(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層の一方の面に熱硬化型接着剤層を積層し、金属板に剥離可能に貼着される半導体装置製造用マスクシートであって、該熱硬化型接着剤層が、シロキサン骨格を含有するポリイミド樹脂、下記(i)から選ばれたエポキシ樹脂、下記(ii)から選ばれたエポキシ樹脂、硬化剤及び25℃で液体の含フッ素基・親油基含有オリゴマーからなるフッ素添加剤を含有し、前記ポリイミド樹脂の含有量が35〜75質量%で、前記(i)から選ばれたエポキシ樹脂と(ii)から選ばれたエポキシ樹脂との合計の含有量が15〜45質量%で、前記フッ素添加剤の含有量が0.5〜5phr(フッ素添加剤を除く、接着剤100gに対して)であることを特徴とする半導体装置製造用マスクシート。
(i)トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
(ii)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シロキサン骨格を有するエポキシ樹脂
前記熱硬化型接着剤層の溶融粘度曲線において、最下限値が温度70〜200℃に有し、且つ最下限値の粘度が4000Pa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置製造用マスクシート。
請求項1に記載の半導体装置製造用マスクシートの熱硬化型接着剤層を金属板に積層させ該金属板を所定のパターン状に形成した後、半導体チップを搭載し、モールドした後、該半導体装置製造用マスクシートを除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のマスクシートにおける熱硬化型接着剤層(以下、単に接着剤層ともいう)は、硬化する前は、加熱により溶融し、熱可塑のように高温でなくとも金属板に圧着できる。また熱による硬化後は加熱されても溶融することなく、粘着剤より高温で高い弾性率が得られる。
熱硬化型接着剤層は、ポリイミド樹脂を含有する層である。ポリイミド樹脂はポリイミドフィルムに代表されるように、可撓性を有しながら、剛直、耐熱性を有する。本発明において、ポリイミド樹脂は熱硬化型の接着剤が半硬化状態、硬化状態において可撓性が必要であること、耐熱性の基材層との接着性が必要であることから必須の材料である。
【0011】
ポリイミド樹脂は主鎖中に酸イミド結合を有する重合体の総称であり、テトラカルボン酸無水物とジアミンの環化重縮合によって合成することができる。また、ポリイミド樹脂としては、可溶性若しくは可溶融性のものが好適である。
本発明におけるポリイミド樹脂は、少なくとも式(I)で示される構造単位を有し、式(II)で示される構造単位及び式(III)で示される構造単位が適宜、配列されるポリイミド樹脂である。
【0012】
【化1】
[式中、Wは、直接結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−SO
2−または−CO−を表し、Ar
1は下記式(1)または(2)で示される2価の芳香族基を表し
【0013】
【化2】
(式中、Xは、直接結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−SO
2−または−CO−を表し、Yは、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Z
1及びZ
2は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)、Ar
2は、1個または2個の水酸基またはカルボキシル基を有する2価の芳香族基を表し、R
1及びR
6は、炭素数1〜4のアルキレン基または式(3)で示される基を表し
【0014】
【化3】
(式中、Alkはケイ素原子に結合する炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)、R
2〜R
5は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0〜31の整数である。]
【0015】
一般的にポリイミド樹脂は剛直なものであり、前記課題となる、硬化前のマスクシートにおける平坦性、低温でテーピングする事を実現するには、Tgや硬さを調整することが必要であり、シロキサン骨格を導入することにより調整する。Tgが低いと、基本的には柔らかく、マスクシート平坦性には有効であるが、耐熱性の点、特に硬さの点では不十分となる傾向にある。しかしながら、熱硬化型であり、硬化成分により耐熱性を補完することが可能であることから、Tgとしては45℃以上であればよい。またTgが高いことは高温で硬さの点では有効であるが、マスクシート平坦性の点では好ましくなく、またテーピング温度も高くなる。しかしこれも硬化成分により平坦性やテーピング温度の低温化が可能であり170℃以下であれば、上記の問題は解決できる。すなわち、Tgとしては45〜170℃のポリイミド樹脂が好適である。尚Tgは示差熱分析により、吸熱がおこる温度を測定し、そのピークもしくはオンセット、オフセット温度から求める。
【0016】
Tgや硬さを調整するには、ポリシロキサン以外にウレタン骨格、メチレン鎖を有するジアミン、等なども可能である。ポリシロキサンに比べ、耐熱性は低下する傾向にあり、熱分解もしやすく、プラズマ処理等活性な雰囲気における分子鎖の切断などが起こりやすい傾向にある。プラズマ処理後に表面に極性基などが生成され、封止された場合にモールド樹脂との接着性があり、マスクシート剥離力が高くなるなどの可能性があり、また分解したガスが周辺を汚染する可能性が高くなる。
またシロキサンは剥離性の点でも効果がある。しかし、硬さを調整する為に導入するシロキサン部位であるが、W/Bを考慮する必要があること、ならびに、樹脂として、基材層との接着性も有する必要があることから、含有量やシロキサン部位の重合度は制限され、ポリシロキサンの平均重合度は2〜33(分子量としては、約250〜3000)好ましくは平均重合度が4〜24(分子量としては約400〜2000)のものが使用される。
【0017】
またポリイミド樹脂の分子量は溶融性を考慮し、約15000から70000が望ましい。分子量はGPCにて、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用い測定でき、スチレン換算の平均分子量として得られる。その数平均分子量は、15000未満の場合は膜の靭性、延性が損なわれ、脆くなる。また70000よりも大きい場合は溶剤溶解性が低下し、加工性が劣ることや、接着剤としての溶融性が低下し、テーピング温度が高くなり、実用に供しにくい。
【0018】
エポキシ基との反応性を付与することで、より耐熱性の高い接着剤が得られることから、官能基を有する反応性ポリイミドが、下記式(IV)で示されるテトラカルボン酸二無水物と、下記式(V)で示されるシロキサン化合物、下記式(VI)で示されるジアミン化合物および下記式(VII)で示されるエポキシ反応性基を有するジアミン化合物とを、有機溶剤中で重縮合させ、得られたポリアミック酸を閉環によりイミド化することによって得ることができる。
反応性を有することによりW/B性などが向上する。特にW/Bが高温で大きな力で行われる場合には、粘着剤では粘着剤が破壊されることが起きる場合があるが本発明における接着剤層は破壊が生じにくい。またマスクシート剥離性も向上する。高温にてモールドされる場合に、接着剤の各成分が相互に固まっていることにより、モールド樹脂との接着性があがらない効果があるためである。反応する官能基としては、カルボキシル基、水酸基などが一般的には使用される。
【0019】
またポリイミド樹脂の接着剤中にしめる比率は35〜75質量%が望ましい。ポリイミド樹脂が35質量%より少ないと、基材との接着性が低下し、マスクシート剥離時に樹脂が残る問題があり、また可撓性の点から35質量%以上は必要である。一方、75質量%を越えると、接着剤の溶融性が低下し、貼り付ける温度が高くなり、前記熱可塑性樹脂マスクシート同様の問題が発生しやすい。
【0020】
本発明に使用される式(I)で示されるポリイミド樹脂について説明する。下記式(IV)で示されるテトラカルボン酸二無水物と、下記式(V)で示されるシロキサン化合物、下記式(VI)で示されるジアミン化合物および、または下記式(VII)で示されるエポキシ反応性基を有するジアミン化合物とを、有機溶剤中で重縮合させ、得られたポリアミック酸を閉環によりイミド化することによって得ることができる。
【0021】
【化4】
(式中、W、Ar
1、Ar
2、R
1〜R
6、nは、前記した定義と同一のものを表す。)
【0022】
前記式(IV)で示されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4’,4’−ビフタル酸二無水物等があげられる。
【0023】
前記式(V)で示される両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物としては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(例えば、アミノプロピル末端のジメチルシロキサンの4量体ないし8量体等)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノフェノキシメチル)ポリジメチルシロキサン,1,3−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)ポリジメチルシロキサン,1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン、等があげられる。上記のシロキサン化合物において、ポリシロキサンの場合は平均重合度が2〜33(分子量としては、約250〜3000)好ましくは平均重合度が4〜24(分子量としては約400〜2000)のものが使用される。
【0024】
前記式(VI)で示されるジアミン化合物としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1’−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス(2,6−ジメチルビスアニリン)等があげられる。これらのジアミン化合物は2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、前記式(VII)で示されるエポキシ反応性基を有するジアミン化合物としては、2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,3’−ジヒドロキシ−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ビス[3−ヒドロキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[3−ヒドロキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,3’−ジカルボキシ−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジカルボキシ−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジカルボキシベンジジン、2,2’−ビス[3−カルボキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[3−カルボキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン等があげられる。これらのジアミン化合物は2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明におけるポリイミド樹脂を得るためには、上記のテトラカルボン酸二無水物と、両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物と、ジアミン化合物とを溶媒存在下で−20〜150℃、好ましくは0〜60℃の温度で数十分間ないし数日間反応させて、ポリアミック酸を生成させ、さらにイミド化することにより製造することができる。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルミアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン等の硫黄含有溶媒、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、テトラメチル尿素等をあげることができる。
【0027】
イミド化の方法としては加熱により脱水閉環させる方法及び脱水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法がある。加熱により脱水閉環させる場合、反応温度は150〜400℃、好ましくは180〜350℃であり、反応時間は数十分〜数日間、好ましくは2時間〜12時間である。化学的に閉環させる場合の脱水閉環触媒としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸等の酸無水物があり、閉環反応を促進させるピリジン等を併用することが好ましい。該触媒の使用量はジアミン総量の200モル%以上、好ましくは300〜1000モル%である。
【0028】
本発明において使用するポリイミド樹脂において、上記式(I)で示される構造単位と上記式(II)および式(III)で示される構造単位は、5/95〜50/50のモル比で配列されているのが好ましい。また、式(II)で示される構造単位と式(III)で示される構造単位との割合は、モル比で0:100〜99:1、好ましくは80:20〜95:5、さらに好ましくは50:50〜95:5の範囲である。
【0029】
平坦性を付与する為には前述記載のとおり、シリコーンにより変性を行うことが必要であるが、ポリイミド樹脂だけでは、加熱時に柔らかなり、W/B性等の低下を招く。またシリコーンによる変性量を抑制し、比較的剛直なポリイミド樹脂の場合には、平坦性が得られないし、圧着時の温度が高くなりすぎる問題がある。これらを補完する為に、前者の課題に対してはエポキシを併用することにより高温で柔らかくなることを抑制でき、また後者の課題に対してはポリイミド樹脂に比べて、低温で軟化、溶融するエポキシ樹脂を併用することで接着剤として、圧着する温度を低温化でき、実用に供することが出来る。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するもので、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型骨格を含有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格のエポキシ樹脂、トリフェニルメタン型のエポキシ、ビスフェノールA型、F型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、およびハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂の中でも多官能型エポキシ樹脂は、接着剤層のTgや高温での硬さを向上するのに好適である。一方、多官能型エポキシ樹脂は軟化点が高い傾向にあるため、接着剤層の溶融性をよくするには両末端型エポキシ樹脂がより適している。
両末端エポキシ樹脂は、接着剤層のTgや高温で硬さという点では、多官能型にはおよばないものの、剛直さが比較的低い結果、マスクシートの反りにたいしては好ましい材料であり、多官能型エポキシ樹脂と両末端エポキシ樹脂を含有することにより本発明の効果を得ることができる。
また、直鎖型エポキシ樹脂は、接着剤層のTgや高温で硬さという点では、多官能型にはおよばないものの、剛直さが比較的低い結果、マスクシートの反りにたいしては好ましい材料であり、多官能型エポキシ樹脂と両末端エポキシ樹脂に更に含有させてもよい。
【0031】
具体的には、多官能型エポキシ樹脂としては、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の商品名:EPPN502H)
、ナフタレン型エポキシ樹脂(例えば、DIC社製の商品名:HP4700)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製の商品名:EOCN1022)、プリンテック社製の多官能型エポキシ樹脂 商品名:VG3101などが挙げられる。
また、両末端エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(例えばJER社製 エピコート828)、ビフェニル型エポキシ樹脂(例えばJER社製 商品名:YX−4000)、ナフタレン型エポキシ(DIC社製HP4032D)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えばDIC社製 商品名:HP7200)、更に柔軟性を付与する点ではシロキサン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば信越化学工業社製の商品名:KF105、X−22−163)、DIC社製 商品名:EXA4816、EXA4822、ブタンジオール骨格の両末端エポキシ
等が挙げられる。
【0032】
上記シロキサ骨格のエポキシ樹脂はよりマスクシートの反り対しては好ましい。シロキサン骨格についてはポリイミド樹脂の骨格内にもシロキサン部位が存在する場合があるが、比較的低分子のエポキシ樹脂が熱硬化する際の硬化収縮等に対しての応力緩和的な効果がある。多官能型と両末端エポキシ樹脂は相反する特性をもっているため、エラストマであるシロキサン変性のポリイミド樹脂と多官能型エポキシ樹脂と両末端エポキシ樹脂を併用することによりより好ましい樹脂組成物が得られる。含有量が少ない場合には、接着剤の軟化温度を下げることが難しく、含有量が多い場合には、接着剤の可撓性が低下、耐熱基材との接着性の低下、脆くなることによるマスクシート剥離時の接着剤の残りが問題になりやすい。硬化剤の分子量、官能基などによりその含有量の最適量は変わり、エポキシ樹脂の含有量は15〜45質量%、このましくは20〜40質量%が望ましい。
【0033】
接着剤層にはエポキシ基と架橋反応する硬化剤を含有する。エポキシ樹脂と硬化反応する硬化剤を含有することで硬化後の硬さ、耐熱性が向上し、W/B性に対しても好適である。また硬化することで、モールド封止時に溶融することなく、モールド樹脂と接することで、界面の接着性を著しく高めることがなく、マスクシート剥離力が上がり、接着剤が残ることを抑制できる。硬化剤の例としては、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、ジシアンジアミド、p−t−ブチルフェノールやビスフェノールA骨格、パラフェニレン骨格、ビフェニル骨格等のノボラックフェノール樹脂、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物等が使用できる。また該骨格の自己架橋型のレゾール樹脂も使用できる。この中でも耐熱性に優れることからフェノール系の硬化剤が好ましい。また溶融性のコントロール等からこれらを単独または2種以上用いることが好適である。また、硬化速度をコントロールする目的等によりイミダゾール類、ジアミン類、トリフェニルホスフィン類の促進剤、触媒を使用する事もできる。
【0034】
接着剤層には剥離性を付与する為にフッ素添加剤を含有する。フッ素添加剤はパーフルオロ基を含むオレフィンまたはビニルエーテルまたはビニルエステルのうち少なくともひとつを構成材料として含有する共重合体もしくはグラフト体である。含フッ素グラフトポリマーとしては、含フッ素アクリル系グラフトポリマーである綜研化学社製の商品名:ケミトリーLF−700等を挙げることができる。なお、含フッ素アクリル系グラフトポリマーは、幹ポリマーと、この幹ポリマーから伸びる複数の枝ポリマーとからなり、幹ポリマーはアクリル系ポリマーからなり、枝ポリマーはフッ素を含有するポリマーからなるものである。
含フッ素ブロックコポリマーとしては、フッ化アルキル基含有重合体セグメントとアクリル系重合体セグメントからなるブロックコポリマーが、日本油脂社製の商品名:モディパーFシリーズ、例えばモディパーF200、モディパーF220、モディパーF2020、モディパーF3035、モディパーF600として市販されている。また、含フッ素脂肪族系ポリマーエステルとしては、ノニオン界面活性剤としての特性を有するものが好ましく、スリーエム社製の商品名:ノベックFC−4430等を挙げることができる。また含フッ素添加剤として、例えば、パーフルオロアルキル基を含有するスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基を含有するカルボン酸塩等のアニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルアルキレンオキシド付加物、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー等のノニオン界面活性剤等のフッ素含有界面活性剤等が挙げられる。これらの含フッ素添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。配合されるフッ素添加剤は、液体であってもよいし、固体であってもよいが、接着剤層の表面フッ素復元率を高め、剥離性をより高める観点から、25℃で液体であるものが好ましい。好適なフッ素添加剤としては、25℃で液体の含フッ素基・親油基含有オリゴマーであるメガファックF−552、F−554、F−558、F−477(DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
フッ素添加剤が存在することで、モールド樹脂や金属板との接着性を抑制でき、特に樹脂残りの問題が改善される。一方フッ素添加剤は剥離性を付与する点では有効であるが、基材との接着性も低下させる可能性があり、添加量が多すぎると、接着性が低下しすぎ、フレームなどの金属板との接着性も低くなり、結果樹脂漏れ等の問題が発生し、実用に供しない。鋭意検討した結果、0.5〜5phr(フッ素
添加剤を除く、接着剤100gに対して)が望ましい。
フッ素添加剤による剥離性への効果は以下のように考えられる。まずQFNの工程は、リードフレームの片面にマスクシートを貼着し、その反対面にダイアタッチ接着剤により半導体チップを搭載するが、接着剤の硬化時にダイアタッチ剤からアウトガスが発生することや、マスクシートからもアウトガスが発生することから、金ワイヤによりリードとチップを接続するワイヤボンディングによる接合の信頼性を向上させるために、プラズマによりクリーニングを行う。
プラズマクリーニングにより接着剤の表面の分子鎖が切断され、極性基の生成、表面が微小に粗化されることにより、ワイヤボンディング後のモールド封止において、モールド樹脂との接着性があがることになり、マスクシートのマスクシート剥離時の剥離力が増大する、しいては、接着剤がモールド樹脂の部位に残る問題が発生しやすくなる。しかしながら、本発明のように、フッ素添加剤を含有することで、プラズマされた後、ワイヤボンディング時の熱履歴により、マスクシートの接着剤表面にフッ素、フッ素含有分子が表層に配向もしくは出てくることから、封止後の前記記載の問題が解決される。フッ素の表面への配向等を考慮すると、マスクシートにおける接着剤層のTgは90〜200℃が望ましい。硬化後のTgが90℃よりも低いと、ワイヤボンディング性に問題があり、また硬化後のTgが200℃を越えた場合はプラズマ後のワイヤボンディングの温度履歴ではフッ素添加剤が熱処理により表面にでてきにくくなる為、剥離性が悪くなり、結果、樹脂残り等の問題が発生しやすくなる。
【0036】
本発明におけるTgは、接着剤層の動的粘弾性の温度依存性より求められ、損失係数のピーク温度、もしくは変位点により決定される。
試料サイズは長さ1cm以上、幅1〜4mm、厚さ5〜40μmにてオリエンテック社製動的粘弾性自動測定器DDV−01FPにより周波数11Hz、昇温速度10℃/min、荷重3gの条件にて、空気中にて測定する。接着剤層は基材層より剥がし、接着剤層のみとして、175℃で1時間の硬化処理を行い、上記測定を行う。接着剤層のみが採取できない場合には基材層と接着剤層の構成にて測定してもよい。基材層と接着剤層の構成で測定した場合、損失係数の温度特性において、ピークとして検出されない場合があるが、その場合には基材層の特性から接着剤層の損失挙動を決定し、Tgを決定する。
【0037】
フィラーは、Bステージ(半硬化状態)における溶融性、硬化物の硬さをかえる為や熱膨張係数、熱伝導率、表面タック、接着性等を調整する目的等により接着剤層に含有させることが出来る。フィラーとしては絶縁性のフィラーがより好ましい。一般的には無機又は有機フィラーを添加することは好適である。
ここで、無機フィラーとしては粉砕型シリカ、溶融型シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、窒化チタン、窒化珪素、窒化硼素、硼化チタン、硼化タングステン、炭化珪素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、マイカ、酸化亜鉛、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等からなるフィラー、あるいはこれらの表面にトリメチルシロキシル基等を導入したもの等を例示できる。有機フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ナイロン、シリコーン等からなるフィラーを例示できる。マスクシートの場合には接着剤層が5μm程度と薄い為に使用できるフィラーの大きさには制限があり、平均粒径としては、D(50)で1μm以下であることが望ましい。さらには0.2μm以下が好適である。
【0038】
接着剤層の溶融性は以下の点で重要である。マスクシートを貼り付け後、チップを搭載する際にダイアタッチ剤の硬化の為の熱処理がされる。一般的には常温から1時間程度で175℃程度まで昇温し、175℃前後で1時間ほどの熱処理がされる。また200℃の加熱炉等を数分程度で通過し、ダイアタッチ剤の硬化をする場合もある。熱硬化型の接着剤層は一度粘度が低下する傾向が一般的であり、吸湿水分の揮発、マスクシート貼り付け時の際泡の巻き込み等により発泡する場合がある。また硬化速度が遅い場合にダイアタッチ剤の硬化時にマスクシートの接着剤の硬化が不十分になる。そのような観点からBステージの溶融粘度としては、粘度の最下限値が現れる温度が70〜200℃、好ましくは90〜180℃の間にあり、最下限値の粘度が4000Pa・s以上、更に好ましく80000Pa・s以上であることが好ましい。すなわち、
図1に示すように接着剤層の溶融粘度曲線において、最下限値Aが温度70〜200℃に有し、且つ粘度が4000Pa・s以上であることが好ましい。このような溶融粘度を得るには、前記記載のポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤の組成物が好適に用いられ、且つ促進剤、触媒による硬化速度の調整や接着剤を所定温度で長時間の熱処理(エージング)する事で反応状態をコントロールすることなどにより、適切な溶融粘度を得る事が出来る。溶融粘度の測定は英弘精機社製レオメータRSを用い、周波数1Hz、昇温速度10℃/minにて測定して得られる。
【0039】
接着剤層の厚さは1〜30μm、好ましくは3〜7μmである。接着剤層の厚さが1μmより薄い場合は、異物などが混入した際にモールド樹脂漏れをおこしやすい、また接着剤層の厚さが30μmより厚すぎるとワイヤボンディング性を低下させ、封止時にリードフレームが接着剤中に埋まる可能性がある。さらに接着剤層がマスクシートとしての熱膨張に影響する為好ましくは3〜7μm程度である。
【0040】
基材層としては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、PARフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムが挙げられる。またフィルムに限定されず、紙、銅箔当の金属箔など、が使用できる。ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、アラミドなどの不織布なども適用できる。
基材層の厚さは10〜125μmが使用できるが、一般的には15〜25μmである。また金属板との熱膨張に差があると金属板にマスクシートが張られた状態で、反りなどの問題が発生する為、基材層の熱膨張としては13〜25ppm程度が望ましい。
【0041】
本発明のマスクシートは、接着剤層の表面や中に異物があると、モールド樹脂漏れなどの問題が発生する為、必要に応じて保護フィルムを貼着する。
保護フィルムとしては、剥離処理を施した紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが使用される。また、基材層が剥離性フィルムまたは表面に離型処理を施した紙の場合には、使用に際してそれら基材層を剥離して接着剤層のみをマスクシートとして使用すればよい。
【0042】
次に、
図2、
図3に基づいて、以上の本発明のマスクシートを用いて、半導体装置を製造する方法の一例について簡単に説明する。以下、半導体装置としてQFNを製造する場合を例として説明する。なお、
図2はリードフレームを半導体素子を搭載する側から見た時の概略平面図であり、
図3(a)〜(f)は、
図2に示すリードフレームからQFNを製造する方法を示す工程図であって、リードフレームを
図2のA−A’線に沿って切断した時の拡大概略断面図である。
【0043】
はじめに、平面視、
図2に示す概略構成のリードフレーム20を用意する。リードフレーム20は、ICチップ等の半導体素子を搭載する島状の複数の半導体素子搭載部(ダイパッド部)21を具備し、各半導体素子搭載部21の外周に沿って多数のリード22が配設されたものである。次に、
図3(a)に示すように、マスクシート貼着工程において、リードフレーム20の一方の面上に、本発明のマスクシート10を接着剤層(図示略)側がリードフレーム20側となるように貼着する。なお、マスクシート10をリードフレーム20に貼着する方法としては、ラミネート法等が好適である。次に、
図3(b)に示すように、ダイアタッチ工程において、リードフレーム20の半導体素子搭載部21に、マスクシート10が貼着されていない側からICチップ等の半導体素子30を、ダイアタッチ剤(図示略)を用いて搭載する。
【0044】
次に、
図3(c)に示すように、ワイヤボンディング工程において、半導体素子30とリードフレーム20のリード22とを、金ワイヤ等のボンディングワイヤ31を介して電気的に接続する。次に、
図3(d)に示すように、樹脂封止工程において、
図3(c)に示す製造途中の半導体装置を金型内に載置し、モールド樹脂(モールド剤)を用いてトランスファーモールド(金型成型)することにより、半導体素子30をモールド樹脂40により封止する。次に、
図3(e)に示すように、マスクシート剥離工程において、マスクシート10をモールド樹脂40及びリードフレーム20から剥離することにより、複数のQFN50が配列されたQFNユニット60を形成することができる。最後に、
図3(f)に示すように、ダイシング工程において、QFNユニット60を各QFN50の外周に沿ってダイシングすることにより、複数のQFN50を製造することができる。
【0045】
また、本発明のマスクシートは次のような工程による半導体装置のマスクシートとしても適用できる。
本発明のマスクシートの接着剤層面を金属板に積層する。金属板としては、銅などの薄膜金属箔が挙げられる。その後、熱により接着剤層を硬化させる。次に、薄膜金属箔を所定のパターン状にエッチング等により形成する。薄膜金属箔をパターン状に形成後は、前述同様に、ダイアタッチ、ワイヤボンディング、モールド工程をへてマスクシートを除去して半導体装置を製造する。
従来のゴムとエポキシ樹脂を含有させた接着剤を用いたマスクシートの場合には、エッチングなどの工程時に使用するエッチング液による酸、アルカリに対して、膨潤などをおこしたりすることで、接着剤中に該薬液による不純物イオンの吸着が生じること、接着剤中にふくまれた不純物はモールド樹脂に接し、モールド樹脂部への移行などの問題や、薬液によりパターンの端部において接着剤と金属箔の界面に薬液がしみこみ、その結果モールドフラッシュなどの問題になる。また、粘着剤によるマスクシートであればエッチング液に耐えうるものではない。
そのような点において本発明のマスクシートであれば、不純物イオンの吸着も殆どなく、また金属箔パターンの端部での接着剤と金属箔の界面への薬液の侵入もなく、モールドフラッシュも発生しにくい。更にこのような工程による半導体装置は薄膜化などに適用されるものであり、金属箔の薄膜化も可能である。
【実施例】
【0046】
以下本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
具体的には、まず次のようにしてポリイミド樹脂を作製した。
【0047】
(合成例1)(エポキシ反応性なし)
撹拌機を備えたフラスコに、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.3g(52ミリモル)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン18.2g(48ミリモル)、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.2g(100ミリモル)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)300mlを氷温下導入し、1時間撹拌を続けた。次いで、得られた溶液を窒素雰囲気下、室温で3時間反応させてポリアミック酸を合成した。得られたポリアミック酸溶液に、トルエン50mlおよびp−トルエンスルホン酸1.0gを加え、160℃に加熱した。トルエンと共沸してきた水を分離しながら3時間イミド化反応を行った。トルエンを留去し、得られたポリイミドワニスをメタノール中に注ぎ、得られた沈殿を分離し、粉砕、洗浄、乾燥させる工程を経ることにより、ポリイミド樹脂54.3g(収率95%)を得た。このポリイミド樹脂について、赤外吸収スペトルを測定したところ、1718および1783cmに、典型的なイミドの吸収が認められた。また、このポリイミド樹脂について、その数平均分子量、ガラス転移温度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0048】
(合成例2)(エポキシ反応性有り)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン17.8g(43ミリモル)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン2.3g(9ミリモル)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン18.3g(48ミリモル)、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.22g(100ミリモル)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)300mlを用いて、合成例1と同様の方法で反応性のポリイミド樹脂62.5g(収率93%)を得た。このポリイミド樹脂について、その数平均分子量、ガラス転移温度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0049】
(合成例3)(エポキシ反応性なし)
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン26.1g(89ミリモル)、アミノプロピル末端ジメチルシロキサン8量体8.1g(11ミリモル)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物20.0g(100ミリモル)およびN−メチル−2−ピロリドン300mlを用いて、合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂47.1g(収率93%)を得た。このポリイミド樹脂について、その数平均分子量、ガラス転移温度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0050】
(合成例4)(エポキシ反応性あり)
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン23.6g(81ミリモル)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン2.1g(9ミリモル)、アミノプロピル末端ジメチルシロキサン8量体8.1g(10ミリモル)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物20.0g(100ミリモル)およびN−メチル−2−ピロリドン300mlを用いて、合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂45.6g(収率91%)を得た。このポリイミド樹脂について、その数平均分子量、ガラス転移温度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0051】
(合成例5)(エポキシ反応性なし)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン28.7g(70ミリモル)、アミノプロピル末端ジメチルシロキサン8量体23.1g(30ミリモル)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物35.8g(100ミリモル)およびN−メチル−2−ピロリドン300mlを用いて、合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂78.7g(収率97%)を得た。このポリイミド樹脂について、その数平均分子量、ガラス転移温度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0052】
(合成例6)(エポキシ反応性なし、シロキサン骨格なし)
4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン3.2g(10ミリモル)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン11.7g(40ミリモル)、4,4’−オキシジフタル酸無水物15.5g(50ミリモル)およびN−メチル−2−ピロリドン300mlを用いて、合成例1と同様の方法でポリイミド樹脂78.7g(収率97%)を得た。このポリイミド樹脂について、その数平均分子量、ガラス転移温度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
[実施例1〜7及び比較例1〜8]
次に、下記の表2及び表3の配合に基づいてポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、フッ素添加剤及び促進剤をメチルエチルケトン内で混合して、実施例1〜7及び比較例1〜8の接着剤を調製した。それらをポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製 商品名:カプトン100EN、厚さ25μm、ガラス転移温度300℃以上、熱膨張係数16ppm/℃)からなる基材層に乾燥後の厚さが5μmになるように、塗布し、100℃で5分間乾燥させ、本発明の接着剤層を具備するマスクシート及び比較用のマスクシートを作製した。
なお、表2及び表3における数値は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、フッ素添加剤及び促進剤における質量の配合率を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
[比較例9〜12]
比較例9、10、11及び12については、以下のように接着剤又は粘着剤を作製後、前記実施例1と同様にして比較用のマスクシートを作製した。
[比較例9]
次の化合物を混合、溶解するまで攪拌し、接着剤を調製した。
・アクリルニトリルブタジエンゴム 100質量部
(ゼオン社製、商品名:Nipol1072)
・オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂 50質量部
(日本化薬社製、商品名:EOCN1020)
・ノボラックフェノール樹脂 50質量部
(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)
・2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.5質量部
・メチルエチルケトン 800質量部
【0058】
[比較例10]
平均分子量が500,000のポリアルキルアルケニルシロキサンと白金触媒とを含有する溶液(TSR−1512、固形分濃度60質量%、GE東芝シリコーン社製)とポリアルキル水素シロキサン(CR−51、平均分子量1300、GE東芝シリコーン社製)とを質量比100:1で混合して、付加反応型のシリコーン系粘着剤を調製した。
【0059】
[比較例11]
合成例1に示すポリイミド樹脂のみを固形分が25質量%になるようにテトラヒドロフラン溶液に溶解して接着剤を調製した。
【0060】
[比較例12]
次の化合物を混合、溶解するまで攪拌し、接着剤を調製した。
・シリコーン主鎖エポキシ樹脂 50質量部
(信越化学工業社製 商品名:X−22−163、分子量約400)
・ノボラックフェノール樹脂 25質量部
(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)
・フッ素系レベリング剤 2質量部
(DIC社製 商品名:メガファック F−482)
・2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.1質量部
・メチルエチルケトン 800質量部
【0061】
<物性>
前記実施例1〜7及び比較例1〜12のマスクシートについて、接着剤層のガラス転移温度(Tg)、溶融粘度、粘度下限温度を測定し、その結果を表4及び表5に示した。
【0062】
<評価結果>
また、前記実施例1〜7及び比較例1〜12のマスクシートについて、次の特性を測定し、その結果を表4及び表5に示した。
なお、表5の評価結果における“−”は、下記の平坦性反り、貼り付け性又は泡試験のいずれかの評価結果が悪いため測定を中止したことを示す。
1.平坦性反り
保護フィルムがない状態で、幅方向に5cmで長さ20cmにカットし、接着剤層を上面にして、20〜25℃/45〜55%RHの環境で、平らな場所に20時間以上放置し幅方向の反りを両端の浮き量を測定し、その平均を反り量とした。実用上問題がない反りは2mm以下である。
【0063】
2.貼り付け性
銅板(古河製125μm 7025タイプ)に10mm幅のマスクシートを150℃の金属ロールにて0.5m/minにてラミネートした後、接着力を50mm/minの引張速度で90度剥離にて測定した。実用上5g/cm以上が問題ない接着力である。
【0064】
3.ダイアタッチ剤のキュア処理工程(D/A)におけるマスクシートと貼り付けられたフレーム間に発生する泡試験
前述の銅板に1cm幅のマスクシートを150℃の金属ロールにて0.5m/minの速度でラミネートして175℃まで30分間処理した後、更に175℃で1時間処理した場合の発泡を確認した。
【0065】
4.ワイヤボンディング性(W/B)
各実施例及び比較例において得られたマスクシートを、外寸200mm×60mmのQFN用リードフレーム(Au−Pd−NiメッキCuリードフレーム、4×16個(計64個)のマトリックス配列、パッケージサイズ10mm×10mm、84ピン)に加熱ラミネート法により貼着した。次いで、エポキシ系ダイアタッチ剤を用いてアルミニウムが蒸着されたダミーチップ(6mm×6mm、厚さ0.4mm)をリードフレームの半導体素子搭載部に搭載した。その後、プラズマクリーニングを実施しないで、ワイヤボンダー(新川社製、UTC−470BI)を用い、加熱温度を210℃、US powerを30、荷重を0.59N、処理時間を10msec/ピンとして、ダミーチップとリードとを金ワイヤにより電気的に接続した。得られた半導体装置64個を検査し、リード側接続不良が発生した半導体装置数を、ワイヤボンディング不良の発生個数として調べた。
【0066】
5.接着剤残り、モールドフラッシュ
外寸200mm×60mmのQFN用リードフレーム(Au−Pd−NiメッキCuリードフレーム、4×16個(計64個)のマトリックス配列、パッケージサイズ10mm×10mm、84ピン)にマスクシートを140℃のゴムロールにて、0.3m/minでラミネートした後チップ搭載模擬の条件として、175℃/1hの熱処理を行い、450W/60secのArプラズマ処理を行い、モールド封止する。その後、マスクシートを90度剥離、50mm/minで剥離し、接着剤残りの有無(モールド樹脂上へのマスクシートの接着剤の残り)とモールドフラッシュ(モールド樹脂漏れ)の有無を確認した。
接着剤残りについては、フレーム上、マスクシートの接着剤部と接するモールド樹脂上における接着剤残りについて、4倍の実体顕微鏡にて観察し、接着剤残りの有無を判定した。
モールドフラッシュについてもフレーム上へのモールド樹脂のしみだし(フラッシュ)の有無を4倍の実体顕微鏡にて観察し、有無を判定した。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
上記表4に記した評価結果の通り、実施例1〜7の本発明のマスクシートは、平坦性反りが2mm以下で平面性を有していた。また、貼り付け性は5g/cm以上あって低温でL/Fへのテーピングができる。また、泡試験においても発泡しないで、高温に暴露されても熱劣化がおきにくい。また、ワイヤボンディング性、接着剤残り及びモールドフラッシュの各試験においても優れていることが確認できた。
これに対して、表5における比較例のマスクシートにおいては、比較例1及び比較例11のマスクシートが平坦性反りが2mmを越えて大きく実用上問題を有するものであった。また、比較例1乃至3、比較例5、比較例7、比較例8、比較例11のマスクシートは、貼り付け性は5g/cmより小さいものであって実用上問題を有するものであった。また、比較例12のマスクシートは泡試験で発泡し、比較例2、比較例4、比較例6、比較例7乃至10のマスクシートは、ワイヤボンディング性、接着剤残り及びモールドフラッシュのいずれかの試験で実用上問題を有するものであった。
【0070】
[実施例8]
実施例1で得たマスクシートを三井金属社製の銅箔(商品名:FQ-VLP 18μm)に140℃で熱圧着した後、175℃で1時間の熱処理により接着剤層を硬化させた。次に、酸化第二鉄を用いた40ボーメのエッチング液を用いて銅箔層を
図1のようなQFN用リードフレームパターンになるようにエッチング処理した。その後、このマスクシートが貼着された銅箔製のQFN用リードフレームパターンに対して前記実施例1と同様にワイヤボンディング性(W/B)、接着剤残り及びモールドフラッシュの評価を行った。その結果、ワイヤボンディングに不良が発生しないで、接着剤残り及びモールドフラッシュも無いことが確認された。
これにより本発明のマスクシートは、銅などの薄膜金属箔に積層するこことが可能で、その後熱により接着剤を硬化させ、次に、薄膜金属箔を所定のパターン状にエッチングにより形成し、ダイアタッチ、ワイヤボンディング、モールド工程をへて半導体装置とする工程に適したものであることが確認された。
【0071】
[比較例13]
比較例9で得たマスクシートを三井金属社製の銅箔(商品名:FQ-VLP 18μm)に140℃で熱圧着した後、175℃で1時間の熱処理により接着剤層を硬化させた。次に、酸化第二鉄を用いた40ボーメのエッチング液を用いて銅箔層を
図1のようなQFN用リードフレームパターンになるようにエッチング処理した。その後、このマスクシートが貼着された銅箔製のQFN用リードフレームパターンに対して前記実施例1と同様にワイヤボンディング性(W/B)、接着剤残り及びモールドフラッシュの評価を行った。その結果、ワイヤボンディングの不良数が15発生し、接着剤残り及びモールドフラッシュも発生した。これは、エッチング液によって接着剤が膨潤などをおこしためと考えられる。