(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.粘着剤
本発明の粘着剤は、ポリオレフィン(a)、水酸基含有ポリオレフィン(b)および架橋剤(c)を含有する。以下、これらの各成分を順に説明する。
【0011】
[ポリオレフィン(a)]
本発明の粘着剤は、1種または2種以上のポリオレフィン(a)を含有する。なお、本発明において「ポリオレフィン」とは、オレフィンに由来する構成単位を有するポリマーを意味する
。さらに、本発明において「ポリマー」とは、単独重合体および共重合体の両方を指す。ポリオレフィン(a)としては、他の成分とともに有機溶媒に溶解して基材に塗布できる限り、あらゆるものを使用することができる。
【0012】
ポリオレフィン(a)としては、エチレン、プロピレンおよび炭素数が4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる一つの単量体から形成されるα−オレフィン単独重合体が挙げられる。炭素数が4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。α−オレフィン単独重合体としては、プロピレン単独重合体(狭義のポリプロピレン)が好ましい。プロピレン単独重合体としては、例えば、アモルファスポリプロピレン等が挙げられる。
【0013】
また、ポリオレフィン(a)としては、例えば、エチレン、プロピレンおよび炭素数が4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも二つの単量体から形成されるα−オレフィン共重合体が挙げられる。これらの中でも、エチレンを主たる単量体とする共重合体(即ち、エチレン系α−オレフィン共重合体)、およびプロピレンを主たる単量体とする共重合体(即ち、プロピレン系α−オレフィン共重合体)が好ましい。α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、またはグラフト共重合体のいずれでもよい。
【0014】
エチレン系α−オレフィン共重合体のエチレン構成単位量は、例えば50〜95モル%、好ましくは70〜95モル%である。エチレン系α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン構成単位としては、1−ブテン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体から形成されるものが好ましい。特に好ましいエチレン系α−オレフィン共重合体として、エチレン−1−ブテン共重合体およびエチレン−プロピレン共重合体が挙げられる。なお、このようなエチレン−1−ブテン共重合体は、エチレンおよび1−ブテン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。同様に、エチレン−プロピレン共重合体は、エチレンおよびプロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。このような共重合体は、例えば、遷移金属触媒成分(例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物)と有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
【0015】
プロピレン系α−オレフィン共重合体のプロピレン構成単位量は、例えば50モル%超95モル%以下、好ましくは70〜95モル%である。また、プロピレン系α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン構成単位としては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体から形成されるものが好ましい。特に好ましいプロピレン系α−オレフィン共重合体は、プロピレン−エチレンランダム共重合体である。なお、このプロピレン−エチレンランダム共重合体は、プロピレンおよびエチレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。プロピレン系α−オレフィン共重合体は、例えば特開2000−191862に記載されているように、メタロセン系触媒を用いて製造することができる。
【0016】
α−オレフィン共重合体として、市販品を使用することができる。エチレン系α−オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、タフマーPシリーズ、タフマーAシリーズ(いずれも三井化学社製)、エンゲージ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。また、プロピレン系α−オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、タフマーXMシリーズ(三井化学社製)等が挙げられる。
【0017】
また、ポリオレフィン(a)として、ポリメチルペンテンも使用することができる。ポリメチルペンテンとしては、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、および4−メチル−1−ペンテンとそれ以外のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。ポリメチルペンテン共重合体の4−メチル−1−ペンテン構成単位量は、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは70〜95モル%である。ポリメチルペンテンは、結晶性重合体であってもよい。ポリメチルペンテン共重合体中のα−オレフィン構成単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンに由来するものが好ましい。これらの中でも、4−メチル−1−ペンテンと良好な共重合性を示す1−デセン、1−テトラデセンおよび1−オクタデセンがより好ましい。なお、ポリメチルペンテンの市販品としては、例えば、TPX−S(4−メチルペンテン−1−α−オレフィン共重合体、三井化学社製)が挙げられる。
【0018】
有機溶媒に溶解する限り、ポリオレフィン(a)として、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のジエン系ゴムも使用することができる。このようなポリイソプレンとしては、シス−1,4結合が90%以上であり、ムーニー粘度(100℃におけるML1+4)が40〜70であるものが好ましい。ポリイソプレンの市販品としては、例えば、IR−307、IR−310(クレイトンポリマー社製)が挙げられる。ポリブタジエンとしては、シス−1,4結合が90%以上であり、ムーニー粘度(100℃におけるML1+4)が25〜50であるものが好ましい。ポリブタジエンの市販品としては、例えば、Nipol BR1220、Nipol BR1220L(日本ゼオン社製)、BR01(JSR社製)が挙げられる。
【0028】
また、ポリオレフィン(a)としては、イソブチレン系ポリマーが挙げられる。イソブチレン系ポリマーとしては、イソブチレン単独重合体およびイソブチレン共重合体(即ち、イソブチレンと他の単量体との共重合体)のいずれでもよい。イソブチレン共重合体中のイソブチレンに由来する構成単位量は、好ましくは50重量%以上である。イソブチレン共重合体としては、例えば、イソブチレンとノルマルブチレンとのランダム共重合体、イソブチレンとイソプレンとの共重合体(レギュラーブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴムなど)、並びにこれらの加硫物および変性物などが挙げられる。イソブチレン系ポリマーとしては、単独重合体であるポリイソブチレンが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン(a)は、好ましくは、プロピレン、ブテン(ブチレンともいう)、ヘキセンおよびオクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を有するポリマー(以下「ポリオレフィン(a−1)」と記載する)である。前記のブテン、ヘキセンおよびオクテンは、直鎖状および分枝鎖状のいずれでもよい。また、ポリオレフィン(a−1)は、単独重合体および共重合体のいずれでもよい。ポリオレフィン(a−1)としては、上述したプロピレン単独重合体(狭義のポリプロピレン)、プロピレン系α−オレフィン共重合
体およびイソブチレン系ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン
)およびイソブチレン系ポリマーが好ましく、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)およびポリイソブチレンがより好ましい。
【0030】
ポリオレフィン(a)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは3,000〜1,000,000、より好ましくは4,000〜800,000である。この数平均分子量が3,000未満であると、凝集力が低下し被着体に対して糊残りしやすくなる場合があり、一方、1,000,000を超えると、粘着力が低くなり所望の粘着力を得られない場合がある。
【0031】
ポリオレフィン(a)の含有量は、粘着剤中、好ましくは10〜99.95重量%、より好ましくは20〜99.5重量%である。この含有量が10重量%未満であると、粘着力が低くなり、所望の粘着力を得られない場合があり、一方、99.95重量%を超えると、基材との密着性が悪くなる場合がある。なお、含有量の基準となる「粘着剤」の中には、有機溶媒の量は含まれない。
【0032】
[水酸基含有ポリオレフィン(b)]
本発明の粘着剤は、1種または2種以上の水酸基含有ポリオレフィン(b)を含有する。水酸基含有ポリオレフィン(b)は、粘着剤層の形成の際に、架橋剤(c)と反応させるために用いられる。水酸基含有ポリオレフィン(b)としては、ポリオレフィンとの相溶性が良いものが好ましい。
【0033】
水酸基含有ポリオレフィン(b)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜500,000、より好ましくは1,000〜200,000、さらに好ましくは1,200〜150,000である。水酸基含有ポリオレフィン(b)の数平均分子量が500,000を超えると、架橋剤(c)との溶解性が低いために、粘着剤層における架橋剤(c)を主体とする層(即ち、ポリオレフィン(a)が少ない層)にほとんど溶解できず、大部分の水酸基含有ポリオレフィン(b)が、ポリオレフィン(a)を主体とする層に溶解し、架橋剤(c)と反応しにくくなる。その結果、充分な投錨性が得られにくくなる場合がある。逆に、水酸基含有ポリオレフィン(b)の数平均分子量が500未満では、高温時に粘着剤層の表面に水酸基含有ポリオレフィン(b)がブリードアウトしやすくなり、粘着特性を悪化させる場合がある。
【0034】
水酸基含有ポリオレフィン(b)は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、および水添ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン(a)との相溶性の観点から、水添ポリイソプレンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオールおよび水添ポリブタジエンポリオールが好ましい。
【0035】
また、水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)は、粘着剤層の強度の観点から、5以上であることが好ましく、また、粘着剤層の粘着力の観点から、95以下であることが好ましい。水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)は、より好ましくは10〜80である。
【0036】
水酸基含有ポリオレフィン(b)は、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、Poly bd R−45HT(末端に水酸基を有する液状ポリブタジエン、数平均分子量2800、水酸基価46.6mgKOH/g、出光興産社製)、Poly ip(末端に水酸基を有する液状ポリイソプレン、数平均分子量2500、水酸基価46.6mgKOH/g、出光興産社製)、エポール(末端に水酸基を有する液状の水添ポリイソプレン、数平均分子量2500、水酸基価50.5mgKOH/g、出光興産社製)、GI−1000(水酸基を有する液状ポリブタジエン、数平均分子量1500、水酸基価60〜75mgKOH/g、日本曹達社製)、GI−2000(水酸基を有する液状の水添ポリブタジエン、数平均分子量2100、水酸基価40〜55mgKOH/g、日本曹達社製)、GI−3000(水酸基を有する液状ポリブタジエン、数平均分子量3000、水酸基価25〜35mgKOH/g、日本曹達社製)、ユニストールP−801(水酸基含有ポリオレフィン、数平均分子量5000以上、水酸基価40mgKOH/g、三井化学社製)、ユニストールP−901(水酸基含有ポリオレフィン、数平均分子量5000以上、水酸基価50mgKOH/g、三井化学社製)などが挙げられる。
【0037】
粘着剤中の水酸基含有ポリオレフィン(b)の含有量は、下記式(I)におけるA値が、好ましくは0.25〜14250、より好ましくは0.5〜12000、さらに好ましくは1〜2500となるように設定される。
A=水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)×ポリオレフィン(a)100重量部に対する水酸基含有ポリオレフィン(b)の重量部数 ・・・ (I)
A値が0.25より小さいと、粘着剤層の強度が充分ではなくなる傾向があり、14250より大きいと、粘着力が下がる傾向がある。
【0038】
[架橋剤(c)]
本発明の粘着剤は、1種または2種以上の架橋剤(c)を含有する。架橋剤(c)は、粘着剤層の形成の際に、水酸基含有ポリオレフィン(b)と反応させるために用いられる。そのため架橋剤(c)は、水酸基と反応し得る官能基を有する。水酸基と反応し得る官能基としては、例えば、イソシアネート基(イソシアナト基ともいう)およびカルボキシ基などが挙げられる。反応性の観点から、水酸基と反応し得る官能基は、好ましくはイソシアネート基である。即ち、架橋剤(c)は、好ましくはイソシアネートである。
【0039】
イソシアネートは、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートのいずれでもよい。イソシアネートは、好ましくは芳香族イソシアネートである。
【0040】
粘着剤層の強度などの観点から、イソシアネートは、好ましくは1分子中にイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートであり、より好ましくは芳香族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに好ましくは芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体および脂肪族ジイソシアネートの多価アルコール付加体からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0041】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、反応性および得られる粘着剤層の投錨性の観点から、トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0042】
脂肪族ジイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、反応性および得られる粘着剤層の投錨性の観点から、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0043】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族多価アルコール等が挙げられる。これらの中で、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0044】
ポリイソシアネートとしては、例えば、前記多価アルコールと過剰量の前記ジイソシアネートとを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を含有する化合物が挙げられる。
【0045】
架橋剤(c)の含有量は、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、好ましくは0.01〜150重量部であり、より好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部である。この含有量が0.01重量部未満であると、粘着剤層の投錨性(即ち、基材への接着性)が低くなる場合があり、一方、150重量部を越えると、粘着剤溶液のポットライフが短くなったり、粘着剤層の粘着性(即ち、被着体への接着性)が低くなったりするなどの悪影響が出てくる場合がある。
【0046】
[任意成分]
本発明の粘着剤は、1種または2種以上の任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば、水酸基含有ポリオレフィン(b)とイソシアネート(即ち、架橋剤(c))との反応を促進するためのウレタン化触媒が挙げられる。
【0047】
本発明の粘着剤は、1種または2種以上のウレタン化触媒を含有していてもよい。ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの錫化合物、亜鉛、コバルト、銅、ビスマス等の金属のカルボン酸塩、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン化合物、鉄、チタン、ジルコニウム等の金属のキレート化合物などが挙げられる。また、有機酸ビスマス塩(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸およびこれらの2種以上を主成分とする樹脂酸ビスマスなどの脂環族系有機酸のビスマス塩、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸などの芳香族系有機酸のビスマス塩等)も使用できる。これらの中でも、粘着剤への相溶性およびウレタン化反応の反応性の点で、鉄キレート化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートおよび樹脂酸ビスマス塩が好ましく、反応性の点で鉄キレート化合物がより好ましい。
【0048】
ウレタン化触媒の含有量は、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、好ましくは0.001〜2.0重量部、より好ましくは0.005〜1.5重量部、さらに好ましくは0.008〜1.0重量部である。この含有量が0.001重量部未満であると、触媒としての効果が充分に発揮されない場合がある。一方、この含有量が2.0重量部を超えると、粘着剤溶液のポットライフが短くなるなどの不具合が生じる場合がある。なお、ここでいう触媒の含有量は、触媒(即ち、有効成分)のみの量を指し、例えば、市販の触媒溶液を使用する場合、溶媒量を除いた触媒のみの量を意味する。
【0049】
本発明の粘着剤は、その他必要に応じて、前記ポリオレフィン(a)および水酸基含有ポリオレフィン(b)以外の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料等を含有していてもよい。
【0050】
2.粘着テープ
本発明は、基材および粘着剤層を有する粘着テープも提供する。本発明の粘着テープは、本発明の粘着剤から形成された粘着剤層を、基材の少なくとも片面に有する。以下、基材および粘着剤層について順に説明する。
【0051】
[基材]
本発明において、基材に特に限定は無い。但し、基材は、表面が平滑であるプラスチックフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;が挙げられる。また、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙を基材として用いてもよい。紙基材としては、粘着剤の基材への過度の含浸を防ぐために、ポリエチレン等のプラスチックがラミネートされたもの、または目止め処理されたものが好ましい。基材には、必要に応じて、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の処理を施しておいても良い。
【0052】
基材の厚さは、特に制限されず、使用目的に応じて適宜設定することができる。基材としてプラスチックフィルムを使用する場合、その厚さは、通常12〜250μm程度、好ましくは16〜200μm、より好ましくは25〜125μmである。
【0053】
また、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料等を、基材に配合してもよい。
【0054】
[粘着剤層]
粘着剤層は、例えば、上述の粘着剤成分を溶媒に溶解させて粘着剤溶液を得、得られた粘着剤溶液を基材に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。粘着剤溶液の固形分は、本発明において特に限定されないが、通常、5〜50重量%の範囲内である。
【0055】
粘着剤成分を均一に溶解し得るものである限り、溶媒に特に限定はない。但し、本発明の粘着剤はポリオレフィン(a)を含有するので、溶媒は、好ましくは、1種のみの炭化水素系溶媒、2種以上の炭化水素系溶媒の混合溶媒、または炭化水素系溶媒とその他の溶媒との混合溶媒である。混合溶媒を使用する場合、炭化水素系溶媒の含有量は、混合溶媒中、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。炭化水素系溶媒としては、例えば、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素が挙げられる。その他の溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
【0056】
粘着剤溶液の塗布方法としては特に限定は無く、あらゆる公知の方法、例えばキスロールコーター、ビードコーター、ロッドコーター、マイヤーバーコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いる方法を使用できる。乾燥方法についても特に限定は無く、あらゆる公知の方法を使用できる。一般的な乾燥方法として、熱風乾燥が挙げられる。熱風乾燥の温度は、基材の耐熱性によっても変わり得るが、通常60〜150℃程度である。
【0057】
粘着テープにおける粘着剤層の厚さ(即ち、乾燥後の厚さ)は、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μmである。この厚さが1μm未満であると、粘着性(即ち、粘着剤層の被着体への接着性)が不充分となる場合がある。一方、この厚さが100μmを超えると、被着体からテープをはがす際に粘着剤層における凝集破壊が生じ、被着体への糊残りが生じる場合がある。
【0058】
本発明の粘着テープは、粘着剤層を保護するために、剥離剤層を有していてもよい。例えば、本発明の粘着テープは、粘着剤層とは反対側の基材上に、剥離剤層を有していてもよい(即ち、「粘着剤層/基材/剥離剤層」の構成)。このような構成において、前記剥離剤層は背面処理層と呼ばれることがあり、前記粘着テープは背面処理層付き粘着テープと呼ばれることがある。
【0059】
また、本発明の粘着テープの粘着剤層を保護するために、基材上に剥離剤層が形成された離型材を用いてもよい。詳しくは、本発明の粘着テープの粘着剤層と、離型材の剥離剤層とを接触させることによって、粘着剤層を保護してもよい(即ち、「粘着テープの基材/粘着剤層/剥離剤層/離型材の基材」の構成)。このような構成の粘着テープは、離型材付き粘着テープと呼ばれることがある。
【0060】
本発明の粘着テープは、長いテープがロール状に巻回された形態、および長いテープを適当な大きさにカットし、カットしたテープが積層された形態のいずれでもよい。
【0061】
3.物性、特性等
本明細書中の物性および特性等は、以下の方法での測定値である。
(1)数平均分子量
ASTM D2503に準拠して測定した値である。
(2)水酸基価
JIS K1557:1970に準拠して測定した値である。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、以下において「部」および「%」は、特段の記載が無い限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
【0063】
[粘着剤溶液の調製]
表1および2に示す部数で各成分を混合し、これをトルエンに溶解させて、固形分が15%である粘着剤溶液を調製した。なお、表1および2に示す各成分の部数には、溶媒は含まれない。即ち、入手した成分が溶液である場合、表1および2に示す部数は、その溶液中に含まれる成分自体(固形分)の部数を示す。また、表1および2には上記式(I)におけるA値を記載する。
【0064】
表1および2における各成分の略号の意味は、以下の通りである。
(1)ポリオレフィン(a)
B80:BASFジャパン社製「オパノールB80」(ポリイソブチレン、数平均分子量180,000)
B12:BASFジャパン社製「オパノールB12」(ポリイソブチレン、数平均分子量13,000)
app:住友化学社製「タフセレンH5002」(プロピレン・1−ブテンのアモルファス共重合体)
(2)水酸基含有ポリオレフィン(b)
エポール:出光興産社製「エポール」(末端に水酸基を有する液状の水添ポリイソプレン、数平均分子量2500、水酸基価50.5mgKOH/g)
Poly ip:出光興産社製「Poly ip」(末端に水酸基を有する液状ポリイソプレン、数平均分子量2500、水酸基価46.6mgKOH/g)
GI3000:日本曹達社製「GI−3000」(末端に水酸基を有する水添ポリブタジエン、数平均分子量約3000、水酸基価25〜35mgKOH/g)
ユニストール:三井化学社製「ユニストールP−901」(水酸基含有ポリオレフィンの22%トルエン溶液、トルエン除去物は固体、水酸基含有ポリオレフィンの数平均分子量>5000、水酸基価50mgKOH/g)
(3)架橋剤(c)
C/L:日本ポリウレタン社製「コロネートL」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個)
C/HL:日本ポリウレタン社製「コロネートHL」(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個)
(4)ウレタン化触媒
DBTDL:和光純薬工業社製「ジラウリン酸ジブチルすず(IV)」(ジブチル錫ジラウレート)
Fe(C
5H
7O
2)
3:日本化学産業社製「ナーセム第二鉄」(鉄キレート化合物)
【0065】
[粘着テープの調製(粘着剤層の形成)]
調製した粘着剤溶液を、ベーカー式アプリケーターを用いて表1および2に記載する基材に塗布した後、熱風乾燥機で80℃×2分間加熱し、粘着テープを得た。得られた粘着テープの粘着剤層の厚さを、表1および2に示す。
【0066】
表1および2における基材の略号の意味は、以下の通りである。
(1)PET
東レ社製「ルミラーS10」(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ25μm)
(2)OPPコロナ
東レ社製「トレファンBO2548」(両面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフイルム、厚さ30μm)
(3)PP/PEコロナ
以下のようにして調製した、両面にコロナ放電処理を施したポリプロピレン/線状低密度ポリエチレンフィルム(厚さ35μm)
【0067】
[PP/PEコロナの調製]
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ノバテックPP FY4」)80部および線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製「カーネル KF380」)20部を含む成形材料を、フィルム成形機にて溶融混練した後、該成形機のTダイから押し出すことによって、ポリプロピレン/線状低密度ポリエチレンフィルムを調製した。このフィルムの両面にコロナ放電処理を施し、粘着剤層を形成する面とは反対側の面(背面)に、長鎖アルキル系剥離剤を用いて、剥離剤層(厚さ:約0.05μm)を形成した。
【0068】
[粘着テープの評価]
得られた粘着テープの投錨性(即ち、粘着剤層と基材との接着性)および粘着性(即ち、粘着剤層と被着体との接着性)を、以下のようにして評価した。
【0069】
(1)投錨性の評価
20mm幅にカットした粘着テープの基材に、両面テープでSUS板を取り付けて、粘着テープに裏打ちを施した。この粘着テープの粘着剤層に日東電工社製「No.315テープ」(ゴム系粘着剤、19mm幅)の糊面が合わさるようにして、サンプルである粘着テープとNo.315テープとを貼り合わせた。この際、これらのテープの間に、あて紙を挟んだ。あて紙をチャックで担持して、引張試験機にてNo.315テープを180°方向に100m/minの速さで引っ張ることによって、粘着テープの基材と粘着剤層とを剥離した。剥離に必要な力(即ち、基材と粘着剤層とを剥離させるのに必要な投錨力)を測定した。結果を表3に示す。また、粘着テープの粘着剤層と基材とを剥離するやり方の概略を
図1に示す。
【0070】
粘着剤層と基材との剥離形態について、粘着剤層を剥離した後の粘着テープ基材表面を触って、粘着剤の感触があったもの(即ち、剥離の際に粘着剤層が基材に残ったもの)を「凝集破壊」と判定し、基材の感触しかなかったもの(即ち、粘着剤層が全て剥離されたもの)を「投錨破壊」と判定した。結果を表3に示す。
また、実施例の粘着テープの中には、粘着剤層と基材との剥離の際に基材が切れたものがあり、これらは表3にて「基材切れ」と記載した。
【0071】
(2)粘着性の評価
10mm×100mmにカットした粘着テープを、被着体(SUS304板)に貼り合わせ、その上から2kgローラを1往復させることによって圧着させた。被着体に圧着させた粘着テープを、温度23℃の空気雰囲気にて温度23℃で20〜40分放置した。次いで引張試験機を使用し、粘着テープを温度23℃の空気雰囲気にて180°方向に300mm/minの速さで引っ張ることによって、被着体から粘着テープを剥離するのに必要な力(即ち、粘着力)を測定した。結果を表3に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示すように、実施例1〜16の粘着テープでは、基材と粘着剤層との剥離形態が「凝集破壊」または「基材切れ」である。これらの結果から、実施例1〜16の粘着テープは、基材と粘着剤層とが良好に接着しており、投錨性に優れていることが分かる。一方、表2に示す比較例1〜6の粘着テープでは、基材と粘着剤層との剥離において、粘着剤層が基材に残らない投錨破壊が生じており、投錨性に劣ることが分かる。これらの実施例1〜16と比較例1〜6との対比から、本発明の粘着剤から形成される粘着剤層は、優れた投錨性を発揮することが分かる。