特許第5925558号(P5925558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925558
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/26 20060101AFI20160516BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160516BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   A61K8/26
   A61K8/19
   A61K8/44
   A61K8/88
   A61K8/31
   A61Q1/12
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-82196(P2012-82196)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209346(P2013-209346A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆二
(72)【発明者】
【氏名】土屋 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中尾 啓輔
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143844(JP,A)
【文献】 特開2010−285409(JP,A)
【文献】 特開2005−306846(JP,A)
【文献】 特開2006−348007(JP,A)
【文献】 特開平04−211603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E):
(A)合成金雲母及び/又は鉄含有合成金雲母 2〜30質量%、
(B)有機板状粉体 1〜12質量%、
(C)窒化ホウ素 1〜20質量%、
(D)平均粒子径0.2〜10μmの球状粉体 5〜20質量%、
(E)25℃で液体の油剤 2〜15質量%
を含有し、成分(A)及び(C)の質量割合が、(A)/(C)=0.2〜2であり、成分(A)、(B)及び(C)の質量割合が、(A)/((B)+(C))=0.1〜1.5であり、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含む全粉体中、平均一次粒子径100nm以下の粉体の含有量が1質量%以下である固形粉末化粧料。
【請求項2】
成分(A)が、平均粒子径3〜20μmで、アスペクト比20〜70のものである請求項記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
成分(B)が、アシル化アミノ酸及びアシル化アミドスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
成分(A)、(B)、(C)及び(D)から選ばれる1種又は2以上が、疎水化処理されたものである請求項1〜のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
さらに、(F)ポリエチレングリコールを0.1〜5質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
成分(B)、(C)及び(F)の質量割合が、((B)+(C))/(F)=6〜30である請求項5記載の固形粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形粉末化粧料においては、肌へのなじみが良く、密着性が良好で、感触がなめらかであるなど、使用感に優れたものが求められている。
例えば、白雲母、金雲母等をカチオン性界面活性剤で処理した粉体を用いた粉末化粧料(特許文献1)や、粉末成分と油性成分と、表面処理剤としてのテトラアルキルアンモニウム塩を用いた粉末化粧料(特許文献2)等が検討されている。
また、固形粉末化粧料においては、球状粉体を配合することにより、使用感や、肌の凹凸隠ぺい効果を向上させることが行われている。さらに、微粒子成分を配合することにより、紫外線散乱効果や、カバー力を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−199645号公報
【特許文献2】特開2010−37328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、特許文献1及び特許文献2の粉末化粧料では、粉体同士の接着性が低く、成型性や肌への密着性に課題があることを見出した。
また、球状粉体を配合した固形粉末化粧料では、乾式で成型する場合には、成型性が悪く、湿式製法では、工程が煩雑で、環境への影響にも課題がある。さらに、微粒子成分は、凝集しやすく、使用時にざらつき感が生じたり、肌への密着感やなめらかな感触においても課題があった。
本発明は、成型性及び耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料を提供するとともに、なめらかな感触で、肌への密着性に優れ、粉感を抑制し、毛穴などの凹凸を目立ちにくくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、後記成分(A)〜(E)を特定の割合で組み合わせて用いれば、上記課題を解決した固形粉末化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)〜(E):
(A)合成金雲母及び/又は鉄含有合成金雲母 2〜30質量%、
(B)有機板状粉体 1〜10質量%、
(C)窒化ホウ素 1〜20質量%、
(D)平均粒子径0.2〜10μmの球状粉体 5〜20質量%、
(E)25℃で液体の油剤 2〜15質量%
を含有し、成分(A)及び(C)の質量割合が、(A)/(C)=0.2〜2であり、成分(A)、(B)及び(C)の質量割合が、(A)/((B)+(C))=0.1〜1.5である固形粉末化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固形粉末化粧料は、成型性及び耐衝撃性に優れ、塗布時になめらかな感触で、肌への密着性に優れ、粉感を抑制し、毛穴などの凹凸を目立ちにくくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)は、合成金雲母及び/又は鉄含有合成金雲母である。合成金雲母としては、例えば、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイフッ化カリウムを混合・溶融後、結晶を晶出させ、粉砕、熱処理して得られるものが挙げられ、鉄含有合成金雲母としては、例えば、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、酸化鉄を混合・溶融後、結晶を晶出させ、粉砕、熱処理して得られるものが挙げられる。
鉄含有合成金雲母は、透明感の高い仕上がりを与える点から、鉄の含有量が酸化鉄換算で0.5〜10質量%であるのが好ましい。
【0009】
形状は板状が好ましく、平均粒子径は3〜20μm、アスペクト比は20〜70のものが好ましく、平均粒子径は5〜15μm、アスペクト比30〜60のものがより好ましい。
本発明において、粒子径は、電子顕微鏡観察、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定機によって、測定される。具体的には、レーザー回折/散乱法の場合、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(例えば、堀場製作所製、LA−920)で測定する。厚さは、原子間力顕微鏡により基準面との差を測定し、相加平均したものを平均厚さとする。
また、アスペクト比は、平均粒子径と粒子の平均厚さとの比により計算されるものであり、アスペクト比=(平均粒子径/平均厚さ)で定義される。
【0010】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、やわらかな使用感と透明感の高い仕上がりを得る点から、化粧料全体に対し、下限は2質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。また、上限は、30質量%以下であり、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、2〜30質量%であり、5〜25質量%含有されるのが好ましく、7〜20質量%含有されるのがより好ましい。
【0011】
本発明で用いる成分(B)の有機板状粉体は、平均粒子径1〜50μmであるのが好ましく、3〜20μmがより好ましい。また、アスペクト比が1〜100のものが好ましく、アスペクト比30〜70のものがより好ましい。なお、板状とは、形状が狭義の板状の他、薄片状、鱗状等の形状の粉体も含まれる。
成分(B)の有機板状粉体は、成型性、使用感の点から、平均粒子径3〜20μm、アスペクト比30〜70であるのが、好ましい。
粒子径は、成分(A)と同様にして測定され、アスペクト比は、成分(A)と同様にして求められる。
【0012】
具体的には、一般に水及び油に不溶のものであって、例えば、樹脂粉末、アミノ酸系粉末等が挙げられる。
【0013】
樹脂粉末としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ベンゾグアナミン樹脂、ポリスチレン、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、四フッ化エチレン等の板状樹脂粉末が挙げられる(例えば、特開昭57−78466号公報、特開昭62−190112号公報、特開昭62−104706号公報)。
【0014】
アミノ酸系粉末としては、アシル化アミノ酸、アシル化アミドスルホン酸等が挙げられ、より具体的には、Nε−ラウロイルリジン、Nε−パルミトイルリジン、Nε−カプロイルリジン等のN−アシルリジン;Nα−ステアロイルオルニチン等のN−アシルオルニチン;Nγ−パルミトイル−α,γ−ジアミノ酪酸等のN−アシルジアミノ酪酸;Nε−ラウロイルアルギニン等のN−アシルアルギニン;Nα−ココイルヒスチジン等のN−アシルヒスチジン等のN−アシル塩基性アミノ酸(例えば、特開昭60−67406号公報、特開平5−58842号公報);N−アシル化タウリン多価金属塩(例えば、特開2002−80325号公報)等のアシル化アミドスルホン酸が挙げられる。市販品としては、Nε−ラウロイルリジンであるアミホープLL(味の素社製)等を用いることができる。
【0015】
成分(B)としては、アミノ酸系粉末が好ましく、アシル化アミノ酸、アシル化アミドスルホン酸がより好ましく、アシル化アミノ酸がさらに好ましく、Nε−ラウロイルリジンがよりさらに好ましい。
【0016】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、十分な成型性を確保する点から、化粧料全体に対し、下限は1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、上限は、12質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、1〜12質量%含有され、2〜10質量%が好ましく、3〜7質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いる成分(C)の窒化ホウ素は、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されずに使用することができる。窒化ホウ素の形態としては、六方晶、ウルツ鉱型構造、立方晶、菱面体晶、乱層構造などのいずれでも良く、使用性の点から、六方晶のものが好ましい。
窒化ホウ素は、塗布時のすべりの良さ、適度な光沢感の付与の点から、平均粒子径が2〜15μmのものが好ましく、4〜10μmのものがより好ましい。
市販品としては、SHP−3、SHP−6(以上、水島合金鉄社製)等を用いることができる。
【0018】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、高い延展性と付着性を両立し、塗布性を向上させる点から、化粧料全体に対し、下限は、1質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。また、上限は、20質量%以下であり、17質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、1〜20質量%含有され、5〜17質量%が好ましく、7〜15質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0019】
本発明において、成分(A)及び(C)の質量割合、(A)/(C)は、成型性及び耐衝撃性に優れるとともに、塗布時になめらかな感触で、肌との密着性に優れ、粉感を抑制する点から、下限は、0.2以上であり、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。また、上限は、2以下であり、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、(A)/(C)=0.2〜2であり、更に、0.3〜1.5であるのが好ましく、0.3〜1.3がより好ましく、0.5〜1.3がさらに好ましい。
【0020】
また、本発明において、成分(A)、(B)及び(C)の質量割合、(A)/((B)+(C))は、塗布時になめらかな感触で、成型性及び耐衝撃性に優れ、肌との密着性に優れ、粉感を抑制し、毛穴などの凹凸を目立ちにくくし、透明感の高い仕上がりを得る点から、下限は、0.1以上であり、0.2以上が好ましい。また、上限は、1.5以下であり、1以下が好ましい。これらの観点を総合すると、(A)/((B)+(C))=0.1〜1.5であり、更に、0.2〜1であるのが好ましい。
【0021】
本発明で用いる成分(D)の球状粉体は、平均粒子径0.2〜10μmであり、2〜8μmのものが、使用感の向上、毛穴や肌の凹凸目立ちを抑制する点から好ましい。球状とは、形状が略球形の粉体をいい、回転楕円体、表面に凹凸がある球状粉体等であってもよく、球状粉体の短径/長径の比、すなわち楕円率は、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、1.1以下がさらに好ましい。
球状粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、例えば、ポリアミドパウダー、ナイロンパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリ四フッ化エチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、ポリウレタンパウダー、ビニル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂;ジメチルシリコーンを架橋したシリコーンエラストマーパウダーやポリメチルシルセスキオキサンパウダー等のシリコーンパウダー;
アクリル酸ブチル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、(メタクリル酸ラウリル/ジメタクリル酸エチレングリコール)コポリマー等のような、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキレングリコールから選ばれる1種または2種以上の重合体または共重合体のパウダー等の架橋型あるいは非架橋型の有機球状粉体が挙げられる。
なかでも、ナイロンパウダー、ポリウレタンパウダー、シリコーンエラストマーが好ましく、ナイロンパウダー、シリコーンエラストマーがより好ましい。
【0022】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、肌の凹凸を目立ちにくく、なめらかな仕上がりを付与し、成型性を確保する点から、化粧料全体に対して、下限は、5質量%以上であり、8質量%以上が好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、上限は、20質量%以下であり、16質量%以下が好ましく、13質量%以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、5〜20質量%含有され、8〜16質量%が好ましく、10〜13質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0023】
本発明の固形粉末化粧料において、前記成分(A)〜(D)の粉体は、いずれも、そのまま使用することができ、更に、これらの1種又は2種以上が疎水化処理されたものを用いることもできる。
疎水化処理としては、通常の化粧料用粉体に施されている処理であれば制限されず、シリコーン処理、脂肪酸処理、ラウロイルリジン処理、レシチン処理、N−アシルアミノ酸処理、金属石鹸処理、フッ素化合物処理等が挙げられる。これらのうち、フッ素化合物処理、シリコーン処理が好ましい。
【0024】
疎水化処理の処理量は粉体によって異なるが、粉体100質量%に対して、下限は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、上限は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、2〜7質量%であるのが好ましく、3〜5質量%処理されるのがより好ましい。この処理量であれば、撥水性及び撥油性が付与され、化粧持続性が確保できるので好ましい。
【0025】
本発明の固形粉末化粧料は、前記成分(A)〜(D)以外に、通常の化粧料に用いられる粉体を含有することができる。
かかる粉体としては、通常の化粧料に用いられる体質顔料、着色顔料であれば特に制限されず、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、雲母、チタン被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被覆雲母チタン、コンジョウ被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ホウケイ酸、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、これらの複合体等の無機粉体;尿素樹脂、フェノール樹脂、sケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N−モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等の有機粉体;さらに、上記無機粉体と有機粉体との複合粉体などが挙げられる。
【0026】
本発明において、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含む全粉体中、平均一次粒子径100nm以下の粉体の含有量は、塗布時のザラツキがなく、滑らかな感触を付与する点から、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含まないのがさらに好ましい。
【0027】
本発明で用いる成分(E)の油剤は、25℃で液体のものである。ここで、25℃で液体とは、25℃における粘度が10000mPa・s以下であることをいう。具体的には、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm、1分で測定される。
かかる油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば良く、例えば、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油;液状ラノリン等の動物油;脂肪酸エステル、多価カルボン酸エステル、脂肪酸多価アルコールエステル、ヒドロキシ脂肪酸エステル、その他、メトキシケイ皮酸オクチル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油などが挙げられる。
なかでも、粉体とのなじみが良く、成型性を確保する点から、直鎖又は分岐の炭化水素油、脂肪酸エステル、多価カルボン酸エステル、メトキシケイ皮酸オクチルが好ましく、直鎖又は分岐の炭化水素油、脂肪酸エステル、多価カルボン酸エステルが好ましい。
【0028】
成分(E)は、1種又は2種以上を用いることができ、成型性の向上、ケーキングの抑制、粉取れ、使用感が良好である点から、化粧料全体に対して、下限は、2質量%以上であり、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がさらに好ましい。また、上限は、15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、2〜15質量%含有され、3〜10質量%が好ましく、4〜8質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0029】
本発明の固形粉末化粧料は、さらに、(F)ポリエチレングリコールを含有することができ、皮膚との親和性が良く、肌となじみやすく、耐衝撃性が向上するので好ましい。
かかるポリエチレングリコールは、分子量100〜1000が好ましく、200〜600のものがより好ましい。
成分(F)のポリエチレングリコールは、1種又は2種以上を用いることができ、しっとりとして、べたつきのない使用感を得る点から、化粧料全体に対して、下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、上限は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、0.1〜5質量%含有されるのが好ましく、0.5〜3質量%がさらに好ましい。
【0030】
また、本発明において、成分(B)、(C)及び(F)の質量割合、((B)+(C))/(F)は、塗布時になめらかな感触で、成型性及び耐衝撃性に優れ、肌との密着性に優れ、粉感を抑制し、毛穴などの凹凸を目立ちにくくし、透明感の高い仕上がりを得る点から、下限は、6以上であり、12以上が好ましい。また、上限は、30以下であり、20以下が好ましい。これらの観点を総合すると、((B)+(C))/(F)=6〜30であり、更に、12〜20であるのが好ましい。
【0031】
本発明の固形粉末化粧料は、前記成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤などを含有することができる。
【0032】
本発明の固形粉末化粧料は、通常の方法に従って製造することができる。例えば、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含むすべての粉体成分を混合・粉砕した後、成分(E)を含む油相成分を加えて混合し、得られた混合物をさらに粉砕機で粉砕した後、粉砕物を成型・固形化することにより製造することができる。使用する粉砕機としては、通常粉砕するために使用される粉砕機であれば特に制限されず、例えば、アトマイザー、ハンマーミル、ジェットミル、カッターミル等が挙げられる。油相の混合工程については、通常混合に使用される装置が使用され、例えば、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等が挙げられる。
本発明の固形粉末化粧料は、成型性の点から、硬度が58以上、62以下であるのが好ましく、なかでも、58.5以上,61.5以下がより好ましい。硬度は、アスカー硬度計(C1L)を使用して測定される。
【0033】
本発明の固形粉末化粧料は、例えば、ファンデーション、フェイスパウダー、ほほ紅、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料などとして好適である。なかでも、ファンデーションが好ましい。
【実施例】
【0034】
実施例1〜6、比較例1〜4
表1に示す組成の固形粉末化粧料(パウダーファンデーション)を製造した。得られた固形粉末化粧料について、肌に塗布した直後の「自然な仕上がり」、「感触のなめらかさ」、「粉感のなさ」、「肌への密着感」及び「毛穴の目立ちにくさ」を評価した。また、成型性及び耐衝撃性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0035】
(製造方法)
成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含むすべての粉体成分を混合・粉砕した後、成分(E)及び(F)を加えて混合し、得られた混合物をさらに粉砕機で粉砕した。ここで得られた粉砕物を、容器に充填し、充填量9.5g、成型圧1200kgで成型して、固形粉末化粧料を得た。
【0036】
(評価方法)
(1)「自然な仕上がり」、「感触のなめらかさ」、「粉感のなさ」、「肌への密着感」及び「毛穴の目立ちにくさ」:
10名の専門パネラーが、各固形粉末化粧料をスポンジで肌に塗布した直後の「自然な仕上がり」、「感触の滑らかさ」、「粉感のなさ」、「肌への密着感」及び「毛穴の目立ちにくさ」を以下の基準で評価した。結果を10名の積算値で示す。
【0037】
(1−1)自然な仕上がり:
5;非常に自然に仕上がる。
4;自然に仕上がる。
3;やや自然に仕上がる。
2;あまり自然に仕上がらない。
1;自然に仕上がらない。
【0038】
(1−2)感触のなめらかさ:
5;非常になめらか。
4;なめらか。
3;ややなめらか。
2;あまりなめらかでない。
1;なめらかでない。
【0039】
(1−3)粉感のなさ:
5;粉感が全くない。
4;粉感がない。
3;粉感があまりない。
2;粉感がややある。
1;粉感がかなりある。
【0040】
(1−4)肌への密着感:
5;非常に密着する。
4;密着する。
3;やや密着する。
2;あまり密着しない。
1;密着しない。
【0041】
(1−5)毛穴の目立ちにくさ:
5;非常に目立ちにくい。
4;目立ちにくい。
3;やや目立ちにくい。
2;やや目立ちやすい。
1;目立ちやすい。
【0042】
(2)成型性:
各固形粉末化粧料について、アスカー硬度計(C1L)を使用して、硬度を5点測定し、その平均値を求めた。
【0043】
(3)耐衝撃性:
各固形粉末化粧料を、40cmの高さから30mm厚のアクリル樹脂板上に落下させ、割れが生じるまでの落下回数をカウントした。3回試験を行い、その平均値を求めた。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例7(パウダーファンデーション)
実施例1〜6と同様にして、以下に示す組成のパウダーファンデーションを製造した。
【0046】
(組成)
(1)シリコン処理合成金雲母(平均粒子径:7μm、アスペクト比40)
(トピー工業社製、PDM−5L) 10.0(質量%)
(2)フッ素処理ラウロイルリジン(平均粒子径:11μm、アスペクト比50)
(味の素社製、アミホープLL) 5.0
(3)シリコン処理窒化ホウ素(平均粒子径:6μm)
(水島合金鉄社製、SHP−3) 12.0
(4)ポリメチルシルセスキオキサン(平均粒子径:7μm)
(GE東芝シリコーン社製:トスパール145) 7.0
(5)ナイロンパウダー(平均粒子径:5μm)
(住化エンビロサイエンス社製:HK−5000) 6.0
(6)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 2.0
(7)メトキシケイ皮酸オクチル 4.0
(8)ポリエチレングリコール(分子量:400) 1.0
(9)シリコン処理セリサイト 0.10
(10)フッ素処理酸化チタン 7.0
(11)フッ素処理黄酸化鉄 2.21
(12)フッ素処理ベンガラ 0.64
(13)フッ素処理黒酸化鉄 0.22
(14)シリコン処理タルク 残量
(15)防腐剤 0.1
合計 100
【0047】
実施例7で得られたパウダーファンデーションは、成型性及び耐衝撃性に優れ、塗布時になめらかな感触で、肌への密着性に優れ、粉感が抑制され、自然な仕上がりで、毛穴などの凹凸を目立たなくすることができる。