およびパーソナルケア製品の製造において使用され、好ましくは食品の製造において、より好ましくは(ソフト)ドリンクおよびマーガリンの製造において使用される。
【0053】
食品、飼料製品およびパーソナルケア製品の製造のために一般に知られている全ての他の成分も本方法において使用されることは明らかである。
【0054】
従って、本発明は、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)、(XIV’’’)、(XV)および/または(XV’)が使用される、食品、飼料製品およびパーソナルケア製品の製造方法にも関する。
【0055】
上記で既に述べたように、食品、飼料製品およびパーソナルケア製品の製造において使用される小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)、(XIV’’’)、(XV)および/または(XV’)の量は製品に依存する。通常、食品、飼料製品およびパーソナルケア製品中の少なくとも1つのカロテノイドの量は1〜12ppmである。
【0056】
ソフトドリンクにおいて、少なくとも1つのカロテノイドの量は1〜12ppmである。
【0057】
マーガリンにおいて、少なくとも1つのカロテノイドの量は1〜12ppmである。
【0058】
従って、本発明は、小ビーズ(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII’)、(XIII)、(XIV)、(XIV’)、(XIV’’)、(XIV’’’)、(XV)および/または(XV’)が使用され、食品、飼料製品およびパーソナルケア製品中の少なくとも1つのカロテノイドの量が1ppm〜12ppmである、食品、飼料製品およびパーソナルケア製品の製造方法にも関する。
【0059】
現在のさらなる実施形態は、上記の方法から得られる食品、飼料製品およびパーソナルケア製品に関する。
【0060】
上記のように、小ビーズの利点は、これらが、良好な色飽和度と、良好な色安定性(貯蔵中)とを有する最終市場製品(すなわち、(食料品)店で販売される消費者製品)の製造を可能にすることでもある。
【0061】
本特許出願の色測定は全て、分光光度計以外にヒトの眼による色の精神物理的認知に従って色値を表すことができる比色計(Hunter Lab Ultra Scan Pro)により実行される。
【0062】
色測定は、CIEガイドライン(Commission International d’Eclairage)に従って実行される。値は、平面座標L(Lは明度の測定値であり、aは赤−緑−軸の値であり、bは黄−青−軸の値である)のいずれかで表すことができる。色は、円筒座標Cおよびh(C(彩度)は色飽和度の値であり、h(色相)は色合いの角度値である)で表すこともできる。円筒座標を用いると、種々の生成物の色間の容易な比較を行うことができる(図1)。
【0063】
本発明のサンプルの測定のために、以下の機器設定が使用された:
・ カラースケール:CIE L/L
・ 光源定義:D65日光等価物
・ ジオメトリ:拡散/8°
・ 波長:5nmの光学的分解能における350〜1050nmの走査
・ サンプル測定領域直径:19mm(大)
・ 較正モード:透過(ソフトドリンクの場合)および反射(マーガリンの場合)/白色タイル
【0064】
色差は、次の式:
【数1】


(式中、L:明度
A:赤色値および
B:黄色値である)
を用いて計算した。良好(安定)な生成物を有するために10未満のDE値が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】座標系におけるCIE LおよびC
図2】貯蔵中のソフトドリンク用途における色差
図3】貯蔵中のマーガリンにおける色差
【0066】
本発明は以下の実施例によって説明される。全ての温度は℃の単位で与えられ、全ての部および百分率は重量に関する。
【0067】
[方法実施例]
最初の2つの実施例は、本発明に従う小ビーズの製造方法に関する。
【0068】
[実施例1]
66.3gのグリエリドモノステアラート(glyeridmonostearate)(GMS)を容器に入れ、不活性ガス下で85℃まで加熱した。0.7gのdl−α−トコフェロールを攪拌下で溶融GMSに添加した。その後、33.gの結晶性β−カロテンを反応混合物に添加した。混合物を攪拌し、その後コロイドミルを用いることによって85℃で粉砕した。
【0069】
その後、噴霧冷蔵技術(空気の温度は5℃であった)を用いることによって、反応混合物を噴霧乾燥した。384μmの粒径(d0.5)を有する非粘着性で粉塵のない小ビーズが得られた。カロテノイド粒子(小ビーズの内部)の粒径(d0.9)は15μmであった。
【0070】
[実施例2]
66.3gのグリエリドモノステアラート(glyeridmonostearate)(GMS)を容器に入れ、不活性ガス下で85℃まで加熱した。0.7gのdl−α−トコフェロールを攪拌下で溶融GMSに添加した。その後、33.gの結晶性β−カロテンを反応混合物に添加した。混合物を攪拌し、その後ボールミルを用いることによって85℃で粉砕した。
【0071】
その後、噴霧冷蔵技術(空気の温度は5℃であった)を用いることによって、反応混合物を噴霧乾燥した。341μmの粒径(d0.5)を有する非粘着性で粉塵のない小ビーズが得られた。カロテノイド粒子(小ビーズの内部)の粒径(d0.9)は9μmであった。
【0072】
[適用実施例]
以下の実施例は、本発明に従う小ビーズの食品の製造における使用に関する。
【0073】
[実施例3:風味剤β−カロテンエマルション(1.2g/lのβ−カロテン)の製造方法]
第1のステップでは、70℃で攪拌下、50gのエステルガムを50gのオレンジ油中に溶解させた。その後、第2のステップにおいて、ビーカー内で、80gのステップ1の溶液と、4gの実施例1の小ビーズとを混合した。ビーカーを水浴(80℃)に入れ、小ビーズが完全に分散されるまで混合物を攪拌した。
【0074】
第2のビーカー内で、336gの糖シロップ(64°Brixを有する)を560gのアカシアガム溶液(この溶液の重量に基づいて40重量%のアカシアガムおよび60重量%の水)と混合した。50℃で攪拌下、20gのアスコルビン酸をこの混合物に添加した。
【0075】
その後、両方の混合物を攪拌下で混ぜ合わせ、次にローター固定子を用いて50℃で予備乳化させた。最後に、高圧ホモジナイザーを用いて200/50バールで2分間、予備乳化させた混合物 を均質化した。
【0076】
[実施例4:ソフトドリンク(3ppmのβ−カロテン含量)]
1lの容量フラスコ中で、0.2gのソルビン酸カリウムを38.4gの水に溶解させた。続いて攪拌下で、この溶液に、156.2gの糖シロップ(64°Brixを有する)、0.2gのアスコルビン酸および5gの50%のクエン酸溶液(この溶液の重量に基づいて50重量%のクエン酸および50重量%の水)を添加した。その後、2.5gの実施例3の風味剤β−カロテンエマルションを添加し、次に水を添加して、容量フラスコを1リットルまで満たした。
【0077】
そのようにして得られた黄色がかったソフトドリンクをガラスビンに満たし(ボトルキャップ、クラウンキャップにより閉鎖)、水浴中、80℃で1分間低温殺菌した。
【0078】
そのようにして得られた黄色がかったソフトドリンクは以下の特性を有した:
色飽和度(C)=43.1
色合い(h)=83.6°
【0079】
ガラスビン中のこれらのソフトドリンクを室温で貯蔵した。
【0080】
ソフトドリンクは、貯蔵期間中の色安定性に関して非常に良好な性能を示した。90日後のDEは6未満であった(図2を参照)。
【0081】
[実施例5:マーガリン(6ppmのβ−カロテン含量)]
1gの実施例1の小ビーズを、小ビーズが完全に分散されるまで攪拌下で99gのヒマワリ油(60℃)中に分散させた(第1の溶液)。15gの粉乳および5gのNaClを152gの水中に溶解させることによって第2の溶液(水相)を調製した。ココナッツを温めて(60℃)から、4gのLamemul(登録商標)K2001S(Cognisから、これは90%モノグリセリドである、噴霧冷蔵)および2gの大豆レシチン(独国SternchemieからのYellothin 100 IP大豆レシチン)を添加することによって、第3の溶液(油相)を調製した。その後、320gのヒマワリ油を第1の溶液と共に添加した。次に、混合物を50℃に加熱した。次に、ローター固定子(高速)を用いることによりこの混合物に水相をゆっくり添加し、得られた生成物を、高速でローター固定子を用いてさらに1分間処理した。
【0082】
そのようにして得られたマーガリンを製氷機に入れて5℃まで冷却した。次に、マーガリンを典型的な容器に満たし、4℃の冷蔵庫で貯蔵した。
【0083】
そのようにして得られたマーガリンは以下の特性を有した:
色飽和度(C)=37.6
色合い(h)=78.7°
【0084】
マーガリンは、貯蔵期間中の色安定性に関して非常に良好な性能を示した。60日後のDEは5未満であった(図3を参照)。
図1
図2
図3