特許第5925306号(P5925306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5925306優れたハイレート特性を有するナノ構造化Li4Ti5O12の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925306
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】優れたハイレート特性を有するナノ構造化Li4Ti5O12の製造
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20160516BHJP
   H01M 4/485 20100101ALN20160516BHJP
【FI】
   C01G23/00 B
   !H01M4/485
【請求項の数】27
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-518503(P2014-518503)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公表番号】特表2014-525886(P2014-525886A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】SG2012000227
(87)【国際公開番号】WO2013002729
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】61/501,344
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100102668
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲生
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【弁理士】
【氏名又は名称】牛山 直子
(72)【発明者】
【氏名】バラヤ, パラニ
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン, シュリラマ
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101618890(CN,A)
【文献】 特表2004−535352(JP,A)
【文献】 特表2009−539739(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0035881(KR,A)
【文献】 Naiqing Zhang et al.,Facile preparation of nanocrystalline Li4Ti5O12 and its high electrochemicalperformance as anode material for lithium-ion batteries,Electrochemistry Communications,2011年 4月 6日,vol. 13,p.654-656
【文献】 Chunhai Jiang et al.,Effect of particle dispersion on high rate performance of nano-sized Li4Ti5O12 anode,Electrochimica Acta,2007年 7月10日,Volume 52, Issue 23,p.6470-6475
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00 − 23/08
H01M 4/485
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法が:
ソフトテンプレート化合物、リチウムイオン含有化合物、及びチタンイオン含有化合物を含有している溶媒を提供すること;
溶媒を除去してチタン酸リチウム前駆体を得ること;及び
チタン酸リチウム前駆体を焼成して結晶性チタン酸リチウム粒子を得ること(ここで、リチウムイオン含有化合物とチタンイオン含有化合物は化学量論比にあり、そしてリチウムイオン含有化合物に対するソフトテンプレート化合物の重量比は1:2〜3:2である):
を含んでなる、ナノ構造化チタン酸リチウム粒子を製造する方法であり、
ソフトテンプレート化合物が臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、又は臭化オクチルトリメチルアンモニウムである、ナノ構造化チタン酸リチウム粒子を製造する方法
【請求項2】
焼成工程の後に、結晶性チタン酸リチウム粒子を200〜600rpmで1〜5時間ボールミル粉砕して、ミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を得ることを更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結晶性チタン酸リチウムを300〜400rpmで3〜4時間ボールミル粉砕する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を400〜750℃で1〜5時間アニールしてナノ構造化チタン酸リチウム粒子を得ることを更に含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を500〜700℃で1〜2時間アニールする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
チタン酸リチウム前駆体を600〜800℃で2〜8時間焼成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
チタン酸リチウム前駆体を600〜750℃で4〜6時間焼成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
媒がエタノールと水の混合物である(ここで、エタノールと水の重量比は1:1〜6:1である)、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
リチウムイオン含有化合物が酢酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム、又は炭酸リチウムであり、そしてチタンイオン含有化合物がチタンイソプロポキシドである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
焼成工程の後に、結晶性チタン酸リチウム粒子を200〜600rpmで1〜5時間ボールミル粉砕してミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を得ること、及びミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を400〜750℃で1〜5時間アニールしてナノ構造化チタン酸リチウム粒子を得ること(ここで、チタン酸リチウム前駆体を600〜800℃で2〜8時間焼成する)を更に含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チタン酸リチウム前駆体を600〜750℃で4〜6時間焼成し、結晶性チタン酸リチウム粒子を300〜500rpmで3〜4時間ボールミル粉砕し、そしてミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を500〜700℃で1〜2時間アニールする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リチウムイオン含有化合物が酢酸リチウム又は塩化リチウムであり、そしてチタンイオン含有化合物がチタンイソプロポキシドである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
焼成工程の後に、結晶性チタン酸リチウム粒子を200〜600rpmで1〜5時間ボールミル粉砕すること、及びミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を400〜750℃で1〜5時間アニールすること(ここで、チタン酸リチウム前駆体は600〜800℃で2〜8時間焼成する)を更に含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
チタン酸リチウム前駆体を600〜750℃で4〜6時間焼成し、結晶性チタン酸リチウム粒子を300〜400rpmで3〜4時間ボールミル粉砕し、そしてミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を500〜700℃で1〜2時間アニールする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ソフトテンプレート化合物が臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、又は臭化オクチルトリメチルアンモニウムであり、そして溶媒がエタノールと水の混合物である(ここで、エタノールの水に対する重量比は1:1〜3:1である)、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
リチウムイオン含有化合物が酢酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム又は炭酸リチウムであり;そしてチタンイオン含有化合物がチタンイソプロポキシドである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
焼成工程の後に、結晶性チタン酸リチウム粒子を200〜600rpmで1〜5時間ボールミル粉砕してミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を得ること、及びミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を400〜750℃で1〜5時間アニールしてナノ構造化チタン酸リチウム粒子を得ること(ここで、チタン酸リチウム前駆体は600〜800℃で2〜8時間焼成する)を更に含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
チタン酸リチウム前駆体を600〜750℃で4〜6時間焼成し、結晶性チタン酸リチウム粒子を300〜400rpmで3〜4時間ボールミル粉砕し、そしてミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を500〜700℃で1〜2時間アニールする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
リチウムイオン含有化合物が酢酸リチウムであり、そしてチタンイオン含有化合物がチタンイソプロポキシドである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
焼成工程の後に、結晶性チタン酸リチウム粒子を200〜600rpmで1〜5時間ボールミル粉砕してミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を得ること、及びミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を400〜750℃で1〜5時間アニールしてナノ構造化チタン酸リチウム粒子を得ること(ここで、チタン酸リチウム前駆体は600〜800℃で2〜8時間焼成する)を更に含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
チタン酸リチウム前駆体を600〜750℃で4〜6時間焼成し、結晶性チタン酸リチウム粒子を300〜400rpmで3〜4時間ボールミル粉砕し、そしてミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を500〜700℃で1〜2時間アニールする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
リチウムイオン含有化合物が酢酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム、又は炭酸リチウムであり、そしてチタンイオン含有化合物がチタンイソプロポキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
焼成工程の後に、結晶性チタン酸リチウム粒子を200〜600rpmで1〜5時間ボールミル粉砕してミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を得ること、及びミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を400〜750℃で1〜5時間アニールしてナノ構造化チタン酸リチウム粒子を得ること(ここで、チタン酸リチウム前駆体は600〜800℃で2〜8時間焼成する)を更に含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
チタン酸リチウム前駆体を600〜750℃で4〜6時間焼成し、結晶性チタン酸リチウム粒子を300〜400rpmで3〜4時間ボールミル粉砕し、そしてミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を500〜700℃で1〜2時間アニールする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
リチウムイオン含有化合物が酢酸リチウム又は塩化リチウムであり、そしてチタンイオン含有化合物がチタンイソプロポキシドである、請求項16又は22に記載の方法。
【請求項26】
焼成工程の後に、結晶性チタン酸リチウム粒子を200〜600rpmで1〜5時間ボールミル粉砕してミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を得ること、及びミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を400〜750℃で1〜5時間アニールしてナノ構造化チタン酸リチウム粒子を得ること(ここで、チタン酸リチウム前駆体は600〜800℃で2〜8時間焼成する)を更に含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
チタン酸リチウム前駆体を600〜750℃で4〜6時間焼成し、結晶性チタン酸リチウム粒子を300〜400rpmで3〜4時間ボールミル粉砕し、そしてミル粉砕したチタン酸リチウム粒子を500〜700℃で1〜2時間アニールする、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
リチウムイオンを可逆的に交換できる多数の物質がリチウムイオン二次電池の開発のために研究されている。チタン酸リチウム、すなわちLiTi12はこれらの電池の活性な陰極材料として有望である。Ohzuku et al., Journal of the Electrochemical Society, 142, 1431 (1995); 及び Thackeray, Journal of the Electrochemical Society, 142, 2558 (1995) を参照されたい。
【0002】
高性能リチウムイオン電池はナノ構造化チタン酸リチウム粒子を必要としている。従来の固相反応によって製造されたチタン酸リチウム粒子はミクロンサイズの粒子を有しているので、高性能の条件を満たしていない。更に、固相反応は、非常に高い温度(例えば、800℃を超える)で長時間(例えば24時間)かけて起こるので、かなり多くのエネルギーを消費する。一方、熱水合成はナノ構造化スピネル型チタン酸リチウムを提供する。Tang et al., Electrochemistry Communications 10, 1513 (2008) 参照されたい。しかしながら、熱水方法は低収率であって、大量生産に適していない。
【0003】
ナノ構造化チタン酸リチウムを高収率及び低コストで製造する簡便な方法の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ナノ構造化チタン酸リチウムを固相方法と比較してより低い温度及びより短い焼成時間でナノ構造化チタン酸リチウム粒子を合成するために用いることができる方法の発見に基づいている。
【0005】
本開示は、粒子の結晶化度に妥協しない、実質的な粒径減少のための、ソフトテンプレート方法とそれに続く高エネルギーボールミル粉砕を用いるナノ構造化チタン酸リチウム粒子を製造する方法を提供する。この方法は予想外の高収率で最終産物をもたらして大規模生産に適している。
【0006】
方法は以下の工程を含んでいる:(a)ソフトテンプレート化合物、リチウムイオン含有化合物、及びチタンイオン含有化合物を含有している溶媒を供給すること;(b)溶媒を除去してチタン酸リチウムの前駆体を得ること;及び(c)チタン酸リチウム前駆体を焼成して結晶性チタン酸リチウム粒子を得ること。
【0007】
工程(a)では、溶媒はエタノールと水の混合物(例えば、エタノール:水、容量比1:1〜6:1、好ましくは、1:1〜3:1)であってよく;ソフトテンプレート化合物は、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム、塩化ドコシルトリメチルアンモニウム、プルロニックP−123(pluronic P−123)、プルロニックE127、プルロニックF68、又はこれらの組み合わせ(例えば、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、及び臭化セチルトリメチルアンモニウム)であってよく;リチウムイオン含有化合物は、酢酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム、又は炭酸リチウム(例えば、酢酸リチウム及び塩化リチウム)であってよく;そしてチタンイオン含有化合物はチタンイソプロポキシドであってよい。リチウムイオン含有化合物とチタンイオン含有化合物は化学量論比(例えば、モル比が4:5〜4.2:5)にあり、リチウムイオン含有化合物に対するソフトテンプレート化合物の重量比は1:2〜3.2である。
【0008】
工程(b)で得られたチタン酸リチウム前駆体を、工程(c)で600〜800℃で2〜8時間(例えば、600〜750℃で4〜6時間)焼成して結晶性チタン酸リチウム粒子が得られる。
【0009】
こうして得られた結晶性チタン酸リチウム粒子は、さらに200〜600rpmで1〜5時間(例えば、300〜400rpmで3〜4時間)ボールミル粉砕されて、500〜750℃で1〜5時間(例えば、500〜700℃で1〜2時間アニールされる。
【0010】
上記方法で製造したナノ構造化チタン酸リチウム粒子も本開示の範囲内である。
【0011】
スピネルチタン酸ナトリウム結晶を含有していて、5〜500nm(例えば、10〜80nm)の粒径及び3〜10nmの細孔径を有するナノ構造化チタン酸リチウム粒子も更に本開示の範囲内である。
【0012】
本発明の1つ又はそれ以上の実施態様の詳細は以下の記述に説明されている。本発明のその他の特徴、目的、及び利点は記述及び特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示はメソ多孔性ナノ構造化チタン酸リチウム粒子を製造する費用効率が高い方法を提供し、この粒子は高出力密度適用のためのリチウムイオン二次電池(LIBs)における陽極材料として用いられる。このナノ構造化物質のレート特性は同じ物質のミクロンサイズ粒子のそれを上回っている。
【0014】
方法は3つの必須工程、すなわち、(a)〜(c)、及び2つの任意工程、すなわち、ボールミル粉砕工程及びアニール工程を含んでいる。上記の[発明の概要]の項を参照されたい。これらの工程のそれぞれを以下に詳細に記載する。
【0015】
工程(a)
ソフトテンプレート合成によるメソ多孔性ナノ構造化チタン酸リチウム粒子を製造する工程では混合物を投入する。混合物は、溶液であってもスラリーであってもよいが、ソフトテンプレート化合物、リチウムイオン含有化合物、チタンイオン含有化合物、及び溶媒を所定の重量比で含んでいる。全ての化合物が溶媒に溶解している溶液が好ましい。混合物がスラリーの場合は、化合物が溶媒中に均一に分散していることが好ましい。化合物が化学量論比(例えば、Li:Tiがモル比で、4:5〜4.2:5である)であることが好ましい。
【0016】
混合物を室温又は高温で適切な時間撹拌してチタン酸リチウム前駆体の形成を可能にする、この前駆体はソフトテンペレート化合物でコーティングされている。何の理論にもとらわれないが、ナノ結晶を形成するメカニズムは国際特許出願公開第2012/023904号に記載されている。
【0017】
通常は炭素含有界面活性剤(例えば、陽イオン界面活性剤)である、ソフトテンプレート化合物はその臨界ミセル濃度においてミセル内に自己集合できる。これらのミセルはチタン酸リチウムナノ結晶の成長に対してミクロ又はメソ細孔をもたらし、それらの過剰成長も抑制する。ソフトテンプレート化合物はチタン酸リチウムナノ結晶を成長させるのに適している形態及びサイズをもたらす界面活性剤であってよい。例えば、上記の[発明の概要]の項を参照されたい。
【0018】
リチウムイオン含有化合物及びチタンイオン含有化合物はチタン酸リチウムナノ結晶を形成するリチウムイオン及びチタンイオンのそれぞれの源である。これらの化合物は溶媒中にナノ粒子として溶解又は分散することが好ましい。これらは粉末又は微粒子形態で提供できる。入手可能であれば、これらの水和物も用いることができる。このような化合物は当該技術分野において周知である。
【0019】
リチウムイオン含有化合物はリチウムのイオン化合物、例えば、有機リチウム塩、無機リチウム塩、及び水酸化リチウムであってよい。例は、これに限定されないが、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸水素リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素アンモニウムリチウム、リン酸二水素アンモニウムリチウム、ケイ酸リチウム、アンチモン酸リチウム、ヒ酸リチウム、ゲルマン酸リチウム、酸化リチウム、リチウムアルコキシド、リチウムエノラート、リチウムフェノキシド、カルボン酸(例えば、酢酸塩及びシュウ酸塩)又はヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸塩、クエン酸塩、及び酒石酸塩)とのリチウム塩、及びこれらの組み合わせを包含する。
【0020】
チタンイオン含有化合物はイオン化合物、例えば、有機塩及び無機塩であってよい。例は、これに限定されないが、フッ化チタン、塩化チタン、臭化チタン、ヨウ化チタン、アセチルアセトナトリチウム、硝酸チタン、亜硝酸チタン、硫酸チタン、硫酸水素チタン、亜硫酸チタン、硫酸水素チタン、炭酸チタン、炭酸水素チタン、ホウ酸チタン、リン酸チタン、リン酸水素アンモニウムチタン、リン酸二水素アンモニウムチタン、酸化チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)、硫酸酸化チタン、ケイ酸チタン、アンチモン酸チタン、ヒ酸チタン、ゲルマン酸チタン、酸化チタン、水酸化チタン、チタンアルコキシド、チタンエノラート、チタンフェノキシド、カルボン酸(例えば、酢酸塩及びシュウ酸塩)又はヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸塩、クエン酸塩、及び酒石酸塩)とのチタン塩、及びこれらの組み合わせを包含する。これらの化合物中のチタンイオンは、チタン酸リチウム産物が必要としているのとは異なっている酸化状態を有していてもよいということに注目されたい。酸化又は還元条件を最終産物が必要としている出発イオンの酸化状態をもたらすように利用できる。
【0021】
溶媒は無機又は有機溶媒であってよい。例は、これに限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールヘキサノール、又はこれらの組み合わせを包含する。好ましい溶媒はエタノールと水の混合物(例えば、エタノール:水は1:1〜3:1(v/v)である)である。
【0022】
混合物に戻ると、これを、ミル粉砕、スプレー、振とう、高せん断混合、濃縮、及び化学反応のような、物理的及び化学的両方法で、化合物の溶解又は均質分散を達成するように撹拌することができる。
【0023】
工程(b)
工程(a)で得られた混合物から溶媒を(例えば、蒸発温度で蒸発して、濾過して、及び遠心分離で)除去してチタン酸リチウム前駆体を得る。
【0024】
工程(c)
こうして得られたチタン酸リチウム前駆体を焼成すると50〜100nm(例えば、250〜500nm)のサイズを有する結晶性チタン酸リチウム粒子が得られる。焼成は高温(例えば、750℃)で長時間(例えば、4〜6時間)実施する。こうして得られた結晶性チタン酸リチウム粒子はナノサイズ(例えば、3〜10nm)のメソ細孔を有している。このメタ細孔は2つ又はそれ以上の隣接するチタン酸リチウムナノ結晶の間に形成される。細孔のサイズは、以下に記載するように、焼成温度及びミル粉砕条件によって制御できる。この工程を静大気中で実施することが好ましい。
【0025】
所望により、結晶性チタン酸リチウム粒子をボールミル粉砕できる。ボール粉砕速度(例えば、300〜500rpm)及び時間(例えば、3〜4時間)、並びにボールのリチウム粒子に対する重量比は、50nm以下(例えば、5〜15nm)のサイズの最終ナノ粒子をもたらすように最適化される。更に、ボールミル粉砕の後、粉砕したチタン酸リチウム粒子をアニール(例えば、400〜750℃で1〜5時間)できる。アニーリングは高エネルギーミル粉砕の間に進展した格子歪みを除去して、同様にミル粉砕中に失った結晶性を修復する。こうして得られたナノ構造化チタン酸リチウム粒子は、スピネル結晶構造、30〜500nmの粒子サイズ、3〜10nmのピーク細孔サイズ分布を有している。
【0026】
当業者は、過度な実験なしで、溶媒、リチウムイオン含有化合物、及びチタンイオン含有化合物のタイプ及び量を決定できる。当業者は焼成時間、ミル粉砕時間、及びアニール時間のような、条件も決定できる。
【0027】
以下の具体的な実施例は単なる説明と見なされて、どんなものであれ決して開示の残余を限定しない。更なる詳述をしなくても、当業者は本明細書の記載に基づいて、本発明を最大限まで利用できる。本明細書で引用されている刊行物はその全てが参照により取り込まれている。
【実施例】
【0028】
実施例1:臭化セチルトリメチルアンモニウムをソフトテンプレート化合物として用いるナノ構造化チタン酸リチウム粒子の製造
単純でグラムスケールのソフトテンプレート方法、続いて高エネルギーボールミル粉砕及び穏和な熱処理を用いてナノ構造化チタン酸リチウム粒子を合成した。初めに、3.64〜7.28グラムの臭化セチルトリメチルアンモニウムを水とエタノールの混合物(3:1の容量比で、120〜240ml)に溶解した。この溶液に酢酸リチウム(2.42〜4.84グラム)及びチタンイソプロポキシド(8.68〜17.36グラム)を加えた。得られた混合物を室温で24〜48時間撹拌した。70〜80℃での回転式のエバポレーションによって溶媒を除去してチタン酸リチウムの前駆体を得た。前駆体を600〜750℃の静大気中で4〜6時間焼成して結晶性チタン酸リチウム粒子(「C16−LTO」)を得た。この粒子を300〜400rpmで3〜4時間ボールミル粉砕し、続いて500〜700℃で1〜2時間加熱してナノ構造化チタン酸リチウム粒子を得た。こうして得られた粒子(「LTO−BM−ANL」)は、全般に50〜80nmのサイズを有していた。
【0029】
実施例2:臭化オクチルトリメチルアンモニウムをソフトテンプレート化合物として用いるナノ構造化チタン酸リチウム粒子の製造
臭化セチルトリメチルアンモニウムの代わりに臭化オクチルトリメチルアンモニウム(2.42〜4.84グラムの量で)を用いる以外は実施例1に記載されているものと同じ方法を用いてチタン酸リチウム粒子を製造した。また、酢酸リチウム及びチタンイソプロポキシドの量はそれぞれ1.68〜3.36グラム及び6.025〜12.05グラムであった。チタン酸リチウム粒子(「C8−LTO」)はボールミル粉砕の前に、全般に750〜1000nmのサイズを有していて、以下の実施例4で試験した。
【0030】
実施例3:ナノ構造化チタン酸リチウム粒子の特性化
チタン酸リチウム粒子の粉末X線回析(XRD)を実施した。粒子のXRD図形は粒子がスピネルチタン酸リチウム結晶の純粋相を含んでいたことを示す。他の相、例えば、ルチル及びアナターゼTiOのピークは、チタン酸リチウム前駆体を600〜800℃で2〜8時間焼成した後に消滅した。
【0031】
高エネルギーボールミル粉砕は、最も顕著なチタン酸リチウムXRDピークの消滅からも明らかなように、チタン酸リチウムの結晶性の減少を引き起こした。更に、残りのピークはミル粉砕前と比べてより広く不定型であった。
【0032】
ミル粉砕したチタン酸リチウム粒子のアニールはチタン酸リチウムスピネル結晶の全てのXRDピークの再現をもたらした。
【0033】
XRD特性化に加えて、粒子を電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)下でも観察した。初期材料C16−LTO(実施例1で製造した)及びC8−LTO(実施例2で製造した)は、それぞれ250〜500nm及び750〜100nmの範囲内であった。C16−LTO粒子はよく結合しているように見えたのに対してC8−LTOは分離しているように見えた。この相違は、チタン酸リチウム物質の望ましい粒子サイズに対して適切な界面活性剤を選択することの重要性を示している。ボールミル粉砕によって、粒子サイズの劇的な減少がFEDEM画像で観察された。ボールミル粉砕したサンプル、すなわち、C16−LTO及びC8−LTOの粒子サイズはいくらかの凝集を伴って5〜15nmであった。アニールしたサンプル、すなわち、LTO−BM−ANLの粒子サイズはわずかな粒子成長を伴った20〜30nmであった。
【0034】
実施例4:ナノ構造化チタン酸リチウム粒子の電気化学的貯蔵能力
こうして製造されたナノ構造化チタン酸リチウムの電気化学的貯蔵能力に対する異なった粒子サイズの影響を測定するために、コイン型リチウム電池を製造した。金属リチウムを参照電極(陰極)として用いた。陽極は、重量で、チタン酸リチウム75%、スーパーPカーボンブラック15%、及びポリフッ化ビニリデンからなる結合剤10%を含有した。電解質は炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合物(1:1、v/v)中に1モル/LのLiPFを含有した。セルガード(Celgard)2502をセパレーターとして用いた。
【0035】
電池を異なった電流密度、すなわち、1C、2C、5C、10C、20C、30C、40C、50C、60C、80C、及び100Cでサイクルした(cycled)。ここで1Cは1時間以内に175mAhg−1を引き出すことと関連している。電池は予想外に安定な貯蔵能力を明らかにした。例えば、C8−LTO、C16−LTO、及びLTO−BM−ANLを含有している電池は、1Cにおいてそれぞれ105、140、及び140mAhg−1の貯蔵能力を示した。これらの電池は1.55V及び1.61Vにおいて、対応するリチウム挿入(放電)及びリチウム抽出(充電)とそれぞれ異なった放電安定期も示した。
【0036】
LTO−BM−ANLを含有している電池を、その放電容量の多くを失わずに高速充電できることも予想外である。電池を6〜30分の間高速充電に付した(それぞれ、2C〜10Cに対応)後、1Cにおけるその初期放電容量のほぼ89%を保持した。更に、電池は100Cレートにおいてさえも75mAhg−1の顕著な放電容量を有していたことを結果が示した。
【0037】
(その他の実施態様)
本明細書に開示されている全ての特徴を任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書に開示されているそれぞれの特徴を同じ、均等な、又は類似した目的で提供されている代替の特徴と置き換えることができる。従って特に明記されていない限り、開示されているそれぞれの特徴は均等又は同一の特徴の総括系列の一例に過ぎない。
【0038】
上の記載より、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に解明でき、そしてその精神及び範囲から逸脱することなく、発明の各種変更及び修正を行ってそれを各種の使用及び条件に適用することができる。従ってその他の実施態様も特許請求の範囲内である。