特許第5925392号(P5925392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5925392計時器用ばね仕掛けバランスアセンブリの慣性設定又は平衡化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925392
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】計時器用ばね仕掛けバランスアセンブリの慣性設定又は平衡化
(51)【国際特許分類】
   G04D 7/08 20060101AFI20160516BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   G04D7/08
   G04B17/06 Z
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-540094(P2015-540094)
(86)(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公表番号】特表2015-537204(P2015-537204A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013072011
(87)【国際公開番号】WO2014072168
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】12191481.6
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】コニュス,ティエリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラルド,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シャルボン,クリスチャン
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第2179744(FR,A1)
【文献】 スイス国特許発明第532284(CH,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 7/08
G04B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用振動機構(10)においてマウントされるばね仕掛けバランスアセンブリ(1)を作り、慣性設定及び/又は平衡化をする方法であって、
このばね仕掛けバランスアセンブリ(1)は、バランスコック(80)を介してバランスばねスタッド(7)を支えるプレート(8)上でマウントされており、
前記ばね仕掛けバランスアセンブリ(1)は、回転軸(D)を中心に回転するバランス(2)と、及びバランスばね(3)とを有し、
前記バランスばね(3)の内側コイル(4)は、前記バランス(2)又は前記バランス(2)と一体的にマウントされたコレット(5)に固定され、
前記バランスばね(3)の外側コイル(6)は、前記バランスばねスタッド(7)に固定されて前記プレート(8)又は前記バランスコック(80)内に保持され、
前記バランス(2)は、以下のように製造され、すなわち、
前記バランスばね(3)は、前記バランス(2)への取り付けの前に、前記バランスばね(3)の前記外側コイル(6)が、前記バランスばねスタッド(7)への取り付け位置において、曲げられ及び/又はねじられ、これによって、前記外側コイル(6)の振動する端部分を前記バランス(2)の周表面(20)から離し、
前記バランス(2)と前記バランスばね(3)は、前記内側コイル(4)を前記バランス(2)又は前記バランス(2)と一体的にマウントされた前記コレット(5)に固定することによって、お互いどうしが不可逆的に組み立てられ、
前記外側コイル(6)は、前記バランスばねスタッド(7)へと改変防止性を有する形態で定位置に固定され、前記バランスばねスタッド(7)は、前記バランスコック(80)に対する不可逆的な取り付けによって改変防止性を有する形態で動けなくされ、
材料の除去による前記バランス(2)の慣性設定及び/又は平衡化のための再機械加工技術が、工具又は摩耗の機械加工、レーザービーム又はプラズマの射出、又は液体ジェット射出の中から選択され、この再機械加工技術は、摩耗及び/又はチャージ及び/又は変形及び/又は加熱処理の手段を有する再機械加工手段によって実装され、
この再機械加工技術の選択に応じて、前記バランスばね(3)の任意の点と、前記バランス(2)の慣性設定及び/又は平衡化のための再機械加工領域との間の最小距離を形成する第1の距離(E1)の値が定められ、
前記バランス(2)の周囲において、前記バランス(2)の慣性設定及び/又は平衡化のために前記周表面(20)を前記再機械加工領域として決め、前記表面(20)の任意の点は、少なくとも前記第1の所定の距離(E1)の値の分、前記バランスばね(3)から離れており、これによって、組み立てられたばね仕掛けバランスアセンブリ(1)上の前記バランス(2)の慣性設定及び/又は平衡化のための前記周表面(20)上の前記バランス(2)の不可逆的な再機械加工時の前記バランスばね(3)の特徴に対するいずれの変更をも防ぎ、
前記バランスばね(3)は、前記バランス(2)への取り付けの前に、その外側コイル(6)が前記バランスばねスタッド(7)への取り付け位置において曲げられ及び/又はねじられ、これによって、前記外側コイル(6)の振動する端部分(61)を前記周表面(20)から離し、
前記バランス(2)及び前記バランスばね(3)は、前記バランス(2)又は前記バランス(2)と一体的にマウントされた前記コレット(5)に前記バランスばね(3)の内側コイル(4)を固定することによって、製造され、お互いと不可逆的に組み立てられ、
前記外側コイル(6)は、前記バランスばねスタッド(7)に改変防止性を有する形態で固定され、前記バランスばねスタッド(7)は、前記バランスコック(80)に対する不可逆的な取り付けによって改変防止性を有する形態で動けなくされ、
選択される再機械加工技術に応じて、前記第1の距離(E1)以上であって、前記バランスばねスタッド(7)と、第2の所定の距離(E2)よりも大きな値の分前記バランスばねスタッド(7)から離れた前記周表面(20)との間の最小距離を形成する第2の距離(E2)の値が定められ、これによって、組み立てられたばね仕掛けバランスアセンブリ(1)上の前記バランス(2)の慣性設定及び/又は平衡化のための前記周表面(20)上の前記バランス(2)の再機械加工時における前記バランスばねスタッド(7)への前記バランスばね(3)の取り付けの特徴に対するいずれの変更をも防ぎ、
慣性設定及び/又は平衡化のためのいずれの必要な再機械加工操作の値及び位置が決められ、
慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工操作は、前記周表面(20)上でのみ行われつつ、前記再機械加工手段の軌道を、前記回転軸(D)を中心とする第1の面(21)の外側であって前記周表面(20)の最小半径(201)上にあって前記バランスばね(3)の任意の活性点から前記第1の距離(E1)よりも大きな距離離れているような空間に制限し、前記第1の表面(21)は、第1の頂点(S1)を有し回転軸(D)を中心とし第1の頂角(β)が第1の所定の値(βO)よりも小さい錐面である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工が前記周表面(20)上でのみ行われる場合に、前記再機械加工手段の軌道は、第2の表面(22)の内側であって前記周表面(20)の最大半径(202)上にあり前記振動機構(10)のための保護エンベロープ及び任意のチップ又は他の不要物の直接的又は間接的な飛び出しに対する前記バランスばね(3)のための保護エンベロープを定めるような空間に制限されており、
前記第2の表面(22)は、前記回転軸(D)を中心とする第2の頂点(S2)を有し所定の第2の値(θO)よりも小さい第2の頂角(θ)を有するような錐面である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の表面(21)の前記第1の頂点(S1)は、前記バランス(2)に対して前記バランスばね(3)と同じ側にある
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の頂点(S2)は、前記バランス(2)に対して前記バランスばね(3)の反対側にある
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の表面(21)及び前記第2の表面(22)どうしは、前記回転軸(D)を通る断面において、45°未満の所定の値(α0)よりも小さい第3の角(α)を形成する
ことを特徴とする請求項1と請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の所定の値(θO)は45°である
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記バランス(2)の前置製造時に、前記周表面(20)を越えて位置し前記回転軸(D)に対する距離が前記周表面(20)の最小半径(201)未満である前記バランス(2)の任意の領域(25)は、少なくとも表面に、工具、摩耗又はレーザーによる機械加工に対する前記周表面(20)の耐久性よりも大きな耐久性を与えるような加熱処理及び/又は表面処理が施されており、及び/又は
前記領域(25)は、工具、摩耗又はレーザーによる機械加工に対して前記周表面(20)よりも耐久性を有する材料で作られている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記領域(25)の少なくとも一部は、表面のセメンテーション又は窒化処理が施されている
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記領域(25)の少なくとも一部は、レーザーの機械加工のために使用される通常の波長のレーザービームに表面が反射するようにさせる表面を金属化する処理が施されている
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記プレート(8)及び/又は前記バランスコック(80)は、前記再機械加工手段の前記周表面(20)へのアクセスが可能になるように作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
再機械加工操作が前記ばね仕掛けバランスアセンブリ(1)の慣性設定又は平衡化をするように行われる場合に、前記バランス(2)は、その1倍の幅(L)よりも大きい深さ(P)を有する狭い溝(S)を有するように機械加工される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記バランス(2)に固定される前に、前記バランスばね(3)は、ケイ素、酸化ケイ素、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ガラス、金属性ガラス、アモルファス金属、石英、常磁性体、強磁性体、又は反強磁性体で作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用振動機構においてマウントされるばね仕掛けバランスアセンブリを作り、慣性設定及び/又は平衡化をする方法に関し、このばね仕掛けバランスアセンブリは、バランスコックを介してバランスばねスタッドを支えるプレート上でマウントされており、前記ばね仕掛けバランスアセンブリは、回転軸を中心に回転するバランスと、及びバランスばねとを有し、前記バランスばねの内側コイルは、前記バランス又は前記バランスと一体的にマウントされたコレットに固定され、前記バランスばねの外側コイルは、前記スタッドに固定されて前記プレート又は前記バランスコック内に保持される。
【0002】
本発明は、ばね仕掛けバランスを備えた計時器用振動機構の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ばね仕掛けバランスの振動周波数を調整するために、組み立てられたばね仕掛けバランスアセンブリに対して操作することは、常に難しい。なぜなら、バランスばねを変更するリスクがあるためである。このような操作は、既に組み立てられている計時器用ムーブメントの内部の場合は、さらに困難である。なぜなら、他の部品の保護及びムーブメントをきれいにするための制約のためである。
【0004】
Far名義のフランス特許FR2179744 A1は、ばね仕掛けバランスを平衡化して振動周波数を調整する方法を開示している。これは、バランスばねの特定の保護なしで、測定及び駆動手段とともに切断工具を使用してバランスの外縁から材料を取り除いている。
【0005】
Suwa Seikosha KK名義のスイス特許CH532284 Aは、ローター平衡化デバイス及びバランスの再機械加工を開示しており、これにおいて、バランスばねがコレットに固定されている。この再機械加工はドリルで行われ、これには、機械加工を行うためにバランスを止めて保持することが必要である。
【0006】
Swatch Group R&D名義のスイス特許CH704211 A2は、電磁放射からのバランスばねの保護に関し、この特許明細書では、バランスの径と、バランスばねの外側コイルの径との間の割合の規則を、終端カーブ又はバランスばねスタッドへの取り付け、又はインデックスとのいずれの接触について言及せずに示している。
【0007】
Silva Regio−Roger Dubuis SA名義の米国特許US2012/157743 A1は、バランスに付けられたコレットを介して一連のばねからバランスに取り出されたバランスばねのアセンブリを開示しており、このコレットは、バランスばねに対する取り付け点を有する一群のコレットの中から選択される。この取り付け点は、スタッフに近かったりスタッフから遠かったりする。
【0008】
Audemars Piguet & Co名義の欧州特許EP2315082 A2は、2つの共軸のバランスを有する規制メンバーを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、バランスばねとバランスが互いに対して既に組み立てられている場合、特に、ばね仕掛けバランスアセンブリが計時器用ムーブメントに既にマウントされている場合における、バランスの慣性設定又は平衡化の時のばね仕掛けバランスアセンブリのバランスばねの固定を確実にすることを提案するものである。
【0010】
バランスの再機械加工時にバランスばねのいずれの変更をも防ぐことに困難性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、計時器用振動機構においてマウントされるばね仕掛けバランスアセンブリを作り、慣性設定及び/又は平衡化をする方法に関し、
このばね仕掛けバランスアセンブリは、バランスコックを介してバランスばねスタッドを支えるプレート上でマウントされており、
前記ばね仕掛けバランスアセンブリは、回転軸を中心に回転するバランスと、及びバランスばねとを有し、
前記バランスばねの内側コイルは、前記バランス又は前記バランスと一体的にマウントされたコレットに固定され、
前記バランスばねの外側コイルは、前記スタッドに固定されて前記プレート又は前記バランスコック内に保持され、
材料の除去による前記バランスの慣性設定及び/又は平衡化のための再機械加工技術が、工具又は摩耗の機械加工、レーザービーム又はプラズマの射出、又は液体ジェット射出の中から選択され、この再機械加工技術は、摩耗及び/又はチャージ及び/又は変形及び/又は加熱処理の手段を有する再機械加工手段によって実装され、
この再機械加工技術の選択に応じて、前記バランスばねの任意の点と、前記バランスの慣性設定及び/又は平衡化のための再機械加工領域との間の最小距離を形成する第1の距離の値が定められ、
前記バランスばねは、前記バランスへの取り付けの前に、前記バランスばねの前記外側コイルが、前記バランスばねスタッドへの取り付け位置において、曲げられ及び/又はねじられ、これによって、前記外側コイルの活性な端部分を前記周表面から離し、
前記バランスと前記バランスばねは、前記内側コイルを前記バランス又は前記バランスと一体的にマウントされた前記コレットに固定することによって、お互いどうしが不可逆的に組み立てられ、
前記外側コイルは、前記バランスばねスタッドへと改変防止性を有する形態で定位置に固定され、前記バランスばねスタッドは、前記バランスコックに対する不可逆的な取り付けによって改変防止性を有する形態で動けなくされ、
前記バランスの周囲において、前記バランスの慣性設定及び/又は平衡化のために前記周表面を前記再機械加工領域として決め、前記表面の任意の点は、少なくとも前記第1の所定の距離の値の分、前記バランスばねから離れており、これによって、組み立てられたばね仕掛けバランスアセンブリ上の前記バランスの慣性設定及び/又は平衡化のための前記周領域上の前記バランスの不可逆的な再機械加工時の前記バランスばねの特徴に対するいずれの変更をも防ぎ、
前記バランスばねは、前記バランスへの取り付けの前に、その外側コイルが前記バランスばねスタッドへの取り付け位置において曲げられ及び/又はねじられ、これによって、前記外側コイルの活性な端部分を前記周表面から離し、
前記バランス及び前記バランスばねは、前記バランス又は前記バランスと一体的にマウントされた前記コレットに前記バランスばねの内側コイルを固定することによって、製造され、お互いと不可逆的に組み立てられ、
前記外側コイルは、前記バランスばねスタッドに改変防止性を有する形態で固定され、前記バランスばねスタッドは、前記バランスコックに対する不可逆的な取り付けによって改変防止性を有する形態で動けなくされ、
選択される再機械加工技術に応じて、前記第1の距離以上であって、前記バランスばねスタッドと、第2の所定の距離よりも大きな値の分前記バランスばねスタッドから離れた前記周表面との間の最小距離を形成する第2の距離の値が定められ、これによって、組み立てられたばね仕掛けバランスアセンブリ上の前記バランスの慣性設定及び/又は平衡化のための前記周領域上の前記バランスの再機械加工時における前記バランスばねスタッドへの前記バランスばねの取り付けの特徴に対するいずれの変更をも防ぎ、
慣性設定及び/又は平衡化のためのいずれの必要な再機械加工操作の値及び位置が決められ、
慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工操作は、前記周表面上でのみ行われつつ、前記再機械加工手段の軌道を、前記回転軸を中心とする第1の回転面の外側であって前記周表面の最小半径上にあって前記バランスばねの任意の活性点から前記第1の距離よりも大きな距離離れているような空間に制限し、前記第1の表面は、第1の頂点を有し回転軸を中心とし第1の錐面の頂角が第1の所定の値よりも小さい。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点が、添付図面を参照して下の詳細な説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るばね仕掛けバランスアセンブリの概略斜視図を示す。
図2】本発明の好ましい変種におけるバランスばねの外側端の概略斜視図を示す。
図3】回転軸を通る図1のばね仕掛けバランスアセンブリの概略断面図を示す。
図4】販売後のサービスを特に意図したバランスを調整する単一の手段の詳細の概略平面図を示す。
図5図1のばね仕掛けバランスアセンブリで作られた溝の詳細の回転軸を通る断面の概略断面図を示す。
図6】ブリッジとバランスコックの間でマウントされた図1のアセンブリの概略平面図であり、このバランスコックは、プレート内の開口と位置合わせされた吸気流を通すために凹部を有する。
図7図6の局所的な断面図である。
図8】この種のばね仕掛けバランスアセンブリを収容するムーブメントを有する腕時計を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、以下の2つの間の区別を行う。すなわち、
− バランスとバランスばねが互いに不可逆的に固定されるようなばね仕掛けバランス対と、
− このばね仕掛けバランス対及びいずれの調整ねじの両方を有する規制メンバーであるトップアセンブリとである。
【0015】
したがって、本発明は、計時器用ムーブメント100に組み入れられる計時器用振動機構10に関し、これは、バランスコック80を介してバランスばねスタッド7を支えるプレート8上でマウントされている少なくとも1つの計時器用ばね仕掛けバランスアセンブリを有し、これは、回転軸Dを中心に回転するバランス2及びバランスばね3を有する。このバランスばね3の内側コイル4は、バランス2又はバランス2と一体的にマウントされたコレット5に固定され、このバランスばね3の外側コイル6は、バランスばねスタッド7に固定されて、プレート8又はバランスコック80に保持される。本発明は、規制メンバーが単一のバランス及び単一のバランスばねを備えるような特定の場合について、ここで説明される。当業者であれば、いくつかのバランス及び/又はいくつかのバランスばねの場合に本発明を適用できると容易に理解できる。
【0016】
本発明によれば、図1に示すように、バランス2は、機械加工可能な周表面20を有し、これは、第1の所定の距離E1よりも大きな値の分、バランスばね3の任意の点から離れており、これによって、組み立てられたアセンブリ1上でバランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするためのバランス2の周部の機械加工可能な表面20に対する不可逆的な再機械加工時に、バランスばね3の特徴のいかなる変更をも防ぐ。
【0017】
「再機械加工」とは、ここでは、バランスの慣性を局所的に変更することができるいずれの操作をも意味する。これには、材料を加えること、材料を移動させること、材料を除去することが含まれる。この操作は、以下の手法で行うことができる(これらに限定されない)。すなわち、切断又は摩耗の工具(ドリル、旋削、矯正など)で再機械加工することによって、レーザー、特にピコレーザー又はフェムトレーザーによって、材料のジェット射出によって、工具を使用する変形によって、局所的な融解によって、材料の構造を変える熱処理によって、又は他の手段によってである。
【0018】
本発明の特定の実装の1つにおいて、機械加工可能な周表面20を越えて位置するバランス2のいずれの領域25も、少なくともその表面に対して熱処理及び/又は表面処理が施され、工具、摩耗又はレーザーによる機械加工に対して通常よりも高い耐久性を与え、及び/又は工具、摩耗又はレーザーによる機械加工に耐久性がある材料で作られる。
【0019】
第1の距離E1は、最も一般的な場合では、バランスばね3のあらゆる位置にある可能性があるが、バランスばねの特定の具体的な位置のそれぞれに対して特定の距離値を設定することができる。すなわち、安静位置、最大の正の振動振幅の位置、最大の負の振動振幅の位置、又は別の位置である。
【0020】
したがって、バランスばね3の特徴を何ら変えずに、より詳細には、トルクを変え、したがってバランスばねの振動周波数を変え得るような、熱的影響、チップ又は材料の突き出しなどの影響を直接的にも間接的にもバランスばね3に与えずに、バランス2を適切に変えるために、バランスばねを保護するということが問題となる。
【0021】
具体的には、周表面20は、第1の距離E1よりも大きい値の分、バランスばね3の外側コイル6の活性部分(すなわち、振動する部分)から半径方向に最も中心からずれた点から離れている。
【0022】
好ましくは、第1の所定の距離E1は、0.50mmよりも大きい。好ましいことに、本発明によると、第1の所定の距離E1は、0.50mm〜1.20mmである。特定のアプリケーションにおいて、第1の所定の距離E1は、0.50mm〜0.70mmである。
【0023】
図2に示す特定のアプリケーションにおいて、バランスばね3は、屈曲31を形成するように曲がっており、及び/又はねじれ領域32において、又はバランスばねスタッド7へのバランスばね3の取り付け位置の近傍でねじられる。これによって、バランスばね3の外側コイル6の活性部分61を周表面20から動かす。このようにして、バランスばね3のこの活性部分61がバランス2の周部の再機械加工面20から、好ましくは、周表面20の放射状のスパンの2/3よりも大きい距離の分、離される。この周表面20は、回転軸Dに垂直な平面への射影において環状である。
【0024】
好ましいことに、本発明によれば、周表面20は、第2の所定の距離E2よりも大きな値の分、バランスばねスタッド7から離れており、これによって、組み立てられたアセンブリ1上のバランス2の平衡化のため及び/又は慣性を設定するために周領域20上でバランス2を再機械加工する時に、バランスばね3の特徴に対するいずれの変更をも防ぎ、そして、特に、バランスばね3を間接的に加熱することによっていずれの特徴をも変わることを防ぐ。好ましくは、第2の所定の距離E2は、0.05mmよりも大きい。この第2の所定の距離E2は、好ましくは、0.05mm〜0.20mmである。特定のアプリケーションにおいては、第2の所定の距離E2は、0.05mm〜0.10mmである。
【0025】
第2の距離E2は、最も一般的な場合に、バランスばね3の任意の位置にあってもよく、バランスばねの特定の具体的な位置それぞれに対して特定の距離値を設定することができる。すなわち、安静位置、最大の正の振動振幅の位置、最大の負の振動振幅の位置又は別の位置である。
【0026】
本発明に従って慣性を設定するため及び/又は平衡化するためにバランス2の再機械加工を行うために、周表面20は、第1の表面21の外の空間において、バランス2の少なくとも一方の側から摩耗及び/又はチャージ及び/又は変形及び/又は射出及び/又は熱処理の手段までアクセス可能である。この第1の表面21は、回転軸Dを中心とする回転面であり、周表面20の最小半径201上にある。また、第1の表面21は、バランスばね3の任意の活性点から第3の距離E3よりも大きな距離離れている。これによって、バランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするための周表面20上のバランス2の機械加工の時のバランスばね3の特徴の何らかの変更をも防ぐ。
【0027】
本発明の特定の実装では、図3に示すように、第1の表面21は、頂点S1がバランス2に対してバランスばね3と同じ側にあるような錐面である。
【0028】
図面は、「上側」2Aと呼ばれる単一の側でバランス2の慣性を再設定するような単純化された場合を示している。当然、反対側の下側2Bで慣性を再設定する機械加工を行うことを想定することもまったく可能である。このような場合、第1の表面21は2つの準表面で作られ、その1つがバランス2のリムの各側にあり、これは、反対側の開口を有する2つの錐面部分を有する。
【0029】
特定の実施形態において、バランスばね3の保護だけでなくバランス2の慣性の再平衡化及び/又は再設定がバランス2及びバランスばね3を有する振動機構10を備えたムーブメント100の内部で直接行われる場合の計時器用ムーブメントの配置をも考慮して、バランス2の慣性変更手段が周表面20の方へとアクセスする空間は、第1の表面21によるバランスばね3の側でだけではなく、第2の表面22による外部側でも制限されている。このような場合、周表面20は、回転軸Dを共軸とする2つの表面によって定まる空間内において、バランス2の少なくとも一方の側から摩耗及び/又はチャージ(放電)手段へとアクセス可能である。この状態において、第1の表面21が、周表面20の最小半径201上であってバランスばね3の任意の活性点から第3の距離E3よりも大きな距離離れている位置にあり、これによって、バランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするために周表面20上のバランス2に再機械加工をする時のバランスばね3の特徴に対するいずれの変更をも防ぐ。また、第2の表面22は、周表面20の別の半径上であって最小半径201よりも大きい半径上にあり、第2の表面22は、組み立てられたアセンブリ1上のバランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするために周表面20上のバランス2の再機械加工時のばね仕掛けバランスアセンブリ1を包囲する計時器機構用の保護エンベロープを定める。
【0030】
この第2の表面22によって提供される制限の目的は、バランス、ブリッジ又はバランスコックの表面におけるチップ又は他の不要物の反射又は跳ね跳びによる、任意の直接的又は間接的な飛び出しに対するバランスばね3の保護を確実にすることである。
【0031】
図3の特定の場合において、第2の表面22は、頂点S2がバランス2に対してバランスばね3の反対側にあるような錐面である。
【0032】
好ましくは、第1の表面21及び第2の表面22どうしは、回転軸Dを通る断面において、45°未満である所定の値α0よりも小さな角αを形成する。
【0033】
回転軸Dの平面における周表面20上の第1の表面21に対する正接は、回転軸Dを通る断面において、回転軸Dと、所定の値βOよりも小さな角βを形成する。この所定の値βOは、所定の値E3に関連付けられている。
【0034】
同様に、回転軸Dを通る断面における回転軸Dとの第2の表面22に対する正接は、所定の値θOよりも小さな角θを形成する。特定のアプリケーションにおいては、この角θOは45°である。
【0035】
第3の距離の値E3は、好ましいことに、第1の距離E1の値の100%〜120%であり、好ましくは、第3の距離の値E3は、第1の距離E1の値と等しい。
【0036】
本発明によると、本発明に係るばね仕掛けバランスアセンブリ1は、理論的な動作のために工場で設定され、不注意に操作される可能性があって重大なクロノメーター的エラーを発生させるような可動部を持たない。具体的には、バランスばね3には、改変防止性がある。すなわち、ばね仕掛けバランスアセンブリ1には、インデックス付きアセンブリを持たず、又はバランスばね3やバランスばねスタッド7に作用することができるいずれの要素も持たない。このバランスばねスタッド7にも改変防止性がある。
【0037】
したがって、バランス2は、調整の範囲が非常に小さく調整能力が1日当たり数秒や数十秒のように非常に小さいような慣性調整手段を有する。これらの手段は、例えば、再機械加工位置において不動に保持される小さなねじで形成される。この再機械加工位置は、ノッチのようなものによって決められる固定位置であるか、あるいは支持表面に当接する位置である。これらの小さなねじは、慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工操作の継続時間全体にわたってこの固定された再機械加工位置に保持される。小さくなった調整範囲は、販売後のサービスでのみ使用される。この変種では、好ましいことに、バランス2が少なくとも2つのハウジング28であって、それぞれがバランス2の周区画29の両側に捕捉されるようにマウントされている調整ねじを受けるために配置されているものを有する。このねじ9は、バランス2の不可逆的な機械加工が行われる時である出荷時設定操作時にねじ9の第1の頭93が上で当接して保持される、バランス2上の第1の止め位置91と、及びねじ9の第2の頭94の移動距離の端を定める第2の止め位置92との間でのみ移動可能である。第1の止め位置91と第2の止め位置92の間の距離PRが、ねじ9の調整能力を制限する。ねじ9の調整能力は、好ましくは、販売後のことを考えて、1日当たり30秒以内に制限される。
【0038】
図4に示す特定の実施形態において、したがって、バランス2は、唯一の調整手段として、調整ねじ9を有し、これは、出荷時設定においてねじ頭93が上で当接するバランス1上の第1の止め位置91と、及び販売後のサービスのために調整能力を1日当たり30秒以内に制限される第2の止め位置92との間でのみ移動させることができる。これらの調整ねじ9は、工場で行われる不可逆的な慣性設定及び/又は平衡化の機械加工の後のばね仕掛けバランスアセンブリ1の使用時に調整することができる唯一の要素である。調整ねじが存在する場合に、必ず調整ねじが止め位置にあるようにして慣性設定及び平衡化が行われることは明らかである。
【0039】
別の特定の実施形態において、バランス2には厳密に調整手段がない。この場合、ばね仕掛けバランス1は、使用時に何らかのインデックス付きアセンブリ又は何らかの調整手段がない。
【0040】
本発明の好ましい実装においては、バランス2は、狭い溝Sであってそれらの幅Lより少なくとも1倍大きく、好ましくは、それらの幅Lの少なくとも3倍分大きな、深さPの形態の溝Sの形の慣性設定及び/又は平衡化をするために機械加工される。
【0041】
この方法の特定の実装では、バランスばね3は、ケイ素、酸化ケイ素、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ガラス、金属性ガラス、アモルファス金属、石英、常磁性体、強磁性体又は反強磁性合金で作ることができる。
【0042】
有利な変種において、上記の距離E1、E2、E3によって定められる安全距離を設けることに加えて、バランスばね3は、バランス2の慣性設定及び/又は平衡化のために周表面20の再機械加工がされる場合に、近くの領域における局所的な加熱に耐久性を持たせるために前置加熱の処理がされる。
【0043】
本発明は、さらに、改変防止性を有し、インデックス付きアセンブリがないバランスばね3を備え、かつ、バランスコック80を介してバランスばねスタッド7を支えるプレート8上でマウントされている、少なくとも1つのばね仕掛けバランスアセンブリ1を有する計時器用振動機構10に関する。本発明によると、バランスコック80は開いた形を有しており、少なくとも1つの凹部81を有し、これによって、組み立てられたアセンブリ1上のバランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするためにバランス2が周表面20上で再機械加工される時に、機構10内で作られる吸気流を促進する。この吸引は、バランス2の片側でプレート8とバランスコック80の2つの表面が互いに面していれば、効果がない。
【0044】
好ましくは、プレート8、又はばね仕掛けバランスアセンブリ1の近傍でプレート8が備えるバランスコック80は、少なくとも1つの開いた穴82を有する。これによって、組み立てられたアセンブリ1においてバランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするために周表面20上でバランス2が再機械加工される場合に、機構10で作られる吸気流を促進させる。
【0045】
特定の変種において、特定のしきい値の径よりも小さい径にてバランスを機械加工することが不可能にされる。これは、例えば、以下によってなされる。
− 切断工具又はレーザーによって材料が除去されることを防ぐ表面処理又は保護(例、保護の場合の反射面保護)によって、又は
− 内側及び外側の2つの部分にてバランスを構築することによってである。この内側部分は、径がしきい値の径よりも小さく、切断工具ないしレーザーによる材料の除去を妨げる材料で作られている。
【0046】
本発明は、さらに、改変防止性のバランスばね3を有するばね仕掛けバランスアセンブリ1を備えたこの種の振動機構10を有する計時器用ムーブメント100に関し、改変防止性のバランスばねスタッド7には、インデックス付きアセンブリがなく、前記調整ねじ9以外では、使用時の他の調整手段がない。別の変種では、計時器用ムーブメント100は、改変防止性のバランスばね3を有するばね仕掛けバランスアセンブリ1を備えたこの種の振動機構10を有し、改変防止性のバランスばねスタッド7には、インデックス付きアセンブリがなく、使用時の他の調整手段がない。
【0047】
本発明は、さらに、このようなムーブメント100を少なくとも1つ有する計時器200に関し、この計時器200は、好ましくは、腕時計である。
【0048】
本発明は、計時器用振動機構10にマウントされたばね仕掛けバランスアセンブリ1を作り、慣性設定及び/又は平衡化をする方法に関し、このばね仕掛けバランスアセンブリ1は、バランスコック80を介してバランスばねスタッド7を支えるプレート8にマウントされ、回転軸Dを中心に回転するバランス2及びバランスばね3を有する。バランスばね3の内側コイル4は、バランス2又はバランス2と一体的にマウントされたコレット5に固定される。バランスばね3の外側コイル6は、バランスコック80に保持されるようにスタッド7に固定される。
【0049】
本発明によって、
− バランス2及びバランスばね3は、バランスばね3の内側コイル4を、バランス2又はバランス2と一体的にマウントされたコレット5に固定することによって、互いに不可逆的に組み立てられるようにして製造される。
− バランスばね3の外側コイル6は、改変防止性を有する形態で、バランスばねスタッド7に定位置にて固定される。このバランスばねスタッド7は、バランスコック80に対する不可逆的な取り付けによって改変防止性を有する形態で動けなくされる。
− 材料の除去によるバランス2の慣性設定及び/又は平衡化のために、工具又は摩耗の機械加工、レーザービーム、プラズマ射出又は液体ジェット射出の中から、再機械加工技術が選択される。この再機械加工技術は、摩耗及び/又はチャージ及び/又は変形及び/又は加熱の手段を含む再機械加工手段によって実装される。
− 再機械加工技術の選択に応じて、第1の距離E1の値が定められる。これは、バランスばね3の任意の点と、及びバランス2の慣性を設定及び/又は平衡化のための再機械加工領域との間の最小距離を形成する。
− バランス2の周部にて、バランス2の慣性設定及び/又は平衡化のために、再機械加工領域として、周表面20が決定される。これにおいて、表面20の任意の点は、少なくとも第1の所定の距離E1の値の分、バランスばね3から離れている。これによって、組み立てられたばね仕掛けバランスアセンブリ1上のバランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするための周領域20上のバランス2の不可逆的な再機械加工時のバランスばね3の特徴に対するいずれの変更をも防ぐ。
− 選択された再機械加工技術に応じて、第1の距離E1以上であって、バランスばねスタッド7と、及び第2の所定の距離E2よりも大きな値の分バランスばねスタッド7から離れている周表面20との間の最小距離を形成するような第2の距離E2の値が定められる。これによって、組み立てられたばね仕掛けバランスアセンブリ1上のバランス2の慣性設定及び/又は平衡化のための周領域20上のバランス2の再機械加工時のバランスばねスタッド7へのバランスばね3の取り付けの特徴に対するいずれの変更をも防ぐ。
− 慣性設定及び/又は平衡化のための任意の必要な再機械加工操作の値及び位置が決定される。
− 慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工は、周表面20上でのみ行われつつ、回転軸Dを中心とする回転21の第1の表面の外であって周表面20の最小半径201上でバランスばね3の任意の活性点から第1の距離E1よりも大きい距離離れている空間内に、再機械加工手段の軌道を制限し、第1の表面21は、第1の頂点Sが回転軸Dを中心とし第1の頂角βが第1の所定の値βOよりも小さいような錐面である。
【0050】
この方法の特定の実装の1つにおいては、慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工が周表面20上でのみ行われる場合、再機械加工手段の軌道は、周表面20の最大半径202上にある第2の表面22に対して内側の空間に制限されている。この空間は、任意のチップ又は他の不要物の直接的又は間接的な飛び出しに対する、振動機構10用の保護エンベロープと、及びバランスばね3のための保護エンベロープを定め、第2の表面22は、回転軸Dを中心とする第2の頂点S2を有し第2の頂角θが所定の第2の値θOよりも小さいような錐面である。
【0051】
この方法の特定の実装の1つにおいては、第1の表面21の第1の頂点S1は、バランス2に対してバランスばね3と同じ側にある。
【0052】
この方法の特定の実装の1つにおいては、第2の頂点S2は、バランス2に対してバランスばね3の反対側にある。
【0053】
この方法の特定の実装の1つにおいては、第1の表面21及び第2の表面22どうしは、回転軸Dを通る断面において、45°未満である所定の値α0よりも小さい第3の角αを形成する。
【0054】
この方法の特定の実装の1つにおいては、第2の所定の値θOは45°である。
【0055】
本方法の特定の実装の1つにおいては、バランス2の前置製造時に、周表面20を越えて位置し回転軸Dに対する距離が周表面20の最小半径201よりも小さいようなバランス2の任意の領域25は、少なくともその表面に熱処理及び/又は表面処理を施され、そして、工具、摩耗又はレーザーによる機械加工に対する周表面20よりも大きな耐久性が与えられるように作られ、及び/又は領域25は、工具、摩耗又はレーザーによる機械加工に対する耐久性が周表面20よりも大きな耐久性を有する材料で作られている。
【0056】
この方法の特定の実装の1つにおいては、前記領域25の少なくとも一部は、表面のセメンテーション又は窒化処理が施されている。
【0057】
本方法の特定の実装の1つにおいては、前記領域25の少なくとも一部は、機械加工のレーザーで使用される通常の波長のレーザービームに表面が反射するようにするような表面を金属化する処理が施されている。
【0058】
この方法の特定のアプリケーションにおいては、バランスばね3は、バランス2への取り付けの前に、その外側コイル6が、バランスばねスタッド7への取り付け位置において曲げられ及び/又はねじられるようにして作られる。これによって、外側コイル6の活性な端部分61を周表面20から離す。
【0059】
本方法の特定の実装の1つにおいては、プレート8及び/又はバランスコック80は、周表面20への再機械加工手段のアクセスを可能にするように作られる。
【0060】
この方法の特定の実装の1つにおいては、バランスばね仕掛けバランスアセンブリ1の慣性設定又は平衡化のために再機械加工が行われる場合、バランス2は、その幅Lの1倍よりも大きい深さPを有する狭い溝Sを有するように機械加工される。
【0061】
本方法の特定の実装の1つにおいては、バランス2への取り付けの前に、バランスばね3は、ケイ素、酸化ケイ素、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ガラス、金属性ガラス、アモルファス金属、石英、常磁性体、強磁性体、又は反強磁性体で作られている。
【0062】
この方法の特定の実装の1つにおいて、
− バランスばね3の両端の位置は、一方では、バランス2に対して、他方では、ムーブメント10のプレート8又はバランスコック80に対して、改変防止性を有する形態で動けなくされたバランスばねスタッド7に対して、改変防止性を有する形態で設定される。
− バランスを調整するいずれの手段9も、再機械加工位置にて動けなくされる。
− 慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工の操作が行われる。
【0063】
この方法の特定の実装の1つにおいては、慣性設定又は平衡化の再機械加工操作を行うために、
− ばね仕掛けバランスアセンブリ1の近傍に、材料の除去、工具又は摩耗機械加工、レーザービーム又はプラズマの射出、又は液体ジェット射出によって機械加工する手段が置かれる。
− 外側コイル6は、改変防止性を有する形態でバランススタッド7に固定され、このバランススタッド7は、ムーブメント10のプレート8に対して又はバランスコック80に対しての不可逆的な取り付けによって、改変防止性を有する形態で動けなくされる。
− 慣性設定及び/又は平衡化のためのいずれの必要な再機械加工操作の値及び位置が決定される。
− 慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工操作が、周表面20上で行われる。
【0064】
この方法の特定の実装の1つにおいて、
− バランス2は、初期の製造段階において、2つの止め位置の間で捕獲されるようにマウントされる調整ねじ9を有する。これによって、出荷時設定位置においてばね仕掛けバランスアセンブリ1の慣性設定又は平衡化をする再機械加工操作を行い、バランス2の調整ねじ9はそれぞれ、バランス2上の第1の止め位置91にて動けなくされる。これにおいて、ねじ9が備える第1の頭93は、バランス2の周区画29に当接するように保持される。
【0065】
この方法の特定の実装の1つにおいては、第1の所定の距離E1は、0.50mm〜1.20mmの値に選択される。
【0066】
より詳細には、第1の所定の距離E1は、0.50mm〜0.70mmの値に選択される。
【0067】
この方法の特定の実装の1つにおいては、第2の所定の距離E2は、0.05mm〜0.20mmの値に選択される。
【0068】
より詳細には、第2の所定の距離E2は、0.05mm〜0.10mmの値に選択される。
【0069】
本方法の特定の実装の1つにおいては、プレート9及び/又はバランスコック80は、バランス2の少なくとも一方の側から周表面20が、回転軸Dを中心とする回転21の第1の表面の外であって周表面20の最小半径201上でバランスばね3の任意の活性点から第3の距離E3よりも大きな距離離れているような空間において、摩耗の及び/又はチャージ及び/又は変形及び/又は加熱の手段にアクセス可能なように作られ、これによって、バランス2の慣性設定及び/又は平衡化をするための周表面20上のバランス2の不可逆的な再機械加工時にバランスばね3の特徴に対するいずれの変更をも防ぐ。
【0070】
この方法の特定の実装の1つにおいては、回転軸Dを通る断面において回転軸Dと、所定の値βOよりも小さな角βを形成するような第1の表面21が選択される。
【0071】
本方法の特定の実装の1つにおいては、バランス2には、少なくとも2つのハウジング28が設けられており、そのそれぞれは、バランス2の周区画29の一方の側で捕捉されるようにマウントされる調整ねじ9を受けるように構成し、このねじ9は、バランス2の不可逆的な機械加工が行われる出荷時設定時にねじ9の第1の頭93が当接するように保持されるようなバランス2上の第1の止め位置91と、ねじ9の第2の頭94の移動距離の端を定める第2の止め位置92との間でのみ移動可能であり、第1の止め位置91と第2の止め位置92の間の距離がねじ9の調整能力を、販売後の目的のために1日当たり30秒以内に制限する。
【0072】
この方法の特定の実装の1つにおいては、バランス2に固定される前に、バランスばね3は、前置加熱処理される。これによって、バランス2の慣性設定及び/又は平衡化のためにバランス2が周表面20上で再機械加工される場合の近くの領域における局所的な加熱に対する耐久性をつける。
【0073】
この方法の特定の実装の1つにおいては、組み立てられたアセンブリ1においてバランス2の慣性設定及び/又は平衡化のために周領域20上でバランス2を再機械加工する際に、バランスコック80は開いた形となるように作られ、機構10で作られる吸気流が中を循環するような少なくとも1つの凹部81を有する。
【0074】
この方法の特定の実装の1つにおいては、プレート8には、少なくとも1つの穴82が設けられており、これは、組み立てられたアセンブリ1上のバランス2の慣性設定及び/又は平衡化のための周表面20上のバランス2の再機械加工時に機構10で作られる吸気流を促進させ、このばね仕掛けバランスアセンブリ1は、慣性設定及び/又は平衡化の再機械加工操作時に、ばね仕掛けバランスアセンブリ1が間でマウントされるプレート8及びバランスコック80における開口81及び/又は凹部81を通り抜ける吸気流を受ける。
【0075】
この方法の特定の実装の1つにおいては、出荷時設定時の不可逆な慣性設定及び/又は平衡化の機械加工後に、振動機構10は、唯一の調整手段としてバランス2の調整ねじ9を使用して、販売後のサービスにて調整される。
【0076】
この方法の特定の実装の1つにおいては、上に定めたように、再機械加工手段の動作のエンベロープ用に、少なくとも第1の表面21を越えるように、第1の表面21に対するバランスばね3の反対側で、空間の限界が定められる。また、再機械加工手段においては、場合に応じて、レーザー又はプラズマビーム又は機械加工スピンドルの軸が、加熱が効果を発揮するように、又はチップ又は塵埃がバランスばねの範囲内に来ないような方向を向くようにされる。好ましくは、これらの軸は、図3に示すように、角βと等しい角に対応する角度的な扇形部分ω内を向いており、これによって、光線、フロー、チップ及び塵埃の反射が、バランスばね3から離れてしか発生しない。
【0077】
本発明は、組み立てられたムーブメント10における慣性設定及び/又は平衡化のために再機械加工することに対して、特に適している。第2の固定表面エンベロープ22の定義に記載したことによって、上で説明したように、ムーブメントの他の部品を保護し、そして、任意のフロー及び不要物の反射が2つの表面21及び22内に留まることは確実にされるべきである。この確実性は、適切な向きを向いている、図3の例においてS2からS2へと上昇する吸気流の存在によって、さらに改善され、再機械加工の後にムーブメント10がきれいなままであることを確実にする。
【0078】
バランスの慣性設定及び/又は平衡化のために行うこの再機械加工操作で形成される最後の動作上の調整の後に、ムーブメント10は、更なる出荷時設定をいずれも行わない。上に述べたように、バランスが調整ねじ9を備える場合、販売後のサービスにおける調整の範囲は制限される。
【0079】
このように、工場に戻ると、ここで説明した操作と同様な操作で、慣性のリセットが必要とされる。本発明の利点は、この操作を行うために、ムーブメントを分解する必要がないことである。
【0080】
本発明は、バランスの再機械加工時にバランスばねのいずれの変更をも防ぐ。特定の幾何学的な特徴のために、不可逆な平衡化の機械加工操作を行うことが簡単であるという付加的効果も有する。
【0081】
偽造物を特定するという頻発している課題に対して、2つの材料で作られたバランスを代わりに使用することによって、又は再機械加工を防ぐために内部に処理された領域を有するバランスを代わりに使用することによって、解決策が与えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8