特許第5925851号(P5925851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925851
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】鳥の巣用の把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 1/00 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   B25J1/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-182574(P2014-182574)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-55373(P2016-55373A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 光弘
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−026772(JP,A)
【文献】 実開平01−090785(JP,U)
【文献】 実開昭64−020283(JP,U)
【文献】 特開2012−223082(JP,A)
【文献】 実開昭59−120576(JP,U)
【文献】 実開昭61−102492(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸回転操作棒に連結される入力軸と、該入力軸の回転力を受ける機構部と、該機構部の駆動を受けて回転する二つ以上の軸と、入力軸及び二つ以上の軸のそれぞれに螺合される螺合部材であって、それぞれが軸の回転によって同期して離間・近接するように軸に沿って移動可能な螺合部材と、各螺合部材から延出した把持爪とを備え、前記入力軸及び二つ以上の軸が前記機構部を中心に放射状に配置され、前記機構部は、前記入力軸に接続された第1傘歯車と、二つ以上の軸のうちの第1の軸に接続された第2傘歯車と、二つ以上の軸のうちの前記第1の軸を除く他の1の軸である第2の軸に接続された第3傘歯車とを備え、前記第2傘歯車が前記第1傘歯車と前記第3傘歯車とに噛み合うことを特徴とする鳥の巣用の把持装置。
【請求項2】
前記把持爪は、内側の把持爪と外側の把持爪との組合せとされ、内側の把持爪が外側の把持爪よりも長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鳥の巣用の把持装置。
【請求項3】
前記入力軸、機構部、二つ以上の軸及び螺合部材を収納し、前記把持爪を移動可能にする開口部を有するケーシングを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鳥の巣用の把持装置。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記螺合部材の回転を規制する規制手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の鳥の巣用の把持装置。
【請求項5】
前記二つ以上の軸は、90°の間隔で三方向に配置された三つの軸で構成され、真ん中の軸が前記入力軸の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の鳥の巣用の把持装置。
【請求項6】
前記第2傘歯車は、前記入力軸に対して交差する方向の一方の軸に接続され、前記第3傘歯車は、前記真ん中の軸に接続され、
前記入力軸に対して交差する方向の一方の軸と他方の軸とが連結されていることを特徴とする請求項5に記載の鳥の巣用の把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱の上部などの高所に作られた鳥の巣を撤去するための鳥の巣用の把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラスなどの鳥が電柱の上部などの高所に巣を作ることがある。鳥の巣は、枯れ枝だけでなく、針金製ハンガーなどのワイヤーによっても作られる。このワイヤーが電線に接触すると短絡し、危険であるだけでなく、停電させることもある。そこで、電柱などの高所に作られた鳥の巣を撤去するための装置が種々提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その一例である鳥の巣用の把持装置は、図4及び図5に示すように、回動軸101を中心に回動する一対の回動部材110と、各回動部材110の先端に取り付けられた爪形状部120と、一対の回動部材110を開閉させる雄ネジ部材130と、雄ネジ部材130の基端部に取り付けられたジョイント140とを備えている。
【0004】
回動部材110は、短尺状の第1アーム部111と、L字状の第2アーム部112と、第1アーム部111の先端部と第2アーム部112の基端部とを連結する回転軸113とを備えている。また、両第1アーム部111の基端部が回動軸101によって連結され、回動部材110の回転軸113を雄ネジ部材130が貫通し、雄ネジ部材130が周方向に回転することで、両第1アーム部111が近づいた状態と離れた状態とに開閉するとともに、両第2アーム部112が水平姿勢と傾斜姿勢とに転換する。
【0005】
そして、爪形状部120は、回動部材110の第2アーム部112に沿ってスライドする支持板121と、この支持板121の先端から下向きに延出した引掻爪122とを備えている。爪形状部120の引掻爪122は、対をなし、回動部材110の姿勢転換に連動して、下向きに開いた状態と内向きに閉じた状態とに転換する。また、爪形状部120の支持板121が回動部材110の第2アーム部112に沿ってスライドすることにより、対をなす引掻爪122の間隔を変更することができるようにされている。
【0006】
そして、ジョイント140には、図示しない絶縁操作棒の先端部が連結される。作業者が絶縁操作棒の基端部を把持し、絶縁操作棒の先端部に装着された鳥の巣用の把持装置を、電柱の上部に作られた鳥の巣の上方から鳥の巣にアプローチする。
【0007】
当初、引掻爪122が図4に示すように開いた状態とされており、鳥の巣の外側に挿し込まれる。そして、絶縁操作棒を周方向に回転することにより、雄ネジ部材130が周方向に回転し、引掻爪122が図5に示すように閉じた状態とされ、鳥の巣を把持することができる。そして、鳥の巣用の把持装置が持ち上げられ、引き寄せられることで、鳥の巣が電柱の上部から撤去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−26772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4及び図5に示した鳥の巣用の把持装置は、絶縁操作棒を周方向に回転することで引掻爪122が開閉するようにされているため、操作性がよいものとなっている。
【0010】
しかし、この鳥の巣用の把持装置は、対をなす引掻爪122が鳥の巣を両側から抱えるように把持する。したがって、この鳥の巣用の把持装置は、引掻爪122が鳥の巣を不安定な状態で把持するものとなるため、鳥の巣を引掻爪122から脱落させたり、崩壊させたりすることがあった。
【0011】
そこで、本発明は、操作性に優れ、鳥の巣を的確に把持することができるようにした鳥の巣用の把持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る鳥の巣用の把持装置は、二軸回転操作棒に連結される入力軸と、該入力軸の回転力を受ける機構部と、該機構部の駆動を受けて回転する二つ以上の軸と、入力軸及び二つ以上の軸のそれぞれに螺合される螺合部材であって、それぞれが軸の回転によって同期して離間・近接するように軸に沿って移動可能な螺合部材と、各螺合部材から延出した把持爪とを備え、前記入力軸及び二つ以上の軸が前記機構部を中心に放射状に配置され、前記機構部は、前記入力軸に接続された第1傘歯車と、二つ以上の軸のうちの第1の軸に接続された第2傘歯車と、二つ以上の軸のうちの前記第1の軸を除く他の1の軸である第2の軸に接続された第3傘歯車とを備え、前記第2傘歯車が前記第1傘歯車と前記第3傘歯車とに噛み合うことを特徴としている。
【0013】
この鳥の巣用の把持装置によれば、入力軸を回転させるという操作だけで、入力軸の回転力を受ける機構部によって二つ以上の軸が回転し、入力軸及び二つ以上の軸のそれぞれに螺合される各螺合部材を同期して離間・近接するように軸方向に移動させることができる。これにより、各螺合部材から延出した各把持爪の間隔が鳥の巣の外径よりも広く離間した状態から、鳥の巣を把持する狭く近接した状態に変更可能とされ、鳥の巣を三方向以上から的確に把持することができる。
【0014】
ここで、本発明に係る鳥の巣用の把持装置の一態様として、前記把持爪は、内側の把持爪と外側の把持爪との組合せとされ、内側の把持爪が外側の把持爪よりも長く形成されている構成を採用することができる。
【0015】
この鳥の巣用の把持装置によれば、鳥の巣がボウル状に窪んだ本体部と、この本体部の周縁から外方に突出した鍔状の外縁部とを有する形態である場合において、内側の把持爪が本体部の底部を支持し、外側の把持爪が外縁部を支持することができる。
【0016】
また、本発明に係る鳥の巣用の把持装置の他態様として、前記入力軸、機構部、二つ以上の軸及び螺合部材を収納し、前記把持爪を移動可能にする開口部を有するケーシングを備えている構成を採用することができる。
【0017】
この鳥の巣用の把持装置によれば、入力軸、機構部、二つ以上の軸及び螺合部材がケーシング内に収納されることにより、携行しやすくなるだけでなく、入力軸、機構部、二つ以上の軸及び螺合部材が外力から保護されるようにすることができる。
【0018】
この場合、前記ケーシングは、前記螺合部材の回転を規制する規制手段を備えている構成を採用することができる。この鳥の巣用の把持装置によれば、ケーシングが規制手段を備えていることにより、装置全体の構成を簡素化することができる。
【0019】
また、本発明に係る鳥の巣用の把持装置のさらに異なる他態様として、前記二つ以上の軸は、90°の間隔で三方向に配置された三つの軸で構成され、真ん中の軸が前記入力軸の延長線上に配置されている構成を採用することができる。
【0020】
この鳥の巣用の把持装置によれば、入力軸と三つの軸とが等間隔に配置され、各軸に螺合された螺合部材及び把持爪も等間隔に配置される。したがって、把持爪は、均等な四方に配置された状態となり、鳥の巣をバランスよく把持することができる。
【0021】
この場合、前記第2傘歯車は、前記入力軸に対して交差する方向の一方の軸に接続され、前記第3傘歯車は、前記真ん中の軸に接続され、前記入力軸に対して交差する方向の一方の軸と他方の軸とが連結されている構成を採用することができる。
【0022】
この鳥の巣用の把持装置によれば、入力軸に接続された第1傘歯車が回転することで、第1傘歯車と噛み合っている第2傘歯車が回転し、第2傘歯車に接続された一方の軸及びこの軸に連結された他方の軸が回転し、そして、第2傘歯車と噛み合っている第3傘歯車が回転することで、第3傘歯車に接続された真ん中の軸が回転する。また、この鳥の巣用の把持装置は、第2傘歯車が第1傘歯車と第3傘歯車とに噛み合っていることから、第2傘歯車を軸として真ん中の軸が入力軸に対して折れ曲がった姿勢と真っ直ぐな姿勢とに姿勢を転換することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、操作性に優れ、鳥の巣を的確に把持することができるようにした鳥の巣用の把持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る鳥の巣用の把持装置の一実施形態を示す断面底面図である。
図2図2は、本発明に係る鳥の巣用の把持装置の一実施形態を示す断面側面図である。
図3図3は、本発明に係る鳥の巣用の把持装置の一実施形態であって、使用状態を示す概略側面図である。
図4図4は、従来の鳥の巣用の把持装置の一例を示す正面図である。
図5図5は、従来の鳥の巣用の把持装置の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る鳥の巣用の把持装置(以下、「把持装置」という。)の一実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。なお、この把持装置は、電柱(図示せず)に支持された2本の腕金2に作られた鳥の巣1であって、2本の腕金2間に嵌まり込んでボウル状に窪んだ本体部1aと、この本体部1aの周縁から外方に突出して2本の腕金2に支えられる鍔状の外縁部1bとを有する鳥の巣1を的確に把持することができるように構成されている。
【0026】
この把持装置は、絶縁操作棒3に連結される入力軸10と、該入力軸10の回転力を受ける機構部20と、該機構部20の駆動を受けて回転する二つ以上の軸(この実施形態では「一方の軸である第1交差軸31、」「他方の軸である第2交差軸32」、「真ん中の軸である延長軸33」の三つの軸として説明する。)と、入力軸10及び三つの軸31,32,33のそれぞれに螺合される螺合部材40であって、それぞれが軸10,31,32,33の回転によって同期して離間・近接するように軸10,31,32,33に沿って移動可能な螺合部材40と、各螺合部材40から延出した把持爪50とを備えている。
【0027】
前記入力軸10及び第1交差軸31、第2交差軸32、延長軸33は、前記機構部20を中心に放射状に配置されている。すなわち、入力軸10と第1交差軸31との角度、入力軸10と第2交差軸32との角度、第1交差軸31と延長軸33との角度、第2交差軸32と延長軸33との角度は、すべて90°とされている。
【0028】
したがって、延長軸33は、第1交差軸31と第2交差軸32との間の真ん中の軸であり、入力軸10の延長線上に配置されている。また、第1交差軸31と第2交差軸32は、入力軸10に対して交差する軸であり、連結されている。ただし、第1交差軸31と第2交差軸32とは、一体化してもよい。
【0029】
そして、入力軸10及び三つの軸31,32,33の外周面には、雄ネジが形成されている。そして、螺合部材40は、この雄ネジに螺合する雌ネジを形成したナットのような部材で、雌ネジの方向と同一方向の側面41を有している。
【0030】
この螺合部材40から延出した把持爪50は、内側の把持爪51と外側の把持爪52との組合せとされている。内側の把持爪51は、鳥の巣1の本体部1a底側を支持するように外側の把持爪52よりも長く形成されている。外側の把持爪52は、鳥の巣1の外縁部1b底側を支持するように内側の把持爪51よりも短く形成されている。
【0031】
また、内側の把持爪51は、螺合部材40から内向きに突出した腕部51aと、この腕部51aの内端から下向きに延出した脚部51bと、この脚部51bの下端から内向きに突出した掛止部51cとを有している。そして、外側の把持爪52は、螺合部材40から下向きに延出した脚部52bと、この脚部52bの下端から内向きに突出した掛止部52cとを備えている。
【0032】
そして、機構部20は、入力軸10に接続された第1傘歯車21と、第1交差軸31に接続された第2傘歯車22と、延長軸33に接続された第3傘歯車23とを備えている。第2傘歯車22が第1傘歯車21と第2傘歯車22とに噛み合うようにされている。各傘歯車21,22,23の歯面は、軸に対して45°の斜面を有している。また、延長軸33は、入力軸10に対して第2傘歯車22を軸として真っ直ぐな姿勢と折れ曲がった姿勢とに向きを変更することができるようにされている。
【0033】
そして、入力軸10の周方向の回転が時計方向(図1において右向き)とされると、第1交差軸31の周方向の回転が反時計方向(図1において上向き)となり、第2交差軸32の周方向の回転が時計方向(図1において上向き)となり、延長軸33の周方向の回転が時計方向(図1において左向き)となる。
【0034】
そこで、入力軸10に螺合した螺合部材40が前進・後退したときに、第1交差軸31、第2交差軸32、延長軸33に螺合した螺合部材40が同期して、前進・後退するようにするため、例えば、入力軸10に右ネジが切られると、第1交差軸31には左ネジが切られ、第2交差軸32と延長軸33には右ネジが切られる。
【0035】
そして、入力軸10、機構部20、三つの軸31,32,33及び螺合部材40は、ケーシング70内に収納される。ケーシング70は、入力軸10及び機構部20を覆う入力軸側カバー70aと、第1交差軸31を覆う第1交差軸側カバー70bと、第2交差軸32を覆う第2交差軸側カバー70cと、延長軸33及び機構部20を覆う延長軸側カバー70dとを備えている。
【0036】
いずれのカバー70a〜70dも、対をなす側板部71と、各側板部71の上面を塞ぐ天板部72と、先端部を塞ぐ端板部73とを備え、底面に開口部77を有する細長い容器状に形成されている。カバー70a〜70dの底面が開口部77を有することで、把持爪50がケーシング70の底面から突出して各軸10,31,32,33に沿って移動可能とされている。
【0037】
また、側板部71は、螺合部材40の側面41が当接し、螺合部材40の軸周りでの回転を規制する規制手段を構成する。そして、いずれの端板部73にも、入力軸10、三つの軸31,32,33を支持する軸穴(採番せず)が形成されている。
【0038】
また、入力軸側カバー70aが機構部20を覆う交差部分と、延長軸側カバー70dが機構部20を覆う交差部分とには、それぞれ向き合った側板部71間に架け渡される第1の連結部74a,74dが設けられている。入力軸側カバー70aの第1の連結部74aの各端部から延長軸33の方に第2の連結部75aと第3の連結部76aとが突出している。また、延長軸側カバー70dの第1の連結部74dの各端部から入力軸10の方に第2の連結部75dと第3の連結部76dとが突出している。
【0039】
そして、入力軸側カバー70aの第2の連結部75a及び第3の連結部76aが延長軸側カバー70dの第2の連結部75d及び第3の連結部76dを挟む状態とされ、あるいは図示しないが逆の状態とされる。
【0040】
そして、入力軸側カバー70aの第1の連結部74aには、第1傘歯車21の軸又は入力軸10が貫通する軸穴が形成されている。また、延長軸側カバー70dの第1の連結部74dには、第3傘歯車23の軸又は延長軸33が貫通する軸穴が形成されている。
【0041】
そして、入力軸側カバー70aの第2の連結部75a及び延長軸側カバー70dの第2の連結部75dには、第2傘歯車22の軸又は第1交差軸31の軸が貫通する軸穴が形成されている。また、入力軸側カバー70aの第3の連結部76a及び延長軸側カバー70dの第3の連結部76dには、第2交差軸32の軸が貫通する軸穴が形成されている。
【0042】
そして、入力軸10の基端部10aは、二軸回転操作棒(以下、「操作棒」という。)3の先端部を連結する角柱状に形成されている。操作棒3は、筒状の中空軸3aと、この中空軸3aの中心に配置した中実軸3bとを備え、中空軸3aが保持された状態で、中実軸3bを周方向に回転することができるようにされている。中空軸3aの先端には、係合ピン3cが突設されている。中実軸3bの先端には、入力軸10の基端部10aが挿し込まれる連結穴3dが形成されている。
【0043】
そして、入力軸側カバー70aの基端部には、ジョイント78が設けられ、ジョイント78には、操作棒3の係合ピン3cを係合する係合孔78aが形成されている。
【0044】
この把持装置は、以上のように構成される。次に、この把持装置の使用方法について説明する。
【0045】
この把持装置は、基本的に、入力軸10と延長軸33とが真っ直ぐに延びた姿勢とされ、ジョイント78に操作棒3の先端部を連結した状態で使用される。そして、図3の仮想線に示すように、作業者が操作棒3の中空軸3aの基端部を把持し、把持装置を鳥の巣1の上方にアプローチする。このとき、外側の把持爪52が鳥の巣1の外縁部1bよりも外側に位置するように、向き合った螺合部材40の間隔を調整しておく。
【0046】
そして、図3の実線に示すように、把持装置を鳥の巣1の方へ下降し、外側の把持爪52の掛止部52cが鳥の巣1の外縁部1bの下側に位置し、内側の把持爪51の掛止部51cが鳥の巣1の本体部1aの下側に位置するようにする。このとき、内側の把持爪51の脚部51bが鳥の巣1の本体部1aの底部に突き刺さった状態となる。
【0047】
そして、作業者が操作棒3の中空軸3aを保持しつつ、中実軸3bを周方向に回転する。絶縁操作棒3の中空軸3aが入力軸側カバー70aのジョイント78に連結され、中空軸3aの係合ピン3cがジョイント78の係合孔78aに係合しているため、カバー70が回転することなく、入力軸10が周方向に回転する。
【0048】
入力軸10が周方向に回転することによって、第1傘歯車21が回転し、第1傘歯車21が回転することで第2傘歯車22が回転し、第2傘歯車22が回転することで第1交差軸31及び第2交差軸32が周方向に回転し、さらに、第2傘歯車22が回転することで第3傘歯車23が回転し、第3傘歯車23が回転することで延長軸33が周方向に回転する。
【0049】
入力軸10、第1交差軸31、第2交差軸32、延長軸33がそれぞれ周方向に回転し、螺合部材40の側面41がカバー70a〜70dの各側板部71に当接することで、螺合部材40が共回りすることなく、向き合っている螺合部材40及び把持爪50が同期して近接する方向に移動する。そして、外側の把持爪52の掛止部52cが鳥の巣1の外縁部1bの下面を支持し、内側の把持爪51の掛止部51cが鳥の巣1の本体部1aの底面を支持する状態となる。鳥の巣1は、四方向から合計8本の把持爪52で安定して支持される。
【0050】
この後、作業者が操作棒3を上昇させることで、把持装置が鳥の巣1を支持した状態で上昇する。鳥の巣1は、四方の把持爪50に支持されるため、脱落したり、崩落したりすることなく上昇し、腕金2上から撤去される。そして、作業者が把持装置を引き寄せることで鳥の巣1の撤去作業が終了する。
【0051】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定することなく種々変更することができる。例えば、上記実施の形態では、把持爪50は、内側の把持爪51と外側の把持爪52とを組み合わせたものとした。しかし、鳥の巣1の形態に応じて、把持爪50は、螺合部材40から1本ずつ延出するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、入力軸10、機構部20、三つの軸31,32,33及び螺合部材40を個別に収納するケーシング70を備えるものとした。しかし、ケーシング70は、入力軸10、機構部20、三つの軸31,32,33及び螺合部材40を一つの空間で収納する形態としてもよい。この場合において、入力軸10、三つの軸31,32,33に螺合した螺合部材40の軸周りでの回転を規制する規制手段は、ケーシング70の内に架け渡すフレームなどで形成してもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、機構部20が第1傘歯車21、第2傘歯車22、第3傘歯車23を備え、三つの軸31,32,33が90°の間隔で三方向に配置されるようにした。しかし、三つの軸31,32,33が不均等に配置されるようにしてもよい。さらに、把持装置は、第1傘歯車21と第3傘歯車23に噛み合う第4傘歯車(図示せず)備え、第1交差軸31に連結されていない第2交差軸32を第4傘歯車に連結してもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、把持装置が第1交差軸31、第2交差軸32、延長軸33の三つの軸と入力軸10とを備えた。しかし、把持装置は、二つの軸と入力軸10の合計三つの軸を備え、それぞれの軸の間隔を120°となるように配置してもよい。さらに、把持装置は、合計五つ以上の軸を備えてもよい。
【0055】
また、鳥の巣1の大きさや形態に合わせて、第2傘歯車22を軸として、延長軸33が入力軸10に対して折れ曲った姿勢で固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1………鳥の巣
3………二軸回転操作棒(操作棒)
10……入力軸
20……機構部
21……第1傘歯車
22……第2傘歯車
23……第3傘歯車
31……軸(第1交差軸)
32……軸(第2交差軸)
33……軸(延長軸)
40……螺合部材
41……摺接面
50……把持爪
51……内側の把持爪
52……外側の把持爪
70……ケーシング
図1
図2
図3
図4
図5