(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物表面の情報を非接触で読み取りたいという需要があり、特に光学的な反射を応用したものが知られている。例を挙げると、バーコード読取装置、QRコード(登録商標)読取装置、ファクシミリ読取装置、ロータリーエンコーダー、リニアエンコーダーなどが該当する。
非接触であるために対象物の損耗が無いうえに光学式であるために耐久性も高く、広い分野で利用されてきた。
しかしながら近年においては、機器の小型化や読み取る情報の精細化や製造コストの低下などの更なる市場要求が高まってきている。
従来の光学的な情報読取素子60は、
図8に示すように発光素子61と受光素子62が基板63の同一平面上に配置されている。発光素子61からの光(往路光65a)が読取対象物64(反射部)で反射して反射光67(復路光)となり受光素子62へ戻るが、この往路光65aと復路光67は平行にならず反射の際に反射角度θが生じる。この構成において往路光65aを読取対象物64に照射して復路光67を受光素子62へ導く為には、往路光65a及び復路光67を反射角度θ分だけ屈折させるレンズ(屈折レンズ)を発光素子61および受光素子62に設けるか、発光素子61および受光素子62を基板63の平面より角度θ傾ける必要がある。
屈折レンズを設ける場合には当然ながら屈折レンズ分の費用がかかり低コスト化に反する。他の方法として発光素子61および受光素子62を基板63の平面より傾ける場合には製造時に専用の治具や検査装置や調整工数が必要となり同じく低コスト化に反する。
加えて、基板63の平面と読取対象物64との距離hは屈折レンズの寸法より大きくする必要があるため小型化にも適しておらず、また当然にして小型化が達成できないと精細な情報を読み取ることもできなかった。
さらに、発光素子61と受光素子62は製造時に固定されるので発光素子61と受光素子62の距離dは変更できない。この理由より反射角度θを一定とする必要がある。このためには距離hを固定値としなくてはならず、距離hを柔軟に変更することも困難であった。
【0003】
また、仮にコストを度外視して小型化したレンズを設けたり、発光素子61および受光素子62を基板63の平面より傾けたりするなどして距離dを小さくして小型化した場合、発光素子61からの往路光65aの一部が往路光65bとして直接受光素子62へ到達してしまう問題が発生する。この問題に対処するため、発光素子61および受光素子62に指向性のある物体(前記の屈折レンズとは異なるレンズ)を設けて往路光65aや復路光67の方向を制限する方法や、発光素子61と受光素子62の間に遮光壁を設けるなどの方法が必要とされる。よって更にコストが高くなってしまう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかる情報読取素子について図面に基づいて説明する。
【0015】
なお、実施例を詳細に説明する前に、図面について共通する事項を先に説明する。図中において、記号15b,17b,25b,27b,35b,37bは、光の直線偏光の偏光方向を示す図面上の表記である。例えば、記号15bは偏光方向がある特定面に対して垂直であることを意味しており、記号17bは偏光方向が該特定面に対して平行であることを意味している。即ち、記号15bと記号17bで示す光はそれぞれ直線偏光の偏光方向が90°異なっていることを意味する。
【0016】
記号15c,17cは、光の円偏光(楕円偏光)の回転方向を示すものである。記号15cは光の進行方向に向かって時計回り(右円偏光/右楕円偏光)であることを意味しており、記号17cは光の進行方向に向かって逆時計回り(左円偏光/左楕円偏光)であることを意味している。即ち、記号15cと記号17cはそれぞれ円偏光の回転方向が逆であることを意味する。
【0017】
以下の説明において、「発光素子11a,21a,31a」は請求項の「偏光発光部」に該当し、「受光素子11b,受光素子21b,受光素子31b」および「偏光板11c,偏光板31c」は請求項の「偏光受光部」に該当する。
また、「反射板13a,23a,33a」は請求項の「反射部」に該当し、情報を読み取る対象物を意味する。
図中の「1/4波長板13b,23b,33b」は請求項の「偏光特性変化部」に該当する。
【実施例1】
【0018】
図1に基づいて実施例1を説明する。
実施例1では、リニアエンコーダーやロータリーエンコーダーで使用されるビットパターンを情報として読み取る情報読取装置に本発明に係る情報読取素子10aを適用することを想定している。
情報読取素子10aは、ガラス基板12と、このガラス基板12に形成(積層)される発光素子11a、偏光板11cおよび受光素子11bを有する。ガラス基板12、発光素子11a、偏光板11cおよび受光素子11bは、密着して積層されてもよいし、空気層あるいはガラス板などの透明な層を挟んだ状態で積層されてもよい。
発光素子11aは、往路光15aを発光する。往路光15aは、記号15bで示すように、垂直方向(
図1の手前および奥の方向)に直線偏光されている。発光素子11aは一例を挙げると有機ELのような面発光体であり、製作過程の加工で直線偏光の発光機能を付与することができる。
偏光板11cは特定の方向に直線偏光された光のみを透過する効果を有する。この偏光板11cの透過可能な偏光方向は発光素子11aの発光する直線偏光された光とは90°異なるように設けられている。このため、発光素子11aは前述の往路光15a以外に逆方向へも発光するが、この逆方向の偏光は偏光板11cに遮られ受光素子11bへは到達できない。
【0019】
反射板13aと1/4波長板13bとが対象物として情報を読み取る対象となる。
図1では、読取対象である反射板13aに偏光特性変化部である1/4波長板13bが取り付けられた構成を示している。反射板13aは反射率の高い物体で一例を挙げると鏡である。1/4波長板13bは反射板13aの表面に配置される。
直線偏光されている往路光15aは1/4波長板13bへ到達する。さらにこれを通過する際に時計回りの円偏光に変化(図示せず)する。円偏光に変化した往路光15aは1/4波長板13bを通過し終えたところで反射板13aにて反射される。この時、時計回りに円偏光していた往路光15aは反時計回りの復路光17aとして再び1/4波長板13bへ到達する。ここで復路光17aの反時計回りの円偏光が1/4波長板13bの作用で直線偏光となる。この直線偏光の偏光方向は記号17bが示す通り往路光15aの偏光方向(記号15bで示す偏光方向)とは90°異なる方向となる。
【0020】
ガラス基板12へ戻ってきた復路光17aはそのまま発光素子11aを通過し偏光板11cへ至る。前述の通り、この偏光板11cの偏光方向は発光素子11aの発する光の偏光方向と90°異なっている。従って、記号17bで示す復路光偏光方向と一致するため、復路光17aは偏光板11cを通過することができる。
最終的に復路光17aは受光素子11bへ到達して受光される。受光素子11bは一例を挙げるとフォトダイオードである。受光素子11bで復路光17aが受光されたことにより対象物である反射板13aや1/4波長板13bの存在を認知することができるのである。
この構成を斜視図として示しているのが
図5である。
【0021】
前述の(リニアエンコーダーやロータリーエンコーダーで使用される)ビットパターンは反射板13aの表面を部分的に黒くマーキングすることで反射率の高い箇所と低い箇所を設けて復路光17aの光量を制御することにより表現可能となる。他の方法としては、反射板13aの表面を黒くマーキングせずに1/4波長板13bの有無だけでビットパターンを表現することも可能である。つまり、1/4波長板13bが設けられる部分と設けられない部分とで復路光17aの偏光方向(偏光特性)を変化させ、発光素子11aにおける受光量を変化させる構成としてもよい。この構成の場合には、発光素子11aにおける受光量を変化に基づき1/4波長板13bの存在を認知することができる。すなわち、1/4波長板13bが情報を読み取る対象(読取対象)となる。
なお、ビットパターンは反射板13aの表面を部分的に黒くマーキングすることで反射率の高い箇所と低い箇所を設けて復路光17aの光量を制御することと、反射板13aの表面を黒くマーキングをせずに1/4波長板13bの有無だけでビットパターンを表現することの両方を用いればより好適である。つまり、反射板13aの表面を部分的に黒くマーキングしてビットパターンを形成し、マーキングの無い反射率の高い箇所に1/4波長板13bを設ける構成としてもよい。
【0022】
なお、本実施例の
図1の構成では、1/4波長板13bを反射板13aの表面に位置させている。これは、反射板13aとして反射率の高いものを使用することに加えて、逆方向(図面では上方向)よりの不要な光を除去できる点を考慮している。リニアエンコーダーやロータリーエンコーダーのような精密な計測機器で使用されるために確実な動作を求められるからである。
【0023】
図1における1/4波長板13bの位置をガラス基板12側へ移動させたものが
図2に示す情報読取素子10bである。
図1とほぼ同様であるが、1/4波長板13bを通過した後の往路光15aが反射板13aに至るまでは記号15cで示す往路光偏光方向の通り時計回りの円偏光となる。
往路光15aは反射板13aで反射された時に記号17cで示す復路光偏光方向のような反時計回りの円偏光の復路光17aとなる。この復路光17aはガラス基板12表面の1/4波長板13bを通過する際に記号17bで示す復路光偏光方向のような直線偏光となる。後は
図1の説明と同じく受光素子11bへ至る。
【0024】
前述の(リニアエンコーダーやロータリーエンコーダーで使用される)ビットパターンは反射板13aの表面を部分的に黒くマーキングすることで反射率の高い箇所と低い箇所を設けて復路光17aの光量を制御することにより表現可能となる。
1/4波長板13bをガラス基板12側に設けることにより、必要となる1/4波長板13bの面積は少なくて済み、
図1の構成よりコストダウンが可能となる。
更には、往路光15aが照射される対象物が反射板13a以外の物体としても良い。バーコードやQRコードなどのコントラストの高い模様が印刷された紙などを反射板13aの代わりにすることも可能である。これらのコードの黒い部分と白い部分とでは反射率が大きく異なるために復路光17aの光量の差は大きくなる。本実施例の情報読取素子を複数並べた情報読取装置を用いれば短時間でこれらのコードの内容を読み取ることができる。
【0025】
また、受光素子11bが多段階の光量を識別可能であれば、ビットパターンやコードなどの二値的なもののみならず、中間階調のある情報を読み取ることもできる。本実施例の情報読取素子をマトリクス状に複数並べた情報読取装置を用いればイメージスキャナーのような撮像装置とすることも可能である。
【0026】
図中では往路光15aと復路光17aは異なる線として図示しているが、実際には同じ線上である。
すなわち、往路光15aと復路光17aは、同一線上を往復する光である。つまり、偏光発光部としての発光素子11aと偏光受光部としての受光素子11bと読取対象としての反射板13aと偏光特性変化部としての1/4波長板13bは同一線に対して交差する位置に配置されている。
このため、ガラス基板12と反射板13aとの距離はレンズを用いた構成の場合と異なって柔軟に設定が可能であり、発光素子の発光量と受光素子の受光検出限界の制限の範囲内であれば自由に設定できる。
【実施例2】
【0027】
次に、
図3に基いて実施例2を説明する。
情報読取素子20は、ガラス基板22と、このガラス基板22に形成(積層)される発光素子21aおよび受光素子21bを有する。受光素子21bは、発光素子21aの偏光特性と異なる偏光特性(発光素子21aの偏光方向に対して90°異なる偏光方向)を有する。
発光素子21aは、往路光25aを発光する。往路光25aは、記号25bで示すように垂直方向(
図3の手前および奥の方向)に直線偏光されている。
【0028】
反射板23aと1/4波長板23bとが対象物として情報を読み取る対象となる。読取対象である反射板23aに偏光特性変化部である1/4波長板23bが取り付けられた構成が示されている。反射板23aは反射率の高い物体で一例を挙げると鏡である。1/4波長板23bは反射板23aの表面に配置される。
直線偏光されている往路光25aは1/4波長板23bへ到達する。さらにこれを通過する際に時計回りの円偏光に変化(図示せず)する。円偏光に変化した往路光25aは1/4波長板23bを通過し終えたところで反射板23aにて反射される。この時、時計回りに円偏光していた往路光25aは反時計回りの復路光27aとして再び1/4波長板23bへ到達する。ここで復路光27aの反時計回りの円偏光が1/4波長板23bの作用で直線偏光となる。この直線偏光の偏光方向は記号27bが示す通り往路光25aの偏光方向(記号25bで示す偏光方向)とは90°異なる方向となる。
ガラス基板22へ戻ってきた復路光27aはそのまま発光素子21aを通過し受光素子21bへ到達して受光される。
【0029】
上述した実施例2の構成は、
図1に示した実施例1とほぼ同じであるが、受光素子21bそのものの感度に偏光特性があり、この偏光特性が記号25bで示す往路光偏光方向と垂直になるようになっている。この構成により
図1の構成では発光素子11aから受光素子11bへ直接到達する光を遮断するために必要であった偏光板11cを省くことができる。偏光板11cを設けていないので発光素子21aからの偏光は直接受光素子21bへ到達するが、この偏光が持つ偏光特性である記号25bで示す往路光偏光方向は受光素子21bの感度を有する偏光方向と異なるので何ら影響を及ぼさない。
このことにより更に小型化が可能となる。
【0030】
なお、実施例1の
図1の構成に対する
図2の構成のように、本実施例2でも同じく1/4波長板23bをガラス基板22側に設けても良い。
【実施例3】
【0031】
次に、
図4に基いて実施例3を説明する。
情報読取素子30は、ガラス基板32と、このガラス基板32に形成(積層)される発光素子31a、受光素子31bおよび受光素子31dを有する。
発光素子31aは、往路光35aを発光する。往路光35aは、記号35bで示すように垂直方向(
図4の手前および奥の方向)に直線偏光されている。
【0032】
反射板33aと1/4波長板33bとが対象物として情報を読み取る対象となる。読取対象である反射板33aに偏光特性変化部である1/4波長板33bが取り付けられた構成が示されている。反射板33aは反射率の高い物体で一例を挙げると鏡である。1/4波長板33bは反射板33aの表面に配置される。
直線偏光されている往路光35aは1/4波長板33bへ到達する。さらにこれを通過する際に時計回りの円偏光に変化(図示せず)する。円偏光に変化した往路光35aは1/4波長板33bを通過し終えたところで反射板33aにて反射される。この時、時計回りに円偏光していた往路光35aは反時計回りの復路光37aとして再び1/4波長板33bへ到達する。ここで復路光37aの反時計回りの円偏光が1/4波長板33bの作用で直線偏光となる。この直線偏光の偏光方向は記号37bが示す通り往路光35aの偏光方向(記号35bで示す偏光方向)とは90°異なる方向となる。
ガラス基板32へ戻ってきた復路光37aはそのまま発光素子31aを通過し受光素子31bへ到達して受光される。
【0033】
上述した実施例3の構成は、
図1に示した実施例1の構成と類似点は多いが、復路光37aを受光する受光素子31b以外に別の受光素子31dが設けてある。この受光素子31dは、発光素子31aの発光する偏光の光量をモニターする目的で設けている。発光素子31aは長い期間にわたって発光を続けるため経年劣化で発光効率が落ちて同じ入力に対する発光量が減少する場合がある。モニター目的の受光素子31dで発光素子31aの発光量を監視し、発光素子31aの発光量が一定の光量になるよう発光素子31aへの入力を制御することでより精度の高い情報読取素子を実現することが可能となる。
【0034】
なお、実施例1の
図1の構成に対する
図2の構成のように、本実施例3でも同じく1/4波長板33bをガラス基板32側に設けても良い。
【実施例4】
【0035】
図6に基いて実施例4を説明する。
実施例4は、実施例1〜3の情報読取素子を用いた情報読取装置50である。
情報読取素子51a,51bはインクリメンタル型のリニアエンコーダーあるいはロータリーエンコーダーのビットパターン読み取り用の素子の例である。これらの素子の上を点線状のビットパターンを持ったスケールが相対的に移動し、情報読取素子51a,51bが常に読み取りを行うことでビットパターンの変化を検出することが可能となり、相対的な移動量を得ることができる。
情報読取素子52a〜52dはアブソリュート型のリニアエンコーダーあるいはロータリーエンコーダーのビットパターン読み取り用の素子の例である。これらの素子の上を位置検出用ビットパターンを持ったスケールが相対的に移動し、情報読取素子52a〜52dが必要に応じて読み取りを行うことでビットパターンを検出することが可能となり、絶対的な位置情報を得ることができる。情報読取素子51a,51bには、実施例1〜3で説明した情報読取素子10a,10b,20,30を用いることができる。また、情報読取素子52a〜52dにも実施例1〜3で説明した情報読取素子10a,10b,20,30を用いることができる。
【0036】
図6中の情報読取素子の受発光波長(発光素子の発光波長および受光素子の受光感度がピークとなる受光波長)は全て同一である必要はなく、一つの情報読取素子において発光波長と受光波長が一致していれば良い。例えば、隣接している情報読取素子同士の受発光波長が異なっていれば隣接している情報読取素子へ他の偏光が漏洩しても影響が無いため情報読取素子の配置間隔をより狭くすることができ、結果として更なる小型化および高精細化が可能となる。
また、隣接する情報読取素子の受発光のタイミングを同一とならないようにしても良い。特に有機ELを用いた場合、発光原理としてはLEDと同じであるため点滅(点灯と消灯)を素早く行うことが可能であり、高い周波数のパルスで点滅を行うことにより、タイムラグを大きくすること無く情報読取素子を動作させながら隣接する情報読取素子相互の干渉を排除することができる。
この受発光タイミングを同一とならないようにする制御は、上記の隣接する情報読取素子の受発光波長を同一にしない構成と併せて採用すればより小型化および高精細化を図ることができる。
【0037】
次に、
図7に基づいて実施例1に示す情報読取素子10aにおける受光素子11bの受光量に関する評価例について説明する。
図7の上段(A)は、情報読取素子10aを用いて反射板13aの有無を読み取るときの受光素子11bの受光量の変化を模式的に示す図である。
図7(A−1)に示す反射板13a(読取対象)が在る場合の受光素子11bにおける受光量は、
図7(A−2)に示す反射板13aが無い場合の受光素子11bにおける受光量に比べて約51倍の受光量となる。
なお、
図7(A)に示す評価例は、反射板13aを黒色のプラスチック板13cにアルミ箔13dを貼着し、アルミ箔13dで光を反射させる構成としている。また、1/4波長板13bとして株式会社美舘イメージングのMCR−140Nを用い、発光素子11aとして偏光有機EL素子を用い、偏光板11cとして株式会社美舘イメージングのSHLP44を用い、そして受光素子11bとして浜松ホトニクス株式会社のs1337−33BRを用いた構成とした場合の評価である。
【0038】
図7の下段(B)は、1/4波長板13bおよび偏光板11cを備えない構成で反射板13aの有無を読み取るときの受光素子11bの受光量の変化を模式的に示す図である。
図7(B−1)に示す反射板13a(読取対象)が在る場合の受光素子11bにおける受光量は、
図7(B−2)に示す反射板13aが無い場合の受光素子11bにおける受光量に比べて約2.6倍の受光量となる。
なお、
図7(B)に示す評価例は、1/4波長板13bおよび偏光板11cを備えない点を除き、反射板13a、発光素子11aおよび受光素子11bの構成は
図7(A)に示す構成と同様である。
【0039】
情報読取素子10aは、1/4波長板13bおよび偏光板11cを備えている。そのため、情報読取素子10aは、発光素子11aから出射し受光素子11bに直接入射してしまう光量を低く抑えることができる。したがって、
図7(A)の評価例で説明したように、情報読取素子10aによれば、反射板13aがある場合と無い場合とでの受光素子11bの受光量の変化量を大きくすることができる。
【0040】
ところで、有機EL素子においては、励起光よりも波長の長い光が発光(出射)する。たとえば、
図9に示すように、有機EL素子の発光層を励起光する光の波長に対して、発光する光の波長は長波長側に偏移(シフト)する。そのため、発光素子11aに有機EL素子を用いた場合、反射板13aで反射された光が再び発光素子11aを通過するときには、励起光よりも波長の長い光となっている。したがって、発光素子11aにおける光の吸収量が低減され、受光素子11bへの受光量を増加させることができる。
【0041】
上述した実施の形態で説明したように、情報読取素子10a,10b,20,30は、偏光を往路光として発光する偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と、 情報を読み取る対象である読取対象(反射板13a,23a,33a)において反射された往路光を復路光として受光する偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)とを備え、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(反射板13a,23a,33a)とは、それぞれ偏光特性が異なっている。
【0042】
この構成によれば、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)とが積層されても、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)から偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)に入射する光量を低減させることができる。また、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)とが積層されるため、情報読取素子10a,10b,20,30の小型化を図ることができる。さらに、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)と位置調整に高い精度を要しないため調整工数の低減を図ることもできる。
【0043】
また、情報読取素子10a,10b,20,30は、往路光と復路光とが通過する位置に、往路光および復路光の偏光特性を変化させる偏光特性変化部(1/4波長板13b,23b,33b)が配置され、この偏光特性変化部(1/4波長板13b,23b,33b)は、往路光が通過する際には偏光特性に変化A(任意の特定面に対して垂直な方向への偏光)を生じ、復路光が通過する際には偏光特性に変化B(該特定面に対して平行な方向への偏光)を生じ、該変化Aおよび該変化Bによって該復路光の偏光特性が偏光受光部の偏光特性に合うように設けられている。
【0044】
この構成によれば、往路光と復路光との偏光特性をより確実に異ならせることができ、情報の読み取り精度の向上を図ることができる。
【0045】
また、情報読取素子10a,10b,20,30は、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)と読取対象(反射板13a,23a,33a)と偏光特性変化部(1/4波長板13b,23b,33b)とは同一線に対して交差する位置に配置されている。
【0046】
この構成によれば、偏光発光部と偏光受光部を同一平面上に配置する必要が無いため、反射角度が0となるので屈折レンズを設ける必要がなくなる。すなわち、偏光発光部と偏光受光部を、これらが設けられる基板の平面方向に並置されるように配置する必要が無くなる。そのため、読取対象(反射板13a,23a,33a)での往路光の反射角度を0度とすることができる。したがって、情報読取素子10a,10b,20,30の小型化を図ることができる。また、たとえば、屈折レンズを設ける必要がなくなり、偏光発光部および偏光受光部と反射部との距離をさらに短くすることができる。
【0047】
また、本発明の情報読取素子10a,10b,20,30は、偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)は偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)を挟んで読取対象(反射板13a,23a,33a)の逆側に設けられ、該偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)は光透過特性を有し、該偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)が発光した往路光が読取対象(反射板13a,23a,33a)で復路光として反射された後に該偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)を透過して該偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)へ到達可能となることとする。
【0048】
この構成によれば、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)は同一線上を往復する往路光および復路光の線上に近接して設けることが可能であり、情報読取素子10a,10b,20,30をより小型とすることができる。
【0049】
本発明の情報読取装置50は、上述の情報読取素子10a,10b,20,30の何れかを備えることができる。情報読取装置50をこのように構成することで、情報読取装置50の小型化を図ることができる。
【0050】
また、本発明の情報読取装置50は、上述の情報読取素子10a,10b,20,30のいずれかまたはそれぞれを複数備え、該複数の情報読取素子の受発光する偏光の波長が隣接する情報読取素子同士で異なるように設けることとする。情報読取装置50をこのように構成することで、情報読取の精度を向上させることができる。
【0051】
情報読取素子10a,10b,20,30は、偏光を往路光として発光する偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と、この偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)から発光された往路光を復路光として反射する読取対象(反射板13a,23a,33a)と、読取対象(反射板13a,23a,33a)から反射された復路光を受光する偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)と、往路光と復路光が通過する位置に設けられ通過する往路光および復路光の偏光特性をそれぞれ変化させる偏光特性変化部(1/4波長板13b,23b,33b)とを備え、偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(受光素子11b,21b,31b)はそれぞれ偏光特性が異なり、偏光特性変化部(1/4波長板13b,23b,33b)は往路光が偏光特性変化部(1/4波長板13b,23b,33b)を通過する際には偏光特性に変化Aを生じ、復路光が偏光特性変化部(1/4波長板13b,23b,33b)を通過する際には偏光特性に変化Bを生じ、変化Aおよび変化Bによって復路光の偏光特性が偏光受光部(発光素子11a,21a,31a)の偏光特性に合うように設けられている。
【0052】
この構成により、往路光と復路光は偏光特性が異なるため、偏光受光部(発光素子11a,21a,31a)は偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)が発光した往路光のうち読取対象(反射板13a,23a,33a)で反射したもののみを受光することになる。よって偏光発光部(発光素子11a,21a,31a)と偏光受光部(発光素子11a,21a,31a)の距離を短くすることができ、往路光と復路光の反射角度を小さくすることが可能となり、結果として基板平面と対象物との距離も小さくすることができ、小型化に貢献する。
【0053】
以上、本発明について好適な実施例を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない限り多くの改変を施すことが可能であるのは勿論である。