【実施例】
【0038】
次に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例(1-1)]
<ニトリルヒドラターゼを含む微生物触媒の調製>
特開2001−340091号公報の実施例1に記載の方法に従い、No.3クローン菌体を取得し、同じく、同実施例1の方法、すなわち下記の方法で培養してニトリルヒドラターゼを含む湿菌体を得た。
【0039】
500mLのバッフル付三角フラスコに下記の組成の培地100mLを調製し、121℃・20分間のオートクレーブにより滅菌した。この培地に終濃度が50μg/mLとなるようにアンピシリンを添加した後、上記のNo.3クローン菌体を一白金耳で植菌し、37℃・130rpmにて20時間培養した。遠心分離(15000G×15分間)により菌体のみを培養液より分離し、続いて、50mLの生理食塩水に該菌体を再懸濁した後に、再度遠心分離を行って湿菌体を得た。
【0040】
培地組成 酵母エキストラクト 5.0 g/L
ポリペプトン 10.0 g/L
NaCl 5.0 g/L
塩化コバルト・六水和物 10.0mg/L
硫酸第二鉄・七水和物 40.0mg/L
pH7.5
最終製品として、水溶液中のアクリルアミド濃度が50重量%の製品を得るため、以下の条件で反応を行った。
【0041】
<アクリロニトリルからアクリルアミドへの反応工程>
(第一反応器を用いた第一反応工程)
第一反応器として用いた、撹拌器を備えた1Lガラス製フラスコに、予め400gの水を仕込んだ。この第一反応器には、その気相部に空気を1L/minの流量にて通気した。
【0042】
上記の培養方法で得られた湿菌体を純水に懸濁した。
第一反応器内を撹拌しながら、この懸濁液を、11g/hの速度で連続的にフィードした。アクリロニトリルは、32g/hの速度で、また、純水は37g/hの速度で連続的にフィードした。さらに反応pHが7.5〜8.5となるように、0.1M−NaOH水溶液をフィードした。これらの原料は、各々の貯槽から単独のラインで供給され、反応器内にフィードされるまで、他の原料に接触することはなかった。
【0043】
さらに、第一反応器の液面レベルを一定に保つように、反応液を第一反応器から80g/hの速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的にフィードして、第二反応器内でさらに反応を進行させた。
なお、湿菌体の添加量は、第一反応器のアクリロニトリル転化率が97%となるように調整を行った。
【0044】
(第二反応器を用いた第二反応工程)
第二反応器としては、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブ20mを用いた。
第二反応工程は、第一反応器から連続的に抜き出された反応液を、第二反応器に連続的にフィードし、さらに反応を進行させるものである。
なお、第一反応器および第二反応器ともに10〜20℃の温度の水浴中に浸漬し、各反応器内部の液温が15℃となるように温度制御を行った。
【0045】
(HPLC分析)
反応工程を開始してから30日目に各反応器の反応液をサンプリングし、HPLC分析を行ったところ、第一反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が97%、第一反応器出口でのアクリロニトリル濃度は1重量%であり、かつ第二反応器出口でのアクリルニトリル濃度が検出限界以下(100重量ppm以下)、アクリルアミド濃度が53.5重量%となった。このとき、第一反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は8ppmであり、第二反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は7ppmであった。
【0046】
(メタノールテスト)
メタノールテストは、反応液等10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した結果、透過率が99.9%以上であった場合、アクリルアミドの重合物の存在は認めないとするテストである。
【0047】
第一反応器から抜き取った反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。
得られた濾液に対してメタノールテストを実施した結果、透過率が99.9%以上であったことから、アクリルアミド重合物は存在しないことがわかった。
【0048】
なお、表1中、メタノールテストを実施した結果、アクリルアミドの重合体が存在した場合を「×」、アクリルアミドの重合物が存在しなかった場合を「○」と表記している。
ここで分析条件は以下のとおりであった。
アクリルアミド分析条件:
高速液体クロマトグラフ装置:LC−10Aシステム(株式会社島津製作所製)
【0049】
(UV検出器波長250nm、カラム温度40℃)
分離カラム:SCR-101H (株式会社島津製作所製)
溶離液:0.05 %(容積基準)−リン酸水溶液
アクリロニトリル分析条件:
高速液体クロマトグラフ装置:LC−10Aシステム(株式会社島津製作所製)
(UV検出器波長200nm、カラム温度40℃)
分離カラム:Wakosil-II 5C18HG (和光純薬製)
溶離液:7%(容積基準)−アセトニトリル、0.1mM−酢酸、0.2mM−酢酸ナトリウムを各濃度で含有する水溶液
【0050】
アクリルアミド濃度は以下のようにして求めた。市販のアクリルアミドを、純水に溶解して、濃度既知のアクリルアミド水溶液を調製し、HPLCにおけるアクリルアミド濃度分析用検量線を作成した。これを用いて、被験液のHPLC分析時の面積値を、アクリルアミド濃度に換算した(絶対検量線法)。また、HPLC測定に用いる反応液の量は5μLであった。なお、各反応液の密度の影響はほとんどないため、このようにしてアクリルアミド濃度(重量%)が得られた。
【0051】
<アクリルアミドの精製工程>
この反応を30日目に分析を実施して以降さらに約4日間継続した。この約4日間で約7500gの反応液が得られた。
【0052】
得られた反応液約7500gに対し、活性炭(クラレケミカル(株)製の粉状活性炭PM−SX)を30g添加し、0.5重量%−アクリル酸水溶液160gを加えた後、1M−NaOH水溶液でpHを5に調整した。空気を1L/minの流量にて通気した環境下にて、これを25℃で24時間撹拌した。24時間攪拌した後の処理液の溶存酸素濃度は8ppmであった。
【0053】
その後、濾紙にて濾過を行い、活性炭を除去した。活性炭に付着したアクリルアミドを回収するため、300gの純水で活性炭を洗浄し、先の活性炭処理液と混合して、1M−NaOH水溶液で中和し、pHを7として約7900gの製品を得た。この活性炭処理後の製品中の最終アクリルアミド濃度は、50.5重量%であった。
【0054】
また、下記の分析法を用いて残存ポリペプチド濃度を測定したところ、0.7ppmであった。
なお、実施例および比較例において、精製工程後の残存ポリペプチド濃度はすべて0.1ppmから1.5ppmの範囲であった。本明細書において「ポリペプチド」とは、タンパク質、タンパク質を構成する1以上のポリペプチドおよび該ポリペプチドの断片を包含する用語である。
【0055】
(ポリペプチド濃度分析法)
精製工程後の製品をサンプリングし、透析膜を用いてアクリルアミドを除去し、発色試薬を用いてポリペプチドの発色を行わせ、分光光度計により595nmの吸光度を測定した。
分析条件:
分光光度計 :U-2000(日立製)
透析膜 :Spectra/Por CE(日本ジェネティックス製)
発色試薬 :DYE試薬(バイオラッド製)
【0056】
(メタノールテスト)
得られた製品に対してメタノールテストを実施した。すなわち、得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0057】
(アクリルアミド重合体の製造)
上記のようにして得られたアクリルアミド水溶液に、水を加え濃度20重量%のアクリルアミド水溶液とした。この20重量%アクリルアミド水溶液500gを1Lポリエチレン容器に入れ、18℃に保ちながら、窒素を通じて液中の溶存酸素を除き、直ちに、発泡スチロール製の保温用ブロックの中に入れた。
【0058】
ついで、200×10
-6 mpm(アクリルアミドに対するモル比)の4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸ナトリウム)、200×10
-6 mpmのジメチルアミノプロピオニトリル、および80×10
-6 mpmの過硫酸アンモニウムを各々小量の水に溶解して、この順序に1Lポリエチレン容器中に素早く注入した。これらの試薬には、予め窒素ガスを通じておき、また、注入およびその前後には、上記ポリエチレン容器にも少量の窒素ガスを通じ、酸素ガスの混入を防止した。
【0059】
試薬を注入すると、数分間の誘導期の後、ポリエチレン容器の内部の温度が上昇するのが認められたので窒素ガスの供給を止めた。約100分間、保温用ブロック中で、そのままの状態でポリエチレン容器を保持したところ、ポリエチレン容器の内部の温度が約70℃に達した。そこで、ポリエチレン容器を保温用ブロックから取り出し、97℃の水に2時間浸漬しさらに重合反応を進めた。その後冷水に浸漬して冷却し、重合反応を停止した。
【0060】
このようにして得られたアクリルアミド重合体の含水ゲルをポリエチレン容器から取り出し、小塊に分け、肉挽器ですり潰した。このすり潰したアクリルアミド重合体の含水ゲルを、100℃の熱風で2時間乾燥し、さらに、高速回転刃粉砕器で粉砕して乾燥粉末状のアクリルアミド重合体を得た。
【0061】
(アクリルアミド重合体の水溶性テスト)
水溶性テストとは、1Lビーカーに水600mLを入れ、定められた形状の撹拌羽根を用いて25℃で撹拌しながらアクリルアミド重合体0.6gを添加し、不溶解分を濾別し、その乾燥重量より不溶解分の含有率を求めたものである。
【0062】
なお、表1中、水溶性テストを実施した結果、不溶解分の含有率が1%を超えた場合を「×」、不溶解分の含有率が1%以下であった場合を「○」と表記している。
得られた乾燥粉末状のアクリルアミド重合体を篩に掛け、32〜42メッシュの重合体を分取した。この分取したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、不溶解分の含有率は0.3%であり、良好な水溶性を示した。
【0063】
<アクリルアミドの保存工程>
精製工程で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。
【0064】
10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれも透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0065】
(アクリルアミド重合体の製造)
精製工程の後に得られたアクリルアミドに対する重合体の製造方法と同様にして、乾燥粉末状のアクリルアミドの重合体を得た。
【0066】
(アクリルアミド重合体の水溶性テスト)
得られた乾燥粉末状のアクリルアミド重合体を篩にかけ、32〜42メッシュの重合体を分取した。この分取したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、いずれも不溶解分の含有率は0.7%であり、良好な水溶性を示した。得られた結果を表1に示す。
【0067】
[実施例(1-2)〜(1-4)]
実施例(1-1)において、第一反応工程の溶存酸素濃度を8ppmから4ppm(実施例(1-2)),2ppm(実施例(1-3))または1.2ppm(実施例(1-4))に変更した以外は実施例(1-1)と同様にしてアクリルアミドを製造し、種々のテストに供した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
すなわち、実施例(1-1)の反応工程において、第一反応器へ通気する気体を空気の代わりに窒素と空気との混合気とした以外は実施例(1-1)と同様の操作を行った。この混合気中の空気の割合をそれぞれ50%、25%、15%とした。このときの第一反応器出口の反応液における溶存酸素濃度はそれぞれ4ppm、2ppm、1.2ppmであり、第二反応器出口の反応液における溶存酸素濃度はそれぞれ3.5ppm、1.8ppm、1.0ppmであった。
【0069】
第一反応器の反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。得られた濾液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。透過率はいずれの場合も99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0070】
精製工程において、実施例(1-1)と同様の操作により活性炭処理を行い約7900gの製品を得た。得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれの場合も透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0071】
さらに、得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、いずれも不溶解分の含有率は0.3%であり、良好な水溶性を示した。
【0072】
保存工程において、精製工程で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれも透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。また、実施例(1-1)と同様にアクリルアミド重合体を製造し、得られたアクリルアミド重合体の水溶性テストを行ったところ、いずれも不溶解分の含有率は0.7%であり、良好な水溶性を示した。
【0073】
[実施例(2-1)〜(2-3)]
実施例(1-1)において、精製工程の溶存酸素濃度を8ppmから4ppm(実施例(2-1)),2ppm(実施例(2-2))または1ppm(実施例(2-3))に変更した以外は実施例(1-1)と同様にしてアクリルアミドを製造し、種々のテストに供した。得られた結果を表1に示す。
【0074】
すなわち、実施例(1-1)の精製工程において、pH5での活性炭処理時の通気を、空気の代わりに空気と窒素との混合気とした以外は、実施例(1-1)と同様の操作を行った。この混合気中の空気の割合をそれぞれ50%、25%、12%とした。その結果、24時間撹拌した後の処理液の溶存酸素濃度はそれぞれ4ppm、2ppm、1.0ppmであった。得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれの場合も透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0075】
また、この精製工程において、得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、いずれも不溶解分の含有率は0.3%であり、良好な水溶性を示した。
【0076】
保存工程において、精製工程で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれも透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。また、実施例(1-1)と同様にアクリルアミド重合体を製造し、得られたアクリルアミド重合体の水溶性テストを行ったところ、いずれも不溶解分の含有率は0.7%であり、良好な水溶性を示した。
【0077】
[実施例(3-1)]
実施例(1-1)において、第一反応工程のアクリロニトリル濃度が0.4重量%になった時点で酸素を溶存させた点および湿菌体の添加量を第一反応器のアクリロニトリル転化率が99%となるように調整を行った点以外は実施例(1-1)と同様にしてアクリルアミドを製造し、種々のテストに供した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
すなわち、反応工程において、第一反応器として攪拌器を備えた1Lガラス製フラスコ、第二反応器として内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブ20mを準備した。第一反応器には、予め400gの水を仕込んだ。第一反応器の気相部には空気を1L/minの流量にて通気した。
【0079】
実施例(1-1)に記載の方法と同様の方法で得られた湿菌体を純水に懸濁した。第一反応器内を撹拌しながら、この懸濁液を、16g/hの速度で連続的にフィードした。アクリロニトリルは、32g/hの速度で、また、純水は32g/hの速度で連続的にフィードした。さらに反応pHが7.5〜8.5となるように、0.1M−NaOH水溶液をフィードした。これらの原料は、各々の貯槽から単独のラインで供給され、反応器内にフィードされるまで、他の原料に接触することはなかった。さらに、第一反応器の液面レベルを一定に保つように、反応液を第一反応器から80g/hの速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的にフィードして、第二反応器内でさらに反応を進行させた。なお、湿菌体の添加量は、第一反応器のアクリロニトリル転化率が99%となるように調整を行った。
【0080】
第一反応器および第二反応器ともに10〜20℃の温度の水浴中に浸漬し、各反応器内部の液温が15℃となるように温度制御を行った。
運転を開始してから30日目に各反応器の反応液をサンプリングし、HPLC分析を行ったところ、第一反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が99%、第一反応器出口でのアクリロニトリル濃度は0.4重量%であり、かつ第二反応器出口でのアクリルニトリル濃度が検出限界以下(100重量ppm以下)、アクリルアミド濃度が53.3重量%となった。このとき第一反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は8ppmであり、第二反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は7ppmであった。
【0081】
第一反応器の反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。得られた濾液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0082】
この反応を30日目に分析を実施して以降さらに約4日間継続した。この約4日間で約7500gの反応液が得られた。精製工程において、得られた反応液約7500gに対し、活性炭(クラレケミカル(株)製の粉状活性炭PM−SX)を30g添加し、0.5重量%−アクリル酸水溶液160gを加えた後、1M−NaOH水溶液でpHを5に調整した。空気を1L/minの流量にて通気した環境下にて、これを25℃で24時間撹拌した。24時間攪拌した後の処理液の溶存酸素濃度は8ppmであった。
【0083】
その後、濾紙にて濾過を行い、活性炭を除去した。その後、活性炭に付着したアクリルアミドを回収するため、300gの純水で活性炭を洗浄し、先の活性炭処理液と混合して、1M−NaOH水溶液で中和し、pHを7として約7900gの製品を得た。この活性炭処理後の製品中の最終アクリルアミド濃度は、50.4重量%であった。得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0084】
得られたアクリルアミド水溶液から、上記と同様の製造方法を用いて、乾燥粉末状のアクリルアミド重合体を製造した。このアクリルアミド重合体を篩にかけ、32〜42メッシュのポリマーを分取した。この分取したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、不溶解分の含有率は0.5%であり、良好な水溶性を示した。
【0085】
保存工程において、精製工程で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれも透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。また、実施例(1-1)と同様にアクリルアミド重合体を製造し、得られたアクリルアミド重合体の水溶性テストを行ったところ、不溶解分の含有率は0.7%であり、良好な水溶性を示した。
【0086】
[実施例(3-2)〜(3-4)]実施例(1-2)〜(1-4)それぞれにおいて、第一反応工程のアクリロニトリル濃度が0.4重量%になった時点で酸素を溶存させた点および湿菌体の添加量を第一反応器のアクリロニトリル転化率が99%となるように調整を行った点以外は実施例(1-2)〜(1-4)と同様にしてアクリルアミドを製造し、種々のテストに供した(実施例(3-2)〜(3-4))。得られた結果を表1に示す。
【0087】
あるいは、実施例(3-1)において第一反応器へ通気する気体を空気の代わりに窒素と空気との混合気とした以外は実施例(3-1)と同様の操作を行ったとも言える。この混合気中の空気の割合を50%、25%、15%とした。このとき第1反応器出口の反応液における溶存酸素濃度はそれぞれ4ppm、2ppm、1.2ppmであり、第二反応器出口の反応液の溶存酸素濃度は3.5ppm、1.8ppm、1.0ppmであった。
【0088】
第一反応器の反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。得られた濾液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。透過率はいずれの場合も99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0089】
精製工程において、実施例(3-1)と通気条件も含めて同様の操作により活性炭処理を行い約7900gの製品を得た。得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。いずれの場合も透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0090】
また得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、いずれも不溶解分の含有率は0.3%であり、良好な水溶性を示した。
【0091】
保存工程において、精製工程で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれも透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。また、実施例(1-1)と同様にアクリルアミド重合体を製造し、得られたアクリルアミド重合体の水溶性テストを行ったところ、いずれも不溶解分の含有率は0.7%であり、良好な水溶性を示した。
【0092】
[実施例(4-1)〜(4-3)]
実施例(3-1)において、精製工程の溶存酸素濃度を8ppmから4ppm(実施例(4-1)),2ppm(実施例(4-2))または1ppm(実施例(4-3))に変更した以外は実施例(3-1)と同様にしてアクリルアミドを製造した。得られた結果を表1に示す。
【0093】
あるいは、実施例(3-1)の精製工程において、pH5での活性炭処理時の通気を空気の代わりに窒素と空気との混合気とした以外は実施例(3-1)と同様の操作を行ったとも言える。この混合気中の空気の割合を50%、25%、12%とした。24時間攪拌した後の処理液の溶存酸素濃度はそれぞれ4ppm、2ppm、1.0ppmであった。得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。いずれの場合も透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0094】
また得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、いずれも不溶解分の含有率は0.3%であり、良好な水溶性を示した。
【0095】
保存工程において、精製工程で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。いずれも透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。また、実施例(1-1)と同様にアクリルアミド重合体を製造し、得られたアクリルアミド重合体の水溶性テストを行ったところ、いずれも不溶解分の含有率は0.7%であり、良好な水溶性を示した。
【0096】
[比較例1]
実施例(1-1)において、第一反応工程の溶存酸素濃度を8ppmから1ppm未満に変更した以外は実施例(1-1)と同様にしてアクリルアミドを製造し、種々のテストに供した。得られた結果を表1に示す。
【0097】
すなわち、実施例(1-1)の反応工程において、第一反応器へ通気する気体を空気の代わりに窒素と空気との混合気とした以外は実施例(1-1)と同様の操作を行った。窒素と空気の割合を調整し、第一反応器出口の反応液における溶存酸素濃度が1.0ppm未満、第二反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は1.0ppm未満となるようにした。なお、この操作を複数回繰り返し実施した。
【0098】
第一反応器および第二反応器の反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。得られた濾液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。第一反応器からの反応液の透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。一方、第二反応器からの反応液の透過率は、通常は99.9%以上だったが、10回に1回程度の割合で98.5%となり、重合物の存在が認められることがあった。
【0099】
さらに実施例(1-1)と同様の操作により活性炭処理を行い約7900gの製品を得た。得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。第二反応器で重合物が認められなかったアクリルアミド溶液では透過率は99.9%であり重合物は認められなかったが、第二反応器で重合物の存在が認められたアクリルアミド溶液を活性炭処理した場合では、透過率は98.0%であり、重合物の存在が認められた。
【0100】
精製工程において、得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、第二反応器で重合物が認められなかったアクリルアミド溶液では不溶解分の含有率は0.3%だったが、第二反応器で重合物の存在が認められた場合のアクリルアミド水溶液からの重合体の場合では、不溶解分の含有率は5%であった。
【0101】
保存工程において、精製工程で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。第二反応器で重合物の存在が認められなかった場合のアクリルアミド水溶液からのアクリルアミドでは、透過率は99.9%であり、重合物は認められなかった。一方、第二反応器で重合物の存在が認められた場合のアクリルアミド水溶液からのアクリルアミドでは、透過率は98%であり、重合物の存在が認められた。またこのときのアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、不溶解分の含有率は4%であり、品質に問題が生じた。
【0102】
[比較例2]
実施例(3-1)において、第一反応工程の溶存酸素濃度を8ppmから1ppm未満に変更した点および湿菌体の添加量を第一反応器のアクリロニトリル転化率が99%となるように調整を行った点以外は実施例(3-1)と同様にしてアクリルアミドを精製した。なお、この操作を複数回繰り返し実施した。得られた結果を表1に示す。
【0103】
すなわち、反応工程において、第一反応器として撹拌器を備えた1Lガラス製フラスコ、第二反応器として内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブ20mを準備した。第一反応器には、予め400gの水を仕込んだ。第一反応器には窒素を1L/minの流量にて通気した。
【0104】
実施例(1-1)に記載の方法と同様の方法で得られた湿菌体を純水に懸濁した。第一反応器内を撹拌しながら、この懸濁液を、16g/hの速度で連続的にフィードした。アクリロニトリルは、32g/hの速度で、また、純水は32g/hの速度で連続的にフィードした。さらに反応pHが7.5〜8.5となるように、0.1M−NaOH水溶液をフィードした。これらの原料は、各々の貯槽から単独のラインで供給され、反応器内にフィードされるまで、他の原料に接触することはなかった。
【0105】
さらに、第一反応器の液面レベルを一定に保つように、反応液を第一反応器から80g/hの速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的にフィードして、第二反応器内でさらに反応を進行させた。なお、湿菌体の添加量は、第一反応器のアクリロニトリル転化率が99%となるように調整を行った。
【0106】
第一反応器および第二反応器ともに10〜20℃の温度の水浴中に浸漬し、各反応器内部の液温が15℃となるように温度制御を行った。
運転を開始してから30日目に各反応器の反応液をサンプリングし、HPLC分析を行ったところ、第一反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が99%、第一反応器出口でのアクリロニトリル濃度は0.4重量%であり、かつ第二反応器出口でのアクリルニトリル濃度が検出限界以下(100重量ppm以下)、アクリルアミド濃度が53.3重量%となった。このときの第一反応器出口および第2反応器出口の反応液の溶存酸素濃度はともに1ppm未満であった。
【0107】
第1反応器の反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。得られた濾液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。通常は99.9%以上だったが、10回に1回程度の割合で98.5%となり、重合物の存在が認められることがあった。
【0108】
この反応を30日目に分析を実施して以降さらに約4日間継続した。この約4日間で約7500gの反応液が得られた。精製工程において、得られた反応液約7500gに対し、活性炭(クラレケミカル(株)製の粉状活性炭PM−SX)を30g添加し、0.5重量%−アクリル酸水溶液160gを加えた後、1M−NaOH水溶液でpHを5に調整した。空気を1L/minの流量にて通気した環境下にて、これを25℃で24時間撹拌した。24時間攪拌した後の処理液の溶存酸素濃度は8ppmであった。
【0109】
その後、濾紙にて濾過を行い、活性炭を除去した。その後、活性炭に付着したアクリルアミドを回収するため、300gの純水で活性炭を洗浄し、先の活性炭処理液と混合して、1M−NaOH水溶液で中和し、pHを7として約7900gの製品を得た。この活性炭処理後の製品中の最終アクリルアミド濃度は、50.5重量%であった。得られた製品10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。第一反応器で重合物の存在が認められなかった場合のアクリルアミド水溶液からのアクリルアミドでは透過率は99.9%以上だったが、第一反応器で重合物の存在が認められた場合のアクリルアミド水溶液からのアクリルアミドでは、透過率は98%であり、重合物の存在が認められた。
【0110】
また得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、第一反応器で重合物の存在が認められなかった場合のアクリルアミド水溶液からのアクリルアミド重合体では、不溶解分の含有率は0.3%だったが、第一反応器で重合物の存在が認められた場合のアクリルアミド水溶液からのアクリルアミド重合体では、不溶解分の含有率は5%であった。
【0111】
[比較例3]
実施例(3-1)において、精製工程の溶存酸素濃度を8ppmから1ppm未満に変更した点および湿菌体の添加量を第一反応器のアクリロニトリル転化率が99%となるように調整を行った点以外は実施例(3-1)と同様にしてアクリルアミドを精製した。得られた結果を表1に示す。
【0112】
すなわち、反応工程において、第一反応器として撹拌器を備えた1Lガラス製フラスコ、第二反応器として内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブ20mを準備した。第一反応器には、予め400gの水を仕込んだ。第一反応器には空気を1L/minの流量にて通気した。
【0113】
実施例(1-1)に記載の方法と同様の方法で得られた湿菌体を純水に懸濁した。第一反応器内を撹拌しながら、この懸濁液を、16g/hの速度で連続的にフィードした。アクリロニトリルは、32g/hの速度で、また、純水は32g/hの速度で連続的にフィードした。さらに反応pHが7.5〜8.5となるように、0.1M−NaOH水溶液をフィードした。これらの原料は、各々の貯槽から単独のラインで供給され、反応器内にフィードされるまで、他の原料に接触することはなかった。さらに、第一反応器の液面レベルを一定に保つように、反応液を第一反応器から80g/hの速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的にフィードして、第二反応器内でさらに反応を進行させた。なお、湿菌体の添加量は、第一反応器のアクリロニトリル転化率が99%となるように調整を行った。
【0114】
第一反応器および第二反応器ともに10〜20℃の温度の水浴中に浸漬し、各反応器内部の液温が15℃となるように温度制御を行った。
運転を開始してから30日目に各反応器の反応液をサンプリングし、上記HPLC条件にて分析を行ったところ、第一反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が99%、第一反応器出口でのアクリロニトリル濃度は0.4重量%であり、かつ第二反応器出口でのアクリルニトリル濃度が検出限界以下(100重量ppm以下)、アクリルアミド濃度が53.3重量%となった。このとき第一反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は8ppmであり、第二反応器出口の反応液の溶存酸素濃度は7ppmであった。
【0115】
第一反応器の反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。得られた濾液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0116】
この反応を30日目に分析を実施して以降さらに約4日間継続した。この約4日間で約7500gの反応液が得られた。精製工程において、得られた反応液約7500gに対し、活性炭(クラレケミカル(株)製の粉状活性炭PM−SX)を30g添加し、0.5重量%−アクリル酸水溶液160gを加えた後、1M−NaOH水溶液でpHを5に調整した。窒素を1L/minの流量にて通気した環境下にて、これを25℃で12時間撹拌したところ、白色の不溶解性の重合物の生成が認められ、これ以上の作業の継続は困難であった。12時間攪拌した後の処理液の溶存酸素濃度は1ppm未満であった。
【0117】
[比較例4]
実施例(3-1)において、保存工程の溶存酸素濃度を8ppmから1ppm未満に変更した以外は実施例(3-1)と同様にしてアクリルアミドを製造した。得られた結果を表1に示す。
【0118】
すなわち、実施例(3-1)で得られた活性炭処理後の製品(アクリルアミド濃度50.6%)500gに対し、20℃の恒温槽中にて、窒素を1m
3/hの流量にて10日間連続して通気処理を行い、保存処理液を得た。10日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、1ppm未満であった。得られた保存処理液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。透過率は95%であり、重合物の存在が認められた。
【0119】
[実施例5]
実施例(1-1)の第一反応工程において、湿菌体の添加量を、第一反応器のアクリロニトリル転化率が97%となるように調整を行った代わりに、該転化率が90%となるように調整を行った以外は実施例(1-1)と同様にしてアクリルアミドを製造し、種々のテストに供した。得られた結果を表1に示す。
【0120】
すなわち、実施例5の反応工程として、第一反応器として撹拌器を備えた1Lガラス製フラスコ、第二反応器として内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブ20mを準備した。第一反応器には、予め400gの水を仕込んだ。この第一反応器には、その気相部に空気を1L/minの流量にて通気した。
【0121】
実施例(1-1)に記載の方法と同様の方法で得られた湿菌体を純水に懸濁した。第一反応器内を撹拌しながら、この懸濁液を、11g/hの速度で連続的にフィードした。アクリロニトリルは、32g/hの速度で、また、純水は37g/hの速度で連続的にフィードした。さらに反応pHが7.5〜8.5となるように、0.1M−NaOH水溶液をフィードした。これらの原料は、各々の貯槽から単独のラインで供給され、反応器内にフィードされるまで、他の原料に接触することはなかった。さらに、第一反応器の液面レベルを一定に保つように、反応液を第一反応器から80g/hの速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的にフィードして、第二反応器内でさらに反応を進行させた。なお、湿菌体の添加量は、第一反応器のアクリロニトリル転化率が90%となるように調整を行った。
【0122】
第一反応器および第二反応器ともに10〜20℃の温度の水浴中に浸漬し、各反応器内部の液温が15℃となるように温度制御を行った。
運転を開始してから2日目に各反応器の反応液をサンプリングし、上記HPLC条件にて分析を行ったところ、第一反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が90%、かつ第二反応器出口でのアクリルニトリル濃度が検出限界以下(100重量ppm以下)、アクリルアミド濃度が53.5重量%となった。このとき、第一反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は8ppmであり、第二反応器出口の反応液における溶存酸素濃度は7ppmであった。
【0123】
精製工程において、この反応を2日目に分析を実施して以降さらに約4日間継続した。この約4日間で約7500gの反応液が得られた。これに対し、活性炭(クラレケミカル(株)製 粉状活性炭PM−SX)を30g添加し、0.5重量%−アクリル酸水溶液160gを加えた後、1M−NaOH水溶液でpHを5に調整した。空気を1L/minの流量にて通気した環境下にて、これを25℃で5時間撹拌したあと、濾紙にて濾過を行い、活性炭を除去した。5時間撹拌した後の処理液の溶存酸素濃度は8ppmであった。その後、活性炭に付着したアクリルアミドを回収するため、300gの純水で活性炭を洗浄し、先の活性炭処理液と混合して、1M−NaOH水溶液で中和し、pHを7として約7900gの製品を得た。この活性炭処理後の製品中の最終アクリルアミド濃度は、50.6重量%であった。
【0124】
得られたアクリルアミド水溶液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した。いずれの場合も透過率は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかった。
【0125】
また得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、いずれも不溶解分の含有率は0.3%であり、良好な水溶性を示した。
【0126】
保存工程において、このアクリルアミド水溶液100gに対し、20℃の恒温槽中にて、空気を1m
3/hの流量にて30日間連続して通気処理を行った。30日後に通気を停止し溶存酸素濃度を測定したところ、8ppmであった。得られた処理液10mLにメタノール90mLを加えても白濁せず、重合物の存在は認められなかった。得られた結果を表1に示す。また、実施例(1-1)と同様にアクリルアミド重合体を製造し、得られたアクリルアミド重合体の水溶性テストを行ったところ、不溶解分の含有率は0.7%であり、良好な水溶性を示した。
【0127】
[比較例5]
実施例5の保存工程において、空気を使用する代わりに、純度99.9%の窒素を使用した以外は、実施例5と同様の処理を行い、処理液を得た。この処理液の溶存酸素濃度は0.08ppmであった。得られた処理液10mLにメタノール90mLを加えたところ白濁し、重合物の存在が認められた。
【0128】
[実施例6]
実施例(1-1)において、第一反応工程のアクリロニトリル濃度が0.8重量%になった時点で酸素を溶存させた点および溶存酸素濃度を8ppmから1.2ppmに変更した点以外は実施例(1-1)と同様にしてアクリルアミドを製造した。このとき第二反応工程での溶存酸素濃度は1.0ppmだった。さらに実施例6を複数回実施した。
【0129】
[比較例6]
実施例(1-1)において、第一反応工程のアクリロニトリル濃度が0.8重量%になった時点で酸素を溶存させた点および溶存酸素濃度を8ppmから1ppm未満に変更した点以外は実施例(1-1)と同様にしてアクリルアミドを製造した。このとき第二反応工程での溶存酸素濃度は1.0ppm未満だった。さらに比較例6を複数回実施した。
【0130】
このような実施例6および比較例6は、すなわち、実施例(1-1)の第一反応工程において、第一反応器出口でのアクリルアミドへの転化率を98%、第一反応器出口でのアクリロニトリル濃度を0.8重量%とした点および第一反応器へ通気する気体を空気の代わりに窒素と空気との混合気とした点以外は実施例(1-1)と同様の操作を行った。この混合気中の空気の割合をそれぞれ15%および5%とした。このとき第一反応器出口の反応液における溶存酸素濃度はそれぞれ1.2ppmおよび1.0ppm未満であった。
【0131】
ここで、第一反応器の反応液を濾紙にて濾過を行い、菌体を除去した。得られた濾液10mLにメタノール90mLを加え、360nmにおける透過率を測定した(メタノールテスト)。透過率は溶存酸素濃度が1.2ppmの場合(実施例6)は99.9%以上であり、重合物の存在は認められなかったが、溶存酸素濃度が1.0ppm未満だった場合(比較例6)は通常は99.9%以上だったが、10回に1回程度の割合で98.5%となり、重合物の存在が認められることがあった。
【0132】
また、第二反応工程および精製工程を実施例(1-1)と同様に操作して得られたアクリルアミド水溶液から製造したアクリルアミド重合体を水溶性テストにより評価したところ、透過率は、第一反応工程において溶存酸素濃度が1.2ppmの場合(実施例6)は不溶解分の含有率は0.3%であり、良好な水溶性を示した。一方、第一反応工程において溶存酸素濃度が1.0ppm未満だった場合(比較例6)は10回に1回程度の割合で不溶解分の含有率は4%となり、品質に問題が生じた。得られた結果を表1に示す。
【0133】
【表1】