【実施例】
【0086】
実施例1−リン酸エステル/ポリリン酸エステル
エネルギー密度
リン(phosphorous)化合物の加水分解は、反応条件に応じておよそ150kJ/kg〜500kJ/kgの反応エネルギーを有する。通常、提案される成分は400MJ/m3〜1000MJ/m
3のエネルギー密度を有する。例えば日光のようなより高温の供給源を用いると、例えばリン酸を、約3000MJ/m
3のエネルギー密度を有する乾燥P
2O
5が得られるまで濃縮(脱加水分解)することができる。
【0087】
他の熱貯蔵材料と比較して、本願で特許請求される重合要素の熱容量は実質的に高い。例えば、パラフィンの相変化反応は、反応条件に応じて20kJ/kg〜90kJ/kgを生じる(copyright(c)2002 John Wiley & Sons, Ltd.)。硫酸を水に溶解することは、反応条件に応じて300kJ/kg〜400kJ/kgの反応熱をもたらす(Chemical and engineering thermodynamics Stanley I. Sandler copyright(c)1989 John Wiley & Sons, Ltd.)。唯一の例外は、400MJ/m
3を生じるが、熱変換時に相転移を必要とする酢酸Naの結晶化である。
【0088】
使用される生成物
本明細書に記載のサイクルは、化学エネルギー(CHEMENERGY)に由来するエネルギーを有する。このサイクルは、リン酸化、ニトロ化(nitrolised)若しくはスルホン化(sulfonised)されることができる分子、又は炭化水素(PH)若しくは無機(ポリ)リン酸エステル(IP)、ポリリン酸、又は窒素、硫黄のいずれかの無機オキソ酸化合物及び/又はその塩を用いる。
1.ヌクレオチド:種々の窒素塩基と種々の糖(ペントース)との任意の組合せからなり、ホスホリル基として一リン酸、二リン酸及び三リン酸(複数の場合もあり)を有し得る。
塩基としては、プリン、ピリミジン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、ヒポキサンチン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、ジヒドロウラシル、1−メチルグアニン、リボチミジン、プソイドウリジン、1−メチルイノシンを挙げることができる。
糖(ペントース)としては、フルクトース、リボース、D−リボフラノース、2−デオキシ−D−リボフラノースを挙げることができる。
2.核酸:種々のヌクレオチドの任意の組合せからなることができる。ヌクレオチドは、核酸中の2つの塩基間のリン酸エステル結合によって結合する。
3.全ての生細胞において最も多く見られるエネルギー分子:ホスホエノールピルビン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、ホルミルリン酸、アセチルリン酸、プロピオニルリン酸、ブチリルリン酸又は他のカルボキシルリン酸、ホスホクレアチン、ホスホアルギニン、グルコースリン酸(グルコース−1−リン酸又はグルコース−6−リン酸)、フルクトースリン酸、グリセロール−3−リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒドリン酸、キシルロースリン酸、リボースリン酸、セドヘプツロースリン酸、エリトロースリン酸、リブロースリン酸、ホスホセリン、アスパルチルリン酸及びアデノシンリン酸
4.無機ポリリン酸及びその塩
5.例えばセルロースのような無機(ポリ)硝酸エステル
6.無機(ポリ)硫酸エステル及び無機(ポリ)スルホン酸エステル
【0089】
特許請求されるのは、リン酸化(Phosphorylation)プロセス若しくは縮合プロセス若しくは重合プロセス自体、又は生細胞におけるエステル化プロセスではなく、「Chemenergyサイクル」と呼ばれる産業用途における熱貯蔵、ヒートポンプ、熱輸送プロセス及び発熱プロセスと組み合わせた縮合、具体的にはリン酸及び/又はポリリン酸及び/又はその塩の縮合プロセスである。
【0090】
全ての実施形態を、大規模又は非常に小さな規模で使用することができる。
大規模の例は、chemenergyサイクルで緩衝され、パイプライン及び大量輸送によって輸送される産業廃熱から熱を得る、同じ熱システムに接続した住宅地(都市)又は共同住宅の大きな産業ネットワーク又は住居ネットワークであり得る。
小規模の例は、例えば太陽システム/肥だめ/汚水だめのような発熱能力の小さな住宅/農場内での使用、及び熱性能を改善するための小さなChemenergyスキッドであり得る。
【0091】
「CHEMENERGY」プロセスの一般プロセス(
図1)
熱貯蔵
1.加水分解した成分の貯蔵1.1。
2.調整セクション1:酵素、イオン、細胞、新鮮物質(fresh substances)の添加。
3.調整生成物の貯蔵1.2。
4.反応セクション1:例えば限定されるものではないが、溶液から水を除去する、抽出する又は蒸発させることにより成分を重合させるための熱(thermal heat)の利用。
5.分離セクション1:重合した成分を調整生成物、廃棄物、酵素、酵素分離剤及び溶媒(又は具体的には水)から分離するための種々の分離法及び分離工程の利用。
6.重合した成分の貯蔵1.3。
熱放出
1.重合した成分の貯蔵2.1。
2.調整セクション2:酵素、イオン、細胞、新鮮物質、水の添加。
3.調整生成物の貯蔵2.2
4.反応セクション2:例えば限定されるものではないが、液相又は気相のいずれかの少量、例えば1%〜10%の水(調整溶液)を添加することにより成分を加水分解するためのヒートシンク(熱需要)の利用。
5.分離セクション2:重合した成分を調整生成物、廃棄物、酵素、酵素分離剤及び溶媒(又は具体的には水)から分離するための種々の分離法及び分離工程の利用。
6.加水分解した成分の貯蔵2.3。
【0092】
リン酸化化合物(phosphorylated compounds)を用いた「CHEMENERGY」プロセス(
図2)
熱回収ループ
1.供給流の貯蔵。
2.緩衝液貯蔵から添加することによる供給流の調整。反応に影響を与える重要な因子は、とりわけpH、イオン濃度(Ca
2+、Mg
2+、K、Na、Cl
−、Pi、酸等)、酵素、細胞、水、溶媒、温度及び他多数である。
3.反応:例えば限定されるものではないが、水濃度を低下させる、例えば水を抽出する、除去する及び/又は蒸発させることによって熱を吸収することによるポリリン酸又はその塩を形成するための縮合反応。
4.成分の分離:分離は種々のプロセス工程で行うことができる。具体的な分離法は分子のサイズ及び/又は極性に基づく膜分離である。例えば、より大きな成分は膜を通過することができず、より小さな成分は膜を通過することができる。
膜分離1a:限外濾過;ATPアーゼ(又はATPアーゼの一部)及びAT(D)P分離剤を残りの部分から分離する(表2、MWCO<2000、pH<7)。
膜分離1b:限外濾過;ATPアーゼ又はこの酵素の一部からのATP分離剤の分離(表2、MWCO<100000、pH<7)。
膜分離2:ナノ濾過;水の分離(表2、MWCO<100、pH<7)。
膜分離3:イオン交換膜;イオンの分離(表2、MWCO<500000、pH<7)。
5.周囲環境下での貯蔵及び輸送。
【0093】
用途によっては、上記のループの工程2及び工程3、例えばそれぞれ溶媒を蒸発させるために及び加水分解した成分を重合させるために、どちらも熱を用いる濃縮(up concentration)反応相及び熱吸収反応相を同時に行うことができる。
【0094】
さらに、水を溶液から分離する一部の用途では、重合した成分へ向かう反応を開始するために工程3と工程4とを組み合わせる。分離法は、水、又は有機溶媒と少量の水とを蒸発させ、その後凝縮し、重量液液抽出により溶媒から分離することであり得るが、これに限定されない。
【0095】
熱放出プロセスループ:
1.供給流の貯蔵。
2.緩衝液貯蔵から添加することによる供給流の調整。反応に影響を与える重要な因子は、とりわけpH、イオン濃度(Ca
2+、Mg
2+、K、Na、Cl
−、Pi等)、酵素、細胞、水、溶媒、温度及び他多数である。
3.反応:液相又は気相のいずれかの水又は他の加水分解剤を添加することによる、熱を放出する加水分解。
4.成分の分離:分離は種々のプロセス工程で行うことができる。具体的な分離法は分子のサイズ及び/又は極性に基づく膜分離である。例えば、より大きな成分は膜を通過することができず、より小さな成分は膜を通過することができる。
膜分離4a:限外濾過;ATPヒドロラーゼ(又はATPヒドロラーゼの一部)及びAD(T)P分離剤を残りの部分から分離する(表2、MWCO<2000、pH>7)。
膜分離4b:限外濾過;AD(T)P分離剤からのATPヒドロラーゼ(又はATPヒドロラーゼの一部)の分離(表2、MWCO<100000、pH>7)。
膜分離5:ナノ濾過;水の分離(表2、MWCO<100、pH>7)。
膜分離6:イオン交換膜;イオンの分離(表2、MWCO<500000、pH>7)。
他の分離工程順序を同じ効果で行うことができる。
5.周囲環境下での貯蔵及び輸送。
【0096】
用途によっては、上記のループの工程2及び工程3を同時に行うことができる。例えばpH等の調整が、反応の進行を維持するために必要であり得る。第2の加水分解成分が水である場合、成分の分離は必要ではない。
【0097】
図2の更なる詳細は、具体的には以下のとおりであり得る:
1.以下の温度でサイクルを行う:
1.1.反応1の生成物の温度:20℃(周囲貯蔵)。
1.2.反応1の入熱の温度:50℃超、好ましくは70℃超、具体的には80℃〜100℃超、より具体的には140℃超:利用可能な産業廃熱に由来する。
1.3.反応2の生成物の温度:少なくとも20℃(周囲貯蔵又はより高温)。
1.4.反応2の出熱:40℃超:セントラルヒーティングシステムに供給される。
2.反応1のpH7未満又はpH7超での濃度+80℃の水中のイオン及び水の濃度:例えば30%未満、好ましくは10%未満、具体的には15%未満、より具体的には5%〜10%未満又はそれ以下。
3.反応2のpH7超又はpH7未満での濃度+90℃の水中のイオン及び水の濃度:例えば30%超。AMP、ピロリン酸エステル、イオン等の全ての亜成分をここに示してはいない。
4.ATP及びADPとして、本発明に記載の成分の他の全ての種類のリン酸エステル又はポリリン酸エステル、具体的にはリン酸化炭化水素、リンの無機オキソ酸、又はより具体的にはポリリン酸及び/又はその塩を使用することもできる。
5.全ての相互接続流を示してはいないが、示された主要な接続は、当業者に機能性を示すのに十分である。
6.ポンプ、バルブ、パイプ及び他の標準的な処理装置の仕様は示さない。
7.膜を介した圧力損失及びパイプ圧力損失に応じた圧力。サイズ及び形状に応じて操作される。
8.媒体の状況(主に生じるpH)に注意して選ばれる装置材料。ハステロイ又はデュプレックス装置及びパイプの材料が本明細書に記載の用途に適している。媒体の状況に耐える他の材料(炭素鋼、ステンレス鋼又は他の合金)が、材料価格及び所望の寿命に応じて(in function of)選ばれる。
【0098】
供給原料及び原材料
このプロセスの原材料は、種々の方法で産生することができる。バイオマス又は利用可能な化学物質及び利用可能な化学物質反応経路から成分を抽出することができる。
使用される材料の多くは、例えば薬剤をin vitroでATP又は他のヌクレオチドに対して試験するためのPHを用いた、製薬会社によって申請される経路を有する。これらのプロセスは、主として小規模生産、例えばユニット式の熱サイクル用途に対するものである。
例えば酢酸及びリン酸のような市販の化学物質を組み合わせ、アセチルリン酸を産生することで作製することができる材料も存在する。これらの供給原料は、大規模熱サイクルに使用することができる。
好ましくは化学的に純粋な品質の市販の(ポリ)リン酸、通常は70%〜85%のH
3PO
4の使用。
【0099】
リン酸化炭化水素又は無機(ポリ)リン酸及び/又はその塩の使用は、このサイクルに特有である。
【0100】
pH調節
Chemenergyサイクルでは、熱貯蔵部及び熱放出部のどちらについても供給流の調整にはpH調節が含まれる。供給流のpHを調節する任意の既知の方法を用いることができ、例としては「プロトン交換膜」(PEM)、例えば市販のNafion
(商標)、Solopor
(商標)、Toyota PEM又は3M PEMの適用が挙げられる。上記の膜は、プロトンを一方向に(unidirectionally)かつ選択的に膜のカソード(負側)へと輸送する。代替的には、pH調節剤として特定の酸/塩基複合体又は化学物質を用いてpHが調節され、例としてはHCL又はNaOHの適用が挙げられる。
【0101】
実施例2−種々の開始条件でのCHEMENERGYプロセスの実験室試験
2.1.周囲温度での熱放出プロセスループからの開始
1.水とポリリン酸とを20℃及び周囲圧力で混合する。下記に詳述した熱平衡に基づいて、温度を約95℃に上昇させ、混合物を撹拌する。
2.温かい混合物上に真空を確立し、混合物を電気抵抗によって温かい状態に保ち、蒸発した水を空冷凝縮器で除去する。この蒸発(分離)工程の期間は、除去される水の量によって異なるが、約1時間持続する可能性がある。
3.ポリリン酸エステル混合物を周囲空気で25℃に冷却する。工程1に戻り、ループを閉じる。
【0102】
温度変化(ΔT)の計算:
混合物の質量%が10%の水と混合した90%のポリリン酸であり、反応熱が300kJ/kgであり、全平均混合物熱容量(Cp)が1.5kJ/kgKである場合、ΔTを単純な熱平衡から以下のようにして計算することができる。
反応熱=(質量)×(Cp)×(ΔT)
ゆえに、ΔT=(反応熱)/[(Cp)×(質量)]。
【0103】
上述の反応熱、Cp及び質量を用いると、1kg当たりの温度変化は75℃である。言い換えると、混合物の温度は25℃から100℃未満の或る温度まで上昇する。
【0104】
2.1.1.周囲温度(temperature)で開始した場合のCHEMENERGYプロセスの結果
この場合、反応ループが閉じているにもかかわらず、工程1において発生した熱が、工程2において混合物から水を蒸発させるのに必要とされるエネルギーによって相殺されるため、これは熱力学的に意味をなさない。上記の理由から、本明細書で説明されるように、本発明のCHEMENERGYプロセスは外部熱源、例えば産業プロセスからの廃熱との組合せで特に有用である。上記の状況下で、下記2.3.に説明されるように、熱放出プロセスループは例えば産業余熱レベル、例えば50℃〜200℃、より具体的には80℃〜150℃で開始することができるが、必要に応じてより高い温度、例えば300℃から開始することもできる。
【0105】
2.2.産業余熱温度での熱放出プロセスループからの開始
この実験では、或る温度レベルの熱をより高いレベルへと増大させることを目的とした。試験1の工程1の温度レベルは90℃としたが、これは産業において廃熱と呼ばれる温度レベル、すなわち60℃〜120℃の平均である。例えば、ディーゼルモーターの油冷レベルは約90℃である。循環性及び/又は可逆性を証明するために工程1〜工程4を順に10回試験した。
1.水とポリリン酸エステルとを90℃及び6バールの圧力下で混合する。上記の2.1と同様に75℃のΔTが期待され、混合物を連続的に撹拌しながら温度を約165℃に上昇させた。
2.この混合物を周囲空気で約90℃に冷却する。これをプロセスへの放出と比較する。
3.混合物を90℃の水で温かい状態に保ちながら、温かい混合物上の圧力を水が蒸発するまで解放し、蒸発した水を空冷凝縮器で除去した。この蒸発(分離)工程の期間は、除去される水の量によって異なるが、約1時間持続した。
4.混合物を6バールまで加圧し、蒸発した水を工程1で再使用し、CHEMENERGYプロセスのループを閉じた。温度上昇は約30℃〜50℃であった。
【0106】
2.2.1.余熱温度(temperature)で開始した場合のCHEMENERGYプロセスの結果
この第2の場合では、蒸発工程に余熱を使用するため、混合物の加圧には限られた量の付加的エネルギーしか必要とされない。結果として、(90℃で)低エクセルギー状態の余熱の一部が、約165℃のより高いエクセルギー状態へと増大する。この実験設計では、実験によって90℃の温水が165℃の熱気へと増大するだけである。しかし、他の流体(fluid)及び/又は熱源を用いれば、本サイクルによって余熱を有用なエネルギー及び/又は熱として生成又は活用する(valorize)ヒートポンプの作製が可能になると想像することができる。例えば、本発明のCHEMENERGYプロセスは、現在では例えば6バール〜10バールの高温蒸気によって開始する化学反応を、代わりに1バール〜2バールの余蒸気を用いて、化学プラントにおいて120℃〜130℃で開始するために用いることができる。
【0107】
したがって、無機オキソ酸及び/又はその塩、具体的には無機ポリリン酸及び/又はその塩の加水分解反応によって引き起こされる温度上昇と、熱/エネルギー源の存在との組合せが、はるかに高い、例えば200℃超の温度上昇をもたらすことができ、熱エネルギーの全体的な増大が得られる。CHEMENERGYサイクルの異なる環境における以下の例示的な用途から明らかとなるように、熱源は一方で水20を加水分解反応Cの反応生成物14から除去するため、すなわち言い換えると、重合(縮合)反応Aを開始するために使用され、他方で加水分解反応Cにおいて使用される縮合(重合)した成分10の熱エネルギーを増大させるために使用される。
【0108】
下記の潜在的用途のリストでは、一例として、熱/エネルギー源の影響下で水20の除去によって、上記一般式Ib及び一般式Icのポリリン酸10の液体混合物へと重合される単量体として、液体リン酸14を使用した(縮合反応A)(重合体の長さは概して1超、通常は約2〜7である)。この重合(縮合反応)によって得られる水を、最終的に調整成分21による調整後に逆反応、すなわち加水分解反応に(再)使用するか、又は大気中に吹き飛ばすことができる。エネルギー源に応じて、重合反応は真空、近真空又は僅かな過圧の下で行われる。約140℃から開始する熱源については、僅かな過圧、通常は0.1バール(bar)〜0.5バールが望ましいが、操作上の特定の要求に応じてより高い場合もある。約80℃までの熱源については、負圧(under pressure)、通常は0.025バール超又はそれ以下が望ましい。約80℃〜140℃の熱源については、圧力は、僅かな負圧±0.025バールからほぼ1atmまで様々である。上記の内容から明らかなように、CHEMENERGYサイクルの一部として、重合反応は約80℃〜200℃、通常は90℃〜120℃の範囲のより低い温度で行われる。
【0109】
逆反応、すなわち加水分解反応Cでは、上記ポリリン酸の液体混合物10は、圧力下でリン酸14及び幾らかの残りのポリリン酸へと発熱反応で加水分解(水の付加)される重合体として使用され、熱が放出されて、初期の余熱がより高いエネルギーレベルへと上昇する。この場合も、リン酸を上述の縮合反応Aにおいて供給流として(再)使用することができ、これにより本発明によるCHEMENERGYサイクルが閉じられる。加水分解反応では、水は液体形態又は蒸気形態のいずれかで温水として添加することができる。蒸気形態の場合、これにより、蒸気とポリリン酸とを混合した際に過剰に付加される縮合熱のために加水分解反応が一層加速する。原則として、加水分解反応は周囲温度で行うことができるが、供給源の熱エネルギーを増大させる温度上昇(ヒートポンプ)として使用する場合、例えば限定されるものではないが、60℃〜500℃、通常は120℃〜500℃、より具体的には約150℃〜300℃のようなより高い温度で行われる。上記例では、以上で既に説明したように、熱/エネルギー源は、加水分解反応Cに使用される縮合(重合)した成分10の熱エネルギーを増大させるためにも使用される。
【0110】
明らかに、上述のCHEMENERGYプロセスの中心は、リン酸へのポリリン酸の加水分解反応の可逆性である。このため、原則としてリン酸を閉じたサイクルで使用することができるが、幾らかの不可逆的副反応が起こり得るため、幾らかの流出物(廃棄物)及び新たなリン酸の供給が性能を最適に保つために必要とされ得る。結果として、リン酸濃度はサイクル全体を通して極めて安定しており、加水分解後は約80%〜90%、具体的には約84%〜94%、加水分解前は約90%〜100%、具体的には約94%〜100%の範囲という濃度となる。
【0111】
用途に応じて、サイクルは連続的(反応Aと反応Cとの間の連続流の供給流)、例えば:
用途1(
図3):別のプロセス、環境、日光、風力等からの余熱を用いた、プロセス、倉庫、住宅地域、スーパーマーケット等からの加熱/冷却時の余熱を活用するためのヒートポンプ;
用途2(
図4):例えば蒸気、水、熱媒油のような熱流体(fluidum)の或る温度/圧力レベルから、例えば蒸気、水、熱媒油のような熱流体のより高い温度/圧力レベルへと熱エネルギーを増大させるための熱ネットワーク間のヒートポンプ;
用途5(
図5):産業プロセス、倉庫、スーパーマーケット、冷蔵庫、住宅、住宅地域等の冷却のために、プロセス、環境、日光、風力、熱電併給、住宅地等からの余熱を用いて、例えば高い周囲温度で低温を発生させるためのヒートポンプ技術の使用;
用途6(
図6):発電時にタービン内に蒸気を膨張させるための蒸気発生用のヒートポンプを介したプロセス、日光、風力、熱電併給等からの余熱の変換;
用途7(
図7):プロセス、日光、風力、熱電併給等からの余熱の増大、及び「有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)」(ORC)タービンを用いた電気への変換;
用途8(
図8):用途7とほぼ同じであり、太陽熱が熱源として代わりに使用される点のみが異なるスキームを用いた、太陽熱の電気への変換。この特定の用途においては、重合(縮合)反応における液体リン酸14の一部14b又は全部を完全に脱加水分解し、純粋な(固体)又はほぼ純粋な(スラリー)P
2O
5を得るために太陽熱を使用することができる。この場合、非常に高いエネルギー密度が達成され(最大3GJ/m
3)、この材料を扱うためにシステムを設計しなければならない。これは例えば、非流動性リン酸を、直接的又は間接的な日光で絶えず加熱される容器(絶縁格納容器)内で加熱することによって行うことができ、固体P
2O
5の乾燥粉末又はスラリーのみが残るまで水蒸気がリン酸から漏出する;
用途9(
図9):風力発電の緩衝。この用途では、電気抵抗によって熱を発生させ、この熱を、タービン内に蒸気を膨張させ、発電する蒸気発生用のヒートポンプを介して使用する。これは、電気ネットワークの下降時に風力によって発生した電気を緩衝し、電気ネットワークのピーク時に電気を後に残しておくために使用することができる;
不連続的、例えば:
用途3(
図10):熱貯蔵タンクを用いた熱又はエネルギー(余熱、太陽熱、風力エネルギー、蒸気等)の緩衝。この用途では、プロセス、日光、風力等からの余熱を、熱を増大させ、貯蔵するために使用する。これは例えば、不連続的な熱産生体(producer)と連続的な熱消費体(consumer)とを接続するか(逆の場合も同様)、又は不連続的な熱産生と不連続的な熱消費とを結び付けるために使用することができる;
用途4(
図11):余熱を実際に、一方で大量輸送船(bulk ship)、コンテナ、トラック、河川、ドック、運河、市街地、産業地域又は住宅地域等の別の場所へのパイプラインによる熱消費体(複数の場合もあり)又はそのネットワークへの「余熱」の輸送を可能にし、他方でそのエンジンの輸送媒体の余熱、例えば自動車、バス、ボート、トラック等のモーター熱等を変換し、例えば家庭、職場のような或る特定の位置に輸送し、活用することを可能にする輸送可能な形態に変換し、回収するという点で上記とは異なる熱輸送;又は、
それらの組合せ(用途10)のいずれかである。
【0112】
上記の点から、CHEMENERGYサイクルの連続的又は不連続的な操作が緩衝液タンクの有無に依存するという印象が与えられるが、以上の用途では、連続的又は不連続的なエネルギー変換しか言及されていない。反応溶液を緩衝するためにタンクを使用するか否かにかかわらず、全てのプロセス1〜9を連続的又は不連続的に行うことができる。結果として、以上の用途の各々における反復流を示す一般フロー図(
図12)では、貯蔵タンクは任意である。
【0113】
以上の用途の各々についてのフロー図の要素の詳細は、下記表3に見ることができる。
【0114】
【表3】
【0115】
用途に応じて、サイクルを、
小規模、例えば家庭用途から大産業規模まで、
小規模、大規模のスキッドで、
コンテナ又は他の可動プラットフォーム内で、
構築することができる。
【0116】
潜在的用途の各々において、簡単な温度、圧力、流又は他のセンサーを調節するバルブ及びシステムを用いてサイクルを制御するか、又は簡単な電気計装設計及び/又は非常に高度な電気計装設計、最大経済生産量で24時間稼働するためにインターネット、携帯電話等に接続したオプティマイザーを備える完全に自動化された設備のように設計することができる。オプティマイザーはオンデマンドで実行することができ、周囲温度、風力又は他の状況が設備の経済性又は性能を決定する。
【0117】
例えばHAZOPのような産業的に標準化された安全審査に基づいて、設備は、固有の安全設計(例えば真空及び最大動作圧力+10%)、圧力バルブ、若しくは自動化安全度機能(SIF又はSIL)システム又はこれらの設計基準の組合せを含む高安全基準を満たすように設計される。設備は、設備を安全動作範囲内に維持するために警報及び歯止めを用いて制御される。装置の基本設計はプロセス設計によって異なるが、詳述した装置設計は、PED、ASME又は他の地方の設計コード又は地方の最先端技術に適合するように異なり得る。