特許第5925575号(P5925575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925575
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/48 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   B60N2/48
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-97935(P2012-97935)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-224112(P2013-224112A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】宗村 望
(72)【発明者】
【氏名】永井 健介
(72)【発明者】
【氏名】久本 忠則
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−069286(JP,A)
【文献】 特開2009−189486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックの上端部に連結されるヘッドレストステーと、
前記ヘッドレストステーに支持されると共に、表面が表皮によって覆われたヘッドレストパッドと、
前記ヘッドレストパッド内に埋設され、前記ヘッドレストステーによって後方から支持されると共に、前面が前記表皮の前面部に沿った曲面状に形成され、前記前面と前記前面部との間に前記ヘッドレストパッドの一部が介在しており、前記前面に設定された支持面によって、車両の後面衝突時に乗員の頭部を後方から支持する内部構造物と、
前記ヘッドレストステーの一部が前方へ突出することにより構成され、前記支持面の上側又は下側に配置されると共に、前端部が前記支持面よりも前方へ突出しており、前記支持面に支持された頭部が前記支持面を支点として後傾又は前傾することを抑制する前方突出部と、
を備えたヘッドレスト装置。
【請求項2】
前記内部構造物は、硬質発泡ウレタンによって略ブロック状に形成されている請求項1に記載のヘッドレスト装置。
【請求項3】
前記前方突出部は、前記ヘッドレストステーの左右の脚部の上端部が前方へ向けて屈曲されて形成されており、前記内部構造物よりも上側に配置されている請求項1又は請求項2に記載のヘッドレスト装置。
【請求項4】
前記前方突出部は、前記ヘッドレストステーの左右の脚部の上下方向中間部に固定されており、前記支持面よりも下側に配置されている請求項1又は請求項2に記載のヘッドレスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたヘッドレストでは、ステーの上端側に硬質発泡ウレタン等からなる芯材が固定されている。この芯材の前面上部には前方へ突出した凸部が形成されており、前面下部には凹部が形成されている。この凹部の前方ではパッド部が最も厚くなっており、このパッド部が厚い部位において通常使用時における乗員の快適性を確保するようにしている。一方、後面衝突時には乗員の上半身が後方へ仰け反って上方へ移動することにより、乗員の頭部を芯材の凸部によって安定的に支持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4431449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如きヘッドレストでは、後面衝突時に乗員の頭部が硬質発泡ウレタン等からなる芯材に支持される構成であるため、芯材が頭部からの荷重によって弾性変形すること等により頭部が後傾又は前傾する(頸部を中心として頭部が後方又は前方へ回転する)可能性がある。頭部が傾く方向や強さは、後面衝突の衝突速度や車両用シートの違いによって異なるが、頭部が後傾又は前傾することにより、乗員の頸部には曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントの値は、頭部が後傾した場合と前傾した場合とで正負が逆になるが、その絶対値を小さくする(ゼロに近づける)ことにより、ヘッドレストによる頸部の保護性能を向上させることができる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の頸部の保護性能を向上させることができるヘッドレスト装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るヘッドレスト装置は、車両用シートのシートバックの上端部に連結されるヘッドレストステーと、前記ヘッドレストステーに支持されると共に、表面が表皮によって覆われたヘッドレストパッドと、前記ヘッドレストパッド内に埋設され、前記ヘッドレストステーによって後方から支持されると共に、前面が前記表皮の前面部に沿った曲面状に形成され、前記前面と前記前面部との間に前記ヘッドレストパッドの一部が介在しており、前記前面に設定された支持面によって、車両の後面衝突時に乗員の頭部を後方から支持する内部構造物と、前記ヘッドレストステーの一部が前方へ突出することにより構成され、前記支持面の上側又は下側に配置されると共に、前端部が前記支持面よりも前方へ突出しており、前記支持面に支持された頭部が前記支持面を支点として後傾又は前傾することを抑制する前方突出部と、を備えている。
【0007】
なお、請求項1に記載の前後上下の方向は、車両の前後上下の方向である。また、請求項1においては、ヘッドレストパッドの前面の中央部が、乗員の頭部の後面の中央部に対して後方から対向するように、シートバックに対するヘッドレストパッドの高さ、及びシートバックのリクライニング角度が調節されているものとする。これら点は、後で説明する請求項2においても同様である。
【0008】
請求項1に記載のヘッドレスト装置では、車両の後面衝突時には、乗員の頭部がヘッドレストパッドを介して内部構造物の支持面に支持される。この支持面の上側又は下側には、ヘッドレストステーの一部によって構成された前方突出部が配置されている。この前方突出部は、支持面に支持された頭部が支持面を支点として後傾又は前傾することを抑制する。従って、後面衝突の衝突速度や車両用シートの違いに応じて、前方突出部の前端部の位置を設定することにより、頭部が傾く方向や強さをコントロールすることができる。その結果、乗員の頸部に生じる曲げモーメントの絶対値を小さくすることができるので、頸部の保護性能を向上させることができる。
【0012】
しかも、このヘッドレスト装置では、ヘッドレストの前方突出部が、内部構造物の支持面の上側又は下側で前方へ突出しており、当該前方突出部の前端部が、支持面よりも前方へ突出している。これにより、乗員の頭部の後端部、すなわち頭部において最も後方へ突出した部分が支持面に支持された際には、頭部における後端部よりも上側の部分又は下側の部分に対して、前方突出部の前端部を近接して対向させることができる。その結果、頭部が支持面を支点として後傾又は前傾することを効果的に抑制することができる。
請求項2に記載の発明に係るヘッドレスト装置は、請求項1に記載のヘッドレスト装置において、前記内部構造物は、硬質発泡ウレタンによって略ブロック状に形成されている。
請求項3に記載の発明に係るヘッドレスト装置は、請求項1又は請求項2に記載のヘッドレスト装置において、前記前方突出部は、前記ヘッドレストステーの左右の脚部の上端部が前方へ向けて屈曲されて形成されており、前記内部構造物よりも上側に配置されている。
請求項4に記載の発明に係るヘッドレスト装置は、請求項1又は請求項2に記載のヘッドレスト装置において、前記前方突出部は、前記ヘッドレストステーの左右の脚部の上下方向中間部に固定されており、前記支持面よりも下側に配置されている。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係るヘッドレスト装置では、乗員の頸部の保護性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッドレスト装置及びその周辺部材の構成を示す縦断面図である。
図2】同ヘッドレスト装置のヘッドレストステーを示す斜視図である。
図3】乗員の頭部が内部構造物の支持面によって後方から支持された状態を示す図1に対応した縦断面図である。
図4】後面衝突の衝突速度と、乗員の頸部に生じる曲げモーメントMyとの関係を示す線図である。
図5】(A)は、乗員の頸部の曲げモーメントがマイナスになる状況を説明するための概念的な側面図であり、(B)は、乗員の頸部の曲げモーメントがプラスになる状況を説明するための概念的な側面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るヘッドレスト装置及びその周辺部材の構成を示す縦断面図である。
図7】乗員の頭部が内部構造物の支持面によって後方から支持された状態を示す図6に対応した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、図1図5を用いて、本発明の第1実施形態に係るヘッドレスト装置10について説明する。なお、各図に適宜記す矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左方向を示し、矢印RHは車両右方向を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態に係るヘッドレスト装置10は、車両用シート12のシートバック14の上端部に取り付けられており、骨格部材であるヘッドレストステー16と、クッション材であるヘッドレストパッド18と、意匠面を構成する表皮20と、衝撃吸収部材である内部構造物22とによって構成されている。
【0017】
なお、車両用シート12は、乗員24が前方を向いて着座するように図示しない車体床部に連結されており、車両用シート12における前後上下左右の方向は、車両の前後上下左右の方向と一致している。
【0018】
図2に示されるように、ヘッドレストステー16は、金属製のパイプ材等が曲げ加工されることにより形成されたものであり、前後方向から見て略逆U字状に形成されている。このヘッドレストステー16は、左右一対の脚部16Lと、左右の脚部16Lの上端部を左右方向に連結した連結部16Uとによって構成されている。左右の脚部16Lは、図1に示されるように、上下方向中央部付近が側面視で僅かに屈曲しており、当該屈曲部よりも上端側が上方側へ向かうに従い前方へ向かうように傾斜している。
【0019】
左右の脚部16Lの下端側(すなわちヘッドレストステー16の下端側)は、図1に示されるように、シートバック14の上端部に設けられたヘッドレストサポート26に連結されている。このヘッドレストサポート26は、シートバック14の骨格部材であるシートバックフレーム28の上端部に固定されたヘッドレストサポートブラケット30に装着されている。これにより、ヘッドレストステー16の下端側がヘッドレストサポート26及びヘッドレストサポートブラケット30を介してシートバックフレーム28の上端部に高さ調節可能に連結されている。
【0020】
一方、ヘッドレストパッド18は、発泡ウレタン等の発泡弾性材によって構成されており、当該ヘッドレストパッド18内にヘッドレストステー16の上端側が埋設されている。これにより、ヘッドレストパッド18がヘッドレストステー16に支持されている。このヘッドレストパッド18の表面は、布、皮革又は合成皮革などの材料によって袋状に縫製された表皮20によって覆われている。なお、本実施形態では、ヘッドレストパッド18の前面の中央部が、乗員24の頭部Hの後面の中央部に対して後方から対向するように、シートバック14に対するヘッドレストパッド18の高さ、及びシートバック14のリクライニング角度(図示しないシートクッションに対する傾斜角度)が調節されているものとする。
【0021】
ヘッドレストパッド18の内部には、内部構造物22が埋設されている。この内部構造物22は、硬質発泡ウレタン等の硬質材料によってヘッドレストパッド18よりも小さな略ブロック状に形成されている。この内部構造物22は、例えば後面側に形成された左右一対の縦溝に、ヘッドレストステー16の左右の脚部16Lが嵌合することにより、ヘッドレストステー16に取り付けられており、ヘッドレストステー16によって後方から支持されている。
【0022】
この内部構造物22の前面は、表皮20の前面部20Aに沿った曲面状に形成されており、内部構造物22の前面と前面部20Aとの間には、ヘッドレストパッド18の一部が略一定の厚さで介在している。また、この内部構造物22は、前面の上部側に設定された支持面22Aが、乗員24の頭部Hの重心Gと同等の高さに配置されている。この重心Gの高さは、乗員24の頭部Hの後端部、すなわち頭部Hにおいて最も後方へ突出した部分と略同等の高さとされている。
【0023】
このため、車両が後面衝突をした際には、図3に示されるように、後方へ慣性移動する乗員24の頭部Hからの荷重によってヘッドレストパッド18が潰されると共に、頭部Hの後端部が内部構造物22の支持面22Aによって後方から支持される(頭部Hが支持面22Aから前方への反力を受ける)ように構成されている。
【0024】
なお、本ヘッドレスト装置10が製造される際には、内部構造物22が取り付けられたヘッドレストステー16の上端側を表皮20内に挿入し、それらを図示しない成形型にセットした状態で、ヘッドレストパッド18の材料である発泡原料を表皮20内に注入して発泡膨張させることにより一体成形される。
【0025】
ここで、本実施形態では、上述のヘッドレストステー16は、左右の脚部16Lの上端部が前方へ向けて屈曲されている。これにより、ヘッドレストステー16の上端部に前方突出部17が形成されている。この前方突出部17は、左右の脚部16Lの上端部における屈曲部16Bよりも連結部16U側の部分と、連結部16Uとによって構成されており、平面視で後方が開放された略U字状に形成されている。この前方突出部17は、ヘッドレストステー16の一部によって構成されているため、ヘッドレストステー16と同じ剛体である。
【0026】
上述の前方突出部17は、内部構造物22よりも上側に配置されており、前方(前面部20A側)へ向けて突出している。この前方突出部17の前端部(連結部16U)は、支持面22Aの前端よりも僅かに前方へ突出している。この連結部16Uの位置は、前述の如く支持面22Aに支持された頭部Hに対して前端部が後方から対向する位置とされており、支持面22Aに支持された頭部Hが支持面22Aを支点として後傾することを抑制する位置とされている。以下、前方突出部17の位置(配置)の設定について詳細に説明する。
【0027】
[発明が解決しようとする課題]の欄で説明したように、後面衝突時に乗員24の頭部Hが後傾又は前傾することにより、乗員24の頸部Nには曲げモーメントMyが発生する。この曲げモーメントMyの値は、後面衝突の衝突速度や車両用シートの違いによって異なる。例えば、本実施形態における車両用シート12において、ヘッドレストステー16の上端部が前方へ向けて屈曲されておらず、前方突出部17が省略されている場合(以下、比較例という)には、曲げモーメントMyが図4に破線で示されるようになる。この図4に記された中速、低速、高速は、後面衝突の衝突速度の違いを示している。
【0028】
図4に示されるように、上記比較例では、曲げモーメントMyがマイナス側に偏っている。なお、図5(A)に示されるように、曲げモーメントMyがマイナスの場合、乗員24は、顎を上げる(突き出す)ようにして頭部Hを後傾させる。一方、図5(B)に示されるように、曲げモーメントMyがプラスの場合、乗員24は顎を引くようにして頭部Hを前傾させる。
【0029】
つまり、上記比較例では、中速、低速、高速の何れの衝突速度においても、乗員24が顎を上げるようにして頭部Hを後傾させる傾向にある。また、図4に示されるように、上記比較例では、曲げモーメントMyの値が中速、低速、高速の順で増加する傾向にある。この曲げモーメントMyは、ゼロに近いほど頸部Nの保護性能を向上させることができる。
【0030】
本実施形態に係る車両用シート12では、上記衝突3波形の何れの場合においても、曲げモーメントMyをゼロに近づけることを目的として、前方突出部17の位置が設定されている。例えば、前方突出部17の上下方向の位置は、乗員24の頭部Hの重心Gよりも数十mm程度高い位置に設定されている。また、前方突出部17の前端の前後方向の位置は、内部構造物22の支持面22Aの前端よりも数mm程度前方に突出した位置に設定されている(図1の矢印P参照)。但し、乗員24の頭部Hが内部構造物22の支持面22Aに支持された時点(図3図示状態)では、前方突出部17の前端部が頭部Hから数mm程度離れて配置されるように構成されている。
【0031】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
上記構成のヘッドレスト装置10では、車両の後面衝突時には、後方へ慣性移動する乗員24の頭部Hからの荷重によってヘッドレストパッド18が潰されて、頭部Hが内部構造物22の支持面22Aによって後方から支持される。この支持面22Aの上側には、ヘッドレストステー16に上端部に設けられた前方突出部17が配置されており、当該前方突出部17の前端部が頭部Hに対して後方から対向する。このため、支持面22Aに支持された頭部Hが支持面22Aを支点として後傾しようとした際には、頭部Hの重心Gよりも上側が前方突出部17によって支持されることにより、頭部Hの後傾が抑制される。
【0033】
しかも、本実施形態では、ヘッドレストステー16の前方突出部17の前端部が、支持面22Aよりも前方へ突出している。これにより、頭部Hの後端部が支持面22Aに支持された際には、図3に示される如く、頭部Hにおける後端部よりも上側の部分に対して前方突出部17の前端部を近接して対向させることができる。その結果、支持面22Aを支点とする頭部Hの後傾を効果的に抑制することができる。
【0034】
このように、本実施形態では、頭部Hが支持面22Aを支点として後傾することを抑制できるので、図4に実線で示される如く、中速、低速、高速の全ての衝突速度において、曲げモーメントMyをゼロに近づけることができる。その結果、頸部Nの保護性能を向上させることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、曲げモーメントMyがマイナス側に偏る傾向にある比較例(車両用シート)に対して本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明によれば、後面衝突の衝突速度や車両用シートの違いに応じて、前方突出部の前端部の位置を設定することにより、頭部が傾く方向や強さをコントロールすることができる。
【0036】
以下の第2実施形態では、曲げモーメントMyがプラス側に偏る傾向にある車両用シート(すなわち後面衝突時に乗員が顎を引くようにして頭部を前傾させる傾向にある車両用シート)に対して本発明を適用した場合について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0037】
<第2の実施形態>
図6には、本発明の第2の実施形態に係るヘッドレスト装置50及びその周辺部材の構成が車幅方向外側から見た縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態におけるヘッドレストステー16’では、前記第1実施形態に係る前方突出部17が省略されている。つまり、このヘッドレストステー16’の上端部は、前方へ向けて屈曲されておらず、連結部16Uが内部構造物22の上端部の後方に位置している。
【0038】
また、このヘッドレストステー16’では、左右の脚部16Lの上下方向中間部には、ヘッドレストステー16’の一部を構成する前方突出部52が固定されている。この前方突出部52は、金属製のパイプ材等が曲げ加工されることにより形成されたものであり、左右の脚部16Lの上下方向中間部から前方へ向けて延びる左右一対の前延部52Aと、左右の前延部52Aの前端部を左右方向に連結した連結部52Bとによって構成されている。左右の前延部52Aの後端部は、下側へ向けて屈曲されると共に、溶接等の手段によって左右の脚部16Lの上下方向中間部に接合されている。これにより、前方突出部52と左右の脚部16Lとが一体化されている。また、連結部52Bすなわち前方突出部52の前端部は、内部構造物22の支持面22Aよりも下側(すなわち頭部Hの重心Gよりも下側)において、内部構造物22の前面に沿って左右方向に延在しており、支持面22Aよりも前方へ僅かに(例えば数mm程度)突出している(図6の矢印P参照)。
【0039】
この実施形態では、車両の後面衝突時には、図7に示されるように、後方へ慣性移動する乗員24の頭部Hからの荷重によってヘッドレストパッド18が潰されて、頭部Hが内部構造物22の支持面22Aによって後方から支持される。この支持面22Aの下側には、ヘッドレストステー16’の上下方向中間部に設けられた前方突出部52が配置されており、当該前方突出部52の前端部が頭部Hに対して後方から対向する。このため、支持面22Aに支持された頭部Hが支持面22Aを支点として前傾しようとした際には、頭部Hの重心Gよりも下側が前方突出部52によって支持されることにより、頭部Hの前傾が抑制される。
【0040】
しかも、本実施形態では、ヘッドレストステー16’の前方突出部52の前端部が、支持面22Aよりも前方へ突出している。これにより、頭部Hの後端部が支持面22Aに支持された際には、図7に示される如く、頭部Hにおける後端部よりも下側の部分に対して前方突出部52の前端部を近接して対向させることができる。その結果、支持面22Aを支点とする頭部Hの前傾を効果的に抑制することができる。
【0041】
このように、本実施形態では、頭部Hが支持面22Aを支点として前傾することを抑制できるので、中速、低速、高速の全ての衝突速度において、曲げモーメントMyをゼロに近づけることが可能になる。その結果、頸部Nの保護性能を向上させることができる。
【0043】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
10 ヘッドレスト装置
12 車両用シート
14 シートバック
16 ヘッドレストステー
17 前方突出部
18 ヘッドレストパッド
22 内部構造物
22A 支持面
50 ヘッドレスト装置
52 前方突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7