(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925781
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】抵抗に基づく監視システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20160516BHJP
B66B 7/12 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
B66B5/02 C
B66B7/12 Z
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-527047(P2013-527047)
(86)(22)【出願日】2010年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-541479(P2013-541479A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2010047445
(87)【国際公開番号】WO2012030332
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2013年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ファーゴ,リチャード,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】キーヨ,ピーター
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−502928(JP,A)
【文献】
特表2002−540419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
B66B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造(16)に接続された抵抗回路(32)と、
抵抗回路(32)に接続されたインターフェース回路(34)と、
を備える、支持構造(16)用の監視システム(24)であって、
抵抗回路(32)は、支持構造(16)に電気的に接続された第1の組の抵抗器(40、40a−h)と、支持構造(16)に電気的に接続された第2の組の抵抗器(42、42a−j)とを備え、第1の組の抵抗器(40、40a−h)のうちの複数の抵抗器は、支持構造(16)に並列に配置されるとともに第1の組の抵抗器(40、40a−h)のうちの他の複数の抵抗器は、支持構造(16)に直列に配置され、第2の組の抵抗器(42、42a−j)は、支持構造(16)に並列に配置され、第2の組の抵抗器(42、42a−j)は、基準電圧を提供するように構成され、
インターフェース回路(34)は、1つまたは複数の比較器(46)を備え、各比較器(46)は、少なくとも1つの抵抗器(40、40a−h、42、42a−j)の一端の電圧を基準電圧と比較し、比較に対応する出力信号を生成するように構成され、インターフェース回路(34)は、出力信号に基づいて支持構造(16)の実効抵抗を監視するように構成されることを特徴とする、支持構造(16)用の監視システム(24)。
【請求項2】
インターフェース回路(34)は、出力信号に基づいて支持構造(16)の実効抵抗を連続的または断続的に監視するように構成されることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項3】
少なくとも1つの第2の組の抵抗器(42、42a−j)は、較正時に支持構造(16)の実効抵抗に近似するように調節可能であることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項4】
複数の第2の組の抵抗器(42、42a−j)は、調節可能であり、各抵抗器(42、42a−j)の最大抵抗が連続的に減少されるように、直列に構成されることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項5】
第2の組の抵抗器(42、42a−j)のそれぞれの抵抗は、異なっており、デュアルインラインパッケージ(DIP)スイッチを介してエネーブルにされることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項6】
DIPスイッチは、較正と同時にシールされることができることを特徴とする請求項5記載の監視システム(24)。
【請求項7】
インターフェース回路(34)は、出力信号に基づいてリレーを制御するように構成されることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項8】
第1の組の抵抗器(40、40a−h)は、互いに関して直列にかつ支持構造(16)に関して並列に接続されることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項9】
抵抗回路(32)はさらに、温度に依存する可変抵抗を有する少なくとも1つの温度依存抵抗器(43)を備えることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項10】
インターフェース回路(34)は、出力信号を受け取り、出力信号に基づいて支持構造(16)の1つまたは複数の作動状態を示すように構成された1つまたは複数の発光ダイオード(LED)(48)を備えることを特徴とする請求項1記載の監視システム(24)。
【請求項11】
各作動状態は、支持構造(16)が、短絡状態、通常状態、低摩耗状態、高摩耗状態、寿命末期状態、および開回路状態のうちの少なくとも1つにあることを示すことを特徴とする請求項10記載の監視システム(24)。
【請求項12】
支持構造(16)に接続された抵抗回路(32)であって、支持構造(16)に電気的に接続されるとともに、支持構造(16)に少なくとも部分的に並列に配置された第1の組の抵抗器(40、40a−h)と、支持構造(16)に電気的に接続された第2の組の抵抗器(42、42a−j)とを備えた抵抗回路(32)であって、第1の組の抵抗器(40、40a−h)のうちの複数の抵抗器が、支持構造(16)に並列に配置されるとともに第1の組の抵抗器(40、40a−h)のうちの他の複数の抵抗器が、支持構造(16)に直列に配置され、第2の組の抵抗器(42、42a−j)が、支持構造(16)に並列に配置された、抵抗回路(32)を提供し、
第2の組の抵抗器(42、42a−j)の両端に基準電圧を生成し、
少なくとも1つの第1の組の抵抗器(40、40a−h)の一端の電圧を基準電圧と比較し、
抵抗回路(32)によって支持構造(16)の実効抵抗が実質的に適合されるまで基準電圧を調節する、
ことを含むことを特徴とする、支持構造(16)用の抵抗に基づく監視システム(24)を較正する方法。
【請求項13】
抵抗回路(32)に接続された1つまたは複数の比較器(46)であって、各比較器(46)が、少なくとも1つの第1の組の抵抗器(40、40a−h)の一端の電圧を基準電圧と比較し、比較に対応する出力信号を生成するように構成された、1つまたは複数の比較器(46)を提供し、
抵抗回路(32)によって支持構造(16)の実効抵抗が実質的に適合されることを出力信号が示すまで第2の組の抵抗器(42、42a−j)の抵抗を調節する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
比較器(46)に接続された1つまたは複数の発光ダイオード(LED)(48)であって、各LED(48)が、出力信号を受け取り、比較に基づいて点灯するように構成された、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)(48)を提供し、
抵抗回路(32)によって支持構造(16)の実効抵抗が実質的に適合されることをLED(48)の点灯が示すまで第2の組の抵抗器(42、42a−j)の抵抗を調節する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
第2の組の抵抗器(42、42a−j)のそれぞれは、直列に接続されており、異なる最大抵抗がデュアルインラインパッケージ(DIP)スイッチを介してエネーブルにされるように構成されており、各DIPスイッチは、支持構造(16)の実効抵抗が実質的に適合されるまで、連続的にエネーブルまたはディセーブルにされることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項16】
いったん支持構造(16)の実効抵抗が実質的に適合されると第2の組の抵抗器(42、42a−j)をシールすることをさらに含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
支持構造(16)に接続された抵抗回路(32)であって、支持構造(16)に電気的に接続されるとともに、支持構造(16)に少なくとも部分的に並列に配置された第1の組の抵抗器(40、40a−h)と、支持構造(16)に電気的に接続された第2の組の抵抗器(42、42a−j)とを備えた抵抗回路(32)であって、第1の組の抵抗器(40、40a−h)のうちの複数の抵抗器が、支持構造(16)に並列に配置されるとともに第1の組の抵抗器(40、40a−h)のうちの他の複数の抵抗器が、支持構造(16)に直列に配置され、第2の組の抵抗器(42、42a−j)が、支持構造(16)に並列に配置された、抵抗回路(32)を提供し、
第2の組の抵抗器(42、42a−j)の両端に支持構造(16)の最初の実効抵抗に対応する基準電圧を生成し、
少なくとも1つの第1の組の抵抗器(40、40a−h)の一端の電圧を基準電圧と比較し、
比較に基づいて支持構造(16)の少なくとも1つの作動状態を決定する、
ことを含むことを特徴とする、支持構造(16)を監視する方法。
【請求項18】
抵抗回路(32)に接続された1つまたは複数の比較器(46)であって、各比較器(46)が、少なくとも1つの第1の組の抵抗器(40、40a−h)の一端の電圧を基準電圧と比較し、比較に対応する出力信号を生成するように構成された、1つまたは複数の比較器(46)を提供し、
比較器(46)に接続された1つまたは複数の発光ダイオード(LED)(48)であって、各LED(48)が、出力信号を受け取り、比較に基づいて点灯するように構成された、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)(48)を提供し、
LED(48)の点灯に基づいて支持構造(16)の少なくとも1つの作動状態を決定する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
第2の組の抵抗器(40、42a−j)のそれぞれの抵抗は、調節可能であり、デュアルインラインパッケージ(DIP)スイッチを介してエネーブルにされることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
各作動状態は、支持構造(16)が、短絡状態、通常状態、低摩耗状態、高摩耗状態、寿命末期状態、および開回路状態のうちの少なくとも1つにあることを示すことを特徴とする請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に監視システムおよび方法に関し、より詳細には、例えばエレベータシステムに使用されるベルトなどの支持構造の状態を監視するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属コードを含む被覆されたスチールベルトまたはワイヤロープなどの張力支持構造が、エレベータシャフトまたは昇降路内でエレベータかごを昇降させるのに使用される。張力支持構造の状態は、エレベータの作動の安全にとって極めて重要なので、張力支持の残存強度レベルを決定し、残存強度レベルが最低閾値より下になっているかを検出する必要がある。
【0003】
張力支持構造の強度は、時間の経過とともにエレベータの通常の作動によって低下し得る。支持構造の強度低下の主要な原因は、エレベータがエレベータシャフトまたは昇降路内で昇降する際の、シーブ周りにおける支持構造の曲げの繰り返しにある。支持構造の劣化は一般に、支持構造の長さに沿って均一ではなく、むしろ、高レベルのまたは過酷な曲げの繰り返しに晒される支持構造の領域に集中する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持構造内のケーブル、コード、または張力部材のいくつかの電気特性、例えば電気抵抗またはインピーダンスなどは、張力部材の断面積が減少するにつれて変化する。従って、支持構造の支持部材の電気特性に基づいて支持構造の残存支持強度を決定することができる。現在、支持構造の抵抗、従って支持構造の残存強度を監視する、抵抗に基づく検査方式を用いるいくつかの監視システムがある。このようなシステムは、いくつかのアナログ−デジタルおよび/またはデジタル−アナログインターフェース、およびデジタル信号処理を行う他の付加的な実装品を用いる、マイクロプロセッサに基づく設計に基づいて構成される。このようなシステムのデジタルの性質はさらに、サンプリングされたデータに基づいており、従って、連続的な監視を行うことや、検出された故障状態への即時の応答を行うことができない。
【0005】
従って、より複雑さが少なく、より費用対効果の大きい、監視システムおよび方法が必要とされている。代替としてまたは付加的に、支持構造の連続的な監視、および検出された故障状態への即時の応答を行うことができるシステムおよび方法が必要とされている。最後に、監視システムのより簡単でかつより正確な較正を行うことができる監視システムが、代替としてまたは付加的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、支持構造用の監視システムが提供される。監視システムは、支持構造に接続された抵抗回路と、抵抗回路に接続されたインターフェース回路とを備えることができる。抵抗回路は、第1の組の抵抗器および第2の組の抵抗器を備えることができ、第2の組の抵抗器は、基準電圧を提供するように構成される。インターフェース回路は、1つまたは複数の比較器を備えることができ、各比較器は、少なくとも1つの抵抗器の両端の電圧を基準電圧と比較し、比較に対応する出力信号を生成するように構成される。インターフェース回路は、出力信号に基づいて支持構造の実効抵抗を連続的に監視するように構成されることができる。
【0007】
本開示の別の態様によれば、支持構造用の抵抗に基づく監視システムを較正する方法が提供される。方法は、支持構造に接続された抵抗回路を提供することができ、抵抗回路は、支持構造に少なくとも部分的に並列に配置された第1の組の抵抗器および第2の組の抵抗器を備える。方法はさらに、第2の組の抵抗器の両端に基準電圧を生成し、少なくとも1つの第1の組の抵抗器の両端の電圧を基準電圧と比較し、抵抗回路によって支持構造の実効抵抗が実質的に適合されるまで基準電圧を調節することができる。
【0008】
本開示のさらに別の態様によれば、支持構造を監視する方法が提供される。方法は、支持構造に接続された抵抗回路を提供することができ、抵抗回路は、支持構造に少なくとも部分的に並列に配置された第1の組の抵抗器および第2の組の抵抗器を備える。方法はさらに、第2の組の抵抗器の両端に基準電圧を生成することができ、基準電圧は、支持構造の最初の実効抵抗に対応する。方法はまた、少なくとも1つの第1の組の抵抗器の両端の電圧を基準電圧と比較し、比較に基づいて支持構造の少なくとも1つの作動状態を決定することができる。
【0009】
本開示のこれらと他の態様は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むとより容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】
図3の監視システムが作動可能な例示的な閾値の表図。
【
図6】エレベータシステムの支持構造を監視する方法および抵抗に基づく検査システムを較正する方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、さまざまな修正例および代替の構成を実施することができるとはいえ、その特定の例示的な実施例が図面に示されており、以下に詳細に説明される。しかしながら、開示された特定の形態に限定される意図はなく、それどころか、本開示の趣旨および範囲に含まれる全ての修正例、代替の構成、および均等物を含むことを意図していることを理解されたい。
【0012】
本発明は、支持構造の監視に関する。
図1には、1つの可能な支持構造、特に張力支持構造、すなわちエレベータシステムの構成要素を懸架および/または駆動するのに使用されるベルトまたはロープが記載されているとはいえ、本発明は、他の支持構造と共に使用されることができる。他の例示的な支持構造としては、運動器具に使用されるベルトまたはジャケット付きコード、クレーンと共に使用されるジャケット付きケーブル、または引張り状態で使用される任意の他のマルチストランドワイヤまたはロープが挙げられる。ここで
図1を参照すると、エレベータシステム10が概略的な形態で示される。
図1に示されるエレベータシステム10の例は、もっぱら例示を目的としており、一般的なエレベータシステムのさまざまな構成要素のための背景技術を提示することを理解されたい。
【0013】
図1に示されるように、エレベータシステム10は、支持構造16によってつり合いおもり14に接続されたかご12を備えることができる。支持構造16は、機械20によって駆動されるトラクションシーブ18の周りに延在することができる。シーブ18と支持構造16の間のトラクションによって、かご12およびつり合いおもり14は、昇降路内を駆動されることができる。機械20の作動は、主コントローラ22によって制御されることができる。エレベータシステム10はさらに、支持構造16と電気的に連通し、および/または、支持構造16の直近の位置に配置されており、例えば連続的または断続的に、支持構造16の抵抗を測定することによって支持構造16の状態を検出するように構成された監視システム24を備えることができる。
【0014】
図2Aに移ると、1つの例示的な支持構造16が、ジャケット被覆28内に複数の個々の張力部材26を有するベルトの形態で提供される。張力部材26は、ストランドおよび/またはコードとして形成された従来のスチールワイヤ、または電気抵抗を有する任意の他の支持材料を備えることができる。ジャケット被覆28は、ポリウレタンまたは弾性材料などの、トラクションシーブ18とのトラクションを向上させるのに適した1つまたは複数の材料から成ることができる。ジャケット被覆28は付加的に、内部の電気的な連通を防止するのに適した電気絶縁材料を備えることができる。
図2Aの支持構造16の1つまたは(それぞれを含む)複数の張力部材26の作動状態または状況は、抵抗に基づく検査方式を用いて決定されることができ、この検査方式では、例えば、支持構造16の1つまたは複数の張力部材26の余寿命が、(例えばエレベータシステム10内の支持構造16の最初の据え付け時に測定された、ベースライン値に対する張力部材26の抵抗の増加によって決定されることができる。支持構造16の全体の作動状態または状況は、抵抗の何らかの実質的な増加が連続的または断続的に監視されることができる。支持構造16はまた、例えば、露出した張力部材26と電気伝導性のアイドラまたはトラクションシーブ18との間の何らかの接触または電気的短絡を検出することによって、ジャケット被覆28内の何らかの摩耗が監視されることができる。1つの可能な構成において、個々の張力部材26は、監視される抵抗の数を最小限に抑え、支持構造16ごとに1つの実効抵抗を提供するように、直列に接続されることができる。支持構造16の実効抵抗は、支持構造16によって示される、実際の抵抗、またはその任意の倍数、分数または割合を示すことができる。
図2Bの例示的な支持構造16の両端によって示されるように、張力部材26は、直列の形態で1つの支持構造16に関連する張力部材26を電気的に接続するように、コネクタ30を用いて交互のまたはそれぞれの端部において、一緒に接続または短絡されることができる。1つまたは複数の張力部材26を並列に監視すること、張力部材26の下位の組の並列および直列の監視の組み合わせなどの他の構成もまた可能である。
【0015】
ここで
図3を参照すると、エレベータシステム10の支持構造16の摩耗状態を監視する例示的なシステム24が提供される。他の構成も存在し得るとはいえ、
図3の監視システム24は、抵抗に基づく検査方式を用いる、抵抗回路32およびインターフェース回路34を備えることができる。監視システム24は、支持構造16の1つまたは複数の張力部材26を介して電気信号を供給し、抵抗または摩耗の増加を示すことができる電気信号の何らかの変化を監視することができる。
図3の特定の実施例においては、例えば、抵抗回路32は、支持構造16の両端に直流(DC)電圧を供給するように構成されることができ、インターフェース回路34は、支持構造16を通って流れる電流の変化を連続的に監視するように構成されることができる。代替として、回路34は、支持構造を通って流れる電流の変化を断続的に監視することができる。
【0016】
図3に示されるように、抵抗回路32は、支持構造16を通る電流を誘起するように、電圧入力ノード36および接地ノード38を介して支持構造16の両端に電圧を供給するように構成されることができる。抵抗回路32はさらに、支持構造16に電気的に接続され、一般に分圧器の構成で構成される、第1の組の抵抗器40および第2の組の抵抗器42を提供することができる。例えば、第1の組の抵抗器40は、支持構造16が時間の経過とともに摩耗するにつれて徐々に増加または減少する出力電圧を出力ノード44a−fにおいて提供することができ、一方、第2の組の抵抗器42は、次の較正まで一定のままである基準電圧を出力ノード44gにおいて提供することができる。第1の組の抵抗器42によって提供される出力電圧を第2の組の抵抗器42によって提供される基準電圧と比較することによって、支持構造16の作動状態または状況を決定することが可能となり得る。
【0017】
図3の抵抗回路32をさらに参照すると、抵抗器40a−eは、支持構造16に並列に配列されることができ、一方、抵抗器40f−gは、抵抗器40a−eおよび支持構造16に直列に配列されることができる。抵抗器40a−eは、支持構造16を通って流れる電流に対するその影響を最小限に抑えるように、比較的高い抵抗で構成されることができる。抵抗器40f−gは、抵抗器40hに実質的に並列に配置され、さらに、その抵抗に適合するように構成されることができる。従って、第2の組の抵抗器42は、例えば、監視システム24の最初の較正時に、出力ノード44a−fにおける出力電圧が比較されることができるベースラインまたは基準電圧を提供するように、支持構造16の実効抵抗に実質的に適合するように構成されることができる。代替の実施例では、抵抗器回路32は、パルス幅変調(PWM)装置、または、較正時に設定可能な基準電圧を提供する任意の他の適切な手段を用いて、出力ノード44gにおいて基準電圧を提供することができる。
【0018】
図4に示されるように、第2の組の抵抗器42は、例えば、デュアルインラインパッケージ(DIP)スイッチによってそれぞれがエネーブルにされる、連続的に増加または減少する異なる抵抗を有する、複数の調節可能抵抗器42a−jを用いることができる。連続的なスイッチエネーブル抵抗器42a−jそれぞれをエネーブルまたはディセーブルにすることによって、作業者または検査員は、最初の較正時に支持構造16の実効抵抗に、密接に近似させ、実質的に適合させることができる。図示の実施例では、隣接する各抵抗器42a−jの抵抗は、連続的に2倍だけ変化させることができる。代替として、各調節可能抵抗器42a−jの抵抗は、より低いかまたはより高い検出分解能を提供するようにそれぞれ、より大きいかまたはより小さい倍数だけ変化させることができる。他の代替例では、第2の組の抵抗器42は、検出分解能を変えるように、より多いかまたはより少ない数のスイッチエネーブル抵抗器42を備えることができる。なおさらなる代替例では、第2の組の抵抗器42は、1つまたは複数の可変抵抗器を用い、または調節可能抵抗を有する抵抗器の任意の他の組み合わせを用いることができる。いったん正確に較正されると、抵抗回路32は、支持構造16の実効抵抗の何らかの変化、従って支持構造16の何らかの摩耗が、抵抗器40a−h、42のいずれかの両端の検出された電圧または抵抗器40a−h、42のいずれかを通る検出された電流の変化となるように、構成されることができる。任意選択として、較正後の抵抗の何らかのさらなる変化を防止するように、1つまたは複数のスイッチエネーブル抵抗器42が、較正と同時に一時的にまたは永久にシールされることができる。さらなる修正例では、第2の組の抵抗器42は、温度の変化によって生じる支持構造16の実効抵抗のどのような変化にも実質的に適合するように、温度とともに変化する抵抗を有する抵抗熱装置(resistive thermal device)(RTD)または同様のものなどといった、1つまたは複数の温度依存抵抗器43を用いることができる。追加としてまたは任意選択として、温度依存抵抗器43は、例えば
図3に示されるように、第2の組の抵抗器42に直列に提供されることができる。
【0019】
図3の監視システム24に戻ると、インターフェース回路34は、抵抗回路32の1つまたは複数の出力ノード44a−gに接続されることができ、支持構造16の実効抵抗を連続的に監視するアナログの方法を用いることができる。より具体的には、一連の比較器46および発光ダイオード(LED)48を用いて、インターフェース回路34は、支持構造16の実効抵抗の検出された何らかの変化に基づいて支持構造16の対応する作動状態を作業者または検査員に視覚的に提供するように構成されることができる。支持構造16の実効抵抗の変化は、例えば、抵抗回路32の1つまたは複数の出力電圧信号の大きさを比較することによって決定されることができる。支持構造16の実効抵抗の検出された変化の程度に基づいて、1つまたは複数の予め設定された閾値が超えられ、それによって、さらに、
図5の表に従って1つまたは複数のLED48を点灯させおよび/またはその色を変化させることができる。さらに、各比較器46は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、または同様のものを伴わずに、エネーブル状態に応答して即座にLED48を点灯させるように、各LED48に直接接続されることができる。代替として、比較器46の複数の出力は、切り換え式または多重方式接続を介して単一のLED48に接続されることができる。
【0020】
図5に提供された構成によれば、1つまたは複数の比較器48は、抵抗回路32の出力ノード44a−fにおける各出力電圧信号を、例えば較正された第2の組の抵抗器42の出力ノード44gにおける基準電圧信号と比較することができる。支持構造16が摩耗するにつれて、支持構造16の実効抵抗は増加し、従って、
図3の抵抗器回路32において、出力ノード44a−dにおける電圧を減少させることができる。従って、支持構造16の摩耗の程度は、出力ノード44a−cにおける電圧が低下する程度を測定することによって決定されることができる。
図5に示されるように、例えば、出力ノード44cにおける電圧が最小閾値に到達し、出力ノード44gにおける電圧より下になると、支持構造16は、低摩耗状態にあり得る。出力ノード44cより高い電位にある出力ノード44aにおける電圧が最小閾値に到達し、出力ノード44gにおける電圧より下になると、支持構造16は、より重大な開回路または高摩耗状態にあり得る。同様の仕方で、インターフェース回路34はまた、通常状態、較正状態、短絡状態、寿命末期状態、および同様のもののうちの1つまたは複数を監視する閾値で予め設定されることができる。
【0021】
なお
図5を参照すると、いったん閾値が超えられると、対応する比較器46は、各LED48をエネーブルにして点灯させ、各作動状態を作業者または検査員に示すようにさせることができる。例えば、出力ノード44bにおける出力電圧信号が、出力ノード44gにおける出力電圧信号の閾値より下になると、対応するLED48は、赤色に点灯し、支持構造16が寿命末期状態にあると示すかまたは警告することができる。インターフェース回路34は、任意選択としてまたは追加として、監視システム24に注意を向けさせるように、関連する比較器46によってさらにエネーブルにされる、ブザー、呼び鈴、または同様のものなどといった可聴警報器50を提供することができる。代替として、インターフェース回路34はさらに、出力信号に基づいて1つまたは複数のLED48の点灯を管理し、警報通知を携帯機器に伝達し、警報通知を遠隔監視ステーションのモニターに表示し、および同様のものをするように構成されたマイクロコントローラを備えることができる。なおさらなる修正例では、
図3の比較器46はさらに、検出された故障に応答して、または閾値が超えられたときに、例えば一時的にエレベータシステム10の作動を停止するように1つまたは複数の制御信号をエレベータシステム10のコントローラ22に提供するように構成されることができる。制御信号は、離散信号、シリアル通信、コントローラエリアネットワーク(controller area network)(CAN)バス、または任意の他の適切な通信手段を用いて伝達されることができる。代替として、インターフェース回路34は、比較器46によって提供される出力信号に基づきおよび/または応答して、例えばエレベータ安全チェーンの1つまたは複数のリレーの状態を制御するように構成されることができる。このようにして、インターフェース回路34は、作動状態を、エレベータシステム10の例えばコントローラ22に通信することができる。
【0022】
ここで
図6に移ると、エレベータシステム10の支持構造16を監視する例示的な方法および監視システム24を較正する方法を示す流れ図が提供される。最初のステップとして、両方の方法とも、支持構造16に接続された第1の組の抵抗器40および第2の組の抵抗器42を有する抵抗回路32を提供することができる。任意選択のステップにおいて、各抵抗器40、44の両端の電圧を比較する複数の比較器46を有するインターフェース回路34が提供されることもできる。さらなるステップは、較正が必要か、例えば、支持構造16が新たに据え付けられたか、支持構造16が最近交換されたか、または同様のものなどを判断することができる。較正が必要な場合、支持構造16の電気負荷または実効抵抗が第2の組の抵抗器42の抵抗に適合する程度を決定するように、第1の組の抵抗器40の両端の1つまたは複数の電圧が第2の組の抵抗器42の両端の電圧と比較されることができる。
図5の構成に関して、例えば、出力ノード44e−dにおける各出力電圧信号が出力ノード44gにおける基準電圧信号と比較されることができる。出力ノード44gにおける基準電圧信号が、出力ノード44dにおける出力電圧信号より大きいかまたは出力ノード44eにおける出力電圧信号より小さい場合、1つまたは複数のLED48は、第2の組の抵抗器42の調節が必要であることを示すように点灯されることができる。例えば、出力ノード44gにおける電圧が出力ノード44dにおける電圧より大きい場合、
図5の第3の閾値に対応する第1のLED48は、緑色に点灯することができ、一方、
図5の第4の閾値に対応する第2のLED48は、完全にオフにされるかまたは異なる色に点灯されることができる。代替として、出力ノード44gにおける電圧が出力ノード44eにおける電圧より小さい場合、第1のLED48は、完全にオフにされるかまたは異なる色に点灯されることができ、一方、第2のLED48は、緑色に点灯されることができる。第2の組の抵抗器42の抵抗が、支持構造16の実効抵抗に十分に適合する場合で、かつ、出力ノード44gにおける電圧が、出力ノード44d−eそれぞれにおける電圧の上限と下限の間にあると測定された場合、第1、第2のLED48は両方とも、好結果の較正を示すように緑色に点灯されることができる。このようにして、第2の組の抵抗器42の抵抗は、第1、第2のLED48両方が、緑色に点灯して支持構造16の実効抵抗が適合されたことを示すまで、第2の組の抵抗器42の漸増の調節を可能とすることができる。
【0023】
較正がいったん終了するかまたは較正が必要でない場合、
図6における支持構造を監視する方法はまた、第1の組の抵抗器40の両端の1つまたは複数の電圧を第2の組の抵抗器42の両端の電圧と比較するステップを含むことができる。これは、支持構造16の実効抵抗が、較正時に第2の組の抵抗器42によって最初に適合された抵抗からそれている程度を決定するためのものである。
図5の構成を参照すると、例えば、出力ノード44a−fにおける各出力電圧信号は、出力ノード44gにおける基準電圧信号と比較されることができる。出力電圧44a−fにおけるいずれかの電圧が、
図5に提供されている各閾値に従って基準電圧信号より上かまたは下になると、1つまたは複数のLED48が、超えられた閾値に対応する支持構造16の作動状態を示すように点灯されることができる。例えば、出力ノード44fにおける電圧が、出力ノード44gにおける電圧より大きい場合、
図5の第1の閾値に対応する1つまたは複数のLED48が、短絡状態、または支持構造16の1つまたは複数の張力部材26が互いに不適当に接触している時を示すように、赤色に点灯されることができる。従って、支持構造16の即座の摩耗状態または作動状況が、点灯されたLED48によって提供される連続的なフィードバックに基づいて決定されることができる。
【0024】
上述に基づくと、本開示は、最少の複雑さおよびより費用対効果の大きい実装品を備えた、エレベータシステムの支持構造を監視するシステムおよび方法を提供することができることが理解され得る。本開示はまた、支持構造の連続的な監視を提供し、検出された故障状態への即座の応答を可能とすることができる。さらに本開示は、システムのより簡単でかつより正確な較正を行うことができるシステムおよび方法を提供する。
【0025】
特定の実施例のみを説明してきたが、上述の説明から当業者には代替例および修正例が明らかであろう。これらと他の代替例は、均等物と見なされ、本開示の趣旨および範囲に含まれる。