特許第5925772号(P5925772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5925772低密度ウエハース製品を作製する方法及び装置
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  • 特許5925772-低密度ウエハース製品を作製する方法及び装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925772
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】低密度ウエハース製品を作製する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/04 20060101AFI20160516BHJP
   A21D 13/08 20060101ALI20160516BHJP
   A21D 2/40 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   A21D2/04
   A21D13/08
   A21D2/40
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-517240(P2013-517240)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-530706(P2013-530706A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】EP2011060771
(87)【国際公開番号】WO2012000965
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月19日
(31)【優先権主張番号】10168242.5
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】アラチド, アブデサマッド
(72)【発明者】
【氏名】デ アクティス, ロドルフォ
(72)【発明者】
【氏名】ポウエル, ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】リードビーター, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】コー, ステファン
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−199536(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02105051(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02266406(EP,A1)
【文献】 特表2006−500061(JP,A)
【文献】 特開2008−131876(JP,A)
【文献】 特表2011−523855(JP,A)
【文献】 特開2011−045367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
A23G 1/00− 9/52
A21C 1/00−15/04
A21D 2/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハースを製造する方法であって、
(i)少なくともフラワー及び水を含むバターミックスを提供するステップと
(ii)バターミックスにエアレーション処理を施して、エアレーションされたバターミックスを得るステップと
(iv)エアレーションされたバターミックスを、バターデポジッターを介して加熱された焼成面に供給するステップと
(v)エアレーションされたバターミックスを焼成して、ウエハースを得るステップとを含み、
ステップ(ii)のエアレーション処理が、前記方法のどの直接ポンピングよりも下流にある方法。
【請求項2】
ステップ(ii)とステップ(iv)の間に、エアレーションされたバターミックスに混合を施すステップ(iii)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バターミックスにステップ(ii)のエアレーション処理を施した後、バターミックスの直接ポンピングがない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エアレーション処理が、バターがバターデポジッターに達する直前にあるか、又は前記エアレーション処理が、バター載置の一部を成している、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記エアレーション処理が、初期泡の製造後に続いて、前記泡のバターミックスへの注入を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記初期泡が、ミキシングヘッドを介して発泡剤及び水をポンピングすることにより製造される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記発泡剤が、タンパク質含有ミルク組成物、小麦タンパク質、卵白、及びセルロースからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記初期泡が、200%超の泡超過量を有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ウエハースを製造する装置であって、
(i)バターミックスを含む貯蔵槽と
(ii)どの直接ポンピングよりも下流にあるエアレーション処理を担うエアレーション機と
(iii)貯蔵槽からエアレーション機にバターミックスを提供するバター供給ポンプと
(iv)加熱された焼成面上にエアレーションされたバターミックスを載置するバターデポジッターと
を備える装置。
【請求項10】
前記装置が、直列型ミキシング機をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記直列型ミキシング機が、エアレーション機の下流に配置されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、別のバター原材料用の貯蔵槽をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、バターミックス又はエアレーションされたバターミックスに別の原材料を供給するための投与ポンプを備える、請求項9〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記エアレーション機が、ミキシングヘッドを備える、請求項9〜13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハースの製造、より詳細には、ウエハースの製造中、バターをエアレーションして、ウエハースのエアレーション構造を維持する方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
International Journal of Food Science and Technology 41、569〜576頁(2006年)において、Ismail S.Doganは、ウエハースを、バターから作られ、ホットプレート間で焼成された低水分の焼成食品として定義している。さらに、ウエハースシートの質は、フラワー(flour)の性質、水のレベル及び温度、混合操作、焼成時間及び温度によって主に制御されることを開示している。ウエハースの質は、密度、粘度、保持時間及び温度などのバターの特質の結果、並びに重量、表面色、脆弱性、及び含水量などのウエハースの性質によるものである。研究は、ウエハースが、製法及び加工に関して他のタイプのビスケットと共通点が少なく、水レベル及びグルテン含有量が、高品質のウエハースシートを得るのに重要であると結論付けている。
【0003】
Duncan Manleyは、書籍「Technology of biscuits,crackers and cookies」(296頁、第3版、Woodhhead Pub.ltd.)において、ウエハース製造では糊化デンプン中に気泡を生成させることが非常に重要であると開示している。バター混合中に空気の泡が含まれるが、バターをプレート上に載置する前に泡のほとんどがバターから浮き出してしまう。十分な時間が与えられずに泡がバターから出ていかないような条件の場合、バターの密度が使用中に変化してしまい、これが、変化可能且つ制御されていないテキスチャを与える点で、焼成後のシート重量に影響を与えてしまう可能性がある。彼はさらに、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素アンモニウム、又はその2つの混合物で化学的なエアレーションが通常達成されると述べている。炭酸水素アンモニウムは、特に有効である。経験から、バターの硬さと炭酸水素アンモニウムレベルとの組合せを考慮することが、バタースプレッド及びウエハースシート重量の制御に最も良い方法であることが示された。これらのエアレーション化学物質の量を増加させると、エアレーションが増大するが、この場合も、ウエハースのテキスチャはあるレベル以上に加工できなくなり、それまでに、これら化学物質が与える異質で不快な嫌な匂いが食材にとって不快で嫌なものになる。発酵中のバターに二酸化炭素を生成させてエアレーションする方法として酵母を使用することは、伝統的に知られている。特に工業規模でウエハースを製造する場合、バターの放置時間及び酵母を増殖させるのに適した温度は、通常、最新の混合及びバター処理システムにあまり実用的ではない。酵母は、現在、バターレシピではめったに使用されない。
【0004】
余分な水をウエハースバターミックスに添加して、ウエハースシートの有効密度を低減させることが知られている。水ベースのバターから任意のウエハースを焼成するプロセスでは、バターを加熱したとき、水は蒸気になり、蒸気はミックス中に泡を形成し、次いで、これらの泡は、ウエハース構造中に隙/穴(cell)を形成する。バター中の水が増加するにつれて、ますます蒸気が生成され、蒸気は最終ウエハース中により多くの隙/穴を生成し、その結果、バターの密度が低減される。ウエハースの外側層はまたより薄くなり、ウエハースにより軽いテキスチャを与える。低密度ウエハースは、いくつかのウエハース製品に消費者に望まれる軽さ及びパリパリ感を与える。
【0005】
しかし、この方法が作製する最終ウエハースの有効密度には最低限界がある。より多くの水を添加するにつれて、蒸気による穴の形成プロセスがうまく調節又は制御されないので、生成される隙/穴の構造は、ウエハース全体にわたってあまり均一ではなくなる。こうした方法で作製されたウエハースは、ウエハースの中に広がる不規則な穴構造及び大きな穴のために壊れやすい。
【0006】
さらに、より多くの水をバターミックスに添加するにつれて、プロセスの制御及び均一な質のウエハースの焼成がより難しくなる。次いで、別のもう1つの厄介な問題は、より多くの水をバターに添加した場合、バターの粘度が減少し、焼成プレート上に低粘度液体を載置すること及び取扱いが難しくなる。望ましくないバターの滴りが載置時に生じて、浪費及びオーブン発火を引き起こす。
【0007】
エアレーション化学物質ウエハースの高希釈又は高添加を使用して、非常に軽いウエハースを製造するこれらの方法の結果、隙/穴が不均一になり、それによって、丈夫さが低減し、さらなる取扱い、例えば、焼成プレートから単に取り出すときなどに破損が生じる。
【0008】
したがって、これらの公知法によるエアレーションは、ウエハースの質がテキスチャ及びフレーバーに関して妥協される前に限界がきてしまい、また、あまりにも脆くなるので、工業的プロセス、例えば、焼成プレートから単に取り出す際などの取扱いができない。したがって、密度<0.16g/cmの低密度ウエハースは、既存の技術において知られていない。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の一態様は、ウエハースを製造する方法であって、
(i)少なくともフラワー及び水を含むバターミックスを提供するステップと
(ii)バターミックスにエアレーション処理を施して、エアレーションされたバターミックスを得るステップと
(iii)任意選択で、エアレーションされたバターミックスに混合を施すステップと
(iv)混合されエアレーションされたバターミックスを、バターデポジッターを介して加熱された焼成面に供給するステップと
(v)混合されエアレーションされたバターミックスを焼成して、ウエハースを得るステップとを含み、
ステップ(ii)のエアレーション処理が、この方法のどの直接ポンピングよりも下流にある方法に関する。
【0010】
本発明の別の一態様は、ウエハースを製造する装置であって、
(i)バターミックスを含む貯蔵槽と
(ii)エアレーション処理を担うエアレーション機と
(iii)貯蔵槽からエアレーション機にバターミックスを提供するバター供給ポンプと
(iv)加熱された焼成面上にエアレーションされたバターミックスを載置するバターデポジッターとを備える装置に関する。
【0011】
本発明のさらに別の一態様は、次のものを有するウエハースを提供することである
(i)少なくとも1Nの破損力
(ii)20℃で測定した場合、高くとも0.16g/cmの有効密度。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】低い有効密度のウエハースを製造する装置の概略例を示す図である。 次に、本発明を以下でより詳細に説明する。
【発明の詳細な説明】
【0013】
これまで述べたように、丈夫なウエハース、及び低密度であっても、さらなる取扱い、例えば、焼成プレートから単に取り出すときなどに破損せず、また、エアレーション化学物質の添加又はレシピでの酵母の使用増加によって引き起こされる異質で嫌な匂いのしないようなウエハースを得る方法を提供することは興味深い。
【0014】
ウエハースの有効密度をより低下させるためには、プレート上に載置するフラワーの量を減少させると同時に、焼成型の中で完全なウエハースの形を維持する必要がある。現在の技術は、より多くの水をバターミックスに添加(バターを希釈)することによって、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素アンモニウムなどの化学膨張剤の濃度を増加させることによって、又は酵母を使用することによって、又はこれらの任意の組合せによって解決する。
【0015】
従来技術は、ウエハースのエアレーション構造を教示し、そこでは、エアレーションが、焼成時、すなわち、バターが加熱された焼成面に当たったときにおこる。これは焼成型内に生成された蒸気によって得られる。或いは、エアレーションは化学膨張剤によってなされ、その作用は焼成プレートの熱又は酵母によって誘発され、その両方が様々な嫌な匂いをウエハースに残す。さらに、焼成時に、添加水から生成された蒸気及び焼成プレート間の高圧が、ウエハースバター中に存在するどんな泡も破壊すると考えられている。
【0016】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、ウエハースバター中に前から存在する泡が、ウエハースにおける隙/穴のより均一な分布、及び/又は隙/穴のより均一なサイズを形成させることを見出した。焼成したウエハース中の隙/穴のより均一な分布及び/又はサイズの効果から、常法により焼成された、同じ有効密度を有するウエハースと比較して、より強いウエハースが作製される。これにより、以前よりも低い有効密度の完全なウエハースを作製することが可能になり、さらに、ウエハース焼成プレートからウエハースを取り出すことができるようになる。
【0017】
穴構造はさらに、既知の安定化剤、例えば、デンプン、変性デンプン、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、トラガカント、キサンタン、カラヤ、ジェランなどのガム、タール、セルロース及びセルロース誘導体、ペクチン又はゼラチン、マルトデキストリン、アルギン酸塩やカラゲナンなどのゲル化剤、アルブミン、カゼイン、カゼイン塩、粉乳、粉末ホエーなどのタンパク質又はタンパク源などを使用して強化することができる。
【0018】
しかし、実際には、バター中の泡の有益な効果を使用するのは非常に難しい。これは、従来の焼成装置では、ローブ型載置ポンプがラインの終わりに設置されており、この型のポンプがエアレーションされたバター中の泡を破壊するのが分かっているからである。したがって、ローブ又はインペラー型載置ポンプなどのどんな直接ポンピングよりも下流にステップ(ii)のエアレーション処理をおくことによって、ウエハースバターに取り入れられた泡が載置中に破壊されるのを防ぐことが可能である。本発明者らは、直接ポンピングによってとは、ローブポンプ又はインペラーポンプ又はプログレッシブキャビティポンプ(progressive cavity pump)又はダイヤフラムポンプ又はぜん動ポンプ又はギヤーポンプによるポンピングを意味している。
【0019】
焼成前のウエハースバター中のエアレーションの包含を妨げる第2の問題は、最も従来型のウエハース焼成装置では、各プレート間に空間があるウエハース焼成プレートが、個々に移動し、その結果、載置が断続的に行わなければならない(プレートの始めで開始、プレートの終わりで停止)ということである。プレート間にバターを載置しないようにするには、載置ポンプは、断続的に作動させなければならない。しかし、均一なエアレーションを維持するには、システムの圧力は一定のままでなければならず、そのためにポンプの連続的な作動が必要である。したがって、これを解決するには、バターのエアレーションを連続的に行い、さらに、エアレーションされたバターの載置を制御された方法で開始及び停止できることが必要である。また、より希釈したバターは各プレートの間に滴って、浪費及びオーブン発火を引き起こすが、バターのエアレーションはバターの粘度を増加させ、それによってこの問題は取り除かれる。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態では、本方法は、従来の移動プレートのウエハース焼成オーブンである。
【0021】
焼成プレート上に載置するプロセスを制御するために、バターが焼成プレート上にのみ載置し、各プレート間にはないように、ピストンアキュムレータを導入することができる。
【0022】
このピストンアキュムレータは、エアレーションされたバターを熱い焼成プレート上に載置する際に途切れを入れる緩衝システムとして作動し、ポンプ(例えば、載置ポンプ、バターポンプなど)は、持続的にバターをポンピングする。ピストンアキュムレータの使用によって、載置が断続的でも、連続し続けるポンピングプロセスがもたらされ、それによって、バターのエアレーションが維持される。
【0023】
本発明は、ウエハースを製造する方法であって、
(i)少なくともフラワー及び水を含むバターミックスを提供するステップと
(ii)バターミックスにエアレーション処理を施して、エアレーションされたバターミックスを得るステップと
(iii)任意選択で、エアレーションされたバターミックスに混合を施すステップと
(iv)混合されエアレーションされたバターミックスを、バターデポジッターを介して加熱された焼成面に供給するステップと
(v)混合されエアレーションされたバターミックスを焼成して、ウエハースを得るステップとを含み、
ステップ(ii)のエアレーション処理が、この方法のどの直接ポンピングよりも下流にある方法に関する。
【0024】
本発明の一実施形態では、バターミックスにエアレーション処理を施した後、バターミックスの直接ポンピングはない。
【0025】
本発明の別の一実施形態では、エアレーション処理は、バターがバターデポジッターに達する直前、例えば、加熱された焼成面上に載置する5分以内前など、例えば、5秒〜4分前の間隔など、好ましくは、2分以内前、例えば、10〜60秒前の間隔など、好ましくは、60秒以内前、より好ましくは、30秒以内前、最も好ましくは、加熱された焼成面上に載置する15秒以内前に行われる。本発明の一実施形態では、エアレーション処理は、バター載置の一部を成していてもよい。
【0026】
これまで述べたように、泡又はエアレーションされたバターの直接ポンピングは、バター中ひいてはウエハース中の隙/穴を破壊し、又はバター中ひいてはウエハース中の隙/穴のサイズ分布の−均一なバター品質の点から−望ましくない不均一分布を少なくとも引き起こすものである。したがって、本発明のさらに別の一実施形態では、本方法は、エアレーションされたバターミックスの任意の直接ポンピング及び/又はエアレーションされ初期泡の任意の直接ポンピングを含まない。
【0027】
本発明のさらに別の一実施形態では、エアレーション処理は、初期泡の製造を含む。
【0028】
本発明の一実施形態では、エアレーション処理は、エアレーション剤を用いた中〜高剪断ミキサーの使用を含む。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態では、初期泡は、発泡剤及び水を含む。より好ましい一実施形態では、発泡剤は、カゼイン酸ナトリウム又はHYFOAMA(商標)などのタンパク質含有ミルク組成物、セルロース、小麦タンパク質、及び卵白からなる群から選択される。
【0030】
本発明の一実施形態では、初期泡は、「Mondomix(商標)」ミキシングヘッドを介して発泡剤及び水をポンピングすることによって製造することができる。液相(発泡剤及び水)及びガス相は、ミキシングヘッドの注入口で合流し、制御された圧力下で正確な流れ制御を用いてホモジナイズされる。Mondomix(商標)ミキシングヘッドは、世界標準であり、両方が互いに噛み合うピンが取り付けられたロータ及びステータからなり、有効な他のシステムと異なり、製品に一定の剪断を与える。これにより、温度制御はより良好になり、泡のサイズ分布は制御可能になる。
【0031】
好ましくは、初期泡は、100%超、例えば、150%超、200%超、300%超、400%超、600%超、800%超、1000%超などの泡超過量を有する。
【0032】
本発明においては、用語「超過量」は、液体から泡への相変化による体積増加を指し、次式で定義される:
超過(%)=((エアレーション後の体積−エアレーション前の体積)/エアレーション前の体積)*100
【0033】
本発明のさらに別の一実施形態では、Mondomix(商標)ミキシングヘッドの注入口で液相と合流するガスは、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、空気、及びアルゴンからなる群から選択される。
【0034】
本発明について、低密度ウエハースの製造用装置を表す図1の添付図面を参照して説明する。図面を参照すると、バターミックス用の貯蔵タンク(10)は、供給ポンプ(11)を備えている。1種又は複数の発泡剤の溶液用の貯蔵槽(12)は、供給ポンプ(11)と同時に作動するように構成された投与ポンプ(13)を備えてもよい。溶液は、Mondomix(商標)ミキシングヘッド(14)を介してポンピングすることができ、ピンチ弁(15)は、Mondomix(商標)ミキシングヘッド(14)の背圧の調節に使用することができる。生じた泡は、注入ノズル(17)を経て、バターミックス輸送用のバター供給パイプ(19)に行くことができる。バター供給パイプ(19)において、注入ノズル(17)の下流に、初期泡をバターミックスとブレンドして、エアレーションされたバターを作るための直列型静的ミキサー(18)があってもよい。直列型静的ミキサー(18)の下流、バター供給パイプ(19)は、バターアーム(21)に通じており、それは加熱された焼成面上にバターを載置する位置にある(図示せず)。装置はさらに、加熱された焼成面上へのバターの載置を制御するピストンアキュムレータ(20)を備えてもよい。
【0035】
本発明の一態様は、ウエハースを製造する装置であって、
(i)バターミックスを含む貯蔵槽と
(ii)エアレーション処理を担うエアレーション機と
(iii)貯蔵槽からエアレーション機にバターミックスを提供するバター供給ポンプと
(iv)加熱された焼成面上にエアレーションされたバターミックスを載置するバターデポジッターとを備える装置に関する。
【0036】
一実施形態では、システム全体を通してのバターの流れを、エアレーション処理の上流のポンプによって推進させてもよい。
【0037】
本発明の別の一実施形態では、デポジッターを通るバターの流れを、アキュムレータシステムによって制御(開始及び停止)することができる。
【0038】
本発明の別の一実施形態では、システムを通るバターの流れを、エアレーション処理の上流のポンプによって推進させることができ、デポジッターを通るバターの流れを、アキュムレータシステムによって制御(開始及び停止)することができる。
【0039】
本発明の発明者らは、エアレーションされたバターをホットプレート上に載置する前に混合すると、エアレーションされたバター中の隙/穴がより良好で、より均一な分布になるので、さらに有利であることを見出した。このようにして、エアレーションされたバターを混合して製造したウエハースは、さらに低い有効密度を有する可能性のある、さらに強いウエハースを提供することができる。
【0040】
本発明の一実施形態では、本方法は、初期泡とバターとの混合をさらに含む。
【0041】
本発明の別の一実施形態では、装置は、バター−泡ミックスの混合をさらに含み、混合は、直列型ミキシング機によって施される。直列型ミキシング機は、均一のバターを作るために初期泡を穏やかに混合するべきである。本発明の特定の一実施形態では、直列型ミキシング機は、静的ミキサーである。静的ミキサーの例及びこうした静的ミキサーの機能は、欧州特許出願公開第2105051号に見ることができる。
【0042】
好ましくは、静的ミキサーは、ピストンアキュムレータの下流に配置してもよい。
【0043】
本発明のさらに別の一実施形態では、装置は、別のバター原材料用の貯蔵槽をさらに備える。
【0044】
本発明の別の一実施形態では、装置は、バターミックス又はエアレーションされたバターミックスに別の原材料を供給するための投与ポンプを備える。
【0045】
本発明のさらに別の一実施形態では、装置は、焼成済みウエハースを加熱された焼成面から取り出すための手段をさらに含む。
【0046】
本発明のさらに別の一実施形態では、エアレーション機は、Mondomix(商標)ミキシングヘッドを備えてもよい。
【0047】
本発明のさらに別の一実施形態では、ピンチ弁は、圧力を維持するために、混合相の前、エアレーション剤のエアレーションの後に配置してもよい。
【0048】
本発明の別の一実施形態では、加熱された焼成面は、焼成時間中にバターを圧迫する位置に固定された2枚のプレートを備えるウエハース焼成型である。
【0049】
ウエハースシートの質は、フラワーの性質、バター中の水とフラワーの比、並びにバター温度、混合操作、焼成時間及び温度によって制御することができる。質は、有効密度、粘度、保持時間、及び温度などのバターの特質によって、並びに重量、表面色、脆弱性、破損力、及び含水量などのウエハースの性質によって判断することができる。
【0050】
本発明の発明者らは、ウエハースバター中に前から存在する泡が、ウエハースにおける隙/穴のより均一な分布及び/又はサイズを形成させることを見出した。より均一な分布及び/又はサイズの効果から、常法により焼成された、同じ有効密度を有するウエハースと比較して、より強いウエハースが作製される。これにより、以前よりも低い有効密度のウエハースを作製することが可能になり、さらに、ウエハース焼成プレートからウエハースを取り出すことができるようになる。
【0051】
本発明の一態様は、次のものを有するウエハースに関する
(i)少なくとも1Nの破損力
(ii)20℃で測定した場合、高くとも0.16g/cmの有効密度。
【0052】
破損力という用語は、本発明においては、ウエハースを破壊するのに必要な力であることを理解されたく、以下に詳述する3点曲げ試験で測定されるものである。3点曲げ破損試験は、Stable Micro Systems(http://www.stablemicrosystems.com/)製のTA.HD Plus Texture Analyserを用いて、3点曲げリグ及びこの会社が供給するこのリグを駆動させる指数(Exponent)ソフトウェアを使用して実施する。力は、10cm離れた2箇所で、直径が1cmの水平円柱を有する各支柱上にサスペンドした(suspended)ウエハースの中心に加える。ウエハース片のサイズは20cm×8cmであり、ウエハース片は支柱上に均等に置かれる。プローブもまた、直径が1cmの水平円柱を有する。50kgロードセル(同様にStable Micro Systemsが供給)と共に、1.00mm/秒のプローブ試験速度を使用する。
【0053】
破損力は、加工性能を左右するウエハースの剛性に関係がある。
【0054】
本発明においては、用語「有効密度(ρoff)」は、サンプルの重量を「サンプルのエンベロープ体積」で割った商に関係がある。サンプルのエンベロープ体積は、サンプルの外面によって本質的に定義された体積に関係があり、サンプル内のいずれの空隙も含んでいる。
【0055】
本発明の一実施形態では、ウエハースは、少なくとも1N、例えば1〜4Nなど、好ましくは2〜4Nの破損力、及び/又は高くとも0.16g/cm、例えば0.08〜0.15g/cmなど、好ましくは0.12〜0.15g/cmの有効密度を有する。
【0056】
本発明の別の一実施形態では、ウエハースは、均一な分布の泡/隙を有する。
【0057】
本発明のさらに別の一実施形態では、ウエハースは、均一なサイズの泡/隙を有する。
【0058】
本発明の諸態様のうちの一態様の状況に記載される実施形態及び特徴がまた、本発明の他の諸態様に適用されることに留意されたい。
【0059】
本出願に引用される特許及び非特許参考文献はすべて、その全体を本明細書中に参考として援用される。
【0060】
次に、本発明を、以下の非限定的な例においてさらに詳細に説明する。
【0061】
以下の例は、例示のために示したものにすぎず、本発明の範囲をいかなる意味でも限定的なものと解釈するべきではない。
【0062】
例に関して変更及び改変を実施することができ、それらが依然として特許請求の範囲内にあることを当業者なら容易に認識するであろう。すなわち、これらの例の多くの変形形態が、種々の用途に対して本発明の化合物の天然に存在するレベルを合理的に調整するために広範囲の製法、原材料、加工、及び混合物を包含することを当業者なら認識するであろう。
【0063】
例1
初期泡を、カゼイン酸ナトリウム(発泡剤)の1%水溶液をMondomix(商標)ミキシングヘッドを介してポンピングすることにより作製する。300%超の初期泡超過量が作製される。ピンチ弁は、Mondomix(商標)ミキシングヘッドの背圧を調節するのに使用する。従来のウエハースバターは、従来行われていたように、エアレーション処理及びバターデポジッターに向かってバターポンプによってポンピングされる。バターがバターデポジッターに達する前に、初期泡をバターの流れに注入する。次いで、バター及び初期泡は、静的ミキサーを通過して、均一にエアレーションされたバターが製造される。次いで、エアレーションされたバターは、デポジッターを通ってウエハースプレート上に行く。
【0064】
有効密度が0.08g/cm〜0.16g/cmの範囲にある丈夫なウエハースがうまく焼成される。
【0065】
例2
初期泡を、HYFOAMA(商標)(発泡剤)の1%水溶液を直列型Mondomix(商標)ミキサーを介してポンピングすることにより作製する。エアレーションガスを、ミキサーの直前に溶液の流れに注入する。300%超の初期泡超過量が作製される。ピンチ弁は、ミキサーの背圧を調節するのに使用する。従来のウエハースバターは、従来行われていたように、エアレーション処理及びバターデポジッターに向かってバターポンプによってポンピングされる。バターがバターデポジッターに達する前に、初期泡をバターの流れに注入する。次いで、バター及び初期泡は、静的ミキサーを通過して、均一にエアレーションされたバターが製造される。次いで、エアレーションされたバターは、デポジッターを通ってウエハースプレート上に行く。
【0066】
有効密度が0.08g/cm〜0.16g/cmの範囲にある丈夫なウエハースがうまく焼成される。
【0067】
例3
従来法1:
余分な水をウエハースバターミックスに添加して、ウエハースの有効密度を低減させることが知られている。水ベースのバターから任意のウエハースを焼成するプロセスでは、バターを加熱したとき、水は蒸気になり、蒸気はミックス中に泡を形成し、次いで、これらの泡は、ウエハース構造中に穴を形成する。バター中の水が増加するにつれて、ますます蒸気が生成され、蒸気は最終ウエハース中により多くの泡/穴を生成し、その結果、バターの有効密度が低減される。この方法は、加工するには十分に丈夫な、有効密度が最小で約0.18g/cmのウエハースを作製することができる。
【0068】
例4
従来法2:
ウエハースの有効密度を低減させるために、ベーキングパウダーをウエハースバターに添加することが知られている。ベーキングパウダーを水の存在下で加熱したとき、バター中に泡を形成するガスが化学的に生成される。これらの泡は、ウエハース中の穴構造を形成する。添加するベーキングパウダーが増加するにつれて、生成するガスの量が増加し、したがって、ウエハースの最終有効密度が低減される。しかし、過剰なベーキングパウダーは、ウエハースに異質で嫌な匂いをもたらすので、添加することができるベーキングパウダーの量には限界がある。これは、従来法1を使用した場合と同じ有効密度をもたらすが、バターレシピが0.6%を超えるウエハースでは嫌な匂いの原因となる。
図1