(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を成形した後、該成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆する車両用成形天井の製造方法であって、
前記基材と表皮材との間には、成形後も該基材と表皮材とをはがれ易くする剥離層が予め介在されることで、前記基材の端材のみを前記剥離層にて表皮材からはがす構成とされており、
前記剥離層は、サーマルボンド法によって形成された熱可塑性合成繊維からなるサーマルボンド不織布と、該サーマルボンド不織布の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブとが積層され、該繊維ウェブを交絡させて第2不織布とすると共に、前記サーマルボンド不織布と第2不織布との間が繊維間結合された2層構造の不織布層とされており、前記サーマルボンド不織布が、前記基材側に積層され、前記第2不織布が前記表皮材側に積層されていることを特徴とする車両用成形天井の製造方法。
【背景技術】
【0002】
車両用成形天井は、一般に、成形面が所要曲面に形成された成形型に、繊維系,段ボール系,ウレタン系,発泡オレフィン系等の基材を、ファブリック,クロス,ニット等と称される布帛からなる表皮材とともにセットして加熱・加圧することにより製造される。
ここで成形天井は、例えばサンルーフ用の開口部が形成される場合がある。サンルーフ用の開口部によって生じた基材の端縁は、表皮材を巻き込むことにより端縁が室内側に直接露呈しないように被覆される。成形天井の端縁の被覆処理は、まず成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて基材の端材のみを表皮材からはがす。その上で、基材の端材が表皮材からはがされた部分に接着剤を塗布し表皮材を基材の端縁に巻き込んで接着する。成形天井の端縁の被覆処理は、成形天井の周縁部についても同様の被覆処理がなされる(例えば、特許文献1)。ところが特許文献1の製造方法では、基材を成形するための第1のプレス工程と、表皮材を被着するための第2のプレス工程とを要するので、工程数が増すという問題点があった。
【0003】
そこで、特許文献2には、基材と表皮材の間に綿状のポリエステル樹脂製の不織布を剥離剤層として用い、剥離剤層内部まで切込み、切断面を形成し、切断面から端部側上部を剥離面から剥離し、表皮材を有する端部側下部を切断面に沿って折り曲げ、成形天井の端縁の被覆処理を行う技術が開示されている。ところが、単に不織布を剥離剤層に用いたのみでは、基材と表皮材の間の接着剤が容易に剥離剤層に染み出してしまい、剥離剤層に接着剤が浸透した状態で硬化してしまう。そのため、基材と表皮材の接着力が必要以上に強くなり基材の端材のみを剥離剤層にて表皮材からはがすことが困難となることも少なくない。また、剥離剤層に染み出した接着剤は、均一に浸透してないため、成形天井の成形面が凹凸状に波打つように成形されてしまい外観品質を損ねるおそれがある。
【0004】
そのため、特許文献3には、基材と表皮材の間において、不織布層に接着剤非透過性の紙が貼着してなる剥離層を介在させる技術が記載されている。剥離層は、接着剤非透過性の紙の片面にPET樹脂繊維を積層しスパンレース法(ウォーターニードル)によってPET樹脂繊維を交絡すると共に、接着剤非透過性の紙とPET樹脂繊維を繊維間結合してなる。スパンレース法は、繊維の面に対し多数のノズルからジェット水流を断続的に噴射させることで繊維の交絡を行う方法である。
特許文献3に開示された技術を用いれば、接着剤非透過性の紙が基材と表皮材の間に介在するため接着剤が表皮材に染み出すのを抑制する。そのため、成形天井の端縁の被覆処理は、基材の端材のみを表皮材からはがした後に硬化した接着剤を除去する必要も無いし、成形天井の成形面が凹凸状に波打つように成形されることも抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スパンレース法で交絡された不織布は、水流の送り方向と送り方向に直交する方向の伸びの差が大きい。すなわち、不織布の伸びは、水流の送り方向の伸びが、送り方向に直交する方向の伸びに比べて小さい。不織布の伸びの差は、目付が大きくなればより顕著に表れる。そのため、成形天井の端縁の被覆処理は、不織布の伸びの方向性を考慮する必要がある。また、上述の剥離層は、スパンレース法(ウォーターニードル)の加工の際、接着剤非透過性の紙から細かい紙の塵が飛散するため、紙の塵の飛散を防ぎながら加工をする必要があるといった煩わしさがあった。以上より接着剤非透過性の紙に替わる剥離層が望まれている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、成形天井の端縁の被覆処理において接着剤非透過性の紙を用いることなく、基材を表皮材からはがしやすくする車両用成形天井の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用成形天井の製造方法は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、成形面が所要曲面に形成された成形型に基材を表皮材とともにセットして加熱・加圧し該基材と表皮材とを接着させることにより成形天井を成形した後、該成形天井の裏側から基材に切り込みを入れて該基材の端材のみを表皮材からはがし、接着剤を該表皮材の端材をはがした部分に塗布し該表皮材を該基材の端縁に巻き込んで接着することで該端縁を該表皮材によって被覆する車両用成形天井の製造方法であって、前記基材と表皮材との間には、成形後も該基材と表皮材とをはがれ易くする剥離層が予め介在されることで、前記基材の端材のみを前記剥離層にて表皮材からはがす構成とされており、前記剥離層は、サーマルボンド法によって形成された熱可塑性合成繊維からなるサーマルボンド不織布と、該サーマルボンド不織布の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブとが積層され、該繊維ウェブを交絡させて第2不織布とすると共に、前記サーマルボンド不織布と第2不織布との間が繊維間結合された2層構造の不織布層とされており、前記サーマルボンド不織布が、前記基材側に積層され、前記第2不織布が前記表皮材側に積層されていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明によれば、サーマルボンド不織布は、短繊維で形成された繊維ウェブを熱ロール間に通して熱圧着して、繊維同士を部分的に溶着させることで繊維を結合して形成される。そのためサーマルボンド不織布は、繊維同士が溶着された溶着部分と、繊維状態を維持した繊維部分とが混在している。そのため、サーマルボンド不織布の溶着部分は、成形天井の成形時における接着剤に対し、壁となって表皮材側に染み出すのを抑制する。一方、サーマルボンド不織布の繊維部分は、基材の端材を表皮材からはがす力で繊維部分が引張られて分離することでサーマルボンド不織布の層間剥離が生じる。そのため、基材の端材のみを表皮材からはがしやすくすることができる。以上より、成形天井の端縁の被覆処理は、基材と表皮の剥離に接着剤非透過性の紙を用いなくても、基材を表皮材からはがした後に硬化した接着剤を除去する必要が無く、成形天井の成形面が凹凸状に波打つように成形されない。すなわち、成形天井の端縁の被覆処理において接着剤非透過性の紙を用いることなく、基材を表皮材からはがしやすくする車両用成形天井の製造方法を提供することができる。
【0010】
次に、第2の発明は、第1の発明の車両用成形天井の製造方法において、前記剥離層は、ニードルパンチ法によって前記繊維ウェブを交絡させて第2不織布とすると共に、前記サーマルボンド不織布と第2不織布との間が繊維間結合されていることを特徴とする。
【0011】
この第2の発明によれば、剥離層は、サーマルボンド不織布の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブとが積層され、ニードルパンチ法によって繊維ウェブが交絡されて第2不織布とすると共に、サーマルボンド不織布と第2不織布との間が繊維間結合されている。ニードルパンチ法は、繊維ウェブを一定方向に送りながら繊維ウェブの厚み方向に対して高速で上下するニードル(針)を往復させることで繊維を交絡させる。ニードルパンチ法により交絡された第2不織布の層は、サーマルボンド不織布の層に比べ崇高性が高い。そのため、成形天井の成形時における接着剤は、サーマルボンド不織布を通過した場合でも崇高性の高い第2不織布の層に止まる。すなわち、接着剤が表皮材まで浸透するのをより一層抑制し、成形天井の成形面が凹凸状に波打つように成形されることを抑制し得る。また、第2不織布の層は、サーマルボンド不織布の層に比べ崇高性が高いことから吸音性能を発揮し得る。また、第2不織布の層は、繊維間剥離しにくい性質を有する。そのため、基材の端材のみを表皮材からはがす際、第2不織布の層より優先してサーマルボンド不織布の層間剥離が促進され、基材の端材のみを表皮材からはがしやすくすることができる。また、このニードルパンチにより交絡された第2不織布は、送り方向と送り方向に直交する方向の伸びの差が少ない。そのため、表皮材の巻き込み作業において不織布の伸びの方向性を考慮することが軽減される。
【0012】
次に、第3の発明は、第1の発明または第2の発明の車両用成形天井の製造方法において、前記サーマルボンド不織布は、相対的に前記第2不織布より目付が小さく構成されていることを特徴とする。
【0013】
この第3の発明によれば、サーマルボンド不織布は、基材の端材のみを表皮材からはがすために構成されるため、第2不織布の目付より小さいことが好適である。
【0014】
次に、第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかの車両用成形天井の製造方法において、表皮材の裏面に前記剥離層が予め貼付されていることを特徴とする。
【0015】
この第4の発明によれば、表皮材の裏面に剥離層が予め貼付されていることにより、車両用成形天井の生産性をより一層向上し得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、成形天井の端縁の被覆処理において接着剤非透過性の紙を用いることなく、基材を表皮材からはがしやすくする車両用成形天井の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための実施形態1について、
図1〜
図10を用いて説明する。
車両には屋根として鋼板製のルーフパネルが構成されておりルーフパネルの車室内側に車両用成形天井20が装着される。
車両用成形天井20は、
図1に図示されるように基材1と剥離層10と表皮材7とが積層されて熱プレスによって加熱及び加圧成形されて一体化される。
<基材1について>
【0019】
基材1は、車両用成形天井20の形状保持、剛性確保、車室内の吸音、断熱等を担う部位である。
基材1は、概略、芯材2の両面に熱硬化性接着剤を塗布した繊維補強材3,4を積層するとともに、その裏面に非通気性フィルム5を介在させ熱可塑性合成繊維不織布からなる裏材6を積層してなる。
【0020】
芯材2は、形状保持と剛性確保のために設けられており、車室内の吸音、断熱を有する態様も採り得る。芯材2は、繊維系,段ボール系,ウレタン系,発泡オレフィン系等、種々適用できる。なお、本実施形態1においては芯材2にウレタン樹脂発泡体からなる半硬質層のウレタンフォームが選択される。
【0021】
繊維補強材3,4は、
図1に図示されるように車両用成形天井20全体の形状保持と剛性確保のために設けられる。繊維補強材3,4は、
図1に図示されるように芯材2の車室内側及びルーフパネル側の両面に積層される。芯材2に対しルーフパネル側に積層されるのが繊維補強材4であり、芯材2に対し車室内側に積層されるのが繊維補強材3である。
図1に図示されるように繊維補強材3,4は、無機繊維であるガラス繊維を適宜の長さ(例えば50mm〜100mm長)に切断したチョップドストランドを適宜バインダーで固めることによりシート状に成形されている。なお、ここで使用するガラス繊維は上記のようにチョップドストランドを固結したもののほか、ガラス繊維を切断することなくバインダーで固めたもの(コンテイニアスマツト)或いはガラス繊維不織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布でもよい。また、実施形態における目付量は、要求される強度、その他の種々の条件に適合する様に目付量を選択し得る。繊維補強材は、チョップドストランド等の無機繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択して、アクリル等のバインダー又はニードル加工によってシート状、マット状にしたものでもよい。
なお、本実施形態1においては繊維補強材3,4にガラス繊維マットが選択される。
【0022】
接着剤は、イソシアネート樹脂からなる熱硬化性樹脂である。上記芯材2が半硬質層のウレタンフォームが適用されるため、このウレタンフォームとなじみやすいという観点からイソシアネート樹脂が選択されるのが好ましい。なお、接着剤は、イソシアネート樹脂に限られず芯材2と繊維補強材3,4の関係において適宜選択される。熱硬化性樹脂は、スプレー、ロールコーター等によってシート状のガラス繊維マットの表面に塗布される。塗布量は、要求される強度その他の種々の条件に適合する量とされる。なお、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維補強剤を用いても良い。
【0023】
以上より実施形態1における基材1は、
図1に示すように半硬質ウレタンフォームからなる芯材2の両面に熱硬化性接着剤を塗布してガラス繊維マットからなる繊維補強材3,4を積層するとともに、その裏面に非通気性フィルム5を介在させPET樹脂繊維不織布からなる裏材6を積層してなるものを選択した。
【0024】
<表皮材7について>
表皮材7は、車両用成形天井20の意匠面を担う部位である。表皮材7は、表面層8、ウレタンフォームシート9が積層されてなる。表面層8は、ファブリック,クロス,ニット等の布帛や、織布、不織布、起毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々適用できる。ウレタンフォームシート9は、車両用成形天井20に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層を適用して積層される。なお、ウレタンフォームシート9が積層されない態様もある。
【0025】
<剥離層10について>
剥離層10は、後述する車両用成形天井20の端縁の被覆処理において基材1を表皮材7からはがしやすくし、基材1を表皮材7からはがした後に硬化した熱硬化性接着剤を除去する必要が無く、車両用成形天井20の成形面が凹凸状に波打つように成形されないために構成されるものである。
剥離層10は、
図3〜5に拡大して示したように、サーマルボンド法によって形成された熱可塑性合成繊維からなるサーマルボンド不織布11と、サーマルボンド不織布11の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブ12aとが積層され、ニードルパンチ法によって繊維ウェブ12aを交絡させてニードルパンチ不織布12(第2不織布)とすると共に、サーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12との間が繊維間結合された2層構造からなるものである。
【0026】
サーマルボンド不織布11は、
図3〜5に図示されるように熱可塑性合成繊維をサーマルボンド法によって形成されたものである。サーマルボンド法は、熱可塑性合成繊維の短繊維(15mm〜100mm)で形成された繊維ウェブを熱ロール間に通して熱圧着して、繊維同士を部分的に溶着させることで繊維を結合して形成する方法である。
熱可塑性合成繊維は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系の各種合成繊維が適用できる。なお、本実施形態1におけるサーマルボンド不織布11の熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレートを選択している。
サーマルボンド不織布11に用いる繊維ウェブの熱可塑性合成樹脂繊維は、15mm〜100mmの繊維長にカットされている。熱可塑性合成樹脂繊維が15mm未満であると繊維同士の絡み合いが少なくなってしまう。一方、熱可塑性合成樹脂繊維が100mmより長くした場合、混綿が難しくなり単位面積に対して熱可塑性合成繊維が均等に混ぜ合わせることが困難となって均一な繊維マットが形成しにくくなる。
サーマルボンド不織布11に用いる繊維ウェブは、クロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法、または抄紙法に代表される湿式法のいずれの製法を選択しても形成できる。
乾式法(クロスレイヤー)は、熱可塑性合成樹脂繊維を15mm〜100mmの繊維長にカットした上で開繊機でよく混ぜ合わせ(混綿)カード機で積層し所定目付けの繊維ウェブとする。
乾式法(エアレイ)は、熱可塑性合成樹脂繊維を15mm〜100mmの繊維長にカットした上でエアレイと呼ばれる空気流でよく混ぜ合わせ(混綿)たものを積層し所定目付けの繊維ウェブとする。
湿式法は、熱可塑性合成樹脂繊維を15mm〜100mmの繊維長にカットした上で水中に分散し網状のネット等ですき上げてフリースを形成し、加熱機で乾燥して繊維ウェブとする。
乾式法、湿式法のいずれかにおいて形成された繊維ウェブは、上述のように熱ロール間に通して熱圧着して、繊維同士を部分的に溶着させることで繊維を結合して繊維マットにする。そのためサーマルボンド不織布11は、繊維同士が溶着された溶着部分と、繊維状態を維持した繊維部分とが混在している。
【0027】
図3に図示されるように、上記サーマルボンド不織布11の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブ12aを積層する。
繊維ウェブ12aの熱可塑性合成繊維は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系の各種合成繊維が適用できる。なお、本実施形態1における繊維ウェブ12aの熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレートを選択している。繊維ウェブ12aの熱可塑性合成樹脂繊維は、上記サーマルボンド不織布と同様の理由から15mm〜100mmの繊維長にカットされている。繊維ウェブ12aは、上記と同様にクロスレイヤー、エアレイ等に代表される乾式法、または抄紙法に代表される湿式法のいずれかの製法を選択して形成する。
図4、5に図示されるように、剥離層10は、ニードルパンチ法によって繊維ウェブ12aを交絡させてニードルパンチ不織布12とすると共に、サーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12との間を繊維間結合して2層構造の不織布層に形成される。詳しくは、ニードルパンチ法は、サーマルボンド不織布11の上に繊維ウェブ12aを積層した積層体を一定方向に送りながらサーマルボンド不織布11と繊維ウェブ12aの厚み方向に対して高速で上下するニードル22(針)を往復させることで繊維ウェブ12aを交絡させてニードルパンチ不織布12とすると共に、サーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12との間を繊維間結合して2層構造の不織布層に形成する。
図4に図示されているようにニードル22(針)は、サーマルボンド不織布11側から往復させるニードル22(針)と、繊維ウェブ12a側から往復させるニードル22(針)を有している。これにより剥離層10は、積層体の両面からニードル22(針)を往復させ形成する。この他に、ニードル22(針)は、サーマルボンド不織布11側からのみ往復させる態様や繊維ウェブ12a側からのみ往復させる態様など種々適用できる。
【0028】
ここで、剥離層10のサーマルボンド不織布11の目付は、10g/m
2〜50g/m
2である。サーマルボンド不織布11の目付が10g/m
2未満であると、熱硬化性接着剤が表面層8側に染み出しやすくなってしまう。サーマルボンド不織布11の目付が50g/m
2より大きいと、基材1を表皮材7からはがす際にサーマルボンド不織布11が層間剥離しにくくなってしまう。サーマルボンド不織布11の目付は、より好ましくは、15g/m
2〜35g/m
2の範囲である。
【0029】
これに対し、ニードルパンチ不織布12の目付は、70g/m
2〜150g/m
2である。ニードルパンチ不織布12の目付が70g/m
2未満であると、熱硬化性接着剤が表面層8側に染み出した場合にニードルパンチ不織布12で止めることができず、車両用成形天井20の成形面が凹凸状に波打つように成形されるおそれがある。
ニードルパンチ不織布12の目付が150g/m
2より大きいと車両用成形天井20の重量が増加してしまい好ましくない。ニードルパンチ不織布12の目付は、より好ましくは、80g/m
2〜130g/m
2の範囲である。
【0030】
よって、剥離層10の総目付は、80g/m
2〜200g/m
2となる。
【0031】
<表皮材7及び剥離層10の成形について>
実施形態1における表皮材7及び剥離層10は、ファブリック等の布帛からなる表面層8、ウレタンフォームシート9、剥離層10をフレームラミネート工法により製造されるものを選択した。
表皮材7及び剥離層10は、
図2に示したフレームラミネート工法により製造されるもので、同図において、8はロール状に巻回されたファブリック等の布帛からなる表面層、9はロール状に巻回されたウレタンフォームシート、10はロール状に巻回された剥離層である。
このフレームラミネート工法では、ガスバーナ13の火炎によりウレタンフォームシート9の一方の表面をあぶって溶融し、そこへ剥離層10のニードルパンチ不織布12側を重ね合わせてロール14,15間に通すとともに、ガスバーナ16の火炎によりウレタンフォームシート9の他方の表面をあぶって溶融し布帛からなる表面層8を重ね合わせてロール15,17間に通すことにより、
図1に示した断面構造の表皮材7及び剥離層10をロール状に巻き取り製造する。
【0032】
<車両用成形天井20の製造及び車両用成形天井20の端縁の被覆処理について>
そして、
図6に示したように、成形面が所要曲面に形成された成形型18,19間に基材1を表皮材7及び剥離層10とともにセットし加熱・加圧することにより、基材1と表皮材7との間に熱硬化性接着剤を溶融浸透させて基材1と表皮材7とを接着させる。このとき、剥離層10は、サーマルボンド不織布11が基材1側に積層され、ニードルパンチ不織布12が表皮材7側に積層されている。サーマルボンド不織布11はこの加熱・加圧時に熱硬化性接着剤がニードルパンチ不織布12に浸透するのを抑制する。これによって、
図7に示したような所要の立体曲面状の車両用成形天井20となる。
図7は車両用成形天井20の基材1側からの斜視図であって、20aはサンルーフ用開口部を形成するために基材1側に僅かに盛り上がるように形成された丘状部、20b,20cは下面(室内側)にサンバイザーを収容できるように基材1側に僅かに盛り上がるように形成された丘状部を示す。
【0033】
次いで、
図8に示したように車両用成形天井20の丘状部20aに基材1側よりカッターナイフ21により切り込みを入れ、基材1にサンルーフ等の必要な開口部を形成する。
そしてこの切り込みによって出来た端材1aのみを
図9に示したようにサーマルボンド不織布11の層間剥離によって表皮材7からはがす。
詳しくは、熱硬化性接着剤は、サーマルボンド不織布11によってニードルパンチ不織布12側に浸透するのを抑制されている。また、ニードルパンチ不織布12はサーマルボンド不織布11に比べて崇高性が高い。そのため、ニードルパンチ不織布12側に浸透した熱硬化性接着剤があっても、熱硬化性接着剤がニードルパンチ不織布12内で止まっており、ウレタンフォームシート9まで浸透しない。また、サーマルボンド不織布11は、基材1の端材1aを表皮材7からはがす力でサーマルボンド不織布11の繊維部分が引張られて分離することで層間剥離が生じることから分離し易い。また、サーマルボンド不織布11が層間剥離しなくてもサーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12の間で分離する。これにより、ウレタンフォームシート9が強く引っ張られて破れるようなことはなく、端材1aのみを容易に離脱することができる。そして、このウレタンフォームシート9に接着剤を塗布し、表皮材7の端縁を
図10に示したように基材1の端縁に巻き込んで接着することにより、基材1の端縁を表皮材7によって被覆でき見栄えのよいものとなる。
【0034】
なお、サーマルボンド不織布11を設けたことによりウレタンフォームシート9に熱硬化性接着剤が染み出すおそれがなく、外観を美しく仕上げることができる。また、ニードルパンチ不織布12を設けたことから該ニードルパンチ不織布12が吸音層として機能し、この車両用成形天井20は吸音性能も優れたものとなる。
なお、この実施例ではサンルーフ用開口部について説明したが、車両用成形天井20の周縁部も同様の端縁処理をすることが可能である。
【0035】
このように本実施形態にかかる車両用成形天井20は以下のような作用効果を有する。
サーマルボンド不織布11は、短繊維で形成された繊維ウェブを熱ロール間に通して熱圧着して、繊維同士を部分的に溶着させることで繊維を結合して形成される。そのためサーマルボンド不織布11は、繊維同士が溶着された溶着部分と、繊維状態を維持した繊維部分とが混在している。そのため、サーマルボンド不織布11の溶着部分は、車両用成形天井20の成形時における接着剤に対し、壁となって表皮材7側に染み出すのを抑制する。一方、サーマルボンド不織布11の繊維部分は、基材1の端材1aを表皮材7からはがす力で繊維部分が引張られて分離することでサーマルボンド不織布11の層間剥離が生じる。そのため、基材1の端材1aのみを表皮材7からはがしやすくすることができる。以上より、車両用成形天井20の端縁の被覆処理は、基材1と表皮の剥離に接着剤非透過性の紙を用いなくても、基材1を表皮材7からはがした後に硬化した接着剤を除去する必要が無く、車両用成形天井20の成形面が凹凸状に波打つように成形されない。すなわち、車両用成形天井20の端縁の被覆処理において接着剤非透過性の紙を用いることなく、基材1を表皮材7からはがしやすくする車両用成形天井20の製造方法を提供することができる。
【0036】
また、剥離層10は、サーマルボンド不織布11の上に熱可塑性合成繊維の繊維ウェブ12aとが積層され、ニードルパンチ法によって繊維ウェブ12aが交絡されてニードルパンチ不織布12(第2不織布)とすると共に、サーマルボンド不織布11とニードルパンチ不織布12との間が繊維間結合されている。ニードルパンチ法は、繊維ウェブを一定方向に送りながら繊維ウェブの厚み方向に対して高速で上下するニードル(針)を往復させることで繊維を交絡させる。ニードルパンチ法により交絡されたニードルパンチ不織布12の層は、サーマルボンド不織布11の層に比べ崇高性が高い。そのため、車両用成形天井20の成形時における接着剤は、サーマルボンド不織布11を通過した場合でも崇高性の高いニードルパンチ不織布12に止まる。すなわち、接着剤が表皮材7まで浸透するのをより一層抑制し、車両用成形天井20の成形面が凹凸状に波打つように成形されることを抑制し得る。また、ニードルパンチ不織布12の層は、サーマルボンド不織布11の層に比べ崇高性が高いことから吸音性能を発揮し得る。また、ニードルパンチ不織布12の層は、繊維間剥離しにくい性質を有する。そのため、基材1の端材1aのみを表皮材7からはがす際、ニードルパンチ不織布12の層より優先してサーマルボンド不織布11の層間剥離が促進され、基材1の端材1aのみを表皮材7からはがしやすくすることができる。また、このニードルパンチにより交絡されたニードルパンチ不織布12は、送り方向と送り方向に直交する方向の伸びの差が少ない。そのため、表皮材7の巻き込み作業において不織布の伸びの方向性を考慮することが軽減される。
【0037】
また、サーマルボンド不織布11は、基材1の端材1aのみを表皮材7からはがすために構成されるため、ニードルパンチ不織布12の目付より小さいことが好適である。
【0038】
また、表皮材7の裏面に剥離層10が予め貼付されていることにより、車両用成形天井20の生産性をより一層向上し得る。
【0039】
また、成形型によって加熱・加圧することにより基材1を所要曲面に付形することと表皮材7を被着することとが同時になされるので、所要工程を少なくできるとともに、剥離層10を予め介在させたことによって基材1と表皮材7とがはがれ易くなるので、基材1の端材1aの除去が容易となり、端縁処理が簡単にできるようになり、車両用成形天井20の生産性を向上させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の車両用内装材は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。