(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と、前記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)との合計を100質量%とした場合において、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)が50質量%より多く70質量%未満かつ変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が30質量%より多く50質量%未満を満たす請求項1に記載の電子機器用筐体。
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対する、前記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、前記ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)、前記エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の質量部で表される以下の式(I)の値が、2/8以上かつ3/7以下の範囲である請求項1又は2に記載の電子機器用筐体。
(C)/((A)+(B)+(D)) ・・・(I)
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対する、前記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、前記エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の質量部で表される以下の式(II)の値が1/9以上かつ3/7以下の範囲である請求項1から3のいずれか記載の電子機器用筐体。
(D)/((A)+(B)) ・・・(II)
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対する、前記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、前記ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)、前記エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の質量部で表される以下の式(III)の値が、0.8以上かつ1.0以下の範囲である請求項1から4のいずれか記載の電子機器用筐体。
(((A)+(B)+(D))/(C))×((D)/((A)+(B))) ・・・(III)
前記電子機器用筐体は、OA機器、家電機器又は電気自動車からなる群のいずれかの電子機器の部品を収容する筐体である請求項1から5のいずれか記載の電子機器用筐体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0017】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物>
本発明の電子機器用筐体は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)、及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(D)を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から構成され、所定の性質を有する。以下、各成分等について説明する。
【0018】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)]
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を90モル%以上含有する共重合体であってもよい。
【0019】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC
8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC
4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC
5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC
8−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC
6−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0021】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂において、1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC
2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC
2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC
2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0023】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC
3−12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0024】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、いずれもポリブチレンテレフタレート樹脂(A)として好適に使用できる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)として、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)におけるブチレンテレフタレート単位が90モル%以上であるように組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に制限されない。本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、好ましくは30meq/kg以下であり、より好ましくは25meq/kg以下である。かかる範囲の末端カルボキシル基量のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなる。
【0026】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基量の下限値は特に制限されないが、好ましくは10meq/kg以上であり、より好ましくは5meq/kg以上である。一般的に末端カルボキシル基5meq/kg未満のポリブチレンテレフタレート樹脂の製造は困難である。
【0027】
また、本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度(IV)は、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなるため、0.60dL/g以上1.2dL/g以下であるのが好ましい。さらに好ましくは0.65dL/g以上0.9dL/g以下である。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度(IV)は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0028】
[変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)]
従来、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)との相溶性に優れたアロイ化の相手材として、変性成分を含まないポリエチレンテレフタレート樹脂や、変性成分を10モル%以上含む変性ポリブチレンテレフタレート樹脂等も使用されてきた。しかし、本発明においては、所定の変性成分を含む変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を使用することで、流動性、反り、及び難燃性が特に優れた電子機器筐体を得ることができる。
【0029】
本発明において用いる変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)は、
1)テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C
1−6アルキルエステルや酸ハロゲン化物等)、
2)エチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)、及び、
3)テレフタル酸以外の他のジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体(C
1−6アルキルエステルや酸ハロゲン化物等)、エチレングリコール以外の他のグリコール又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)である変性成分
を、公知の方法に従って重縮合して得られるポリエステル樹脂である。
【0030】
テレフタル酸以外の他のジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体(C
1−6アルキルエステルや酸ハロゲン化物等)としては、(A)成分で例示したものと同様のものを挙げることができる。本発明においては、イソフタル酸を変性成分として用いることが好ましい。
【0031】
エチレングリコール以外の他のグリコール又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC
2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC
2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
本発明において用いる変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の製造に使用される変性成分は、本発明の目的を阻害しない範囲で、ヒドロキシカルボン酸成分、ラクトン成分等を含んでいてもよい。これらの成分に由来する繰り返し単位の量は、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂中の全繰り返し単位中、5モル%以上30モル%以下が好ましく、7モル%以上20モル%以下がより好ましく、10モル%以上15モル%以下が特に好ましい。
【0033】
変性成分に含まれるヒドロキシカルボン酸成分としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;又はこれらのヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
変性成分に含まれるラクトン成分としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC
3−12ラクトンが挙げられる。これらのラクトン成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性の観点から、変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の融点は245℃以下が好ましく、240℃以下が特に好ましい。変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の融点は、JIS K7121に従い、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0036】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における、変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と、上記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)との合計を100質量%とした場合において、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)が50質量%より多く70質量%以下かつ変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が30質量%以上50質量%未満であることが好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)が55質量%以上65質量%以下かつ変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が35質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と、上記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)との合計を100質量%とした場合において、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)が50質量%以下であると、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形性が低下する可能性がある。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)と、上記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)との合計を100質量%とした場合において、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)が70質量%よりも多量であると、得られる成形品の外観性、反り及び難燃性が好ましくない可能性がある。
【0037】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における、変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の使用量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量に対して、好ましくは30質量部以上かつ100質量部未満であり、より好ましくは40質量部以上かつ100質量部未満である。変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の使用量がポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量に対して、30質量部未満であると、得られる電子機器用筐体の外観性、反り及び難燃性が好ましくない可能性がある。変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の使用量がポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量に対して、100質量部以上であると、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形性が低下する可能性がある。
【0038】
[ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)]
本発明において用いるハロゲン原子を含まない難燃剤(C)としては、特に限定されないが、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、及び窒素系難燃剤等が挙げられる。
【0039】
リン系難燃剤としては、リン原子を有する化合物である限り、特に制限されないが、例えば、有機リン系難燃剤、無機リン系難燃剤が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、リン酸エステル(リン酸トリフェニル等の芳香族リン酸エステル等)、リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物((ポリ)フェノキシホスファゼン等)、有機ホスホン酸化合物(メタンホスホン酸ジフェニルやフェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル等)、有機ホスフィン酸化合物(ホスフィン酸メチル等)、ホスフィンオキシド(トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシド等)が挙げられる。
【0040】
無機リン系難燃剤としては、赤リン、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸(メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等)、ポリ亜リン酸(メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸等)等の非縮合又は縮合(亜)リン酸塩(カルシウム等の金属塩等)等が挙げられる。
【0041】
アンチモン系難燃剤としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、トリアジン系化合物とシアヌール酸もしくはイソシアヌール酸との塩、アミノ基を含有する窒素化合物とポリリン酸との複塩等が挙げられる。
【0042】
上記の難燃剤の中では、有毒ガスが発生せず、高い難燃化効果を得られる点で、有機リン系難燃剤を用いるのが好ましい。また、上記の難燃剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における、ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)は、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対する、上記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)、後述するエポキシ基含有エチレン共重合体(D)の質量部で表される式(I)の値が、2/8以上かつ3/7以下の範囲となるように使用することが好ましい。
(C)/((A)+(B)+(D)) ・・・(I)
【0044】
ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)の使用量を上記の範囲とすることにより、得られる電子機器用筐体の難燃性と耐衝撃性を好ましく両立できる。ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)の使用量を表す上記式(I)の値が2/8未満であると、得られる電子機器用筐体に十分な難燃性を与えられない可能性がある。上記式(I)の値が3/7超であると、得られる電子機器用筐体の耐衝撃性が不足する可能性がある。
【0045】
また、本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における、ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)の使用量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、40質量部以上かつ100質量部以下が好ましく、50質量部以上かつ65質量部以下がより好ましい。本発明の電子機器用筐体に、ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)が上記の配合量で含まれていることにより、電子機器用筐体を好ましく難燃化できる。
【0046】
本発明の電子機器用筐体は、ハロゲン原子を含まない難燃剤によって難燃化されるため、有害物質が生成されるおそれが少なく、環境上好ましい。
【0047】
[エポキシ基含有エチレン共重合体(D)]
本発明において用いるエポキシ基含有エチレン共重合体(D)は、エチレン単位及びエポキシ基含有モノマー単位を必須成分とし、エチレン系不飽和エステル化合物単位を任意成分とするものであり、その代表例としては、例えばエチレン単位20〜99.9質量%、エポキシ基含有モノマー単位0.1〜30質量%、及びエチレン系不飽和エステル化合物単位0〜50質量%からなる共重合体等が挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位又は不飽和グリシジルエーテル単位等が挙げられる。
【0048】
上記不飽和カルボン酸グリシジルエステル又は不飽和グリシジルエーテルとしては、式(IV)
R−X−CH
2−CH−CH
2 ・・・(IV)
\ /
O
(式中、Rは炭素数2〜18のアルケニル基を、Xはカルボニルオキシ基、メチレンオキシ基又はフェニレンオキシ基を表す)で示される化合物が挙げられる。かかる不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル等が挙げられる。不飽和グリシジルエーテルとしては、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0049】
エチレン系不飽和エステル化合物としては、上記グリシジルエステル以外の、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の飽和カルボン酸のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸のアルキルエステル等が挙げられる。これらのうち、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等が好ましい。エポキシ基含有エチレン共重合体(D)中のエチレン系不飽和エステル化合物単位は、通常0〜50重量%であるが、該エステル化合物単位が存在する場合は、3〜50重量%程度であることが好ましい。
【0050】
本発明におけるエポキシ基含有エチレン共重合体(D)は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよく、例えばプロピレン−エチレンブロック共重合体にエポキシ基含有モノマーをグラフトさせた共重合体、エチレン−エポキシ基含有モノマー共重合体にエチレン系不飽和エステル化合物をグラフトさせた共重合体等であってもよい。
【0051】
本発明におけるエポキシ基含有エチレン共重合体(D)は、公知の方法、例えば共重合に供する単量体を、ラジカル発生剤の存在下で、500〜4000気圧程度、100〜300℃程度の条件で、適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下又は不存在下で共重合させる方法で製造できる。また、ポリエチレンにエポキシ基含有モノマーを混合し、必要に応じてさらにエチレン系不飽和エステル化合物、ラジカル発生剤等を混合し、押出機中で溶融グラフト共重合させる方法等により製造できる。
【0052】
また、エポキシ基含有エチレン共重合体(D)は、エポキシ基含有エチレン共重合体(D)とゴム成分との混合物の形で使用することもできる。かかるゴム成分としては、例えばエチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ブタジエンゴム等のエチレン単位−炭素数3以上のα−オレフィン単位からなるゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム等のエチレン単位−炭素数3以上のα−オレフィン単位−非共役ジエン単位からなるゴム等のエチレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、SBSゴム、水添SBSゴム等のスチレン系ゴム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アルフィーゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ビニルピリジンゴム、シリコンゴム、ブタジエン−メチルメタクリレートゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロブチルゴム、ブロモブチルゴム、これらゴムの2種以上の混合物が挙げられる。これらのゴム成分は、無水マレイン酸、ハロゲン化物、ビニル化合物、アクリル化合物等の変性剤で変性されたものでも、エポキシ基含有エチレン共重合体と過度に反応し悪影響を与えない範囲で使用できる。
【0053】
エポキシ基含有エチレン共重合体とゴム成分との混合物は、公知の方法で得ることができる。例えば、エポキシ基含有エチレン共重合体とゴム成分とをドライブレンドした後、一軸もしくは二軸のスクリュー押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダー等で溶融混練することにより製造できる。
【0054】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における、エポキシ基含有エチレン共重合体(D)は、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対する、上記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、上記エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の質量部で表される式(II)の値が、1/9以上かつ3/7以下の範囲となるように使用することが好ましい。
(D)/((A)+(B)) ・・・(II)
【0055】
エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の使用量を上記の範囲とすることにより、得られる電子機器用筐体の難燃性と耐衝撃性とを好ましく両立できる。エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の使用量を表す上記式(II)の値が1/9未満であると、得られる電子機器用筐体に十分な耐衝撃性を与えられない可能性がある。上記式(II)の値が3/7超であると、得られる電子機器用筐体の難燃性が不足する可能性がある。
【0056】
また、本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における、エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の含有量は、得られる成形体の耐衝撃性を良好に改善でき、優れた機械的性質を有する成形体が得られるため、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは30質量部以上かつ100質量部以下であり、より好ましくは40質量部以上かつ70質量部以下である。
【0057】
さらに、本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物における、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、上記変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、上記ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)、上記エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対する、各成分の質量部で表される式(III)の値が、0.8以上かつ1.0以下の範囲となるように使用されることが好ましい。
(((A)+(B)+(D))/(C))×((D)/((A)+(B))) ・・・(III)
【0058】
各成分の使用量を上記の範囲とすることにより、得られる電子機器筐体の難燃性と耐衝撃性を好ましく両立できる。各成分の使用量を表す上記式(III)の値が0.8未満であると、得られる電子機器用筐体に十分な耐衝撃性を与えられない可能性がある。上記式(III)の値が1.0超であると、得られる電子機器用筐体の難燃性が不足する可能性がある。
【0059】
[無機充填剤]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、上記必須成分に加えて無機充填剤を含むことが好ましい。無機充填剤としては繊維状充填剤、粉粒状充填剤、板状充填剤等のいずれを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本発明においては繊維状充填剤を使用することが好ましい。繊維状充填剤を使用することで、成形体に対する補強効果が得られ、成形体の機械的特性を向上できるからである。繊維状充填剤の中でもガラス繊維が特に好ましい。ガラス繊維としては、公知のガラス繊維がいずれも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明では、ガラスの種類にも限定されないが、品質上、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましく用いられる。ガラス繊維の繊維長、繊維径も一般的な範囲内にあればよい。例えば、繊維長が2.0mm以上6.0mm以下、繊維径が9.0μm以上14.0μm以下のものを使用可能である。
【0061】
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の繊維状充填剤の含有量は特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して100質量部以上かつ200質量部以下が好ましく、より好ましくは100質量部以上かつ150質量部以下である。
【0062】
また、本発明においては繊維状充填剤と板状充填剤とを併用することが好ましい。この併用により、成形体に耐衝撃性を与えつつ、反りを大きく低減できる。特に好ましい組み合わせは、ガラス繊維とガラスフレークである。
【0063】
また、繊維状充填剤と板状充填剤とを併用する場合には、繊維状充填材及び板状充填材の使用量の合計は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して100質量部以上200質量部以下が好ましい。繊維状充填材と板状充填材との比率は、本願の目的を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0064】
[難燃助剤]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、上記必須成分に加えて難燃助剤を含むことが好ましい。難燃剤と難燃助剤とを併用することで良好な難燃効果を得ることができる。難燃助剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)の種類に応じて好適な難燃助剤を選択して使用できる。
【0065】
本発明において用いるハロゲン原子を含まない難燃剤(C)として、有機リン系難燃剤を使用する場合は、難燃助剤として含窒素難燃助剤を用いるのが好ましい。その中でも特にメラミンシアヌレートを用いることが好ましい。
【0066】
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の難燃助剤の含有量は特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して20質量部以上かつ40質量部以下であることが好ましく、25質量部以上かつ35質量部以下であることがより好ましい。
【0067】
[その他の成分]
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、上記以外のその他の成分がさらに含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、核剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び滴下防止剤等の添加剤、その他の樹脂等を挙げることができる。
【0068】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の、その他の成分の含有量は特に限定されないが、その他の成分の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量に対して、総量で通常30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下である。
【0069】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の調製法の具体的態様は特に限定されるものではない。例えば、一般に樹脂組成物又はその成形体の調製法として公知の設備と方法により、樹脂組成物を調製することができる。具体的には、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。また、押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、全ての成分をホッパーから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
【0070】
<電子機器用筐体>
本発明の電子機器用筐体は、上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から構成される。「本発明の電子機器用筐体は、上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から構成される」とは、本発明の電子機器用筐体が、当該樹脂組成物を成形することで得られたものであり、電子機器用筐体の構成成分の一部又は全てが上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に由来することを言う。
【0071】
例えば、本発明の電子機器用筐体は、常用の成形機を用いて、上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形することによって製造することができる。このような成形機としては、電子機器用筐体の成形に通常使用できるものであれば特に限定されず、射出成形機、圧縮成形機等を使用できる。金属部品の金型への設置の容易さや装置の簡便さ、生産性に優れる点で射出成形機を用いるのが好ましい。
【0072】
本発明の電子機器用筐体を適用する電子機器としては、特に限定されないが、OA機器、家電機器又は電気自動車からなる群のいずれかが好ましい。本発明の電子機器用筐体は、難燃性及び耐衝撃性を備えるため、これらの電子機器の部品を収容する筐体として好ましく使用できる。本発明の電子機器用筐体は、耐衝撃性及び難燃性を両立して備え、さらに、優れた低反り性を備えるため、内部に収納される部品との接合や、ケースと蓋の接合等にも適しており、安全性や良好な低反り性が求められる電子機器に好ましく適用できる。
【0073】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び電子機器用筐体の特性]
本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、優れた耐衝撃性、難燃性、及び低反り性等を成形品に与える。
具体的には、本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ISO−179に準じて測定したシャルピー衝撃値が、10kJ/m
2以上であるため、当該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から構成される本発明の電子機器用筐体は耐衝撃性に優れる。また、本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、UL94規格に準じる試験法にて厚さ2mmにおいて5VA規格に適合するため、当該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から構成される本発明の電子機器用筐体は難燃性に優れる。また、本発明の電子機器用筐体は、反りが抑制されているため、内部に収納される部品との接合や、ケースと蓋の接合といった加工性に優れる。
【0074】
また、本発明の電子機器用筐体は、良好な比較トラッキング指数を有するため、電子機器(特に、電源装置部品)に求められる安全性も備える。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0076】
<材料>
実施例及び比較例において使用した各成分の詳細は下記の通りである。
ポリブチレンテレフタレート(PBT);IV=0.8のポリブチレンテレフタレートを使用、ウィンテックポリマー株式会社製「ジュラネックス」(登録商標)
変性ポリエチレンテレフタレート(変性PET);12.5モル%イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートを使用、帝人ファイバー株式会社製
ポリエチレンテレフタレート(未変性PET);帝人ファイバー株式会社製、製品名 TRF
変性ポリブチレンテレフタレート(変性PBT);25モル%イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートを使用、ウィンテックポリマー株式会社製
難燃剤;有機リン酸塩を使用、クラリアントジャパン株式会社製、製品名 エクソリットOP1240
難燃助剤;メラミンシアヌレートを使用、BASFジャパン株式会社製、製品名 MELAPUR MC50
安定剤;リン酸二水素ナトリウムを使用、米山化学工業株式会社製、製品名 リン酸一ナトリウム
滴下防止剤;PTFEを使用、三菱レイヨン株式会社製、製品名 メタブレンA3800
ガラス繊維;Eガラスチョップドストランドを使用、日本電気硝子株式会社製、製品名 ECS 03 T−187
エラストマー1;エポキシ基含有エチレン共重合体を使用、住友化学株式会社製、製品名 ボンドファースト7L
エラストマー2;ポリエステル型ポリエステルエラストマーを使用、東洋紡績株式会社製、製品名 ペルプレンS2001、硬度55
エラストマー3;ポリエーテル型ポリエステルエラストマーを使用、東レ・デュポン株式会社製、製品名 ハイトレル5557、硬度55
エラストマー4;コアシェルを使用、ローム・ハース・ジャパン株式会社製、製品名 パラロイド EXL2314
エラストマー5;MBS樹脂を使用、ローム・ハース・ジャパン株式会社製、製品名 パラロイド EXL2602
エラストマー6;オレフィンを使用、三井化学株式会社製、製品名 NタフマーMP0620
【0077】
「ボンドファースト7L」は、エチレンとグリシジルメタクリレートとアクリル酸メチルの共重合体である。
「ペルプレンS」は、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを有し、ソフトセグメントとして軟質ポリエステルを有するブロック共重合体である。
「ハイトレル」は、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを有し、ソフトセグメントとしてポリエーテルを有するブロック共重合体である。
「パラロイド EXL2314」は、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルの共重合体である。
「パラロイド EXL2602」は、ブタジエン、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルの共重合体である。
「Nタフマー MP0620」は、無水マレイン酸変性ポリオレフィンである。
また、「硬度」とは、JIS K7215におけるデュロメータ硬さ(Dスケール)を示す。
【0078】
<実施例及び比較例>
表1及び2に示す原料を2軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−30α)に供給し、溶融混練してペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造した。溶融混練条件は下記の通りである。なお、表1及び2中の各成分の使用量を表す数字の単位は質量部である。
(溶融混練条件)
シリンダ温度:260℃
スクリュー回転数:170rpm
吐出量:20kg/hr
【0079】
(評価用試験片の成形条件)
得られたペレット状の樹脂組成物を140℃で3時間乾燥後、以下の条件で試験片を射出成形した。
成形機:ファナック(株)製 ROBOSHOT S2000i100B
シリンダ温度:260℃
金型温度:80℃(水温調)
射出速度:17mm/s
保圧:60MPa×20s
【0080】
得られた各評価用試験片について、下記の条件に従って各種特性を評価した。その結果を表1及び2に示す。
【0081】
(引張試験)
ISO527−1,2に定められている評価基準に従い、評価用試験片の引張強さ、引張伸びを評価した。
【0082】
(曲げ試験)
ISO178に準拠して、評価用試験片の曲げ強度、曲げ弾性率を評価した。
【0083】
(シャルピー衝撃値)
ISO−179(試験片厚み4mm)に定められている評価基準に従い、評価用試験片のシャルピー衝撃値を評価した。
【0084】
(溶融粘度)
ISO11443に準拠し、評価用試験片において使用した樹脂の溶融粘度を測定した。
【0085】
(難燃性)
評価用試験片(0.8mm厚み、2mm厚み)について、アンダーライターズ・ラボラトリーズのUL94規格垂直燃焼試験を実施した。各試験片についてのUL94 V−0,V−1,V−2規格についての判定結果を表1及び2中の「UL94難燃性」に示した。また、各試験片についてのUL94 5VA,5VB規格のうち5VAに適合しているかどうかの判定結果を表1及び2中の「5VA難燃性」に示した。
【0086】
(反り)
縦120mm、横120mm、厚み2mmの平板形状の試験片の平面度を測定した。試験片の平面度は、
図1に示す試験片上の9点を、CNC画像測定機(製品名;QVBHU404−PRO1F、株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。評価基準は下記の通りである。
2mm以下;◎
2〜5mm;○
5〜8mm;△
8mm以上;×
【0087】
(比較トラッキング指数(CTI))
IEC112第3版に準拠して、0.1%塩化アンモニウム水溶液及び白金電極を用いて評価用試験片の比較トラッキング指数(CTI)を測定した。また、下記の評価基準に基づき、比較トラッキング指数をランク付けした。
250〜400V;2
400〜600V;1
600V超;0
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
実施例において、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)に、(B)変性ポリエチレンテレフタレート、ハロゲン原子を含まない難燃剤(C)、及びエポキシ基含有エチレン共重合体(D)が配合されることで、耐衝撃性、耐トラッキング性、及び難燃性を備え、反りが抑制された成形体が得られることが確認された。