(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係るレーザ光投射装置10について、図面に基づいて説明する。
【0018】
<本発明の概要について>
以下で説明する本発明に係るレーザ光投射装置10は、種々の光学的な製品において、汎用性があって共通化できる部分は、共通化した共通ユニットとするが、個々の製品において、独自の光学的な機能が必要とされるものについては、その共通化したユニットに、その機能に関する新たな部材を付加したり、その機能に関する新たな部材へと取り替えることで、共通化を進展させよう、というものである。それにより、共通化したユニットの生産においては、種々の異なる光学的な製品であっても、生産のための設備が共通化される。そのため、コスト的なメリットを大きくすることができる。また、個々の製品毎に、調整のための手間を低減することも可能となる。以下、その詳細について、説明する。
【0019】
<レーザ光投射装置10の概略構成について>
図1は本発明の一実施の形態に係る、レーザ光を走査して投射するためのレーザ光投射装置10の概略的な構成を示す図である。レーザ光投射装置10は、第1光源モジュール20と、第2光源モジュール30と、光合成手段40と、光走査手段60と、を主要な構成要素としている。
【0020】
まず、第1光源モジュール20について説明する。
図2は、第1光源モジュール20の概略的な構成を示す図であり、平面断面図に対応している。
図2に示すように、第1光源モジュール20は、筐体21(第1筐体に対応)と、光源ユニット22と、ダイクロイックミラー23とを有している。これらのうち、筐体21は、光源取付部211を備えていて、その光源取付部211には、光源ユニット22が取り付けられている。筐体21には、光源取付部211が3つ設けられていて、それら3つの光源取付部211には、赤色、緑色、青色の波長のレーザ光を出射可能な光源ユニット22がそれぞれ取り付けられる。
【0021】
なお、筐体21は、放熱性等に鑑みて、たとえばアルミダイキャストによって形成されている。しかしながら、放熱性を確保できる場合には、たとえば樹脂の射出成型等によって、筐体21を形成しても良く、その他の材質や手法によって筐体21を形成しても良い。
【0022】
図2に示す構成では、出射孔213に向かう光軸Lと衝突する筐体21の壁面21aには、光源取付部211Rが設けられている。光源取付部211Rには、赤色のレーザ光を出射可能なレーザダイオード221Rを有する光源ユニット22R(赤色レーザ光源に対応)が取り付けられる。
【0023】
また、光源取付部211Rが設けられている壁面21aと交差する壁面21bにも、光源取付部211G,211Bが設けられている。そのうち、光源取付部211R寄りの部位には、光源取付部211Gが設けられていて、この211Gには、緑色のレーザ光を出射可能なレーザダイオード221Gを有する光源ユニット22G(緑色レーザ光源に対応)が取り付けられる。また、光源取付部211Rから離れる側には、光源取付部211Bが設けられていて、この211Bには、青色のレーザ光を出射可能なレーザダイオード221Bを有する光源ユニット22B(青色レーザ光源に対応)が取り付けられる。
【0024】
なお、赤色のレーザ光とは、635nm〜690nmの範囲内の単一波長のレーザ光であり、たとえば波長が640nmのものがある。また、緑色のレーザ光とは、500nm〜560nmの範囲内の単一波長のレーザ光であり、たとえば波長が515nmや532nmのものがある。また、青色のレーザ光とは、435nm〜480nmの範囲内の単一波長のレーザ光であり、たとえば波長が450nmのものがある。
【0025】
以下の説明では、光源ユニット22R,22G,22Bについては、色等による区別が不要な場合には、これらを総称して単に光源ユニット22と称呼する。同様に、光源取付部211R,211G,211Bについて、これらの間の区別が不要な場合には、これらを総称して単に光源取付部211と称呼し、レーザダイオード221R,221G,221Bについても、これらの間の区別が不要な場合には、これらを総称して単にレーザダイオード221と称呼する。
【0026】
本実施の形態では、光源取付部211は、孔部であり、その孔部である光源取付部211に光源ユニット22を圧入する等の手法により、筐体21に光源ユニット22が取り付けられる。なお、光源ユニット22の位置決めを行うために、光源取付部211である孔部に直径の狭まっている部位を設けたり、フランジ部等を設けて、光源ユニット22の圧入を規制する構成とするのが好ましい。
【0027】
また、本実施の形態では、光源ユニット22は、レーザダイオード221と、係合部材222と、コリメータレンズ223とを有している。レーザダイオード221は、レーザ光を出射する光源である。
図2に示すように、レーザダイオード221は、筒状(リング状)の係合部材222の内部に取り付けられる。また、コリメータレンズ223も、同様に係合部材222の内部に取り付けられる。コリメータレンズ223は、レーザダイオード221から出射されたレーザ光が入射されることで、出射後のレーザ光が平行光へと整えられる。
【0028】
なお、係合部材222の形態や、係合部材222に対するレーザダイオード221の取付態様は、
図2に示すものには限られず、たとえば係合部材222の軸線方向長さが、短いものであっても良い。
【0029】
ところで、各色のレーザダイオード221から出射されたレーザ光においては、それぞれ発散角が異なっている。そのため、係合部材222においては、コリメータレンズ223の通過後のレーザ光が平行光となるように、コリメータレンズ223の係合部材222に対する取付位置は、光軸方向に移動させて調整可能となっている。なお、レーザダイオード221とコリメータレンズ223との間の光学的な調整を容易とするために、レーザダイオード221またはコリメータレンズ223のいずれかを係合部材222に取り付ける際に、ねじ式の取付手法を採用するようにしても良い。
【0030】
また、係合部材222は、レーザダイオード221の種類毎に、異なるものを用いる構成を採用しても良い。この場合、係合部材222に、軸線方向の位置決めを行うための係止部を設ける等によって、レーザダイオード221の取付位置と、コリメータレンズ223の取付位置との位置関係が、レーザダイオード221の種類毎に、一定となるようにしても良い。
【0031】
また、筐体21には、ミラー取付部212が設けられ、そのミラー取付部212には、ダイクロイックミラー23が取り付けられている。本実施の形態では、光源取付部211R寄りのミラー取付部212Gには、緑色のレーザ光は反射するものの赤色のレーザ光は透過するダイクロイックミラー23Gが取り付けられている。なお、ダイクロイックミラー23Gは、赤色のレーザ光のみを透過するものとしても良い。また、光源取付部211Rから離れる側の光源取付部211Bには、緑色および緑色よりも長波長のレーザ光を透過するが、緑色よりも短波長の青色のレーザ光は反射するダイクロイックミラー23Bが取り付けられている。
【0032】
なお、
図2に示すような構成を採用せずに、
図3に示すような構成を採用しても良い。
図3は、
図2の変形例に係る第1光源モジュール20の概略的な構成を示す図であり、平面断面図に対応している。
【0033】
たとえばレーザ光投射装置10のスペース的な制約等により、第1光源モジュール20の電気的な接続部位を設ける部位が限られている等の場合には、
図3に示す構成を用いることができる。この
図3に示す構成では、同一の壁面21bに、光源取付部211R,211G,211Bが設けられている。また、光源取付部211Rに取り付けられる光源ユニット22Rからの赤色レーザ光を反射させるべく、新たにミラー取付部212Rが設けられている。ミラー取付部212Rには、赤色のレーザ光を反射するミラー23Rまたはダイクロイックミラー23Rが取り付けられている。
【0034】
以上のような構成を、第1光源モジュール20は有している。
【0035】
次に、組み合わせ用光源モジュールに対応する第2光源モジュール30について説明する。なお、第2光源モジュール30の多くの部分は、基本的には、第1光源モジュール20と共通の構成である。すなわち、第2光源モジュール30における筐体31(第2筐体に対応)は、上述した筐体21と共通の構成となっている。また、その筐体31は、光源取付部211と同様の光源取付部311を備え、ミラー取付部212と同様のミラー取付部312を備え、さらに出射孔213と同様の出射孔313を備えている。
【0036】
ただし、筐体31の光源取付部311に取り付けられる光源ユニット32は、レーザ光投射装置10の用途に応じて、好適なものが用いられる。すなわち、必要とする色度、照度等に応じて、好適なレーザ光を出射可能な光源ユニット32を、光源取付部311に取り付けることが可能である。
【0037】
なお、光源ユニット32におけるレーザダイオード321、係合部材322、コリメータレンズ323は、上述した光源ユニット22におけるレーザダイオード221、係合部材222、コリメータレンズ223と同様のものを用いても良く、ニーズに応じて異なるものを用いても良い。また、ミラー取付部312に取り付けられるダイクロイックミラー33も、上述したダイクロイックミラー23と同様のものを用いても良く、ニーズに応じて異なるものを用いても良い。
【0038】
そのような光源取付部311への光源ユニット32の取り付けの例としては、次のようなものがある。すなわち、レーザ光の合成によって、画像を形成する場合には、白色光を形成可能なことが必要である。かかる白色光は、赤色、緑色および青色のレーザ光を所定の割合で合成することで形成されるが、青色のレーザ光の光量を多くしても、明るさ(照度)の向上には、大きくは寄与しない。
【0039】
そのため、第2光源モジュール30においては、青色のレーザ光を出射する光源ユニット32Bを設けずに、赤色のレーザ光を出射する光源ユニット32R、および緑色のレーザ光を出射する光源ユニット32Gを設けるようにしても良い。たとえば、3つの光源ユニット32を配置する場合、全てを赤色のレーザ光を出射する光源ユニット32Rとしても良く、全てを緑色のレーザ光を出射する光源ユニット32Gとしても良く、赤色のレーザ光を出射する光源ユニット32Rを1つまたは2つ設け、残りを緑色のレーザ光を出射する光源ユニット32Gとしても良い。
【0040】
特に、緑色のレーザ光を照射する光源ユニット32Gは、輝度の向上に大きく寄与する。そのため、仮に、第1光源モジュール20において、赤色のレーザ光を出射する光源ユニット22Rの効率が高い場合には、第2光源モジュール30においては、緑色のレーザ光を出射する光源ユニット32Gのみを設ける構成か、または緑色のレーザ光を出射する光源ユニット32Gの個数を、赤色のレーザ光を出射する光源ユニット32Rの個数よりも多く設ける構成を採用しても、白色光を形成可能である。
【0041】
なお、上述のような第2光源モジュール30の一例を、
図4に示す。
図4は、第2光源モジュール30の概略的な構成の一例を示す図であり、平面断面図に対応している。
図4においては、輝度の向上を図るため、
図2における青色の光源ユニット32Bに代えて、緑色の光源ユニット32Gを2つ設けると共に、1つの光源ユニット32Rを設けた構成となっている。
【0042】
また、第2光源モジュール30においては、赤色、緑色、および青色の光源ユニット32に代えて、赤外線レーザを出射可能な光源ユニット32を含む赤外センサを取り付けても良い。なお、この赤外センサは、出射した光の反射光(正反射光)を受光する受光部も備え、その受光部での受光により、対象となる部位(たとえば投影面)までの距離を計測するために用いられる。また、この赤外センサは、検出手段に対応する。ただし、赤外センサ以外のセンサを検出手段としても良い。そのようなものとしては、たとえば投受光方式のフォトダイオードを用いたもの、画像処理によって移動するものを認識するもの等、種々のものがある。
【0043】
その他、必要に応じて、光源ユニット32は、黄色のレーザ光、青紫のレーザ光、紫色のレーザ光、橙色のレーザ光、紫外領域のレーザ光等、種々の物を用いることが可能である。
【0044】
このような、第2光源モジュール30においては、光源ユニット32は、たとえば要求される(所望の)照度他の製品の要求により、種々の光源ユニット32を組み合わせて、取り付けることが可能である。すなわち、第2光源モジュール30は、基本となる第1光源モジュール20に対して、組み合わせ用光源モジュールとなっている。
【0045】
以上のような構成の第1光源モジュール20と第2光源モジュール30からそれぞれ出射されたレーザ光は、
図1における光合成手段40によって、1つの光束となるように合成(合波)される。それにより、光合成手段40を出射した後のレーザ光は、単一の第1光源モジュール20のみから出射される場合と比較して、照度(エネルギー)が向上する。そのため、第2光源モジュール30が、たとえば緑色の光源ユニット32Gを含む場合には、単一の第1光源モジュール20のみを用いる場合と比較して、明るさを向上させることが可能となっている。
【0046】
かかる光合成手段40は、プリズムを用いることが可能である。なお、光合成手段40を構成するプリズムの他に、必要に応じて、集光レンズ、コリメートレンズ、ミラーといった光学要素50を配置することが可能である。また、プリズムに代えて、ミラーを用い、そのミラーの他に、必要に応じて、集光レンズ、コリメートレンズ、ミラーといった光学要素50を配置する構成を採用しても良い(
図1では、代表的な光学要素50として、ミラーのみを図示)。
【0047】
このような光合成手段40を経て、必要に応じて光学要素50を経た後に、レーザ光は、光走査手段60に入射される。なお、
図1に示す構成では、光合成手段40と光走査手段60とは、筐体70(第3筐体に対応)に一体的に取り付けられ、これらが1つの光学ユニット80となっている。ただし、光合成手段40および光走査手段60は、このような筐体70に取り付けられずに、個別に位置調整するものとしても良い。
【0048】
光走査手段60は、ミラー部61を備えていて、このミラー部61を、後述するミラー駆動手段62で駆動することにより、投影部位においてレーザ光を操作して、投影像を形成するものである。
【0049】
かかる光走査手段60としては、MEMS型の静電容量アクチュエータを利用してミラー部61を駆動するものがある。この構成を、
図5に示す。
図5は、MEMS型の光走査手段60の構成を示す平面図である。
図5に示す光走査手段60は、内枠部63を備え、この内枠部63の内枠側にミラー部61が捩じり軸64を介して支持されている。ミラー部61は、ウエハ上に銀等の反射部材を蒸着して形成されるが、そのミラー部61の形成に際しては、レーザの波長や強度、反射効率に応じて適宜材料や蒸着の厚み、および蒸着の層構成が決められる。
【0050】
また、捩じり軸64は、内枠部63に対してミラー部61を揺動させるのを許容する軸部分であり、捩じることを可能とする部分である。また、ミラー部61からは、延伸部61aが延伸していて、その延伸部61aからは、複数のミラー側櫛歯電極61bが突出して設けられている。ミラー側櫛歯電極61bは、内枠部63の第1櫛歯電極63aと交互に対向して設けられ、かかる構成によってミラー駆動手段62を構成している。これらミラー側櫛歯電極61aと第1櫛歯電極63aのいずれか一方は、いずれか他方よりも、光走査手段60の上面または下面に突出している。そのため、ミラー側櫛歯電極61bと第1櫛歯電極63aに電圧を印加すると、これらの間に働く引力と斥力により、捩じり軸64に捩じり力を与えて、ミラー部61を駆動(揺動)させることを可能としている。
【0051】
また、内枠部63は、外枠部65に対して、捩じることを可能とする捩じり軸66を介して支持されているが、これら内枠部63と外枠部65との間にも、上記のミラー部61と内枠部63との間における構成と同様の構成が設けられている。すなわち、内枠部63からは、延伸部63bが延伸していて、その延伸部63bからは、第2櫛歯電極63cが突出して設けられている。第2櫛歯電極63cは、外枠部65の外枠側櫛歯電極65aと交互に対向して設けられ、かかる構成によってミラー駆動手段62を構成している。そして、第2櫛歯電極63cと外枠側櫛歯電極65aのいずれか一方は、いずれか他方よりも、光走査手段60の上面または下面に突出している。そのため、第2櫛歯電極63cと外枠側櫛歯電極65aに電圧を印加すると、これらの間に働く引力と斥力により、捩じり軸66に捩じり力を与えて、ミラー部61を駆動(揺動)させることを可能としている。
【0052】
上述のミラー側櫛歯電極61bと第1櫛歯電極63aの間、および第2櫛歯電極63cと外枠側櫛歯電極65aの間においては、印加電圧に応じて、ミラー部61の振動周期と、振動における振れ幅を設定することができる。この場合において、ミラー部61の駆動周期が短い場合には、ミラー部61の共振周波数に近いことが好ましい。本実施の形態では、主走査に係る捩じり軸64は、20KHzで120Vの電圧を印加し、副走査に係る捩じり軸66は、60Hzで50Vの電圧を印加し、主走査方向に40度、副走査方向に20度の振れ角としている。しかしながら、かかる周波数、電圧、振れ角には限られず、種々設定可能である。
【0053】
また、各電極61b,63a,63c,65aに加える印加電圧は、正弦波の他、ミラー部61の追従性に応じて台形波や鋸波等適宜設定することができる。
図6は、ラスタースキャンの場合の走査イメージを示す図である。また、
図7は、リサージュスキャンの場合のイメージを示す図である。なお、ラスタースキャンにおいては、副走査方向を正弦波ではなく鋸波としても良く、リサージュ方式においては、副走査方向を正弦波としても良い。
【0054】
また、
図1に示すレーザ光投射装置10は、上述した構成要素の他に、制御部90を備えている。制御部90は、レーザダイオード221、レーザダイオード321、およびミラー駆動手段62の作動を司る。また、レーザ光投射装置10が赤外センサを備える場合には、その赤外センサからの検出信号の入力に基づいて、レーザダイオード221、レーザダイオード321、およびミラー駆動手段62の作動を制御することも可能である。なお、かかる制御部90は、所定の機能を実現するための制御プログラムをメモリに記憶させ、その制御プログラムを制御部90の中央演算処理部が実行することで、種々の制御を実現可能となっている。かかる制御の中には、外部から制御部90に入力される画像データに対応した画像信号に基づいて、それぞれレーザダイオード221,321の出力を個別に制御するものがある。
【0055】
なお、制御部90は、上流側の制御を行うものとし、その制御部90での指令に基づいて、それぞれのレーザダイオード221,321の出力や、ミラー駆動手段62の駆動を制御するASIC(Application Specific Integrated Circuit)を設ける構成とするのが好ましい。
【0056】
図8は、上述したレーザ光投射装置10を用いた投影装置100の構成の一例を示す図である。この
図8に示す投影装置100では、上述した
図1のようなレーザ光投射装置10を備え、さらにレーザ光投射装置10の各部位の作動を司る制御部90を備え、さらに制御部90に入力される画像データに基づいた投影像を、平面に投射するものである。たとえば、
図8に示す投影装置100では、第1光源モジュール20のレーザ光に、第2光源モジュール30のレーザ光が合成されることで、照度が増大している。たとえば、100ルーメンというように、従来と比較して、大幅に放出光量が増大している。
【0057】
このように、投影装置100においては、照度が増大しているが、そのような照度が増大したレーザ光を直視することは好ましくない。ここで、
図8における投射領域に、人が入り込んだ場合、反射光のうち正反射成分は、光走査手段60によって光源側に戻される。その場合、上述した赤外センサの受光部での受光により、人が入り込んだと制御部90が判定した場合、その制御部90は、各光源ユニット22,32の出力を減じるように制御して、たとえば放出光量を20ルーメンまで低減させる。それにより、安全性が確保される。
【0058】
さらに、本実施の形態では、レーザ光投射装置10は小さなサイズでありながら、高輝度が実現できる。そのため、たとえば、スクリーンを用いたリアプロジェクション方式の投影装置100も実現可能である。
【0059】
なお、リアプロジェクション方式に適用する場合、
図9に示すような構成としても良い。
図9は、リアプロジェクション方式の投影装置100の一例を示す斜視図である。
図9に示すように、レーザ光投射装置10に、さらに電源としてのバッテリを内蔵する構成とし、単体のレーザ光投射装置10として用いる場合には、光量を抑えた(たとえば20ルーメン等)状態で使用する。一方、
図9に示すようなスクリーン110を備えたリアプロジェクション方式の投影装置100に用いる場合には、その投影装置100が備える係合筐体120にレーザ光投射装置10を係合させる。そして、この係合筐体120は、外部の商用電源を供給可能な電源装置を備える構成とし、一方、レーザ光投射装置10は、その電源装置と電気的に接続される非係合部を備える構成とする。
【0060】
それにより、係合筐体120にレーザ光投射装置10が係合された状態では、外部の商用電源がレーザ光投射装置10に供給され、光量を増大させた(たとえば100ルーメン等)状態で使用することができる。そのため、レーザ光投射装置10は、テレビやイメージプレーヤーの投影部分としての用途に好適である。
【0061】
<効果について>
以上のような構成のレーザ光投射装置10によると、第1光源モジュール20における筐体21と、第2光源モジュール30における筐体31とは、共通の筐体構成となっている。そのため、コリメータレンズ223の位置調整や、それぞれのレーザダイオード221から出射されるレーザ光の出力調整については、筐体21と筐体31とで共通の冶具を用いることが可能となる。
【0062】
ここで、従来においては、ある特定のニーズに合わせて、1つの筐体に、必要とするレーザダイオード321を組み込んで、さらにレーザダイオード321に合わせて、コリメータレンズ323の位置調整を行う等しているが、1つの筐体内においては、かかる調整は、手間が掛かる状態となっている。また、そのようにして製作されたパッケージであっても、他のニーズには、対応できず、再び1つの筐体内において、煩雑な調整を要している。
【0063】
これに対して、本実施の形態におけるレーザ光投射装置10においては、筐体21および筐体31のような汎用性があって共通化できる部分については共通化し、それら筐体21、筐体31毎に、1つのユニットを構成するようにしている。すなわち、筐体21、筐体31毎というようにユニットが区分され、また、そのうちの1つのユニットでは、組み込まれる光源ユニット32も、必要とする機能や特性に合わせたものとすることで、柔軟にニーズに対応することができる。すなわち、共通化した部位である筐体21を含む第1光源モジュール20と、その第1光源モジュール20との組み合わせで、所望の機能を発揮させるべく組み込む光源ユニット32を好適化できる第2光源モジュール30とを組み合わせて用いることで、種々のニーズに合わせたレーザ光投射装置10を、柔軟かつ容易に生産することが可能となる。
【0064】
また、区分されたユニット毎に、光学的な調整を行えば済むので、その調整の作業が、ユニット毎に一定のものとすることができ、調整の手間を大幅に軽減することが可能となる。また、上述のような共通化により、レーザ光投射装置10の生産コストを低減することが可能となる。
【0065】
また、本実施の形態では、第2光源モジュール30においては、ニーズに合わせた好適な光源ユニット32を組み込むことが可能となる。それにより、所望する特性や機能を、ニーズに合わせて十分に発揮させることが可能となる。たとえば、明るさが必要な場合には、第2光源モジュール30においては、
図4に示すように、緑色の光源ユニット32Gを2つ設ける、といった構成を採用することができる。また、それぞれのレーザダイオード321の出力や視感度に応じて、好適な出力や色のレーザ光を出射するレーザダイオード321を選択して、組み込むことも可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、第1光源モジュール20から出射されるレーザ光と、第2光源モジュール30から出射されるレーザ光とは、光合成手段40によって合成されている。かかる光合成手段40を用いることで、それぞれの筐体21,31から出射されるレーザ光は、1本の光束に集約させることができ、照度を向上させることが可能となる。
【0067】
さらに、本実施の形態では、光合成手段40を経て進行するレーザ光は、光走査手段60に入射されると共に、光走査手段60は、レーザ光を反射するミラー部61と、ミラー部61を異なる軸方向に別個独立して揺動可能とするミラー駆動手段62を備えている。そのため、光合成手段40で集約されたレーザ光を、ミラー部61で反射させた状態で、ミラー駆動手段62を作動させると、レーザ光を二次元的に走査させることができ、その二次元的なレーザ光の走査と共に制御部90での各レーザダイオード221,321の作動の制御によって、所望の画像を形成することが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態では、光走査手段60におけるミラー駆動手段62は、MEMS型の静電容量アクチュエータである。このため、ミラー駆動手段62(ミラー側櫛歯電極61bと第1櫛歯電極63aの間、第2櫛歯電極63cと外枠側櫛歯電極65aの間)に印加する電圧に応じた駆動を実現することができる。また、ミラー側櫛歯電極61bと第1櫛歯電極63aの間の電圧、および第2櫛歯電極63cと外枠側櫛歯電極65aの間の電圧は、静電容量の変動に応じて変動するので、その電圧を検出することで、これらの電極61b,63aの間における駆動量、および電極63c,65aの間の駆動量を検出することが可能となる。そのため、かかる駆動量に基づいて、制御部90がミラー駆動手段62に印加する電圧を制御することで、精度の高い駆動制御を実現することができる。
【0069】
さらに、本実施の形態では、筐体21および筐体31とは別の筐体70が設けられていて、この筐体70には、光合成手段40と光走査手段60とが一体的に取り付けられて、1つの光学ユニット80を構成している。このため、光学ユニット80は、第1光源モジュール20および第2光源モジュール30とは、別個独立した状態で調整することができ、光学ユニット80の組み立ての際の作業性を向上させることが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態では、それぞれの色のレーザ光を出射可能なレーザダイオード221,321は、制御部90での制御に基づいて、それぞれ出力する光量が制御される。この場合、制御部90は上流側の制御を行うものとし、その制御部90での指令に基づいて、それぞれのレーザダイオード221,321の出力や、ミラー駆動手段62の駆動を制御するASICを設ける構成とすることで、レーザダイオード221,321やミラー駆動手段62の上流側の制御部分を共通化することができる。
【0071】
さらに、本実施の形態では、第1光源モジュール20および第2光源モジュール30から出射されるレーザ光は平行光であると共に、出射されたレーザ光の反射成分を検出する赤外センサを設ける構成を採用することができる。その場合、制御部90は、赤外センサにおけるレーザ光の反射成分に基づいて測定距離の変動により移動する対象物を検出した場合に、レーザダイオード221,321のそれぞれの出力を低減する制御を行うことができる。このように構成する場合には、たとえば人が、
図8に示すようなレーザ光の投射される投射領域内に入った場合でも、レーザ光の出力低減の制御により、安全性を確保することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態では、レーザ光投射装置10は、投影装置100にドッキング可能な構成とすることもできる。すなわち、レーザ光投射装置10はバッテリを備えるものとする。一方、投影装置100は、外光を遮光する係合筐体120を備える構成とし、レーザ光投射装置10は、係合筐体120に係合可能な構成とする。そして、係合筐体120にレーザ光投射装置10が係合された状態では、その係合筐体120を介して、バッテリから供給される電力よりも大きな電力がレーザ光投射装置10に供給される。このように構成することにより、明るい環境下では、レーザ光投射装置10を投影装置100にドッキングさせることで、レーザ光の照度を高めることが可能となり、明るい環境下でも高品位の画像を投影することができる。
【0073】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0074】
上述の実施の形態においては、レーザ光投射装置10は、スクリーン110を用いたリアプロジェクション方式の投影装置100について例示している。しかしながら、レーザ光投射装置10は、それ以外の種々の光学装置(投影装置)に適用可能なことは勿論である。そのような光学装置(投影装置)としては、たとえば、複写機のレーザ光を投射する部分、プロジェクター、テレビジョン装置やモニタ装置といった表示装置、投影面を有する遊戯機器の表示部分、コンピュータ装置の表示部分、携帯型端末の表示部分等がある。また、レーザ光投射装置10を用いた、仮想的なキーボード等の入力装置を実現するものとしても良い。また、特定の投射面がないが、レーザ光を照射する媒体がある場合には、その媒体に向けてレーザ光を投射することにより、立体的な光像を実現するものとしても良い。
【0075】
また、上述の実施の形態では、光走査手段60は、MEMS型の静電容量アクチュエータを利用したものとなっている。しかしながら、光走査手段60は、MEMS型の静電容量アクチュエータを利用したものには限られない。その他の光走査手段としては、圧電駆動型のメタルベース構造を用いたメタルベース光走査素子があり、また圧電素子の歪を利用した圧電方式としても良い。また、磁気力でミラー部を駆動する磁気方式を採用しても良い。
【0076】
また、上述の実施の形態では、
図2〜
図4に示すように、光源ユニット22,32を備え、この光源ユニット22,32は、コリメータレンズ223,323を係合部材222,322に取り付ける構成としている。しかしながら、コリメータレンズ223,323は、筐体21,31に直接取り付ける構成としても良い。
【0077】
また、上述の実施の形態において、第1光源モジュール20、第2光源モジュール30および光学ユニット80が備える光学的な構成要素は、上述のものに限られず、必要に応じて、種々のものを追加的にまたは選択的に用いても良い。そのような光学的な構成要素としては、ハーフミラーやダイクロイックミラーのようなミラー、各種のレンズ、各種のプリズム、光学的なフィルタ等が挙げられる。
【0078】
また、上述した実施の形態では、第2光源モジュール30が組み合わせ用モジュールに対応しているが、組み合わせ用モジュールは、1つに限られるものではなく、複数の組み合わせ用モジュールを用いる構成を採用しても良い。この場合、複数の組み合わせ用モジュールにおいては、光源ユニットの配置が同一でも良く、異なっていても良い。また、第1光源モジュール20も複数用いる構成を採用しても良い。