特許第5925810号(P5925810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925810
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】熱エネルギー貯蔵のための方法及び成分
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   F28D20/00 G
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-550853(P2013-550853)
(86)(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公表番号】特表2014-503786(P2014-503786A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2012051025
(87)【国際公開番号】WO2012101110
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年11月11日
(31)【優先権主張番号】1101337.2
(32)【優先日】2011年1月26日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513190003
【氏名又は名称】テクノロジー フォー リニューアブル エナジー システムズ(ティエフアールイーエス) ビーヴイビーエー
(73)【特許権者】
【識別番号】513190014
【氏名又は名称】ウニベルシテイト ヘント
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】デュチェイン,ワウテル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,クリスティアン
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−262748(JP,A)
【文献】 特開平03−047889(JP,A)
【文献】 特開2007−309561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱縮合反応を用いて反応混合物のエネルギー含量を貯蔵する又は増大させる方法であって、前記反応混合物が無機オキソ酸化合物及び/又はその塩と水とを含み、前記反応が前記反応混合物とは異なる熱源からの入熱によって可能となり、ここで該無機オキソ酸化合物及び/又はその塩が窒素、硫黄若しくはリンのいずれかのオキソ酸、又はその対応する塩である、方法。
【請求項2】
前記反応混合物とは異なる前記熱源が、産業プロセスからの余熱又は太陽エネルギー若しくは風力エネルギー等の天然資源に由来する熱のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水及び/又は前記無機オキソ酸化合物及び/又はその塩を前記反応混合物から除去する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物の前記貯蔵され、それぞれ増大したエネルギー含量を、後続プロセス工程において前記反応混合物の反応生成物の発熱加水分解によって放出させる工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機オキソ酸化合物及び/又はその塩が、一般式(I):
R−O−((OX(OQ)−O))−R' (I)
(式中、
Rは水素、炭化水素又はZ(後述)を表し、
Xは硫黄、窒素又はリンを表し、
Zは−(OX(OQ)−O)−R''を表し、
R'及びR''は各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオンを表し、
nは1又は2、mは0又は1、pは0又は1であり、
yは少なくとも1であり、
Qは各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオンを表す)
によって表される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記無機オキソ酸化合物及び/又はその塩が、一般式(Ia):
R−O−((OP(OQ)−O)−R' (Ia)
(式中、
R及びR'は各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオンを表し、
mは0又は1、yは少なくとも1であり、
各々のQは水素、炭化水素又は金属カチオンを表す)
によって表されるポリリン酸及び/又はその塩である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリリン酸又はその塩が、
a.以下の式:
n+2(3n+1) (Ib)
(式中、nは少なくとも2であり、MはH+又は金属カチオンである)
によって表される純粋な無機直鎖ポリリン酸若しくはその塩、
b.以下の式:
3n (Ic)
(式中、nは少なくとも3であり、MはH+又は金属カチオンである)
によって表される純粋な無機環状ポリリン酸若しくはその塩、
c.分岐鎖ポリリン酸若しくはその塩、又は、
d.それらの組合せ、
である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属カチオンが一価金属カチオン、又はK若しくはNaである、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
yが1〜100の範囲内、又は1〜10の範囲内、又は1〜3の範囲内にある、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記リン酸の塩が、ホスホエノールピルビン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、ホルミルリン酸、アセチルリン酸、プロピオニルリン酸、ブチリルリン酸又は他のカルボキシルリン酸、ホスホクレアチン、ホスホアルギニン、グルコースリン酸(グルコース−1−リン酸又はグルコース−6−リン酸)、フルクトースリン酸、グリセロール−3−リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒドリン酸、キシルロースリン酸、リボースリン酸、セドヘプツロースリン酸、エリトロースリン酸、リブロースリン酸、ホスホセリン、アスパルチルリン酸及びアデノシンリン酸を含む群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記吸熱縮合反応が以下の式によって表される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法:
HOXO(OH)OR' + R−O−((XO(OH)−O)y−1)−H → R−O−((XO(OH)−O))−R' + H
【請求項12】
Xがリンを表す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
エネルギーを回収又は貯蔵するシステムであって、
エネルギーを回収する回収手段、又は、
回収したエネルギーを貯蔵する貯蔵手段、
を備え、前記回収手段及び前記貯蔵手段が、無機オキソ酸化合物及び/又はその塩と水とを含む反応混合物で少なくとも部分的に満たした、前記反応混合物に対して吸熱縮合反応を行うのに好適な、反応槽に熱的に接続した加熱素子を備える少なくとも1つの反応槽を備え、ここで該無機オキソ酸化合物及び/又はその塩が窒素、硫黄若しくはリンのいずれかのオキソ酸、又はその対応する塩である、システム。
【請求項14】
回収及び貯蔵されたエネルギーを後続の発熱加水分解工程において放出させる放出手段を備えることを更に特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記反応混合物が、請求項2〜10のいずれか一項に記載の無機オキソ酸化合物及び/又はその塩を含むことを更に特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、可逆的化学反応を用いた熱エネルギー貯蔵又はヒートポンプの方法、すなわち外部熱源からの熱エネルギーを増大させる方法に関する。可逆的サイクルにおいて、無機オキソ酸化合物及び/又はその塩、例えば硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル及びスルホン酸エステル等と水とを含む混合物を、熱を放出及び回収するために、発熱加水分解反応を用いて脱重合し、吸熱縮合反応を用いて重合させる。したがって、本発明の第1の態様は、特に無機リンオキソ酸化合物及び/又はその塩、例えばポリリン酸等を用いた、熱エネルギー貯蔵の方法及び/又は外部熱源からの熱エネルギーを増大させる方法(以下、ヒートポンプとも称される)における無機オキソ酸化合物及び/又はその塩並びに水の使用を提供することである。
【0002】
本発明は、外部熱源を用いた無機オキソ酸化合物及び/又はその塩と水とを含む反応混合物の縮合反応を含む、熱エネルギーを貯蔵する方法を更に提供する。更なる態様では、本発明は、無機オキソ酸化合物又はその塩の発熱加水分解工程を含む、熱エネルギーを上記熱貯蔵から放出させる方法を提供する。
【0003】
本発明の方法及び成分を用いると、輸送可能な媒体に周囲環境で熱エネルギーを貯蔵することが可能である。結果として、連続的な発熱プロセスを不連続的な、更には無秩序な(dislocated)消費へと変換することが可能となる。さらに、熱を低い比電気消費量で周囲熱又は低温、例えば80℃〜200℃の熱源からより高い温度レベルへと増大させること、すなわち本発明の方法をヒートポンプとして用いることが可能である。
【背景技術】
【0004】
熱エネルギー貯蔵は、産業プロセス、再生可能エネルギー又は他の種々の供給源からの廃熱の使用に関する多くの用途で非常に重要である。さらに、熱再生は、化石燃料の需要を低減する手段及び温室効果ガス(kyoto gases)の排出を低減する手段として広く関心を集めている。
【0005】
幾つかの熱回収システムが既に存在している。熱はソーラーシンク若しくはヒートシンク、又は日光、地熱、余熱若しくは他の熱源を含む他の供給源から発生させることができる。
【0006】
熱回収システムの例は概して、以下の3つのカテゴリーに分けることができる。
I.顕熱<500MJ/m):
水系
熱媒油
II.材料中の相変化による潜熱<1MJ/m
熱を貯蔵する又は放出させる手段として相変化を用いる材料。一例は酢酸Na結晶化の使用である(理論熱密度300GJ/m〜800GJ/m)。
シリカゲルでの水の吸収熱の使用。
III.可逆的化学反応による反応熱<3GJ/m
硫酸と水との混合熱の使用。
水素とマグネシウムのような金属との反応熱の使用(理論熱密度3GJ/m)。
塩水和物
【0007】
提案されている代替エネルギーの多くは、日光又は風力をエネルギー源として使用するものである。本発明のプロセス(化学サイクル)によって、別の熱源(廃熱)を現在よりも容易に使用することができる。産業においては大量の廃熱(余熱とも呼ばれる)が発生するが、低エクセルギー状態であるために、更なるエネルギー利用、より具体的には発電に使用不可能なものとして環境中へ放出される。しかしながら、余熱を使用して、例えば住宅地域において住宅又は共同住宅を暖めること及び産業地域においてプロセス流を加熱することは道理にかなっている。例えば天然ガス又は他の燃料のような従来の高エクセルギーのエネルギー源を使用する代わりに、低エクセルギーの余熱を使用することもできる。これにより、高カロリーのエネルギー源が低カロリーの用途に使用されることがなくなる。これらの目的での余熱の使用に対する大きな障害の1つは、住宅暖房(heat)の不連続的な利用に対して産業の余熱が連続的に使用されること、更には熱を産生する産業が住宅地域から極めて遠くに位置していることである。エネルギー緩衝能、輸送の容易さ、及びこの化学サイクルを添付の特許請求の範囲で特許請求されるヒートポンプとして使用することの可能性は、余熱の使用に関する打開策をもたらし、温室効果ガスの低減の新たな道を開く。例えばボート及びパイプラインによる大量輸送又はコンテナ輸送のような安価な低CO発生輸送手段の使用は、大量の(intensive)COを発生するロードトラック(road truck)の代替となる。
【0008】
本明細書に更に記載される方法では、無機オキソ酸化合物又はその塩の重合体を、ポリオキソ酸化合物又はその塩との無機分子又は無機亜分子を含有する分子の(重)縮合反応によって形成するために熱が使用される。プロトン濃度、触媒、膜等が、合成(縮合反応)及び加水分解反応を促進するために用いられる。例えば、一リン酸及びポリリン酸を、熱の付加及び水の除去(縮合)によって更に重合させる。更に水を添加することによる加水分解反応によって、発熱性の脱重合熱が発生する。
【0009】
さらに、本方法及び本成分は、非常に低い、通常は1%〜10%の電力消費量で余熱から低温を発生させるか、又は熱源の熱エネルギーを増大させることを可能にする可逆的ヒートポンプとして使用することができる。したがって、これは以下のような既存のヒートポンプシステムとは明らかに異なる:
A.熱を低温供給源からより高い温度レベルへと増大させる有機ランキンサイクル)(ORC)、又は余熱から電気を生産するためのORCの使用。通常、それらの実際の熱効率又はCOPは、熱電比が約3〜5である。
B.真空条件下でLi−Brを水に溶解させることによる熱の吸収によって低温を生じさせるための、ヒートポンプとしての臭化リチウム又は水/NH3及び余熱の使用。特許文献1及び特許文献2では、このプロセスは結晶化抑制添加剤を用いて更に最適化され、効率が改善している。
C.例えば特許文献3に記載の酵素システム。全文及びWPI抄録アクセッション番号2008−H14900[46]及びCAS抄録アクセッション番号2008:538691を参照されたい。特許文献3では、高エネルギーの貯蔵及び放出を実現するためにATPが使用されている。これは分泌腺の使用によって行われ、結果として本発明の可逆的加水分解反応とは異なる。
D.固体又は固体結晶形態を形成する相転移を用いた、熱を放出させる結晶化プロセス。
特許文献4;松下電工株式会社;野村一夫;蓄熱材。特許文献4では、特定の核剤を用いた結晶化又は相転移によって熱を貯蔵するためにリン酸ナトリウム(NaHPO)が使用される。
特許文献5;Randall;1971年2月10日;熱貯蔵ユニットにおける又はそれに関連する改良。特許文献5では、リン酸エステルの結晶化熱の使用が熱の貯蔵に用いられる。
E.下記の2つの特許に記載のような、例えば酸化硫黄及び硫酸を水と接触させた後の溶解熱、又はSを空気と接触させることによる燃焼熱の使用。
特許文献6;Norman;1983年12月20日;硫酸−硫黄熱貯蔵サイクル。特許文献6では、低濃度硫酸を形成する、溶媒として働く水への二酸化硫黄又は高濃度硫酸の溶解熱、及び酸素による硫黄の燃焼が熱を産生するために使用される。熱貯蔵を実現するためには、高濃度硫酸及び硫黄を貯蔵する必要がある。この貯蔵は、より長時間の日光による熱の平準化(leveling)を可能にする。
特許文献7;Clark et al;1985年8月6日;化学ヒートポンプ及び化学エネルギー貯蔵システム。特許文献7では、硫酸の溶解熱が熱を貯蔵するか、又は廃熱の温度レベルを上昇させる(又は熱エネルギーを増大させる)ヒートポンプを実現するために使用される。
F.溶解熱を用いた更なるシステムは、例えばMgCl、Mg(OH)、Ca(OH)、炭酸ナトリウム及び水のような含水塩の適用に基づき、塩と水との混合熱を使用する。
非特許文献1。化学ヒートポンプに対する近年の特許の概説。Cheng Wang, Peng Zhang and Ruzhu Wang。化学ヒートポンプにおける熱ポテンシャル変換可逆的反応は、主として気液吸収、気固反応及び固体吸着を含む。
化学ヒートポンプ技術の可能性、Yukitaka Kato、2011年1月31日、高密度熱エネルギー貯蔵ワークショップ(Arlington,Virginia,USA)。主として、金属酸化物及び金属塩化物の反応が、現時点では化学ヒートポンプについて利用可能な最良の技法であるという知見に基づく化学ヒートポンプの現行の技術水準の説明。
G.ATPを高エネルギー密度の分子として利用する他のシステムは、単にこの化合物を電池性能又はモーター性能の向上剤として使用するものであり得る。例えば、以下のものが挙げられる。
特許文献8;酒井 et al;燃料電池、電子機器、移動体、発電システム及びコージェネレーションシステム。
特許文献9;Schneider,Thomas;シリンダーを回転させて動力(work)を生じるATP、アクチン及びミオシンを用いる分子モーター。
特許文献10;Camus et al.;1999年9月28日;独立した及び自律的な発電システム及び電力貯蔵システム。特に、ATPが使用される段落0006及び0056並びに図7。特許文献10には、電池性能を改善するためにATPが使用される電力貯蔵の方法が記載されている。
【0010】
しかし、これらは本発明のような可逆的加水分解反応によるものではない。代わりに、ATP合成は酵素的に(上記の特許文献3を参照されたい)、又は光合成(例えば、非特許文献2;光誘起プロトン勾配及びシリカマトリックス中に封入された小胞によって生じるATP生合成)によって引き起こされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,177,025号
【特許文献2】特開平01−161082号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第101168481号
【特許文献4】特開昭58−060198号公報
【特許文献5】英国特許第1396292号
【特許文献6】米国特許第4,421,734号
【特許文献7】米国特許第4,532,778号
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0218345号
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/0083710号
【特許文献10】欧州特許出願公開第1089372号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Recent patents on engineering, 2008, 2,208-216
【非特許文献2】Nature materials, 2005, Vol4(3); Luo et al pp220-224
【発明の概要】
【0013】
以上で既に説明したように、本発明は、無機オキソ酸化合物及び/又はその塩と水とを、熱源の熱エネルギーを貯蔵する及び/又は増大させるために可逆的加水分解反応において使用することができるという知見に基づく。
【0014】
熱エネルギーを貯蔵するために、本発明の無機オキソ酸化合物及び/又はその塩中に高エネルギー共有エステル結合が形成される、反応媒体からの水の除去(脱加水分解(dehydrolysis))によって開始する縮合反応を用いて熱を分子反応熱に変換する。
【0015】
例えば熱源の熱エネルギーを増大させる方法において、高エネルギー共有エステル結合から熱エネルギーを放出させるために、上記オキソ酸化合物又はその塩を含む反応媒体に水を添加することによって、本発明の無機オキソ酸化合物を加水分解反応に供する。
【0016】
このため、一態様では、本発明は、熱源からの熱エネルギーを貯蔵する及び/又は増大させる方法における無機オキソ酸化合物及びその塩並びに水の使用を提供する。
【0017】
上記使用において、熱源の熱エネルギーを、反応溶液からの水の除去並びにポリ無機オキソ酸化合物及び/又はその塩の形成を伴う縮合反応を用いて貯蔵する。
【0018】
上記使用において、熱源の熱エネルギーを、反応溶液への水の添加による無機オキソ酸化合物及び/又はその塩の加水分解反応を用いて増大させる。
【0019】
言い換えると、本発明は、熱源からの熱エネルギーを貯蔵する及び/又は増大させる方法における無機オキソ酸化合物及び/又はその塩並びに水の使用であって、
熱源の熱エネルギーを、反応溶液からの水の除去並びにポリ無機オキソ酸化合物及び/又はその塩の形成を伴う縮合反応を用いて貯蔵すること、並びに
熱源の熱エネルギーを、上記無機エステルを含む反応溶液への水の添加による無機オキソ酸化合物及び/又はその塩の加水分解反応を用いて増大させること、
を特徴とする、使用を提供する。
【0020】
上述の使用における又は本発明の方法において使用される無機オキソ酸化合物及び/又はその塩は、窒素、硫黄若しくはリンのいずれかのオキソ酸又はその対応する塩である。
【0021】
本発明の一態様では、使用される無機オキソ酸化合物及び/又はその塩は、一般式(I):
R−O−((OX(OQ)−O))−R’ (I)
(式中、
Zは−(OX(OQ)−O)−R’’を表し、
Rは水素、炭化水素又はZを表し、
R’及びR’’は各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表し、
Xは硫黄(S)、窒素(N)又はリン(P)を表し、具体的にはXはPを表し、
nは1又は2、mは0又は1、pは0又は1であり、
yは少なくとも1、具体的には1〜100、より具体的には1〜10、更により具体的には1〜4であり、代替的にはyは1〜3であり、
各々のQは独立して、水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表す)
によって表される。
【0022】
本発明の別の態様では、使用される無機オキソ酸化合物及び/又はその塩はポリリン酸である。したがって、本発明の目的は、熱源からの熱エネルギーを貯蔵する及び/又は増大させる方法におけるポリリン酸の使用を提供することである。
【0023】
具体的には、熱源からの熱エネルギーを貯蔵する及び/又は増大させる方法におけるポリリン酸の使用は、
熱源の熱エネルギーを、リン酸(一リン酸及びポリリン酸を含む)の脱加水分解反応(縮合反応)を用いて貯蔵すること、並びに、
熱源の熱エネルギーを、ポリリン酸を含む反応溶液への水の添加による該ポリリン酸の加水分解反応を用いて増大させること、
を特徴とする。
【0024】
本発明の別の態様では、使用される無機オキソ酸化合物及び/又はその塩は、一般式(Ia):
R−O−((OP(OQ)−O)−R’ (Ia)
(式中、
Rは水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表し、
R’は水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表し、
mは0又は1であり、
yは少なくとも1、具体的には1〜100、より具体的には1〜10、更により具体的には1〜4であり、代替的にはyは1〜3であり、
各々のQは水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表す)
によって表されるポリリン酸及び/又はその塩である。
【0025】
本発明のまた更なる態様では、使用されるポリリン酸及び/又はその塩は、
以下の式:Mn+2(3n+1) (Ib)(式中、nは少なくとも2、具体的には1〜10E6、より具体的には2〜5であり、MはH+又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaである)によって表される純粋な無機直鎖ポリリン酸及び/又はその塩、
以下の式:M3n (Ic)(式中、nは少なくとも3、具体的には1〜12、より具体的には3、4、5又は6であり、MはH+又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaである)によって表される純粋な無機環状ポリリン酸及び/又はその塩、
純粋な無機分岐鎖ポリリン酸及び/又はその塩、具体的には一価金属カチオン塩、更により具体的にはK又はNa、又は、
その組合せ、
である。
【0026】
本発明の特定の態様では、使用されるポリリン酸及び/又はその塩が、ホスホエノールピルビン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、ホルミルリン酸、アセチルリン酸、プロピオニルリン酸、ブチリルリン酸又は他のカルボキシルリン酸、ホスホクレアチン、ホスホアルギニン、グルコースリン酸(グルコース−1−リン酸又はグルコース−6−リン酸)、フルクトースリン酸、グリセロール−3−リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒドリン酸、キシルロースリン酸、リボースリン酸、セドヘプツロースリン酸、エリトロースリン酸、リブロースリン酸(ribulosephosphate)、ホスホセリン、アスパルチルリン酸及びアデノシンリン酸からなる群から選択される。
【0027】
上記の点に基づき、本発明は、吸熱縮合反応を用いて反応混合物のエネルギー含量を貯蔵する又は増大させる方法であって、上記反応混合物が無機オキソ酸化合物及び/又はその塩と水とを含み、上記反応が上記反応混合物とは異なる熱源からの入熱によって可能となる、方法を更に提供する。
【0028】
本発明は、上記反応混合物とは異なる熱源が、産業プロセスからの余熱又は太陽エネルギー若しくは風力エネルギー等の天然資源に由来する熱のいずれかである方法を更に提供する。言い換えると、本発明の使用又は方法のいずれにおいても熱源は限定されない。原則として、太陽エネルギー、地熱エネルギー、風力エネルギー、電気、産業からの余熱等から回収される又は得られる熱を含む任意の熱源を使用することができる。
【0029】
本発明は、前記水及び/又は前記無機オキソ酸化合物及び/又はその塩を前記反応混合物から除去する、方法を更に提供する。
【0030】
本発明は、前記反応混合物の前記貯蔵され、それぞれ増大したエネルギー含量を、後続プロセス工程において前記反応混合物の反応生成物の発熱加水分解によって放出させる工程を更に含む、方法を更に提供する。
【0031】
本発明は、前記無機オキソ酸化合物及び/又はその塩が窒素、硫黄若しくはリンのいずれかのオキソ酸、又はその対応する塩である、方法を更に提供する。
【0032】
本発明は、前記無機オキソ酸化合物及び/又はその塩が、一般式(I):
R−O−((OX(OQ)−O))−R’ (I)
(式中、
Rは水素、炭化水素又はZ(後述)を表し、
Xは硫黄、窒素又はリンを表し、
Zは−(OX(OQ)−O)−R’’を表し、
R’及びR’’は各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオンを表し、
nは1又は2、mは0又は1、pは0又は1であり、
yは少なくとも1であり、
Qは各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオンを表す)
によって表される、方法を更に提供する。
【0033】
本発明は、前記無機オキソ酸化合物及び/又はその塩が、具体的に一般式(Ia):
R−O−((OP(OQ)−O)−R’ (Ia)
(式中、
R及びR’は各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオンを表し、
mは0又は1、yは少なくとも1であり、
各々のQは水素、炭化水素又は金属カチオンを表す)
によって表れるポリリン酸及び/又はその塩である、方法を更に提供する。
【0034】
本発明は、前記ポリリン酸又はその塩が、
a.以下の式:
n+2(3n+1) (Ib)
(式中、nは少なくとも2であり、MはH+又は金属カチオンである)
によって表される純粋な無機直鎖ポリリン酸若しくはその塩、
b.以下の式:
3n (Ic)
(式中、nは少なくとも3であり、MはH+又は金属カチオンである)
によって表される純粋な無機環状ポリリン酸若しくはその塩、
c.分岐鎖ポリリン酸若しくはその塩、又は、
d.それらの組合せ、
である、方法を更に提供する。
【0035】
本発明は、前記金属カチオンが一価金属カチオン、より具体的にはK又はNaである、方法を更に提供する。
【0036】
本発明は、yが1〜100の範囲内、より具体的には1〜10の範囲内、更により具体的には1〜3の範囲内にある、方法を更に提供する。
【0037】
本発明は、前記リン酸の塩が、ホスホエノールピルビン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、ホルミルリン酸、アセチルリン酸、プロピオニルリン酸、ブチリルリン酸又は他のカルボキシルリン酸、ホスホクレアチン、ホスホアルギニン、グルコースリン酸(グルコース−1−リン酸又はグルコース−6−リン酸)、フルクトースリン酸、グリセロール−3−リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒドリン酸、キシルロースリン酸、リボースリン酸、セドヘプツロースリン酸、エリトロースリン酸、リブロースリン酸、ホスホセリン、アスパルチルリン酸及びアデノシンリン酸を含む群から選択される、方法を更に提供する。
【0038】
本発明は、前記吸熱縮合反応が以下の式によって表される、方法を更に提供する:
HOXO(OH)OR’ + R−O−((XO(OH)−O)y−1)−H → R−O−((XO(OH)−O))−R’ + H
【0039】
本発明は、エネルギーを回収又は貯蔵するシステムであって、
エネルギーを回収する回収手段、又は、
回収したエネルギーを貯蔵する貯蔵手段、
を備え、前記回収手段及び前記貯蔵手段が、無機オキソ酸化合物及び/又はその塩と水とを含む反応混合物で少なくとも部分的に満たした、前記反応混合物に対して吸熱縮合反応を行うのに好適な、反応槽に熱的に接続した加熱素子を備える少なくとも1つの反応槽を備える、システムを更に提供する。
【0040】
本発明は、回収及び貯蔵されたエネルギーを後続の発熱加水分解工程において放出させる放出手段を備えることを更に特徴とする、システムを更に提供する。
【0041】
本発明は、前記反応混合物が、無機オキソ酸化合物及び/又はその塩を含むことを更に特徴とする、システムを更に提供する。
【0042】
以下により詳細に提供されるように、反応溶液は、縮合/加水分解反応を触媒する触媒等のエステル化/加水分解反応に対する反応条件を最適化するための調整成分を更に含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1A】一般反応スキームを示す図である。
図1B】CHEMENERGYサイクルのブロック図である。
図2】無機リン酸エステル/ポリリン酸エステルを用いたCHEMENERGYサイクルを示す図である。
図3】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図4】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図5】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図6】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図7】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図8】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図9】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図10】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図11】熱源の熱エネルギーの増大におけるCHEMENERGYサイクルの種々の潜在的用途を示す図である。各々の用途についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
図12】CHEMENERGYサイクルの実用における反復(reoccurring)要素の一般フロー図である。貯蔵タンク(熱貯蔵タンク(複数の場合もあり)及び成分貯蔵タンク(複数の場合もあり)の両方)は任意である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、無機オキソ酸化合物及び/又はその塩、例えば硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル及びスルホン酸エステル等を、それぞれ発熱性及び吸熱性である可逆的な化学加水分解反応及び縮合反応を利用する熱エネルギー貯蔵の方法において使用することができるという知見に基づくものである。
【0045】
したがって、本発明の第1の目的は、熱エネルギー貯蔵の方法における無機オキソ酸化合物及び/又はその塩の使用を提供することである。
【0046】
本明細書中で使用される無機オキソ酸化合物及び/又はその塩は、窒素、硫黄若しくはリンのいずれかのオキソ酸又はその対応する塩を含む無機オキソ酸化合物及び/又はその塩の群から選択され、具体的には、無機オキソ酸又はその塩とは、リン酸化炭化水素及び無機(ポリ)リン酸並びにその塩等のリンのオキソ酸及び/又はその塩を指す。
【0047】
当該技術分野で一般に知られているように、重合とは、酸素リンカーを介したリン(P)、窒素(N)若しくは硫黄(S)に対する有機基の結合(エステル化)を指すか、又は上記有機基のアルコール前駆体若しくは上記無機オキソ酸のヒドロキシル基を用いる吸熱縮合反応によるH2O、すなわち水の生成を伴う窒素、硫黄若しくはリンの無機オキソ酸化合物若しくはその塩の重合を指す。上記エステル化の概略図を図1の工程(2)に示す。
【0048】
本発明の本方法で使用される無機オキソ酸化合物及び/又はその塩は、一般式(I):
R−O−((OX(OQ)−O))−R’ (I)
(式中、
Zは−(OX(OQ)−O)−R’’を表し、
Rは水素、炭化水素又はZを表し、
R’及びR’’は各々独立して、水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表し、
Xは硫黄(S)、窒素(N)又はリン(P)を表し、具体的にはXはPを表し、
nは1又は2、mは0又は1、pは0又は1であり、
yは少なくとも1、具体的には1〜100、より具体的には1〜10、更により具体的には1〜4であり、
各々のQは独立して、水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表す)
によって表される。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、無機オキソ酸化合物及び/又はその塩は、一般式(Ia):
R−O−((OP(OQ)−O)−R’ (Ia)
(式中、
Rは水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表し、
R’は水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表し、
mは0又は1であり、
yは少なくとも1、具体的には1〜100、より具体的には1〜10、更により具体的には1〜4であり、
各々のQは水素、炭化水素又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaを表す)
によって表されるポリリン酸及び/又はその塩である。
【0050】
上述のいずれかの式中の炭化水素は、ヒドロキシル基を含む任意の有機化合物、例えばアルコール、カルボン酸、エステル等であり得るか、又はヌクレオチド及び核酸を形成する糖及び塩基若しくは末端がヒドロキシル基の任意の有機分子であり得る。ここで、上記ヒドロキシル基は、リン酸エステル、ポリリン酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステル又はスルホン酸エステル、具体的にはリン酸エステル又はポリリン酸エステルを含む無機エステルを形成することが可能である。
【0051】
ヌクレオチドは当該技術分野で既知の意味を有し、種々の窒素塩基と種々の糖(ペントース)との任意の組合せからなり、ホスホリル基として一リン酸、二リン酸及び三リン酸(複数の場合もあり)を有し得る。
【化1】
塩基としては、例えばプリン、ピリミジン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、ジヒドロウラシル、1−メチルグアニン、リボチミジン、プソイドウリジン又は1−メチルイノシン(1-methylinosine)を挙げることができる。
糖(ペントース)としては、例えばフルクトース、リボース、D−リボフラノース又は2−デオキシ−D−リボフラノースを挙げることができる。
【0052】
核酸は当該技術分野で既知の意味を有し、種々のヌクレオチドの任意の組合せからなることができる。ヌクレオチドは、エステル結合によって連結した糖及びリン酸基からなる主鎖を介してポリヌクレオチド又は核酸に結合する。
【化2】
【0053】
本発明の一実施形態では、無機エステルは「ポリリン酸エステル」を含むか、又はそれからなる。ポリリン酸エステルは、ヒドロキシル基と水素原子との間で結合したアニオン性リン酸エステル重合体である。ここで生じる重合は縮合反応として既知である。リン酸化学結合は通常は高エネルギー共有結合であり、これは自然反応又は酵素触媒反応におけるかかる結合の切断時にエネルギーが利用可能であることを意味する。上記実施形態では、無機リン酸エステルの特定の基は、ホスホエノールピルビン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、ホルミルリン酸、アセチルリン酸、プロピオニルリン酸、ブチリルリン酸又は他のカルボキシルリン酸、ホスホクレアチン、ホスホアルギニン、グルコースリン酸(グルコース−1−リン酸又はグルコース−6−リン酸)、フルクトースリン酸、グリセロール−3−リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒドリン酸、キシルロースリン酸、リボースリン酸、セドヘプツロースリン酸、エリトロースリン酸、リブロースリン酸、ホスホセリン、アスパルチルリン酸及びアデノシンリン酸からなるが、これに限定されない。
【0054】
これらの分子の主な利点の1つは、それらが既に天然に利用可能であり、環境への影響が既に知られていることである。これらの分子は、生命が地球上に誕生してから、全ての生細胞のエネルギー貯蔵/供給を確実にするのに最も重要な構造体の1つを形成する。これらの成分が生細胞において使用されることから、これらの成分は確実に温和な温度、圧力及びpHに好適である。
【0055】
本発明の種々の実施形態に提示されるように、これらの特性によって、これらの成分は周囲環境での加熱プロセスに適したものとなる。
【0056】
本発明の別の特定の実施形態では、直鎖ポリリン酸及び/又はその塩は、以下の式:
n+2(3n+1) (Ib)
(式中、
nは少なくとも2、具体的には1〜10E6、より具体的には2〜5であり、
MはH+又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaである)
によって表される。
【0057】
本発明の別の特定の実施形態では、環状ポリリン酸及び/又はその塩は、以下の式:
3n (Ic)
(式中、
nは少なくとも3、具体的には1〜12、より具体的には3、4、5又は6であり、
MはH+又は金属カチオン、具体的には一価金属カチオン、更により具体的にはK又はNaである)
によって表される。
【0058】
本発明の方法において、反応生成物は、上記の生成物の任意の組合せを含む混合物であり得る。
【0059】
熱エネルギー貯蔵の方法では、それぞれ発熱性及び吸熱性である可逆的な化学加水分解反応及び縮合反応を、上述の分子のエネルギー貯蔵/供給能力を利用するために熱回収/貯蔵プロセス、熱輸送プロセス及び発熱プロセスと組み合わせる。
【0060】
このため、更なる実施形態では、本発明は、熱エネルギーを貯蔵する方法であって、外部熱源を用いた、図1の工程(2)に示されるような縮合反応(以下、無機オキソ酸及び/又はその塩の重合とも称される)を含む、方法を提供する。
【0061】
任意の利用可能な熱源を本発明の方法に使用することができる。典型的な熱源としては、太陽放射から回収される熱及び産業からの余熱が挙げられる。無機オキソ酸及び/又はその塩の重合反応によって、熱源の熱エネルギーを分子反応熱、すなわち式(I)、式(Ia)、式(Ib)及び式(Ic)の無機オキソ酸及び/又はその塩(「重合化合物」とも称される)に見られるような高エネルギー共有結合へと変換する。
【0062】
高エネルギー共有無機−酸素−無機連結結合、具体的には高エネルギーリン−酸素−リン結合は、約400kJ/kgのエネルギー密度を有する分子形態での熱エネルギーの貯蔵をもたらす(表1を参照されたい)。表1には溶解熱は記載されていないが、例えば無機オキソ酸又はポリリン酸が使用される場合、溶解熱は上記反応熱を上回る。例えば、ポリリン酸の場合、エネルギー密度は重合度及び温度レベルに応じて1GJ/mを超える場合がある。
【0063】
上記高エネルギー分子形態で、連続熱流を予め周囲環境で貯蔵/輸送することができる。したがって、これにより、連続的な発熱プロセスを不連続的又は無秩序な消費へと緩衝する方法がもたらされる。これは例えば、用途7及び用途9に示されるように、嵐の夜に電気抵抗を用いて回収熱として風力エネルギーを貯蔵し、朝のピーク時に蒸気生成又はORCによって熱を放出させるために実施することができる。
【0064】
【表1】
【0065】
上述の熱エネルギー貯蔵の方法において、「重合化合物」を任意に水性反応溶液から除去し、貯蔵する。本発明の方法において使用される水性反応溶液は、とりわけ変換を触媒するために使用される成分(以下、変換成分又は調整成分とも称される)の性質によって決定され、当業者に既知である。例えば、変換を触媒するために酵素を使用する場合、水性反応溶液は適当な緩衝溶液であり、例えば大腸菌(Escherichia coli)から抽出された5mg/lのデホスホリラーゼを含む溶液が使用され、変換を触媒するために生細胞を使用する場合、代わりに適当な細胞培養培地が使用される。変換を触媒するために使用される生細胞は、通常は無機リン酸エステル及びリン酸化(phosphorilised)された化合物の脱加水分解(dehydrolisation)によって熱を吸収することが知られる微生物、例えば細菌、例えばサルモネラ菌、レジオネラ菌又は大腸菌等からなる。
【0066】
反応に影響を与えるか、反応を開始、触媒又は抑制するために、溶媒の濃度の変化、すなわち水溶液の場合は水濃度の変化、又は溶媒中に存在する成分(例えば金属イオン等であるが、これに限定されない)の濃度の変化、又は反応成分の濃度の変化、例えば水溶液の場合は蒸発、又は初めに溶媒を水とともに蒸発させ、続いて濃縮し、第3の工程で例えば重量液液相分離(gravimetric liquid to liquid phase separation)によって溶媒から分離するような方法での有機溶媒による水の抽出を用いることができる。
【0067】
代替的には、上述の高エネルギー共有結合への熱エネルギーの変換を触媒するために、プロトン濃度の変化を用いることもできる。化学物質、例えば特別に設計した酸及び/又は塩基、立体的酸−塩基官能基(function)を含有する化合物によって、又は半透膜を用いてプロトン濃度に影響を与えることができる。
【0068】
典型的な例としては、例えばHCl(例えば水中30wt%〜40wt%で市販される)が、プロトン濃度を増大させるための化学物質として挙げられる。
【0069】
プロトン膜としては、以下の膜:Nafion(商標)、Solopor(商標)、Toyota PEM、3M PEM等のいずれかを含むが、これらに限定されない、例えば水素燃料電池に使用される市販のPEM、すなわち「プロトン交換膜」を挙げることができる。
【0070】
反応溶液の重合化合物の除去は、例えば分子サイズに基づく膜分離工程を含む種々のプロセス工程で行うことができる。上記実施形態では、変換成分は、好ましくは重合化合物よりもはるかに大きく、容易に互いに分離することができる。例えば、変換を触媒するために酵素を使用する場合、メッシュサイズがそれぞれ約10nm〜100nm及び1nm〜10nmの限外濾過膜又はナノ濾過膜が使用される。非常に大きな複合体構造については、精密濾過(100nm超)を用いることもできる。膜のメッシュサイズは、酵素の構造及び/又は分子量に応じて異なる。使用される生成物及び反応状況に応じて、異なる種類の市販の膜を選ぶことができる。種々の可能な例については表2を参照されたい。
【0071】
上記のナノ濾過、限外濾過及び精密濾過による膜濾過分離法以外にも、重合化合物を反応溶液から分離する他の手段が当業者に既知であり、例としては、例えば大きな(酵素)複合体の電気的特性又は磁気的特性に基づいて電場/磁場内で分離を行う分離法、遠心力若しくは沈降による密度に基づく分離法、沈殿(precipitation)に基づく分離法、液体から固体への相転移に続く固液分離、又は生成物のゲルへの付着、反応溶液からの水の蒸発による分離法、及び他多数が挙げられる。
【0072】
表2:2つの製造業者から市販されるナノ濾過、限外濾過及び精密濾過用の膜(ソース:www.sterlitech.com)
【表2】
【0073】
したがって、本発明の更なる目的は、周囲温度で熱エネルギーを貯蔵/輸送するための「重合化合物」の使用を提供することである。したがって、これにより、連続的な発熱プロセスを不連続的な消費へと緩衝する方法における「重合化合物」の使用がもたらされる。
【0074】
代替エネルギー源を提供すること、すなわち連続的な発熱プロセスを不連続的な熱放出システムへと変換することが目的であるため、本発明は、重合化合物から熱を放出させる手段であって、上記方法が図1の工程(1)に示されるような加水分解反応(以下、無機オキソ酸及び/又はその塩の加水分解とも称される)を含み、上記発熱反応によって放出された熱エネルギーを熱源として使用する、手段を更に提供する。
【0075】
上掲の重合反応に関しては、加水分解反応の反応条件は、とりわけ変換を触媒するために使用される成分(変換成分)の性質によって決定され、当業者に既知である。言い換えると、以下の実施例から明らかであるように、加水分解反応の反応条件を最適化するために供給流21の調整が行われる。例えば、変換を触媒するために酵素を使用する場合、適当な緩衝溶液、例えば大腸菌から抽出された5mg/lのホスホリラーゼを含む溶液が使用され、変換を触媒するために生細胞を使用する場合、代わりに適当な細胞培養培地が使用される。変換を触媒するために使用される生細胞は、通常は微生物、例えば細菌、例えばサルモネラ菌、レジオネラ菌又は大腸菌等からなる。細胞は、リン酸化化合物の加水分解(hydrolisation)によって熱を発生する。
【0076】
反応に影響を与えるか、反応を開始、触媒又は抑制するために、溶媒の濃度の変化、すなわち水溶液の場合は水濃度の変化、又は溶媒中に存在する成分(例えば金属イオン、細胞、酵素等であるが、これらに限定されない)の濃度の変化、又は反応成分の濃度の変化、例えば水溶液の場合は蒸発、又は初めに溶媒を水とともに蒸発させ、続いて濃縮し、第3の工程で例えば重量液液相分離によって溶媒から分離するような方法での有機溶媒による水の抽出を用いることができる。
【0077】
代替的には、上述の高エネルギー共有結合への熱エネルギーの変換を触媒するために、化学物質及びプロトン交換膜を使用することもできる。化学物質によって、又は半透膜を用いてプロトン濃度に影響を与えることができる。
【0078】
典型的な例としては、例えばNaOH(例えば水中50wt%で市販される)が、プロトン濃度を減少させるための化学物質として挙げられる。
【0079】
プロトン膜としては、以下の膜:Nafion(商標)、Solopor(商標)、Toyota PEM、3M PEM等のいずれかを含むが、これらに限定されない、例えば水素燃料電池に使用される市販のPEM、すなわち「プロトン交換膜」を挙げることができる。
【0080】
また、加水分解化合物を、重合化合物に関して上記に提示したような当該技術分野で既知の手順を用いて反応媒体から任意に除去する。上記形態では、加水分解された、すなわち窒素、硫黄又はリンのいずれかの無機ポリオキソ酸化合物又はその塩を形成することが可能なヒドロキシル基を含む化合物を、脱加水分解反応(上掲)における元物質として使用することができる。
【0081】
明らかに、本明細書に記載のCHEMENERGYサイクルを用いるシステム(設備)も本願の範囲内にある。第1の態様では、かかるシステムは、エネルギーを回収又は貯蔵するシステムであって、本明細書に記載の重合(縮合)反応を用いて熱源からエネルギーを回収する回収手段(下記用途においてAとして表される)と、回収したエネルギーを上記縮合反応の反応生成物の形態で貯蔵する貯蔵手段とを備えることを特徴とする、システムであり得る。上記熱を回収する手段は、本明細書に記載の無機オキソ酸化合物及び/又はその塩と水とを含む反応混合物のための、該反応混合物に対して吸熱縮合反応を行うのに好適な、反応槽に熱的に接続した加熱素子を備える少なくとも1つの反応槽を備える。
【0082】
第2の態様では、かかるシステムは、本発明による縮合反応の反応生成物中に貯蔵された熱エネルギーを放出させるシステムであって、本発明による縮合反応の反応生成物中に回収及び貯蔵されたエネルギーを、発熱加水分解工程を用いて放出させる放出手段(下記用途においてCとして表される)を備えることを特徴とする、システムであり得る。上記エネルギーを放出させる手段としては、本明細書に記載の無機オキソ酸化合物及び/又はその塩を含む反応混合物のための、発熱加水分解反応を行うのに好適な、反応槽に熱的に接続した加熱素子を備える少なくとも1つの反応槽が挙げられる。
【0083】
更なる態様では、システムは、本明細書に記載の重合(縮合)反応を用いて熱源からエネルギーを回収する手段(下記用途においてAとして表される)と、本発明による縮合反応の反応生成物中に回収及び貯蔵されたエネルギーを、発熱加水分解工程を用いて放出させる手段(下記用途においてCとして表される)との両方を備える。手段A及び手段Cの両方を備えるかかるシステムは、吸熱縮合反応Aの開始に用いられる低エクセルギー状態の熱を、発熱加水分解反応Cにおいてより高いエクセルギー状態へと増大させる、すなわち本発明のCHEMENERGYサイクルを用いたヒートポンプを確立することを可能にする。
【0084】
特定の実施形態では、本発明の縮合反応の反応生成物から熱エネルギーを放出させるシステムは、熱交換器(下記用途においてBとして表される)を更に備えることができる。この熱交換器は、発熱加水分解反応Cにおいて使用される反応混合物に供給される縮合反応の反応生成物の温度を上昇させるために使用される。限定されるものではないが、用いられる温度は約60℃〜500℃、通常は約120℃〜500℃、より具体的には約150℃〜300℃の範囲である。
【0085】
本発明は、以下の実験の詳細を参照することでより良く理解されるが、当業者であれば、それらが添付の特許請求の範囲においてより完全に説明される本発明の一例に過ぎないことを容易に認識するであろう。さらに、本願全体を通して様々な刊行物が引用される。これらの刊行物の開示は、本発明が関連する技術分野の現行の技術水準をより完全に説明するために、本願に引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【実施例】
【0086】
実施例1−リン酸エステル/ポリリン酸エステル
エネルギー密度
リン(phosphorous)化合物の加水分解は、反応条件に応じておよそ150kJ/kg〜500kJ/kgの反応エネルギーを有する。通常、提案される成分は400MJ/m3〜1000MJ/mのエネルギー密度を有する。例えば日光のようなより高温の供給源を用いると、例えばリン酸を、約3000MJ/mのエネルギー密度を有する乾燥Pが得られるまで濃縮(脱加水分解)することができる。
【0087】
他の熱貯蔵材料と比較して、本願で特許請求される重合要素の熱容量は実質的に高い。例えば、パラフィンの相変化反応は、反応条件に応じて20kJ/kg〜90kJ/kgを生じる(copyright(c)2002 John Wiley & Sons, Ltd.)。硫酸を水に溶解することは、反応条件に応じて300kJ/kg〜400kJ/kgの反応熱をもたらす(Chemical and engineering thermodynamics Stanley I. Sandler copyright(c)1989 John Wiley & Sons, Ltd.)。唯一の例外は、400MJ/mを生じるが、熱変換時に相転移を必要とする酢酸Naの結晶化である。
【0088】
使用される生成物
本明細書に記載のサイクルは、化学エネルギー(CHEMENERGY)に由来するエネルギーを有する。このサイクルは、リン酸化、ニトロ化(nitrolised)若しくはスルホン化(sulfonised)されることができる分子、又は炭化水素(PH)若しくは無機(ポリ)リン酸エステル(IP)、ポリリン酸、又は窒素、硫黄のいずれかの無機オキソ酸化合物及び/又はその塩を用いる。
1.ヌクレオチド:種々の窒素塩基と種々の糖(ペントース)との任意の組合せからなり、ホスホリル基として一リン酸、二リン酸及び三リン酸(複数の場合もあり)を有し得る。
塩基としては、プリン、ピリミジン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、ジヒドロウラシル、1−メチルグアニン、リボチミジン、プソイドウリジン、1−メチルイノシンを挙げることができる。
糖(ペントース)としては、フルクトース、リボース、D−リボフラノース、2−デオキシ−D−リボフラノースを挙げることができる。
2.核酸:種々のヌクレオチドの任意の組合せからなることができる。ヌクレオチドは、核酸中の2つの塩基間のリン酸エステル結合によって結合する。
3.全ての生細胞において最も多く見られるエネルギー分子:ホスホエノールピルビン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、ホルミルリン酸、アセチルリン酸、プロピオニルリン酸、ブチリルリン酸又は他のカルボキシルリン酸、ホスホクレアチン、ホスホアルギニン、グルコースリン酸(グルコース−1−リン酸又はグルコース−6−リン酸)、フルクトースリン酸、グリセロール−3−リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒドリン酸、キシルロースリン酸、リボースリン酸、セドヘプツロースリン酸、エリトロースリン酸、リブロースリン酸、ホスホセリン、アスパルチルリン酸及びアデノシンリン酸
4.無機ポリリン酸及びその塩
5.例えばセルロースのような無機(ポリ)硝酸エステル
6.無機(ポリ)硫酸エステル及び無機(ポリ)スルホン酸エステル
【0089】
特許請求されるのは、リン酸化(Phosphorylation)プロセス若しくは縮合プロセス若しくは重合プロセス自体、又は生細胞におけるエステル化プロセスではなく、「Chemenergyサイクル」と呼ばれる産業用途における熱貯蔵、ヒートポンプ、熱輸送プロセス及び発熱プロセスと組み合わせた縮合、具体的にはリン酸及び/又はポリリン酸及び/又はその塩の縮合プロセスである。
【0090】
全ての実施形態を、大規模又は非常に小さな規模で使用することができる。
大規模の例は、chemenergyサイクルで緩衝され、パイプライン及び大量輸送によって輸送される産業廃熱から熱を得る、同じ熱システムに接続した住宅地(都市)又は共同住宅の大きな産業ネットワーク又は住居ネットワークであり得る。
小規模の例は、例えば太陽システム/肥だめ/汚水だめのような発熱能力の小さな住宅/農場内での使用、及び熱性能を改善するための小さなChemenergyスキッドであり得る。
【0091】
「CHEMENERGY」プロセスの一般プロセス(図1
熱貯蔵
1.加水分解した成分の貯蔵1.1。
2.調整セクション1:酵素、イオン、細胞、新鮮物質(fresh substances)の添加。
3.調整生成物の貯蔵1.2。
4.反応セクション1:例えば限定されるものではないが、溶液から水を除去する、抽出する又は蒸発させることにより成分を重合させるための熱(thermal heat)の利用。
5.分離セクション1:重合した成分を調整生成物、廃棄物、酵素、酵素分離剤及び溶媒(又は具体的には水)から分離するための種々の分離法及び分離工程の利用。
6.重合した成分の貯蔵1.3。
熱放出
1.重合した成分の貯蔵2.1。
2.調整セクション2:酵素、イオン、細胞、新鮮物質、水の添加。
3.調整生成物の貯蔵2.2
4.反応セクション2:例えば限定されるものではないが、液相又は気相のいずれかの少量、例えば1%〜10%の水(調整溶液)を添加することにより成分を加水分解するためのヒートシンク(熱需要)の利用。
5.分離セクション2:重合した成分を調整生成物、廃棄物、酵素、酵素分離剤及び溶媒(又は具体的には水)から分離するための種々の分離法及び分離工程の利用。
6.加水分解した成分の貯蔵2.3。
【0092】
リン酸化化合物(phosphorylated compounds)を用いた「CHEMENERGY」プロセス(図2
熱回収ループ
1.供給流の貯蔵。
2.緩衝液貯蔵から添加することによる供給流の調整。反応に影響を与える重要な因子は、とりわけpH、イオン濃度(Ca2+、Mg2+、K、Na、Cl、Pi、酸等)、酵素、細胞、水、溶媒、温度及び他多数である。
3.反応:例えば限定されるものではないが、水濃度を低下させる、例えば水を抽出する、除去する及び/又は蒸発させることによって熱を吸収することによるポリリン酸又はその塩を形成するための縮合反応。
4.成分の分離:分離は種々のプロセス工程で行うことができる。具体的な分離法は分子のサイズ及び/又は極性に基づく膜分離である。例えば、より大きな成分は膜を通過することができず、より小さな成分は膜を通過することができる。
膜分離1a:限外濾過;ATPアーゼ(又はATPアーゼの一部)及びAT(D)P分離剤を残りの部分から分離する(表2、MWCO<2000、pH<7)。
膜分離1b:限外濾過;ATPアーゼ又はこの酵素の一部からのATP分離剤の分離(表2、MWCO<100000、pH<7)。
膜分離2:ナノ濾過;水の分離(表2、MWCO<100、pH<7)。
膜分離3:イオン交換膜;イオンの分離(表2、MWCO<500000、pH<7)。
5.周囲環境下での貯蔵及び輸送。
【0093】
用途によっては、上記のループの工程2及び工程3、例えばそれぞれ溶媒を蒸発させるために及び加水分解した成分を重合させるために、どちらも熱を用いる濃縮(up concentration)反応相及び熱吸収反応相を同時に行うことができる。
【0094】

さらに、水を溶液から分離する一部の用途では、重合した成分へ向かう反応を開始するために工程3と工程4とを組み合わせる。分離法は、水、又は有機溶媒と少量の水とを蒸発させ、その後凝縮し、重量液液抽出により溶媒から分離することであり得るが、これに限定されない。
【0095】
熱放出プロセスループ:
1.供給流の貯蔵。
2.緩衝液貯蔵から添加することによる供給流の調整。反応に影響を与える重要な因子は、とりわけpH、イオン濃度(Ca2+、Mg2+、K、Na、Cl、Pi等)、酵素、細胞、水、溶媒、温度及び他多数である。
3.反応:液相又は気相のいずれかの水又は他の加水分解剤を添加することによる、熱を放出する加水分解。
4.成分の分離:分離は種々のプロセス工程で行うことができる。具体的な分離法は分子のサイズ及び/又は極性に基づく膜分離である。例えば、より大きな成分は膜を通過することができず、より小さな成分は膜を通過することができる。

膜分離4a:限外濾過;ATPヒドロラーゼ(又はATPヒドロラーゼの一部)及びAD(T)P分離剤を残りの部分から分離する(表2、MWCO<2000、pH>7)。
膜分離4b:限外濾過;AD(T)P分離剤からのATPヒドロラーゼ(又はATPヒドロラーゼの一部)の分離(表2、MWCO<100000、pH>7)。
膜分離5:ナノ濾過;水の分離(表2、MWCO<100、pH>7)。
膜分離6:イオン交換膜;イオンの分離(表2、MWCO<500000、pH>7)。
他の分離工程順序を同じ効果で行うことができる。
5.周囲環境下での貯蔵及び輸送。
【0096】
用途によっては、上記のループの工程2及び工程3を同時に行うことができる。例えばpH等の調整が、反応の進行を維持するために必要であり得る。第2の加水分解成分が水である場合、成分の分離は必要ではない。
【0097】
図2の更なる詳細は、具体的には以下のとおりであり得る:
1.以下の温度でサイクルを行う:
1.1.反応1の生成物の温度:20℃(周囲貯蔵)。
1.2.反応1の入熱の温度:50℃超、好ましくは70℃超、具体的には80℃〜100℃超、より具体的には140℃超:利用可能な産業廃熱に由来する。
1.3.反応2の生成物の温度:少なくとも20℃(周囲貯蔵又はより高温)。
1.4.反応2の出熱:40℃超:セントラルヒーティングシステムに供給される。
2.反応1のpH7未満又はpH7超での濃度+80℃の水中のイオン及び水の濃度:例えば30%未満、好ましくは10%未満、具体的には15%未満、より具体的には5%〜10%未満又はそれ以下。
3.反応2のpH7超又はpH7未満での濃度+90℃の水中のイオン及び水の濃度:例えば30%超。AMP、ピロリン酸エステル、イオン等の全ての亜成分をここに示してはいない。
4.ATP及びADPとして、本発明に記載の成分の他の全ての種類のリン酸エステル又はポリリン酸エステル、具体的にはリン酸化炭化水素、リンの無機オキソ酸、又はより具体的にはポリリン酸及び/又はその塩を使用することもできる。
5.全ての相互接続流を示してはいないが、示された主要な接続は、当業者に機能性を示すのに十分である。
6.ポンプ、バルブ、パイプ及び他の標準的な処理装置の仕様は示さない。
7.膜を介した圧力損失及びパイプ圧力損失に応じた圧力。サイズ及び形状に応じて操作される。
8.媒体の状況(主に生じるpH)に注意して選ばれる装置材料。ハステロイ又はデュプレックス装置及びパイプの材料が本明細書に記載の用途に適している。媒体の状況に耐える他の材料(炭素鋼、ステンレス鋼又は他の合金)が、材料価格及び所望の寿命に応じて(in function of)選ばれる。
【0098】
供給原料及び原材料
このプロセスの原材料は、種々の方法で産生することができる。バイオマス又は利用可能な化学物質及び利用可能な化学物質反応経路から成分を抽出することができる。
使用される材料の多くは、例えば薬剤をin vitroでATP又は他のヌクレオチドに対して試験するためのPHを用いた、製薬会社によって申請される経路を有する。これらのプロセスは、主として小規模生産、例えばユニット式の熱サイクル用途に対するものである。
例えば酢酸及びリン酸のような市販の化学物質を組み合わせ、アセチルリン酸を産生することで作製することができる材料も存在する。これらの供給原料は、大規模熱サイクルに使用することができる。
好ましくは化学的に純粋な品質の市販の(ポリ)リン酸、通常は70%〜85%のHPOの使用。
【0099】
リン酸化炭化水素又は無機(ポリ)リン酸及び/又はその塩の使用は、このサイクルに特有である。
【0100】
pH調節
Chemenergyサイクルでは、熱貯蔵部及び熱放出部のどちらについても供給流の調整にはpH調節が含まれる。供給流のpHを調節する任意の既知の方法を用いることができ、例としては「プロトン交換膜」(PEM)、例えば市販のNafion(商標)、Solopor(商標)、Toyota PEM又は3M PEMの適用が挙げられる。上記の膜は、プロトンを一方向に(unidirectionally)かつ選択的に膜のカソード(負側)へと輸送する。代替的には、pH調節剤として特定の酸/塩基複合体又は化学物質を用いてpHが調節され、例としてはHCL又はNaOHの適用が挙げられる。
【0101】
実施例2−種々の開始条件でのCHEMENERGYプロセスの実験室試験
2.1.周囲温度での熱放出プロセスループからの開始
1.水とポリリン酸とを20℃及び周囲圧力で混合する。下記に詳述した熱平衡に基づいて、温度を約95℃に上昇させ、混合物を撹拌する。
2.温かい混合物上に真空を確立し、混合物を電気抵抗によって温かい状態に保ち、蒸発した水を空冷凝縮器で除去する。この蒸発(分離)工程の期間は、除去される水の量によって異なるが、約1時間持続する可能性がある。
3.ポリリン酸エステル混合物を周囲空気で25℃に冷却する。工程1に戻り、ループを閉じる。
【0102】
温度変化(ΔT)の計算:
混合物の質量%が10%の水と混合した90%のポリリン酸であり、反応熱が300kJ/kgであり、全平均混合物熱容量(Cp)が1.5kJ/kgKである場合、ΔTを単純な熱平衡から以下のようにして計算することができる。
反応熱=(質量)×(Cp)×(ΔT)
ゆえに、ΔT=(反応熱)/[(Cp)×(質量)]。
【0103】
上述の反応熱、Cp及び質量を用いると、1kg当たりの温度変化は75℃である。言い換えると、混合物の温度は25℃から100℃未満の或る温度まで上昇する。
【0104】
2.1.1.周囲温度(temperature)で開始した場合のCHEMENERGYプロセスの結果
この場合、反応ループが閉じているにもかかわらず、工程1において発生した熱が、工程2において混合物から水を蒸発させるのに必要とされるエネルギーによって相殺されるため、これは熱力学的に意味をなさない。上記の理由から、本明細書で説明されるように、本発明のCHEMENERGYプロセスは外部熱源、例えば産業プロセスからの廃熱との組合せで特に有用である。上記の状況下で、下記2.3.に説明されるように、熱放出プロセスループは例えば産業余熱レベル、例えば50℃〜200℃、より具体的には80℃〜150℃で開始することができるが、必要に応じてより高い温度、例えば300℃から開始することもできる。
【0105】
2.2.産業余熱温度での熱放出プロセスループからの開始
この実験では、或る温度レベルの熱をより高いレベルへと増大させることを目的とした。試験1の工程1の温度レベルは90℃としたが、これは産業において廃熱と呼ばれる温度レベル、すなわち60℃〜120℃の平均である。例えば、ディーゼルモーターの油冷レベルは約90℃である。循環性及び/又は可逆性を証明するために工程1〜工程4を順に10回試験した。
1.水とポリリン酸エステルとを90℃及び6バールの圧力下で混合する。上記の2.1と同様に75℃のΔTが期待され、混合物を連続的に撹拌しながら温度を約165℃に上昇させた。
2.この混合物を周囲空気で約90℃に冷却する。これをプロセスへの放出と比較する。
3.混合物を90℃の水で温かい状態に保ちながら、温かい混合物上の圧力を水が蒸発するまで解放し、蒸発した水を空冷凝縮器で除去した。この蒸発(分離)工程の期間は、除去される水の量によって異なるが、約1時間持続した。
4.混合物を6バールまで加圧し、蒸発した水を工程1で再使用し、CHEMENERGYプロセスのループを閉じた。温度上昇は約30℃〜50℃であった。
【0106】
2.2.1.余熱温度(temperature)で開始した場合のCHEMENERGYプロセスの結果
この第2の場合では、蒸発工程に余熱を使用するため、混合物の加圧には限られた量の付加的エネルギーしか必要とされない。結果として、(90℃で)低エクセルギー状態の余熱の一部が、約165℃のより高いエクセルギー状態へと増大する。この実験設計では、実験によって90℃の温水が165℃の熱気へと増大するだけである。しかし、他の流体(fluid)及び/又は熱源を用いれば、本サイクルによって余熱を有用なエネルギー及び/又は熱として生成又は活用する(valorize)ヒートポンプの作製が可能になると想像することができる。例えば、本発明のCHEMENERGYプロセスは、現在では例えば6バール〜10バールの高温蒸気によって開始する化学反応を、代わりに1バール〜2バールの余蒸気を用いて、化学プラントにおいて120℃〜130℃で開始するために用いることができる。
【0107】
したがって、無機オキソ酸及び/又はその塩、具体的には無機ポリリン酸及び/又はその塩の加水分解反応によって引き起こされる温度上昇と、熱/エネルギー源の存在との組合せが、はるかに高い、例えば200℃超の温度上昇をもたらすことができ、熱エネルギーの全体的な増大が得られる。CHEMENERGYサイクルの異なる環境における以下の例示的な用途から明らかとなるように、熱源は一方で水20を加水分解反応Cの反応生成物14から除去するため、すなわち言い換えると、重合(縮合)反応Aを開始するために使用され、他方で加水分解反応Cにおいて使用される縮合(重合)した成分10の熱エネルギーを増大させるために使用される。
【0108】
下記の潜在的用途のリストでは、一例として、熱/エネルギー源の影響下で水20の除去によって、上記一般式Ib及び一般式Icのポリリン酸10の液体混合物へと重合される単量体として、液体リン酸14を使用した(縮合反応A)(重合体の長さは概して1超、通常は約2〜7である)。この重合(縮合反応)によって得られる水を、最終的に調整成分21による調整後に逆反応、すなわち加水分解反応に(再)使用するか、又は大気中に吹き飛ばすことができる。エネルギー源に応じて、重合反応は真空、近真空又は僅かな過圧の下で行われる。約140℃から開始する熱源については、僅かな過圧、通常は0.1バール(bar)〜0.5バールが望ましいが、操作上の特定の要求に応じてより高い場合もある。約80℃までの熱源については、負圧(under pressure)、通常は0.025バール超又はそれ以下が望ましい。約80℃〜140℃の熱源については、圧力は、僅かな負圧±0.025バールからほぼ1atmまで様々である。上記の内容から明らかなように、CHEMENERGYサイクルの一部として、重合反応は約80℃〜200℃、通常は90℃〜120℃の範囲のより低い温度で行われる。
【0109】
逆反応、すなわち加水分解反応Cでは、上記ポリリン酸の液体混合物10は、圧力下でリン酸14及び幾らかの残りのポリリン酸へと発熱反応で加水分解(水の付加)される重合体として使用され、熱が放出されて、初期の余熱がより高いエネルギーレベルへと上昇する。この場合も、リン酸を上述の縮合反応Aにおいて供給流として(再)使用することができ、これにより本発明によるCHEMENERGYサイクルが閉じられる。加水分解反応では、水は液体形態又は蒸気形態のいずれかで温水として添加することができる。蒸気形態の場合、これにより、蒸気とポリリン酸とを混合した際に過剰に付加される縮合熱のために加水分解反応が一層加速する。原則として、加水分解反応は周囲温度で行うことができるが、供給源の熱エネルギーを増大させる温度上昇(ヒートポンプ)として使用する場合、例えば限定されるものではないが、60℃〜500℃、通常は120℃〜500℃、より具体的には約150℃〜300℃のようなより高い温度で行われる。上記例では、以上で既に説明したように、熱/エネルギー源は、加水分解反応Cに使用される縮合(重合)した成分10の熱エネルギーを増大させるためにも使用される。
【0110】
明らかに、上述のCHEMENERGYプロセスの中心は、リン酸へのポリリン酸の加水分解反応の可逆性である。このため、原則としてリン酸を閉じたサイクルで使用することができるが、幾らかの不可逆的副反応が起こり得るため、幾らかの流出物(廃棄物)及び新たなリン酸の供給が性能を最適に保つために必要とされ得る。結果として、リン酸濃度はサイクル全体を通して極めて安定しており、加水分解後は約80%〜90%、具体的には約84%〜94%、加水分解前は約90%〜100%、具体的には約94%〜100%の範囲という濃度となる。
【0111】
用途に応じて、サイクルは連続的(反応Aと反応Cとの間の連続流の供給流)、例えば:
用途1(図3):別のプロセス、環境、日光、風力等からの余熱を用いた、プロセス、倉庫、住宅地域、スーパーマーケット等からの加熱/冷却時の余熱を活用するためのヒートポンプ;
用途2(図4):例えば蒸気、水、熱媒油のような熱流体(fluidum)の或る温度/圧力レベルから、例えば蒸気、水、熱媒油のような熱流体のより高い温度/圧力レベルへと熱エネルギーを増大させるための熱ネットワーク間のヒートポンプ;
用途5(図5):産業プロセス、倉庫、スーパーマーケット、冷蔵庫、住宅、住宅地域等の冷却のために、プロセス、環境、日光、風力、熱電併給、住宅地等からの余熱を用いて、例えば高い周囲温度で低温を発生させるためのヒートポンプ技術の使用;
用途6(図6):発電時にタービン内に蒸気を膨張させるための蒸気発生用のヒートポンプを介したプロセス、日光、風力、熱電併給等からの余熱の変換;
用途7(図7):プロセス、日光、風力、熱電併給等からの余熱の増大、及び「有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)」(ORC)タービンを用いた電気への変換;
用途8(図8):用途7とほぼ同じであり、太陽熱が熱源として代わりに使用される点のみが異なるスキームを用いた、太陽熱の電気への変換。この特定の用途においては、重合(縮合)反応における液体リン酸14の一部14b又は全部を完全に脱加水分解し、純粋な(固体)又はほぼ純粋な(スラリー)Pを得るために太陽熱を使用することができる。この場合、非常に高いエネルギー密度が達成され(最大3GJ/m)、この材料を扱うためにシステムを設計しなければならない。これは例えば、非流動性リン酸を、直接的又は間接的な日光で絶えず加熱される容器(絶縁格納容器)内で加熱することによって行うことができ、固体Pの乾燥粉末又はスラリーのみが残るまで水蒸気がリン酸から漏出する;
用途9(図9):風力発電の緩衝。この用途では、電気抵抗によって熱を発生させ、この熱を、タービン内に蒸気を膨張させ、発電する蒸気発生用のヒートポンプを介して使用する。これは、電気ネットワークの下降時に風力によって発生した電気を緩衝し、電気ネットワークのピーク時に電気を後に残しておくために使用することができる;
不連続的、例えば:
用途3(図10):熱貯蔵タンクを用いた熱又はエネルギー(余熱、太陽熱、風力エネルギー、蒸気等)の緩衝。この用途では、プロセス、日光、風力等からの余熱を、熱を増大させ、貯蔵するために使用する。これは例えば、不連続的な熱産生体(producer)と連続的な熱消費体(consumer)とを接続するか(逆の場合も同様)、又は不連続的な熱産生と不連続的な熱消費とを結び付けるために使用することができる;
用途4(図11):余熱を実際に、一方で大量輸送船(bulk ship)、コンテナ、トラック、河川、ドック、運河、市街地、産業地域又は住宅地域等の別の場所へのパイプラインによる熱消費体(複数の場合もあり)又はそのネットワークへの「余熱」の輸送を可能にし、他方でそのエンジンの輸送媒体の余熱、例えば自動車、バス、ボート、トラック等のモーター熱等を変換し、例えば家庭、職場のような或る特定の位置に輸送し、活用することを可能にする輸送可能な形態に変換し、回収するという点で上記とは異なる熱輸送;又は、
それらの組合せ(用途10)のいずれかである。
【0112】
上記の点から、CHEMENERGYサイクルの連続的又は不連続的な操作が緩衝液タンクの有無に依存するという印象が与えられるが、以上の用途では、連続的又は不連続的なエネルギー変換しか言及されていない。反応溶液を緩衝するためにタンクを使用するか否かにかかわらず、全てのプロセス1〜9を連続的又は不連続的に行うことができる。結果として、以上の用途の各々における反復流を示す一般フロー図(図12)では、貯蔵タンクは任意である。
【0113】
以上の用途の各々についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
【0114】
【表3】
【0115】
用途に応じて、サイクルを、
小規模、例えば家庭用途から大産業規模まで、
小規模、大規模のスキッドで、
コンテナ又は他の可動プラットフォーム内で、
構築することができる。
【0116】
潜在的用途の各々において、簡単な温度、圧力、流又は他のセンサーを調節するバルブ及びシステムを用いてサイクルを制御するか、又は簡単な電気計装設計及び/又は非常に高度な電気計装設計、最大経済生産量で24時間稼働するためにインターネット、携帯電話等に接続したオプティマイザーを備える完全に自動化された設備のように設計することができる。オプティマイザーはオンデマンドで実行することができ、周囲温度、風力又は他の状況が設備の経済性又は性能を決定する。
【0117】
例えばHAZOPのような産業的に標準化された安全審査に基づいて、設備は、固有の安全設計(例えば真空及び最大動作圧力+10%)、圧力バルブ、若しくは自動化安全度機能(SIF又はSIL)システム又はこれらの設計基準の組合せを含む高安全基準を満たすように設計される。設備は、設備を安全動作範囲内に維持するために警報及び歯止めを用いて制御される。装置の基本設計はプロセス設計によって異なるが、詳述した装置設計は、PED、ASME又は他の地方の設計コード又は地方の最先端技術に適合するように異なり得る。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12