(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凹凸形状を有し、加温した支持体に熱可塑性繊維を含有するウエブを搬送し、該ウエブの上から前記支持体に向けて熱風を吹き付けて該ウエブに凹凸形状を賦形する不織布の製造方法であって、
前記ウエブを構成する繊維のガラス転移点以上融点以下の温度範囲に前記支持体を加温する工程の後に、
第1の熱風の吹き付けにより前記ウエブの繊維同士を前記凹凸形状が保持される状態に仮融着させる工程と、
前記第1の熱風よりも高温度の第2の熱風を吹き付け、前記凹凸形状を保持した状態で前記ウエブの繊維同士を融着させて前記凹凸形状を固定する工程とを備えた不織布の製造方法。
前記支持体の突起が配された領域を除く前記支持体の表面側に対向する裏面側の領域に電熱線を備えたヒータを配した請求項1から5のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る不織布の好ましい一実施形態について、
図1および
図2を参照しながら、以下に説明する。
本発明の不織布10は、例えば生理用ナプキン、使い捨ておむつ、失禁パッドなどの吸収性物品の表面シートに適用することが好ましい。その際、第1面側Z1を着用者の肌面側に向けて用い、第2面側Z2を物品内部の吸収体(図示せず)側に配置して用いることが好ましい。以下、図面に示した不織布10の第1面側Z1を着用者の肌面に向けて用いる実施態様を考慮して説明する。本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、
図2の平面配設図では、直交座標系のz軸において、不織布10より上方側を第1面側Z1、不織布10より下方側を第2面側Z2とする。
【0011】
図1および
図2に示すように、本発明の不織布10は、連続した凹凸曲面を形成したもので、継ぎ目のないシート面を形成している。すなわち、シート体の不織布を平面視した側の第1面側Z1に突出し内部空間11Kを有する第1突出部11と、第1面側Z1とは反対側の第2面側Z2に突出し内部空間12Kを有する第2突出部12とを有している。第1突出部11、第2突出部12は、不織布10の例えば全面にわたって平面視交差する異なる方向として、直交座標系のxy平面と平行な平面において第1方向Xと第2方向Yのそれぞれに交互に連続して配されている。本実施形態では、第1方向Xと第2方向Yとは直交している。したがって、第1方向Xは直交座標系のx軸に平行な方向とし、第2方向Yは直交座標系のy軸に平行な方向とすることができる。なお、第1方向Xと第2方向Yとは、直交していなくともよく、例えば60°から120°程度の範囲で交差していることが好ましい。
上記第1面側Z1からみた凸部が第1突出部11であり、凹部が第2突出部12となる。また、第2面側Z2からみた凸部が第2突出部12であり、凹部が第1突出部11となる。したがって、第1突出部11と第2突出部12とは一部が共有されている。
【0012】
第1突出部11と第2突出部12とには明確な境界はなく、本明細書においては、第1突出部11と第2突出部12の内部空間12Kとをそれぞれが有する空間を基準に次のように定義する。すなわち、第1突出部11は、内部空間11Kとこれを覆う第1面側Z1の不織布10の第1面側Z1に突出した部分である。不織布10の第1面側Z1に突出した部分は、第1突出部頂部11Tから壁部13(14)を介して周囲の内部空間12Kの底部までを繋いだ部分である。また内部空間12Kを含む第2突出部12は、内部空間12Kとこれを覆う第2面側Z2の不織布10の第2面側Z2に突出した部分である。不織布10の第2面側Z2に窪んだ部分は、内部空間12Kの底部から壁部13(14)を介して周囲の第1突出部頂部11Tまでを繋いだ部分である。第1突出部頂部11Tと内部空間12Kの底部との間は、第1突出部11と第2突出部12とで共有されており、2つの内部空間11Kおよび内部空間12Kを仕切るのが壁部13(14)となっている。
さらに第1突出部11、第2突出部12、壁部13を明確にするために、不織布10の厚み方向の高さを3等分して、上部を第1突出部11、中間部を壁部13(14)、下部を第2突出部12と定義する。また、隣接する第1突出部11同士を連続させる第1面側Z1方向で最も高い位置を繋ぐ部分が尾根部15である。さらに第1突出部11と尾根部15とでみた場合に、第1突出部頂部11Tと尾根部15の最も低い位置とを第1面側Z1方向で2等分した下部を尾根部15とする。
【0013】
そして隣接する第1突出部11同士は、尾根部15を介して第1方向X、第2方向Yに対して斜め方向に連続して連なっている。言い換えれば、第1突出部11は第1方向Xおよび第2方向Yに対して斜め方向に、尾根部15を介して山脈ように連なっている。斜め方向とは、第1方向Xおよび第2方向Yが直交している場合、それぞれの方向に対して例えば45°斜め方向である。さらに隣接する第2突出部12同士は、第2面側Z2からみて尾根部15を介して前記第1方向Xおよび第2方向Yに対して第1突出部11と同様に斜め方向に連続して連なっている。
【0014】
第1突出部11の厚み方向の高さh1は、尾根部15の厚み方向の高さh5(
図3も併せて参照。)より高くなっている。各高さh1、h5は、第2突出部頂部12の頂点を含む平面Sに対して垂直方向の高さを表すもので、高さh1は第1突出部頂部11Tの第1面側Z1の高さを表し、高さh5は第1突出部11間の尾根部15の最も低い部位の第1面側Z1の高さを表す。このように第1突出部11の厚み方向の高さh1が尾根部15の高さh5より高いことから、第1突出部11で四方を囲まれる第2突出部12の内部空間12Kに液を溜めて、隣接する第2突出部12の内部空間12K方向に尾根部15を乗り越えて液が流れる。この場合、尾根部15の下部にも液が流れる。しかし、第1面側Z1に液が漏れることはない。なお、
図3においても、第1面側Z1が着用者の肌面側を示し、第2面側Z2が非肌面側を示す。
【0015】
また、第1面側Z1および第2面側Z2の両面において、第1突出部頂部11Tの親水性が第1突出部頂部11Tを除く部分より低いか、または第1突出部頂部11Tが疎水性を有している。つまり第1突出部頂部11Tの親水性が第2突出部頂部12Tおよび壁部13よりも低くなっている。言い換えれば、第1突出部頂部11Tのほうが第2突出部頂部12Tおよび壁部13(14)よりも疎水性が高くなっている。これにより、不織布10を表面シートとして用いた場合、肌当接面側となる第1面側Z1において、肌に触れる液の残り量が減少される。しかも第1突出部頂部11Tにおける第2面側Z2よりも第1面側Z1の方が、疎水性が高くなっている面積が小さくなっている。これにより、着用者が寝ているような高加圧下において、吸収体(図示せず)からの溢れた液が第1面側Z1に戻りにくくなる。よって、肌面側となる第1面側Z1に戻る液が抑制され減少する。
上記親水性の高低、疎水性の高低は、後述する接触角の測定によって判断される。後述する接触角の値が小さいほど親水性が高いことになり、接触角の値が大きいほど疎水性が高いことになる。本願においては、疎水性であると思われる領域であっても、後述する接触角の値の大小で親水性の高低を比較判断する。
なお、第1突出部頂部11Tが疎水化されていなくても、不織布10は、基本的に、高いクッション性を有し、高荷重下であっても凹凸形状を維持し、肌への排出液の付着を抑制することができるという本発明の効果を奏する。上述したように第1突出部頂部11Tが疎水化されていると、肌への排出液の付着をさらに抑制することができるのでより好ましい。
【0016】
図4に示すように、壁部13を構成する繊維16は、第1突出部頂部11Tとその内部空間11Kの開口部11Hの縁部を結ぶ矢印Aで示した方向に繊維配向性を有する。言い換えれば、壁部13の起立する方向に繊維配向性を有する。したがって、第1突出部頂部11Tに向かうような放射状の繊維配向性を有している。なお、第1突出部頂部11Tと内部空間11Kの開口部11Hの縁部を結ぶ方向、及び壁部13の起立する方向とは、不織布における厚み方向に概ね一致している。
また、
図5に示すように、第2突出部12の壁部14(13)を構成する繊維16は、第2突出部頂部12Tとその内部空間12Kの開口部12Hの縁部を結ぶ矢印Aで示した方向に繊維配向性を有する。この壁部14の繊維配向性は、上述の壁部13と共通部分では、壁部13の繊維配向性と同じになっている。なお、第2突出部頂部12Tと内部空間12Kの開口部12Hの縁部を結ぶ方向、及び壁部13の起立する方向とは、不織布における厚み方向に概ね一致している。
【0017】
このように第1突出部11の壁部13が第1突出部11の頂部11Tと第1突出部11の内部空間11Kの開口部11Hとを結ぶ方向に繊維配向性を有することから、着用者が寝ているような高加圧下でも第1突出部11、第2突出部12が潰れにくいため、形状保持性に優れ、高い通気性を有して蒸れの問題も解決される。また壁部13にしっかりとしたコシが生まれ、繊維が厚み方向に潰れてしまうことのない適度のクッション性も有する。さらに、壁部13の繊維配向性により、押圧力を受けて不織布10が潰されても、その形状復元力が大きく、梱包状態や着用が継続されても初期のクッション力が維持されやすい。すなわち、着用者の着座圧でも不織布10の形状保持性に優れ、高加圧時でも肌接触面積が少なく保たれ、第1、第2突出部は、潰れ難く、変形が起こっても回復し易い。
壁部13の厚み方向に配向した繊維によって、液がスムースに繊維を伝い流れて、不織布10の下面に配された吸収体(図示せず)に移行し、且つ、壁部13の繊維配向性により液戻りが少なくなることからも、サラッとした肌触りが実現される。また、上述した構造の維持による不織布10自体の通気性に優れることにより、カブレの防止に役立つ。
【0018】
上記不織布10は、3.5kPaの圧力で加圧した時に、第1突出部11の厚み方向の高さh1が尾根部15の高さh5より高くなっている。これによって、不織布10の第1面側Z1の液の流れは、直交座標系のx方向に平行な第1方向Xおよび直交座標系のy方向に平行な第2方向Yに対して斜め方向に液が流れるようになる。すなわち、不織布10を吸収性物品の表面シートとし、第1方向Xを吸収性物品の幅方向として用いた場合、液が吸収性物品の幅方向に対して斜め方向に流れることになる。これにより、第2突出部12の内部空間12Kを溢れた液は、尾根部15を越えて、尾根部15を介して隣接する第2突出部12の内部空間12Kに流れ込みやすくなって、横方向に液漏れするまでの距離が長くなり、その間に吸収されやすくなるので、液が横漏れしにくくなる。
前記不織布10を3.5kPaの圧力で加圧した時の、第1突出部11の厚み方向の高さh1と尾根部15の高さh5との比(h1/h5)は、横漏れのし難さの観点から、1.01以上であることが好ましく、1.05以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。また上限としては、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.8以下であることがさらに好ましい。
不織布10を3.5kPaの圧力で加圧して測定するのは、着用者が着座しているときの不織布にかかる圧力を模しているためである。すなわち、着座圧を3.5kPaと想定している。着用者とは、本明細書で主眼においているベビーおむつの着用者であり、つまり幼児である。
また、着用者が着座しているときに不織布にかかる圧力と対比する意味で、着用者が立位のときの不織布にかかる圧力は以下のように測定する。着用者が立位の場合、基本的には不織布にかかる荷重は無荷重が想定される。しかし、荷重をかけないで不織布を測定した場合、繊維の集合体である不織布の特性上、測定値にばらつきが生じる。そのため、測定値のばらつきを抑えて実質的に無加圧で測定することを模して、すなわち無加圧に近い状態として、0.05kPa程度の荷重をかけて測定する。
【0019】
さらに第1突出部11は、頂部が半球のような丸みを有する円錐よりも、壁部の立ち上がり角度が急峻な、頂部が半球の一部のような丸みを有する円錐台となることが、さらに好ましい。この第1突出部11の壁部13の立ち上がり角度αは、0°以上20°以下であり、0°よりも大きく20°以下であることが好ましく、0°よりも大きく15°以下であることがより好ましく、0°よりも大きく12°以下であることがさらに好ましい。この立ち上がり角度αは、後述する測定方法により求める。立ち上がり角度αが大きすぎると不織布が厚み方向に潰れやすくなり、クッション性の効果が低下し、液戻り量が増加する。さらに高加圧時での肌接触面積が大きくなるため、着用者に肌に優しい感触を与え難くなる。
【0020】
本実施形態において第1突出部11、第2突出部12は、それぞれの頂部11T、12Tに丸みをもった円錐台形もしくは半球にされている。より詳細にみれば、第1突出部11の突出形状は円錐台形に近い形状であり、他方、第2突出部12の突出形状は頂部に丸みのある円錐ないし円錐台形状になっている。なお、本実施形態において第1、第2突出部11、12は上記形状に限定されず、どのような突出形態でもよい。例えば、様々な錐体形状であることが実際的である。本明細書において錐体形状とは、円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等を広く含む意味である。本実施形態において第1突出部11はその外径と相似する頂部に丸みのある円錐台形状の内部空間11Kを保持している。また第2突出部12はその外径と相似する頂部に丸みのある円錐台形状もしくは半球状の内部空間12Kを保持している。
【0021】
上記第1突出部11の頂部(以下、第1突出部頂部ともいう。)11Tとその開口部11Hとの間に壁部13を有する。この壁部13は、第1突出部11において環状構造を成している。また第2突出部12の頂部(以下、第2突出部頂部ともいう。)12Tとその開口部12Hとの間に壁部14を有する。この壁部14は、第2突出部12において環状構造を成している。そして、この壁部14は上記壁部13に一部分と共有している。ここでいう「環状」とは、平面視において無端の一連の形状をなしていれば特に限定されず、平面視において円、楕円、矩形、多角形など、どのような形状であってもよい。シートの連続状態を好適に維持する上では円または楕円が好ましい。さらに、「環状」を立体形状としていえば、円柱、斜円柱、楕円柱、円錐台(切頭円錐)、斜円錐台(切頭斜円錐)、斜楕円錐台(切頭楕円錐)、四角錐台(切頭四角錐)、斜四角錐台(切頭斜四角錐)などの側面で構成される任意の環構造が挙げられ、連続したシート状態を実現する上では、円柱、楕円柱、円錐台、楕円錐台が好ましい。
【0022】
上述のように配設された第1、第2突出部11、12を有する不織布10は、屈曲部を有さず、全体が連続した曲面で構成されている。上記屈曲部とは、面が折れ曲がって角部を有する部分をいう。
このように上記不織布10は、面方向に連続した構造を有していることが好ましい。この「連続」とは、断続した部分や小孔がないことを意味する。ただし、繊維間の隙間のような微細孔は上記小孔に含めない。上記小孔とは、例えば、その孔径が円相当の直径で1.0mm以上のものと定義することができる。
【0023】
本発明の不織布10に用いることができる繊維材料は特に限定されない。具体的には、下記の繊維などが挙げられる。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリアミド形成樹脂等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維があり、また、芯鞘型、サイドバイサイド型等の構造の複合繊維がある。本発明では複合繊維を用いるのが好ましい。ここでいう複合繊維とは、高融点成分が芯部分で低融点成分が鞘部分とする芯鞘繊維、また高融点成分と低融点成分とが並列するサイドバイサイド繊維が挙げられる。その好ましい例として、鞘成分(低融点成分)がポリエチレンまたは低融点ポリプロピレンである芯鞘構造の繊維が好ましく挙げられ、芯鞘構造の繊維の代表例としては、PET(芯)とPE(鞘)、PP(芯)とPE(鞘)、ポリ乳酸(芯)とPE(鞘)、PP(芯)と低融点PP(鞘)等の芯鞘構造の繊維があげられる。さらに具体的には、上記構成繊維は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン複合繊維を含むのが好ましい。ここで、該ポリエチレン複合繊維の複合組成は、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンであり、該ポリプロピレン複合繊維の複合組成が、ポリエチレンテレフタレートと低融点ポリプロピレンであるのが好ましく、より具体的には、PET(芯)とPE(鞘)、PET(芯)と低融点PP(鞘)が挙げられる。また、これらの繊維は、単独で用いて不織布を構成してもよく、2種以上を組み合わせた混繊として用いることもできる。
【0024】
次に、本実施形態の不織布10における寸法諸元について以下に説明する。
図6に示すように、シートの厚さについては、不織布10を側面視としてみたときの全体の厚さをシート厚みTSとし、その凹凸により湾曲したシートの局部的な断面の厚さを層厚みTLとする。シート厚みTSは、用途によって適宜調節すればよく、おむつや生理用品等の表面シートとして用いる場合、1mm以上7mm以下が好ましく、1.5mm以上5mm以下がより好ましい。その範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、さらには、適度なクッション性を実現することができる。層厚みTLは、シート内の各部位において異なっていてよく、用途によって適宜調節すればよい。おむつや生理用品等の表面シートとして用いる場合、第1突出部頂部11Tの層厚みTL1は0.1mm以上3mm以下であることが好ましく、0.4mm以上2mm以下がより好ましい。好ましい層厚みの範囲としては第2突出部頂部12Tの層厚みTL2および壁部13の層厚みTL3も同様である。各層厚みTL1、TL2、TL3の関係は、TL1>TL3>TL2であることが好ましい。これにより、第1突出部11において、特に肌面側では、繊維密度が低く、良好な肌当たりを実現することができる。一方、第2突出部12は繊維密度が高くなり、潰れにくく、型崩れせずに良好なクッション性と液体の吸収速度に優れた不織布とすることができる。
図7に示すように、第1方向Xの第1突出部頂部11Tと第2突出部頂部12Tを平面に投影したときの間隔Dxは、用途によって適宜調節すればよく、おむつや生理用品等の表面シートとして用いる場合、1mm以上15mm以下が好ましく、3mm以上10mm以下がより好ましい。また図面括弧内に符号を示すように、第2方向Yの第1突出部頂部11Tと第2突出部頂部12Tを平面に投影したときの間隔Dyも第1方向Xの間隔Dxと同様になる。また上記不織布10の坪量は特に限定されず、シート全体の平均値で15g/m
2以上50g/m
2以下が好ましく、20g/m
2以上40g/m
2以下がより好ましい。
【0025】
上記実施形態で説明した不織布10は、以下のような効果を奏する。
不織布10は、多量な液の排泄があった場合でも、またそれが高荷重下の場合であっても、液残り量および液戻り量を減少することができ、表面での液流れを抑制して、液を漏らさないようにできるので、肌当接面上での液流れの防止と非肌当接面側からの液戻りの防止の両立を図ることができる。
【0026】
さらに、固形分、高粘性液体等が供給されても、尾根部15を介して結ぶ第1突出部頂部11Tの一連の連なりによって、不織布の非肌当接面側においては第1突出部11の内部空間11Kの連なりによる空間が2方向に連なることから、その空間によってより高い通気性が得られる。多量の液は供給された場合、捕捉した多量の液を上記空間の連なり方向に拡散させることができ、第1突出部11の連なりによって、横方向への液漏れを防止できる。
【0027】
上記不織布10は排泄物の捕捉性に優れる。
本実施形態の不織布10においては、その両面に突出する第1、第2突出部11、12のそれぞれの内部に内部空間11K、12Kを有することから、排泄液や排泄物の物性に応じて多様な形態でこれらを捕捉し対応することができる。例えば、不織布10の第1面側Z1を肌面側として説明すると、粘度が低く透過しやすい排泄液であれば、不織布10の表面シートを透過したのち、内部空間11Kにこれが捕捉される。肌面にまず当たる部分が第1突出部頂部11Tであり、上記捕捉された排泄液ないし排泄物は肌に接触しにくくされている。これにより、尿、経血、下り物等の排泄ののちにも、幅広く対応して極めて良好なサラッと感じが持続される。
【0028】
次に、上述の不織布10の製造方法の好ましい一実施形態について、
図8を参照しながら、以下に説明する。
上述の不織布10の製造方法は、以下の製造方法を適宜採用すればよい。
【0029】
支持体の一例として、
図8(a)に示した構成の支持体110を用いる。この支持体110は、第2突出部12が賦形される位置に対応して多数の突起111を有し、第1突出部11が賦形される位置に対応して孔112が配されている。すなわち、支持体110は凹凸形状を有しており、突起111と孔112とが異なる方向に交互に配されていて、例えば、第1方向Xと第2方向Yのそれぞれに突起111と孔112とが交互に配されている。
また、支持体110は、加温されている。
支持体110の加温方法は、支持体110自体に熱を伝えて加熱する。すなわち、図示していない熱源で支持体110を直接温める方法である。例えば、電熱線を備えたヒータを突起111が配されていない支持体110の裏面側に配してもよい。または、支持体110上にウエブ50を搬送する前に、熱風を吹き付けて支持体110を温めてもよい。最終的に第1の熱風W1を吹き付ける際に、支持体110の温度が適正温度範囲になっていればどのような加温手段を用いても良い。
支持体110を加温する温度は、ウエブを構成する繊維のガラス転移点以上融点以下の温度とする。支持体110を繊維のガラス転移点以上の温度にすることによって、ウエブ50が塑性変形しやすくなり、支持体110に沿った形状になりやすくなると考えられる。つまり、ウエブ50を支持体110の形状に沿って賦形しやすくなる。一方、支持体110の加温が低すぎると第1突出部11の高さと尾根部15の高さの差が小さく、壁部の立ち上がり角度が急峻にならない。このままの状態で第1突出部頂部11Tを疎水化すると、不織布10に高加重(着座圧程度の加重)が付加された場合に、不織布表面に多量に液が排泄され、その液が不織布表面を伝い、漏れを起こしやすくなる。また加温が低すぎると、上記疎水化とは関係なく、凹凸形状が潰れやすくなるので好ましくない。これに対し支持体110の加温が高すぎると繊維同士が融着してしまい、賦形することができなくなる。
上記支時体110の温度は、次工程で説明する第1の熱風W1を吹き付ける際に上記の温度範囲とすることが好ましい。
【0030】
そして疎水性の熱可塑性繊維をそれぞれ親水化油剤によって親水化したウエブ(繊維ウエブともいう)50を用いる。親水化処理は既知の方法を用いることができる。このウエブ50を上記支持体110上に配して、ウエブ50に向けて第1の熱風W1を吹き付けると、
図8(b)に示すように、支持体110の孔112に対応して第1突出部11が賦形され、突起111の位置に対応して第2突出部12が賦形される。したがって、平面視した側の第1面側Z1に突出し内部空間11Kを有する第1突出部11と、第1面側Z1とは反対側の第2面側Z2に突出し内部空間12Kを有する第2突出部12とは、平面視交差する異なる第1方向Xと第2方向Yのそれぞれに交互に連続して配されて、ウエブ50が賦形される。
その際、第1突出部11は、頂部が半球のような丸みを有する円錐よりも壁部の立ち上がり角度が急峻な、頂部が半球の一部のような丸みを有する円錐台となる。この第1突出部11の壁部13の立ち上がり角度αは、前述したような角度とすることが好ましい。
なお、図面矢印は第1の熱風W1の流れを模式的に示している。
【0031】
この製造方法の具体的一例を挙げると、下記のような態様が挙げられる。
融着する前のウエブ50を、所定の厚みとなるようカード機(図示せず)からウエブを賦形する装置に供給する。
図8(a)に示すように、賦形装置では、まず上記の温度に加温されている支持体110上に上記のウエブ50を搬送して定着させる。
上記支持体110の加温温度は、賦形する繊維のガラス転移点以上融点以下の温度であり、好ましくは繊維のガラス転移点より高い温度以上、融点よりも10℃低い温度以下であり、より好ましくは繊維のガラス転移点より20℃高い温度以上、融点よりも20℃低い温度以下である。例えば熱可塑性繊維として複合繊維を用いる場合、高ガラス転移点成分のガラス転移点以上、低融点成分の融点よりも10℃低い温度以下であり、より好ましくは、高ガラス転移点成分のガラス転移点より20℃高い温度以上、低融点成分の融点よりも20℃低い温度以下である。例えば、繊維に芯/鞘構造の繊維として、ガラス転移点67℃、融点258℃のPET(芯)/ガラス転移点−20℃、融点135℃のPE(鞘)を用いた場合には、67℃以上、125℃以下、好ましくは87℃以上、115℃以下に加温する。この加温温度が低すぎると支持体110の形状に沿った賦形ができなくなり、第1突出部11と尾根部15(
図1、2参照)の高さの差が大きくならない。このため、高荷重下における不織布10の表面を流れる液が多量になると、漏れやすくなる。一方、支持体110の加温温度が高すぎると、繊維間での融着が生じ、または支持体110への融着が生じ、所望の形状に賦形ができなくなる。
【0032】
次いで、その支持体110上のウエブ50に第1の熱風W1を吹きつける(
図8(a)の状態。)。そしてウエブ50を支持体110の形状に沿うように賦形する(
図8(b)の状態。)。このときの第1の熱風W1の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、ウエブ50を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃から70℃低いことが好ましく、5℃から50℃低いことがより好ましい。第1の熱風W1の風速は、支持体110の突起111の高さにより、賦形性と風合いの観点から、20m/s以上150m/s以下に設定され、好ましくは30m/s以上100m/s以下である。風速がこの下限値より遅くなると、十分に賦形されなくなり、クッション性と排泄物のストック性と通気性の効果が十分に発揮されない。風速がこの上限値を超えると、第2突出部
12の頂部
12Tに開孔が生じることになり、潰れやすくなり、クッション性と排泄物のストック性と通気性の効果が十分に発揮されない。さらに、排泄物がその開孔部を通って逆戻りしやすくなる。
このようにして、ウエブ50を凹凸形状のシートに賦形する。
【0033】
なお、支持体110の突起111の高さは、賦形されるシート全体の厚みやシートの層厚みによって適宜決定される。例えば、1mm以上10mm以下に設定され、好ましくは1.5mm以上9mm以下に設定され、より好ましくは2mm以上8mm以下に設定される。
【0034】
次に、
図8(c)に示すように、ウエブ50の各繊維が適度に融着可能な温度の第2の熱風W2を吹きつけて、繊維同士を融着させ固定する。このときの第2の熱風W2の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、ウエブ50を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃から70℃高いことが好ましく、5℃から50℃高いことがより好ましい。第2の熱風W2の風速は、1m/s以上10m/s以下に設定され、好ましくは3m/s以上8m/s以下に設定される。この第2の熱風W2の風速は、遅すぎると繊維への熱伝達ができず、繊維同士が融着せず凹凸形状の固定が不十分になる。一方、風速が速すぎると、繊維へ熱が当たりすぎるため、風合いが悪くなる傾向となる。
【0035】
熱可塑性繊維としては、前述した繊維が用いられる。例えば熱可塑性繊維として低融点成分および高融点成分を含む複合繊維を用いる場合、ウエブ50に吹き付ける第2の熱風W2の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。
【0036】
またウエブ50は、熱可塑性繊維を、30質量%以上100質量%以下を含んでいることが好ましく、より好ましくは40質量%以上100質量%以下である。ウエブ50は、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)を含んでいてもよい。
【0037】
次に、第1突出部頂部11Tを疎水化することについて説明する。
不織布10は、第1突出部頂部11Tが疎水化されていなくても、基本的に、高いクッション性を有し、高荷重下であっても凹凸形状を維持し、肌への排出液の付着を抑制することができるという本発明の効果を奏する。さらに第1突出部頂部11Tが疎水化されることによって、肌への排出液の付着をさらに抑制することができるのでより好ましい。
疎水化方法は、特に限定されず、グラビア塗工やスクリーン塗工等が挙げられる。
または、以下のような方法を採用することも可能である。
予め疎水剤を塗布しておいた非変形性の平坦な塗布面を有するプレートを用意し、その疎水剤の塗布面が不織布10の各第1突出部11に均等に接するように不織布10を配置する。そして、幼児の使用状態を想定して、プレート上に0.5kPa以上3.5kPa以下の圧力がかかるようにおもりを載せて不織布10の第1突出部11に対し一定圧力を付与する。この圧力で塗布面に接触された第1突出部頂部11Tに対し、塗布面に塗布された疎水剤がしみこみ、第1突出部頂部11Tに疎水部11Dが形成される(
図1参照。)。おもりを用いることで、各第1突出部頂部11Tに均等に荷重をかけることができ、疎水剤を各第1突出部頂部11Tに均等に転写できる。すなわち精度よく疎水部11Dを形成することができる。そして、第1突出部頂部11Tにしみ込んだ疎水剤は第1突出部頂部11T内を四方に拡散される。おもりによる圧力は、肌への排出液の付着をさらに抑制するという所望の効果が得られるよう、適宜調整することができる。
上記のように、プレートに0.5kPa以上3.5kPa以下の圧力をかけて疎水剤を第1突出部頂部11Tにしみ込ませる疎水化処理を行うことで、後述する実施例4から9に示すように、液戻り量低減効果を得ることができる。
第1突出部頂部11Tにおいて、疎水部11Dの第1面側Z1の面積St1(図示せず)よりも疎水部11Dの第2面側Z2の面積St2(図示せず)を広くするには、疎水剤(例えば疎水油剤)を図示していないノズルから第1突出部頂部11Tに注入する方式があり、ノズルの注入深さを深くし、第2面側Z2側付近から注入する方法などが挙げられる。ノズルの注入深さを変えることによって、疎水部11Dの第1面側Z1の面積St1と疎水部11Dの第2面側Z2の面積St2の面積比率を変更できる。また、ウエブ50に使用する熱可塑性繊維の第2面側Z2の繊度を第1面側Z1の繊度よりも小さくするなどし、第2面側Z2の繊維密度を第1面側Z1の繊維密度より高くすることによっても達成できる。これは、第1突出部頂部11Tにしみ込んだ疎水剤が、第1面側Z1よりも第2面側Z2でより大きく拡散するためである。さらに疎水部11Dの疎水面積は、使用状態において、液戻り量が効果的に低減されるように調整されることが好ましい。
【0038】
上記親水処理に用いる親水剤としては、各種公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、親水性の油剤が用いられる。親水性の油剤としては、アニオン性、カチオン性、両性あるいはノニオン性の界面活性剤が一般的であり、特にこれらに限定されるものではない。これらは所定濃度の水溶液や乳化液等にして用いることもできる。好ましい親水化剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコール、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等を挙げることができる。
【0039】
上記疎水剤としては、具体的にシリコーンオリゴマー、フッ素オリゴマー等が挙げられる。シリコーンオリゴマーは鎖状のポリジメチルシリコーンが代表的で、メチル基の一部をポリエーテル、フェニル基やトリフルオロプロピル基にかえた変性シリコーン等がある。フッ素オリゴマーは、撥水撥油剤としてはパーフルオロアルキル基を含むアルコールのアクリル酸エステルのポリマーあるいはリン酸エステル等が用いられている。シリコーン撥水剤の特徴は、撥水性と共に柔軟性に優れ、肌に直接接触する表面剤の処理に好適である。フッ素系の撥水剤は、当該域で最も優れた撥水性を示し、特に親水性化の為の界面活性剤を接触していても撥水性を維持出来る利点を有する。
【0040】
以上説明したようにして、不織布10が作製される。
上記製造方法は、連続生産を考慮すると、製造装置(図示せず)は、上記支持体110を搬送可能なコンベア式またはドラム式のものとし、搬送されてくる凹凸形状を固定されたシートを、ロール(図示せず)で巻き取っていく態様が挙げられる。
【0041】
上記製造方法においては、各シートの厚みは、第1の熱風W1の風速によって、適宜決定される。例えば、風速を速くするとシートの厚みが厚くなり、遅くするとシートの厚みが薄くなる。また、風速を速くすると第1突出部と第2突出部の繊維密度差が大きくなり、風速を遅くすると第1突出部と第2突出部の繊維密度差が小さくなる。
【0042】
本発明の不織布10は、各種用途に用いることができる。例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、尿取りパッド等の吸収性物品の表面シートとして好適に使用することができる。さらに不織布10の両面が凹凸構造であることに起因する通気性や液拡散性、押圧力時の変形特性、などに優れていることから、おむつや生理用品等の表面シートと吸収体との間に介在させるサブレイヤーとして用いることもできる。その他、吸収性物品のギャザー、外装シート、ウイングとして利用する形態も挙げられる。さらに、おしり拭きシート、清掃シート、フィルタとして利用する形態も挙げられる。
【0043】
次に、
図9を参照しながら本発明に係る不織布を表面シートに用いた吸収性物品の好ましい一実施形態として使い捨ておむつ100の本体4への適用例について以下に説明する。同図に示した使い捨ておむつはテープ型の乳幼児用使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。
【0044】
図9に示すように、使い捨ておむつ100は、肌当接面側に配された液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配された液難透過性の裏面シート2、及び前記両シートの間に介在配置された液保持性の吸収体3を備える。
表面シート1には上記実施形態の不織布10が適用され、その第1突出部11側が肌当接面とされている。
【0045】
裏面シート2は展開状態で、その両側縁が長手方向中央部Cにおいて内側に括れた形状を有しており、1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。
裏面シート2としては、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されず、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高密度ないし低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0046】
吸収体3としては、液保持性を有するものであれば、この種の物品に用いられる様々の態様ものを広く採用できる。例えば、パルプ繊維をコアラップシートで被覆したものや、エアレイド不織を用いたシート状のものや、高吸水性ポリマーを繊維シートで挟持してなるシート状のものなど様々ある。前記パルプ繊維としては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ等の木材パルプや木綿パルプ、ワラパルプ等の非木材パルプ等の天然セルロース繊維などが挙げられる。その他、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を一部に含んでもよい。また、前記高吸水性ポリマーとしては、この種の物品に通常使用されている各種のポリマー材料を用いることがでる。吸水性ポリマーは、自重の20倍以上の水または生理食塩水を吸収し保持し得る性能を有するような超吸収性高分子化合物であることが好ましい。
また被覆シートは、親水性の部材であり、例えば、親水性のティッシュペーパー等の薄手の紙(薄葉紙)、クレープ紙、コットンやレーヨンなどの親水性繊維からなる不織布、合成樹脂の繊維に親水化処理を施してなる不織布、例えばエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等からなるものを用いることができる。
【0047】
サイドシート5としては、撥水性の不織布が好ましく、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、または撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。
【0048】
本例においては、サイドシート5がなす横漏れ防止ギャザー7が設けられており、これにより乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止しうる。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。なお、
図9においては各部材の配置関係や境界を厳密には図示しておらず、この種のおむつの一般的な形態とされていれば特にその構造は限定されない。
【0049】
上記おむつはテープ型のものとして示しており、背側Rのフラップ部にはファスニングテープ6が設けられている。ファスニングテープ6を腹側Fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、おむつを装着固定することができる。このとき、おむつ中央部Cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収体3が乳幼児の臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。これにより排泄物が的確に吸収体3に吸収保持される。このような形態で用いることにより、特に不織布10を表面シート1として適用したことにより、多量な液の排泄があった場合でも、またそれが高荷重下の場合であっても、肌当接面上での液流れの防止と非肌当接面側からの液戻りの防止の両立を図ることができる。また、内部空間11Kの連なりによる空間によってより高い通気性が得られ、捕捉した多量の液を上記空間の連なり方向に拡散させることができ、横方向への液漏れを防止できる。さらに捕捉された排泄液ないし排泄物は肌に接触しにくくされていることにより、尿、経血、下り物等の排泄ののちにも、幅広く対応して極めて良好なサラッと感じが持続される。
【0050】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態の使い捨ておむつに制限されるものではなく、例えば生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、尿とりパッド等に適用することができる。なお吸収性物品の構成部材として、表面シート1、裏面シート2、吸収体3の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。
【0051】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の不織布、吸収性物品用の表面シート、吸収性物品及び不織布の製造方法を開示する。
<1>シート体の不織布を平面視した側の第1面側に突出し内部空間を有する第1突出部と、
前記第1突出部とは反対側の第2面側に突出し内部空間を有する第2突出部とを有し、
前記第1突出部および前記第2突出部とは該不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれに壁部を介して交互に連続して複数配され、
隣接する前記第1突出部同士、および隣接する前記第2突出部同士は、それぞれ尾根部を介して前記の異なる方向のそれぞれに対して平面視斜め方向に連続して連なった不織布であり、
前記不織布を0.05kPaの圧力で加圧した時に、
前記第1突出部の厚み方向の高さが前記尾根部の厚み方向の高さより高く、
前記第1突出部の壁部の立ち上がり角度が、0°以上20°以下である不織布。
<2>前記第1突出部の壁部の立ち上がり角度は、0°よりも大きく20°以下であることが好ましく、0°よりも大きく15°以下であることがより好ましく、0°よりも大きく12°以下であることがさらに好ましい<1>記載の不織布。
<3>前記壁部を構成する繊維が、前記第1突出部の頂部と前記第1突出部の内部空間の開口部の縁部とを結ぶ方向に繊維配向性を有している<1>または<2>に記載の不織布。
<4>前記壁部を構成する繊維は、前記壁部の起立する方向に繊維配向性を有する<1>から<3>のいずれか1に記載の不織布。
<5>前記壁部を構成する繊維は、前記第1突出部頂部に向かうような放射状の繊維配向性を有している<1>から<4>のいずれか1に記載の不織布。
<6>前記第2突出部の壁部を構成する繊維は、前記第2突出部頂部とその内部空間の開口部の縁部を結ぶ方向に繊維配向性を有する<1>から<5>のいずれか1に記載の不織布。
<7>前記壁部の配向角が50°以上130°以下、配向強度が1.05以上である<1>から<6>のいずれか1に記載の不織布。
<8>前記壁部の配向角が60°以上120°以下、配向強度が1.10以上である<1>から<6>のいずれか1に記載の不織布。
<9>前記壁部の配向角が85°以上95°以下、配向強度が1.30以上である<1>から<6>のいずれか1に記載の不織布。
<10>前記不織布を3.5kPaの圧力で加圧した時に、前記第1突出部の厚み方向の高さが前記尾根部の厚み方向の高さより高い<1>から<9>のいずれか1に記載の不織布。
<11>前記不織布を3.5kPaの圧力で加圧した時の、前記第1突出部の厚み方向の高さh1と前記尾根部の高さh5との比(h1/h5)は、1.01以上であることが好ましく、1.05以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、また上限は、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.8以下であることがさらに好ましい<1>から<10>のいずれか1に記載の不織布。
<12>前記第1突出部は、その頂部が半球のような丸みを有する円錐よりも壁部の立ち上がり角度が急峻な、前記頂部が半球の一部のような丸みを有する円錐台である<1>から<11>のいずれか1に記載の不織布。
<13>前記第1突出部頂部の親水性が、前記第2突出部頂部および前記壁部よりも低い<1>から<12>のいずれか1に記載の不織布。
<14>前記第1突出部の頂部の親水性が、前記尾根部の親水性よりも低い<1>から<13>のいずれか1に記載の不織布。
<15>前記第1突出部頂部は、22℃におけるイオン交換水の接触角が、80°以上であり、好ましくは100°以上であり、
前記第2突出部頂部及び前記壁部の好ましい接触角は、イオン交換水の接触角が、30°以上80°未満度であり、好ましくは60°以上70°以下である<1>から<14>のいずれか1に記載の不織布。
<16>前記尾根部は、22℃におけるイオン交換水の接触角が、30°以上80°未満度であり、好ましくは60°以上70°以下である<1>から<14>のいずれか1に記載の不織布。
<17>前記第1面側および前記第2面側の両面において、前記第1突出部頂部の親水性が、前記第1突出部頂部を除く部分より低いか、または疎水性を有しており、前記第1突出部頂部における前記第2面側よりも前記第1面側の方が疎水化している面積が小さい<1>から<16>のいずれか1に記載の不織布。
<18>前記異なる2つの方向は直交している<1>から<17>のいずれか1に記載の不織布。
<19>前記壁部は、前記第1突出部及び前記第2突出部において環状構造を成している<1>から<18>のいずれか1に記載の不織布。
<20>前記第1突出部頂部の層厚みTL1、前記第2突出部頂部の層厚みTL2および前記壁部の層厚みTL3は、TL1>TL3>TL2である<1>から<19>のいずれか1に記載の不織布。
<21><1>から<20>のいずれか1に記載の不織布を用いた吸収性物品用の表面シート。
<22><1>から<20>のいずれか1に記載の不織布を、前記第1面側を肌当接面側に向けて用いた吸収性物品用の表面シート。
<23><1>から<20>のいずれか1に記載の不織布を表面シートとして用いた吸収性物品。
<24><1>から<20>のいずれか1に記載の不織布を、前記第1面側を肌当接面側に向けて、表面シートとして用いた吸収性物品。
<25>凹凸形状を有し、加温した支持体に熱可塑性繊維を含有するウエブを搬送し、該ウエブの上から前記支持体に向けて熱風を吹き付けて該ウエブに凹凸形状を賦形する不織布の製造方法であって、
前記ウエブを構成する繊維のガラス転移点以上融点以下の温度範囲に前記支持体を加温する工程と、
第1の熱風の吹き付けにより前記ウエブの繊維同士を前記凹凸形状が保持される状態に仮融着させる工程と、
前記の第1の熱風よりも高温度の第2の熱風を吹き付け、前記凹凸形状を保持した状態で前記ウエブの繊維同士を融着させて前記凹凸形状を固定する工程とを備えた、不織布の製造方法。
<26>前記支持体を加温する温度範囲は、好ましくは繊維のガラス転移点より高い温度以上、融点よりも10℃低い温度以下であり、より好ましくは繊維のガラス転移点より20℃高い温度以上、融点よりも20℃低い温度以下である<25>に記載の不織布の製造方法。
<27>前記支持体の温度は前記第1の熱風を吹き付ける際に前記温度範囲とする<25>または<26>記載の不織布の製造方法。
<28>さらに、前記凹凸形状の凸部となる第1突出部の頂部を疎水化する工程を含む、<25>から<27>のいずれか1に記載の不織布の製造方法。
<29><25>から<28>のいずれか1に記載の不織布の製造方法を用いて製造された不織布。
<30><29>に記載の不織布を用いた吸収性物品用の表面シート。
<31><29>に記載の不織布を表面シートとして用いた吸収性物品。
【0052】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0053】
[実施例1−9]
実施例1は、芯がポリエチレンテレフタレート(融点258℃、ガラス転移点67℃)で鞘がポリエチレン(融点135℃、ガラス転移点−20℃)からなり、表面が親水化処理されている2.4dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を坪量30g/m
2となるようカード機からウエブ50として賦形装置に供給した。賦形装置では、多数の突起を有し通気性を有する支持体110の上に上記ウエブ50を定着させた。支持体110は、70℃に加温されている。この支持体110の突起111の平面視におけるMDピッチを8mm、CDピッチを5mmとし、突起111の高さを7.5mmとした。また支持体110における孔112の孔径を2.8mmとした。
次いで、その支持体110上のウエブ50に第1の熱風W1(温度130℃、風速50m/s)を吹きつけて、支持体110上の突起111にそってウエブ50を賦形する。次に、温度145℃、風速5m/sの第2の熱風W2に切り替えて各芯鞘構造の繊維同士を融着させて賦形形状を固定した。支持体110は第1の熱風W1を吹き付ける際に70℃に加温されている。このようにして不織布10を作製した。
実施例2は、上記実施例1において支持体110の加温温度を90℃にした以外、実施例1と同様に作製した。
実施例3は、上記実施例1において支持体110の加温温度を110℃にした以外、実施例1と同様に作製した。
実施例4は、実施例1の不織布10を作製し、さらに、上記疎水処理を行った。疎水剤にはKM−903(信越化学工業株式会社製)を用い、その疎水剤をエタノールに溶かし、1.0重量%溶液に調整し、アクリルプレートに4.3mg/cm
2で塗工した。プレートに2.0kPaの圧力を10秒かけて、第1突出部頂部11Tに接触させることで、疎水部11Dを作製した。
実施例5は、上記実施例4において支持体110の加温温度を90℃にした以外、実施例4と同様に作製した。
実施例6は、上記実施例4において支持体110の加温温度を110℃にした以外、実施例4と同様に作製した。
実施例7は、上記実施例5において、疎水剤にKF−6011(信越化学工業株式会社製)を用いた以外、実施例5と同様に作製した。
実施例8は、上記実施例5において、ウエブ50を芯鞘型複合繊維2.4dtex×51mmと1.8dtex×51mmの二層品にした以外、実施例5と同様に作製した。
実施例9は、上記実施例8において、プレートにかける圧力を1.5kPaにした以外、実施例8と同様に作製した。
【0054】
[比較例1−3]
比較例1は、上記実施例1において支持体110の加温温度を40℃にした以外、実施例1と同様に作製した。
比較例2は、上記実施例4において支持体110の加温温度を40℃にした以外、実施例4と同様に作製した。
比較例3は、上記比較例2の不織布10を作製し、さらに、KM−903(信越化学工業株式会社製)1.0重量%エタノール溶液を壁部、尾根部に刷毛で塗工し、疎水化する以外、実施例2と同様に作製した。
【0055】
次に、測定方法および評価方法について説明する。上述の各不織布試験体を用い、下記の測定試験を行った。
<支持体温度測定方法>
賦形装置を停止してから5秒後に接触式温度計を用いて、第1の熱風W1の吹き付け位置の支持体温度を測定した。接触式温度計には、計測器本体にCHINO社製ND500、測定端子にCHINO社製C510−05Kを用いた。3回の温度測定を行い、その平均値を支持体温度とした。
【0056】
<繊維配向性(配向角、配向強度)の測定>
日本電子(株)社製の走査電子顕微鏡JCM−5100(商品名)を使用し、
図1におけるz軸方向が上下となるようにサンプルを静置し、サンプルの測定する面に対して垂直の方向から撮影した画像(測定する繊維が10本以上計測できる倍率に調整;100ないし300倍)を印刷し、透明PET製シート上に繊維をなぞった。前記の画像をパソコン内に取り込み、株式会社ネクサス社製のnexusNewQube[商品名](スタンドアロン版)画像処理ソフトウエアを使用し、前記画像を二値化した。次いで、前記二値化した画像を、繊維配向解析プログラムである、Fiber Orientation Analysis 8.13 Singleソフト(商品名)を用い、フーリエ変換し、パワースペクトルを得、楕円近似した分布図から、配向角と配向強度を得た。
配向角は繊維が最も配向している角度を示し、配向強度はその配向角における強度を示している。壁部中間部分の測定においては、配向角が90°に近い値ほど、頂部11Tの中心方向に繊維が配向していることを示し、60°以上120°以下であれば、頂部11Tの中心方向に繊維が配向していると判断する。
また、配向強度の値が大きいほど繊維の向きがそろっていることを表す。配向強度が1.05以上の場合を配向しているとする。
測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの配向角と配向強度とした。
【0057】
上述の繊維配向性は、繊維の配向角と配向強度からなる概念である。
繊維の配向角は、色々な方向性を有する複数の繊維が全体としてどの方向に配向しているかを示す概念で、繊維の集合体の形状を数値化している。繊維の配向強度は、配向角を示す繊維の量を示す概念であり、配向強度は、1.05未満では、ほとんど配向しておらず、1.05以上で配向を有しているといえる。しかしながら、本実施形態においては、繊維配向がその部位によって変化している。すなわち、ある配向角の状態の部位から異なる配向角の部位へと変化する間(繊維がある方向に配向強度が強い状態から異なる配向に強い強度を示す部位へ変化する間)に、配向強度が弱い状態や再配向することで高い状態へ至る等の様々な状態を有する。そのため、ある強い配向角を示す部位と別の方向に強い配向角を示す部位との間においては、繊維の配向強度が弱くとも繊維の配向角が変わっていることが好ましく、配向強度が高いことがより好ましい。配向角、配向強度について本実施形態において一例を示すと、第1突出部11の壁部13の曲面構造に対して配向角は、50°以上130°以下が好ましく、より好ましくは60°以上120°以下であり、配向強度は1.05以上が好ましく、より好ましくは1.10以上である。第2突出部12の壁部14は上記壁部13と同様になる。
不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合、各々の壁部13の繊維配向性により高加圧下においても不織布10は十分な耐圧縮性を有し、不織布10の第1突出部11、第2突出部12の潰れを防ぐ。これにより十分な捕捉空間を確保でき、肌接触面積を小さくする効果、高い通気性、多量の液、固形分、高粘性液体等を十分に捕捉し、漏れを抑制する効果を十分に発揮する。
【0058】
<0.05kPa圧力時の厚みの測定>
不織布10の切断面を、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−1000で測定する部位が十分に視野に入り測定できる大きさ(10倍ないし100倍)に拡大し、0.05kPaの圧力がかかるように重りを不織布10の上に置き、第1突出部11の厚み方向の高さh1と尾根部15の厚み方向の高さh5を測定する。測定は、10回行い、平均値を不織布10の第1突出部頂部11Tの高さh1、尾根部15の高さh5とした。
<3.5kPa圧力時の厚みの測定>
3.5kPa加圧下での第1突出部11Tの高さh1、尾根部15の高さh5の測定方法は、0.05kPa圧力時の厚みの測定方法のおもりを3.5kPaの圧力がかかるように調整する以外は同様に行った。
【0059】
<接触角CA(°)の測定方法>
接触角の具体的な測定方法は以下のように行った。接触角の測定には接触角計を用いる。例えば協和界面科学株式会社製の接触角計MCA−Jを用いる。具体的には、疎水剤が施された不織布10上に、イオン交換水を滴下(約20ピコリットル)した後、直ちに前記接触角計を用いて接触角の測定を行う。測定は、不織布10の5箇所以上の箇所で行い、それらの平均値を接触角とする。測定温度は22℃、測定雰囲気の相対湿度は65%とする。
第1突出部頂部11Tは疎水性であることが好ましく、イオン交換水の接触角は、80°以上であることが好ましい。より好ましくは100°以上である。
第1突出部頂部11Tを除く部分(第2突出部頂部12T、壁部13(14))の好ましい接触角としてイオン交換水の接触角は、30°以上80°未満である。好ましくは60°以上70°以下である。したがって、尾根部15の接触角も上記のような角度とすることが好ましく、具体的には、好ましくは30°以上80°未満であり、より好ましくは60°以上70°以下である。ここで測定する接触角の値が低いほど親水性が高いことになる。
【0060】
<立ち上がり角度の測定方法>
不織布10の切断面を、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−1000で測定する部位が十分に視野に入り測定できる大きさ(10倍ないし100倍)に拡大し、第1突出部11Tの立ち上がり角度αを測定する。前記
図4(b)に示すように、立ち上がり角度αは、第2突出部12の頂部12Tを結んだ直線Lhに対して垂直な直線Lvを引き、この直線と、第2突出部頂部12Tから壁部14にかけて引いた第2面側Z2における不織布(ウエブ50)の接線Ltとのなす角度αを測定する。測定は、10回行い、平均値を不織布10の第1突出部11Tの壁部13(14)の立ち上がり角度αとした。
【0061】
<疎水部11Dの第1面側の面積と第2面側の面積の測定方法>
疎水部11Dの第1面側、第2面側のそれぞれにおいて、0.2mm毎に接触角を測定し、接触角が80°以上になる範囲の面積を0.2mm四方の正方形の数を数えることで測定し、それぞれ疎水部11Dの第1面側の面積St1と第2面側の面積St2とした。
【0062】
<圧縮回復性の評価>
圧縮回復性は、KES圧縮試験機(カトーテック(株)製KES FB−3)を用い、通常モードで5.0kPaまでの圧縮特性評価を行い、RC値を読み取った。測定値としては、3点を測定しその平均値を圧縮回復性とした。このKES圧縮試験機は、圧縮部位が面積2cm
2の円形平面を持つ板であり、圧縮速度は0.02mm/s、圧縮最大圧力は5.0kPaで、圧縮最大圧力に到達した時点で圧縮方向を反転させ回復過程に移行するものである。上記RC値は、圧縮時のエネルギーに対する回復されるエネルギーの割合を%表示したものであり、RC値が大きいほど、圧縮に対する回復性が良く、弾力性があり、クッション性が良いとされる。上記圧縮特性評価におけるRC値は、不織布の試験体に掛かる初期圧力0.05kPaがかかる時間T
0から最大圧力5.0kPaがかかる時間T
mまでの圧力の時間積分値を最大圧力5.0kPaまでの仕事量で除し、%で表示したものである。
【0063】
<液戻り量の測定法>
液戻り量の測定は、吸収性物品100の一例として乳幼児用おむつ(花王株式会社製:メリーズさらさらエアスルー(登録商標)Mサイズ、2012年製)から表面シートを取り除き、その代わりに不織布10の試験体(以下、不織布試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の乳幼児用おむつを用いた。
上記不織布試験体上に3.5kPaの圧力を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積1000mm
2の筒を当て、そこから人口尿を注入した。人工尿としては、生理食塩水を用い、10分ごとに40gずつ4回にわたり、計160gの人工尿を注入した。
注入完了から10分静置した後に、上述の円筒および圧力を取り除いた。そして、アドバンテック社製のろ紙No.5C(100mm×100mm)を20枚重ねた吸収シート(質量=M1)に3.5kPaの圧力がかかるように調整した重りを、注入点を中心として不織布試験体上に置いた。
5分静置した後に重りを取り除き、ろ紙の質量(M2)を測定し、次式のようにして、液戻り量を算出した。
【0064】
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(M2)−加圧前のろ紙の質量(M1)
【0065】
<液流れ長さの測定法>
人工尿の液流れは、人工尿を供給した位置から流れ落ちた距離を測定した。
乳幼児用おむつ(花王株式会社製:メリーズさらさらエアスルー(登録商標)Mサイズ、2012年製)から表面シートを取り除き、その代わりに不織布10の試験体を用い、試験体の周囲を固定して得た評価用の乳幼児用おむつを用いた。平坦なアクリル板を30°の傾斜面が得られるように傾け、その傾斜表面に上記乳幼児用おむつを貼り付けて3.5kPaで加圧し、その状態で乳幼児用おむつの表面側に配した注入口から人工尿として生理食塩水を乳幼児用おむつに40g注入し、注入口から全ての液が吸収し終わるまでの液流れ量として、注入口から液の下端までの距離を吸収性物品の縦方向(長手方向)で測定した。なお、注入された液が、吸収性物品の縦方向から斜め方向に吸収された場合は、注入口と斜め方向に吸収された液の下端とを吸収性物品の縦方向にそって結んだ最短距離を液流れ長さとした。
【0066】
不織布10について、物性(支持体温度、配向角、配向強度、厚み、接触角、疎水部面積)および性能(圧縮回復性(RC値)、液戻り量、液流れ)の結果を下記の表1に示す。
【0068】
上記の表1が示すとおり、実施例1から9は、3.5kPa圧力時の第1突出部11の厚みが2.6mm以上であり、液戻り量が1.3g以下となった。これは、支持体110の加温温度が適した範囲であるため、支持体110の形状に沿った賦形ができ、立ち上がり角度が20°以下となり、不織布10が厚み方向に潰れ難くなったためである。このことにより、RC値(%)が比較例と比して高い値となっており、クッション性が向上していることがわかる。
実施例4から9は、液戻り量が0.8g以下であり、液戻り量が少なくなった。これは、上記実施例1から3の効果に加えて、肌当接面側となる第1面側Z1において、第1突出部頂部11Tが疎水性であるために、肌に触れる液の残り量が減少され、かつ吸収体からの溢れた液が第1面側Z1に戻りにくくなったためである。また液流れ長さは、65mm以下であり、少ない液流れになった。これは、支持体110の加温温度が適した範囲であるため、支持体110の形状に沿った賦形ができ、第1突出部11と尾根部15の高さの差が大きくなることにより、不織布10の第1面側Z1の液の流れが、第1方向X、第2方向Yに対して斜め方向に液が流れるようになったためである。
一方、比較例1は、支持体110の加温温度が40℃と低いため、支持体110の形状に沿った賦形ができなくなり、立ち上がり角度が30°となり、不織布10が厚み方向に潰れ易く、かつ第1突出部頂部11Tに疎水部がないため、液戻り量が1.5gと多くなった。また、第1突出部頂部11Tに疎水部がないため、高荷重下における、第1突出部11の高さh1と尾根部15の高さh5の差によらず、液流れ量は、58mmと小さくなった。
また、比較例2、比較例3では、液戻り量が1.0g、0.9gとやや少なく、液流れ長さが100mm以上と非常に長くなった。これは、支持体110の加温温度が40℃と低いため、支持体110の形状に沿った賦形ができなくなり、第1突出部11と尾根部15の高さの差が大きくならなかったため、実施例と同様の効果が十分に発揮されなかったためである。
上記したように実施例1から9は液戻り量および表面液流れ長さの両方を低い数値に抑えられていた。したがって、実施例1から9は、比較例1ないし3では達成できない液戻り防止および表面液流れ防止の両立を実現できたことが分かった。