【実施例】
【0021】
図1は、実施例におけるVOC除去液再生・回収装置を示す系統図である。
VOC除去液再生・回収装置1(以下、再生・回収装置1と称する)は、VOCが含まれたVOC除去液(以下、被処理除去液と称する)からVOCを除去して、VOC除去液(以下、再生除去液と称する)を再生・回収するものである。
【0022】
まず、
図1に基づいて実施例における再生・回収装置の構造について説明する。
図1に示す再生・回収装置1は、貯留タンク3、送液ポンプ5、噴霧ノズル7、真空容器9、真空ポンプ11、気体導入機構13、排液機構15、貯液槽17、コンプレッサ19、熱交換器21、空気タンク23を有して構成される。
【0023】
貯留タンク3は、外部から抽入されたVOC除去液(被処理除去液Ld)を貯留するタンクである。貯留タンク3を設けず、貯留タンク3の代わりにVOC除去装置(図示省略)から直接被処理除去液Ldを取り出したり、被処理除去液Ldの送液管(図示省略)の途中に送液ポンプ5を設けたりすることもできる。送液ポンプ5は、貯留タンク3に貯留されている被処理除去液Ldを取り出してノズル7へ圧送するためのものである。ノズル7は圧送された被処理除去液Ldを真空容器9内で噴霧するためのものである。真空ポンプ11の排気側にはVOC処理機構である冷却凝縮装置27が設けられている。コンプレッサ19は高温高圧の圧縮空気を生成するものである。熱交換器21は、コンプレッサ19で生成された圧縮空気と送液ポンプ5からノズル7へ圧送される被処理除去液Ldとを熱交換して被処理除去液Ldを昇温するためのものである。0空気タンク23は、熱交換器21で被処理除去液Ldと熱交換した圧縮空気を貯留するためのタンクである。
【0024】
真空容器9は、接続した真空ポンプ11によって内部が減圧されるようになっている筒状容器である。真空容器9内の上部にはノズル7が配されており、その下部には気体導入機構13、最下部には排液機構15が配されている。さらに、真空容器9内部の高さ方向の途中であってノズル7の下方且つ気体導入機構の上方に霧トラップ25が設けられており、真空容器9上部であってノズル7より上方に霧トラップ25’が設けられている。また、霧トラップ25より下方には熱交換器21が設けられている。尚、本実施例では熱交換器21は真空容器9の内部に設けたが真空容器の外に設けても良い。
【0025】
本実施例においては、霧トラップ25は、連続気泡フォームであるポリウレタンフォームとそれを下支えする支持体とから構成されている。ポリウレタンフォームは、軽量且つ安価に手に入れることができる。さらにポリウレタンフォームは、その一辺を1mの立方体である場合(即ち容積1立方メートル)に、その単位容積あたり1490m
2という膨大な表面積(セル壁の総面積)を有し、空隙率も0.97でVOC除去液の通過抵抗もほとんどないという利点を有している。これに伴い、そのセル壁に付着する被処理除去液Ldの総面積も膨大となり、これが効率の良いVOCの真空蒸発を実現する。従来のセラミック製ガス吸着用多孔体と比較して軽量・安価(概ね1/10以下)であり、ポリウレタンフォームは非常に使い勝手がよい。もっとも隣接気泡間のセル壁が相互に連通している気泡構造の気包体であって、被処理除去液Ldがそのセル壁に付着可能なものであれば、ポリウレタンフォーム以外のフォームを採用することもできる。なお、霧トラップ25’は、霧トラップ25と同様にポリウレタンフォームを採用しているが、霧トラップの目的が達成できれば他の連続気泡フォームその他の部材を採用することもできる。
【0026】
霧トラップ25を構成する前記支持体は、網状の部材であって真空容器9内部を横断するように取り付けてある。前記支持体を網状にすることで、被処理除去液Ldが過度に滞留せずに前記連続気泡フォームから滴下できる。従って、前記支持体の網目は、前記連続気泡フォームを下支えするのに十分であり、かつVOC除去液の滴下が円滑に行われる程度の粗さであることが必要である。そのような目的が達成できるものであれば、前記支持体は、網状以外の例えば簀の子状のもの、パンチングメタルのような多数の小穴を形成した板部材等によって構成することもできる。なお、前記連続気泡フォームが十分に自立可能な硬さを持っている場合や、連続気泡フォーム以外の自立可能な部材を霧トラップとして採用した場合等、前記支持体が不要である場合には支持体は省略可能である。
【0027】
ノズル7は、前述の通り霧トラップ25の上方に位置し、噴霧した被処理除去液Ldが真空容器9内に満遍なく行き渡るように噴霧角や霧トラップ25との距離、噴霧圧力、噴霧粒径等を調整する。ノズル7の個数は、本実施例においては1個としているが、真空容器9の容積や被処理除去液Ldの単位時間あたりの処理量等に応じて2つ以上設けることもできる。
【0028】
気体導入機構13は、リーク弁である。真空ポンプ11を駆動させて真空容器9内を減圧した状態でこのリーク弁を開放すると、蒸発促進用気体(本実施例の
図1においては大気導入を図示したが、コンプレッサ19からの加温された圧縮空気を直接導入しても良い)を真空容器9内へ吸引導入するようになっている。なお、リーク弁を設ける代わりに、ノズル7を介して蒸発促進用気体を真空容器9内に導入するように構成してもよい。また、リーク弁とノズル7の両者によって蒸発促進用気体の導入を行ってもよい。これらの場合には、ノズル7は、被処理除去液を噴霧する機能と気体導入機構13の機能を兼ね備えることになる。
【0029】
次に、
図1に基づいて実施例における再生・回収装置の動作について説明する。
再生・回収装置1によれば、貯留タンク3内に貯留されている被処理除去液Ldは、送液ポンプ5によって圧送され、熱交換器21でコンプレッサ19からの圧縮空気と熱交換して昇温された後、ノズル7から真空容器9内に噴霧される。一方、熱交換器21で前記被処理除去液Ldと熱交換することで高圧を保持したまま降温した圧縮空気は、空気タンク23に貯留される。
なお、送液ポンプ5は、駆動源が圧縮空気であるエアー駆動型のポンプである。送液ポンプの駆動源として、空気タンク23に貯留された圧縮空気を、減圧弁31によって適度な圧力に降圧して利用する。
【0030】
また、真空ポンプ11を駆動させることにより真空容器9内は減圧され、該減圧によりノズル7から噴霧された被処理除去液LdからVOCが真空蒸発する。被処理除去液Ldは噴霧によって霧状になっているので単に貯留してあるものに比べてその表面積が飛躍的に拡大している。さらに、被処理除去液Ldは、熱交換器21で昇温されているため、さらに蒸発しやすくなっている。
【0031】
そして、霧状の被処理除去液Ldは霧トラップ25を構成する連続気泡フォームに到着してそのセル壁に付着する。前記セル壁に付着した被処理除去液Ldは、その表面積をさらに拡大する。拡大を重ねた被処理除去液Ldの表面積は膨大なものとなる。これらと相まって、気体導入機構13を介した蒸発促進気体(空気)の導入が、真空蒸発の効率をよくする。すなわち、被処理除去液Ldの回収(再生除去液Lcへの転換)が効率よく行われる。被処理除去液Ldは、前記連続気泡フォームを通過(下降)しながら再生除去液Lcとなり、前記連続気泡フォーム及び支持体を通過して滴下する。
【0032】
滴下した再生除去液Lcは、排液機構15を介して真空容器9外へ排出され、貯液槽17に貯留される。貯液槽17に貯留された再生除去液Lcは、適宜貯液槽17から排出される。貯液槽17からの再生除去液Lcの排出に際しては、貯液槽17の下部に設けた排出バルブ18を開放し、空気タンク23に貯留された圧縮空気を配管33を介して貯液槽17に導入し、貯液槽17の内圧を上げることで、再生除去液Lcを容易に外部に排出することができる。なお、配管33には、減圧弁35、スピードコントローラ37、圧縮空気導入弁39が設けられている。空気タンク23から貯液槽17に導入する圧縮空気の圧力及び導入量を減圧弁35及びスピードコントローラ37で調整することができるとともに、空気タンク23から貯液槽17への圧縮空気の導入の必要がないときには圧縮空気導入弁39を閉止することで導入を停止することができる。
【0033】
尚、貯液槽17の手前には排液バルブ40が設けられていて、空気タンク23からの圧縮空気を用いたエアオペレート式切換制御弁とすることで真空容器9から排出される除去液を2つの貯液槽17に交互に貯留することができる。
【0034】
気体導入機構13について付け加えて説明する。
前提として従来の技術によるVOC除去液からのトルエン回収率の結果について説明する。
VOCを含んだVOC除去液を再生させる従来の方法としては膜分離によるPV法(パーベーパレーション法)がある。しかし、この方法ではVOC除去液からのトルエン回収率0.027%程度と非常に低い値となりリアルタイムでのVOC除去液の再生は困難である。
【0035】
そこで、
図2(a)に示すように膜の透過抵抗を小さくするために多孔質の膜を用いた真空蒸発法によりVOC蒸発量を多くすることができる。前述のPV法によるトルエンの蒸発濃度は約70ppmで安定し、回収率は0.027%程度であったのに対し、
図2(a)に示すような多孔膜を用いた真空蒸発法によるトルエン蒸発濃度は約200ppmで安定し、回収率は0.077%であり、PV法と比較して3倍に向上している。しかし、
図2(a)に示すような多孔膜を用いた真空蒸発法であっても、リアルタイムでのVOC除去液の再生は困難である。
【0036】
即ち、前述のように従来の方法では、数十Pa以下と高真空にするため空気の流動がなく蒸発したVOCを効率よく回収することが出来なかったと考えられる。これに対し空気流動真空蒸発法は、
図2(b)に示すように、真空容器をリークして空気を導入して真空度を低くした状態で空気の流動によって蒸発したVOCをぬぐって回収する方法である。この方法においては、トルエン蒸発には数千Pa程度の比較的低い真空とするとVOCの回収を効率的におこなうことができることが確認できた。また、気体透過膜を用いず除去液を噴霧する本発明の空気流動真空蒸発法によればトルエン蒸発濃度は約2900ppmで安定し、回収率は93.5%であった。
【0037】
つまり、本発明によれば、VOC回収率93.5%と従来と比較して飛躍的に上昇し、リアルタイムでの除去液の再生が可能となった。
【0038】
また、本発明によれば、前記圧縮空気の熱エネルギーを被処理除去液Ldの加熱に利用することで、被処理除去液Ldが加熱されて真空蒸発をより効率的に行うことができる。しかも、コンプレッサで生成された高温高圧の圧縮空気の熱エネルギーを、真空容器内に設けた熱交換器を使用して被処理除去液Ldに伝える場合は、被処理除去液Ldの加熱を真空容器外部で行うことなく安全で効率よく被処理除去液Ldの加熱が可能となる。
【0039】
さらに、前記熱交換後の降温した圧縮空気の圧力エネルギーを、被処理除去液Ldを真空容器内に圧送するための送液ポンプ5の駆動源として利用するとともに、分離後の除去液を貯液槽から効率よく排出するための圧送機能として使用するため、コンプレッサにより生成された圧縮空気が持つエネルギーを無駄なく有効に使用することができる。
【0040】
従って、被処理除去液Ldの加熱手段として圧縮空気を利用することで、被処理除去液Ldの加熱にヒータを用いる必要がなく、ヒータの使用に係る電力の削減、CO
2の排出の削減が可能であるとともに、ヒータによる引火の危険性を回避することができる。つまり空圧を利用した装置なので防爆構造を考慮する必要もなく安全である。
【0041】
さらに、被処理除去液Ldとの熱交換後の降温した圧縮空気の圧力エネルギーを利用することで、エアー駆動式ポンプ及び空気圧を利用した分離後の再生除去液Lcの排出を一連のシステムとして有効活用し、装置全体のエネルギー効率を高めることができる。