(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に,本発明の一実施の形態に係る車両周囲監視装置について図面を用いて説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では,まず,エンジン始動時に前回のエンジン停止時に記録されている付着物(異物,汚れ)の種類・付着量・付着部位(以下,付着物情報と呼ぶ)を読込む。次に,エンジン始動後の所定時間内の走行中(以下,初期診断時間内と呼ぶ)に,車載されたカメラで車両周辺を監視して,雨滴や泥,白濁,水滴痕,落ち葉などの付着物が付着していることを判定し,記録されている付着量よりも所定量以上増加していれば洗浄装置を駆動する。そして,エンジン停止時に付着物情報を記録するものである。
【0011】
図1は,本発明の第1の実施の形態に係わる車両周囲監視装置の構成を説明する図である。車両周囲監視装置100は,カメラレンズに付着した付着物を検知するためのものであり,図示していない画像処理ECU(Electric ControlUnit)内に構成されている。車両周囲監視装置100は,画像処理ECU内に構成されるものに限定されず,専用のECUや,車載カメラ(
図1には不図示)のECU等の他の車載ECUに構成されていてもよく,また,複数のECUの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0012】
車両周囲監視装置100は,
図1に示すように,撮像画像取得部101と付着物検知部102とレンズ状態判定部103とレンズ洗浄部104とレンズ状態記録部105とレンズ状態読出部106と記録部107と車両情報取得部108とを備える。撮像画像取得部101は,車載カメラ(
図1には不図示)によって予め設定された時間間隔をおいて撮像された撮像画像を取得する。付着物検知部102は,泥・水滴・白濁・落ち葉等の付着物のいずれか1つ以上の検出手段を持つ。レンズ状態判定部103は,後述するレンズ状態読出部106が後述する記録部107から読み出したレンズ状態と,付着物検知部102から得られたレンズ状態(詳細を後述する)とを比較して,画像認識の性能が低下するレンズ状態であると判定するために,レンズへの付着物が増加したか否かを判定する。ここで、画像認識とは、車両検知処理,歩行者検知処理,車線区分線認識処理,標識認識処理の少なくとも1つを含む。レンズ状態判定部103は,レンズへの付着物が増加した場合,画像認識が不能の状態又は画像認識の性能が低下するレンズ状態であると判定する。レンズ洗浄部104は,エア噴射やウォッシャ噴射,ワイパ駆動のいずれか1つ以上を実行するレンズ洗浄装置に向けて起動信号を送信してレンズ洗浄装置を起動してレンズ表面を洗浄する。車両情報取得部108は,車速,車輪速,舵角,イルミネーション情報,ワイパ駆動スイッチ情報,ヨーレート情報のうち,いずれか1つ以上の車両情報を取得する。レンズ状態記録部105は,エンジン停止時にレンズ状態を記録部107に送信して記録させる。レンズ状態読出部106は,エンジン始動時にレンズ状態を記録部107から読み出す。
【0013】
図2は,車両周囲監視装置100とその周囲装置との関係を表すブロック図である。
図2には,前述した車両周囲監視装置100を構成するECUとしてECU110が図示されている。そして,車両周囲監視装置100を構成するECU110の入力側には,車載カメラ111と車速センサ121と舵角センサ122とイルミネーションセンサ123と車輪速センサ124とワイパ駆動スイッチ125とヨーレートセンサ126とが接続されている。車載カメラ111は,車両前方あるいは後方などの自車両周辺を観測することに用いられる。ECU110は,車速センサ121から自車両の速度を得る。ECU110は,舵角センサ122から自車両のハンドルの回転角度を得る。ECU110は,イルミネーションセンサ123から,自車両のヘッドライトやウィンカといった灯火類の点灯状態を得る。ECU110は,車輪速センサ124から,各車輪の回転速度を得る。ワイパ駆動スイッチ125は,ドライバーが手動で,もしくは窓ガラスへの雨滴付着に連動して自動で,フロントワイパまたはリアワイパを駆動する。ECU110は,ヨーレートセンサ126から車両走行方向の変化を得る。
【0014】
また,車両周囲監視装置100を構成するECU110の出力側には,警報音を出力するためのスピーカ112と,警報を出力した対象を表示するためのモニタ113と,レンズ洗浄装置115が接続されている。レンズ洗浄装置115は,レンズ洗浄部104から送信される起動信号に基づいて起動されて,エア噴射,ウォッシャ噴射,ワイパ駆動などを行い,車載カメラ111のカメラレンズを洗浄する。
【0015】
車載カメラ111は,いわゆる単眼カメラであり,自車の周囲を撮像するために車両に取り付けられている。車載カメラ111は,車両後方を撮像するリアカメラに限定されるものではなく,車両前方を撮像するフロントカメラや,車両側方を撮像するサイドカメラであってもよく,これらを全て備えたものであってもよい。
【0016】
また,モニタ113は,車載カメラ111の映像と画像認識結果を重畳して表示しても良いし,認識結果をアイコン化して表示しても良いし,LEDや電球等のランプのみで認識結果を通知するものであってもよく,これらを全て備えたものであっても良い。
【0017】
車載カメラ111は,例えばCCDカメラやCMOSカメラであって,レンズに入射した可視光や近赤外光や遠赤外光などを受光素子(不図示)で受光する。車載カメラ111は,受光素子(不図示)にて受光した光の強度等に応じて電荷を蓄積して蓄積電荷に応じた信号を増幅して出力する。近年はカメラ内に記憶素子とプロセッサを内蔵することにより,撮像後にカメラ内でレンズ歪みを補正し,出力するものもある。出力はアナログもしくはデジタル信号が使われることが多いが,第1の実施の形態ではアナログ信号を仮定して話を進める。出力されたアナログ映像信号は,撮像画像取得部101によってA/D変換されるが,その際,A/D変換の電圧と輝度値のマッピングパラメータを変更することで,同一信号の映像をより明るく,もしくは,より暗い輝度値で取得してメモリ(不図示)に格納することも可能である。
【0018】
こうしてメモリ(不図示)に格納された画像を用いて,付着物検知部102にて付着物検知をおこなう。この付着物検知部102は,水滴検知,泥検知,白濁検知,水滴痕検知,異物付着検知のうち少なくとも1つ以上を用いているが,複数の検知をそれぞれ行い,それぞれ結果を保持してもよい。各検知ロジックの概要については後述する。
【0019】
付着物検知部102は,これらの検知ロジックの出力として,付着位置マスクと付着情報テーブルと称する情報を出力する。付着位置マスクは,詳細を後述するが,各検知ロジック毎に出力される。
【0020】
図4(b)には,
図4(a)に例示される画面に対応する付着位置マスク134が例示されている。
図4(a)には,検知ロジックにより検知された付着物132が例示されている。
図4(b)の付着位置マスク134には,それらの付着物132に対応する位置に付着物領域133が含まれている。
【0021】
付着物検知部102は,
図4(a)に例示されるような該検知ロジックに検知された付着物132に対応する
図4(b)に示される付着位置マスク134と,
図5に示されるような画面内の付着物数と付着物面積を含む付着情報テーブル135とを出力する。
【0022】
この付着物検知部102によって出力された付着位置マスク134と付着情報テーブル135は,エンジン停止時またはシステムへの電源供給途絶時に,図示しない蓄電池からの電源供給を用いて,今回走行のレンズ最終状態として記録するように、レンズ状態記録部105によって記録部107に送信されて記録される。ここではエンジン停止時にと記載したが,例えば,エンジン起動中の一定時間毎に記録動作を行い,エンジン停止時に結果的に今回走行のレンズ最終状態が記録されているようにレンズ状態記録部105を構成してもよく,その場合には前述の蓄電池が不要となるという効果がある。または,車速が一定以下に下がった時点をもって停車と見なしてレンズ状態記録部105が記録動作を開始してもよく,その場合にも前述の蓄電池が不要になるほか,記録部107での書込回数を更に減らせることから,記録装置の寿命を延ばせるという効果もある。
【0023】
レンズ状態読出部106は,エンジン始動時またはシステムへの電源供給開始時に前回走行時のレンズ最終状態として,付着位置マスク134と付着情報テーブル135とをレンズ情報として読み出すものである。こちらもエンジン始動時にと記載したが,例えばエンジン始動後に初めて車速が所定の速度を超えた場合に読み出すようにすることで,頻繁な記録部107による読出回数を抑える効果が期待できる。
【0024】
記録部107は,例えばFlash−ROMやハードディスク,ソリッドステートディスクで構成されており,レンズ状態記録部105とレンズ状態読出部106からの要求に応じて,記録されている情報を送受信する。また,読み書き時のエラー状態を記録しておき,エラーが発生していない記録ブロックのみ使用する機能を持っていてもよい。
【0025】
次に,レンズ状態判定部103では,付着物検知部102によって検知された付着位置マスクおよび付着情報テーブルと,レンズ状態読出部106によって読み出された以前のエンジン停止時に記録されている付着位置マスクおよび付着情報テーブルとを比較して,記録されている付着量よりも所定量以上増加しているとき,洗浄装置を駆動する信号を,レンズ洗浄部104に出力する。レンズ状態判定部103の説明において前述したレンズ状態は,付着位置マスクおよび付着情報テーブルを指す。
【0026】
レンズ洗浄部104は,空気ノズル・ウォッシャノズル・ワイパーブレードの少なくとも1つ以上からなるレンズ洗浄装置115を制御して,レンズ状態判定部103からの信号により,レンズ洗浄装置115にレンズ洗浄を実施させる。
【0027】
また,車両情報取得部108は,車速,車輪速,舵角,イルミネーション情報,ワイパ駆動スイッチ情報,ヨーレート情報のうち少なくとも1つ以上を車両からCAN(Car
Area Network)を介して受信する。
【0028】
次に
図2を用いて,ECU110とその周辺装置との連携について説明する。ECU110は,車載カメラ111から映像を入力するとともに,そのときの自車挙動を算出するために,車速センサ121および舵角センサ122,イルミネーションセンサ123,車輪速センサ124,ワイパ駆動スイッチ125,ヨーレートセンサ126からのセンサ情報およびスイッチ情報を受信する。これらのセンサ類は自車挙動を算出するために使われるセンサであれば何でも良く,車輪速パルスセンサ,ハンドル角センサ,舵角動力補助装置,車高センサ,GPSセンサ,加速度センサなどを用いてもよい。また,イルミネーションセンサ123は,自車の灯火類の状態を示すセンサであり,例えばヘッドライトを照射する状況は,周囲が暗い環境であると判断することができる。ほかに自動ヘッドライト点灯装置に使われる照度センサなどを利用したり,車載カメラ111等から得られるブライトネス信号や,絞り情報およびシャッタ速度情報を利用しても周囲の明るさを取得可能である。
【0029】
ECU110は車両周囲監視を実行した結果をモニタ113に表示したり,必要に応じてドライバーに注意喚起を促すため,警報音をスピーカ112から鳴らしたり,例えば付着物量が多かったり,画像上で白線検知や車両検知などの画像認識ロジックの処理領域に該当する領域に付着物がある場合に,システムが動作不能であることをユーザに通知する。
【0030】
次に
図3,
図4(a)および(b),
図5,および
図6を用いて,記録部107が記録する,付着位置マスクと付着情報テーブルの内容について説明する。
【0031】
図3は車両にカメラが搭載されている様子を示す図であり,
図4(a)および(b)はレンズに対する付着物が画像中で観測される様子を示す図であり,
図5は付着情報テーブルを説明する図である。
【0032】
車載カメラ111は,
図3に示すように車両210に搭載されている車載カメラ220であり,車両走行時の巻き上げや,降雨や降雪により,泥・水滴・雨滴・氷粒・除雪剤などの付着物230がカメラレンズに付着する。こうした付着物230はその種類と光源によって透明・半透明・不透明に見え,更に走行中に動的に照明環境が変わることで,付着物を通して撮像される画像も変化する。また,昼夜状態によって付着物の見え方が異なるため,昼夜毎に各付着物の検知ロジックを準備することで,検知性能を向上できる効果がある。
【0033】
図4(a)はカメラレンズ131の表面上に付着物132が存在する様子を示している。水滴検知,泥検知,白濁検知,水滴痕検知,異物付着検知などの検知ロジックによって,
図4(b)のように,撮像された画像上の付着物領域133が付着物132の位置に対応して特定され,これらの付着物領域133を付着位置マスク134として各検知ロジック毎に記録する。なお,この付着位置マスク134は必ずしも入力画像の解像度と同じである必要はなく,検知ロジックによってその解像度を変えても良い。解像度を変えることで,記録に必要な記憶容量を節約でき,さらに記録時に必要な書込時間を削減することができる効果がある。
【0034】
図5に示すように,付着情報テーブル135には,各付着物検知ロジックの検知結果テーブル136を持っている。
【0035】
各付着物検知ロジックによって,そのロジック特有の付着物が検出され,付着物の個数や面積,重心,付着時間が得られる。システムの起動後の一定時間内で検出された付着物を記憶しておき,それ以降の走行時に追加で付着した付着物と区別する。これにより,新規付着物に対しては洗浄動作を行い,最初からの付着物に対しては洗浄動作を抑止することで,無駄な洗浄動作を抑制することができるという効果がある。
【0036】
図6に,付着物検知ロジックの検知結果テーブル136の一例を示す。
図6に例示されるように,検知結果テーブル136には,各検知ロジックが検知対象としている付着物の種類,独立した付着物の数を表す付着物数,画像上で観測された付着物が覆うピクセル数に対応する付着面積,付着物が最初に観測されてからの経過時間に対応する付着時間,各付着物の重心や面積といった付着物詳細情報のうち少なくとも1つ以上の情報が含まれる。
【0037】
第1の実施形態の車両周囲監視装置100について,その作用を
図8のフローチャートに基づいて説明する。この車両周囲監視装置100は,初期診断処理を実行している状態と,通常認識処理を実行している状態の2つの状態を持っている。
【0038】
まず,ステップS10において,ECU110は,車速・舵角・昼夜判定状態のうち1つ以上を用いて,初期診断を実行する条件が成立しているか否かを判定する。ECU110は,初期診断を実行する条件が成立している場合には初期診断カウンタを0として,初期診断を実行するステップS20へ進む。例えば,車速が30km/h以上のときのように,安定した走行条件が成立している場合は,初期診断を実行する条件が成立していると判定されるものとする(ステップS10のYes)。安定した走行条件が成立していないと判定された場合(ステップS10のNo)は,ステップS20の初期診断実行をスキップしてステップS30に進む。例えば,車速が30km/h以上であることを条件とすることで,付着物検知ロジックは移動する背景画像中で,変動の少ない領域を付着物として抽出することができ,付着物検知結果の信頼性を向上できるという効果がある。また,車速が大きく変化したり,舵角が大きい場合には,駐車場などを走行しているために周囲店舗の光源や太陽方向が変わる可能性が高く,そのような場合には初期診断の実行をスキップすることで,誤った初期診断を抑制する効果がある。さらに昼夜判定状態が昼から夜,または夜から昼に変わった場合,すなわちトンネルへの出入りなどが発生した場合には初期診断の実行(ステップS20)をスキップすることで,誤った初期診断を抑制する効果がある。
【0039】
次に,ステップS20において,ECU110は,初期診断を実行する。この初期診断は,付着物検知部102によって水滴検知,泥検知,白濁検知,水滴痕検知,異物付着検知などの付着物検知を実行する。ステップS20の処理が行われるたびに,初期診断カウンタと称するカウンタがインクリメントされるものとする。
【0040】
ステップS30において,ECU110は,エンジンが停止したか否かを判定する。ECU110は,エンジンが停止されていない場合(S30のNo)には,ステップS40に進み更に処理を継続する。エンジンが停止された場合(S30のYes)には,ECU110は,もしその時点まで実行された初期診断において,得られた付着情報を用いて付着情報テーブル135を更新し、付着物情報記録を行うステップS80に進む。
【0041】
ステップS40では,ECU110は,初期診断が完了したか否かを判定する。初期診断完了の条件は,初期診断実行ロジック全てが所定回数もしくは所定時間の実行が行われ,検知結果が安定していることとする。ECU110は,初期診断が完了していれば(S40のYes),初期診断を終了して通常認識に移る。ECU110は,初期診断が完了していなければ(S40のNo),ステップS20に進み,初期診断を実行する。なお,初期診断が開始されてから一定時間(例えば3分間など),すなわち初期診断カウンタが一定値以上になっている場合には,初期診断を完了としてもよい。
【0042】
ステップS50では,ECU110は,付着物検知部102によって,車載カメラ111のレンズ表面上の水滴検知,泥検知,白濁検知,水滴痕検知,異物付着検知などの付着物検知を実行する。このときの付着物検知は,初期診断におけるステップS20の時とパラメタを変更するとともに,付着位置マスク134を用いて,初期診断時に付着物が付着していない領域に対して,初期診断時からの付着物増加を検知することができる。これは,ステップS50の付着物検知で検知された各付着物から付着位置マスク134における付着物領域133を除外し,残った領域のみ付着物量を集計することで,新たに増加した付着物のみを抽出する。ステップS50では,レンズ上の付着物量と,新たに増加した付着物量とを出力する。
【0043】
ステップS60では,ECU110は,ステップS50で出力された付着物量を元に,洗浄システムへ付着物状態を通知する。ステップS60の詳細につては後述する。
【0044】
ECU110は,ステップS70において,エンジンが停止したか否かを判定する。ECU110は,エンジンが停止されていない場合(ステップS70のNo)には,更に処理を継続する。ECU110は,エンジンが停止された場合(ステップS70のYes)には,もしその時点まで実行された初期診断において得られた付着情報テーブル135を更新し、ステップS80に進む。
【0045】
ステップS80では,ECU110は,記録部107を用いて,付着位置マスクと付着情報テーブルの内容を記録する。
【0046】
次に,第1の実施形態の車両周囲監視装置100について,その初期診断時の処理を
図9のフローチャートに基づいて説明する。本処理は,
図8におけるステップS20およびS30の処理に相当しており,
図9のステップS160が
図8のステップS30に対応している。
図9の処理は,ECU110により実行される。
【0047】
初期診断処理は,まず,ステップS110において,車載カメラ111を用いて画像を取得し,ステップS120の画像蓄積処理へ進む。次に,ステップS120において,取得した画像を図示しないメモリに記録する。この画像蓄積は,例えばリングバッファのように一定枚数分が格納できる画像メモリに対して,古い蓄積画像を上書きするように新規画像を書き込む。例えば6枚分のリングバッファに,100msecに1回ずつ書き込むことで,常に最新画像から500msec間の画像を保持することができる。次にステップS130において,処理領域を設定する。例えば,走行中の車両においては,画像中の路面領域が処理領域となるように設定する。
【0048】
次にステップS140において,車載カメラ111から異なる時間に出力された複数の撮影画像に基づいて,ステップS130で設定した処理領域内での変化を検出する。以降,ステップS140で行うこの変化の検出のことを変化検出部S140と記載する。変化検出部S140は,複数の撮影画像から差分画像と称する画像を,検出結果として生成する。
【0049】
図12を用いて,差分画像の生成方法について説明する。差分画像は,最新の撮影画像と,基準画像との差分を算出することにより生成される。基準画像は,最新の撮影画像より前に車載カメラ111から時系列的に連続して出力された過去の撮影画像に基づいて生成される。
【0050】
図12には,時間変化を表す矢印が図示されており,その矢印の上にはカメラ1のフレームレートに従って時間t0〜t5が図示されている。時間変化を表す矢印の下には,時間t0〜t5においてそれぞれ車載カメラ111から出力される撮影画像A0〜A5が図示されている。撮影画像A0〜A5は,車載カメラ111から出力されるたびにメモリに蓄積される。そして,メモリへの撮影画像の蓄積は,時間t0に開始したものとする。すなわち,
図12においては撮影画像A0がメモリに蓄積された撮影画像のうち最も古い撮影画像であり,撮影画像A5が最新の撮影画像である。
【0051】
基準画像Biは,車載カメラ111から新たに撮影画像Aiが出力されたとき(たとえば,時間t5),直前にメモリに蓄積された撮影画像Ai−1(たとえば,撮影画像A4)と,撮影画像Aiが出力された時点における基準画像Bi−1とを用いて,次式〔1〕および〔2〕により生成される。
Bi=Ai−1 (i=1のとき)・・・〔1〕
Bi=k×Ai−1+(1−k)×Bi−1 (i≧2のとき)・・・〔2〕
ここで,kは0<k≦1の係数であって,たとえばk=0.1である。
【0052】
変化検出部S140は,車載カメラ111から出力された最新の撮影画像(たとえば,撮影画像A5)と,その最新の撮影画像が出力された時点での基準画像(たとえば,基準画像B5)との差分画像を生成する。
【0053】
なお,変化検出部S140は,差分画像の生成のほかにも,カメラ露光状態や周囲光源環境・車速・舵角といった車両挙動情報を取得して,取得した情報に応じて差分画像の生成や,ステップS150における形状判定部の処理を制御することができる。
【0054】
カメラ露光状態は,車載カメラ111の感度を監視することで取得されるものであって,車載カメラ111の感度が変更されたか(ゲイン調整されたか)否かを表す。車載カメラ111は,たとえば自車両がトンネルに進入したときなどに撮影画像の明るさが急激に変化したとき感度が変更される。車両周囲監視装置100は,車載カメラ111の感度が変更された場合,撮影画像の変化が車載カメラ111の感度の変更によるものであるとして,付着物の誤検出を予防するため,差分画像による付着物の検出を行った後,所定の閾値以下の変化量を0に置き換える。これによりトンネル出入り口や,夜間に後続車のヘッドライトが当たった場合に生じる変化に起因する誤検出を抑制する効果が生じる。
【0055】
周囲光源環境は,カメラ露光状態とカメラで得られた画像を元に取得されるものであって,周囲が昼間・夜間・暗夜のいずれであるかを判定するものである。暗夜とは,夜間の一種であり,夜間でも特に周囲に照明光源が少なく認識対象が見えにくい状況を指す。カメラ露光時間が閾値より短い場合,周囲環境が明るいとして昼間と判定する。カメラ露光時間が閾値より長い場合は夜間または暗夜である。カメラから得られた画像を所定の閾値で二値化し,白ラベル個数をカウントすることで,街灯や店舗・他車ヘッドライトなどの光源数を取得できるが,この光源数が所定の個数以下の場合には暗夜と判定し,所定の個数より大きい場合には夜間と判定する。
【0056】
車両挙動情報は,急な加減速,すなわち閾値以上の車速変化がある場合に,一時的に変化検出を抑制し,差分画像中の差分に相当する領域をなしとして出力してもよい。これにより,加減速時の車体揺動が大きくために生じた画像変化に起因する誤検知を抑制する効果が生じる。舵角の大きい場合も同様であり,特に太陽等の光源位置が変わる場合に起因する誤検知を抑制する効果が生じる。なお,舵角の閾値は車速によって変動させてもよく,その場合は光源位置の変化量に応じて誤検知を抑制するのと等価になる。
【0057】
図9のステップS150では,ステップS140が生成した差分画像に含まれる差分に相当する画素塊について,所定の形状を有するか否かに基づいて付着物か否かを判定する。以下,ステップS150で行うこの形状の判定のことを,形状判定部S150と記載する。この画素塊は,たとえば周知のエッジ検出処理,ラベリング処理などを用いて差分画像から検出される。形状判定部S150は,画像塊のアスペクト比,充填率(詳細を後述する),面積,凹み率(詳細を後述する)についてそれぞれ判定して,これらすべての判定において肯定判定された画像塊を,付着物の画像とみなす。形状判定部S150の出力としては,
図4に示す付着位置マスク134と,
図6に示す検知結果テーブル136が得られる。
【0058】
(アスペクト比による形状判定)
図13(a)を用いて,アスペクト比による形状判定について説明する。形状判定部S150は,差分画像に含まれる画素塊について,撮影画像の縦軸方向の長さHと,撮影画像の横軸方向の長さWとの比H/Wをアスペクト比として算出する。そして,形状判定部S150は,そのアスペクト比H/Wが所定の閾値Th1以上かつ所定の閾値Th2以下であるときアスペクト比による形状判定を肯定判定する。一方,アスペクト比H/Wが所定の閾値Th1未満または所定の閾値Th2より大きいとき形状判定部S150はアスペクト比による形状判定を否定判定する。閾値Th1およびTh2は,変化検出部S140等により調節される。
【0059】
(充填率による形状判定)
図13(a)を用いて,充填率による形状判定について説明する。充填率による形状判定では,形状判定部S150は,差分画像に含まれる画素塊について,撮影画像の縦軸方向の長さHと横軸方向の長さWとの積HWと,その画素塊の面積Sとの比S/(HW)を充填率として算出する。そして,充填率S/(HW)が所定の閾値Th3以上かつ所定の閾値Th4以下であるとき充填率による形状判定を肯定判定する。一方,充填率S/(HW)が所定の閾値Th3未満または所定の閾値Th4より大きいとき形状判定部S150は充填率による形状判定を否定判定する。閾値Th3およびTh4は,変化検出部S140等により調節される。
【0060】
(面積による形状判定)
面積による形状判定について説明する。形状判定部S150は,差分画像に含まれる画素塊について,その面積Sが所定の閾値Th5以上かつ所定の閾値Th6以下であるとき面積による形状判定を肯定判定する。一方,面積Sが所定の閾値Th5未満または所定の閾値Th6より大きいとき形状判定部S150は面積による形状判定を肯定判定する。閾値Th5およびTh6は,変化検出部S140等により調節される。
【0061】
(凹み率による形状判定)
図13(b)を用いて,輪郭の凹み率による形状判定について説明する。形状判定部S150は,差分画像に含まれる画素塊について,その画素塊の輪郭(たとえば,
図13(b)の輪郭50)をその画素塊の最上点(たとえば,
図13(b)の点51)から反時計回りに順番になぞったときの接ベクトルの向きの変化に基づいて,画素塊の形状判定を行う。画素塊が円などの凸図形である場合に画素塊の輪郭を反時計回りになぞったとき,接ベクトルの向きは反時計回りに変化する。一方で,
図13(b)の凹部52のような部位では,接ベクトルの向きは時計回りに変化することがある。
【0062】
形状判定部S150は,各画素塊の輪郭を構成する各画素について,輪郭の接ベクトルの向きを算出する。
図13(b)では,画素塊の輪郭50に対して向きを算出される接ベクトルの一部が例示されている。形状判定部S150は,各画素塊の輪郭に沿って,輪郭の反時計回り順に輪郭を構成する画素の接ベクトルの向きを取得して,直前に取得した画素の接ベクトルの向きと比較して,反時計回りに回転しているか時計回りに回転しているかを判定する。形状判定部S150は,各画素塊について,その輪郭を反時計回りに一周したときに接ベクトルの向きが反時計回り方向に回転した回数Mと,時計回り方向に回転した回数Nとを算出して,凹み率N/(M+N)を算出する。形状判定部S150は,差分画像に含まれる各画素塊について,凹み率N/(M+N)が所定の閾値Th7以上かつ所定の閾値Th8以下であるとき凹み率による形状判定を肯定判定する。一方,凹み率N/(M+N)が所定の閾値Th7未満または所定の閾値Th8より大きいとき形状判定部S150は凹み率による形状判定を肯定判定する。閾値Th7およびTh8は,変化検出部S140の各部により調節される。
【0063】
次に,
図9のステップS160では,エンジンが停止されたか否かを判定する。これは,CAN経由でエンジン切断信号を得ても良いし,車両周囲監視装置100への電源供給が停止されたことをもって判定してもよい。電源供給が停止された場合は,速やかに図示しない車両周囲監視装置100の内部蓄電池,もしくは外部接続された蓄電池からの電源供給に切り替えてもよい。また,エンジンが停止された場合と記述したが,必ずしもエンジン停止である必要はなく,単に車両周囲監視装置100への終了信号で代用してもよく,いずれにしてもシステムをほぼ停止して電力消費を低減するモードに入ったことを検知できればよい。
【0064】
エンジン停止された場合(S160のYes)に,ステップS170において付着情報テーブルを更新する。この付着情報テーブルは,形状判定部S150で出力された付着位置マスク134と検知結果テーブル136を用いて,対応する情報を更新する。こうして得られた付着位置マスク134を用いることで,走行開始時点から付着していた固着物と,新規付着物とを分けて扱うことができるようになる。
【0065】
次に,
図8の通常認識時の処理を
図10のフローチャートに基づいて説明する。
図10のフローは,初期診断時のフローと類似しており,ステップS110,ステップS120,ステップS130,変化検出部S140,形状判定部S150までは同一である。
【0066】
ステップS260においては,ECU110は,新規付着物抽出処理として、通常認識時の形状判定部S150が付着位置マスク134(以降,付着位置画像)を出力した後に,初期診断時に形状判定部S150が出力する付着位置マスク134(以降,固着位置画像)を用いて,初期診断時に付着している付着物以外の新規付着物を算出する。これは,例えば,付着位置画像とそれに対応する固着位置画像とを左上からラスタスキャン方式で1画素ずつ比較し,付着位置画像で付着ありと判断され,固着位置画像で付着なしと判断された画素に対してのみ,付着面積・付着物重心などをカウントし,新規に付着した付着物に関する検知結果テーブル136を作成する。新規に付着した付着物に関する検知結果テーブル136を用いることで,画面内の一部に洗浄動作で除去できてない汚れが固着している場合であっても,新規に付着した同種または異種の汚れが付着した場合には,洗浄システムを稼働することができるようになるという効果がある。
【0067】
次に,ステップS270では,エンジンが停止されたか否かを判定する。これは,CAN経由でエンジン切断信号を得ても良いし,車両周囲監視装置100への電源供給が停止されたことをもって判定してもよい。電源供給が停止された場合は,速やかに図示しない車両周囲監視装置100の内部蓄電池,もしくは外部接続された蓄電池からの電源供給に切り替えてもよい。また,エンジンが停止された場合と記述したが,必ずしもエンジン停止である必要はなく,単に車両周囲監視装置100への終了信号で代用してもよく,いずれにしてもシステムをほぼ停止して電力消費を低減するモードに入ったことを検知できればよい。
【0068】
エンジン停止された場合(ステップS270のYes)に,ステップS280において付着情報テーブル135を更新する。エンジンが停止し,洗浄システムが停止した後は,固着物はもちろん新規付着物も洗浄されないため,停止時の固着位置画像と付着位置画像とのいずれかに付着物がある座標に,付着物があると判断した付着位置マスク134を作成し(つまり固着位置画像と付着位置画像との論理和をとり),これを付着情報テーブル135に反映させる。これを次回の初期診断時に読み出すことで,初期診断時間の短縮を行ってもよい。
【0069】
また,図示しない洗浄装置駆動情報を利用して,ステップS260において,洗浄装置が駆動している間は,画像認識ロジックの動作を一時的に止めておくことで,洗浄動作に伴う画像変化による誤検知を抑止することが可能となる。
【0070】
以上で説明した第1の実施の形態によれば,次の作用効果を奏する。
車両周囲監視装置100は,撮像画像取得部101と,付着物検知部102と,レンズ状態判定部103と,レンズ洗浄部104と,レンズ状態記録部105と,レンズ状態読出部106と,レンズ状態読出部106と,記録部107と,車両情報取得部108とを有する。このような構成を有することにより,無駄な洗浄を抑止することができる。
【0071】
(第2の実施の形態)<動作不能状態を持つ場合>
本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態では、まず,エンジン始動時に前回のエンジン停止時に記録されている付着物情報に加えて,動作不能状態も読込む。次に,エンジン始動後の所定時間内の走行中(以下,初期診断時間内と呼ぶ)に,車載されたカメラで車両周辺を監視して,雨滴や泥,白濁,水滴痕,落ち葉などの異物が付着していることを判定し,記録されている付着量よりも所定量以上増加していれば洗浄装置を駆動する。そして,エンジン停止時に付着物情報と動作不能状態とを記録するものである。
【0072】
すなわち,動作不能状態を読み込み,また記録する点が,第1の実施の形態とは異なっている。このため,第1の実施の形態と共通する部分については記載を省略し,差異のある部分について詳細に記載する。
【0073】
第2の実施形態における車両周囲監視装置200は,
図7に示すように,撮像画像取得部101と,付着物検知部102と,レンズ状態判定部103と,レンズ洗浄部104と,レンズ状態記録部105と,レンズ状態読出部106と,記録部107と,車両情報取得部108と,認識状態判定部109とを有する。撮像画像取得部101は,車載カメラ(
図7では不図示)によって予め設定された時間間隔をおいて撮像された撮像画像を取得する。付着物検知部102は,泥・水滴・白濁・落ち葉等の異物のいずれか1つ以上の検出手段を持つ。レンズ状態判定部103は,後述するレンズ状態読出部106が後述する記録部107から読み出したレンズ状態と,付着物検知部102から得られたレンズ状態とを比較して,画像認識が不能の状態又は画像認識の性能が低下するレンズ状態であると判定するために,レンズへの付着物が増加したか否かを判定する。レンズ洗浄部104は,エア噴射やウォッシャ噴射,ワイパを駆動のいずれか1つ以上を実行するレンズ洗浄装置に向けて起動信号を送信してレンズ洗浄装置を起動してレンズ表面を洗浄する。車両情報取得部108は,車速,車輪速,舵角,イルミネーション情報,ワイパ駆動スイッチ情報,ヨーレート情報のうち,いずれか1つ以上の車両情報を取得する。レンズ状態記録部105は,エンジン停止時にレンズ状態を記録部107に送信して記録させる。レンズ状態読出部106は,エンジン始動時にレンズ状態を記録部107から読み出す。認識状態判定部109は,画像認識が不能な状態であるか否か,あるいは画像認識の認識性能が低下している状態であるか否かを判定する。
【0074】
図2は,車両周囲監視装置200とその周囲装置との関係を表すブロック図である。
図2には,車両周囲監視装置200を構成するECUとしてECU110が図示されている。そして,車両周囲監視装置200を構成するECU110の入力側には,車載カメラ111と,車速センサ121と,舵角センサ122と,イルミネーションセンサ123と,車輪速センサ124と,ワイパ駆動スイッチ125と,ヨーレートセンサ126とが接続されている。さらに,車両周囲監視装置200を構成するECU110の出力側には、スピーカ112と,モニタ113と,レンズ洗浄装置115と,動作不能状態警告灯114と,が接続されている。
【0075】
動作不能状態警告灯114は,レンズが極度に汚れたり,照明環境が極度に悪化している場合にシステムが動作できないことをユーザに通知する。この動作不能状態警告灯114は,モニタ113に表示される映像に動作不能状態を重畳して表示したり,アイコン化して表示しても良い。また,モニタ113とは独立して,LEDや電球等のランプのみ,あるいは警報音や音声のみで認識結果を通知するものであってもよく,これらを全て備えたものであっても良い。
【0076】
第2の実施の形態の場合,
図14に示すように,付着情報テーブル135には,各付着物検知ロジックの検知結果テーブル136,動作不能回数カウンタ137,動作不能要因履歴138,のうち少なくとも1つ以上を持っている。
【0077】
動作不能回数カウンタ137には,動作不能状態が発生した場合に各要因毎に動作不能状態の回数が記録され,動作不能状態が解消された場合に動作不能状態の回数がクリアされる。エンジン停止後から次のエンジン始動までの間に,ユーザが手動でレンズを洗浄する可能性が考えられ,洗浄が行われたか否かの判定をエンジン始動後に速やかに行う必要がある。各要因毎の動作不能状態の回数を記録しておくことで,回数の多い要因の検知ロジックを優先的に実行し,速やかに前回の動作不能用要因が解消されたか否かを判定できるという効果がある。
【0078】
なお,動作不能回数カウンタ137には,各要因毎に分けず,全ての要因での動作不能状態の回数のみを記録してもよい。通常,動作不能状態の判定は1枚の静止画像のみから行うことは困難であり,一定時間だけ画像を蓄積したり,判定結果を蓄積したりすることで,判定結果の安定性と確実性を高めるため,動作不能状態の結果が確定するまでに一定の時間を要する。エンジン始動後,この結果確定までの時間内に再度エンジンが停止されるなど,短時間の運転が繰り返される場合には動作不能状態の回数を加算し,一定回数を超えた場合には回数と動作不能要因履歴とをクリアする。これにより,通常は同一要因で動作不能状態になった場合には洗浄を抑制するが,一定回数以上の短時間の走行を繰り返した場合には,レンズに新規付着物が付着している可能性が高くなるため,レンズ診断結果によって洗浄動作が可能となり,レンズ状態が更に悪化することを抑止できるという効果がある。また,動作不能状態の結果が確定しないうちにエンジンが停止した際に,記録部の内容が未判定状態で消去され,次回走行時に無駄な洗浄動作をしてしまうことを防ぐことができる効果もある。
【0079】
図14に,動作不能要因履歴138の一例を示す。動作不能要因履歴138は,各要因毎に動作不能状態になったか否かを判定するためのフラグが含まれる。例えば、
図14では,要因「白濁」と要因「水滴痕」についてフラグがセットされている。このフラグは付着物検知ロジックの検知結果に基づいてセットされ,このフラグ状態に基づいて,同一要因で動作不能状態になった場合には洗浄を抑制する。これにより,前回と同じ動作不能用要因が継続されている場合には,無駄な洗浄動作を省き,新規の要因で動作不能状態になった場合に,当該要因に対応する適切な洗浄動作を行えるという効果がある。なお,上述したこの動作不能状態のことをフェール状態と呼んでも良い。
【0080】
第2の実施形態の車両周囲監視装置200について,その作用を
図8のフローチャートに基づいて説明する。この車両周囲監視装置200は,第1の実施の形態と同様に,初期診断処理を実行している状態と,通常認識処理を実行している状態の2つの状態を持っている。第2の実施の形態では,
図8の処理は,車両周囲監視装置200を構成するECU110によって実行される。
【0081】
まず,ステップS10において,初期診断を実行する条件が成立しているか否かを判定し,成立している場合には初期診断カウンタを0としてステップS20へ進む。この判定は,車速・舵角・昼夜判定状態のうち1つ以上を用いて,安定した走行条件が成立していると判定(S10のYes)されるものとする。安定した走行条件が成立していないと判定(S10のNo)された場合は初期診断実行をスキップする。
【0082】
次に,ステップS20において,初期診断を実行する。この初期診断は,水滴検知,泥検知,白濁検知,水滴痕検知,異物付着検知などの付着物検知を実行する。この実行が行われるたびに,初期診断カウンタがインクリメントされるものとする。
【0083】
ステップS30において,エンジンが停止したか否かを判定する。エンジンが停止されていない場合(ステップS30のNo)には,更に処理を継続する。エンジンが停止された場合(ステップS30のYes)には,その時点まで実行された初期診断において,動作不能状態の結果が出ていれば,付着情報テーブル135を更新し,ステップS80に進む。これにより,汚れ付着量が一定量以上の場合,次回エンジン始動時に,画像認識の結果が出るのを待たずに,ユーザにレンズ汚れ状態を喚起するために,動作不能状態警告灯114を点灯することが可能となる。
【0084】
ステップS40では,初期診断が完了したか否かを判定する。初期診断が完了し場合は(ステップS40がYES)ステップS50に進み通常認識の処理を開始する。初期診断が完了していない場合は(ステップS40がNO)ステップS20に進み初期診断の処理を継続する。
【0085】
ステップS50では,通常認識処理として、車載カメラ111のレンズ表面上の水滴検知,泥検知,白濁検知,水滴痕検知,異物付着検知などの付着物検知を実行する。これらの処理は,第1の実施の形態と同様であるため割愛する。
【0086】
ステップS60では,ステップS50で出力された付着物量を元に,洗浄システムおよび動作不能状態判定部への通知を行う。詳細の内容は後述する。動作不能状態判定部へも通知を行う点が第1の実施の形態との違いである。
【0087】
ステップS70において,エンジンが停止したか否かを判定する。エンジンが停止されていない場合(ステップS70のNo)には,更に処理を継続する。エンジンが停止された場合(ステップS70のYes)には,もしその時点まで実行された初期診断において,動作不能状態の結果が出ていれば,付着情報テーブル135を更新し,ステップS80に進む。ステップS80では,記録部107を用いて,付着位置マスクと付着情報テーブルの内容を記録する(付着物情報記録)。
【0088】
また,第2の実施形態の車両周囲監視装置200について,その初期診断時の処理を
図9のフローチャートに基づいて説明する。概ね,第1の実施の形態と同様だが,ステップS170の動作を以下のように変えても良い。なお,第2の実施の形態では,
図9の処理は,車両周囲監視装置200を構成するECU110によって実行される。
【0089】
エンジン停止された場合(ステップS160のYes)に,ステップS170において付着情報テーブルを更新する。この付着情報テーブルは,形状判定部S150で出力された付着位置マスク134と検知結果テーブル136を用いて,対応する情報を更新するほか,動作不能回数カウンタを変更する。
【0090】
動作不能回数カウンタの動作について説明する。初期診断が終了するより前にエンジンが停止された場合,動作不能回数カウンタを1加算するが,その際に動作不能カウンタが一定値以上(例えば8)であれば,動作不能回数カウンタを0に戻すとともに動作不能要因履歴の内容をクリアする。また,初期診断中に動作不能状態が発生した場合には,動作不能回数カウンタを0に戻すとともに,動作不能要因履歴の内容に今回発生した動作不能状態を加える。
【0091】
また,初期診断が完了した場合は,動作不能回数カウンタを0に戻すとともに動作不能要因履歴の内容を前回のまま変更しない。これにより,短距離ドライブを繰り返したり,エンジンのみ入切をするような場合,すなわち,初期診断中にエンジン停止が行われるような場合にも,動作不能状態を保持することができ,不要な洗浄動作を抑制することができる効果がある。また,短距離ドライブを一定回数以上繰り返した場合には,動作不能要因履歴を0クリアするため,再度汚れ検知結果を用いて洗浄動作を行うことができる。
【0092】
また,本実施形態の車両周囲監視装置200について,その通常実行時の処理を
図10のフローチャートに基づいて説明する。概ね,第1の実施の形態と同様だが,新規付着物抽出処理を行うステップS260の動作を以下のように変えても良い。なお,第2の実施の形態では,
図10の処理は,車両周囲監視装置200を構成するECU110によって実行される。
【0093】
ステップS260において,初期診断時に付着していなかった領域に,通常走行時に付着量が増加した場合,その新規付着物の付着物情報を出力するほか,初期診断時の付着物情報と新規付着物の付着物情報を合わせて,つまり固着位置画像と付着位置画像との論理和で得られる付着位置画像(以下,付着物集計画像と呼ぶ)に対して,付着物情報を算出する。
【0094】
これは,例えば,新規付着物用の付着物情報と,付着物集計画像用の付着物情報との,それぞれに対して記憶領域城に情報記憶用の領域を確保しておき,付着位置画像と付着物集計画像とをそれぞれ左上からラスタスキャン方式で1画素ずつ比較し,それぞれの画像で付着ありと判断された画素に対してのみ,付着面積・付着物重心などをカウントして検知結果テーブル136を作成する。これにより,洗浄動作への出力判断と,検知不能状態の判断とが,それぞれ適切に行えるようになるという効果がある。
【0095】
(第3の実施の形態) <昼夜状態を持つ場合>
本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では,まず,エンジン始動時に前回のエンジン停止時に記録されている付着物情報を読み込む。次に,エンジン始動後の所定時間内の走行中(以下,初期診断時間内と呼ぶ)に,車載されたカメラで車両周辺を監視して,昼夜など周囲光源環境の異なる状況を判定し,その周囲光源環境に応じて,雨滴や泥,白濁,水滴痕,落ち葉などの異物が付着していることを判定し,記録されている付着量よりも所定量以上増加していれば洗浄装置を駆動する。そして,エンジン停止時に付着物情報を記録するものである。
【0096】
すなわち,周囲光源環境の異なる状況毎に動作を変えることを特徴とする点が,第1の実施の形態とは異なっている。このため,第1の実施の形態と共通する部分については記載を省略し,差異のある部分について詳細に記載する。なお,第2の実施の形態と同様に,レンズが極度に汚れたり,照明環境が極度に悪化している場合に発生する動作不能状態を記録しても良い。
【0097】
第3の実施の形態の場合,
図15に示すように,付着情報テーブル135には,前回走行時の昼夜判定結果,昼夜状態毎の各付着物検知ロジックの検知結果テーブル136,動作不能回数カウンタ137,動作不能要因履歴138,のうち少なくとも1つ以上を持っている。
【0098】
画像認識によって,付着物を検知する場合,前述したように昼夜状態によって付着物の見え方が異なるため,付着物が検知されたときの昼夜判定状態に応じて,それぞれの検知結果を分けて記録しておいてもよい。分けて記録することで,例えば,水滴痕のように,夜間は検知しやすく,昼間は検知しにくいような付着物に対して,付着物が継続的に付着し続けているか否かを判定することができるようになるという効果がある。また,付着物によって,システムが本来認識したい車両検知や歩行者検知・車線区分線認識・標識認識といった認識ロジックが妨げられるが,照明環境によって付着物が認識ロジックを妨げる程度が異なる。このため,大量の付着物が付着していてシステムが稼働できない状態である動作不能状態についても,昼夜判定状態に応じて分けて記録することで,昼間のみシステムを稼働し,夜間はシステムが動作不能とでき,認識ロジックの稼働率を向上できるという効果がある。
【0099】
以上で説明した実施の形態は,以下のように変形して実行できる。
【0100】
(変形例1) 付着位置マスクは,
図4に図示した付着位置マスク134だけに限定しない。たとえば,
図11(b)のように,画素単位ではなく,ブロック単位で情報を持つことも可能である。このとき,画素単位の付着物領域133を包含するブロックを付着物ブロック233と扱うことができる。ブロック単位で付着物位置を扱うことで,付着物検知部の検知方法に依存する位置ずれを軽減することができる。
【0101】
すなわち,例えば,付着物検知部Xが付着物のエッジを検出する画像処理手法を採用しており,付着物検知部Yが,汚れの時間的な輝度値変化を検出する画像処理手法を採用している場合,ピクセル単位では位置ずれが発生する。このため,適度なサイズ(例えば8x8ピクセル)でブロック化を行って付着物ブロック233を生成することで,位置ずれを吸収し,複数の付着物検知部の検知結果統合を行うことができるようになるという効果がある。
【0102】
(変形例2) 付着位置マスクは,
図4に図示した付着位置マスク134だけに限定しない。たとえば,
図11(b)のように,画素単位ではなく,画面単位で情報を持つことも可能である。すなわち,位置情報を持たず,ある種類の付着物が付着しているか否かを情報として持つようにする。画面単位で付着物種類の有無を持つことで,付着物検知部Xは画面下部を主な処理対象領域とし,付着物検知部Yは画面左右端を主な処理領域とするような場合,すなわち付着物検知部によって好適な処理領域や,好適な処理解像度が異なる場合にも,付着物検知部の検知結果統合を行うことができるようになるという効果がある。
【0103】
以上で説明した実施の形態や変形例はあくまで例示に過ぎず,発明の特徴が損なわれない限り本発明はこれらの内容に限定されない。また,以上で説明した実施の形態や変形例は発明の特徴が損なわれない限り組み合わせて実行してもよい。
【0104】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2012年第149869号(2012年7月3日出願)