特許第5925503号(P5925503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925503
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】対津波用防災システム
(51)【国際特許分類】
   E02B 1/00 20060101AFI20160516BHJP
   E02B 3/04 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   E02B1/00 Z
   E02B3/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-19797(P2012-19797)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-159895(P2013-159895A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219358
【氏名又は名称】東亜グラウト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 侑三
(72)【発明者】
【氏名】谷口 房一
(72)【発明者】
【氏名】大岡 伸吉
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−083659(JP,A)
【文献】 特開2002−348816(JP,A)
【文献】 特開2009−144472(JP,A)
【文献】 特開2008−202339(JP,A)
【文献】 特開2007−211559(JP,A)
【文献】 特開2006−097464(JP,A)
【文献】 特開2002−227165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00− 3/14
E02B 15/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波発生時の予測される波の流れ方向と略直交する方向に所定間隔毎に並べて地面に立設された複数の支柱と、該複数の支柱によって支持されて張架された高強度の網体とを有する対津波用防護柵が、津波が通過すると予測される領域に設置され、
前記対津波用防護柵が設置された領域の少なくとも前記支柱設置領域の地盤をカバーする洗掘防止体が設置されたことを特徴とする対津波用防災システム。
【請求項2】
前記対津波用防護柵が、
前記支柱を基準として前記波の流れ方向の両側の地盤にそれぞれ固設されたアンカーと、
前記支柱の上部と前記アンカーとを連結する牽引材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の対津波用防災システム。
【請求項3】
前記牽引材には前記津波による衝撃力を緩衝する緩衝部材が設けられ、
前記支柱は前記波の流れ方向に傾動可能に立設されたことを特徴とする請求項2に記載の対津波用防災システム。
【請求項4】
既に防潮林がある場合に、該防潮林に隣接する位置に前記対津波用防護柵が設置されたことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の対津波用防災システム。
【請求項5】
前記対津波用防護柵が予測される波の流れる経路に重複して複数設置されたことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の対津波用防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期に構築可能な対津波用防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震や地滑り等に起因して発生する津波は、物的あるいは人的に甚大な被害をもたらす自然災害であることから、従来から防潮堤や防波堤等を造成したり、高台に住居を移転する等様々な津波対策が講じられている。また、この他にも、海岸又はその付近に防潮林を配置する津波対策も行われている。
【0003】
防潮林は、防潮堤や防波堤等の構造物のように襲来した津波をそこで堰き止めるという能力はないものの、実際に過去の津波において、防潮林によって漂流物が捕捉されることで、その防潮林よりも陸側にある民家等の建築物が被災を免れた又は被害が少なかったという報告がされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】防災公園技術ハンドブック続、著者:都市緑化技術開発機構
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防潮林は一度被災して倒れたり腐敗すると、その後元の状態に戻すために樹木を一定の高さまで成長させ且つ地中に根を張りめぐらせるには数十年という長い期間を要する。一方、元々防潮林がなかった場所でも、過去の津波による被害で津波対策が必要な地域が大幅に増えており、また、津波の原因となる地震等はいつ発生するか予測できないことから、早期に構築できる津波対策が求められている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、早期に構築できる津波対策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の対津波用防災システムは、津波発生時の予測される波の流れ方向と略直交する方向に所定間隔毎に並べて地面に立設された複数の支柱と、該複数の支柱によって支持されて張架された高強度の網体とを有する対津波用防護柵が、津波が通過すると予測される領域に設置され、前記対津波用防護柵が設置された領域の少なくとも前記支柱設置領域の地盤をカバーする洗掘防止体が設置されたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、高強度の網体により津波通過後の津波の水位を低下させることがで
き、津波による漂流物(自動車、船舶や倒壊した家屋等)を捕捉することができるので、
対津波用防護柵より陸側に位置する建築物の被害や人的被害を低減することができる。ま
た、網体を使用しているため、津波の襲来を目視で確認することができ、近隣住民の避難
が遅れることが避けられる。対津波用防護柵は支柱に網体を支持して張架した簡易な構成
であるので、短期間で設置でき、早期に津波対策を講じることができる。また、防護柵が設置された地盤の土砂が津波によって洗い流されて浸食されることを防止することができる。したがって、支柱の設置状態、更には柵の設置状態の安定性、信頼性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の対津波用防災システムは、前記対津波用防護柵が、前記支柱を基準として前記波の流れ方向の両側の地盤にそれぞれ固設されたアンカーと、前記支柱の上部と前記アンカーとを連結する牽引材と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、支柱が強固に立設されるので、津波に対する抵抗性及び耐久性の高い対津波用防護柵となり、長期にわたり効果のある津波対策を講じることができる。また、支柱上部から海側及び陸側の両方に牽引材を張架することで、押し波だけでなく、引き波に対しても効果を発揮することができる。
【0011】
請求項3に記載の対津波用防災システムは、前記牽引材には前記津波による衝撃力を緩衝する緩衝部材が設けられ、前記支柱は前記波の流れ方向に傾動可能に立設されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、津波とその漂流物によって対津波用防護柵に相当の荷重がかかった場合に、支柱が津波を受けた側とは反対側に傾斜する力が作用すると、その力は牽引材に伝達される。そして、牽引材に伝達した力が緩衝部材によって緩衝されることにより、傾動可能な支柱の傾斜動作が行われる。その後、緩衝部材の緩衝作用の限度に達すると牽引材の張力によって支柱は一定の傾斜状態で維持されて、漂流物は網体によって確実に捕捉される。
【0015】
請求項に記載の対津波用防災システムは、既に防潮林がある場合に、該防潮林に隣接
する位置に前記対津波用防護柵が設置されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、防潮林と対津波用防護柵とが組み合わされて効果的な対津波用防災システムを構築することができる。
【0017】
請求項に記載の対津波用防災システムは、前記対津波用防護柵が予測される波の流れ
る経路に重複して複数設置されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、複数の防護柵により津波の水位を段階的に低下することができるので、大きな津波にも対応することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の対津波用防災システムによれば、津波による漂流物を捕捉することができると共に、津波通過後の津波の水位を低下させることができるので、建築物の被害や人的被害を低減することができる。対津波用防護柵は支柱に網体を支持した簡易な構成であるので、短期間の作業で設置することができ、早期に津波対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】対津波用防護柵の一例を示す正面図である。
図2図1に示した対津波用防護柵の側面図である。
図3】支柱の下部の詳細図である。
図4】網体の一例を示す説明図である。
図5】硬鋼線の詳細図である。
図6】網体の一例を示す説明図である。
図7】リング式ネットの説明図である。
図8】緩衝部材の説明図である。
図9】対津波用防護柵の設置例を示す説明図である。
図10】本発明の対津波用防災システムの効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の対津波用防災システムに使用する対津波用防護柵の一例を示す正面図であり、図2はその側面図である。図示のように、所要の長さ範囲に亘って所定の間隔で複数の支柱12−1〜12−nが立設されて1つの支柱列が形成されており、各支柱12によって網体14が支持されて張架されている。各支柱は、津波発生時の予測される波の流れ方向と略直交する方向に所定間隔毎に並べられて地面に立設される。なお、本発明において津波の押し波を受け止める側を「海側」と称し、その反対側を「陸側」と称する。
【0022】
網体14は上側サポートロープ16と下側サポートロープ18と接続することにより張設されている。上側サポートロープ16は、地盤に固設された上側サポートロープ用第一アンカー20−1から、各支柱12−1〜nの上部を経て、上側サポートロープ用第二アンカー20−2まで張架されている。同様に、下側サポートロープ18も、地盤に固設された下側サポートロープ用第一アンカー22−1から、各支柱12−1〜nの下部を経て、下側サポートロープ用第二アンカー22−2まで張架されている。また、両端の支柱12−1、12−nの上部と下部サポートロープ用アンカー22−1、22−2とを連結するラテラルロープ24もそれぞれ張架されており、これにより対津波用防護柵10全体の強度を向上させている。
【0023】
各支柱12−1〜12−nは基礎26を介して地面100に立設されている。基礎26はコンクリートからなり、詳細図である図3に示すように、基礎26の上にはベース部材28が設置されている。ベース部材28にはリブ30が起設されており、そのリブ30と支柱12の下部がヒンジ結合されている、これにより支柱12は津波の流れ方向(矢印方向)に傾動可能に固定されている。また、ベース部材28には孔部(図示せず)が穿設されており、この孔部を通して支柱12が地盤に対して反力をとるための2本のアンカー34が基礎26を介して挿通されて支柱12及び基礎26を一体的に固設している。
【0024】
支柱12の高さは3〜6m、設置間隔は5〜10m程度であり、適宜選択される。支柱12に対する網体14の設置側は海側でもよく陸側でもよい。また、本例では4本の支柱12−1〜nを例示しているが、支柱の数は適宜変更してよい。防護柵10の延在方向の長さは例えば5〜60mである。
【0025】
上記網体14は高強度のものであり、津波による漂流物(建築物の建築資材、自動車、船舶、生活用品等)を捕捉し且つ網体通過後の津波の水位を低下させることができるものである。このような網体としては、図4及び図7に示すように、開口部が菱形状やリング状のネットを使用することができる。このような網体は硬鋼線から構成されており、その硬鋼線としては、鋼性の素線(直径2mm〜5mm)を複数本(例えば2〜5本)撚ることにより作製された撚線(直径6〜15mm)を使用できる。硬鋼線は、特に引張強度が400〜2000N/mm2であるものが使用される。
【0026】
図4に示す菱形の網体は、網体の開口部が菱形とされた網体である。図示のように、硬鋼線40により菱形金網が形成されている。菱形のサイズは対角線の縦方向の長さが20cm〜60cm、対角線の横方向の長さが15cm〜30cm程度とされており、菱形の内接円の直径は10〜30mmである。図5に硬鋼線40の詳細図を示す。図示のように3本の素線41を撚ることにより硬鋼線40が構成されている。
【0027】
また、網体14としてはリング式ネットも使用することができる。例えば、図6はリング式ネットに使用するリング状部材を示す斜視図であり、硬鋼線を1回から複数回巻いて、周方向の数箇所を締結手段42aによって締め付けて形成されている。締結手段42aは、例えば断面C形の略筒状の金具であって、その開放部を通して線材束に嵌めた後に、締め付け工具によって線材束に固定される。なお、線材の太さや巻数を加減することにより、リングネットの強度や、後述のエネルギー吸収力を調整することが可能である。
【0028】
1つのリング状部材42は、図7(A)に示したように、それぞれ周囲の4個のリング状部材と連結される構成をとっている。この構成以外にも、1個のリング状部材42は、図7(B)に示したように、それぞれ6個のリング状部材と連結される構成をとっていてもよい。リング状部材42の連結は、図7(A)(B)に示したように、互いに交差させて行われている。連結は、このような交差によるもの以外にも、適当な連結部材を使用して行ってもよい。
【0029】
上記菱形状網体やリング式ネットを構成する硬鋼線には防食処理がなされていることが好ましく、例えば、亜鉛メッキ、アルミ亜鉛合金メッキ、樹脂による被覆が行われる。使用される樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル等が挙げられる。防食処理は、上述した素線一本毎に被覆を行った後撚線としてもよく、防食処理を行っていない素線を撚線とした後、この撚線に上記被覆を行ってもよい。
【0030】
このような高強度の網体は、津波によって漂流している自動車、倒壊した家屋、船舶等を捕捉することができる強い耐性を備えると共に、網体通過後の津波の水位を低下させることができ、被害を小さくすることができる。
【0031】
また、このような網体の開口部の寸法等は、防護柵を設置する場所、地形、予想される津波の大きさ等によって適宜選択することができる。例えば、海により近い場所に対津波用防護柵10を設置する場合には、捕捉する対象は主に船舶であるため開口部の大きな網体を使用することができる。一方、周囲に建築物の多い場所に対津波用防護柵10を設置する場合には、倒壊した建築物の建築資材や生活用品を捕捉することができるよう、開口部の小さな網体を選択することができる。
【0032】
上記示した例では、網体14は一端の支柱12−1から他端の支柱12−nまで連続して架け渡された一枚の網体が張設された対津波用防護柵を例として示しているが、各支柱間に網体をそれぞれ別個に複数張設して構成することもできる。
【0033】
図2に示すように、支柱12を基準として予測される波の流れ方向の両側の地盤、すなわち海側と陸側の地盤のそれぞれにはアンカー50が固設されており、これらアンカー50と支柱12の上部を連結する連結材52がそれぞれ設けられている。これにより支柱12が地面100に強固に立設保持される共に、支柱12の傾動動作の程度が調節される。牽引材52としては、ワイヤーロープ、鋼棒、鎖、PC鋼材等を使用することができる。なお、図1では牽引材52及びそのアンカー50は図示していない。
【0034】
図1及び図2に示すように、牽引材52並びに上側サポートロープ16及び下側サポートロープ18の中途には緩衝部材60が設けてあり、この緩衝部材60は支柱12を経て牽引材52や上記サポートロープ16、18に張力として働く漂流物や津波のエネルギーの一部を吸収するように作用する。この緩衝部材の具体的構成は、牽引材52がワイヤーロープの場合、図8に示すようにループ管62aと緊締部材62bとから成っており、ループ管62aには牽引材52の中途部分が挿通されている。ループ管62aの両端部は並列して重ね合わされており、この重畳部は緊締部材62bによって緊締され、従って重畳部ではループ管62aは相互に摩擦接触し、またループ管62aと緊締部材62bの間においても摩擦接触が行われている。ループ管62aは鋼製管であることが好ましいが、他の金属材料、プラスチック材料で構成されていてもよい。また、緩衝部材60を設置する数は適宜変更してよい。例えば1〜5個であり、複数個設ける場合には直列又は並列に設置することができる。
【0035】
牽引材52に津波による衝撃力が波及し、牽引材52に大きな緊張力が発生すると、ループ管62aの径を縮小しようとする力が働き、ループ管62aの両端部は牽引材52に沿って互いに反対方向に向かう力を受ける。牽引材52に加わっている緊張力が、緊締箇所におけるループ管同士およびループ管62aと緊締部材62bとの間の摩擦力を超えると、それら相互間に滑りが生じ、摩擦抵抗力がもたらされ、更にループ管62aの径が縮小する際の抵抗力が発生する。これらの抵抗力によって、牽引材52が受けている津波の水流や漂流物による運動エネルギーが吸収される。ループ管52aの直径、管の肉厚及び構成材料を選択することによりエネルギー吸収能力は様々に変更可能であり、様々な要求に簡単に対応することができる。また、図示の例ではループ管52aが一巻きであるが、2重巻き又はそれ以上の巻き数であってもよい。
【0036】
そして、このような緩衝部材60によれば、津波とその漂流物によって対津波用防護柵10に荷重がかかった場合に、支柱が津波を受けた側とは反対側に傾斜する力が作用すると、その力は牽引材52に伝達される。そして、牽引材52に伝達した力が緩衝部材60によって緩衝されることにより、傾動可能な支柱12の傾斜動作が行われる。その後、緩衝部材60の緩衝作用の限度に達すると牽引材52の張力によって支柱12は一定の傾斜状態で維持されて、漂流物は網体14によって確実に捕捉される。
【0037】
図1及び図2に示したように、防護柵10の設置箇所近傍の地盤には、その陸側と海側それぞれに洗掘防止体36が設けられている。この洗掘防止体36は、厚さ10〜30cmの板状コンクリート部材36aが複数個並べて地中に配置されることにより構成されており、洗掘防止体36全体として支柱12側から外側に向かって深くなるように傾いて埋設されている。各板状コンクリート部材36aは図示しないワイヤー等の連結材で相互に連結されている。洗掘防止体36全体の幅は横方向の長さより長く、最外部の深さは約1〜5mである。このような洗掘防止体36は、これを埋設する地面を掘削して、板状コンクリート部材を配置した後、土砂を戻すことにより設置することができる。
【0038】
この例では、支柱列全域に亘り洗掘防止体36が設置された例を示しているが、洗掘防止体は、対津波用防護柵10が設置された領域の少なくとも支柱12設置領域の地盤をカバーする構成でもよい。洗掘防止体36を設けることにより、地盤が貧弱な地域にも強固に固設された対津波用防護柵による対津波用防災システムを講じることができる。
【0039】
以下、対津波用防護柵10の設置箇所について説明する。図9は対津波用防護柵の設置例を示す説明図である。本図では、海300及び川200のある地域に対津波用防護システムが講じられた例を示しており、沿岸には防潮堤250が築かれている。
【0040】
対津波用防護柵10は、その複数の支柱12よりなる支柱列が津波発生時の予測される波の流れ方向と略直交する方向に延在するように、津波が通過すると予測される領域に設置される。例えば、海岸付近(符号202)ではその海岸と平行となるように、津波が遡上する川付近(符号204)ではその川の延在方向と平行となるように、河口(符号206)付近では斜めに設置する等、予測される津波に応じて適宜支柱の配置位置を変更する。津波の流れる経路は、その土地の地形、建築物の配置、海抜、道路等により予測することができる。
【0041】
また、図示のように既に防潮林150のある場合にはその防潮林の近傍に設置することで、防潮林150と共に十分な津波対策を講じることができる。図示の例では、2つの防潮林150の間の津波が流れると予測される経路上に対津波用防護柵10が設置されている。また、過去の津波で倒れる等して消失した防潮林151がある場合には、その場所又はその近傍に対津波用防護柵10を設置することで、新たな防潮林となる樹木の成長を待つことなく早期に津波対策を講じることができる。更に、本発明の対津波用防災システムにおいては、対津波用防護柵10は予測される津波が流れる経路に重複して複数箇所にそれぞれ設置することより漂流物捕捉・津波減衰効果が更に向上する。また、人や車の通行の妨げにならない範囲で住宅街等に対津波用防護柵を設置してもよい。更に、例えば海岸に沿って海岸と平行に長い距離に亘って複数の対津波用防護柵を設置する場合には、避難する人の通行の妨げにならないよう、2〜3m程度の間を空けて並置することも好適である。
【0042】
図10は、本発明の対津波用防災システムの効果を示す説明図である。図示のように防潮堤301を乗り越えた津波500は陸に向かって漂流物400と共に流れてくるが、対津波用防護柵10を通過した後では破線で示されているように水位が低下するとともに、漂流物は対津波用防護柵10によって捕捉される。対津波用防護柵10は漂流物が衝突すると図2の破線で示したように網体14は津波を受ける側とは反対方向に膨出変形し、漂流物を受け止める。また、上述したように対津波用防護柵10は引き波による漂流物401も捕捉することができ、海洋への漂流物の流出を防止することができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 対津波用防護柵
12 支柱
14 網体
16 上側サポートロープ
18 下側サポートロープ
20−1 上側サポートロープ用第一アンカー
20−2 上側サポートロープ用第二アンカー
22−1 下側サポートロープ用第一アンカー
22−2 下側サポートロープ用第二アンカー
24 ラテラルロープ
26 基礎
28 ベース部材
30 リブ
34 支柱用アンカー
36 洗掘防止体
40 硬鋼線
42 リング状部材
50 牽引材用アンカー
52 牽引材
60 緩衝部材
200 川
300 海
301 防潮堤
500 津波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10