(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発泡ゴム部材の製造方法であって、未発泡、未架橋のゴム組成物から、前記発泡ゴム部材の前駆体を成形する成形工程、および前記前駆体を、加硫缶内で、加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡させるとともに架橋させる発泡・架橋工程を含み、前記発泡・架橋工程は、
前記加硫缶内の温度を、前記前駆体の発泡開始温度未満の一定温度まで昇温させたのち、前記温度で一定時間保持する第一段階、
前記加硫缶内の温度を、前記前駆体の発泡開始温度近傍の一定温度まで昇温させたのち、前記温度で一定時間保持して前記前駆体を発泡させるとともに架橋させる第二段階、および
前記発泡後、前記加硫缶内の温度を前記第二段階より高い一定温度までさらに昇温させたのち、前記温度で一定時間保持して前記前駆体をさらに架橋させる第三段階
を、前記加硫缶内で、前記第一段階における昇温時間を前記第二段階における昇温時間以上に設定して、連続して実施することを特徴とする発泡ゴム部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《発泡ゴム部材の製造方法》
本発明の発泡ゴム部材の製造方法は、従来同様に、未発泡、未架橋のゴム組成物から前記発泡ゴム部材の前駆体を成形する成形工程、および前記前駆体を、加硫缶内で加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡させるとともに架橋させる発泡・架橋工程を備えている。
〈成形工程〉
前記のうち成形工程では、発泡ゴム部材のもとになる未発泡、未架橋のゴム組成物を、従来同様に、押出成形法等の任意の成形法によって成形して、所定の発泡ゴム部材に対応した立体形状を有する前駆体を作製する。
【0023】
〈発泡・架橋工程〉
図1は、前記本発明の発泡ゴム部材の製造方法のうち発泡・架橋工程における、加硫缶内の圧力および温度の変化を示すグラフである。
図1を参照して、かかる発泡・架橋工程では、加硫缶内で下記の三つの段階を連続して実施することにより、前記前駆体を発泡させるとともに架橋させて、発泡ゴム部材を製造する。
【0024】
(第一段階)
まず前記成形工程で成形した発泡ゴム部材の前駆体を、従来同様の加硫缶内に収容し、密閉した状態で、当該加硫缶内に加圧水蒸気を導入して、導入開始のt
0の時点からt
1の時点までの間に、その内部圧力をP
0からP
1まで上昇させる。そうすると加硫缶内の温度は、温度T
0から、前記圧力(飽和水蒸気圧)P
1に見合う温度T
1まで上昇する。
【0025】
次いで、加硫缶内の温度が前記T
1に達したt
1の時点で、前記加硫缶内に導入する加圧水蒸気量を調整して前記圧力P
1を維持し、それによって加硫缶内の温度を、前記t
1の時点からt
2の時点までの間の一定時間に亘って前記T
1に保持する。
前記温度T
1は、前記前駆体の発泡開始温度未満の一定値に設定する。これにより、例えば季節の変化による外気温の変動等の外部要因の影響を極力排除して、次の第二段階での昇温開始時の条件、すなわち温度、圧力のばらつきを小さくすることができる。
【0026】
前記温度T
1は、発泡ゴム部材の前駆体の発泡開始温度に応じて、当該発泡開始温度未満の任意の値に設定することができる。
例えば前駆体の発泡開始温度が138℃以上、141℃以下程度である場合、温度T
1は、これに限定されないが、例えば80℃以上であるのが好ましく、110℃以下であるのが好ましい。
【0027】
温度T
1が80℃未満では、かかる第一段階を設けることによる、外気温の変動等の外部要因の影響を排除して、第二段階での昇温開始時の条件、すなわち温度、圧力のばらつきを小さくする効果が十分に得られないおそれがある。
一方、温度T
1が110℃を超える場合には、当該第一段階において架橋反応が進行してしまい、前駆体中で、発泡剤の発泡によって発生したガスによる気泡壁が十分に形成されなくなって、前記前駆体を所定の寸法まで十分に発泡できなかったり、所定の寸法まで発泡できたとしても、発泡ゴム部材が所定の硬さより硬くなったりするおそれがある。
【0028】
また、前記温度T
1を維持するt
1からt
2までの間の保持時間t
1−2は、後述する第二段階で温度T
2を維持するt
3からt
4までの間の保持時間t
3−4以下、つまりt
1−2≦t
3−4に設定するのが好ましい。
保持時間t
1−2が保持時間t
3−4よりも長い、すなわちt
1−2>t
3−4では、第一段階において架橋反応が進行してしまい、前駆体中で、発泡剤の発泡によって発生したガスによる気泡壁が十分に形成されなくなって、前記前駆体を所定の寸法まで十分に発泡できなかったり、所定の寸法まで発泡できたとしても、発泡ゴム部材が所定の硬さより硬くなったりするおそれがある。また、発泡・架橋工程に要するトータルの時間が長くなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれもある。
【0029】
なお保持時間t
1−2は、前記範囲内でも、保持時間t
3−4の0.5倍以上に設定するのが好ましい。
保持時間t
1−2が保持時間t
3−4の0.5倍未満では、第一段階を設けることによる、外気温の変動等の外部要因の影響を排除して、第二段階での昇温開始時の条件、すなわち温度、圧力のばらつきを小さくする効果が十分に得られないおそれがある。
【0030】
また、加硫缶内の温度を温度T
0から温度T
1まで昇温する間の、t
0からt
1までの間の昇温時間t
0−1は、後述する第二段階で温度T
1から温度T
2まで昇温する間のt
2からt
3までの間の昇温時間t
2−3以上、つまりt
0−1≧t
2−3に設定する
必要がある。
昇温時間t
0−1が昇温時間t
2−3よりも短い、すなわちt
0−1<t
2−3では、前記第一段階での昇温の温度勾配が大きくなりすぎて、急激な温度上昇により、第一段階において架橋反応が先行してしまい、前駆体中で、発泡剤の発泡によって発生したガスによる気泡壁が十分に形成されなくなって、前記前駆体を所定の寸法まで十分に発泡できなかったり、所定の寸法まで発泡できたとしても、発泡ゴム部材が所定の硬さより硬くなったりするおそれがある。
【0031】
なお昇温時間t
0−1は、前記範囲内でも、昇温時間t
2−3の2倍以下、特に5/3倍程度に設定するのが好ましい。
昇温時間t
0−1が昇温時間t
2−3の2倍を超える場合には、発泡・架橋工程に要するトータルの時間が長くなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれがある。
(第二段階)
次に、前記t
2の時点で、加硫缶内に導入する加圧水蒸気量を調整して、その内部圧力をP
1からP
2まで上昇させる。そうすると加硫缶内の温度は、前記T
1から、前記圧力(飽和水蒸気圧)P
2に見合う温度T
2まで上昇する。
【0032】
次いで、加硫缶内の温度が前記T
2に達したt
3の時点で、前記加硫缶内に導入する加圧水蒸気量を調整して前記圧力P
2を維持し、それによって加硫缶内の温度を、前記t
3の時点からt
4の時点までの間の一定時間に亘って前記T
2に保持する。
前記温度T
2は、前記前駆体の発泡開始温度近傍の一定値に設定する。そうすると、前駆体が発泡剤によって発泡するとともに架橋剤によって架橋される。
【0033】
前記温度T
2は、前駆体の発泡開始温度に応じて、当該発泡開始温度近傍の任意の値に設定することができる。
例えば前駆体の発泡開始温度が138℃以上、141℃以下程度である場合、温度T
2は、これに限定されないが、例えば138℃以上、148℃以下の範囲内であるのが好ましい。
【0034】
温度T
2が前記範囲未満では、前駆体を十分に発泡させたり架橋させたりできないおそれがあり、逆に前記範囲を超える場合には、架橋が過剰に進行して、発泡ゴム部材が所定の硬さより硬くなるおそれがある。
なお前記温度T
2は、前記範囲内でも高いほど好ましく、特に143℃以上であるのが好ましい。温度T
2がかかる範囲内であるとき、前駆体の発泡、および架橋の進行度合いのバランスをよりマッチさせて、発泡ゴム部材の物性、特に硬さの、バッチごとのばらつきをさらに小さくし、当該発泡ゴム部材の硬さ等の物性をより一層良好に安定させることが可能となる。
【0035】
また、前記温度T
2を維持するt
3からt
4までの間の保持時間t
3−4は、これに限定されないが、例えば7分間以上、特に8分間以上であるのが好ましく、13分間以下、特に12分間以下であるのが好ましい。
保持時間t
3−4が前記範囲未満では、前駆体を十分に発泡させたり架橋させたりできないおそれがある。
【0036】
また、保持時間t
3−4が前記範囲を超える場合には、架橋が過剰に進行して、発泡ゴム部材が所定の硬さより硬くなるおそれがある。また、発泡・架橋工程に要するトータルの時間が長くなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれがある。
さらに、加硫缶内の温度を前記温度T
1から温度T
2まで昇温する間のt
2からt
3までの間の昇温時間t
2−3は、前記両温度間の温度差によっても異なるが、温度T
1、T
2がそれぞれ前述した好適な範囲内であるとき、例えば1分間以上、特に2分間以上であるのが好ましく、5分間以下、特に4分間以下であるのが好ましい。
【0037】
昇温時間t
2−3が前記範囲未満では、急激な温度上昇によって架橋が過剰に進行して、発泡ゴム部材が所定の硬さより硬くなるおそれがある。
また、昇温時間t
2−3が前記範囲を超える場合には、発泡・架橋工程に要するトータルの時間が長くなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれがある。
(第三段階)
次に、発泡剤による発泡が終息した前記t
4の時点で、加硫缶内に導入する加圧水蒸気量を調整して、その内部圧力をP
2からP
3まで上昇させる。そうすると加硫缶内の温度は、前記T
2から、前記圧力(飽和水蒸気圧)P
3に見合う温度T
3まで上昇する。
【0038】
次いで、加硫缶内の温度が前記T
3に達したt
5の時点で、前記加硫缶内に導入する加圧水蒸気量を調整して前記圧力P
3を維持し、それによって加硫缶内の温度を、前記t
5の時点からt
6の時点までの間の一定時間に亘って前記T
3に保持する。
前記温度T
3は、温度T
2以上の一定値に設定する。これにより、前駆体の架橋をほぼ完結できる。
【0039】
前記温度T
3は、温度T
2以上の任意の値に設定できる。
例えば温度T
2が前記のように138℃以上、148℃以下の範囲内であるとき、温度T
3は、これに限定されないが、例えば155℃以上であるのが好ましく、165℃以下であるのが好ましい。
温度T
3が前記範囲未満では、前駆体の架橋を完結させるのに長時間を要し、発泡・架橋工程に要するトータルの時間が長くなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれがある。
【0040】
また、温度T
3が前記範囲を超える場合には、発泡・架橋工程に要するトータルのエネルギー量が大きくなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれがある。
前記温度T
3を維持するt
5からt
6までの間の保持時間t
5−6は、これに限定されないが、例えば15分間以上、特に18分間以上であるのが好ましく、25分間以下、特に22分間以下であるのが好ましい。
【0041】
保持時間t
5−6が前記範囲未満では、前駆体の架橋を十分に完結できないおそれがある。
また、保持時間t
5−6が前記範囲を超える場合には、発泡・架橋工程に要するトータルの時間が長くなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれがある。
さらに、加硫缶内の温度を前記温度T
2から温度T
3まで昇温する間のt
4からt
5までの間の昇温時間t
4−5は、前記両温度間の温度差によっても異なるが、温度T
2、T
3がそれぞれ前述した好適な範囲内であるとき、例えば1分間以上、特に2分間以上であるのが好ましく、5分間以下、特に4分間以下であるのが好ましい。
【0042】
昇温時間t
4−5が前記範囲未満では、急激な温度上昇によって架橋が過剰に進行して、発泡ゴム部材が所定の硬さより硬くなるおそれがある。
また、昇温時間t
4−5が前記範囲を超える場合には、発泡・架橋工程に要するトータルの時間が長くなりすぎて、発泡ゴム部材の生産性が低下するおそれがある。
加硫缶内の温度を前記温度T
3に維持してt
6の時点に達したあとは、加硫缶内に導入する加圧水蒸気量を調整して、その内部圧力をP
3から徐々に低下させ、加硫缶内の温度を低下させる。
【0043】
そして圧力がP
4まで低下したt
7の時点で加圧水蒸気の導入を停止し、自然放冷により室温まで冷却して、発泡、架橋された前記前駆体を加硫缶内から取り出し、必要に応じてその表面を研磨等することにより、発泡ゴム部材が得られる。
前記冷却時のt6からt7までの間の降温時間t
6−7、および加圧水蒸気の導入を停止する圧力P
4等は任意に設定することができる。
【0044】
前記本発明の製造方法によれば、発泡・架橋工程に、前記第一段階の、前駆体の発泡開始温度未満での加熱工程を加えることにより、先に説明したように、外気温の変動等の外部要因による物性、特に硬さの、バッチごとのばらつきを抑制して、常に安定した物性を有する発泡ゴム部材を製造することが可能となる。
前記本発明の製造方法によれば、特に硬さ等の物性が、バッチごとに厳密に安定していることが求められる、前記電子写真法を利用した画像形成装置の、転写ローラのローラ本体を、好適に製造することができる。
【0045】
《転写ローラ》
図2は、前記本発明の製造方法によって製造された発泡ゴム部材としてのローラ本体を備えた、転写ローラの一例を示す斜視図である。
図2を参照して、この例の転写ローラ1は、前記ローラ本体2と、前記ローラ本体2の中心の通孔3に挿通されたシャフト4とを備えている。
【0046】
前記シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されている。
前記ローラ本体2とシャフト4とは、例えば導電性を有する接着剤等によって電気的に接合されるとともに機械的に固定され、一体化されて転写ローラ1が構成される。
発泡ゴム部材としての前記ローラ本体2は、発泡性、架橋性を有する未発泡、未架橋の導電性ゴム組成物を調製し、当該導電性ゴム組成物を筒状に押出成形して前駆体を作製し、次いで前記前駆体の通孔3に架橋用の仮のシャフトを挿通した状態で加硫缶内にセットして、当該加硫缶内で、前記三段階の加熱を経て前記前駆体を発泡、および架橋させたのち、所定の長さにカットし、さらに必要に応じて外周面5を研磨する等して所定の外径および表面粗さに仕上げることによって製造される。
【0047】
前記ローラ本体2のもとになる導電性ゴム組成物としては、転写ローラ1に求められる仕様に応じた任意の組成を有する組成物を用いることができる。
特に導電性付与剤として、ゴム分を兼ねるイオン導電性ゴムを用いてイオン導電性を付与した導電性ゴム組成物が好ましい。
《導電性ゴム組成物》
〈イオン導電性ゴム〉
ゴム分としては、前記イオン導電性ゴムと架橋性ゴムとを併用するのが好ましい。
【0048】
このうちイオン導電性ゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0049】
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、前記例示の中でもエチレンオキサイドを含む共重合体、特にECO、および/またはGECOが好ましい。
かかる両共重合体においてエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは転写ローラ1のローラ抵抗値を下げる働きをする。しかしエチレンオキサイド含量が前記範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、転写ローラ1のローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0050】
一方、エチレンオキサイド含量が前記範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に転写ローラ1のローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また、架橋後のローラ本体2の硬度が上昇したり、架橋前の導電性ゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇したりするおそれもある。
ECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、前記エチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
【0051】
またGECOにおけるアリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に5モル%以下であるのが好ましい。
前記アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、転写ローラ1のローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかしアリルグリシジルエーテル含量が前記範囲未満では、かかる働きが得られないため、転写ローラ1のローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0052】
一方、アリルグリシジルエーテルは、GECOの架橋時に架橋点として機能するため、アリルグリシジルエーテル含量が前記範囲を超える場合には、前記GECOの架橋密度が高くなり、分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、却って転写ローラ1のローラ抵抗値が上昇する傾向がある。またローラ本体2の引張強度や疲労特性、耐屈曲性等が低下するおそれもある。
【0053】
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、前記エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
GECOとしては、前記3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではいずれのGECOも使用可能である。
【0054】
エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の5質量部以上、特に10質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、特に30質量部以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、ローラ本体2に良好なイオン導電性を付与できないおそれがある。
【0055】
一方、前記範囲を超える場合には、相対的に架橋性ゴムの配合割合が少なくなって、後述する各種架橋性ゴムを配合することによる効果が十分に得られないおそれがある。
〈架橋性ゴム〉
架橋性ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の1種または2種以上が挙げられる。これらのゴムは良好な架橋性を有する上、架橋後のローラ本体2に良好なゴム弾性や柔軟性を付与する働きをする。
【0056】
また、架橋性ゴムとしてさらにエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を配合すると、ローラ本体2の、画像形成装置内で発生するオゾンに対する耐性を向上することができる。
(SBR)
SBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRがいずれも使用可能である。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
【0057】
さらにSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがいずれも使用可能である。スチレン含量や架橋度を変更することで、ローラ本体の各種物性を調整することができる。
これらSBRの1種または2種以上を使用することができる。
(NBR)
NBRとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。これらNBRの1種または2種以上を使用することができる。
【0058】
さらにSBRとNBRを併用することもできる。
SBR、および/またはNBRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の40質量部以上、特に60質量部以上であるのが好ましく、90質量部以下、特に80質量部以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、SBR、および/またはNBRを用いることによる、先に説明した、導電性ゴム組成物に良好な架橋性を付与する効果や、架橋後のローラ本体2に良好なゴム弾性や柔軟性を付与する効果が十分に得られないおそれがある。
【0059】
一方、前記範囲を超える場合には、相対的にEPDMの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好なオゾン耐性を付与できないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、ローラ本体2に良好なイオン導電性を付与できないおそれもある。
なお前記配合割合は、SBRとして油展タイプのものを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の配合割合である。またSBRとNBRを併用する場合は、その合計の配合割合である。
(EPDM)
EPDMとしては、エチレンとプロピレンに少量の第3成分(ジエン分)を加えることで主鎖中に二重結合を導入した種々のEPDMが、いずれも使用可能である。前記EPDMとしては、前記第3成分の種類や量の違いによる様々な製品が提供されている。代表的な第3成分としては、例えばエチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。重合触媒としてはチーグラー触媒を使用するのが一般的である。
【0060】
EPDMの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、ローラ本体2に良好なオゾン耐性を付与できないおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、相対的にSBR、および/またはNBRの配合割合が少なくなって、これらのゴムを配合することによる、前記導電性ゴム組成物からなるローラ本体2のもとになる前駆体に、良好な架橋性を付与する効果や、架橋後のローラ本体2に良好なゴム弾性や柔軟性を付与する効果が十分に得られないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの配合割合が少なくなって、ローラ本体に良好なイオン導電性を付与できないおそれもある。
【0061】
(その他のゴム)
ゴム分として、さらにクロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM)等の極性ゴムを配合して、転写ローラ1のローラ抵抗値を微調整することもできる。
〈発泡剤〉
発泡剤としては、加熱により気体を発生して前駆体を発泡させることができる種々の発泡剤がいずれも使用可能である。
【0062】
かかる発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(H
2NOCN=NCONH
2、ADCA)、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等の1種または2種以上が挙げられる。
前記発泡剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1質量部以上、特に2質量部以上であるのが好ましく、8質量部以下、特に6質量部以下であるのが好ましい。
【0063】
配合割合が前記範囲未満では、前駆体を良好に発泡できないおそれがある。一方、前記範囲を超える場合には、過剰に発泡して前駆体の外周面および内周面の断面形状がきれいな円形にならかったり、内径の寸法が不均一になったり、セルの分布が不均一で硬さや導電性にムラを生じたりするおそれがある。
前記発泡剤の分解温度を低下させて、その発泡を補助する発泡助剤を配合してもよい。前記発泡助剤としては尿素が好適に使用される。
【0064】
発泡助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1質量部以上、特に2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に3質量部以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、当該発泡助剤による、発泡剤の発泡を助ける効果が十分に得られず、前駆体を良好に発泡できないおそれがある。一方、前記範囲を超える場合には、発泡剤の発泡温度が低くなりすぎて、極めて短時間で発泡が進行するため、過剰に発泡して前駆体の外周面および内周面の断面形状がきれいな円形にならかったり、内径の寸法が不均一になったり、セルの分布が不均一で硬さや導電性にムラを生じたりするおそれがある。
【0065】
〈架橋剤成分〉
導電性ゴム組成物には、ゴム分を架橋させるための架橋剤成分を配合する。前記架橋剤成分としては、架橋剤、促進剤等が挙げられる。
このうち架橋剤としては、例えば硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。中でも硫黄系架橋剤が好ましい。
【0066】
また硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄や有機含硫黄化合物等が挙げられる。このうち有機含硫黄化合物等としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等が挙げられる。特に粉末硫黄等の硫黄が好ましい。
硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に3質量部以下であるのが好ましい。
【0067】
配合割合が前記範囲未満では、導電性ゴム組成物からなる前駆体の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなってローラ本体の生産性が低下するおそれがある。また前記範囲を超える場合には、架橋後のローラ本体の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄がローラ本体の外周面にブルームしたりするおそれがある。
促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0068】
また有機促進剤としては、例えばジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系促進剤;N−シクロへキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤;テトラメテルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤;チオウレア系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0069】
促進剤としては、前記種々の促進剤の中から、組み合わせる架橋剤の種類に応じて、最適な促進剤の1種または2種以上を選択して使用すればよい。例えば架橋剤として硫黄を使用する場合は、促進剤としてチウラム系促進剤、および/またはチアゾール系促進剤を選択して使用するのが好ましい。
また促進剤は、種類によって架橋促進のメカニズムが異なるため、2種以上を併用するのが好ましい。併用する個々の促進剤の配合割合は任意に設定することができるが、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
【0070】
架橋剤成分としては、さらに促進助剤を配合してもよい。
促進助剤としては、例えば亜鉛華等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
促進助剤の配合割合は、ゴム分の種類および組み合わせや、架橋剤、促進剤の種類および組み合わせ等に応じて適宜設定することができる。
【0071】
(その他)
導電性ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。前記添加剤としては、例えば受酸剤、可塑成分(可塑剤、加工助剤等)、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0072】
このうち受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムから発生する塩素系ガスの、ローラ本体内への残留と、それによる架橋阻害や感光体の汚染等を防止するために機能する。
前記受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0073】
また、前記ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に3質量部以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、受酸剤を含有させることによる前記効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、架橋後のローラ本体の硬さが上昇するおそれがある。
【0074】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤や、極性ワックス等の各種ワックス等が挙げられる。また加工助剤としてはステアリン酸等の脂肪酸などが挙げられる。
これら可塑成分の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以下であるのが好ましい。例えば画像形成装置への装着時や運転時に感光体の汚染を生じたりするのを防止するためである。かかる目的に鑑みると、可塑成分としては極性ワックスを使用するのが特に好ましい。
【0075】
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち酸化防止剤は、転写ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。前記酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
【0076】
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
充填剤を配合することにより、ローラ本体の機械的強度等を向上できる。
また充填剤として導電性カーボンブラックを用いて、ローラ本体に電子導電性を付与することもできる。
【0077】
充填剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、50質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
【0078】
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
前記共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、ジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0079】
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) 前記(a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) 前記(a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0080】
また前記(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
前記モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0081】
前記各成分を含む導電性ゴム組成物は、従来同様に調製することができる。まず前記ゴム分を所定の割合で配合して素練りし、次いで発泡剤成分、架橋剤成分以外の添加剤を加えて混練した後、最後に発泡剤成分、架橋剤成分を加えて混練することで導電性ゴム組成物が得られる。前記混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
【実施例】
【0082】
《実施例1》
〈導電性ゴム組成物の調製〉
ゴム分としてはNBR〔JSR(株)製のJSR N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:20%〕71質量部、およびECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕23質量部を配合した。
【0083】
そして前記ゴム分に、下記表1に示す各成分を配合し、密閉式混練機を用いて80℃で3〜5分間混練して導電性ゴム組成物を調製した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1中の各成分は下記のとおり。
発泡剤マスターバッチ:前記と同じNBR6質量部に、発泡剤としてのADCA系発泡剤〔永和化成工業(株)製の商品名ビニホールAC#3〕4質量部を配合し、混練したもの。
発泡助剤:尿素系発泡助剤〔永和化成工業(株)製の商品名セルペースト101〕
充填剤A:カーボンブラックHAF〔東海カーボン(株)製のSEAST(シースト、登録商標)3〕
充填剤B:重質炭酸カルシウム〔白石カルシウム(株)製のホワイトン(登録商標)BF−300〕
受酸剤:ハイロドタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A−2〕
架橋剤:200メッシュ5%油入硫黄
促進剤TS:テトラメチルチウラムジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)TS〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM〕
促進助剤(1):ステアリン酸
促進助剤(2):酸化亜鉛2種
老化防止剤:ニッケル ジブチルジチオカーバメート〔川口化学工業(株)製のAntage(アンテーヂ、登録商標)NBC〕
〈ローラ本体の製造〉
前記導電性ゴム組成物をφ90の押出成形機に供給して外径約φ14.9mm、内径約φ4.7mmの円筒状に押出成形した後、約257mmに定寸カットして、ローラ本体のもとになる前駆体とし、その中心の通孔に外径φ3mmの架橋用の仮のシャフトを挿通して加硫缶内に収容した。
【0086】
次いで、前記加硫缶内に加圧水蒸気を導入して、
図1に示す第一段階ないし第三段階の三段階の加熱加圧をして、前記前駆体を発泡させるとともに架橋させた。なお発泡温度は138〜141℃とした。加熱加圧条件は下記のとおり。
(第一段階)
昇温時間t
0−1:5分間
保持時間t
1−2:10分間
保持温度T
1:100℃
(第二段階)
昇温時間t
2−3:3分間
保持時間t
3−4:10分間
保持温度T
2:140℃
(第三段階)
昇温時間t
4−5:3分間
保持時間t
5−6:20分間
保持温度T
3:160℃
降温時間t
6−7:5分間
〈転写ローラの作製〉
発泡および架橋させた前駆体の中心の通孔に、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ8.0mmの金属(SUM−24L)製のシャフトを圧入し、熱風オーブン中で160℃×60分間加熱して前記熱硬化性接着剤を硬化(二次架橋)させることにより、前記前駆体とシャフトとを電気的に接合すると共に機械的に固定した。
【0087】
次いで、円筒研削盤を用いて、前記前駆体の外周面をトラバース研削することで、その外径をφ16.33±0.15mmに仕上げるとともに両端をカットしてローラ本体を製造し、導電性ローラを作製した。
《実施例2》
加硫缶内での三段階の加熱加圧条件を、下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体を製造し、転写ローラを作製した。
【0088】
(第一段階)
昇温時間t
0−1:5分間
保持時間t
1−2:10分間
保持温度T
1:80℃
(第二段階)
昇温時間t
2−3:3分間
保持時間t
3−4:10分間
保持温度T
2:140℃
(第三段階)
昇温時間t
4−5:3分間
保持時間t
5−6:20分間
保持温度T
3:160℃
降温時間t
6−7:5分間
《実施例3》
加硫缶内での三段階の加熱加圧条件を、下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体を製造し、転写ローラを作製した。
【0089】
(第一段階)
昇温時間t
0−1:5分間
保持時間t
1−2:10分間
保持温度T
1:80℃
(第二段階)
昇温時間t
2−3:3分間
保持時間t
3−4:10分間
保持温度T
2:145℃
(第三段階)
昇温時間t
4−5:3分間
保持時間t
5−6:20分間
保持温度T
3:160℃
降温時間t
6−7:5分間
《実施例4》
加硫缶内での三段階の加熱加圧条件を、下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体を製造し、転写ローラを作製した。
【0090】
(第一段階)
昇温時間t
0−1:5分間
保持時間t
1−2:5分間
保持温度T
1:100℃
(第二段階)
昇温時間t
2−3:3分間
保持時間t
3−4:10分間
保持温度T
2:140℃
(第三段階)
昇温時間t
4−5:3分間
保持時間t
5−6:20分間
保持温度T
3:160℃
降温時間t
6−7:5分間
《比較例1》
加硫缶内で、前記第一段階を省略した、
図3に示す従来の二段階の加熱加圧を実施したこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体を製造し、転写ローラを作製した。加熱加圧条件は下記のとおりとした。
【0091】
(第一段階)
昇温時間t
0−11:5分間
保持時間t
11−12:10分間
保持温度T
11:140℃
(第二段階)
昇温時間t
12−13:3分間
保持時間t
13−14:20分間
保持温度T
12:160℃
降温時間t
14−15:5分間
《硬さ測定》
前記実施例、比較例で作製した転写ローラの、ローラ本体のアスカーC型硬さを、当該ローラ本体の外周面の、幅方向の中央、および両端近傍の3箇所で、温度23℃、測定荷重500gの条件で測定して平均値を求めた。
【0092】
そして前記各実施例、比較例の一連の作業を、加硫缶内の初期の温度T
0の種々異なる条件下で複数回繰り返し実施して作製した複数本(本数はそれぞれ表2中に記載)の転写ローラのローラ本体の、前記アスカーC硬さの平均値のばらつき(標準偏差)σを求めた。
以上の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2の実施例1〜4、比較例1の結果より、発泡・架橋工程において、従来の二段階の加熱加圧に代えて、本発明の三段階の加熱加圧を実施することにより、外気温等の外的要因に基づく初期の温度T
0のばらつきによる硬さのばらつきを小さくできることが判った。
また実施例1〜4の結果より、前駆体の発泡開始温度が138℃以上、141℃以下であるこれらの実施例においては、前記硬さのばらつきをより一層小さくすることを考慮すると、第二段階の温度T
2を138℃以上、148℃以下の範囲内とするのが好ましく、中でも143℃以上するのがさらに好ましいことが判った。