特許第5925903号(P5925903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5925903-貼付剤 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5925903
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20160516BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20160516BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20160516BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20160516BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20160516BHJP
【FI】
   A61K31/551
   A61K47/12
   A61K47/32
   A61K47/34
   A61K47/06
   A61K9/70 401
   !A61P43/00 113
   !A61P37/08
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-540847(P2014-540847)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(86)【国際出願番号】JP2013077328
(87)【国際公開番号】WO2014057928
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2015年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-225779(P2012-225779)
(32)【優先日】2012年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 祐香
(72)【発明者】
【氏名】道中 康也
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−33665(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/115355(WO,A1)
【文献】 特開2007−186500(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/07018(WO,A1)
【文献】 特開平11−302161(JP,A)
【文献】 特開平8−157365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/551
A61K 9/70
A61K 47/06
A61K 47/12
A61K 47/32
A61K 47/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層がエメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤、並びに、前記粘着剤層の凝集力向上剤としてのフマル酸アルカリ金属塩を含有しており、
前記ゴム系粘着剤がスチレン系ブロック共重合体又はスチレン系ブロック共重合体とポリイソブチレンとの混合物であり、
前記粘着剤層が前記ゴム系粘着剤を含有する場合には、流動パラフィン及び粘着付与剤をさらに含有し、かつ、流動パラフィンと前記スチレン系ブロック共重合体との質量比(スチレン系ブロック共重合体の質量/流動パラフィンの質量)が1.5未満である、
ことを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記フマル酸アルカリ金属塩がフマル酸一ナトリウム、フマル酸二ナトリウム及びフマル酸一カリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記フマル酸アルカリ金属塩の含有量が前記粘着剤層中において1〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤に関し、詳しくは、エメダスチンを含有する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エメダスチンは1−(2−エトキシエチル)−2−(ヘキサヒドロ−4−メチル−1H−1,4−ジアゼピン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール(1−(2−Ethoxyethyl)−2−(hexahydro−4−methyl−1H−1,4−diazepin−1− yl)−benzimidazole)の一般名である。エメダスチンは、ヒスタミンの放出抑制作用及び抗ヒスタミン作用を有し、抗アレルギー効能効果を奏する薬物として知られており、例えば、エメダスチン二フマル酸塩(EmedastineDifumarate、分子式:C1726O・2C、分子量:534.56)を含有するカプセル剤等の経口剤が市場に流通している。
【0003】
しかしながら、経口投与によるとエメダスチンの血中濃度の変動幅が大きくなるため眠気等の副作用が生じやすいという問題を有していた。また、例えば、特開平3−83924号公報(特許文献1)には、エメダスチンを含有する液状の組成物を用いた油性軟膏、ゲル化剤、クリーム、ローション及び噴霧剤といった非経口投与剤が記載されているが、上記副作用の低減や薬効の安定性を向上させるという観点からは、より安定にエメダスチンの持続投与が可能な貼付剤の開発が望まれている。
【0004】
エメダスチンを含有する貼付剤としては、例えば、特開平7−33665号公報(特許文献2)においてアクリル系粘着性基剤、シリコーン系粘着性基剤又はゴム系粘着性基剤とエメダスチンとよりなる粘着層(粘着剤層)を備える貼付剤が記載されており、特開平8−193030号公報(特許文献3)においてアクリル系重合体とエメダスチンとを含有してなる粘着剤層を備える貼付剤が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2〜3に記載されているように粘着剤としてアクリル系の粘着剤(アクリル系粘着剤)を用いた場合にはある程度優れたエメダスチンの経皮吸収性が発揮されるものの、ゴム系の粘着剤(ゴム系粘着剤)を用いた場合にはエメダスチンの経皮吸収性が十分ではないという問題を有していた。
【0006】
また、国際公開第2005/115355号(特許文献4)には、フェンタニル、オキシブチニン等の塩基性薬物と揮発性有機酸とを含有する粘着剤層を備える貼付剤が記載されており、前記塩基性薬物の経皮吸収を促進させることを目的として必要に応じて添加することができる化合物としてフマル酸ナトリウムを含む多数の有機酸又は有機酸塩が記載されている。しかしながら、特許文献4においては、エメダスチンに関する記載は何らなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−83924号公報
【特許文献2】特開平7−33665号公報
【特許文献3】特開平8−193030号公報
【特許文献4】国際公開第2005/115355号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、本発明者らは、従来のエメダスチンを含有する貼付剤においてゴム系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を用いた場合においては、粘着剤層の凝集力が十分ではないために貼付剤の剥離時に粘着剤層が皮膚に残存するという問題が発生することを見出した。また、エメダスチンとゴム系粘着剤とを単に組み合わせた場合には、他の粘着剤を用いた場合と比較してエメダスチンの粘着剤層からの放出性が低下するため、その結果、エメダスチンの経皮吸収性が低下することを見出した。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、粘着剤層の凝集性及びエメダスチンの放出性に優れた貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤において、ゴム系粘着剤及び/又はシリコーン系粘着剤とフマル酸アルカリ金属塩とを組み合わせて前記粘着剤層に含有させることにより、驚くべきことに、前記フマル酸アルカリ金属塩が前記粘着剤層の凝集力向上剤として働き、エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する場合であっても、優れた凝集性を有する粘着剤層が得られることを見出した。また、このような貼付剤は、前記粘着剤層からのエメダスチンの放出性にも優れており、エメダスチンの経皮吸収を増加させることが可能であることを本発明者らは見出した。
【0011】
従来は粘着剤層の凝集力を向上させることを目的とした添加剤として酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸化合物等の充填剤、可塑剤及び粘着付与剤が、また、薬物の経皮吸収を促進させることを目的とした添加剤として特許文献4に記載されているような多数の化合物が、それぞれ知られていたが、本発明者らは、エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩、ゴム系粘着剤及び/又はシリコーン系粘着剤、並びにフマル酸アルカリ金属塩を組み合わせることで、粘着剤層の凝集力向上効果及びエメダスチンの放出性向上効果のいずれもが発揮されることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層がエメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤、並びに、前記粘着剤層の凝集力向上剤としてのフマル酸アルカリ金属塩を含有しており、
前記ゴム系粘着剤がスチレン系ブロック共重合体又はスチレン系ブロック共重合体とポリイソブチレンとの混合物であり、
前記粘着剤層が前記ゴム系粘着剤を含有する場合には、流動パラフィン及び粘着付与剤をさらに含有し、かつ、流動パラフィンと前記スチレン系ブロック共重合体との質量比(スチレン系ブロック共重合体の質量/流動パラフィンの質量)が1.5未満である、
ことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の貼付剤においては、前記フマル酸アルカリ金属塩がフマル酸一ナトリウム、フマル酸二ナトリウム及びフマル酸一カリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、本発明の貼付剤においては、前記フマル酸アルカリ金属塩の含有量が前記粘着剤層中において1〜10質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粘着剤層の凝集性及びエメダスチンの放出性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1〜3及び比較例1で得られた貼付剤について水中放出試験を行った結果を示すグラフである。
図2】実施例4〜7及び比較例8で得られた貼付剤について水中放出試験を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層がエメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤、並びに前記粘着剤層の凝集力向上剤としてのフマル酸アルカリ金属塩を含有するものである。
【0019】
(支持体層)
本発明に係る支持体層は、前記粘着剤層を物理的に支持し、外的な環境から前記粘着剤層を保護する層である。このような支持体層としては、特に制限されず、貼付剤の支持体層として公知のものを適宜採用することができる。このような支持体層の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンといった合成樹脂や、アルミニウム等の金属が挙げられ、前記支持体層の形態としては、フィルム;発泡シート、微多孔シート等のシート;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体等が挙げられる。これらの中でも、数日間適用する徐放性の貼付剤において、柔軟性及び薬物非透過性に優れるという観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、前記支持体層の厚さとしても特に制限されないが、通常2〜300μm程度であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の貼付剤としては、前記支持体層の両面上に前記粘着剤層が積層された構造であってもよいが、より単純な工程で製造することができるという観点から、前記支持体層の一方の面上に前記粘着剤層が積層された構造であることが好ましい。また、前記粘着剤層の前記支持体層とは反対の面上に、貼付剤の使用時まで前記粘着剤層を保護する剥離ライナー層がさらに積層された構造であることがより好ましい。
【0021】
このような剥離ライナー層としては、特に制限されず、貼付剤の剥離ライナー層として公知のものを適宜採用することができ、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、紙等の材質からなるフィルム及びその積層体が挙げられ、容易に剥離出来るようにシリコーンコート等の離型処理が施されているものが好ましい。また、前記剥離ライナー層の厚さとしても特に制限されないが、通常2〜300μm程度であることが好ましい。
【0022】
(粘着剤層)
本発明に係る粘着剤層は、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤、並びに前記粘着剤層の凝集力向上剤としてのフマル酸アルカリ金属塩を含有するものである。このような粘着剤層の厚さとしては特に制限されないが、通常20〜300μm程度であることが好ましい。
【0023】
〔薬物〕
本発明に係る粘着剤層は薬物としてエメダスチンを含有する。このようなエメダスチンとしては、遊離塩基であってもエメダスチンの薬学的に許容される塩であってもそれらの混合物であってもよいが、粘着剤層からの放出性がより向上するという観点から、遊離塩基の状態で前記粘着剤層中に含有されていることが好ましい。
【0024】
前記エメダスチンの薬学的に許容される塩としては、エメダスチンの酸付加塩が挙げられ、前記酸としては、塩酸、臭化水素酸及びメタンスルホン酸等の単塩基酸;フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸等の多塩基酸が挙げられる。これらの中でも、粘着剤層中にアルカリ金属を含む塩基性化合物と組み合わせて含有させた場合に粘着剤層中に下記のフマル酸アルカリ金属塩を生成せしめることができるという観点から、フマル酸であることが好ましい。
【0025】
本発明に係るエメダスチン及びその薬学的に許容される塩の含有量としては、治療の目的により異なるものであるため、一概にはいえないが、通常は前記粘着剤層中において0.1〜40質量%であることが好ましい。また、粘着剤層の凝集性及びエメダスチンの放出性がより優れるという観点からは、前記粘着剤層中において0.1〜20質量%であることがより好ましい。
【0026】
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、エメダスチン以外の薬物がさらに含有されていてもよい。このような薬物としては、特に限定されず、例えば、制吐薬(例:グラニセトロン、アザセトロン、オンダンセトロン、ラモセトロン等)、過活動膀胱における頻尿等の治療薬(例:オキシブチニン、トルテロジン等)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(例:カプトプリル、デラプリル、等)、Ca拮抗薬(例:ニフェジピン等)、冠血管拡張薬(例:ジルチアゼム、ニコランジル等)、局所麻酔薬(例:リドカイン、プロカイン等)、胸腺ホルモン(例:血清胸腺因子)、筋弛緩薬(例:チザニジン、エペリゾン、ダントロレン等)、興奮覚醒薬、抗高圧薬(例:アルプレノロール、ニフェジピン等)、抗腫瘍薬、向精神薬(例:イミプラミン、フェンタニル、モルヒネ等)、抗生物質、抗パーキンソン薬(例:ロチゴチン、アマンタジン、レボドパ、コカイン等)、アルツハイマー治療薬(例:ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン、メマンチン等)、抗ヒスタミン薬、抗めまい薬(例:ジフェニドール、ベタヒスチン等)、催眠鎮静薬、消炎鎮痛薬(例:インドメタシン、ケトプロフェン、ジクロフェナク等)、自律神経用薬、心臓・血管系薬(例:ベンゾジアゼピン等)、脳循環代謝改善薬(例:ビンポセチン等)、ビタミン類、ポリペプチド系のホルモン類(ルーティナイジングホルモン−リリージングホルモン、サイロトロピンリリージングホルモン等)、末梢血管拡張薬、免疫調節薬(例:ポリサッカライド類、オーラノフィン、ロベンザリット等)、利胆薬(例:ウルソデスオキシコール酸等)、利尿薬(例:ヒドロフルメチアジド等)、糖尿病用薬(例:トルブタミド等)、痛風治療薬(例:コルヒチン等)、免疫抑制剤(例:タクロリムス、シクロスポリン等)又はこれらの薬学的に許容される塩が挙げられ、目的に応じてこれらのうちの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このようなエメダスチン以外の薬物が粘着剤層中にさらに含有される場合、その含有量としては、治療の目的により異なるものであるため、一概にはいえないが、通常は前記粘着剤層中において0.1〜40質量%であることが好ましく、粘着剤層の凝集性及びエメダスチンの放出性がより優れるという観点からは、前記粘着剤層中において20質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
〔粘着剤〕
本発明に係る粘着剤層は、粘着剤としてゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種の粘着剤を含有する。なお、本発明において、粘着剤とは、貼付剤が適用される温度(好ましくは0℃〜50℃、より好ましくは10℃〜40℃、さらに好ましくは15℃〜40℃)において粘着性を発現することが可能な化合物のことをいう。
【0028】
本発明に係るゴム系粘着剤としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ブロック共重合体;天然ゴム;ポリイソブチレン(PIB);ポリイソプレンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの中でも、粘着剤層の凝集力及び粘着力がいずれもより増大する傾向にあるという観点から、本発明に係るゴム系粘着剤としては、スチレン系ブロック共重合体、又はスチレン系ブロック共重合体とポリイソブチレンとの混合物であることが好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とポリイソブチレンとの混合物であることがより好ましい。さらに、前記スチレン系ブロック共重合体とポリイソブチレンとの混合物としては、スチレン系ブロック共重合体とポリイソブチレンとの質量比(スチレン系ブロック共重合体の質量:ポリイソブチレンの質量)が1:5〜5:1であることが好ましい。
【0029】
また、前記ゴム系粘着剤としてスチレン系ブロック共重合体及び/又は天然ゴムを用いる場合においては、一般に、これらの粘着剤の粘着性を発現又は向上させることを目的として、後述する粘着付与剤及び軟化剤からなる群から選択される少なくとも1種が前記粘着剤層中にさらに添加されることが好ましい。なお、これらの粘着付与剤及び軟化剤は他のゴム系粘着剤や下記のシリコーン系粘着剤を用いる場合においても添加されてよい。
【0030】
本発明に係る粘着剤として前記ゴム系粘着剤を用いる場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において、10〜99質量%であることが好ましく、15〜95質量%であることがより好ましい。前記ゴム系粘着剤の含有量が前記下限未満である場合には貼付剤の皮膚に対する付着性が低下する傾向にある。
【0031】
本発明に係るシリコーン系粘着剤としては、例えば、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーを用いることが好ましい。また、前記オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーが水酸基(例えばシラノール基)を有している場合は、その水酸基の少なくとも一部がトリメチルシリル基によってキャッピングされていることがより好ましい。なお、前記トリメチルシリル基によるキャッピングとしては、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーの末端シラノール基を、トリメチルシリル基によりエンドキャッピングする態様が含まれる。このようなオルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではMQと表されるポリマー等)、ポリメチルビニルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではVMQと表されるポリマー等)、ポリメチルフェニルシロキサン(ASTMD−1418による表示ではPVMQと表されるポリマー等)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このようなシリコーン系粘着剤としては、ダウ・コーニング社製のBIO−PSA 7シリーズ(例えば、BIO−PSA 7−410X、BIO−PSA 7−420X、BIO−PSA 7−430X)等の市販されているものを適宜用いてもよい。これらの中でも、BIO−PSA 7−4201、BIO−PSA 7−4202が好ましい。
【0032】
本発明に係る粘着剤として前記シリコーン系粘着剤を用いる場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において、10〜99質量%であることが好ましく、15〜95質量%であることがより好ましい。前記シリコーン系粘着剤の含有量が前記下限未満である場合には貼付剤の皮膚に対する付着性が低下する傾向にある。
【0033】
なお、本発明に係る粘着剤として前記ゴム系粘着剤及び前記シリコーン系粘着剤を組み合わせて用いる場合、その総含有量としては、前記粘着剤層中において、10〜99質量%であることが好ましく、15〜95質量%であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明に係る粘着剤層としては、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系粘着剤等の他の粘着剤がさらに含有されていてもよいが、本発明において、後述するフマル酸アルカリ金属塩は前記ゴム系粘着剤及び/又は前記シリコーン系粘着剤を用いた場合に凝集力向上剤としての機能を発揮するものである。また、前記粘着剤層中に前記アクリル系粘着剤が含有されると粘着剤層の凝集力が低下する傾向にあるという観点から、これらの他の粘着剤が本発明に係る粘着剤層に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層中においてアクリル系粘着剤の場合には10質量%以下であることが好ましく、実質的に含有されていないことがより好ましい。
【0035】
〔フマル酸アルカリ金属塩〕
本発明においては、前記エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩と前記ゴム系粘着剤及び/又は前記シリコーン系粘着剤とフマル酸アルカリ金属塩とを組み合わせて前記粘着剤層中に含有させることにより、エメダスチンの粘着剤層からの放出性が向上すると共に、フマル酸アルカリ金属塩が前記粘着剤層の凝集力向上剤として機能し、粘着剤層の付着性及び凝集性が著しく向上することを本発明者らは見出した。したがって、本発明の貼付剤を対象の皮膚に貼付する際にはより確実に貼付することが可能となり、他方、剥離する際には皮膚への粘着剤層の残存を十分に抑制することが可能となる。
【0036】
本発明に係るフマル酸アルカリ金属塩としては、フマル酸一ナトリウム、フマル酸二ナトリウム、フマル酸一カリウム、フマル酸二カリウム等が挙げられ、これらの中でも、粘着剤層の凝集性及びエメダスチンの放出性がより向上する傾向にあるという観点から、フマル酸一ナトリウム、フマル酸二ナトリウム及びフマル酸一カリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フマル酸二ナトリウムであることがより好ましい。
【0037】
また、本発明に係るフマル酸アルカリ金属塩としては、製造時に当該化合物として添加されたものであっても、製造中及び/又は製造後に生成されて前記粘着剤層中に含有されたものであってもよい。このようなフマル酸アルカリ金属塩を前記粘着剤層中に含有させる方法としては、例えば、貼付剤の製造時において、前記粘着剤層を形成するための粘着剤層組成物に本発明に係るフマル酸アルカリ金属塩をそのまま添加する方法や、前記粘着剤層組成物にエメダスチンの塩としてエメダスチンのフマル酸塩を添加し、該エメダスチンのフマル酸塩に対する塩基としてアルカリ金属を含む塩基性化合物(アルカリ金属の水酸化物等)をさらに添加することにより、生成されるエメダスチンの遊離塩基とフマル酸アルカリ金属塩とを前記粘着剤層中に含有させる方法が挙げられる。
【0038】
本発明に係るフマル酸アルカリ金属塩の含有量としては、前記粘着剤層中において、0.1〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。前記フマル酸アルカリ金属塩の含有量が前記下限未満である場合には、粘着剤層の凝集性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、製造工程においてスジ引きが発生するといった問題が生ずる傾向にある。また、前記粘着剤として前記ゴム系粘着剤を用いる場合、前記フマル酸アルカリ金属塩の含有量としては、前記粘着剤層中において、0.1〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることがさらに好ましい。さらに、前記粘着剤として前記シリコーン系粘着剤を用いる場合、前記フマル酸アルカリ金属塩の含有量としては、前記粘着剤層中において、0.1〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
〔添加剤等〕
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記粘着付与剤、前記軟化剤、溶解剤、充填剤、安定化剤等の添加剤がさらに含有されていてもよい。特に、前述のように、前記粘着剤としてスチレン系ブロック共重合体及び/又は天然ゴムを用いる場合においては、前記粘着付与剤及び前記軟化剤からなる群から選択される少なくとも1種がさらに含有されていることが好ましい。
【0040】
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、DCPD(ジシクロペンタジエン)系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂及びこれらに水素が添加されたものが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような粘着付与剤が前記粘着剤層に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において70質量%以下であることが好ましい。
【0041】
前記軟化剤としては、石油系オイル(例:パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例:オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(例:ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例:ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル類(例:ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記粘着剤として前記ゴム系粘着剤を用いる場合には、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシルが好ましく、流動パラフィンがより好ましい。また、前記粘着剤として前記シリコーン系粘着剤を用いる場合には、シリコーンオイル、が好ましい。このような軟化剤が前記粘着剤層に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において50質量%以下であることが好ましい。
【0042】
前記溶解剤としては、溶解させる溶質の種類にも依存するが、例えば、脂肪酸(例:カプリン酸、オレイン酸、リノール酸等)、脂肪酸エステル類(例:ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等)、脂肪酸誘導体(例:モノラウリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミド等)、脂肪酸グリセリンエステル類(例:モノラウリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン等)、脂肪酸の多価アルコールエステル(例:モノラウリン酸ソルビタン等)、脂肪族アルコール(例:オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等)、多価アルコール類(例:プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、ピロリドン誘導体(例:N−メチル−2−ピロリドン等)、有機酸(例:酢酸、乳酸等)、有機酸塩(例:酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等)が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような溶解剤が前記粘着剤層に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において3〜30質量%であることが好ましい。
【0043】
前記充填剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、クレー、カオリン、硝子、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、セラミックス等の無機化合物類;セルロース、シルク、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、等の有機化合物が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
また、前記安定化剤としては、トコフェロール及びトコフェロールのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリルエステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような充填材や前記安定化剤が前記粘着剤層に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層中においてそれぞれ30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の構成によって、特に優れた粘着剤層の凝集力向上効果及びエメダスチンの放出性向上効果が発揮されるという観点から、ゴム系粘着剤であることが好ましい。さらに、前記ゴム系粘着剤としてスチレン系ブロック共重合体(好ましくはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、又はスチレン系ブロック共重合体(好ましくはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)とポリイソブチレンとの混合物が含有されており、かつ、前記軟化剤として流動パラフィンが含有されていることが特に好ましい。この場合における前記ゴム系粘着剤と流動パラフィンとの配合比としては、スチレン系ブロック共重合体と流動パラフィンとの質量比(スチレン系ブロック共重合体の質量/流動パラフィンの質量)で、1.5未満であることが好ましく、0.5〜1.25であることがより好ましい。前記質量比が前記下限未満である場合には、粘着剤層の付着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、本発明の構成としなくとも粘着剤層の凝集力がある程度大きくなるため、本発明の構成とすることによる凝集力向上効果がそれ以上発揮されない傾向にある。
【0046】
<貼付剤の製造方法>
本発明の貼付剤は、特に制限されず、従来公知の方法により製造することができ、例えば、先ず、エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩、前記ゴム系粘着剤及び/又は前記シリコーン系粘着剤、前記フマル酸アルカリ金属塩、溶剤、並びに必要に応じて前記添加剤を含有する粘着剤層組成物を調製し、これを前記支持体層の一方の面上に所望の厚さで塗布した後に加温して前記溶剤を除去することにより、前記支持体層の一方の面上に前記粘着剤層を形成せしめる方法が挙げられる。
【0047】
前記溶剤としては、特に制限されず、用いる薬物や粘着剤、フマル酸アルカリ金属塩等の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、トルエン、キシレン、ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピルが挙げられる。
【0048】
また、前記粘着剤層組成物に添加する前記フマル酸アルカリ金属塩としては、粉砕されたものであることが好ましい。なお、製造中及び/又は製造後に前記フマル酸アルカリ金属塩を生成せしめる場合には、前記粘着剤層組成物に代えて、エメダスチンフマル酸塩、前記ゴム系粘着剤及び/又は前記シリコーン系粘着剤、アルカリ金属を含む塩基性化合物、溶剤、並びに必要に応じて前記添加剤を含有する組成物を用いることにより、得られる粘着剤層中に前記フマル酸アルカリ金属塩を含有せしめることができる。
【0049】
さらに、本発明の貼付剤として前記剥離ライナー層をさらに備える場合には、先に剥離ライナー層の一方の面上に前記粘着剤層組成物を塗布して粘着剤層を形成せしめ、次いで、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層とは反対の面上に前記支持体層を積層することによっても本発明の貼付剤を得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例、比較例及び参考例で得られた各貼付剤について、凝集性評価試験及び水中放出試験はそれぞれ以下に示す方法により行った。
【0051】
(凝集性評価試験)
先ず、得られた各貼付剤をそれぞれ1cm×5cmの大きさに切り抜き、剥離ライナー層を剥離して質量を測定した後、ベークライト板に貼付して30分間静置した。その後、30cm/minの速度で貼付剤をベークライト板から剥離し、剥離後の貼付剤の質量を測定して下記式(1):
粘着剤層残り率(%)=[(貼付前の貼付剤質量−剥離後の貼付剤質量)/貼付前の貼付剤質量]×100 ・・・(1)
により粘着剤層残り率(%)を算出した。
【0052】
次いで、フマル酸アルカリ金属塩を添加して作製した貼付剤(X)及びフマル酸アルカリ金属塩を添加していないこと以外は貼付剤Xと同様にして作製した貼付剤(Y、基準製剤)の粘着剤層残り率(%)から、下記式(2):
凝集力向上率(%)={1+[(貼付剤Yの粘着剤層残り率−貼付剤Xの粘着剤層残り率)/貼付剤Yの粘着剤層残り率]}×100 ・・・(3)
により凝集力向上率(%)を算出し、基準製剤と比較した凝集力向上効果を、凝集力向上率(%)が150%以上の場合をA、凝集力向上率(%)が110%以上150%未満の場合をB、凝集力向上率(%)が110%未満の場合をCとして評価した。なお、貼付剤Yの粘着剤層残り率が2%以下であった場合には、凝集力向上率の値にかかわらず凝集力向上効果の評価はDとした。
【0053】
(水中放出試験)
先ず、得られた各貼付剤をそれぞれ2.5cm×2.5cmの大きさに切り抜き、剥離ライナー層を剥離して粘着剤層が外側となるように溶出試験機の回転シリンダーに装着した。その後、900mlの精製水を入れた丸底フラスコを溶出試験機に装着して温度を32℃に設定し、前記丸底フラスコの精製水中に前記回転シリンダーを浸漬した。これを速度50rpmで回転させながら所定時間毎に溶出液10mlをサンプリングし、高速液体クロマトグラフ法により水中に放出されたエメダスチンの質量(水中放出量)を測定して測定開始からT時間後(Tは任意の正の数)の総水中放出量を求め、試験前の粘着剤層中に含有させたエメダスチン質量(初期エメダスチン量)から、下記式(3):
水中放出率(%)=(T時間後の総水中放出量/初期エメダスチン量)×100 ・・・(3)
により測定開始からT時間後の水中放出率(%)を算出した。次いで、上記で得られた各時間における水中放出量について、下記式(4):
【0054】
【数1】
【0055】
[式(4)中、Dは製剤中拡散係数を示し、Cv0は初期エメダスチン量を示し、Lは粘着剤層の厚みを示す。]
によりカーブフィッティングし、製剤中拡散係数(D[μm/hr])を求めた。なお、水中放出率及び/又は製剤中拡散係数が大きい程、粘着剤層からのエメダスチンの放出量が多いことを示し、その分エメダスチンの経皮吸収性が向上するものと認められる。
【0056】
(参考例1)
先ず、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS、ゴム系粘着剤)11.9質量部、ポリイソブチレン(PIB、ゴム系粘着剤)7.1質量部、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP100、荒川化学工業社製、粘着付与剤)52.3質量部、流動パラフィン(軟化剤)23.7質量部、及び粉砕したフマル酸二ナトリウム5質量部をトルエン中において攪拌し、粘着剤層組成物を得た。得られた粘着剤層組成物を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー層)の一方の面上に塗布した後、80℃において乾燥させて厚さ100μmの粘着剤層を形成せしめ、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層とは反対の面上にポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体層)を積層することにより貼付剤を得た。
【0057】
(参考例2〜3)
フマル酸二ナトリウムに代えて粉砕したフマル酸一ナトリウム(参考例2)又はフマル酸一カリウム(参考例3)を用いたこと以外はそれぞれ参考例1と同様にして参考例2〜3の貼付剤を得た。また、フマル酸二ナトリウムを用いず、これにあわせて各化合物の添加量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は参考例1と同様にしてフマル酸アルカリ金属塩を含有しない貼付剤(基準製剤)を作製し、これと比較した凝集力向上効果を参考例1〜3について評価した。得られた結果を各粘着剤層組成物の組成(トルエンを除く)と共にそれぞれ表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(参考例4〜11)
粘着剤層組成物の組成をそれぞれ表2に示す組成としたこと以外は参考例1と同様にして参考例4〜11の貼付剤を得た。また、参考例4〜11の各貼付剤に対してフマル酸二ナトリウムを含有しない貼付剤をそれぞれ作製して基準製剤とし、参考例4〜11で得られた貼付剤について、前記基準製剤と比較した凝集力向上効果をそれぞれ評価した。得られた結果を各粘着剤層組成物の組成(トルエンを除く)と共にそれぞれ表2に示す。なお、参考例10〜11においては、基準製剤における粘着剤層残り率が2%以下であったため、凝集力向上効果の評価はDとした。
【0060】
【表2】
【0061】
(実施例1)
先ず、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS、ゴム系粘着剤)16.7質量部、ポリイソブチレン(PIB、ゴム系粘着剤)7.1質量部、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP100、荒川化学工業社製、粘着付与剤)52.4質量部、流動パラフィン(軟化剤)19.0質量部、及び粉砕したフマル酸二ナトリウム2質量部をトルエン中において攪拌し、ゴム系粘着剤を含む組成物を得た。次いで、エメダスチン(遊離塩基)2.8質量部のメタノール溶液を前記組成物中に添加してさらに撹拌し、粘着剤層組成物を得た。得られた粘着剤層組成物を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー層)の一方の面上に塗布した後、80℃において乾燥させて厚さ100μmの粘着剤層を形成せしめ、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層とは反対の面上にポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体層)を積層することにより貼付剤を得た。
【0062】
(実施例2〜3、比較例1)
フマル酸二ナトリウムを5質量部(実施例2)又は10質量部(実施例3)とし、これにあわせて各化合物の添加量をそれぞれ表3に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜3の貼付剤を得た。また、フマル酸二ナトリウムを用いず、これにあわせて各化合物の添加量をそれぞれ表3に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして比較例1の貼付剤(基準製剤)を得た。次いで、実施例1〜3及び比較例1について凝集性評価試験を行い、実施例1〜3で得られた貼付剤について、比較例1で得られた貼付剤(基準製剤)と比較した凝集力向上効果をそれぞれ評価した。得られた結果を各粘着剤層組成物の組成(トルエン、メタノールを除く)と共に表3にそれぞれ示す。また、実施例1〜3及び比較例1で得られた貼付剤について、水中放出実験を行った結果を表3及び図1にそれぞれ示す。なお、表3中の水中放出率は、測定開始から24時間後(T=24)の水中放出率である。
【0063】
(比較例2)
アクリレート粘着剤溶液(Duro−Tak 87−2516、ヘンケル社製)95質量部及び粉砕したフマル酸二ナトリウム5質量部をトルエン中において攪拌して得られたアクリレート系粘着剤を含む粘着剤層組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例2の貼付剤を得た。また、フマル酸二ナトリウムを用いず、これにあわせてアクリレート粘着剤溶液の添加量を100質量部としたこと以外は上記と同様にして貼付剤を作製して基準製剤とし、比較例2で得られた貼付剤について、前記基準製剤と比較した凝集力向上効果を評価した。得られた結果を粘着剤層組成物の組成(トルエンを除く)と共に表4に示す。
【0064】
(比較例3〜7)
粘着剤層組成物の組成をそれぞれ表4に示す組成としたこと以外は比較例2と同様にして比較例3〜7の貼付剤を得た。また、比較例3〜7の各貼付剤に対してフマル酸二ナトリウムを含有しない貼付剤をそれぞれ作製して基準製剤とし、比較例3〜7で得られた貼付剤について、前記基準製剤と比較した凝集力向上効果をそれぞれ評価した。得られた結果を各粘着剤層組成物の組成(トルエンを除く)と共にそれぞれ表4に示す。なお、表4中、Duro−Tak 87−2194、Duro−Tak 87−4098、Duro−Tak 87−2051、Duro−Tak 87−202A、Duro−Tak 87−235Aはいずれもヘンケル社製のアクリレート粘着剤溶液を示す。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
表1〜2に示した結果から明らかなように、フマル酸アルカリ金属塩がゴム系粘着剤を含有する粘着剤層の凝集力向上剤として働き、前記粘着剤層において優れた凝集性が発揮されることが確認された。また、表3〜4及び図1に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層の優れた凝集性が発揮されると共に、エメダスチンの放出性にも優れることが確認された。
【0068】
また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、脂環族飽和炭化水素樹脂、流動パラフィン、及び粉砕した水酸化ナトリウムを含む組成物と、エメダスチン二フマル酸塩のメタノール溶液とを混合して得られた粘着剤層組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして得られた貼付剤の評価をしたところ、実施例1〜3における結果と同等の結果となった。
【0069】
(実施例4)
先ず、シリコーン系粘着剤(BIO−PSA 7−4202、ダウ・コーニング社製)76.3質量部、シリコーンオイル(軟化剤、350−CST、ダウ・コーニング社製)17.5質量部、及び粉砕したフマル酸二ナトリウム3.2質量部をトルエン中において攪拌し、シリコーン系粘着剤を含む組成物を得た。次いで、エメダスチン(遊離塩基)3.0質量部のメタノール溶液を前記組成物中に添加してさらに撹拌し、粘着剤層組成物を得た。得られた粘着剤層組成物を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー層)の一方の面上に塗布した後、80℃において20分間乾燥させて厚さ100μmの粘着剤層を形成せしめ、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層とは反対の面上にポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体層)を積層することにより貼付剤を得た。
【0070】
(実施例5〜7、比較例8)
フマル酸二ナトリウムをそれぞれ4.0質量部(実施例5)、6.0質量部(実施例6)又は10質量部(実施例7)とし、これにあわせて各化合物の添加量をそれぞれ表5に示す量としたこと以外は実施例4と同様にして実施例5〜7の貼付剤を得た。また、フマル酸二ナトリウムを用いず、これにあわせて各化合物の添加量をそれぞれ表5に示す量としたこと以外は実施例4と同様にして比較例8の貼付剤(基準製剤)を得た。次いで、実施例4〜7及び比較例8について凝集性評価試験を行い、実施例4〜7で得られた貼付剤について、比較例8で得られた貼付剤(基準製剤)と比較した凝集力向上効果をそれぞれ評価した。得られた結果を各粘着剤層組成物の組成(トルエン、メタノールを除く)と共に表5にそれぞれ示す。また、実施例4〜7及び比較例8で得られた貼付剤について、水中放出実験を行った結果を表5及び図2にそれぞれ示す。なお、表5中の水中放出率は、測定開始から6時間後(T=6)の水中放出率である。
【0071】
【表5】
【0072】
表5に示した結果から明らかなように、フマル酸アルカリ金属塩がシリコーン系粘着剤を含有する粘着剤層の凝集力向上剤としても働き、前記粘着剤層において優れた凝集性が発揮されることが確認された。また、表5及び図2に示した結果からも明らかなように、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層の優れた凝集性が発揮されると共に、エメダスチンの放出性にも優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明によれば、粘着剤層の凝集性及びエメダスチンの放出性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。
図1
図2