(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態にかかる三次元形状測定装置1を説明する。
図1は、実施の形態にかかる三次元形状測定装置1を説明する図であり、(a)は三次元形状測定装置1の外観を示す斜視図であり、(b)は(a)における面Aで定盤600を切断した断面図である。なお、
図1では、計測プローブ80の移動方向を示す指標としてX、Y、Z軸方向を示している。
図2は、
図1の(a)における面Bで上部支持機構26とロック機構24と送り操作棒20を切断した断面である。
図3は、切替機構30の構造を説明する図であり、(a)は、
図1の(a)における面Cで切替機構30周りを切断した断面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図であり、(c)は、
図1の(a)における面Dでロック機構23周りを切断した断面図である。
図4は、切替機構30を説明する図であり、(a)は、
図3の(a)における領域Bの拡大図であり、(b)は(a)における係合ピン33を挿入孔32b1から引き抜いて、送り操作棒20を自由回転状態にした状態を示す図である。
【0014】
三次元形状測定装置1は、上面(載置面601)に被測定物(図示せず)が載置される金属製の定盤600と、定盤600上に設定されたガイドレール630と、ガイドレール630に沿ってX軸方向に移動可能に設けられたベース10と、ベース10の上面10aから起立するコラム50と、コラム50に沿ってZ軸方向に移動可能に設けられたヘッド60と、ヘッド60においてX軸とZ軸の両方に直交するY軸方向に移動可能に設けられたアーム70と、アーム70に取り付けられた計測プローブ80と、を有している。
この三次元形状測定装置1では、ベース10とヘッド60とアーム70とをそれぞれ移動させることで、計測プローブ80が、3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向に移動するようになっており、被測定物の表面上の測定箇所に接触させた計測プローブ80の座標値を計測することで、載置面601に載置された被測定物の形状を測定するようになっている。
【0015】
図1の(a)に示すように、平面視において矩形形状を成す定盤600では、被測定物が載置される載置面601が平坦面となっており、この定盤600の幅方向の一方の側壁620に沿って、ガイドレール630が設けられている。
このガイドレール630は、定盤600の側壁620に沿って直線状に設けられた送り溝610と、側壁620との間の部分に設けられており、ガイドレール630は、X軸方向に直線状に延びる所定幅で形成されている。
【0016】
このガイドレール630では、平面視において長方形形状を成すベース10が、X軸方向に移動可能に設けられている。
ベース10は、当該ベース10の長辺10bをX軸に対して直交させた向きで設けられており、このベース10の定盤600側の下部には、ガイドレール630の幅方向の両側を把持する一対のガイドローラ11、12が設けられている(
図1の(b)参照)。
図1の(b)に示すように、これらガイドローラ11、12の転動面は、図示しない付勢手段の付勢力で、ガイドローラ11、12の幅方向の側縁(ガイドレール630の送り溝610側の側縁610aと、定盤600の側壁620)に圧接されており、ガイドローラ11、12を転動させると、ベース10がガイドレール630に沿ってX軸方向に移動するようになっている。
なお、ベース10自体をガイドレール630に沿って直接移動させた際にも、ガイドローラ11、12が転動するようになっている。
【0017】
ベース10では、ヘッド60のZ軸方向の移動をガイドするコラム50が起立しており、このコラム50は、載置面601の鉛直方向に直線状に設けられている。
【0018】
ヘッド60には、アーム70がY軸方向に移動可能に設けられており、アーム70の先端には計測プローブ80が取り付けられている。
【0019】
コラム50の上端には、Y軸方向に延びる水平フランジ90が固定されている。コラム50は、この水平フランジ90の長手方向における略中央部に連結されており、この水平フランジ90のガイドレール630側の端部には、前記したベース10からコラム50に沿って上方に延びるテンションロッド92が固定されている。
テンションロッド92は、コラム50に沿う直線状を成しており、コラム50の直立剛性を高めるために設けられている。
【0020】
三次元形状測定装置1では、コラム50を挟んでテンションロッド92の反対側に、ベース10のX軸方向の位置を微調整するための送り操作棒20が設けられており、この送り操作棒20は、コラム50と並列に設けられている。送り操作棒20の上端側は、水平フランジ90につり下げ固定された上部支持機構26で回転自在に支持されていると共に、下端側は、ベース10に設けられた下部支持機構28で回転自在に支持されており、送り操作棒20の上下の端は、両持ち式に回転自在に支持されている。
【0021】
図2に示すように、送り操作棒20の上端側を回転自在に支持する上部支持機構26は、円筒形状の支持部材26aと、接続部材26bとから構成されており、接続部材26bは、支持部材26aの送り操作棒20側の端部に圧入されている。
【0022】
接続部材26bは、支持部材26aよりも厚肉の円筒形状を成す部材であり、この接続部材26bの中央の貫通孔26b1では、送り操作棒20側(
図2において下側)の下部に、ベアリング26c、26cが設けられている。
ベアリング26c、26cは、中心軸X1の軸方向に間隔を開けて配置されており、これらベアリング26c、26cは、送り操作棒20の上端に連結された軸部材20bの一端側を、中心軸X1周りに回転可能、かつ中心軸X1の軸方向に移動可能に支持している。
【0023】
さらに、接続部材26bの下端には、ロック機構24が固定されており、このロック機構24の基部241に設けた貫通孔241aを、軸部材20bの一端側が貫通している。
このロック機構24は、図示しないロックレバーをロック方向に回転させると、貫通孔241aの内径が狭まることで、送り操作棒20の中心軸X1周りの回転と、中心軸X1の軸方向の移動が規制されるようになっている。
【0024】
送り操作棒20の上端に設けた接続部材20aの貫通孔20a1には、軸部材20bの他端側が挿入されている。軸部材20bの他端側の外周には、接続部材20aを中心軸X1の径方向に貫通させたボルト20a2が圧接しており、軸部材20bの接続部材20aからの脱落が、ボルト20a2により阻止されている。
ここで、接続部材20aは、送り操作棒20の上端に圧入により固定されており、送り操作棒20と軸部材20bとの中心軸X1周りの相対回転が規制されている。
【0025】
図1の(a)、(b)に示すように、この送り操作棒20の下端側を回転自在に支持する下部支持機構28は、ベース10の上面10aに固定された筒部材27と、この筒部材27の内側で回転可能に支持された中心軸部材21とを、有している。
筒部材27は、Z軸に沿う向きで設けられており、この筒部材27で支持された中心軸部材21は、Z軸に沿う中心軸X1周りに回転可能となっている。
【0026】
この中心軸部材21の下端側は、筒部材27を貫通してベース10内に位置しており、中心軸部材21の下端には、回転伝達機構29のプーリ25が連結されている。
回転伝達機構29は、この中心軸部材21の下端に取り付けたプーリ25と、前記したベース10のガイドローラ11に連結されたプーリ13と、これらプーリ13、25に巻き掛けたタイミングベルト14と、を有しており、中心軸部材21と一体に回転するプーリ25と、ガイドローラ11と一体に回転するプーリ13との間での回転の伝達が、この回転伝達機構29により行われるようになっている。
【0027】
そのため、ベース10のX軸方向の移動と、中心軸部材21の中心軸X1周りの回転とが、回転伝達機構29により連動するようになっている。
【0028】
下部支持機構28におけるベース10寄りの位置には、中心軸部材21の回転を規制するロック機構23が設けられている。
図3の(c)に示すように、ロック機構23は、中心軸部材21に外挿されたブレーキシュー23aを有しており、ロックレバー23bをロック方向に回転させると、ブレーキシュー23aが中心軸部材21を締め付けて、中心軸部材21の中心軸X1周りの回転が規制されるようになっている。
【0029】
中心軸部材21の上端と送り操作棒20との間には、送り操作棒20と中心軸部材21との間での回転の伝達/非伝達を切り替える切替機構30が設けられている。
この切替機構30により、中心軸部材21と送り操作棒20とが連結されて、送り操作棒20と中心軸部材21との相対回転不能が規制されると、送り操作棒20と中心軸部材21との間で、回転を伝達できる状態となり、中心軸部材21と送り操作棒20とが非連結状態にされて、送り操作棒20と中心軸部材21との相対回転が許容されると、送り操作棒20と中心軸部材21との間で、回転が伝達できない状態になるようになっている。
【0030】
図3の(a)に示すように、切替機構30は、送り操作棒20の下端に連結された係合部材31と、中心軸部材21の上端に連結された被係合部材32と、中心軸部材21を回転可能に支持する筒状のケース35と、を備えて構成されている。ケース35の内側では、被係合部材32と係合部材31とが同一の中心軸X1上に配置されており、この状態において係合部材31のみが、中心軸X1の軸方向に移動可能となっている。
【0031】
ケース35は、中心軸部材21を収容する筒部材27の上端に設けられており、筒部材27と一体に形成された角筒形状のケースである。このケース35の内側には、中心軸部材21の外径よりも大きい内径の収容空間Kが設けられており、この収容空間Kの内側で、係合部材31が中心軸X1の軸方向に移動することで、係合部材31と被係合部材32とが係脱するようになっている。
【0032】
中心軸部材21の上端側は、ケース35に設けた貫通孔35aを中心軸X1方向に貫通しており、貫通孔35aに設けたベアリング38、38で回転可能に支持されている。
ケース35内において、中心軸部材21の上端には、被係合部材32の下部に設けた取付部32cが外装して取り付けられており、被係合部材32は、この取付部32cを径方向に貫通するボルト32c1により、中心軸部材21に対して相対回転不能に連結されている。
【0033】
取付部32cの上部には、当該取付部32cよりも大径の大径部32aが一体に設けられており、この大径部32aの上端部には、径方向外側に延出するフランジ部32bが設けられている。
大径部32aの外周には、ケース35の収容空間K内で中心軸X1方向に間隔を開けて配置したベアリング36、36が当接しており、被係合部材32(大径部32a)は、ケース35の内側で回転可能に支持されている。
【0034】
大径部32aの上端部においてフランジ部32bは、中心軸X1周りの周方向の全周に亘って設けられており、中心軸X1の軸方向から見てリング状を成している。
図4の(a)、(b)に示すように、このフランジ部32bは、中心軸X1の軸方向に所定の厚みWを有しており、フランジ部32bの上面には、係合部材31側の係合ピン33が挿入される挿入孔32b1が開口している。
中心軸X1の軸方向から見て挿入孔32b1は、中心軸X1周りの周方向に第2の間隔(例えば、18°間隔)で複数設けられている(
図3の(b)参照)。
【0035】
図3の(a)に示すように、係合部材31は、軸部31aの長手方向(中心軸X1の軸方向)の途中位置に、径方向外側に延出するフランジ部31bを有している。フランジ部31bは、中心軸X1周りの周方向の全周に亘って設けられており、中心軸X1の軸方向から見てリング状を成している。
【0036】
軸部31aにおけるフランジ部31bよりも上側は、送り操作棒20の下端に取り付けられた接続部材22の貫通孔22aに挿入されている。貫通孔22a内に位置する軸部31aの外周には、接続部材22を厚み方向に貫通させた止めネジ22bが圧接しており、係合部材31の接続部材22からの脱落が、止めネジ22bにより阻止されている。
【0037】
軸部31aにおけるフランジ部31bよりも下側は、被係合部材32の大径部32a内に挿入される挿入部31cとなっており、この挿入部31cは、フランジ部31b側の大径部31c1と、大径部31c1の下側に連なる小径部31c2とから構成される。
挿入部31cの外周には、被係合部材32の大径部32aの内側で中心軸X1方向に間隔を開けて配置したベアリング34、34が当接しており、係合部材31(大径部31c1)は、被係合部材32の内側で中心軸X1周りに回転可能、かつ中心軸X1の軸方向に移動可能に支持されている。
【0038】
さらに、軸部31aにおける小径部31c2の先端側の外周には、周方向の全周に亘って節度溝31c3が形成されている。この節度溝31c3は、断面視においてV溝形状に形成されており、この節度溝31c3には、被係合部材32の大径部32aの内周から出没自在とされたプランジャ39が、中心軸X1の径方向から係合している。
【0039】
実施の形態では、係合部材31を被係合部材32と係合させる方向(図中下方向)に移動させた際に、中心軸X1方向の所定位置まで係合部材31の小径部31c2が被係合部材32内に挿入されると、小径部31c2の外周に設けた節度溝31c3にプランジャ39が弾発的に係合して、節度感が発揮されるようになっている。
そのため、この節度感の発揮により、係合部材31と被係合部材32との係合完了を感覚的に感知できるようになっている。
【0040】
係合部材31のフランジ部31bには、当該フランジ部31bを中心軸X1方向に貫通する貫通孔31b1が設けられている。中心軸X1の軸方向から見て貫通孔31b1は、中心軸X1周りの周方向に第1の間隔(例えば180°間隔)で複数設けられており、貫通孔31b1の各々には、被係合部材32側から係合ピン33が圧入されて固定されている。
ここで、係合部材31における中心軸X1周りの周方向の係合ピン33の設置間隔(第1の間隔、例えば、180°間隔)は、この係合ピン33が挿入される挿入孔32b1の被係合部材32における中心軸X1周りの周方向の設置間隔(第2の間隔、例えば、18°間隔)よりも大きくなっている(
図3の(b)参照)。
【0041】
図4の(a)に示すように、係合ピン33は、円柱形状の基部33aを有しており、この基部33aの被係合部材32側の先端には、基部33aよりも外径の小さい小径部33bが形成されている。小径部33bの外径は、被係合部材32の挿入孔32b1の内径よりも小さい径となっている。
基部33aと小径部33bとの境界部には、径方向外側に延出するリング形状の当接部33cが設けられており、この当接部33cは、貫通孔31b1の内径Rbよりも大きい外径Raで形成されている。
【0042】
そのため、係合ピン33を貫通孔31b1に圧入した状態において、係合ピン33の小径部33bは、フランジ部31bの下面から被係合部材32側に突出するようになっている。
実施の形態では、この係合ピン33の突出高さHaは、係合部材31の小径部31c2側を、当該小径部31c2の外周の節度溝31c3に、被係合部材32側のプランジャ39が係合するまで被係合部材32の内側に挿入した際に、係合ピン33の小径部33bが被係合部材32側の挿入孔32b1に挿入される高さに設定されている。
そのため、係合部材31側の係合ピン33の小径部33bが、被係合部材32側の挿入孔32b1に挿入されることで、係合部材31と被係合部材32とが相対回転不能に連結されようになっている。
【0043】
ここで、被係合部材32側の挿入孔32b1の上端には、係合部材31側の上方に向かうにつれて開口径が大きくなる向きでリング状の周縁部32b2が設けられている。そのため、前記した係合ピン33の小径部33bを挿入孔32b1に挿入する際に、小径部33bと挿入孔32b1の位置が多少ずれていても、係合ピン33の小径部33bが、この周縁部32b2により、挿入孔32b1内に誘導されるようになっている。
また、係合ピン33の当接部33cの外径Raと、挿入孔32b1の周縁部32b2の外径は、整合する径で形成されており、係合ピン33の小径部33bが挿入孔32b1に挿入された際に、係合ピン33の当接部33cが周縁部32b2に着座して、係合部材31と被係合部材32の中心軸X1周りの微少な相対回転が規制されるようになっている。
【0044】
さらに、係合ピン33の当接部33cにおける、挿入孔32b1との当接面33c1は、曲面加工が施されてR形状を成しており、被係合部材32の挿入孔32b1の周縁部32b2に着座する際の衝突力を、このR形状の当接面33c1で緩和させるようにしている。
【0045】
図4の(a)、(b)に示すように、係合部材31のフランジ部31bの外周には、保持機構41の凹溝31b2が設けられている。
保持機構41は、送り操作棒20を中心軸部材21との間で回転伝達を行わない位置(回転非伝達位置)に保持するものであり、フランジ部31bの外周に設けられた凹溝31b2と、ケース35の周壁35bを径方向に貫通して凹溝31b2に弾発的に係合するロックピン40と、を有している。
【0046】
凹溝31b2は、送り操作棒20が、中心軸部材21との間で回転の伝達を行わない位置(回転非伝達位置)に配置された時に、ロックピン40が弾発的に係合する第1の凹溝31b3と、送り操作棒20が、中心軸部材21との間で回転の伝達を行う位置(回転伝達位置)に配置された時に、ロックピン40が弾発的に係合する第2の凹溝31b4と、から構成される。
【0047】
なお、送り操作棒20の回転伝達位置と回転非伝達位置との間の切り替えは、前記した切替機構30により行うようになっている。
具体的には、送り操作棒20が回転伝達位置に配置されると、送り操作棒20に連結された係合部材31の係合ピン33が、中心軸部材21に連結された被係合部材32の挿入孔32b1の外に位置して、送り操作棒20と中心軸部材21との間での回転伝達を行えない状態とされる。
送り操作棒20が回転非伝達位置に配置されると、送り操作棒20に連結された係合部材31の係合ピン33が、中心軸部材21に連結された被係合部材32の挿入孔32b1内に位置して、送り操作棒20と中心軸部材21との間での回転伝達を行える状態とされる。
【0048】
第1の凹溝31b3は、第2の凹溝31b4の被係合部材32側の下側に隣接して設けられており、これらの第1の凹溝31b3と第2の凹溝31b4は、中心軸X1周りの周方向の全周に亘って形成されている。
これらの第1の凹溝31b3と第2の凹溝31b4が設けられた係合部材31は、送り操作棒20と一体に中心軸X1回りに回転するので、送り操作棒20の回転軸X1周りの角度位置に関係なく、ロックピン40が、これらの第1の凹溝31b3と第2の凹溝31b4に係合できるようにするためである。
【0049】
ロックピン40は、ケース35の周壁35bを径方向に貫通する貫通孔35b1を、周壁35bの外側から内側に向けて貫通して設けられている。
貫通孔35b1内には、ロックピン40を挿通方向に付勢する付勢部材35b2が設けられており、ロックピン40の先端は、付勢部材35b2の付勢力で、周壁35bの内周から出没自在とされていると共に、周壁35bの内周から突出させた先端を、係合部材31側の凹溝31b2(第1の凹溝31b3、第2の凹溝31b4)に圧接させるようになっている。
ここで、被係合部材32において係合部材31は、中心軸X1の軸方向に移動可能に設けられており、係合ピン33を挿入孔32b1に挿入して、係合部材31と被係合部材32とが相対回転不能に連結された連結位置(回転伝達位置:
図4の(b)の位置)と、係合ピン33を挿入孔32b1外に位置させて、係合部材31と被係合部材32とが相対回転が許容された非連結位置(回転非伝達位置:
図4の(a)の位置)と、の間で移動可能に設けられている。
よって、凹溝31b2に係合させたロックピン40により、係合部材31が連結された送り操作棒20の中心軸X1方向の移動範囲が規定されている。
【0050】
実施の形態では、送り操作棒20を上方に移動させて係合部材31と被係合部材32との係合を解除した際に、ロックピン40が、第1の凹溝31b3と第2の凹溝31b4との間に設けられる境界壁部31b5の第1の凹溝31b3側の平坦面31b7に当接することで、係合部材31と被係合部材32とを相対回転不能に連結する方向(図中下側)への送り操作棒20の移動が阻止されるようになっている(
図4の(b)参照)。
なお、係合部材31と被係合部材32とを相対回転不能に連結する際には、ロックピン40の第1の凹溝31b3との係合を解除することで、送り操作棒20を下方に移動させて、係合部材31と被係合部材32とを相対回転不能に連結できるようになっている。
【0051】
ここで、境界壁部31b5における第2の凹溝31b4側の面は、被係合部材32側の下方に向かうにつれて外径が大きくなるテーパ面31b6となっている。そのため、係合部材31と被係合部材32との相対回転が規制された回転伝達位置(
図4の(a)の位置)から、送り操作棒20を上方に移動させると、ロックピン40は、テーパ面31b6により押し上げられて(
図4の左側に移動させられて)、付勢部材35b2の付勢力に抗して第2の凹溝31b4との係合を解除する方向に移動したのち、第1の凹溝31b3の第2の凹溝31b4側の境界壁部31b5を構成する平坦面31b7と係合するようになっている。これにより、係合部材31と被係合部材32との相対回転が許容された回転非伝達位置に送り操作棒20が配置されることになる。
よって、送り操作棒20を上方に移動させるだけで、送り操作棒20と中心軸部材21との間での回転を非伝達にすることができる。
【0052】
次に、三次元形状測定装置1を用いて被測定物(図示せず)の三次元形状を測定する場合を説明する。
【0053】
初めに、送り操作棒20を中心軸X1周りに回転させて、ベース10のX軸方向の位置を微調整する場合を説明する。
係合部材31と被係合部材32とが非連結位置(
図4の(b)参照)に配置されて、送り操作棒20が、中心軸部材21との間で回転の伝達を行わない回転伝達位置に配置されている場合には、ロックピン40と係合部材31の第1の凹溝31b3との係合を解除するために、ロックピン40を引っ張って、第1の凹溝31b3との係合を解除する方向(
図4の(b)における左方向)に移動させる。
移動させたロックピン40と第1の凹溝31b3との係合が解除されると、送り操作棒20(係合部材31)は、自重により、中心軸部材21(被係合部材32)側の下方に移動して、係合部材31の係合ピン33(小径部33b)が、被係合部材32の挿入孔32b1に挿入されると共に、係合ピン33の当接面33c1が、被係合部材32の挿入孔32b1の周縁部32b2に着座する(
図4の(a)参照)。
【0054】
これにより、係合部材31が、被係合部材32との相対回転が規制された連結位置に配置される結果、送り操作棒20が、中心軸部材21との間で回転の伝達を行う位置(回転伝達位置)に配置されることになる。
【0055】
ここで、例えば、係合ピン33と挿入孔32b1の中心軸X1周りの周方向における角度位置がずれていてロックピン40を操作しても、係合ピン33が挿入孔32b1に挿入されない場合には、送り操作棒20を中心軸X1周りに回転させることで、所定の角度位置で係合ピン33と挿入孔32b1の中心軸X1方向の位置が一致させることができ、係合ピン33が挿入孔32b1に挿入される。これにより、係合部材31と被係合部材32とは相対回転不能に連結される。
実施の形態では、係合ピン33は中心軸X1周りの周方向に180°間隔で設けられ、挿入孔32b1は中心軸X1周りの周方向に18°間隔で設けられているので、少なくとも送り操作棒20を中心軸X1周りに少なくとも18°回転させることで、係合ピン33が何れかの挿入孔32b1に挿入されるようになっている。
【0056】
なお、送り操作棒20が下方に移動すると、係合部材31の節度溝31c3にプランジャ39が係合して、送り操作棒20が下方の所定の位置まで移動したことを示す節度感が得られ、操作者は、係合部材31と被係合部材32との係合完了を感覚的に感知できる。
【0057】
係合部材31と被係合部材32とが相対回転不能に連結されている状態で、送り操作棒20を中心軸X1周りに回すと、送り操作棒20の回転は、係合部材31及び被係合部材32を介して中心軸部材21に伝達される。そして、中心軸部材21の回転は、プーリ13、25とタイミングベルト14とから構成される回転伝達機構29を介してガイドローラ11に伝達され、ガイドローラ11の転動に伴って、ベース10がガイドレール630に沿って移動するようになっている。
【0058】
ここで、送り操作棒20の回転量(回転角度)が小さい場合であっても、ガイドローラ11は、送り操作棒20の回転角度に応じた量だけ転動するので、送り操作棒20の回転量によりベース10の移動量を微調整することができる。
【0059】
ベース10のX軸方向の位置が確定したのち、ロック機構23またはロック機構24を操作して、中心軸部材21の回転をロックする。そうすると、タイミングベルト14を介してガイドローラ11の転動が固定されるので、ベース10がX軸方向に移動するのを防止できる。
【0060】
ここで、係合部材31と被係合部材32とが相対回転不能に連結されている状態(
図4の(a)の状態)において、送り操作棒20を直接引っ張ってベース10の位置を一度に多く変位させようとすると、ベース10の移動と共にガイドローラ11が転動し、それにより送り操作棒20が中心軸X1周りに回転してしまう。そうすると、送り操作棒20を引っ張る際に操作者に違和感を与えてしまう。
このような場合、以下に説明するように、ガイドローラ11の転動を送り操作棒20に伝達させないようにして、ベース10の変位と送り操作棒20の回転を連動しないようにする。
【0061】
まず、係合部材31が、被係合部材32との相対回転が規制された連結位置に配置されて、送り操作棒20が、中心軸部材21との間で回転の伝達を行う位置(回転伝達位置)に配置されている状態(
図4の(a)参照)で、送り操作棒20を上方に持ち上げると、係合部材31の第2の凹溝31b4に弾発的に係合しているロックピン40は、第1の凹溝31b3側の下方に向けて、第2の凹溝31b4内を摺動する。
ここで、第1の凹溝31b3と第2の凹溝31b4との間に設けられる境界壁部31b5では、第2の凹溝31b4側が、第1の凹溝31b3側に向かうにつれて外径が大きくなる向きで傾斜したテーパ面31b6となっているので、ロックピン40は、送り操作棒20の上方への移動に伴ってテーパ面31b6に沿って摺動する結果、第2の凹溝31b4との係合を解除する方向(
図4の(a)の下側)に移動することになる。
【0062】
そして、ロックピン40が境界壁部31b5を乗り越えた時点で、第1の凹溝31b3側に弾発的に係合することになる。
実施の形態では、ロックピン40が境界壁部31b5を乗り越えた時点で、係合部材31が、被係合部材32との相対回転が許容された非連結位置に配置されて、送り操作棒20が、中心軸部材21との間で回転の伝達を行えない位置(回転非伝達位置)に配置されている状態(
図4の(b)参照)となる。
【0063】
よって、この時点で、送り操作棒20の上方への移動を終了すると、送り操作棒20(係合部材31)が自重により下方に移動することになる。しかし、ロックピン40が、係合部材31の境界壁部31b5の第2の凹溝31b4側の面(平坦面31b7)と当接した時点で、送り操作棒20(係合部材31)の下方への移動が規制されることになる。
実施の形態では、ロックピン40が平坦面31b7に当接した時点で、係合部材31が、被係合部材32との相対回転が許容された非連結位置で保持されるので、送り操作棒20は、中心軸部材21との間で回転の伝達を行えない位置(回転非伝達位置)で保持されることになる。
【0064】
この状態で、送り操作棒20を直接引っ張って、ベース10の位置をX軸方向に変位させた場合、ベース10の位置の変位に伴って送り操作棒20は回転しないので、操作者は、違和感なく送り操作棒20を引っ張ってベース10の位置を大きく変位させることができる。
【0065】
ここで、上記の実施形態におけるX軸方向、Z軸方向及びY軸方向が、本発明における第1軸の方向、第2軸の方向及び第3軸の方向に相当する。
また、上記の実施形態におけるガイドレール630が、本発明における軌道に相当し、ガイドローラ11、12が、本発明における送り駆動部材に相当し、中心軸部材21が、本発明の回転伝達部材に相当する。
【0066】
以上の通り、実施の形態では、
(1)定盤600の載置面601の第1軸(X軸)の方向に設けた軌道(ガイドレール630)に沿って移動可能なベース10と、ベース10上に起立させたコラム50に沿って、載置面601(定盤面)と垂直な第2軸(Z軸)の方向に移動可能なヘッド60と、ヘッド60に支持されて、X軸およびZ軸の両方に垂直な第3軸(Y軸)の方向に移動可能なアーム70と、ベース10上にコラム50と並列に設けられていると共に、その上下の端を両持ち式に回転自在に支持されて、Z軸に平行な回転軸周りに回転可能とされた送り操作棒20と、ベース10をガイドレール630に沿って付勢する送り駆動部材(ガイドローラ11)と、送り操作棒20の回転が伝達される回転伝達部材(中心軸部材21)とを連絡して回転を伝達する回転伝達機構(プーリ13とプーリ25との間にタイミングベルト14が巻き掛けられる構成)と、を有する三次元形状測定装置において、中心軸部材21との間で回転の伝達を行う位置(回転伝達位置)と、中心軸部材21との間で回転の伝達を行えない位置(回転非伝達位置)との間で、送り操作棒20を移動可能とし、送り操作棒20と中心軸部材21との間での回転の伝達/非伝達を切り替える切替機構30を設けた構成とした。
【0067】
このように構成すると、送り操作棒20を回転させてベース10の位置を微調整する場合には、送り操作棒20と中心軸部材21との間で回転の伝達が行われるように切替機構30を切り替える。そうすると、送り操作棒20の回転は中心軸部材21を介してガイドローラ11に伝達される。よって、送り操作棒20の回転量(回転角度)に応じた量だけガイドローラ11が転動して、ベース10の位置を変位させることができる。
一方、送り操作棒20を直接引っ張ってベース10の位置を大きく変位させる場合には、送り操作棒20と中心軸部材21との間で回転の伝達が行われないように(非伝達となるように)切替機構30を切り替える。そうすると、送り操作棒20の回転は中心軸部材21に伝達されず、ベース10の位置を変位させてガイドローラ11を転動させても送り操作棒20の回転は行われないので、操作者は、違和感なく送り操作棒20を引っ張ってベース10の移動を行える。
【0068】
(2)切替機構30は、送り操作棒20と一体に回転する係合部材31と、中心軸部材21と一体に回転する被係合部材32と、中心軸部材21を回転可能に支持する筒状のケース35(支持部材)と、を有すると共に、切替機構30では、係合部材31と被係合部材32とが、ケース35の内側で同軸に配置されていると共に、係合部材31が、中心軸X1方向に移動可能に設けられており、係合部材31と被係合部材32の対向部では、係合部材31に、被係合部材32側の下方に向けて中心軸X1に沿って突出する係合ピン33が設けられており、被係合部材32に、係合ピン33が挿入される挿入孔32b1が設けられており、ケース35において係合部材31は、係合ピン33を挿入孔32b1に挿入して、係合部材31と被係合部材32との相対回転が規制された連結位置(
図4の(b)の位置)と、係合ピン33を挿入孔32b1外に位置させて、係合部材31と被係合部材32との相対回転が許容された非連結位置(
図4の(a)の位置)と、の間で移動可能に設けられている構成とした。
【0069】
このように構成すると、挿入孔32b1に対する係合ピン33の係脱により、送り操作棒20と一体に回転する係合部材31と、中心軸部材21と一体に回転する被係合部材32との間での、回転の伝達/非伝達を切り替えることができる。
よって、送り操作棒20と中心軸部材21との間での回転の伝達/非伝達の切り替えを簡単な構成で実現できる。
【0070】
(3)また、係合部材31を非連結位置で保持する保持機構を有しており、保持機構は、係合部材31の外周に設けられた凹溝31b2と、係合部材31が非連結位置に配置されたときに凹溝31b2に対向する位置で、ケース35を径方向に貫通して設けられていると共に、径方向に移動可能とされたロックピン40と、ロックピン40の先端を、ケース35の内周から突出させて、係合部材31の外周に圧接させる付勢部材35b2と、を有する構成とした。
【0071】
このように構成すると、ケース35の内周から突出するロックピン40を係合部材31の外周に設けられた凹溝31b2に係合させることで、係合部材31を非連結位置で保持することができる。よって、簡易な構成で、係合部材31と被係合部材32との相対回転が許容され、送り操作棒20と中心軸部材21との間の回転を非伝達に保持することができる。
【0072】
(4)凹溝31b2は、係合部材31が非連結位置(
図4の(b)の位置)に配置されたときに、ロックピン40が圧接する第1の凹溝31b3と、係合部材31が連結位置(
図4の(a)の位置)に配置されたときに、ロックピン40が圧接する第2の凹溝31b4とから、構成されており、第1の凹溝31b3は、第2の凹溝31b4の被係合部材32側に隣接して設けられており、第1の凹溝31b3と第2の凹溝31b4との境界壁部31b5における第2の凹溝31b4側の面は、回転軸方向で被係合部材32側に位置する第1の凹溝31b3側に向かうにつれて外径が大きくなる向きの傾斜面(テーパ面31b6)となっており、第1の凹溝31b3と第2の凹溝31b4との境界壁部31b5における第1の凹溝31b3側の面は、回転軸に直交する平坦面31b7となっている。
【0073】
このように構成すると、送り操作棒20(係合部材31)を上方に持ち上げると、ロックピン40は、係合部材31の境界壁部31b5のテーパ面31b6に沿って、第2の凹溝31b4の被係合部材32側に隣接して設けられる第1の凹溝31b3側に移動する。そうすると、係合部材31は、非連結位置に保持され、送り操作棒20と中心軸部材21との間の回転は非伝達状態となる。
よって、送り操作棒20を上方に持ち上げるだけで、送り操作棒20と中心軸部材の間の回転の伝達/非伝達を素早く簡単に行うことができる。
【0074】
(5)係合ピン33は、回転軸周りの周方向に第1の間隔(実施の形態では180°間隔)で複数設けられており、挿入孔32b1は、回転軸周りの周方向に第2の間隔(実施の形態では18°間隔)で複数設けられており、第2の間隔を、第1の間隔よりも狭い間隔に設定する構成とした。
【0075】
このように構成すると、回転軸周りの周方向における挿入孔32b1の数は、回転軸周りの周方向における係合ピン33の数よりも多くなるので、係合ピン33と挿入孔32b1とを係合し易くすることができる。
【0076】
(6)回転軸方向における挿入孔32b1の開口側には、開口に近づくにつれて外径が大きくなるリング状の周縁部32b2が設けられており、係合ピン33では、貫通孔31b1側の端部に、貫通孔31b1の内径よりも小さい小径部33bが設けられていると共に、小径部33bとの境界部に、周縁部32b2の外径と整合する外径Raを有すると共に、係合部材31が連結位置(
図4の(a)の位置)に配置されたときに、周縁部32b2に回転軸方向から当接して、回転軸周りの係合部材31の移動を規制する当接部33cが設けられる構成とした。
【0077】
送り操作棒20の上下方向の移動に伴って、係合部材31が連結位置と非連結位置との間を移動すると、係合部材31に設けられる係合ピン33の小径部33bは、被係合部材32の挿入孔32b1に挿抜されるようになっている。そうすると、係合ピン33の小径部33bと挿入孔32b1とが係合した状態において、係合ピン33と挿入孔32b1との間には所定の隙間を有する必要があり、その隙間によって係合ピン33と挿入孔32b1との締結が弱くなってしまう。
上記のように構成すると、係合ピン33の外径が大きい当接部33cが、周縁部32b2に当接するので、係合ピン33の挿入孔32b1に対する接触面積を大きくすることができる。よって、送り操作棒20と中心軸部材21との間の回転の伝達を確実に行うことができる。
【0078】
なお、実施の形態では、送り操作棒20を中空のアルミニウム材を用いて形成しているので、重量が軽くなり送り操作棒20を回転させる際の慣性モーメントが小さくなる。
よって、操作者は送り操作棒20を小さい力で軽く回したり止めたりすることができ、ベース10をガイドレール630に沿ったX軸方向に僅かな距離だけ移動させるようなより細かい微調整を簡単に行うことができる。
【0079】
なお、上記の実施形態では、先端部31dの周方向の全周に亘って節度溝31c3を形成し、この節度溝31c3にプランジャ39が係合することで、送り操作棒20を押し下げた際の節度感を得る場合を例示したが、先端部31dの中心軸周りの周方向に複数の節度穴を等間隔に形成するようにしてもよい。
この場合、送り操作棒20を押し下げた場合に、プランジャ39が複数の節度穴の何れかに係合して節度感を得ることができると共に、さらに、その状態で、送り操作棒20を中心軸X1周りに回した場合、プランジャ39が周方向に形成される複数の節度穴に順次係合することで、回転時の節度感も得ることができる。
【0080】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれる。
【解決手段】ベース10と、コラム50に沿って移動可能なヘッド60と、ヘッドに移動可能に支持されるアーム70と、ベース上にコラムと並列に設けられると共に、上下端を両持ち式に回転自在に支持されて、回転軸周りに回転可能とされた送り操作棒20と、ベースをガイドレール630に付勢する送りガイドローラ11と、送り操作棒の回転が伝達される中心軸部材21とを連絡して回転を伝達する回転伝達機構29とを有する三次元形状測定装置1において、送り操作棒を、中心軸部材との間で回転の伝達を行う回転伝達位置と、中心軸部材との間で回転の伝達を行えない回転非伝達位置との間で送り操作棒を移動可能とし、送り操作棒と中心軸部材との間での回転の伝達/非伝達を切り替える切替機構を設けた。